説明

電子鍵盤楽器のスイッチ体

【課題】スイッチ体を小型にできると共に、押鍵感触向上に寄与する。
【解決手段】スイッチ体SWは、基板12に取り付けられるベース部21から、鍵10によって駆動される弾性膨出部22が上方にドーム状に膨出して形成される。基板12の上面には、一対の櫛歯状電極で構成された固定接点部17A,17B,17Cが敷設され、3つずつの可動接点部と固定接点部とがそれぞれ対向している。非押鍵状態において、可動接点部の基板12側への突出高さは、高い順に可動接点部25A、25B、25Cとなっている。つまり、押鍵往行程においてオンとなる順序が決まっており、早くオンするものから順に、可動接点部25A、25B、25Cとなっている。可動接点部25Aと可動接点部25Bとの配設間隔D1と、可動接点部25Bと可動接点部25Cとの配設間隔D2との大小関係は、D1>D2となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵の操作を検出する電子鍵盤楽器のスイッチ体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子鍵盤楽器において、押鍵操作により鍵自身やハンマ等の変位部材によって駆動されるスイッチ体が配設されたものが知られている(下記特許文献1)。この種のスイッチ体は、軟質の樹脂等で形成され、ベース部からドーム型に膨出した弾性膨出部に可動接点部が基板側に突出して設けられ、対応する基板上の固定接点部に当接することで導通(オン)状態となり、押鍵操作が検出される。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、1つのスイッチ体に可動接点部が3つ以上設けられるものでは、押鍵往行程においてオンとなる順序が決まっているものがある。そして、各可動接点部のオンにより、押鍵の有無や押鍵速度等が検出される。
【0004】
この種のドーム型のスイッチ体は、その弾性により、駆動されて変形し、非押鍵状態となると元の形状に復帰する。その際、可動接点部も弾性膨出部にスカート部を介して弾性的に一体に設けられるので、固定接点部に当接すると弾性変形し、非押鍵状態となると元の形状に復帰する。従って、押鍵操作時には、可動接点部が順に変形することで、反力として荷重が順に鍵に加わることになる。スイッチ体は、鍵支点に近い位置に配置されるほど、指に感じる荷重の影響が小さくなるため、スイッチ体の弾性変形が押鍵感触に与える悪影響は小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3381604号公報
【特許文献2】特公昭61−54234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、可動接点部が3つ以上配置されるスイッチ体で、それらが鍵の長手方向に一列に配列される場合は、鍵の長手方向におけるスイッチ体の全長が長くなり、スイッチ体の大型化に繋がる。そのため、可動接点部が2つのものに比べれば、奏者側に近づく配置とならざるを得ず、弾性変形が押鍵感触に与える影響が大きくなる。
【0007】
ところで、可動接点部が3つ以上配置されるスイッチ体では、押鍵往行程において早くオンする可動接点部ほど基板側への突出高さが高いので、押鍵終了までに変形する量が多い。そのため、可動接点部のスカート部の変形による広がり傾向が大きい。従って、早くオンする可動接点部ほど、それのスカート部に必要な寸法が大きくなり、隣接配置される可動接点部との必要な配設間隔が大きくなる。
【0008】
従来、2番目以降にオンする可動接点部についても、最初にオンする可動接点部と同じようなスカート部の設計が採用されることが通常であるが、2番目以降にオンする可動接点部については、適切な変形を確保する上で配設間隔に余裕があると考えられ、改善の余地がある。
【0009】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、スイッチ体を小型にできると共に、押鍵感触向上に寄与することができる電子鍵盤楽器のスイッチ体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の電子鍵盤楽器のスイッチ体は、鍵に対応して設けられ、押鍵操作により変位する鍵自身または鍵に連動する部材である変位部材(10、15)によって駆動され、対応する鍵の操作を検出する電子鍵盤楽器のスイッチ体(SW)であって、基板(12)に取り付けられるためのベース部(21)と、前記ベース部から膨出し、前記変位部材によって駆動される弾性膨出部(22)と、前記基板に配設された固定接点部(17)に対向するように、前記弾性膨出部に弾性的に少なくとも3つ設けられ、対応する固定接点部に当接することでそれぞれオン状態となる複数