電子鍵盤楽器
【課題】電子鍵盤楽器の構造に適合するように、面スピーカの配置や取付構造を工夫し、薄型で柔軟性のある面スピーカの特長を活かした電子鍵盤楽器を提供する。
【解決手段】1は側面板、2aは大屋根板、2bは前屋根板、3は棚板、4は鍵盤部、5は鍵盤蓋、6は譜面板である。面スピーカ7は、大屋根板2aの裏面に、この裏面に沿って平行に配設され、大屋根板2aの回動により楽器本体部の上部分が開かれたときに外界に露出する。この面スピーカ7は、大屋根板2aに対し、リンク機構14a,14bにより、対向間隔が変化する。面スピーカ7は、例えば、柔軟性を有する静電型スピーカである。
【解決手段】1は側面板、2aは大屋根板、2bは前屋根板、3は棚板、4は鍵盤部、5は鍵盤蓋、6は譜面板である。面スピーカ7は、大屋根板2aの裏面に、この裏面に沿って平行に配設され、大屋根板2aの回動により楽器本体部の上部分が開かれたときに外界に露出する。この面スピーカ7は、大屋根板2aに対し、リンク機構14a,14bにより、対向間隔が変化する。面スピーカ7は、例えば、柔軟性を有する静電型スピーカである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型スピーカ等の面スピーカを備え、楽音を面スピーカから出力する電子鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気音響変換器として、厚みの薄い面スピーカが知られている。例えば、電極間に電圧を印加しクローン力を利用して駆動する静電型スピーカ(コンデンサスピーカともいう)や、圧電特性を有するフィルムを用いたものなどが知られている。
面スピーカは、平板の面積を広くとるほど、音の指向性が平板に垂直な方向に強くなり、その結果、音が遠くまで到達する。
【0003】
このうち、静電型スピーカとして、最近注目されているものは、薄型フレキシブル(flexible)静電型スピーカである。これは、薄型・軽量であるとともに、柔軟性があるため、曲げることが可能で、曲げた後に応力が残らず、元の形状に戻りにくいという性質がある(特許文献1,2等参照)。
このような特徴を活用して、複数個の静電スピーカを折り曲げ可能に連結することにより、カーテンスピーカを実現し、音場を自在にコントロールできるようにしたものが知られている(特許文献2)。
しかし、電子鍵盤楽器において、従来はダイナミック型(動電型)のコーンスピーカが使用され、静電型スピーカのような面スピーカを、その特色を活用して採用することが検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−68053号公報
【特許文献2】特開2008−28652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、電子鍵盤楽器の構造に適合するように、面スピーカの配置や取付構造を工夫し、薄型で柔軟性のある面スピーカの特長を活用した電子鍵盤楽器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載の発明においては、側面部(図1の1、図8の81,82,88,90,94、図10の111,115,112b,113c,113d)と屋根部(図1の2、図8の91、図10の112)と底面部(図1の3、図10の113a,113b,113e)と鍵盤部(図1の4、図10の114)を有する楽器本体部と、前記鍵盤部に対する鍵操作により楽音信号を生成する楽音信号生成部(図7の63、図10の123)を有する電子鍵盤楽器において、1又は複数の面スピーカ(図1の7、図8の95、図10の132)が、前記側面部と前記屋根部と前記底面部の少なくとも1つに配設され、前記楽音信号生成部により生成された楽音信号に応じた音を出力するものである。
従って、鍵盤以外の筐体部に配設された面スピーカから楽音が出力されるので、生鍵盤楽器の響板のように、電子鍵盤楽器の筐体面が響くように聞こえる。そのため、楽器らしい音がする。
面スピーカから平面波が発生するので、聴取位置が電子鍵盤楽器から遠ざかっても減衰が少なく、よく聞こえる。一方、聴取位置が電子鍵盤楽器の至近位置になってもうるさく感じられない。
【0007】
面スピーカは、近似的に2次元面と見なせるような厚みの薄いスピーカであって、平坦で薄い平板形状であるが、薄い平板を湾曲させた曲面(指向特性が広角に拡がる湾曲スピーカ)、あるいは、任意の曲面を形成した面スピーカも可能である。具体的には、静電型スピーカや、圧電フィルムを用いたスピーカなどがある。
上述した側面部は、筐体の、屋根板部(天面)と底面とを除く、前部や背面部を含む。従って、面スピーカの種類として、大屋根スピーカ、屋根板(天板)スピーカ、背面スピーカ、前板スピーカ、側板スピーカ、そして底面スピーカがある。
【0008】
面スピーカの音圧は、低音域が大きく減衰し、周波数が高くなるに従い音圧が大きくなるが、高音域は面積干渉により平坦な周波数特性を呈する。ここで、面スピーカの面積(振動板の面積)を広くするに従って、面積分だけ低音域の音圧が上がる。
電子鍵盤楽器は、鍵盤部の鍵配列方向の幅が長い。そのため、面スピーカの一辺が鍵配列方向に沿うように、面スピーカを配設すれば、面スピーカの面積を広くとることができる。また、アップライト型の電子鍵盤楽器は、演奏者の身長に見合う高さがある。そのため、面スピーカの一辺が筐体の高さ方向に沿うように、面スピーカを配設すれば、面スピーカの面積を広くとることができる。また、グランドピアノ型の電子鍵盤楽器は、奥行きが長い。そのため、面スピーカの一辺が筐体の奥行き方向に沿うように、面スピーカを配設すれば、面スピーカの面積を広くとることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、前記屋根部(図1の2)は、前記面スピーカ(7)が配設された屋根板(2a)を有し、前記屋根板は、前記楽器本体部に対し、当該屋根板の1辺に沿った軸(A−A)を中心に回動自在に取り付けられ、前記楽器本体部の上部分(8:内蓋板)を開閉し、前記屋根板に配設された面スピーカは、前記屋根板の裏面に沿って配設され、前記屋根板の回動により前記楽器本体部の上部分が開かれたときに外界に露出するものである。
グランドピアノの大屋根板のような屋根板の裏面は、配設される面スピーカの面積を広くでき、面スピーカの面積を広くするに従って低音域の音圧が上がる。
また、面スピーカから出る平面波は鋭い指向性があるから、演奏者と聴取者ともに、聞こえがよい面スピーカの配置は、屋根板の裏面となる。
屋根板は楽器本体部の上部を開閉するため、屋根板の裏面に配設された面スピーカは、開閉に伴って楽器本体部に収納される。従って、不使用時の面スピーカは屋根板によって外界から保護される。
【0010】
請求項3に記載の発明においては、請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、前記面スピーカ(図8の95、図10の132)は、内部空間(図9の102:音響伝搬空間、図10の124)と外界とを仕切る位置に配設され、当該面スピーカから出力された音が前記内部空間と前記外界との双方に伝搬する。
面スピーカの配設位置には、内部空間を外界から隔離する板材を備えず、面スピーカ自身が内部空間と外界とを仕切る。面スピーカの前面から出力される音に加えて、面スピーカの背面から出力される音が内部空間を伝搬し、面スピーカが配設されていない筐体部分を振動させて外界に音を放出させたり、筐体部分の一部に反射させて外界に音を放出させたり、内部空間が外界に解放されている開口部から外界に音を放出させたりする。
従って、電子鍵盤楽器の筐体全体から出力される音のレベルが大きくなる。
【0011】
請求項4に記載の発明においては、請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、前記側面部は、左側面部及び右側面部(図8の82)を有し、前記面スピーカ(95)及び該面スピーカを前記外界に対し開閉可能にする蓋体(83)が、前記左側面部又は前記右側面部の少なくとも一方に配設されるものであり、両方に配設されてもよい。
従って、左側面部又は右側面部の少なくとも一方において、蓋体は面スピーカを開閉するため、不使用時の面スピーカは、蓋体が閉じられることにより外界から保護される。
なお、面スピーカと蓋体が配設されている、左側面部又は右側面部には、内部空間を囲む板材(側面板82)が設けられていない場合がある。
面スピーカ(95)は、蓋体(83)を開いた状態で音を放出する場合と、蓋体(83)を閉じた状態で音を放出する場合とがある。
【0012】
請求項5に記載の発明においては、請求項4に記載の電子鍵盤楽器において、前記蓋体(図8の83)は、直線を軸(C−C)として回転するものであり、前記面スピーカ(95)が配設された左側面部及び又は右側面部(82)を前記外界に対し開閉可能にするものである。
従って、蓋体を花のように開けば、面スピーカから出力される音の伝搬方向が広がるので音が豊かになる。蓋体を閉じれば、全体がコンパクトになるとともに、不使用時の面スピーカは収納されて、外界から保護される。
【0013】
請求項6に記載の発明においては、請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、前記側面部は、左側面部(図8の82)、右側面部(82)、及び、背面部(90)を有し、前記面スピーカ(95)は、前記左側面部又は前記右側面部の少なくとも一方、及び、前記背面部に配設され、前記面スピーカ(95)が配設されている左側面部及び又は右側面部(82)と前記背面部(90)とが隣設する辺において、前記辺に沿った軸(104)を中心に回転する音響反射板(83)を有するものである。
音響反射板は、左側面部又は前記右側面部の少なくとも一方に配設された第1の面スピーカと、背面部に配設された第2の面スピーカとに作用する。
従って、聴衆がいる位置などに応じて、音響反射板の回転角度を調整することにより、上述した第1,第2の面スピーカから出力される音の伝搬方向を聴衆のいる方向に変更できる。上述した音響反射板は、上述した第1の面スピーカ又は第2の面スピーカが不使用時に、その蓋体となって、面スピーカを外界から保護することもできる。
【0014】
上述した各請求項の引用記載等において、「発明を特定するための事項」に付した括弧内の符号は、後述する「発明を実施するための形態」における、「発明を特定するための事項」に対応するものに付した符号である。この符号は、「発明を特定するための事項」とその一例との対応を示すにすぎない。「発明を特定するための事項」は、この符号により対応付けられた一例に限定されない。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によれば、指向性が鋭く、遠くまで伝搬する平面波を出力し、薄型で柔軟性のある面スピーカの特長を活かした電子鍵盤楽器が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の実施の一形態であるグランドピアノ型電子鍵盤楽器の外観図である。
【図2】図1に示した面スピーカを大屋根板の裏面側から見た平面図である。
【図3】図2に示した切断線X-Xにおける大屋根板及び面スピーカの断面を、矢視X方向から見たときの断面図である。
【図4】図1に示した実施形態における面スピーカの一例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカの構造図である。
【図5】図1に示した実施形態における面スピーカの他の例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカを示す部分平面図である。
【図6】図1に示した実施形態における面スピーカのさらに他の例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカを示す部分平面図である。
【図7】図1に示した実施形態における電子鍵盤楽器の機能ブロック図である。
【図8】本願発明の第2の実施形態であるアップライトピアノ型電子鍵盤楽器の外観図である。
【図9】図8に示した実施形態の部分断面図である。
【図10】本願発明の第3の実施形態であるポータブルシンセサイザ型電子鍵盤楽器の外観図である。
【図11】図10に示した実施形態における面スピーカの取付構造を示す第1の説明図である。
【図12】図10に示した実施形態における面スピーカの取付構造を示す第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本願発明の実施の一形態である、グランドピアノ型の電子鍵盤楽器の外観図である。
1は側面板(側面部)、2は屋根板(屋根部)、2aは大屋根板、2bは前屋根板である。大屋根板2aは、楽器本体部に対し、大屋根板2aの左辺に沿った直線軸A-Aを中心に回動自在に取り付けられる。前屋根板2bは、大屋根板2aに対し、その前辺に沿った直線軸B-Bを中心に回動自在に取り付けられる。
3は棚板(底面部)、4は鍵盤部(白鍵、黒鍵を区別した図を省略する)、5は鍵盤蓋、6は譜面板である。鍵盤蓋5が図示のように開かれた状態では、その後に前板部が隠れている。側面板(側面部)1は、この前板部を含む。側面板1と棚板3との継ぎ目は、側面板1と棚板3とに化粧板を貼り付ければ見えない。
側面板(側面部)1、屋根板(屋根部)2、棚板(底面部)3、鍵盤部4と、内部空間を有するものが楽器本体部である。
屋根板(屋根部)2は、この楽器本体部の上部分を開閉する。譜面板6は後方にスライドして折り畳める。
【0018】
この実施の形態では、面スピーカ7が、大屋根板2a(屋根部)に配設される。面スピーカ7は、大屋根板2aに対し移動自在に連結され、大屋根板2aに配設された面スピーカ7と大屋根板2aとの対向間隔dは、大屋根板2aが内蓋板(楽器本体部の上部分)8を閉じているとき(d=dc)に比べて内蓋板8を開いているとき(d=do)の方が拡がるようにしたものである。
【0019】
面スピーカ7は、前面からだけではなく、背面からも音を出力する。面スピーカ7は、背面の空気層の空気バネと振動板とが共振し、共振周波数より低い周波数では音圧が低下する。ここで、共振周波数は、背面の空気層が薄いほど高くなる。
そのため、大屋根板2aを開いて演奏するときには、面スピーカ7の背面に十分な厚さの空気層が形成されている必要がある(例えば、数cm)。また、対向間隔dが広がっていると、面スピーカ7の背面から出力される音の一部は、面スピーカ7の背面と大屋根板2aとの隙間からも外界に放出される。従って、大屋根板2aが開いているときに、対向間隔が広がるので、音響発生効率が良くなるとともに、音の広がりも期待できる。
一方、大屋根板2aを閉じている(屋根板倒設)ときに、対向間隔dが狭まることにより、楽器本体部の収納効率を上げることができる。よって、側面板1の高さHH(図1参照)を小さく押さえられる。
【0020】
以下、具体構成を説明する。
面スピーカ7は、大屋根板2aの裏面に、この裏面に沿って平行に配設され、大屋根板2aの回動により楽器本体部の上部分が開かれたときに外界に露出する。
図示の例では、大屋根板2aが開かれた状態において、楽器本体部の内蓋板8が露出する。この内蓋板8と側面部1とにより、面スピーカ7を収容する収容部9が構成される。
10は突上棒であり、突上棒下部10aの根元が内蓋板8の縁部に回動自在に支持される。突上棒10は、内蓋板8から取り外すこともできる。
【0021】
ユーザは、突上棒上部10bの先端10cを、大屋根板2aの裏側にある当接部2cに当接させて、大屋根板2aを支持する。突上棒下部10aと突上棒上部10bとは、突上棒下部10aの上端部10dにおいて伸縮自在とされ、ストッパ軸SJによって、突上棒上部10bのストッパ孔SH1,SH2,SH3のいずれかに嵌合保持される。図示は、ストッパ軸SJに対してストッパ孔SH1(突上棒下部10aに隠れて見えない)が対応している。ストッパ軸SJにストッパ孔SH3を対応させれば、突上棒10が短くなって、これを収容部9に収容できる。
11はペダルユニットであり、3本のペダル11aがペダル箱11bに収容され、このペダル箱11bがペダル脚11cにより棚板3に取り付けられている。12は3本の脚柱であり、その下端にキャスタ13があり、脚柱12の上端は棚板3に取り付けられる。
【0022】
楽器本体部は、鍵盤部4に対するユーザの鍵操作により楽音信号を生成する楽音信号生成部を内蔵する。面スピーカ7は、楽音信号生成部が出力する楽音信号に応じた音を出力する。
面スピーカ7は、また、側面板(側面部)1、棚板(底面部)3に配設されてもよく、複数の箇所に配設されてもよい。
例えば、棚板3における、特に、図1の鍵盤部4の下面に対応した特定の部位に多数の透孔(音孔)を開ける。網状保護板を介して、あるいは介さずに、これらの透孔に対向して、面スピーカをこの棚板3の特定の部位に貼着などにより配設してもよい。
このようにすると、面スピーカから上向きには、鍵盤を僅かに振動させることができるとともに、鍵と鍵との間から楽音が漏れ聞こえる効果を出すことができる。同時に、面スピーカから床面に向かっても楽音が発せられる。従って、直接音と床面からの反射音とを体感できる効果がある。
また、面スピーカではない、1又は複数個の従来のダイナミック型(動電型)コーンスピーカが、例えば、低域再生用に併設されてもよい。これらは、内蓋板8に音孔を開け、そのコーン部を開放して設けられてもよいし、棚板3の下面に音孔を開け、そのコーン部を開放して設けられてもよい。
【0023】
図2は、図1に示した面スピーカ7を大屋根板2aの裏面側から見た平面図である。図2(a)は大屋根板2aが開いている状態であり、図2(b)は閉じている状態である。