の可動接点部(25)とを有し、前記複数の可動接点部は、押鍵往行程においてオンとなる順序が決まっており、押鍵往行程において後からオンとなる可動接点部ほど、オンとなる順序が隣接している可動接点部同士の配設間隔(D)が小さく設定されていることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために本発明の請求項2の電子鍵盤楽器のスイッチ体は、鍵に対応して設けられ、押鍵操作により変位する鍵自身または鍵に連動する部材である変位部材によって駆動され、対応する鍵の操作を検出する電子鍵盤楽器のスイッチ体であって、基板に取り付けられるためのベース部と、前記ベース部から膨出し、前記変位部材によって駆動される弾性膨出部と、前記基板に配設された固定接点部に対向するように、前記弾性膨出部に弾性的に少なくとも3つ設けられ、対応する固定接点部に当接することでそれぞれオン状態となる複数の可動接点部とを有し、前記鍵の長手方向に沿って隣接配置された可動接点部同士の前記鍵の並び方向における配置位置が異なっていることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記鍵の長手方向に隣接する可動接点部同士が前記鍵の長手方向においてオーバーラップしている(請求項3)。
【0013】
上記目的を達成するために本発明の請求項4の電子鍵盤楽器のスイッチ体は、鍵に対応して設けられ、押鍵操作により変位する鍵自身または鍵に連動する部材である変位部材によって駆動され、対応する鍵の操作を検出する電子鍵盤楽器のスイッチ体であって、基板に取り付けられるためのベース部と、前記ベース部から膨出し、前記変位部材によって駆動される弾性膨出部と、前記基板に配設された固定接点部に対向するように、前記弾性膨出部に弾性的に設けられ、対応する固定接点部に当接することでそれぞれオン状態となる3つの可動接点部とを有し、前記3つの可動接点部は、平面視において各可動接点部を頂点とした三角形を呈するように配置されたことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記変位部材は各々の回動支点(11、14)を中心に回動するように構成され、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の側を向くスイッチ体と、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の反対側を向くスイッチ体とが、前記鍵の並び方向において交互に配設される(請求項5)。
【0015】
あるいは、前記変位部材は各々の回動支点(11、14)を中心に回動するように構成され、白鍵(10W)または黒鍵(10B)のいずれか一方の操作により変位する変位部材に対応して、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の側を向くスイッチ体が配設され、前記白鍵または前記黒鍵のいずれか他方の操作により変位する変位部材に対応して、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の反対側を向くスイッチ体が配設される(請求項6)。さらに好ましくは、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の側を向くスイッチ体は、前記白鍵の操作により変位する変位部材に対応して配設され、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の反対側を向くスイッチ体は、前記黒鍵の操作により変位する変位部材に対応して配設される(請求項7)。
【0016】
上記目的を達成するために本発明の請求項8の電子鍵盤楽器のスイッチ体は、鍵に対応して設けられ、押鍵操作により変位する鍵自身または鍵に連動する部材である変位部材によって駆動され、対応する鍵の操作を検出する電子鍵盤楽器のスイッチ体であって、基板に取り付けられるためのベース部と、前記ベース部から膨出し、前記変位部材によって駆動される弾性膨出部と、前記基板に配設された固定接点部に対向するように、前記弾性膨出部に弾性的に設けられ、対応する固定接点部に当接することでそれぞれオン状態となる4つの可動接点部とを有し、前記4つの可動接点部は、平面視において各可動接点部を頂点とした四角形を呈するように配置されたことを特徴とする。
【0017】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1、2、4、8によれば、スイッチ体を小型にできると共に、押鍵感触向上に寄与することができる。
【0019】
請求項3によれば、隣接する可動接点部の配設間隔を適切に保ちつつ、スイッチ体の前後長さを一層短くすることができる。