図3は、図2に示した切断線X-Xにおける大屋根板2a及び面スピーカ7の断面を、図2の矢視X方向から見たときの断面図である。前屋根板2bの図示は省略する。面スピーカ7は、その内部構造を省略し、平板として図示する。面スピーカ7は、蝶番21を軸A−A(図1)として、大屋根板2aが垂直に立ち上がっていると仮定したときの状態を示す。大屋根板2aが閉じた状態の面スピーカ7は一点鎖線で示す。
【0024】
図2に示されるように、この実施形態の面スピーカ7は、その背面において大屋根板(屋根板)2aの裏面側に対し、4箇所のリンク機構14a〜14d(面スピーカ7に隠れている)により連結される。このリンク機構14a〜14dにより大屋根板2aに配設された面スピーカ7が大屋根板2aに対し平行移動し、面スピーカ7と大屋根板2aとの対向間隔dを拡げたり狭めたりすることができる。
【0025】
図3に示すように、大屋根板2aの裏面には、リンク15を収容するための凹部16を有する。一方、面スピーカ7においても、その背面にリンク15を収容するための凹部22を有する。
凹部16,22には、それぞれ、軸23,24が設けられ、これらにリンク15の軸受15a,15bが挿通されることにより、リンク15が、大屋根板2aと面スピーカ7とを連結する。
【0026】
大屋根板2aが開いている状態で、面スピーカ7は、その凹部22の面22a(このとき、水平状態となっている)が、自重によりリンク15に支持される。特に、軸24及び角位置Q1,Q2(軸24と面22aとの間の距離が一番長い位置)が支持に寄与する。
一方、リンク15は、面スピーカ7とリンク15自体との自重により大屋根板2aの凹部16の面16a(このとき、水平状態となっている)に支持される。特に、軸23及び角位置P1,P2(軸23と面16aとの間の距離が一番長い位置)が支持に寄与する。
従って、大屋根板2aが内蓋板(楽器本体部の上部分)8を開くとき、面スピーカ7と大屋根板2aとが離間され、面スピーカ7と大屋根板2aとの対向間隔は、面スピーカ7の自重により拡がり、最大d=doになる。
対向間隔d=doは5[cm]以上にすることが、面スピーカの振動板と空気層とによる共振周波数を低い方にシフトさせ、低音域の音圧の低下を防ぐ上で好ましい。
面スピーカ7の背面から出力された音の一部は、この離間部から放出され、面スピーカ7の前面から出力された音とともに、外界に伝搬する。
【0027】
一方、大屋根板(屋根板)2aが内蓋板(楽器本体部の上部分)8を閉じるとき、大屋根板2aに配設された面スピーカ7の角部25が内蓋板8に当接する(面スピーカが楽器本体部の内部に設けられた係止部材に当接する)ことで、図示一点鎖線のように、面スピーカ7と大屋根板2aとが接近し、両者の対向間隔が狭まる(d=dc)。
このとき、面スピーカ7の凹部22の傾斜面と大屋根板2aの凹部16の傾斜面とにリンク15の周面が当接することにより、リンク15が凹部16,22に収容される。対向間隔dcは0[cm]でもよいし、1[cm]程度の隙間が残ってもよい。
内蓋板(係止部材)8において、面スピーカ7の角部25が当接する領域に滑性部材を貼着するとよい。また、この領域に緩衝部材を貼着することにより、当接の衝撃を和らげるようにしてもよい。なお、突上棒10の収容場所の図示を省略した。
面スピーカ7と大屋根板2aとの対向間隔dが、面スピーカ7の自重で広がったり狭まったりすることから、対向間隔dを変更するための駆動機構が不要となる。
【0028】
図4は、図1に示した実施形態における面スピーカ7の一例である、柔軟性を有する面スピーカ30の構造図である。
図4(a)は面スピーカ30の積層構造を開いて見せた模式図、図4(b)は面スピーカ30の部分平面図、図4(c)は面スピーカ30の部分断面図、図4(d)は面スピーカ30の他の例を示す部分断面図である。
【0029】
まず、積層構造の主要部を説明する。
図4(a)〜図4(c)において、音響透過性を有する第1の固定電極シート32と音響透過性を有する第2の固定電極シート36との間に、音響透過性を有する第1の絶縁性シート33と音響透過性を有する第2の絶縁性シート35とを介して、特に薄くて柔軟性を有する振動電極シート34が積層配置されている。
第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35は、薄くて柔軟性がある緩衝材(クッション材)である。また、上述した第1の固定電極シート32、第2の固定電極シート36も、薄くて柔軟性がある。
振動電極シート34の前面から出力された音は、第1の絶縁性シート33、第1の固定電極シート32を透過し、この静電型スピーカの前面から放出されるとともに、振動電極シート34の背面から出力された音は、第2の絶縁性シート35、第2の固定電極シート36を透過し、この静電型スピーカの背面から放出される。
【0030】
31は音響透過性を有する第3の絶縁性シート、37は音響透過性を有する第4の絶縁性シートであって、これらは、静電型スピーカの背面を保護したり防水したりするとともに、感電を防止するためのカバーでもある。これらも柔軟性がある。
従って、この面スピーカ30は、全体としても、柔軟性のある薄型フレキシブル(flexible)静電型スピーカである。
上述した振動電極シート34を除き、他の第1の固定電極シート32、第2の固定電極シート36、第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35、第3の絶縁性シート、第4の絶縁性シート37は、通気性を有している。なお、第3の絶縁性シート31、第4の絶縁性シート37は、省略可能である。
【0031】
38a〜38e,39a〜39eは、振動電極シート34を、第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35により、部分的に支持するための接着層であって、その幅は狭く、例えば、4〜10[mm]であり、柔軟性があり、その厚みは薄く、例えば、0.1〜0.5[mm]である。図示の例において接着層はテープ状であり、具体的には両面接着テープを使用している。
振動電極シート34は、接着層38a〜38e,39a〜39eにより間隔をあけて支持される。
この接着層38a〜38e,39a〜39eにより、振動電極シート34は、接着層38a〜38e,39a〜39eのない領域で、振動電極シート34に対し、第1の絶縁性シート33との間、及び、第2の絶縁性シート35との間が僅かに離間して支持される。
【0032】
振動電極シート34、第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35は柔軟性を有するため、接触していても問題ない。第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35は、振動電極シート34を支持するとともに、振動電極シート34に適度な弾性応力を付与する。
接着層38a〜38e,39a〜39eは、静電型の面スピーカにとって必須のものではない。しかし、振動電極シート34は、緩衝作用のある第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35との間で相互作用を及ぼし合いながら、これらと一体となって振動する。
従って、接着層38,39は、スペーサというよりも、振動電極シート34と第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35との相互作用を安定させる機能がある。接着層38,39は、また、面スピーカ30の全体を折り曲げたときに、多層状に形成された積層シートの各層が破損しないようにしたり、ずれて皺ができないようにしたりする役目を果たす。
【0033】
図4(c)において、振動電極シート34は、接着層38a〜38eにより、第1の絶縁性シート33に等間隔の第1の支持位置で支持されるとともに、接着層39a〜39eにより、第2の絶縁性シート35に同じ第1の支持位置で支持される。第1の支持位置の間隔は、1[cm]〜10[cm]とし、試作品では3.6[cm]とした。
図4(d)において、振動電極シート34は、接着層38f,38gにより、第1の絶縁性シート33に等間隔の第1の支持位置で支持されるとともに、接着層39f,39gにより、第2の絶縁性シート35に等間隔の第2の支持位置で支持される。第1の支持位置と第2の第1の支持位置とは交互に配置されるので、振動電極シート34は、交互に支持される。
【0034】
なお、図4(b),図4(c)に示したように、面スピーカ30の端部(図示右端部)は、接着層38e,39e,38h,39hで支持することが好ましい。面スピーカ30の周縁部において、各シートの層間を、接着層38e,39e,38h,39hと同様な接着層(両面接着テープ)で相互に接着したり、接着剤を塗布したりして、層が離れないようにする。面スピーカ30の周縁部は、縫合したり、合成樹脂でまとめたり、図示しない枠体に取り付けられたりする。
【0035】
上述した振動電極シート34は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレン(PP)等の、合成樹脂薄膜の両面又は片面に、アルミニウム等の導電性を有する金属を蒸着したり、導電性塗料を塗布したりしたものであり、その厚さは数[μm]〜数十[μm]である。
上述した第1の固定電極シート32、第2の固定電極シート36は、ポリエチレンテレフタレートの片面又は両面に、アルミニウム等の導電性を有する金属を蒸着したり、導電性塗料を塗布したりして、その厚みを貫通する多数の貫通孔32a,36aが形成されたパンチングメタルである。この試作品では、厚さが0.5[mm]である。
第1の固定電極シート32、第2の固定電極シート36は、パンチングメタルに代えて、金網を用いてもよいし、不織布にアルミニウム蒸着をしたものを用いてもよい。後者の場合、第1の絶縁性シート31と第1の固定電極シート32とを一体化し、第4の絶縁性シート37と第2の固定電極シート36とを一体化することができる。
上述した第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35は、例えば、発泡合成樹脂や不織布である。
【0036】
図5は、図1に示した実施形態における面スピーカ7の他の例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカ40を示す部分平面図である。
先の図4においては、接着層38a〜38e,39a〜39eを図示縦方向に並べて互いに平行配置していた。図5においては、加えて、接着層41a,41b,41cを、図示横方向に並べて互いに平行配置したものである。
図示の接着層41a,41bは、接着層38a〜38d,39a〜39dと同じ間隔で配置されている。
上述した縦方向、横方向に配置する2種の接着層に代えて、1枚の格子状接着層を用いれば、接着層の厚みが均一になる。
この面スピーカ40の積層断面構造は、接着層の配置を除けば図4(c)、図4(d)と同じであるので図示を省略する。
【0037】
図4、図5に示した例では、接着層38a〜38h,…、41a,41b,41c,…により、振動電極シート34と第1の絶縁性シート33、振動電極シート34と第2の絶縁性シート35が接着されていた。
これらに加えて、第3の絶縁性シート31と第1の固定電極シート32との層間、第1の固定電極シート32と第1の絶縁性シート33との層間、第2の絶縁性シート35と第2の固定電極シート36との層間、第2の固定電極シート36と第4の絶縁性シート37との層間のうち、任意の層間を、図示しない接着層(両面接着テープ)で接着してもよい。特に、面スピーカ40の周縁部においては、全ての層間を接着層(両面接着テープ)で接着してもよい。
【0038】
このようにすることにより、積層体としての一体性が増し、層間に隙間ができたり、層間がずれたりしない。図示しない両面接着テープによる接着位置は、図4(c),図4(d)、図5に示す接着層38a〜38h,…、41a,41b,41c,…の支持位置と一致させることが、音響透過率を下げないようにする点で望ましい。
しかし、層間によって、接着位置を異ならせてもよい。また、層間によって、縦方向に並べる1次元平行配置と、これに直交する横方向に並べる1次元平行配置の選択を変えたりすることができる。
【0039】
図6は、図1に示した実施形態における面スピーカ7のさらに他の例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカ50A,50Bを示す部分平面図である。
この具体例は、図4に示した積層断面構造を有した面スピーカ30を1ユニットとし、複数のユニットを、間隔をあけて配置したものを、1つの面スピーカ50A又は50Bとして形成したものである。
図6(a)においては、複数の面スピーカユニットを1次元配置し、図6(b)においては、複数の面スピーカユニットを2次元配置(縦横方向)している。
【0040】
図6(a)において、静電型の面スピーカユニット511〜515は、図4(c)又は図4(d)に示した積層断面構造を有し、面スピーカ50Aの振動面となる。これに対し、スピーカユニットの連接部52の領域においては、図4(c)又は図4(d)に示した導電層(第1の固定電極シート32、振動電極シート34、第2の固定電極シート36)がなく、絶縁層(第3の絶縁性シート31、第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35、第4の絶縁性シート37)のみを残しており、これらが連接部52を構成する。
【0041】
連接部52の領域においては、さらに、第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35をなくしてもよい。この場合、まず、各面スピーカユニット511〜515として、それぞれ、第1の固定電極シート32、第1の絶縁性シート33、振動電極シート34、第2の絶縁性シート35、第2の固定電極シート36、及び、接着層38a〜38d,…、41a,41b,…の積層構造を予め作成しておき、これらの面スピーカユニット511〜515の上面と下面とを、第3の絶縁性シート31、第4の絶縁性シート37で覆うことにより、面スピーカ7を形成することができる。この場合、第3の絶縁性シート31、第4の絶縁性シート37が連接部52を構成する。
【0042】
図6(b)において、各面スピーカユニット531〜534は、図6(a)に示した面スピーカユニット511〜515と同様の積層構造を有し、面スピーカ50Bの振動面となる。
この具体例では、面スピーカユニット531〜534は、横方向が連接部54aにより連接され、縦方向が連接部54bにより連接されている。さらに、静電型スピーカユニット531〜534の周縁部54cも、図示しない枠体を取り付ける領域とするために、連接部54a,54bと同じく、導電層のない積層構造にしている。
【0043】
上述した図6(a)の面スピーカユニット511〜515、図6(b)の面スピーカユニット531〜534は、各ユニットの各電極にリード線を接続し、これらのリード線をユニット毎に独立して駆動回路に接続する。又は、連接部52、54a,54bにおいて、隣接するユニットの対応する電極同士を短いリード線でつなぎ、各ユニットの各電極を共通のリード線で駆動回路に接続してもよい。
【0044】
図7は、図1に示した実施形態における電子鍵盤楽器の機能ブロック図である。
図1に示した鍵盤部4における各白鍵,黒鍵の操作、ペダル11aの操作は、検出部61により検出され、検出信号が制御部62に出力される。制御部62は、演奏データを音源部63に出力する。この演奏データには、押鍵及び離鍵のタイミング、押鍵又は離鍵された鍵に対応するノートナンバ(音高)、ベロシティ(押鍵速度)、アフタタッチ量等のデータが含まれている。また、操作されたペダル11aの種別、操作量のデータも出力される。上述した制御部62は、機器組み込みプログラムをCPUに実行させることにより実現される。
【0045】
図1に示した電子鍵盤楽器では図示を省略したが、棚板3の底面において、鍵盤部4の下に位置する一部の場所に引出式の操作パネル部が設置され、その上面に複数の操作子(ボタン)64が配置されている。操作子64としては、例えば、楽器音色等の設定操作用スイッチや、自動演奏のための選曲、再生開始や再生停止等を制御するスイッチがある。
操作子64の操作は、検出部61により検出され、制御部62に出力され、制御部62では、各操作子64に割り付けられた機能を、電子鍵盤楽器に設定する。音源部63に対する設定の場合は、音源部63に音源設定データを出力する。
【0046】
上述した操作パネル部には、自動演奏部65と曲データ記憶部66が内蔵されている。自動演奏部65は、操作子64の操作により、曲データ記憶部66に記憶された曲を読出し、MIDI形式の演奏データを制御部62に出力する。上述した自動演奏部65も、機器組み込みプログラムをCPUに実行させることにより実現される。
MIDIインタフェース67は、パーソナルコンピュータや他の電子楽器から供給されるMIDI形式の演奏データを、例えば、棚板3の後部下面に設けられた端子から入力し、制御部62に出力する。
【0047】
音源部63は、制御部62から入力された演奏データに応じて、音色等の音源設定や、押鍵操作に応じた音高と強さのステレオ(L,Rの2チャンネル)の楽音信号を生成し、増幅器68L,68R,70L,70R、及び、混合部(ミキサー)72に出力する。図示の音源部63は、1つの楽音の発生用に、ステレオ用の左ソース、右ソースを使用する。これらの音源ソースは、図示しない音源波形メモリに記憶されている。
また、音源部63は、モノラルソースを使用するとし、操作された鍵の帯域等に応じて、左右の音量比を制御(音像定位制御)するものでもよい。
【0048】
増幅器68L,68Rの出力は、それぞれ、ヘッドフォン用の外部端子69L,69Rに出力される。増幅器70Lの出力はダイナミック型コーンスピーカ71Lに出力され、増幅器70Rの出力はダイナミック型コーンスピーカ71Rに出力される。以下、ダイナミック型コーンスピーカを、単に「コーンスピーカ」という。
図1において、コーンスピーカ71L,71Rは、内蓋板8、棚板3、鍵盤蓋5に隠れている前板部に設けることができる。
混合部72は、音源部63のステレオ出力を混合し、増幅器73に出力する。増幅器73の出力は、昇圧トランス74の1次コイルに出力される。昇圧トランス74の2次コイルには、図1に示した面スピーカ7の一例としての柔軟性を有する静電型スピーカが接続される。昇圧トランス74の2次コイルは、中点タップCTを有し、中点タップCTには、高圧のバイアス直流電源75と高抵抗の抵抗器76との直列回路が接続されている。上述した2次コイルの両端が端子77,78、抵抗器76の他端が端子79となる。
【0049】
端子77は、図4(c),図4(d)に示した第1の固定電極シート32に接続され、端子78は、第2の固定電極シート36に接続され、端子79は、振動電極シート34に接続される。
振動電極シート34を電位の基準にとって説明する。バイアス直流電源75により、第1の固定電極シート32及び第2の固定電極シート36は、E0=数百[V]の負に帯電し、振動電極シート34と第1の固定電極シート32との間、及び、振動電極シート34と第2の固定電極シート36との間に、互いに逆方向の静電吸引力が発生する。
【0050】
この状態で、第1の固定電極シート32及び第1の固定電極シート36に、逆位相の楽音信号±e[V](eはE0より十分に小さい値)が印加されると、第1の固定電極シート32及び第2の固定電極シート36は、それぞれ、(E0+e)[V]、(E0−e)[V]で負に帯電する。その結果、振動電極シート34と第1の固定電極シート32との電極間、及び、振動電極シート34と第2の固定電極シート36との間の静電吸引力のバランスがくずれ、結果として、楽音信号e[V]に比例した静電吸引力が発生し、振動電極シート34は、楽音信号e[V]の正負に応じてプッシュプル駆動される。
【0051】
上述した説明では、増幅器70L,70Rの出力を直接にコーンスピーカ71L,71Rへ出力していた。コーンスピーカ71L,71Rは、面スピーカ7の低い周波数側の音圧低下を補うために用いる。そのため、通常は、ウーファスピーカと呼ばれるものを使用する。そこで、コーンスピーカ71L,71Rの周波数特性に応じた楽音信号を供給するために、低域通過型フィルタ回路を、増幅器70L,70Rの入力側又は出力側に挿入することが望ましい。
同様に、増幅器73の入力側又は出力側に、静電型スピーカの周波数特性に応じた楽音信号を昇圧トランス74に供給するための高域、又は、中高域通過型フィルタ回路を挿入してもよい。
上述したフィルタ回路の特性は、コーンスピーカ71L,71Rから出力される音と面スピーカ7から出力される音とが、周波数特性上においてバランスするように設計する。
【0052】
さらにまた、高域再生用のツィータスピーカ(例えば、ドーム型ダイナミックスピーカ)を設け、増幅器70L,70Rはツィータスピーカにも楽音信号を分配してもよい。面スピーカ(静電型スピーカ)7とツィータスピーカとを選択的に切替えて使用するためのスイッチを設けてもよい。
図示を省略したが、音源部63に、図1に示した面スピーカ7に専用のソースが用意されていてもよい。この場合、この専用のソースに基づく楽音信号を、増幅器73で増幅し、昇圧トランス74に供給する。
【0053】
図8は、本願発明の第2の実施形態であるアップライトピアノ型電子鍵盤楽器の外観図である。
図中、演奏者から見て左側において、81は脇側面板(側面部)、82は側面板(側面部)、83は側面蓋(側面部)、84は前脚、85は前脚84と側面板82とを接続するステーである。同様の構造が図示右側にもあり、同じ符号を付している。
左右の脇側面板81の間に、鍵盤部が配置されているが、鍵盤蓋86が閉じているので見えない。図示の鍵盤蓋86は2枚折れタイプである。演奏時に、鍵盤蓋86は後述する上前板88の下部から楽器本体部の奥に収納される。
【0054】
鍵盤部の演奏者側の前面は口棒87であり、鍵盤部の底面は、図示されない棚板である。鍵盤部の奥行き側の上部は上前板88であり、その中央に譜面受89が設けられている。上前板88、左右の側面板82、及び、背面板90(図9参照)の上部に天板91が掛け渡され、その中央に譜面板92(図示の状態は倒れた状態)が設けられている。
足下にペダルユニット93が設けられ、その中央にペダル93aが収容され突出している。ペダルユニット93から、この上の棚板までに、下前板94が設けられている。下前板94の表面には、音を透過させる部材として、図9に示すように、ネット103が張られている。
【0055】
上述した脇側面板81、側面板82、側面蓋83、天板91、棚板(底面部)、鍵盤部、上前板88、下前板94、背面板90、ペダルユニット93と内部空間を有するものが楽器本体部である。
楽器本体部は、鍵盤部4に対するユーザの鍵操作により楽音信号を生成する楽音信号生成部を内蔵する。
【0056】
この実施の形態の面スピーカ95は、図9に示されるように、楽器本体部の一部に配設され、上述した楽音信号生成部から出力される楽音信号に応じた音を出力する。
面スピーカ95は、これを外界に対し開閉可能にする側面蓋(蓋体)83とともに、左又は右の側面板(左側面部又は右側面部)82の少なくとも一方(通常は双方である)に配設されている。側面蓋(蓋体)83は、面スピーカ95が配設された側面板82を外界に対し開閉可能にする。
【0057】
側面板82は、楽器本体部の内部空間を囲む板材であり、この側面板82の四囲を面スピーカ取付枠とする。この面スピーカ取付枠において、下前板94に接する辺を枠体部82d、背面板90に接する辺を枠体部82eとして異なる符号を付している。この面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)に面スピーカ95が配設される。
面スピーカ95は、その一辺が側面板82の高さ方向に沿うように配設されている。側面板82は演奏者の身長に見合う高さがある。そのため、面スピーカ95の面積を広くとることができ、面積分だけ低音域の音圧を上げることができる。
【0058】
面スピーカは、上前板88、棚板(底面部)に配設されてもよく、また、背面板90に配設されてもよいし、複数の箇所に配設されてもよい。
また、コーンスピーカ97,98が上前板88に併設されている。上前板88の表面には、少なくともコーンスピーカ97,98の前面開口部に、内部空間を保護するが音は透過させるパンチングメタル、ネット、又はスピーカグリルが設けられる(図示省略)。
【0059】
左右に面スピーカ95が配設される場合、それぞれに、同じモノラルの出力信号を供給することに代えて、ステレオの左チャンネル、右チャンネルの出力信号を供給することができる。この場合、図7に示した機能ブロック図においては、混合部72を用いないで、音源部63の左チャンネル、右チャンネルの出力信号をそれぞれの増幅器で増幅し、それぞれの昇圧トランスで昇圧すればよい。
上述したコーンスピーカ97,98は、それぞれ、コーンスピーカ71L、71Rに対応する。コーンスピーカ71Lと左の面スピーカ95とで、増幅器70Lを共用し、コーンスピーカ71Rと右の面スピーカ95についても同様に、増幅器70Rを共用してもよい。
【0060】
面スピーカ95は、後述するように、楽器本体部内の内部空間と外界とを仕切る位置に配設されている。面スピーカ95の前面から出力された音は外界に伝搬し、面スピーカ95の背面から出力された音は、楽器本体部の内部空間、図9に示した例では、音響伝搬空間102に伝搬する。
音響伝搬空間102を伝搬した音は、筐体を振動させたり、内部空間から外界に開放されている音孔から外界に伝搬したりする。
側面蓋(蓋体)83を閉じると、面スピーカ95の前面から直接に外界に伝搬する音が遮断される。
【0061】
図9を参照して、側面板82について説明する。
図9は、図8に示した実施形態の部分断面図である。図9(a)は、側面板82、側面蓋83、下前板87、背面板90等をX-Xで示す切断線で矢視X方向を見たときの部分断面図である。図9(b)は、解除ボタン96の近傍の拡大断面図である。
側面板82における上述した面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)に囲まれた内側に、凹部82bが形成されている。面スピーカ95は、凹部82bを外界から覆うようにして側面板82の面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)の表面(外界に面する側)に配設されている。
従って、側面蓋(蓋体)83を開いた状態で、面スピーカ95から音を放出する場合、凹部82bは、面スピーカ95の背面側の空気層として作用する。
面スピーカ95の背面と凹部82bの底面とが、空気層を介して対向配置されることにより、空気層が存在しない場合に比べて、面スピーカの振動板と空気層とによる共振周波数が低い方にシフトする。
【0062】
この凹部82bは、図示のように、凹部82bの底面に形成された多数の透孔(音孔)82cにより音響伝搬空間102に連通しているため、実質的に空気層の厚みが増すことになり、共振周波数がさらに低くなる。
なお、面スピーカ95の背面から出力された音を楽器本体部の内部空間に伝搬させる必要がない場合、透孔(音孔)82cは不要である。
【0063】
次に、側面蓋83の構造を、図8と図9を参照して説明する。
側面蓋83は、背面板90に隣接する側面板82の一辺において、図9(a)に示す蝶番104により、直線軸C-Cを中心に回動自在に取り付けられる。側面蓋(蓋体)83は、直線を軸として回転することにより面スピーカ95が配設された側面板82(左側面部又は右側面部)を外界に対し開閉可能にする。面スピーカ95は、側面蓋83が開かれたときに外界に露出する。図8の一点鎖線で示す側面蓋83は、直角に開かれた状態を示している。
なお、上述した側面蓋(蓋体)83は、対応する側面板82の形状に合わせて平板(直方体)である。しかし、三角形以上の多角形の平面を備える多角形平板、半円板の形状であってもよい。側面蓋(蓋体)83の回転軸は、多角形平板、半円板の一辺であって、例えば、側面部と多角形面、半円面とが接する辺である。
【0064】
82a,83aは、側面蓋83を開閉する際に、演奏者が指先をかけるための取っ手凹部である。96は解除ボタンである。
図9(b)に示す、側面蓋83が閉じられた状態において、側面板82の枠体部83cの裏面に形成された係合突起(弾性変形部83e、係合部83f)の係合部83fが、側面板82の係着部82gの角部に係合することにより、係合状態が維持される。
側面板82の枠体部82dには、貫通孔82fが形成され、この貫通孔82fは、段差面を有し、側面板82の背面側が広くなっており、この段差面が上述した係着部82gを形成する。
【0065】
また、貫通孔82hは、枠体部82dの前方側(演奏者側)に形成され、上述した段差面と平行である。貫通孔82hには解除ボタン96が嵌め込まれている。貫通孔82hは、前方側に広く形成され、ここに復帰バネ105がある。
解除ボタン96の摘み部96aを押圧すると、作動子96bが、係合部83fを押圧するので、係合部83fと係着部82gとの係合が外れる。そのため、演奏者が取っ手凹部83aに指を掛けて、側面蓋83を開くことができる。摘み部96aの押圧を止めると、復帰バネ105により作動子96bが復帰する。その結果、再び、側面蓋83を閉じたときに、係合部83fと係着部82gとが係合し、閉じた状態を維持する。
【0066】
図8、図9(a)、図9(b)のいずれにも示されるように、側面蓋83の裏面部には、凹部83bが形成され、その周囲が枠体部83cとなる。
ここで、側面蓋83の枠体部83cにおける四囲の側面の内、少なくとも一側面(図8、図9(b)の831)に、多数の透孔(音孔)83dが設けられてもよい。これらの透孔83dは凹部83bから上述した側面831までを貫通することにより、凹部83bから外界に抜ける音孔となる。
【0067】
次に、図9(a)を参照し、面スピーカ95の背面から出力された音が電子楽器本体部の内部空間を伝搬する経路を説明する。
面スピーカ95は、透孔(音孔)82cが存在することにより、電子楽器本体部の内部空間と外界とを仕切る位置に配設されていることになる。面スピーカ95の背面から出力された音は、音響伝搬空間102に伝搬する。なお、多数の透孔82cを1つの大きな透孔にし、側面板82を単なる枠体部としてもよい。
【0068】
前記面スピーカ95が配設された左側面部及び又は右側面部82は、音響伝搬空間(楽器本体部の内部空間)102に開口し、音響伝搬空間102は、音響反射板101を有している。この音響反射板101は、面スピーカ95の面に対し斜めに配設されてもよい。
従って、左側面部及び又は右側面部82において、電子鍵盤楽器の側面から放出される音に加えて、面スピーカ95から出力された音が音響伝搬空間102を伝搬し、音響反射板101で反射し、電子楽器本体部の筐体を振動させて外界に音を2次放出させたり、音響伝搬空間(内部空間)102が外界に解放されている箇所から外界に音を放出させたりする。従って、電子鍵盤楽器の筐体全体から出力される音のレベルが大きくなる。
【0069】
音響伝搬空間102と音響反射板101を、より具体的に説明する。
背面板90と下前板94との間の電子楽器本体部の内部空間において、側面板82に配設された面スピーカ95の面に対し、図示のものでは、前方斜め方向(面スピーカ95と音響反射板101とのなす角度が0度を超え、90度未満)に傾けて取り付けられている。音響反射板101は、下前板94、側面板82とともに、内部空間の一部に音響伝搬空間102を形成する。
【0070】
この音響反射板101は、側面板82に配置された面スピーカ95から出力される音を反射させることにより、音の伝搬方向を左の方向から前方の方向に変更させる。下前板94には、複数の透孔(音孔)94aが設けられ、これらの透孔94aを介して前面に音を放出する。103はネットであって、下前板94の前面を覆い、音は透過させるが、異物が音響伝搬空間102に侵入しないようにする。
【0071】
図9(a)は、鍵盤部の棚板より下の水平断面図であった。これに対し、鍵盤部の棚板より上の内部空間は、鍵盤蓋86を収納する機構部品や、電子回路ブロック等が設置されているが、音響伝搬空間とし、上前板88等から外界に音を放出することも可能である。しかし、図示の音響反射板101を棚板よりも上に延長することはむずかしい。
そのため、側面板82は、鍵盤部の棚板より上においては、透孔82cを設けないようにして、内部空間への伝搬路をなくしてもよい。しかし、凹部82bについては、鍵盤部の棚板より下から連続して棚板より上にも形成しておくことが望ましい。
【0072】
面スピーカ95が配設された左側面部及び又は右側面部82において、側面蓋83を閉じた状態で面スピーカ95を動作させてもよい。
この場合、面スピーカ95は音響伝搬空間(内部空間)102に音を放出する。その際、面スピーカ95の前面と側面蓋(蓋体)83の裏面とが空気層を介して対向配置されることが望ましい。
空気層が存在しない場合に比べて、面スピーカの振動板と空気層とによる共振周波数を低い方にシフトさせ、低音域の音圧の低下を少なくする。
【0073】
そのための第1の具体例としては、側面蓋(蓋体)83の裏面部に凹部83bが形成され、これが、面スピーカ95と側面蓋(蓋体)83の裏面部との間に十分な距離の空気層として機能する。
ここで、側面蓋83の枠体部83cの一側面831に、多数の透孔(音孔)83dが設けられている場合、側面蓋83の凹部83bにおける空気層の薄さを補うことができる。
【0074】
第2の具体例は、図示を省略して説明する。側面蓋(蓋体)83の裏面部は面一(図9の側面蓋83とは異なり、凹部83bがない)である。面スピーカ95が配設された側面部82が、面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)を有し、ここに、凹部82bが形成され、この凹部82bの底面(図9の側面板82において、複数の透孔82cがある板面の位置)に面スピーカ95を配設する。
【0075】
言い換えれば、面スピーカ95は、面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)の表面(外界に面する側)に対し、音響伝搬空間(楽器本体部の内部空間)102側に後退して配設される。その結果、側面板82の表面(外界に面する側)から、後退した面スピーカ95の前面までの距離に応じた厚みの空気層ができるから、面スピーカ95の前面と側面蓋83の裏面部との間に十分な距離が確保される。
このとき、図9の側面板82における複数の透孔82cがある板面は、除去されるか、さらに、音響伝搬空間(楽器本体部の内部空間)102側に後退して形成される。
【0076】
第3の具体例は、上述した第1の具体例と第2の具体例とを合わせた例である。
面スピーカの取付位置と側面蓋(蓋体)83の裏面部との両方が対向して凹んでいるので、面スピーカ95と側面蓋83の裏面部との間に層の厚い空気層が確保されるものの、電子鍵盤楽器の上面から見て、使用時に、見かけ上大きく凹んでいる印象を与えない。
【0077】
面スピーカ95は、側面板82に配設するに代えて、左右の少なくとも一方の側面蓋83の裏側に設けてもよい。この場合、側面蓋(蓋体)83の枠体部83cが、面スピーカ取付枠となる。