【0020】
請求項5によれば、スイッチ体同士が干渉しない範囲で可動接点部を大きく設計することができる。
【0021】
請求項6によれば、白鍵同士及び黒鍵同士の押鍵感触を均一にすることができる。
【0022】
請求項7によれば、回転角の大きい黒鍵について2つの可動接点部を回動支点の近くに配置することで、押鍵時における荷重増大の影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ体が適用される電子鍵盤楽器の1つの鍵に着目した模式的な側面図である。
【図2】スイッチ体の縦断面図、裏面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態及びその変形例に係るスイッチ体の裏面図である。
【図4】第3の実施の形態における1オクターブ分のスイッチ体を模式的に示す平面視に相当する図である。
【図5】第3の実施の形態の変形例のスイッチ体を模式的に示す図である。
【図6】可動接点部のみの配設位置を模式的に示す図、及び裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ体が適用される電子鍵盤楽器の1つの鍵に着目した模式的な側面図である。
【0026】
本電子鍵盤楽器には、基板12、鍵10、制御部19、楽音発生部9、スイッチ体SWが設けられている。全体の図示はしないが、鍵10には白鍵10Wと黒鍵10Bとがあり、奏者からみて左右方向に複数の鍵10が並列配置される。鍵10は、いずれも同様に構成され、後部の鍵支点11を中心に前端部(図1(a)の左端部)が上下方向(図1(a)の時計及び反時計方向)に揺動(回動)自在にされている。鍵10は、前端部が常に上方に付勢されると共に、非押鍵状態では不図示のストッパに係合して図1(a)に示す初期位置に規制される。鍵10は、初期位置において前端部が押下されると前端部が下方に変位する。
【0027】
スイッチ体SWは、各鍵10に対応して基板12上に配設され、対応する鍵10によって駆動されて、検出信号を制御部19に供給する。制御部19及び楽音発生部9は鍵盤楽器に1つずつ設けられる。制御部19は、個々には図示しないが、CPU、ROM、RAM、タイマ、記憶装置、各種インターフェイス等を備え、ROMに記憶されたプログラムに従って、CPUが楽器全体の動作を制御する。楽音発生部9は、個々には図示しないが、音源回路、効果回路、サウンドシステム等を備え、制御部19による制御に従って、音響を発生させる。本実施の形態では、スイッチ体SWにより検出される押鍵操作された鍵10に対応する楽音が発生する。
【0028】
本実施の形態では、スイッチ体SWが鍵10によって駆動される構成を例示するが、これに限られない。スイッチ体SWは、押鍵操作により変位する変位部材によって駆動されればよく、その変位部材は鍵10自身でもよいし、鍵10に連動する部材であってもよい。例えば、図1(b)に示すように、変位部材はハンマ15であってもよい。また、鍵10と変位部材との間に介在部材があってもよい。
【0029】
すなわち、図1(b)に示す例では、鍵10の下方にはハンマ15が対応して配設される。ハンマ15は、鍵10の配列方向に並列に鍵数分配列される。各ハンマ15は、ハンマ支点14を中心に図1(b)の時計及び反時計方向に回動自在になっている。鍵支点11、ハンマ支点14の前後方向の位置はそれぞれ共通とする。
【0030】
ハンマ15の前端部と鍵10の前端部とは回動軸13で回動自在に連結されている。従って、押離鍵操作により鍵10が回動するのに連動して対応するハンマ15が回動する。ハンマ15の後端部に質量が集中するようになっている。自由状態では、ハンマ15は、鍵10を図1(b)の時計方向に付勢するように配設されている。ハンマ15が有する質量によって、押鍵操作に対して慣性力が付与され、生ピアノのような押鍵感触が得られる。スイッチ体SWは、ハンマ15の駆動部16によって駆動される。
【0031】
次に、スイッチ体SWの構成を説明する。各スイッチ体SWは同様に構成されるので、代表として1つのスイッチ体SWの構成を説明する。図2(a)、(b)は、スイッチ体SWの縦断面図、裏面図である。図2(a)、(b)において、図の上側が後方、すなわち、鍵支点11がある側であり、図の下側が奏者側(前方)である。以降、鍵10の長手方向を前後方向とも称し、奏者からみて鍵支点11がある側を後方と称する。
【0032】
スイッチ体SWは、可動接点部と固定接点部との組み合わせが3つ以上である3メイク式以上の構成が採用されるが、図2(a)の例では3メイク式が例示されている。すなわち、スイッチ体SWは、ゴム等の弾性部材で一体に構成された接点時間差タイプの3メイク式タッチレスポンススイッチである。
【0033】