上述した側面蓋83は、側面板82に対し、最大135度まで開かせることが可能である。蓋体の回転角度(開き角度)を演奏者が調整することにより、面スピーカ95の前面から出力される音の伝搬方向を変更できる。
この場合も、側面蓋(蓋体)83の凹部83bは、面スピーカ95の背面に対する空気層として作用する。側面蓋83の側面に多数の透孔83dが設けられている場合は、空気層の薄さを補う。
一方、面スピーカ95を側面蓋83の裏側に設けた場合も、側面蓋(蓋体)83を閉じた状態で面スピーカ95を動作させるときは、側面板82に凹部82bと多数の透孔82cを設け、面スピーカ95の前面から出力される音を、音響伝搬空間102に伝搬させることができる。
【0078】
最後に、側面蓋(蓋体)83が音響反射板となることについて説明する。面スピーカ95は、図9に示される通り、左側面部及び又は右側面部82の面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)に取り付けられている。
側面蓋83を開いて面スピーカ95を動作させれば、側面蓋(蓋体)83の裏面は、音響反射面として利用できる。このとき、側面蓋(蓋体)83の裏面が面一であってもかまわない。
蓋体の回転角度(開き角度)を演奏者が調整することにより、面スピーカ95の前面から出力される音の反射方向が変更され、反射後の音の伝搬方向を変更できる。
【0079】
ここで、図9に示した背面板90にも面スピーカ(背面スピーカとなる)を設ければ、側面蓋83の前面及び背面の両方を音響反射板として利用し、側面蓋83の開き角度の調整により、面スピーカ95(側面スピーカとなる)と背面スピーカとのいずれか一方に音響反射板を強く作用させたり、両方に作用させたりすることができる。
【0080】
図10は、本願発明の第3の実施形態であるポータブルシンセサイザ型電子鍵盤楽器の外観図である。
図10(a)は斜視図、図10(b)は図10(a)の切断線から矢視Xの方向を見た垂直断面の概要図である。
図10(a)において、111は側面板(側面部)、112は天板(屋根部)、113は底板(底面部)、114は鍵盤部である。115は上前部である。側面部は、側面板111に加えて上前部115、後傾斜板112b、後板113c、下前板113dを含む。上前部115には上前板118がある。
【0081】
側面板(側面部)111、天板(屋根部)112、底板(底面部)113、鍵盤部114、上前板118と内部空間124を有するものが楽器本体部であり、電子楽器の筐体でもある。楽器本体部は、鍵盤部114に対するユーザの鍵操作により楽音信号を生成する電子回路ブロック(楽音信号生成部)を内蔵する。
ここで、天板112は、その上面において前方左領域、すなわち、鍵盤の低音域にのみ、1又は複数本の線状孔112aが形成され、前方の中央寄り左右に、操作パネル116a,116bを備え、後方の中央にディスプレイ117と操作パネル116cを備えている。一方、天板112は、図10(b)に示すように、その後方が後傾斜板112bとなる。
底板113は、基板113aに対し、前方傾斜板113bと後板113cとが組み立てられたものであり、この前方傾斜板113bは下前板113dと一体成形されている。基板113aの後方領域には、楽音信号生成部等の電子回路ブロック123が載置されている。
【0082】
楽器本体部の側面部は、屋根部(天板112)と鍵盤部114との間に上前部115を有し、面スピーカ132がこの上前部115に配設される。
図10(b)に示すように、面スピーカパネル119は、筐体の一面をなし、枠体131に面スピーカ132が張設され、この面スピーカ132がパンチングパネル板133で覆われたものである。天板112と鍵盤部114との間に、上前板118を有している。
この実施の形態では、面スピーカパネル119が、上前板118の前面に取り付けられることにより、面スピーカ132は、上前部115のような、楽器本体部の一部に配設される。
面スピーカ132から出る平面波は鋭い指向性があるから、演奏者に聞こえがよい面スピーカ132の配置は上前部115となる。従って、上前部115の高さが低いため、広い面積が確保できない場合でも、鋭い指向性のために、演奏者に対して伝搬効率がよい。
【0083】
この上前板118は、筐体の左右方向に延設された長尺体であり、音を通過させる1又は複数の透孔(音孔)118aが形成された格子状の骨組みを有する。詳細は図11、図12を参照して後述する。後述する例では、上前板118のほぼ全面が格子部118bである。
加えて、コーンスピーカ120が、上述した上前部(側面部)115における楽器本体部の左側領域に配設されている。
【0084】
面スピーカ132は、電子楽器筐体の内部空間124と外界とを仕切る位置に配設され、面スピーカ132から出力された音が内部空間124と外界との双方に伝搬する。
このような面スピーカ132の配設位置において、面スピーカ132の前面から出力される音は、パンチングパネル板133を経て外界に放出される。加えて、面スピーカ132の背面から出力される音は、上前板118の多数の透孔118aを経て、内部空間124に伝搬し、筐体部分、例えば、天板112や基板113a等を振動させて外界に音を2次放出させたり、内部空間124が外界に解放されている複数の線状孔112a等から外界に放出させたりする。
【0085】
鍵盤部114の鍵盤フレーム114aは、基板113aと前方傾斜板113bの上に取り付けられ、鍵盤フレーム114aは、垂直リブ114bにより補強され、白鍵114c及び黒鍵114dを支持する。
コーンスピーカ120は、基板113aに立設されたフレーム板121に取り付けられ、その前面開口部120aの中心軸方向は、前方斜め上である。従って、前面開口部120aは、上前板118の背面及び上述した複数の線状孔112aの方向を向いている。また、上前板118の下部は、保持部材122によりフレーム板121に支持される。
【0086】
面スピーカパネル119とコーンスピーカ120とは、上前部115を挟んで、上前部115の前面と背面とに配設されている。
コーンスピーカ120は、その前面開口部120aと1又は複数の透孔118aによる開口領域の一部とが対向するように配設される。言い換えれば、前面開口部120aは、上前板118における複数の透孔118aの面積の総和である音響透過面積の一部と対向する。図示の例では、前面開口部120aが、鍵盤部114の鍵配列方向における、楽器本体部の左端部領域内に位置するように配設される。
【0087】
一方、面スピーカパネル119の面スピーカ132は、その振動面と1又は複数の透孔118aによる開口領域の半分以上とが対向するように配設されている。言い換えれば、面スピーカ132の背面は、上述した音響透過面積の半分以上と対向するようにする。
図示の例では、その振動面が上前板118の長手方向に延び、鍵盤部114の鍵配列方向の幅とほぼ同じ幅にわたって、上前板118の前面に配設されている。鍵盤部114の両側に拍子木114e,114fがあり、拍子木114e,114fを含めた鍵盤部114の鍵配列方向の幅が、面スピーカ132とほぼ同じ幅になる。
従って、面スピーカ132の横幅を長くして面スピーカ132の面積を広くとることができるので、低音域の音圧を上げることができる。
【0088】
面スピーカパネル119とコーンスピーカ120とは、演奏者の側から見て重なっている。従って、上述したコーンスピーカ120の前面開口部120aに対向する開口領域と、面スピーカ132に対向する開口領域とは、少なくとも部分的に重複する。図示の例では、完全に重複する。
上述した面スピーカ132及びコーンスピーカ120は、電子回路ブロック(楽音信号生成部)123から出力された楽音信号に応じた音を出力する。
面スピーカ132は、その前面と背面とから音が放出される。上前板118に形成された1又は複数の透孔118aは、背面から放出される音を筐体の内部空間124側に逃がす働きをするので、面スピーカ132の背面側の空気層が薄くても、これを補って、面スピーカの振動板と空気層とによる共振周波数が高くならない。
コーンスピーカ120の前面開口部120aから放出された音は、面スピーカ132を透過して前面に放出されるとともに、天板112の線状孔112aからも放出される。
【0089】
なお、面スピーカは、また、底板(底面部)の前方傾斜板113bに配設されてもよく、また、後傾斜板112bに配設されてもよい。図示の後板113cは、その前後に上下2段になっており、その上段である後上底板113eに面スピーカを配設してもよい。面スピーカは、複数の箇所に配設されて、電子楽器の筐体に収容されてもよい。
図1に示した実施形態において、鍵盤部4の直下の棚板3に多数の透孔(音孔)を開けて、面スピーカを配設する例を説明した。上述した前方傾斜板113b、後傾斜板112b、後上底板113eにも、同様に多数の透孔(音孔)を開けて面スピーカを配設することができる。
一方、コーンスピーカ120は、基板(棚板)113aに配設されてもよく、電子楽器の複数の箇所に配設されてもよい。
【0090】
図11は、図10に示した実施形態における面スピーカパネル119の取付構造を示す第1の説明図である。
図11(a)は図10(b)に示した垂直断面の部分拡大図、図11(b)は保持部材122の取付構造を示す斜視図である。
図示の例では、上前板118が天板112と一体的に成型されている。天板112に複数の横長の線状孔112aが設けられ、その内、一番演奏者側に近い孔は、1段下がった線状板112cとして形成されている。
上前板118は、全体として、複数の透孔118aが形成された格子部118bを有し、格子部118bの周囲領域に取付孔118c,118dが形成されている。
【0091】
上前板118の下部は、前方に折り返して段差部118eを有し、段差部118eの下面において、図示しないネジ部材により保持部材122に取り付けられる。
保持部材122は、その前部において、縦に直角に折り曲げられ、さらにその下部が水平に切り起されて取付部122aとなり、ここに上前板118を取り付けるためのネジ孔122bが形成されている。
保持部材122は、その後部において、縦に直角に折り曲げられて取付部122cがあり、この保持部材122を、図10(b)に示したフレーム板121に取り付けるための取付孔122dが形成されている。
【0092】
面スピーカパネル119の枠体131は、中央に大きな矩形の開口部131aを備えた、面スピーカ132の支持体である。その上縁部と下縁部とにおける、鍵盤部114の鍵配列方向の2箇所以上において、係合突起が背面側に形成されている。この係合突起は、弾性変形部131bと係止部131c、弾性変形部131eと係止部131fにより構成されている。
【0093】
面スピーカ132は、枠体131の前面から枠体131の上縁部、下縁部を回って枠体131の背面まで張設されて接着剤等により枠体131に固着される。
パンチングパネル板133の上端部133aは、枠体131の上部の曲面に沿って曲面を描き、天板112の前面に沿って直角に折り曲げられ、次に、枠体131の上部の前面に接するように折り曲げられている。ネジ部材135が、枠体131の取付孔131dを通して面スピーカ132、パンチングパネル板133の折り返し部のネジ孔133bまでねじ込まれる。
一方、パンチングパネル板133の下端部133cは、面スピーカ132が固着された枠体131の前面から直角に折り曲げられている。この下端部133cの上面は、取付部133dが面スピーカ132に接した状態で、面スピーカ132の底面btと重なり合う。
【0094】
図12は、図10に示した実施形態における面スピーカパネル119の取付構造を示す第2の説明図である。
ネジ部材135により、枠体131、面スピーカ132が、図11に示したパンチングパネル板133の上端部133aにねじ止めされる。
また、パンチングパネル板133の取付部133dが、下端部133cからの切り起しにより形成され、ここにネジ孔133eが形成されている。ネジ部材143により、取付孔131gから、枠体131、面スピーカ132を経て、パンチングパネル板133のネジ孔133eにねじ止めされる。その結果、パンチングパネル板133の下端部133cが面スピーカパネル119の底面となる。
なお、上述したパンチングパネル板133は、面スピーカ132を保護し、音を透過するものであればよく、図示しない枠体にネットを張設したものや、合成樹脂製の板材で、複数の線状の透孔(音孔)が形成されたスピーカグリルであってもよい。
【0095】
上述した面スピーカパネル119(図12)は、その係合突起(弾性変形部131bと係止部131c、弾性変形部131eと係止部131f)を、それぞれ、上前板118の取付孔(係着部)118c(図11),118dに装着する。係止部131c,131fが取付孔(係着部)118c,118dの前面に押し込まれることにより、弾性変形部131b、131eが撓み、係止部131c,131fが取付孔118c,118dを貫通し、弾性変形部131b、131eの撓みが若干戻ることにより、係止部131c,131fが取付孔118c,118dの背面の角部に係合固定される。面スピーカパネル119の底面である、パンチングパネル板133の下端部133cは、上前板118の段差部118eに載置される。
このようにして、面スピーカパネル119を上前板118に対し、簡単に取付け固定することができる。
【0096】
図示の例では、係止部の側に弾性変形部131b,131eがあって、係合突起を構成する。しかし、係着部の側に弾性変形部があってもよい。例えば、上前板118の側に、上述した係合突起(弾性変形部131bと係止部131c、弾性変形部131eと係止部131f)と同様な形状の係合突起(弾性変形部と係止部)を有し、枠体131の側には、上述した取付孔118c,118dと同様な形状の取付孔を有する場合である。また、係止部の側と係着部の側の両方に弾性変形部があってよい。
【0097】
面スピーカパネル119の背面と上側面とが接する辺において、図示の例では面スピーカ132の端部上の鍵配列方向に防振部材141が貼設される。面スピーカパネル119の背面と底面とが接する辺において、図示の例では面スピーカ132の端部上の鍵配列方向に防振部材142が貼設されている。これらの防振部材141,142は、例えば防振ゴム部材であり、面スピーカパネル119が上前板118に装着された後において、両者の隙間に介在し、面スピーカパネル119が不用意に振動したり、外れたりしないようにする。
【0098】
上述した面スピーカパネル119は取り外すこともできる。図11において、上述した係止部131cと取付孔118cとの係合箇所の近傍(係合に作用できる程度の近傍)において、線状孔112aと線状板112cとの間に僅かな隙間が形成されている。ここに、マイナスドライバ134のような細長い工具を差し込み、係合突起の係止部131cを押し下げて、弾性変形部131bを撓ませ、係止部131cと取付孔118cとの係合を解除し、係止部131cを取付孔118cから引き抜く。
その後、面スピーカパネル119を上方に浮かすことにより、下の係合突起の係止部131fと取付孔118dとの係合が解除される。このようにして、枠体131の係合突起を取付孔118c,118dから離脱させ、面スピーカパネル119を上前板118から外すことができる。
【0099】
上述した説明において、面スピーカ132への駆動電流の供給は、面スピーカ132から引き出された入力線と、電子回路ブロック123にある駆動回路の出力線とを、プラグ,ソケット等のコネクタを用いて電気的に接続すればよい。
あるいは、図示を省略するが、上述した係合突起(弾性変形部131b,係止部131c、弾性変形部131e,係止部131f)、及び、取付孔118c,118dに、それぞれ電気的接触部材を設け、係合突起と取付孔とを、機械的な結合部材とするに加えて、電気的コネクタ(プラグ及びソケット)とすることもできる。
上述した面スピーカ132は、図7に示した面スピーカ7のように、モノラル信号の供給を受けてよい。しかし、面スピーカ132は、鍵配列方向に長いため、左チャンネル用の面スピーカ132Lと左チャンネル用の面スピーカ132Rとに分けた面スピーカパネル119として上前板118に装着したり、面スピーカパネル119自体を左チャンネル用、右チャンネル用に分けて、上前板118に装着したりしてもよい。その際、図10(a)に示した左側領域にあるコーンスピーカ120を、上前部(側面部)115の右側領域にも配設し、これらをステレオスピーカとしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…側面板、2…屋根板、2a…大屋根板、2b…前屋根板、2c…当接部、3…棚板、4…鍵盤部、5…鍵盤蓋、6…譜面板、7…面スピーカ、8…内蓋板、9…収容部、10…突上棒、10a…突上棒下部、10b…突上棒上部、10c…先端、10d…上端部、11…ペダルユニット、11a…ペダル、11b…ペダル箱、11c…ペダル脚、12…脚柱、13…キャスタ、14,14a〜14d…リンク機構、15…リンク、15a,15b…軸受、16,22…凹部、16a,22a…面、21…蝶番、22…凹部、23,24…軸、25…角部、
30…面スピーカ、31…第3の絶縁性シート、32…第1の固定電極シート、32a…貫通孔、33…第1の絶縁性シート、34…振動電極シート、35…第2の絶縁性シート、36…第2の固定電極シート、36a…貫通孔、37…第4の絶縁性シート、38a〜38h,39a〜39h…接着層、
40…面スピーカ、41a,41b,41c…接着層、
50A,50B…面スピーカ、511〜515…面スピーカユニット、52…連接部、531〜534…面スピーカユニット、54a,54b…連接部、54c…周縁部、
61…検出部、62…制御部、63…音源部、64…操作子、65…自動演奏部、66…曲データ記憶部、67…MIDIインタフェース、68L,68R,70L,70R…増幅器、69L,69R…外部端子、70L,70R…増幅器、71L,71R…ダイナミック型コーンスピーカ、72…混合部、73…増幅器、74…昇圧トランス、75…バイアス直流電源、76…抵抗器、77,78,79…端子、
81…脇側面板、82…側面板、82a…取っ手凹部、82b…凹部、82c…透孔、82d,82e…枠体部、82f…貫通孔、82g…係着部、82h…貫通孔、83…側面蓋、83a…取っ手凹部、83b…凹部、83c…枠体部、831…枠体部83cの一側面、83d…透孔、83e…係合突起、84…前脚、85…ステー、86…鍵盤蓋、87…口棒、88…上前板、89…譜面受、90…背面板、91…天板、92…譜面板、93…ペダルユニット、93a…ペダル、94…下前板、94a…透孔、95…面スピーカ、96a…摘み部、96b…作動子、96…解除ボタン、97,98…コーン型スピーカ、101…音響反射板、102…音響伝搬空間、103…ネット、104…蝶番、105…復帰バネ、
111…側面板、112…天板、112a…線状孔、112b…後傾斜板、112c…線状板、113…底板、113a…基板、113b…前方傾斜板、113c…後板、113d…下前板、113e…後上底板、114…鍵盤部、114a…鍵盤フレーム、114b…垂直リブ、114c…白鍵、114d…黒鍵、114e,114f…拍子木、115…上前部、116a,116b,116c…操作パネル、117…ディスプレイ、118…上前板、118a…透孔、118b…格子部、118c,118d…取付孔、118e…段差部、119…面スピーカパネル、120…コーン型スピーカ、120a…前面開口部、121…フレーム板、122…保持部材、122a…取付部、122b…ネジ孔、122c,122d…取付孔、123…電子回路ブロック、124…内部空間、131…枠体、131a…開口部、131b…弾性変形部、131c…係止部、131d…取付孔、131e…弾性変形部、131f…係止部、131g…取付孔、132,132L,132R…面スピーカ、133…パンチングパネル板、133a…上端部、133b…ネジ孔、133c…下端部、133d…取付部、133e…ネジ孔、134…マイナスドライバ、135…ネジ部材、141,142…防振部材、143…ネジ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型スピーカ等の面スピーカを備え、楽音を面スピーカから出力する電子鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気音響変換器として、厚みの薄い面スピーカが知られている。例えば、電極間に電圧を印加しクローン力を利用して駆動する静電型スピーカ(コンデンサスピーカともいう)や、圧電特性を有するフィルムを用いたものなどが知られている。
面スピーカは、平板の面積を広くとるほど、音の指向性が平板に垂直な方向に強くなり、その結果、音が遠くまで到達する。
【0003】
このうち、静電型スピーカとして、最近注目されているものは、薄型フレキシブル(flexible)静電型スピーカである。これは、薄型・軽量であるとともに、柔軟性があるため、曲げることが可能で、曲げた後に応力が残らず、元の形状に戻りにくいという性質がある(特許文献1,2等参照)。
このような特徴を活用して、複数個の静電スピーカを折り曲げ可能に連結することにより、カーテンスピーカを実現し、音場を自在にコントロールできるようにしたものが知られている(特許文献2)。
しかし、電子鍵盤楽器において、従来はダイナミック型(動電型)のコーンスピーカが使用され、静電型スピーカのような面スピーカを、その特色を活用して採用することが検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−68053号公報
【特許文献2】特開2008−28652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、電子鍵盤楽器の構造に適合するように、面スピーカの配置や取付構造を工夫し、薄型で柔軟性のある面スピーカの特長を活用した電子鍵盤楽器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載の発明においては、側面部(図1の1、図8の81,82,88,90,94、図10の111,115,112b,113c,113d)と屋根部(図1の2、図8の91、図10の112)と底面部(図1の3、図10の113a,113b,113e)と鍵盤部(図1の4、図10の114)を有する楽器本体部と、前記鍵盤部に対する鍵操作により楽音信号を生成する楽音信号生成部(図7の63、図10の123)を有する電子鍵盤楽器において、1又は複数の面スピーカ(図1の7、図8の95、図10の132)が、前記側面部と前記屋根部と前記底面部の少なくとも1つに配設され、前記楽音信号生成部により生成された楽音信号に応じた音を出力するものである。
従って、鍵盤以外の筐体部に配設された面スピーカから楽音が出力されるので、生鍵盤楽器の響板のように、電子鍵盤楽器の筐体面が響くように聞こえる。そのため、楽器らしい音がする。
面スピーカから平面波が発生するので、聴取位置が電子鍵盤楽器から遠ざかっても減衰が少なく、よく聞こえる。一方、聴取位置が電子鍵盤楽器の至近位置になってもうるさく感じられない。
【0007】
面スピーカは、近似的に2次元面と見なせるような厚みの薄いスピーカであって、平坦で薄い平板形状であるが、薄い平板を湾曲させた曲面(指向特性が広角に拡がる湾曲スピーカ)、あるいは、任意の曲面を形成した面スピーカも可能である。具体的には、静電型スピーカや、圧電フィルムを用いたスピーカなどがある。
上述した側面部は、筐体の、屋根板部(天面)と底面とを除く、前部や背面部を含む。従って、面スピーカの種類として、大屋根スピーカ、屋根板(天板)スピーカ、背面スピーカ、前板スピーカ、側板スピーカ、そして底面スピーカがある。
【0008】
面スピーカの音圧は、低音域が大きく減衰し、周波数が高くなるに従い音圧が大きくなるが、高音域は面積干渉により平坦な周波数特性を呈する。ここで、面スピーカの面積(振動板の面積)を広くするに従って、面積分だけ低音域の音圧が上がる。
電子鍵盤楽器は、鍵盤部の鍵配列方向の幅が長い。そのため、面スピーカの一辺が鍵配列方向に沿うように、面スピーカを配設すれば、面スピーカの面積を広くとることができる。また、アップライト型の電子鍵盤楽器は、演奏者の身長に見合う高さがある。そのため、面スピーカの一辺が筐体の高さ方向に沿うように、面スピーカを配設すれば、面スピーカの面積を広くとることができる。また、グランドピアノ型の電子鍵盤楽器は、奥行きが長い。そのため、面スピーカの一辺が筐体の奥行き方向に沿うように、面スピーカを配設すれば、面スピーカの面積を広くとることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、前記屋根部(図1の2)は、前記面スピーカ(7)が配設された屋根板(2a)を有し、前記屋根板は、前記楽器本体部に対し、当該屋根板の1辺に沿った軸(A−A)を中心に回動自在に取り付けられ、前記楽器本体部の上部分(8:内蓋板)を開閉し、前記屋根板に配設された面スピーカは、前記屋根板の裏面に沿って配設され、前記屋根板の回動により前記楽器本体部の上部分が開かれたときに外界に露出するものである。
グランドピアノの大屋根板のような屋根板の裏面は、配設される面スピーカの面積を広くでき、面スピーカの面積を広くするに従って低音域の音圧が上がる。
また、面スピーカから出る平面波は鋭い指向性があるから、演奏者と聴取者ともに、聞こえがよい面スピーカの配置は、屋根板の裏面となる。
屋根板は楽器本体部の上部を開閉するため、屋根板の裏面に配設された面スピーカは、開閉に伴って楽器本体部に収納される。従って、不使用時の面スピーカは屋根板によって外界から保護される。
【0010】
請求項3に記載の発明においては、請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、前記面スピーカ(図8の95、図10の132)は、内部空間(図9の102:音響伝搬空間、図10の124)と外界とを仕切る位置に配設され、当該面スピーカから出力された音が前記内部空間と前記外界との双方に伝搬する。
面スピーカの配設位置には、内部空間を外界から隔離する板材を備えず、面スピーカ自身が内部空間と外界とを仕切る。面スピーカの前面から出力される音に加えて、面スピーカの背面から出力される音が内部空間を伝搬し、面スピーカが配設されていない筐体部分を振動させて外界に音を放出させたり、筐体部分の一部に反射させて外界に音を放出させたり、内部空間が外界に解放されている開口部から外界に音を放出させたりする。
従って、電子鍵盤楽器の筐体全体から出力される音のレベルが大きくなる。
【0011】
請求項4に記載の発明においては、請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、前記側面部は、左側面部及び右側面部(図8の82)を有し、前記面スピーカ(95)及び該面スピーカを前記外界に対し開閉可能にする蓋体(83)が、前記左側面部又は前記右側面部の少なくとも一方に配設されるものであり、両方に配設されてもよい。
従って、左側面部又は右側面部の少なくとも一方において、蓋体は面スピーカを開閉するため、不使用時の面スピーカは、蓋体が閉じられることにより外界から保護される。
なお、面スピーカと蓋体が配設されている、左側面部又は右側面部には、内部空間を囲む板材(側面板82)が設けられていない場合がある。
面スピーカ(95)は、蓋体(83)を開いた状態で音を放出する場合と、蓋体(83)を閉じた状態で音を放出する場合とがある。
【0012】
請求項5に記載の発明においては、請求項4に記載の電子鍵盤楽器において、前記蓋体(図8の83)は、直線を軸(C−C)として回転するものであり、前記面スピーカ(95)が配設された左側面部及び又は右側面部(82)を前記外界に対し開閉可能にするものである。
従って、蓋体を花のように開けば、面スピーカから出力される音の伝搬方向が広がるので音が豊かになる。蓋体を閉じれば、全体がコンパクトになるとともに、不使用時の面スピーカは収納されて、外界から保護される。
【0013】
請求項6に記載の発明においては、請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、前記側面部は、左側面部(図8の82)、右側面部(82)、及び、背面部(90)を有し、前記面スピーカ(95)は、前記左側面部又は前記右側面部の少なくとも一方、及び、前記背面部に配設され、前記面スピーカ(95)が配設されている左側面部及び又は右側面部(82)と前記背面部(90)とが隣設する辺において、前記辺に沿った軸(104)を中心に回転する音響反射板(83)を有するものである。
音響反射板は、左側面部又は前記右側面部の少なくとも一方に配設された第1の面スピーカと、背面部に配設された第2の面スピーカとに作用する。
従って、聴衆がいる位置などに応じて、音響反射板の回転角度を調整することにより、上述した第1,第2の面スピーカから出力される音の伝搬方向を聴衆のいる方向に変更できる。上述した音響反射板は、上述した第1の面スピーカ又は第2の面スピーカが不使用時に、その蓋体となって、面スピーカを外界から保護することもできる。
【0014】
上述した各請求項の引用記載等において、「発明を特定するための事項」に付した括弧内の符号は、後述する「発明を実施するための形態」における、「発明を特定するための事項」に対応するものに付した符号である。この符号は、「発明を特定するための事項」とその一例との対応を示すにすぎない。「発明を特定するための事項」は、この符号により対応付けられた一例に限定されない。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によれば、指向性が鋭く、遠くまで伝搬する平面波を出力し、薄型で柔軟性のある面スピーカの特長を活かした電子鍵盤楽器が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の実施の一形態であるグランドピアノ型電子鍵盤楽器の外観図である。
【図2】図1に示した面スピーカを大屋根板の裏面側から見た平面図である。
【図3】図2に示した切断線X-Xにおける大屋根板及び面スピーカの断面を、矢視X方向から見たときの断面図である。
【図4】図1に示した実施形態における面スピーカの一例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカの構造図である。
【図5】図1に示した実施形態における面スピーカの他の例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカを示す部分平面図である。
【図6】図1に示した実施形態における面スピーカのさらに他の例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカを示す部分平面図である。
【図7】図1に示した実施形態における電子鍵盤楽器の機能ブロック図である。
【図8】本願発明の第2の実施形態であるアップライトピアノ型電子鍵盤楽器の外観図である。
【図9】図8に示した実施形態の部分断面図である。
【図10】本願発明の第3の実施形態であるポータブルシンセサイザ型電子鍵盤楽器の外観図である。
【図11】図10に示した実施形態における面スピーカの取付構造を示す第1の説明図である。
【図12】図10に示した実施形態における面スピーカの取付構造を示す第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本願発明の実施の一形態である、グランドピアノ型の電子鍵盤楽器の外観図である。
1は側面板(側面部)、2は屋根板(屋根部)、2aは大屋根板、2bは前屋根板である。大屋根板2aは、楽器本体部に対し、大屋根板2aの左辺に沿った直線軸A-Aを中心に回動自在に取り付けられる。前屋根板2bは、大屋根板2aに対し、その前辺に沿った直線軸B-Bを中心に回動自在に取り付けられる。
3は棚板(底面部)、4は鍵盤部(白鍵、黒鍵を区別した図を省略する)、5は鍵盤蓋、6は譜面板である。鍵盤蓋5が図示のように開かれた状態では、その後に前板部が隠れている。側面板(側面部)1は、この前板部を含む。側面板1と棚板3との継ぎ目は、側面板1と棚板3とに化粧板を貼り付ければ見えない。
側面板(側面部)1、屋根板(屋根部)2、棚板(底面部)3、鍵盤部4と、内部空間を有するものが楽器本体部である。
屋根板(屋根部)2は、この楽器本体部の上部分を開閉する。譜面板6は後方にスライドして折り畳める。
【0018】
この実施の形態では、面スピーカ7が、大屋根板2a(屋根部)に配設される。面スピーカ7は、大屋根板2aに対し移動自在に連結され、大屋根板2aに配設された面スピーカ7と大屋根板2aとの対向間隔dは、大屋根板2aが内蓋板(楽器本体部の上部分)8を閉じているとき(d=dc)に比べて内蓋板8を開いているとき(d=do)の方が拡がるようにしたものである。
【0019】
面スピーカ7は、前面からだけではなく、背面からも音を出力する。面スピーカ7は、背面の空気層の空気バネと振動板とが共振し、共振周波数より低い周波数では音圧が低下する。ここで、共振周波数は、背面の空気層が薄いほど高くなる。
そのため、大屋根板2aを開いて演奏するときには、面スピーカ7の背面に十分な厚さの空気層が形成されている必要がある(例えば、数cm)。また、対向間隔dが広がっていると、面スピーカ7の背面から出力される音の一部は、面スピーカ7の背面と大屋根板2aとの隙間からも外界に放出される。従って、大屋根板2aが開いているときに、対向間隔が広がるので、音響発生効率が良くなるとともに、音の広がりも期待できる。
一方、大屋根板2aを閉じている(屋根板倒設)ときに、対向間隔dが狭まることにより、楽器本体部の収納効率を上げることができる。よって、側面板1の高さHH(図1参照)を小さく押さえられる。
【0020】
以下、具体構成を説明する。
面スピーカ7は、大屋根板2aの裏面に、この裏面に沿って平行に配設され、大屋根板2aの回動により楽器本体部の上部分が開かれたときに外界に露出する。
図示の例では、大屋根板2aが開かれた状態において、楽器本体部の内蓋板8が露出する。この内蓋板8と側面部1とにより、面スピーカ7を収容する収容部9が構成される。
10は突上棒であり、突上棒下部10aの根元が内蓋板8の縁部に回動自在に支持される。突上棒10は、内蓋板8から取り外すこともできる。
【0021】
ユーザは、突上棒上部10bの先端10cを、大屋根板2aの裏側にある当接部2cに当接させて、大屋根板2aを支持する。突上棒下部10aと突上棒上部10bとは、突上棒下部10aの上端部10dにおいて伸縮自在とされ、ストッパ軸SJによって、突上棒上部10bのストッパ孔SH1,SH2,SH3のいずれかに嵌合保持される。図示は、ストッパ軸SJに対してストッパ孔SH1(突上棒下部10aに隠れて見えない)が対応している。ストッパ軸SJにストッパ孔SH3を対応させれば、突上棒10が短くなって、これを収容部9に収容できる。
11はペダルユニットであり、3本のペダル11aがペダル箱11bに収容され、このペダル箱11bがペダル脚11cにより棚板3に取り付けられている。12は3本の脚柱であり、その下端にキャスタ13があり、脚柱12の上端は棚板3に取り付けられる。
【0022】
楽器本体部は、鍵盤部4に対するユーザの鍵操作により楽音信号を生成する楽音信号生成部を内蔵する。面スピーカ7は、楽音信号生成部が出力する楽音信号に応じた音を出力する。