図2(a)、(b)に示すように、スイッチ体SWは、ベース部21を有し、ベース部21が基板12に固着等によって取り付けられている。スイッチ体SWにおいて、ベース部21からは、上方にドーム状に膨出した弾性膨出部22が形成される。弾性膨出部22は、ベース部21から延設され弾性変形しやすいスカート部26を有する。弾性膨出部22の上面に鍵10が当接しており、押鍵操作されると弾性膨出部22が下方に駆動される。非押鍵状態において鍵10が弾性膨出部22の上面から少し離れている構成であってもよい。
【0034】
弾性膨出部22の内側には、弾性膨出部22から下方(基板12側)にドーム状に膨出した可動接点部25(25A、25B、25C)が3つ設けられている。可動接点部25は、弾性膨出部22において、弾性変形しやすいスカート部24(24A、24B、24C)を介して弾性的に接続され、個々に変形できるようになっている。各可動接点部25の最下部には、基板12に平行な可動接点が設けられており、これら可動接点は、カーボンインク等の導電性材料でなる。これら可動接点は、基板12に平行であることに限定されず、対向していればよい。
【0035】
また、基板12の上面には、一対の櫛歯状電極(詳細は図示せず)で構成された固定接点部17(17A、17B、17C)が敷設され、可動接点部25A、25B、25Cと固定接点部17A、17B、17Cとがそれぞれ対向している。非押鍵状態において、可動接点部25の基板12側への突出高さは、高い順に可動接点部25A、25B、25Cとなっている。つまり、可動接点部25Aが最も基板12に近い。
【0036】
各可動接点部25は、対応する固定接点部17に当接することでそれぞれオン状態となる。ここで、上記した突出高さの設定によって、可動接点部25は、押鍵往行程においてオンとなる順序が決まっており、早くオンするものから順に、可動接点部25A、25B、25Cとなっている。一方、離鍵行程においては、早くオフするものから順に、可動接点部25C、25B、25Aとなる。
【0037】
各可動接点部25のオン、オフの検出信号による楽音制御の態様は問わない。一例としては、押鍵往行程において、可動接点部25Aのオンから可動接点部25Bのオンまでの時間で押鍵ベロシティを設定し、可動接点部25Cのオンを発音のトリガとする。離鍵行程においては、可動接点部25Cのオフから可動接点部25Bのオフまでの時間で離鍵ベロシティを設定し、可動接点部25Aのオフを消音のトリガとする。
【0038】
ところで、可動接点部25は前後方向に直線上に一列に配置されるが、間隔は等間隔でない。図2(b)に示すように、可動接点部25Aと可動接点部25Bとの配設間隔はD1、可動接点部25Bと可動接点部25Cとの配設間隔はD2で、その大小関係は、D1>D2となっている。この場合、可動接点部25は円形で、重心から外郭までの距離が一定であるので、重心位置同士の間隔で表現した。しかし、隣接する最も近い部分同士の間隔で表現すると、各配設間隔はd1、d2であり、その場合でも、d1>d2となっている。
【0039】
一番先にオンする可動接点部25Aは、固定接点部17Aに当接した後のスカート部24Aの変形量が大きく、ドームの広がり領域が大きい。そのため前後方向においても大きなスペースを要し、それを満たすようにスカート部24Aの設計がなされる。ここで、従来であれば、2番目以降にオンする可動接点部25B、25Cについても、スカート部24B、24Cの設計についてはスカート部24Aと同じとし、従って、可動接点部25A、25B、25Cが等間隔に配設されるのが通常であった。
【0040】
そのため、スカート部24B、24Cについては、過剰なスペースを割いていることになり、特に前後方向においても余裕があった。これに対し本実施の形態では、2番目以降にオンする可動接点部25B、25Cについてはスカート部24B、24Cの変形量が少なくて済むことに着目し、必要最小限のスペースを割いて設計した。その結果、可動接点部25B、25Cの適切な動作を妨げない範囲で、間隔D1よりも間隔D2をより小さくできることとなった。
【0041】
ところで、図2(a)の例では、スイッチ体SWは、駆動されるとスカート部26が撓んで弾性膨出部22が全体的に下方に変位する構成である。しかし、これに限られず、図2(c)に変形例を示すように、スカート部26が片側のみに設けられ、ヒンジ部18を中心に弾性膨出部22が回動するような片持ち構造であってもよい。
【0042】
また、可動接点部25の数が3より多い場合でも、押鍵往行程において後からオンとなる可動接点部25ほど、オンとなる順序が隣接している可動接点部25同士の配設間隔Dが小さく設定される。例えば、図2(d)に示すように、可動接点部25が4個の場合、可動接点部25Cと可動接点部25Dとの配設間隔はD3で、その大小関係は、D1>D2>D3と設定される。
【0043】
本実施の形態によれば、後からオンとなる可動接点部の配設間隔を小さくすることでスイッチ体SW全体を小型化することができる。スイッチ体SWは、その弾性により押鍵に対する反力を発生させるが、小型になる分、スイッチ体SWを鍵支点11側近くに配置可能になるので、荷重上昇の影響が小さくなり、押鍵感触向上に寄与する。また、スカート部24が不必要に大きいと押鍵荷重が大きくなるが、後にオンする可動接点部25の配設間隔が小さくなっていることで、ストローク後半の荷重の急上昇を抑制でき、押鍵感触向上に寄与する。よって、スイッチ体SWを小型にできると共に、押鍵感触向上に寄与することができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、スイッチ体SWにおいて可動接点部25は前後方向に直線上に一列に配置されたが、本発明の第2の実施の形態では、鍵並び方向における可動接点部25の配置位置を異ならせる。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0045】
図3(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチ体SWの裏面図である。スイッチ体SWの基本構成は第1の実施の形態と同じであるので、断面図は省略する。特に、平面視における各可動接点部25の相対的な配置位置に特徴がある。
【0046】
図3(a)に示すように、可動接点部25A、25B、25Cは、斜め一直線に配設され、最も前側の可動接点部25Aが最も図の左(奏者からみて右)側に位置している。これにより、スイッチ体SWの前後方向の全体長さを短縮することができる。ここで、鍵盤装置において、他の鍵10に対応するスイッチ体SWについても、可動接点部25A、25B、25Cの並びの傾斜方向は統一する。これにより、隣接配置されるスイッチ体SW同士の干渉が回避される。
【0047】
ところで、押鍵往行程におけるオンとなる順序は、本実施の形態でも可動接点部25A、25B、25Cの順とするが、本実施の形態における特徴による効果の観点からは、そのような順序に限定されるものではない。また、配設間隔Dについては、等間隔でもよいが、第1の実施の形態における構成を併用してもよく、D1>D2とすることで、前後長さを一層短縮することができる。
【0048】
本実施の形態によれば、鍵10の長手方向に沿って隣接配置された可動接点部25同士の鍵並び方向における配置位置が異なっているので、隣接する可動接点部25の配設間隔を適切に保ちつつ、スイッチ体SWの前後長さを短くすることができる。これにより、スイッチ体SWを小型にできると共に、押鍵感触向上に寄与することができる。
【0049】
スイッチ体SWの前後長さを短くする観点からは、1つのスイッチ体SWにおける可動接点部25は直線的に配置しなくてもよく、図3(b)に変形例を示すように、左右方向の位置が異なるように互い違いに配置してもよい(千鳥配置)。
【0050】
また、前後方向に隣接する可動接点部25同士の鍵並び方向における配置位置を異ならせる上で、図3(c)に示すように、可動接点部25同士が前後方向(鍵10の長手方向において)においてオーバーラップするように配置してもよい。図3(c)の例では、可動接点部25A、25Bが量OLだけオーバーラップしている。これにより、スイッチ体SWの前後長さを一層短くすることができる。
【0051】
第1、第2の実施の形態は、1つのスイッチ体SWにおける可動接点部25の数が4以上であっても適用可能である。
【0052】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態では、1つのスイッチ体SWにおける可動接点部25は3つであるが、3つの可動接点部25が、平面視において各可動接点部25を頂点とした三角形を呈するように配置される。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0053】
図4は、第3の実施の形態における1オクターブ分のスイッチ体SWを模式的に示す平面視に相当する図である。各スイッチ体SWの向きは異なるが個々の構成は同じである。各スイッチ体SWは、平面視において、3つの可動接点部25で正三角形を呈する。これにより、スイッチ体SWは、前後方向に小型化が可能となり、鍵支点11近くへの配置が可能となる。よって、スイッチ体SWを小型にできると共に、押鍵感触向上に寄与することに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、3つの可動接点部25が呈する三角形の頂点の1つが鍵支点11の側(後方)を向くスイッチ体SWと、鍵支点11の反対側(前方)を向くスイッチ体SWとが、鍵並び方向において交互に配設されている。これにより、隣接するスイッチ体SW同士が鍵並び方向においてオーバーラップするように設計しても動作上支障がない。そのため、スイッチ体SW同士が干渉しない範囲で可動接点部25を大きく設計することができるので、検出精度が維持される。