面スピーカ7は、また、側面板(側面部)1、棚板(底面部)3に配設されてもよく、複数の箇所に配設されてもよい。
例えば、棚板3における、特に、図1の鍵盤部4の下面に対応した特定の部位に多数の透孔(音孔)を開ける。網状保護板を介して、あるいは介さずに、これらの透孔に対向して、面スピーカをこの棚板3の特定の部位に貼着などにより配設してもよい。
このようにすると、面スピーカから上向きには、鍵盤を僅かに振動させることができるとともに、鍵と鍵との間から楽音が漏れ聞こえる効果を出すことができる。同時に、面スピーカから床面に向かっても楽音が発せられる。従って、直接音と床面からの反射音とを体感できる効果がある。
また、面スピーカではない、1又は複数個の従来のダイナミック型(動電型)コーンスピーカが、例えば、低域再生用に併設されてもよい。これらは、内蓋板8に音孔を開け、そのコーン部を開放して設けられてもよいし、棚板3の下面に音孔を開け、そのコーン部を開放して設けられてもよい。
【0023】
図2は、図1に示した面スピーカ7を大屋根板2aの裏面側から見た平面図である。図2(a)は大屋根板2aが開いている状態であり、図2(b)は閉じている状態である。
図3は、図2に示した切断線X-Xにおける大屋根板2a及び面スピーカ7の断面を、図2の矢視X方向から見たときの断面図である。前屋根板2bの図示は省略する。面スピーカ7は、その内部構造を省略し、平板として図示する。面スピーカ7は、蝶番21を軸A−A(図1)として、大屋根板2aが垂直に立ち上がっていると仮定したときの状態を示す。大屋根板2aが閉じた状態の面スピーカ7は一点鎖線で示す。
【0024】
図2に示されるように、この実施形態の面スピーカ7は、その背面において大屋根板(屋根板)2aの裏面側に対し、4箇所のリンク機構14a〜14d(面スピーカ7に隠れている)により連結される。このリンク機構14a〜14dにより大屋根板2aに配設された面スピーカ7が大屋根板2aに対し平行移動し、面スピーカ7と大屋根板2aとの対向間隔dを拡げたり狭めたりすることができる。
【0025】
図3に示すように、大屋根板2aの裏面には、リンク15を収容するための凹部16を有する。一方、面スピーカ7においても、その背面にリンク15を収容するための凹部22を有する。
凹部16,22には、それぞれ、軸23,24が設けられ、これらにリンク15の軸受15a,15bが挿通されることにより、リンク15が、大屋根板2aと面スピーカ7とを連結する。
【0026】
大屋根板2aが開いている状態で、面スピーカ7は、その凹部22の面22a(このとき、水平状態となっている)が、自重によりリンク15に支持される。特に、軸24及び角位置Q1,Q2(軸24と面22aとの間の距離が一番長い位置)が支持に寄与する。
一方、リンク15は、面スピーカ7とリンク15自体との自重により大屋根板2aの凹部16の面16a(このとき、水平状態となっている)に支持される。特に、軸23及び角位置P1,P2(軸23と面16aとの間の距離が一番長い位置)が支持に寄与する。
従って、大屋根板2aが内蓋板(楽器本体部の上部分)8を開くとき、面スピーカ7と大屋根板2aとが離間され、面スピーカ7と大屋根板2aとの対向間隔は、面スピーカ7の自重により拡がり、最大d=doになる。
対向間隔d=doは5[cm]以上にすることが、面スピーカの振動板と空気層とによる共振周波数を低い方にシフトさせ、低音域の音圧の低下を防ぐ上で好ましい。
面スピーカ7の背面から出力された音の一部は、この離間部から放出され、面スピーカ7の前面から出力された音とともに、外界に伝搬する。
【0027】
一方、大屋根板(屋根板)2aが内蓋板(楽器本体部の上部分)8を閉じるとき、大屋根板2aに配設された面スピーカ7の角部25が内蓋板8に当接する(面スピーカが楽器本体部の内部に設けられた係止部材に当接する)ことで、図示一点鎖線のように、面スピーカ7と大屋根板2aとが接近し、両者の対向間隔が狭まる(d=dc)。
このとき、面スピーカ7の凹部22の傾斜面と大屋根板2aの凹部16の傾斜面とにリンク15の周面が当接することにより、リンク15が凹部16,22に収容される。対向間隔dcは0[cm]でもよいし、1[cm]程度の隙間が残ってもよい。
内蓋板(係止部材)8において、面スピーカ7の角部25が当接する領域に滑性部材を貼着するとよい。また、この領域に緩衝部材を貼着することにより、当接の衝撃を和らげるようにしてもよい。なお、突上棒10の収容場所の図示を省略した。
面スピーカ7と大屋根板2aとの対向間隔dが、面スピーカ7の自重で広がったり狭まったりすることから、対向間隔dを変更するための駆動機構が不要となる。
【0028】
図4は、図1に示した実施形態における面スピーカ7の一例である、柔軟性を有する面スピーカ30の構造図である。
図4(a)は面スピーカ30の積層構造を開いて見せた模式図、図4(b)は面スピーカ30の部分平面図、図4(c)は面スピーカ30の部分断面図、図4(d)は面スピーカ30の他の例を示す部分断面図である。
【0029】
まず、積層構造の主要部を説明する。
図4(a)〜図4(c)において、音響透過性を有する第1の固定電極シート32と音響透過性を有する第2の固定電極シート36との間に、音響透過性を有する第1の絶縁性シート33と音響透過性を有する第2の絶縁性シート35とを介して、特に薄くて柔軟性を有する振動電極シート34が積層配置されている。
第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35は、薄くて柔軟性がある緩衝材(クッション材)である。また、上述した第1の固定電極シート32、第2の固定電極シート36も、薄くて柔軟性がある。
振動電極シート34の前面から出力された音は、第1の絶縁性シート33、第1の固定電極シート32を透過し、この静電型スピーカの前面から放出されるとともに、振動電極シート34の背面から出力された音は、第2の絶縁性シート35、第2の固定電極シート36を透過し、この静電型スピーカの背面から放出される。
【0030】
31は音響透過性を有する第3の絶縁性シート、37は音響透過性を有する第4の絶縁性シートであって、これらは、静電型スピーカの背面を保護したり防水したりするとともに、感電を防止するためのカバーでもある。これらも柔軟性がある。
従って、この面スピーカ30は、全体としても、柔軟性のある薄型フレキシブル(flexible)静電型スピーカである。
上述した振動電極シート34を除き、他の第1の固定電極シート32、第2の固定電極シート36、第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35、第3の絶縁性シート、第4の絶縁性シート37は、通気性を有している。なお、第3の絶縁性シート31、第4の絶縁性シート37は、省略可能である。
【0031】
38a〜38e,39a〜39eは、振動電極シート34を、第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35により、部分的に支持するための接着層であって、その幅は狭く、例えば、4〜10[mm]であり、柔軟性があり、その厚みは薄く、例えば、0.1〜0.5[mm]である。図示の例において接着層はテープ状であり、具体的には両面接着テープを使用している。
振動電極シート34は、接着層38a〜38e,39a〜39eにより間隔をあけて支持される。
この接着層38a〜38e,39a〜39eにより、振動電極シート34は、接着層38a〜38e,39a〜39eのない領域で、振動電極シート34に対し、第1の絶縁性シート33との間、及び、第2の絶縁性シート35との間が僅かに離間して支持される。
【0032】
振動電極シート34、第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35は柔軟性を有するため、接触していても問題ない。第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35は、振動電極シート34を支持するとともに、振動電極シート34に適度な弾性応力を付与する。
接着層38a〜38e,39a〜39eは、静電型の面スピーカにとって必須のものではない。しかし、振動電極シート34は、緩衝作用のある第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35との間で相互作用を及ぼし合いながら、これらと一体となって振動する。
従って、接着層38,39は、スペーサというよりも、振動電極シート34と第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35との相互作用を安定させる機能がある。接着層38,39は、また、面スピーカ30の全体を折り曲げたときに、多層状に形成された積層シートの各層が破損しないようにしたり、ずれて皺ができないようにしたりする役目を果たす。
【0033】
図4(c)において、振動電極シート34は、接着層38a〜38eにより、第1の絶縁性シート33に等間隔の第1の支持位置で支持されるとともに、接着層39a〜39eにより、第2の絶縁性シート35に同じ第1の支持位置で支持される。第1の支持位置の間隔は、1[cm]〜10[cm]とし、試作品では3.6[cm]とした。
図4(d)において、振動電極シート34は、接着層38f,38gにより、第1の絶縁性シート33に等間隔の第1の支持位置で支持されるとともに、接着層39f,39gにより、第2の絶縁性シート35に等間隔の第2の支持位置で支持される。第1の支持位置と第2の第1の支持位置とは交互に配置されるので、振動電極シート34は、交互に支持される。
【0034】
なお、図4(b),図4(c)に示したように、面スピーカ30の端部(図示右端部)は、接着層38e,39e,38h,39hで支持することが好ましい。面スピーカ30の周縁部において、各シートの層間を、接着層38e,39e,38h,39hと同様な接着層(両面接着テープ)で相互に接着したり、接着剤を塗布したりして、層が離れないようにする。面スピーカ30の周縁部は、縫合したり、合成樹脂でまとめたり、図示しない枠体に取り付けられたりする。
【0035】
上述した振動電極シート34は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレン(PP)等の、合成樹脂薄膜の両面又は片面に、アルミニウム等の導電性を有する金属を蒸着したり、導電性塗料を塗布したりしたものであり、その厚さは数[μm]〜数十[μm]である。
上述した第1の固定電極シート32、第2の固定電極シート36は、ポリエチレンテレフタレートの片面又は両面に、アルミニウム等の導電性を有する金属を蒸着したり、導電性塗料を塗布したりして、その厚みを貫通する多数の貫通孔32a,36aが形成されたパンチングメタルである。この試作品では、厚さが0.5[mm]である。
第1の固定電極シート32、第2の固定電極シート36は、パンチングメタルに代えて、金網を用いてもよいし、不織布にアルミニウム蒸着をしたものを用いてもよい。後者の場合、第1の絶縁性シート31と第1の固定電極シート32とを一体化し、第4の絶縁性シート37と第2の固定電極シート36とを一体化することができる。
上述した第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35は、例えば、発泡合成樹脂や不織布である。
【0036】
図5は、図1に示した実施形態における面スピーカ7の他の例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカ40を示す部分平面図である。
先の図4においては、接着層38a〜38e,39a〜39eを図示縦方向に並べて互いに平行配置していた。図5においては、加えて、接着層41a,41b,41cを、図示横方向に並べて互いに平行配置したものである。
図示の接着層41a,41bは、接着層38a〜38d,39a〜39dと同じ間隔で配置されている。
上述した縦方向、横方向に配置する2種の接着層に代えて、1枚の格子状接着層を用いれば、接着層の厚みが均一になる。
この面スピーカ40の積層断面構造は、接着層の配置を除けば図4(c)、図4(d)と同じであるので図示を省略する。
【0037】
図4、図5に示した例では、接着層38a〜38h,…、41a,41b,41c,…により、振動電極シート34と第1の絶縁性シート33、振動電極シート34と第2の絶縁性シート35が接着されていた。
これらに加えて、第3の絶縁性シート31と第1の固定電極シート32との層間、第1の固定電極シート32と第1の絶縁性シート33との層間、第2の絶縁性シート35と第2の固定電極シート36との層間、第2の固定電極シート36と第4の絶縁性シート37との層間のうち、任意の層間を、図示しない接着層(両面接着テープ)で接着してもよい。特に、面スピーカ40の周縁部においては、全ての層間を接着層(両面接着テープ)で接着してもよい。
【0038】
このようにすることにより、積層体としての一体性が増し、層間に隙間ができたり、層間がずれたりしない。図示しない両面接着テープによる接着位置は、図4(c),図4(d)、図5に示す接着層38a〜38h,…、41a,41b,41c,…の支持位置と一致させることが、音響透過率を下げないようにする点で望ましい。
しかし、層間によって、接着位置を異ならせてもよい。また、層間によって、縦方向に並べる1次元平行配置と、これに直交する横方向に並べる1次元平行配置の選択を変えたりすることができる。
【0039】
図6は、図1に示した実施形態における面スピーカ7のさらに他の例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカ50A,50Bを示す部分平面図である。
この具体例は、図4に示した積層断面構造を有した面スピーカ30を1ユニットとし、複数のユニットを、間隔をあけて配置したものを、1つの面スピーカ50A又は50Bとして形成したものである。
図6(a)においては、複数の面スピーカユニットを1次元配置し、図6(b)においては、複数の面スピーカユニットを2次元配置(縦横方向)している。
【0040】
図6(a)において、静電型の面スピーカユニット511〜515は、図4(c)又は図4(d)に示した積層断面構造を有し、面スピーカ50Aの振動面となる。これに対し、スピーカユニットの連接部52の領域においては、図4(c)又は図4(d)に示した導電層(第1の固定電極シート32、振動電極シート34、第2の固定電極シート36)がなく、絶縁層(第3の絶縁性シート31、第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35、第4の絶縁性シート37)のみを残しており、これらが連接部52を構成する。
【0041】
連接部52の領域においては、さらに、第1の絶縁性シート33、第2の絶縁性シート35をなくしてもよい。この場合、まず、各面スピーカユニット511〜515として、それぞれ、第1の固定電極シート32、第1の絶縁性シート33、振動電極シート34、第2の絶縁性シート35、第2の固定電極シート36、及び、接着層38a〜38d,…、41a,41b,…の積層構造を予め作成しておき、これらの面スピーカユニット511〜515の上面と下面とを、第3の絶縁性シート31、第4の絶縁性シート37で覆うことにより、面スピーカ7を形成することができる。この場合、第3の絶縁性シート31、第4の絶縁性シート37が連接部52を構成する。
【0042】
図6(b)において、各面スピーカユニット531〜534は、図6(a)に示した面スピーカユニット511〜515と同様の積層構造を有し、面スピーカ50Bの振動面となる。
この具体例では、面スピーカユニット531〜534は、横方向が連接部54aにより連接され、縦方向が連接部54bにより連接されている。さらに、静電型スピーカユニット531〜534の周縁部54cも、図示しない枠体を取り付ける領域とするために、連接部54a,54bと同じく、導電層のない積層構造にしている。
【0043】
上述した図6(a)の面スピーカユニット511〜515、図6(b)の面スピーカユニット531〜534は、各ユニットの各電極にリード線を接続し、これらのリード線をユニット毎に独立して駆動回路に接続する。又は、連接部52、54a,54bにおいて、隣接するユニットの対応する電極同士を短いリード線でつなぎ、各ユニットの各電極を共通のリード線で駆動回路に接続してもよい。
【0044】
図7は、図1に示した実施形態における電子鍵盤楽器の機能ブロック図である。
図1に示した鍵盤部4における各白鍵,黒鍵の操作、ペダル11aの操作は、検出部61により検出され、検出信号が制御部62に出力される。制御部62は、演奏データを音源部63に出力する。この演奏データには、押鍵及び離鍵のタイミング、押鍵又は離鍵された鍵に対応するノートナンバ(音高)、ベロシティ(押鍵速度)、アフタタッチ量等のデータが含まれている。また、操作されたペダル11aの種別、操作量のデータも出力される。上述した制御部62は、機器組み込みプログラムをCPUに実行させることにより実現される。
【0045】
図1に示した電子鍵盤楽器では図示を省略したが、棚板3の底面において、鍵盤部4の下に位置する一部の場所に引出式の操作パネル部が設置され、その上面に複数の操作子(ボタン)64が配置されている。操作子64としては、例えば、楽器音色等の設定操作用スイッチや、自動演奏のための選曲、再生開始や再生停止等を制御するスイッチがある。
操作子64の操作は、検出部61により検出され、制御部62に出力され、制御部62では、各操作子64に割り付けられた機能を、電子鍵盤楽器に設定する。音源部63に対する設定の場合は、音源部63に音源設定データを出力する。
【0046】