【0055】
ところで、本実施の形態においては、スイッチ体SWを前後方向に小型化する観点からは、可動接点部25の押鍵往行程におけるオンとなる順序は限定されない。ただし、安定動作の観点から、好ましくは、前側の1つ(または2つ)の可動接点部25が先にオンするように構成される。
【0056】
ところで、図4の例では、白鍵10W、黒鍵10Bを含めて、隣接する鍵10に対応するスイッチ体SWの前後方向の向きが交互に互い違いであった。しかし、スイッチ体SWの向きによって反力が相違するので、白鍵10W同士、黒鍵10B同士の押鍵感触をそれぞれ均一にする観点からは、白鍵10W同士、黒鍵10B同士でそれぞれスイッチ体SWの向きを統一した方がよい。
【0057】
例えば、図5に変形例を示すように、白鍵10Wに対応するスイッチ体SWは、3つの可動接点部25が呈する三角形の頂点の1つが鍵支点11の側(後方)を向く(位置する)ように配設し、黒鍵10Bに対応するスイッチ体SWは、それとは逆に頂点の1つが鍵支点11の反対側(前方)を向くように配設する。
【0058】
黒鍵10は、押下操作される部分と鍵支点11との距離が短く、操作時の回転角が大きいため、スイッチ体SWからの反力の影響が白鍵10Wに比べて大きい。また、可動接点部25は、1つよりも2つの方が、押下される際の反力が大きい。従って、黒鍵10Bに対応するスイッチ体SWを、頂点となる1つの可動接点部25が鍵支点11の反対側(前方)を向くように配設することで、残りの横方向に並ぶ2つの可動接点部25を鍵支点11の近い側に配置することができる。それにより、押鍵時における荷重増大の影響を小さくすることができる。
【0059】
なお、ハンマ15を設けた鍵盤楽器(図1(b))である場合は、図4、図5の例では、頂点となる1つの可動接点部25の前後方向の向きは、鍵支点11に代えてハンマ支点14に対する向きとして考えればよい。
【0060】
この他、スイッチ体SWを前後方向に小型化する観点からは、頂点となる1つの可動接点部25の向きは前方または後方に限られない。図6(a)〜(f)に可動接点部25のみの配設位置を模式的に示す。図6における上側が鍵支点11側とする。
【0061】
例えば、図4、図5で例示したものを図6(a)、(b)に模式的に示す。図6(a)、(b)に示すような後ろ向きや前向きに限られず、図6(c)、(d)に示すように、横向きであってもよい。なお、呈する三角形は正三角形に限られない。図3(b)に示した例は、図6(c)の例の範疇でもある。
【0062】
ところで、スイッチ体SWを前後方向に小型化する観点において、可動接点部25が4つの場合は、図6(e)、(f)に示すように、可動接点部25が、平面視において各可動接点部25を頂点とした四角形を呈するように配置してもよい。これによっても、スイッチ体SWは、前後方向に小型化が可能である。可動接点部25は、図6(e)の例のように前後左右に平行に配列してもよいが、図6(f)の例のように斜めであってもよい。また、可動接点部25が呈する四角形は、平行四辺形でもよい。
【0063】
ところで、上記各実施の形態や変形例では、可動接点部25の先端の面積、すなわち、基板12に対向する面の面積は、共通であった。しかし、図6(g)に示すように、押鍵往行程において最初にオンする可動接点部25Aだけ、他の可動接点部25よりも面積を大きく設定するのが望ましい。
【0064】
すなわち、最初にオンする可動接点部25Aは、可動ストロークが大きい分、傾きやすく、スイッチ動作が不安定となりやすい。特に、鍵10が横方向の力を受けるような演奏操作をされた場合は、特に不安定となる。しかし、可動接点部25Aの面積を大きくしておくことで、可動接点部25Aが傾くことなく安定して固定接点部17Aに当接しやすくなり、動作が安定し、チャタリング防止に繋がる。よって、スイッチ動作の安定化を図り、鍵操作の検出精度を高めることができる。
【0065】
また、このように面積を異ならせる場合、押鍵往行程において後にオンする可動接点部25ほど、面積が小さくなるように設定してもよい。これにより、スイッチ体SWを必要以上に大型化しないで済む。
【符号の説明】
【0066】
10 鍵(変位部材)、 11 鍵支点(回動支点)、 12 基板、 14 ハンマ支点(回動支点)、 15 ハンマ(変位部材)、 17 固定接点部、 21 ベース部、 22 弾性膨出部、 25 可動接点部、 SW スイッチ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵に対応して設けられ、押鍵操作により変位する鍵自身または鍵に連動する部材である変位部材によって駆動され、対応する鍵の操作を検出する電子鍵盤楽器のスイッチ体であって、
基板に取り付けられるためのベース部と、
前記ベース部から膨出し、前記変位部材によって駆動される弾性膨出部と、
前記基板に配設された固定接点部に対向するように、前記弾性膨出部に弾性的に少なくとも3つ設けられ、対応する固定接点部に当接することでそれぞれオン状態となる複数の可動接点部とを有し、
前記複数の可動接点部は、押鍵往行程においてオンとなる順序が決まっており、押鍵往行程において後からオンとなる可動接点部ほど、オンとなる順序が隣接している可動接点部同士の配設間隔が小さく設定されていることを特徴とする電子鍵盤楽器のスイッチ体。
【請求項2】
鍵に対応して設けられ、押鍵操作により変位する鍵自身または鍵に連動する部材である変位部材によって駆動され、対応する鍵の操作を検出する電子鍵盤楽器のスイッチ体であって、
基板に取り付けられるためのベース部と、
前記ベース部から膨出し、前記変位部材によって駆動される弾性膨出部と、
前記基板に配設された固定接点部に対向するように、前記弾性膨出部に弾性的に少なくとも3つ設けられ、対応する固定接点部に当接することでそれぞれオン状態となる複数の可動接点部とを有し、
前記鍵の長手方向に沿って隣接配置された可動接点部同士の前記鍵の並び方向における配置位置が異なっていることを特徴とする電子鍵盤楽器のスイッチ体。
【請求項3】
前記鍵の長手方向に隣接する可動接点部同士が前記鍵の長手方向においてオーバーラップしていることを特徴とする請求項2記載の電子鍵盤楽器のスイッチ体。
【請求項4】
鍵に対応して設けられ、押鍵操作により変位する鍵自身または鍵に連動する部材である変位部材によって駆動され、対応する鍵の操作を検出する電子鍵盤楽器のスイッチ体であって、
基板に取り付けられるためのベース部と、
前記ベース部から膨出し、前記変位部材によって駆動される弾性膨出部と、
前記基板に配設された固定接点部に対向するように、前記弾性膨出部に弾性的に設けられ、対応する固定接点部に当接することでそれぞれオン状態となる3つの可動接点部とを有し、
前記3つの可動接点部は、平面視において各可動接点部を頂点とした三角形を呈するように配置されたことを特徴とする電子鍵盤楽器のスイッチ体。
【請求項5】
前記変位部材は各々の回動支点を中心に回動するように構成され、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の側を向くスイッチ体と、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の反対側を向くスイッチ体とが、前記鍵の並び方向において交互に配設されたことを特徴とする請求項4記載の電子鍵盤楽器のスイッチ体。
【請求項6】
前記変位部材は各々の回動支点を中心に回動するように構成され、白鍵または黒鍵のいずれか一方の操作により変位する変位部材に対応して、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の側を向くスイッチ体が配設され、前記白鍵または前記黒鍵のいずれか他方の操作により変位する変位部材に対応して、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の反対側を向くスイッチ体が配設されたことを特徴とする請求項4記載の電子鍵盤楽器のスイッチ体。
【請求項7】
前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の側を向くスイッチ体は、前記白鍵の操作により変位する変位部材に対応して配設され、前記3つの可動接点部が呈する三角形の頂点の1つが前記回動支点の反対側を向くスイッチ体は、前記黒鍵の操作により変位する変位部材に対応して配設されたことを特徴とする請求項6記載の電子鍵盤楽器のスイッチ体。
【請求項8】
鍵に対応して設けられ、押鍵操作により変位する鍵自身または鍵に連動する部材である変位部材によって駆動され、対応する鍵の操作を検出する電子鍵盤楽器のスイッチ体であって、
基板に取り付けられるためのベース部と、
前記ベース部から膨出し、前記変位部材によって駆動される弾性膨出部と、
前記基板に配設された固定接点部に対向するように、前記弾性膨出部に弾性的に設けられ、対応する固定接点部に当接することでそれぞれオン状態となる4つの可動接点部とを有し、
前記4つの可動接点部は、平面視において各可動接点部を頂点とした四角形を呈するように配置されたことを特徴とする電子鍵盤楽器のスイッチ体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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