上述した操作パネル部には、自動演奏部65と曲データ記憶部66が内蔵されている。自動演奏部65は、操作子64の操作により、曲データ記憶部66に記憶された曲を読出し、MIDI形式の演奏データを制御部62に出力する。上述した自動演奏部65も、機器組み込みプログラムをCPUに実行させることにより実現される。
MIDIインタフェース67は、パーソナルコンピュータや他の電子楽器から供給されるMIDI形式の演奏データを、例えば、棚板3の後部下面に設けられた端子から入力し、制御部62に出力する。
【0047】
音源部63は、制御部62から入力された演奏データに応じて、音色等の音源設定や、押鍵操作に応じた音高と強さのステレオ(L,Rの2チャンネル)の楽音信号を生成し、増幅器68L,68R,70L,70R、及び、混合部(ミキサー)72に出力する。図示の音源部63は、1つの楽音の発生用に、ステレオ用の左ソース、右ソースを使用する。これらの音源ソースは、図示しない音源波形メモリに記憶されている。
また、音源部63は、モノラルソースを使用するとし、操作された鍵の帯域等に応じて、左右の音量比を制御(音像定位制御)するものでもよい。
【0048】
増幅器68L,68Rの出力は、それぞれ、ヘッドフォン用の外部端子69L,69Rに出力される。増幅器70Lの出力はダイナミック型コーンスピーカ71Lに出力され、増幅器70Rの出力はダイナミック型コーンスピーカ71Rに出力される。以下、ダイナミック型コーンスピーカを、単に「コーンスピーカ」という。
図1において、コーンスピーカ71L,71Rは、内蓋板8、棚板3、鍵盤蓋5に隠れている前板部に設けることができる。
混合部72は、音源部63のステレオ出力を混合し、増幅器73に出力する。増幅器73の出力は、昇圧トランス74の1次コイルに出力される。昇圧トランス74の2次コイルには、図1に示した面スピーカ7の一例としての柔軟性を有する静電型スピーカが接続される。昇圧トランス74の2次コイルは、中点タップCTを有し、中点タップCTには、高圧のバイアス直流電源75と高抵抗の抵抗器76との直列回路が接続されている。上述した2次コイルの両端が端子77,78、抵抗器76の他端が端子79となる。
【0049】
端子77は、図4(c),図4(d)に示した第1の固定電極シート32に接続され、端子78は、第2の固定電極シート36に接続され、端子79は、振動電極シート34に接続される。
振動電極シート34を電位の基準にとって説明する。バイアス直流電源75により、第1の固定電極シート32及び第2の固定電極シート36は、E0=数百[V]の負に帯電し、振動電極シート34と第1の固定電極シート32との間、及び、振動電極シート34と第2の固定電極シート36との間に、互いに逆方向の静電吸引力が発生する。
【0050】
この状態で、第1の固定電極シート32及び第1の固定電極シート36に、逆位相の楽音信号±e[V](eはE0より十分に小さい値)が印加されると、第1の固定電極シート32及び第2の固定電極シート36は、それぞれ、(E0+e)[V]、(E0−e)[V]で負に帯電する。その結果、振動電極シート34と第1の固定電極シート32との電極間、及び、振動電極シート34と第2の固定電極シート36との間の静電吸引力のバランスがくずれ、結果として、楽音信号e[V]に比例した静電吸引力が発生し、振動電極シート34は、楽音信号e[V]の正負に応じてプッシュプル駆動される。
【0051】
上述した説明では、増幅器70L,70Rの出力を直接にコーンスピーカ71L,71Rへ出力していた。コーンスピーカ71L,71Rは、面スピーカ7の低い周波数側の音圧低下を補うために用いる。そのため、通常は、ウーファスピーカと呼ばれるものを使用する。そこで、コーンスピーカ71L,71Rの周波数特性に応じた楽音信号を供給するために、低域通過型フィルタ回路を、増幅器70L,70Rの入力側又は出力側に挿入することが望ましい。
同様に、増幅器73の入力側又は出力側に、静電型スピーカの周波数特性に応じた楽音信号を昇圧トランス74に供給するための高域、又は、中高域通過型フィルタ回路を挿入してもよい。
上述したフィルタ回路の特性は、コーンスピーカ71L,71Rから出力される音と面スピーカ7から出力される音とが、周波数特性上においてバランスするように設計する。
【0052】
さらにまた、高域再生用のツィータスピーカ(例えば、ドーム型ダイナミックスピーカ)を設け、増幅器70L,70Rはツィータスピーカにも楽音信号を分配してもよい。面スピーカ(静電型スピーカ)7とツィータスピーカとを選択的に切替えて使用するためのスイッチを設けてもよい。
図示を省略したが、音源部63に、図1に示した面スピーカ7に専用のソースが用意されていてもよい。この場合、この専用のソースに基づく楽音信号を、増幅器73で増幅し、昇圧トランス74に供給する。
【0053】
図8は、本願発明の第2の実施形態であるアップライトピアノ型電子鍵盤楽器の外観図である。
図中、演奏者から見て左側において、81は脇側面板(側面部)、82は側面板(側面部)、83は側面蓋(側面部)、84は前脚、85は前脚84と側面板82とを接続するステーである。同様の構造が図示右側にもあり、同じ符号を付している。
左右の脇側面板81の間に、鍵盤部が配置されているが、鍵盤蓋86が閉じているので見えない。図示の鍵盤蓋86は2枚折れタイプである。演奏時に、鍵盤蓋86は後述する上前板88の下部から楽器本体部の奥に収納される。
【0054】
鍵盤部の演奏者側の前面は口棒87であり、鍵盤部の底面は、図示されない棚板である。鍵盤部の奥行き側の上部は上前板88であり、その中央に譜面受89が設けられている。上前板88、左右の側面板82、及び、背面板90(図9参照)の上部に天板91が掛け渡され、その中央に譜面板92(図示の状態は倒れた状態)が設けられている。
足下にペダルユニット93が設けられ、その中央にペダル93aが収容され突出している。ペダルユニット93から、この上の棚板までに、下前板94が設けられている。下前板94の表面には、音を透過させる部材として、図9に示すように、ネット103が張られている。
【0055】
上述した脇側面板81、側面板82、側面蓋83、天板91、棚板(底面部)、鍵盤部、上前板88、下前板94、背面板90、ペダルユニット93と内部空間を有するものが楽器本体部である。
楽器本体部は、鍵盤部4に対するユーザの鍵操作により楽音信号を生成する楽音信号生成部を内蔵する。
【0056】
この実施の形態の面スピーカ95は、図9に示されるように、楽器本体部の一部に配設され、上述した楽音信号生成部から出力される楽音信号に応じた音を出力する。
面スピーカ95は、これを外界に対し開閉可能にする側面蓋(蓋体)83とともに、左又は右の側面板(左側面部又は右側面部)82の少なくとも一方(通常は双方である)に配設されている。側面蓋(蓋体)83は、面スピーカ95が配設された側面板82を外界に対し開閉可能にする。
【0057】
側面板82は、楽器本体部の内部空間を囲む板材であり、この側面板82の四囲を面スピーカ取付枠とする。この面スピーカ取付枠において、下前板94に接する辺を枠体部82d、背面板90に接する辺を枠体部82eとして異なる符号を付している。この面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)に面スピーカ95が配設される。
面スピーカ95は、その一辺が側面板82の高さ方向に沿うように配設されている。側面板82は演奏者の身長に見合う高さがある。そのため、面スピーカ95の面積を広くとることができ、面積分だけ低音域の音圧を上げることができる。
【0058】
面スピーカは、上前板88、棚板(底面部)に配設されてもよく、また、背面板90に配設されてもよいし、複数の箇所に配設されてもよい。
また、コーンスピーカ97,98が上前板88に併設されている。上前板88の表面には、少なくともコーンスピーカ97,98の前面開口部に、内部空間を保護するが音は透過させるパンチングメタル、ネット、又はスピーカグリルが設けられる(図示省略)。
【0059】
左右に面スピーカ95が配設される場合、それぞれに、同じモノラルの出力信号を供給することに代えて、ステレオの左チャンネル、右チャンネルの出力信号を供給することができる。この場合、図7に示した機能ブロック図においては、混合部72を用いないで、音源部63の左チャンネル、右チャンネルの出力信号をそれぞれの増幅器で増幅し、それぞれの昇圧トランスで昇圧すればよい。
上述したコーンスピーカ97,98は、それぞれ、コーンスピーカ71L、71Rに対応する。コーンスピーカ71Lと左の面スピーカ95とで、増幅器70Lを共用し、コーンスピーカ71Rと右の面スピーカ95についても同様に、増幅器70Rを共用してもよい。
【0060】
面スピーカ95は、後述するように、楽器本体部内の内部空間と外界とを仕切る位置に配設されている。面スピーカ95の前面から出力された音は外界に伝搬し、面スピーカ95の背面から出力された音は、楽器本体部の内部空間、図9に示した例では、音響伝搬空間102に伝搬する。
音響伝搬空間102を伝搬した音は、筐体を振動させたり、内部空間から外界に開放されている音孔から外界に伝搬したりする。
側面蓋(蓋体)83を閉じると、面スピーカ95の前面から直接に外界に伝搬する音が遮断される。
【0061】
図9を参照して、側面板82について説明する。
図9は、図8に示した実施形態の部分断面図である。図9(a)は、側面板82、側面蓋83、下前板87、背面板90等をX-Xで示す切断線で矢視X方向を見たときの部分断面図である。図9(b)は、解除ボタン96の近傍の拡大断面図である。
側面板82における上述した面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)に囲まれた内側に、凹部82bが形成されている。面スピーカ95は、凹部82bを外界から覆うようにして側面板82の面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)の表面(外界に面する側)に配設されている。
従って、側面蓋(蓋体)83を開いた状態で、面スピーカ95から音を放出する場合、凹部82bは、面スピーカ95の背面側の空気層として作用する。
面スピーカ95の背面と凹部82bの底面とが、空気層を介して対向配置されることにより、空気層が存在しない場合に比べて、面スピーカの振動板と空気層とによる共振周波数が低い方にシフトする。
【0062】
この凹部82bは、図示のように、凹部82bの底面に形成された多数の透孔(音孔)82cにより音響伝搬空間102に連通しているため、実質的に空気層の厚みが増すことになり、共振周波数がさらに低くなる。
なお、面スピーカ95の背面から出力された音を楽器本体部の内部空間に伝搬させる必要がない場合、透孔(音孔)82cは不要である。
【0063】
次に、側面蓋83の構造を、図8と図9を参照して説明する。
側面蓋83は、背面板90に隣接する側面板82の一辺において、図9(a)に示す蝶番104により、直線軸C-Cを中心に回動自在に取り付けられる。側面蓋(蓋体)83は、直線を軸として回転することにより面スピーカ95が配設された側面板82(左側面部又は右側面部)を外界に対し開閉可能にする。面スピーカ95は、側面蓋83が開かれたときに外界に露出する。図8の一点鎖線で示す側面蓋83は、直角に開かれた状態を示している。
なお、上述した側面蓋(蓋体)83は、対応する側面板82の形状に合わせて平板(直方体)である。しかし、三角形以上の多角形の平面を備える多角形平板、半円板の形状であってもよい。側面蓋(蓋体)83の回転軸は、多角形平板、半円板の一辺であって、例えば、側面部と多角形面、半円面とが接する辺である。
【0064】
82a,83aは、側面蓋83を開閉する際に、演奏者が指先をかけるための取っ手凹部である。96は解除ボタンである。
図9(b)に示す、側面蓋83が閉じられた状態において、側面板82の枠体部83cの裏面に形成された係合突起(弾性変形部83e、係合部83f)の係合部83fが、側面板82の係着部82gの角部に係合することにより、係合状態が維持される。
側面板82の枠体部82dには、貫通孔82fが形成され、この貫通孔82fは、段差面を有し、側面板82の背面側が広くなっており、この段差面が上述した係着部82gを形成する。
【0065】
また、貫通孔82hは、枠体部82dの前方側(演奏者側)に形成され、上述した段差面と平行である。貫通孔82hには解除ボタン96が嵌め込まれている。貫通孔82hは、前方側に広く形成され、ここに復帰バネ105がある。
解除ボタン96の摘み部96aを押圧すると、作動子96bが、係合部83fを押圧するので、係合部83fと係着部82gとの係合が外れる。そのため、演奏者が取っ手凹部83aに指を掛けて、側面蓋83を開くことができる。摘み部96aの押圧を止めると、復帰バネ105により作動子96bが復帰する。その結果、再び、側面蓋83を閉じたときに、係合部83fと係着部82gとが係合し、閉じた状態を維持する。
【0066】
図8、図9(a)、図9(b)のいずれにも示されるように、側面蓋83の裏面部には、凹部83bが形成され、その周囲が枠体部83cとなる。
ここで、側面蓋83の枠体部83cにおける四囲の側面の内、少なくとも一側面(図8、図9(b)の831)に、多数の透孔(音孔)83dが設けられてもよい。これらの透孔83dは凹部83bから上述した側面831までを貫通することにより、凹部83bから外界に抜ける音孔となる。
【0067】
次に、図9(a)を参照し、面スピーカ95の背面から出力された音が電子楽器本体部の内部空間を伝搬する経路を説明する。
面スピーカ95は、透孔(音孔)82cが存在することにより、電子楽器本体部の内部空間と外界とを仕切る位置に配設されていることになる。面スピーカ95の背面から出力された音は、音響伝搬空間102に伝搬する。なお、多数の透孔82cを1つの大きな透孔にし、側面板82を単なる枠体部としてもよい。
【0068】
前記面スピーカ95が配設された左側面部及び又は右側面部82は、音響伝搬空間(楽器本体部の内部空間)102に開口し、音響伝搬空間102は、音響反射板101を有している。この音響反射板101は、面スピーカ95の面に対し斜めに配設されてもよい。
従って、左側面部及び又は右側面部82において、電子鍵盤楽器の側面から放出される音に加えて、面スピーカ95から出力された音が音響伝搬空間102を伝搬し、音響反射板101で反射し、電子楽器本体部の筐体を振動させて外界に音を2次放出させたり、音響伝搬空間(内部空間)102が外界に解放されている箇所から外界に音を放出させたりする。従って、電子鍵盤楽器の筐体全体から出力される音のレベルが大きくなる。
【0069】
音響伝搬空間102と音響反射板101を、より具体的に説明する。
背面板90と下前板94との間の電子楽器本体部の内部空間において、側面板82に配設された面スピーカ95の面に対し、図示のものでは、前方斜め方向(面スピーカ95と音響反射板101とのなす角度が0度を超え、90度未満)に傾けて取り付けられている。音響反射板101は、下前板94、側面板82とともに、内部空間の一部に音響伝搬空間102を形成する。
【0070】
この音響反射板101は、側面板82に配置された面スピーカ95から出力される音を反射させることにより、音の伝搬方向を左の方向から前方の方向に変更させる。下前板94には、複数の透孔(音孔)94aが設けられ、これらの透孔94aを介して前面に音を放出する。103はネットであって、下前板94の前面を覆い、音は透過させるが、異物が音響伝搬空間102に侵入しないようにする。
【0071】
図9(a)は、鍵盤部の棚板より下の水平断面図であった。これに対し、鍵盤部の棚板より上の内部空間は、鍵盤蓋86を収納する機構部品や、電子回路ブロック等が設置されているが、音響伝搬空間とし、上前板88等から外界に音を放出することも可能である。しかし、図示の音響反射板101を棚板よりも上に延長することはむずかしい。
そのため、側面板82は、鍵盤部の棚板より上においては、透孔82cを設けないようにして、内部空間への伝搬路をなくしてもよい。しかし、凹部82bについては、鍵盤部の棚板より下から連続して棚板より上にも形成しておくことが望ましい。
【0072】
面スピーカ95が配設された左側面部及び又は右側面部82において、側面蓋83を閉じた状態で面スピーカ95を動作させてもよい。
この場合、面スピーカ95は音響伝搬空間(内部空間)102に音を放出する。その際、面スピーカ95の前面と側面蓋(蓋体)83の裏面とが空気層を介して対向配置されることが望ましい。
空気層が存在しない場合に比べて、面スピーカの振動板と空気層とによる共振周波数を低い方にシフトさせ、低音域の音圧の低下を少なくする。
【0073】
そのための第1の具体例としては、側面蓋(蓋体)83の裏面部に凹部83bが形成され、これが、面スピーカ95と側面蓋(蓋体)83の裏面部との間に十分な距離の空気層として機能する。
ここで、側面蓋83の枠体部83cの一側面831に、多数の透孔(音孔)83dが設けられている場合、側面蓋83の凹部83bにおける空気層の薄さを補うことができる。
【0074】
第2の具体例は、図示を省略して説明する。側面蓋(蓋体)83の裏面部は面一(図9の側面蓋83とは異なり、凹部83bがない)である。面スピーカ95が配設された側面部82が、面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)を有し、ここに、凹部82bが形成され、この凹部82bの底面(図9の側面板82において、複数の透孔82cがある板面の位置)に面スピーカ95を配設する。
【0075】
言い換えれば、面スピーカ95は、面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)の表面(外界に面する側)に対し、音響伝搬空間(楽器本体部の内部空間)102側に後退して配設される。その結果、側面板82の表面(外界に面する側)から、後退した面スピーカ95の前面までの距離に応じた厚みの空気層ができるから、面スピーカ95の前面と側面蓋83の裏面部との間に十分な距離が確保される。
このとき、図9の側面板82における複数の透孔82cがある板面は、除去されるか、さらに、音響伝搬空間(楽器本体部の内部空間)102側に後退して形成される。
【0076】
第3の具体例は、上述した第1の具体例と第2の具体例とを合わせた例である。
面スピーカの取付位置と側面蓋(蓋体)83の裏面部との両方が対向して凹んでいるので、面スピーカ95と側面蓋83の裏面部との間に層の厚い空気層が確保されるものの、電子鍵盤楽器の上面から見て、使用時に、見かけ上大きく凹んでいる印象を与えない。
【0077】
面スピーカ95は、側面板82に配設するに代えて、左右の少なくとも一方の側面蓋83の裏側に設けてもよい。この場合、側面蓋(蓋体)83の枠体部83cが、面スピーカ取付枠となる。
上述した側面蓋83は、側面板82に対し、最大135度まで開かせることが可能である。蓋体の回転角度(開き角度)を演奏者が調整することにより、面スピーカ95の前面から出力される音の伝搬方向を変更できる。
この場合も、側面蓋(蓋体)83の凹部83bは、面スピーカ95の背面に対する空気層として作用する。側面蓋83の側面に多数の透孔83dが設けられている場合は、空気層の薄さを補う。
一方、面スピーカ95を側面蓋83の裏側に設けた場合も、側面蓋(蓋体)83を閉じた状態で面スピーカ95を動作させるときは、側面板82に凹部82bと多数の透孔82cを設け、面スピーカ95の前面から出力される音を、音響伝搬空間102に伝搬させることができる。
【0078】
最後に、側面蓋(蓋体)83が音響反射板となることについて説明する。面スピーカ95は、図9に示される通り、左側面部及び又は右側面部82の面スピーカ取付枠(枠体部82d,枠体部82e)に取り付けられている。
側面蓋83を開いて面スピーカ95を動作させれば、側面蓋(蓋体)83の裏面は、音響反射面として利用できる。このとき、側面蓋(蓋体)83の裏面が面一であってもかまわない。
蓋体の回転角度(開き角度)を演奏者が調整することにより、面スピーカ95の前面から出力される音の反射方向が変更され、反射後の音の伝搬方向を変更できる。
【0079】
ここで、図9に示した背面板90にも面スピーカ(背面スピーカとなる)を設ければ、側面蓋83の前面及び背面の両方を音響反射板として利用し、側面蓋83の開き角度の調整により、面スピーカ95(側面スピーカとなる)と背面スピーカとのいずれか一方に音響反射板を強く作用させたり、両方に作用させたりすることができる。
【0080】
図10は、本願発明の第3の実施形態であるポータブルシンセサイザ型電子鍵盤楽器の外観図である。
図10(a)は斜視図、図10(b)は図10(a)の切断線から矢視Xの方向を見た垂直断面の概要図である。
図10(a)において、111は側面板(側面部)、112は天板(屋根部)、113は底板(底面部)、114は鍵盤部である。115は上前部である。側面部は、側面板111に加えて上前部115、後傾斜板112b、後板113c、下前板113dを含む。上前部115には上前板118がある。
【0081】
側面板(側面部)111、天板(屋根部)112、底板(底面部)113、鍵盤部114、上前板118と内部空間124を有するものが楽器本体部であり、電子楽器の筐体でもある。楽器本体部は、鍵盤部114に対するユーザの鍵操作により楽音信号を生成する電子回路ブロック(楽音信号生成部)を内蔵する。
ここで、天板112は、その上面において前方左領域、すなわち、鍵盤の低音域にのみ、1又は複数本の線状孔112aが形成され、前方の中央寄り左右に、操作パネル116a,116bを備え、後方の中央にディスプレイ117と操作パネル116cを備えている。一方、天板112は、図10(b)に示すように、その後方が後傾斜板112bとなる。
底板113は、基板113aに対し、前方傾斜板113bと後板113cとが組み立てられたものであり、この前方傾斜板113bは下前板113dと一体成形されている。基板113aの後方領域には、楽音信号生成部等の電子回路ブロック123が載置されている。
【0082】
楽器本体部の側面部は、屋根部(天板112)と鍵盤部114との間に上前部115を有し、面スピーカ132がこの上前部115に配設される。
図10(b)に示すように、面スピーカパネル119は、筐体の一面をなし、枠体131に面スピーカ132が張設され、この面スピーカ132がパンチングパネル板133で覆われたものである。天板112と鍵盤部114との間に、上前板118を有している。
この実施の形態では、面スピーカパネル119が、上前板118の前面に取り付けられることにより、面スピーカ132は、上前部115のような、楽器本体部の一部に配設される。
面スピーカ132から出る平面波は鋭い指向性があるから、演奏者に聞こえがよい面スピーカ132の配置は上前部115となる。従って、上前部115の高さが低いため、広い面積が確保できない場合でも、鋭い指向性のために、演奏者に対して伝搬効率がよい。
【0083】
この上前板118は、筐体の左右方向に延設された長尺体であり、音を通過させる1又は複数の透孔(音孔)118aが形成された格子状の骨組みを有する。詳細は図11、図12を参照して後述する。後述する例では、上前板118のほぼ全面が格子部118bである。
加えて、コーンスピーカ120が、上述した上前部(側面部)115における楽器本体部の左側領域に配設されている。
【0084】
面スピーカ132は、電子楽器筐体の内部空間124と外界とを仕切る位置に配設され、面スピーカ132から出力された音が内部空間124と外界との双方に伝搬する。
このような面スピーカ132の配設位置において、面スピーカ132の前面から出力される音は、パンチングパネル板133を経て外界に放出される。加えて、面スピーカ132の背面から出力される音は、上前板118の多数の透孔118aを経て、内部空間124に伝搬し、筐体部分、例えば、天板112や基板113a等を振動させて外界に音を2次放出させたり、内部空間124が外界に解放されている複数の線状孔112a等から外界に放出させたりする。
【0085】
鍵盤部114の鍵盤フレーム114aは、基板113aと前方傾斜板113bの上に取り付けられ、鍵盤フレーム114aは、垂直リブ114bにより補強され、白鍵114c及び黒鍵114dを支持する。
コーンスピーカ120は、基板113aに立設されたフレーム板121に取り付けられ、その前面開口部120aの中心軸方向は、前方斜め上である。従って、前面開口部120aは、上前板118の背面及び上述した複数の線状孔112aの方向を向いている。また、上前板118の下部は、保持部材122によりフレーム板121に支持される。
【0086】
面スピーカパネル119とコーンスピーカ120とは、上前部115を挟んで、上前部115の前面と背面とに配設されている。
コーンスピーカ120は、その前面開口部120aと1又は複数の透孔118aによる開口領域の一部とが対向するように配設される。言い換えれば、前面開口部120aは、上前板118における複数の透孔118aの面積の総和である音響透過面積の一部と対向する。図示の例では、前面開口部120aが、鍵盤部114の鍵配列方向における、楽器本体部の左端部領域内に位置するように配設される。
【0087】
一方、面スピーカパネル119の面スピーカ132は、その振動面と1又は複数の透孔118aによる開口領域の半分以上とが対向するように配設されている。言い換えれば、面スピーカ132の背面は、上述した音響透過面積の半分以上と対向するようにする。
図示の例では、その振動面が上前板118の長手方向に延び、鍵盤部114の鍵配列方向の幅とほぼ同じ幅にわたって、上前板118の前面に配設されている。鍵盤部114の両側に拍子木114e,114fがあり、拍子木114e,114fを含めた鍵盤部114の鍵配列方向の幅が、面スピーカ132とほぼ同じ幅になる。
従って、面スピーカ132の横幅を長くして面スピーカ132の面積を広くとることができるので、低音域の音圧を上げることができる。
【0088】
面スピーカパネル119とコーンスピーカ120とは、演奏者の側から見て重なっている。従って、上述したコーンスピーカ120の前面開口部120aに対向する開口領域と、面スピーカ132に対向する開口領域とは、少なくとも部分的に重複する。図示の例では、完全に重複する。
上述した面スピーカ132及びコーンスピーカ120は、電子回路ブロック(楽音信号生成部)123から出力された楽音信号に応じた音を出力する。
面スピーカ132は、その前面と背面とから音が放出される。上前板118に形成された1又は複数の透孔118aは、背面から放出される音を筐体の内部空間124側に逃がす働きをするので、面スピーカ132の背面側の空気層が薄くても、これを補って、面スピーカの振動板と空気層とによる共振周波数が高くならない。
コーンスピーカ120の前面開口部120aから放出された音は、面スピーカ132を透過して前面に放出されるとともに、天板112の線状孔112aからも放出される。
【0089】
なお、面スピーカは、また、底板(底面部)の前方傾斜板113bに配設されてもよく、また、後傾斜板112bに配設されてもよい。図示の後板113cは、その前後に上下2段になっており、その上段である後上底板113eに面スピーカを配設してもよい。面スピーカは、複数の箇所に配設されて、電子楽器の筐体に収容されてもよい。
図1に示した実施形態において、鍵盤部4の直下の棚板3に多数の透孔(音孔)を開けて、面スピーカを配設する例を説明した。上述した前方傾斜板113b、後傾斜板112b、後上底板113eにも、同様に多数の透孔(音孔)を開けて面スピーカを配設することができる。
一方、コーンスピーカ120は、基板(棚板)113aに配設されてもよく、電子楽器の複数の箇所に配設されてもよい。
【0090】
図11は、図10に示した実施形態における面スピーカパネル119の取付構造を示す第1の説明図である。
図11(a)は図10(b)に示した垂直断面の部分拡大図、図11(b)は保持部材122の取付構造を示す斜視図である。
図示の例では、上前板118が天板112と一体的に成型されている。天板112に複数の横長の線状孔112aが設けられ、その内、一番演奏者側に近い孔は、1段下がった線状板112cとして形成されている。
上前板118は、全体として、複数の透孔118aが形成された格子部118bを有し、格子部118bの周囲領域に取付孔118c,118dが形成されている。
【0091】
上前板118の下部は、前方に折り返して段差部118eを有し、段差部118eの下面において、図示しないネジ部材により保持部材122に取り付けられる。
保持部材122は、その前部において、縦に直角に折り曲げられ、さらにその下部が水平に切り起されて取付部122aとなり、ここに上前板118を取り付けるためのネジ孔122bが形成されている。
保持部材122は、その後部において、縦に直角に折り曲げられて取付部122cがあり、この保持部材122を、図10(b)に示したフレーム板121に取り付けるための取付孔122dが形成されている。
【0092】
面スピーカパネル119の枠体131は、中央に大きな矩形の開口部131aを備えた、面スピーカ132の支持体である。その上縁部と下縁部とにおける、鍵盤部114の鍵配列方向の2箇所以上において、係合突起が背面側に形成されている。この係合突起は、弾性変形部131bと係止部131c、弾性変形部131eと係止部131fにより構成されている。
【0093】
面スピーカ132は、枠体131の前面から枠体131の上縁部、下縁部を回って枠体131の背面まで張設されて接着剤等により枠体131に固着される。
パンチングパネル板133の上端部133aは、枠体131の上部の曲面に沿って曲面を描き、天板112の前面に沿って直角に折り曲げられ、次に、枠体131の上部の前面に接するように折り曲げられている。ネジ部材135が、枠体131の取付孔131dを通して面スピーカ132、パンチングパネル板133の折り返し部のネジ孔133bまでねじ込まれる。
一方、パンチングパネル板133の下端部133cは、面スピーカ132が固着された枠体131の前面から直角に折り曲げられている。この下端部133cの上面は、取付部133dが面スピーカ132に接した状態で、面スピーカ132の底面btと重なり合う。
【0094】
図12は、図10に示した実施形態における面スピーカパネル119の取付構造を示す第2の説明図である。
ネジ部材135により、枠体131、面スピーカ132が、図11に示したパンチングパネル板133の上端部133aにねじ止めされる。
また、パンチングパネル板133の取付部133dが、下端部133cからの切り起しにより形成され、ここにネジ孔133eが形成されている。ネジ部材143により、取付孔131gから、枠体131、面スピーカ132を経て、パンチングパネル板133のネジ孔133eにねじ止めされる。その結果、パンチングパネル板133の下端部133cが面スピーカパネル119の底面となる。
なお、上述したパンチングパネル板133は、面スピーカ132を保護し、音を透過するものであればよく、図示しない枠体にネットを張設したものや、合成樹脂製の板材で、複数の線状の透孔(音孔)が形成されたスピーカグリルであってもよい。
【0095】
上述した面スピーカパネル119(図12)は、その係合突起(弾性変形部131bと係止部131c、弾性変形部131eと係止部131f)を、それぞれ、上前板118の取付孔(係着部)118c(図11),118dに装着する。係止部131c,131fが取付孔(係着部)118c,118dの前面に押し込まれることにより、弾性変形部131b、131eが撓み、係止部131c,131fが取付孔118c,118dを貫通し、弾性変形部131b、131eの撓みが若干戻ることにより、係止部131c,131fが取付孔118c,118dの背面の角部に係合固定される。面スピーカパネル119の底面である、パンチングパネル板133の下端部133cは、上前板118の段差部118eに載置される。
このようにして、面スピーカパネル119を上前板118に対し、簡単に取付け固定することができる。
【0096】
図示の例では、係止部の側に弾性変形部131b,131eがあって、係合突起を構成する。しかし、係着部の側に弾性変形部があってもよい。例えば、上前板118の側に、上述した係合突起(弾性変形部131bと係止部131c、弾性変形部131eと係止部131f)と同様な形状の係合突起(弾性変形部と係止部)を有し、枠体131の側には、上述した取付孔118c,118dと同様な形状の取付孔を有する場合である。また、係止部の側と係着部の側の両方に弾性変形部があってよい。
【0097】
面スピーカパネル119の背面と上側面とが接する辺において、図示の例では面スピーカ132の端部上の鍵配列方向に防振部材141が貼設される。面スピーカパネル119の背面と底面とが接する辺において、図示の例では面スピーカ132の端部上の鍵配列方向に防振部材142が貼設されている。これらの防振部材141,142は、例えば防振ゴム部材であり、面スピーカパネル119が上前板118に装着された後において、両者の隙間に介在し、面スピーカパネル119が不用意に振動したり、外れたりしないようにする。
【0098】
上述した面スピーカパネル119は取り外すこともできる。図11において、上述した係止部131cと取付孔118cとの係合箇所の近傍(係合に作用できる程度の近傍)において、線状孔112aと線状板112cとの間に僅かな隙間が形成されている。ここに、マイナスドライバ134のような細長い工具を差し込み、係合突起の係止部131cを押し下げて、弾性変形部131bを撓ませ、係止部131cと取付孔118cとの係合を解除し、係止部131cを取付孔118cから引き抜く。
その後、面スピーカパネル119を上方に浮かすことにより、下の係合突起の係止部131fと取付孔118dとの係合が解除される。このようにして、枠体131の係合突起を取付孔118c,118dから離脱させ、面スピーカパネル119を上前板118から外すことができる。
【0099】
上述した説明において、面スピーカ132への駆動電流の供給は、面スピーカ132から引き出された入力線と、電子回路ブロック123にある駆動回路の出力線とを、プラグ,ソケット等のコネクタを用いて電気的に接続すればよい。
あるいは、図示を省略するが、上述した係合突起(弾性変形部131b,係止部131c、弾性変形部131e,係止部131f)、及び、取付孔118c,118dに、それぞれ電気的接触部材を設け、係合突起と取付孔とを、機械的な結合部材とするに加えて、電気的コネクタ(プラグ及びソケット)とすることもできる。
上述した面スピーカ132は、図7に示した面スピーカ7のように、モノラル信号の供給を受けてよい。しかし、面スピーカ132は、鍵配列方向に長いため、左チャンネル用の面スピーカ132Lと左チャンネル用の面スピーカ132Rとに分けた面スピーカパネル119として上前板118に装着したり、面スピーカパネル119自体を左チャンネル用、右チャンネル用に分けて、上前板118に装着したりしてもよい。その際、図10(a)に示した左側領域にあるコーンスピーカ120を、上前部(側面部)115の右側領域にも配設し、これらをステレオスピーカとしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…側面板、2…屋根板、2a…大屋根板、2b…前屋根板、2c…当接部、3…棚板、4…鍵盤部、5…鍵盤蓋、6…譜面板、7…面スピーカ、8…内蓋板、9…収容部、10…突上棒、10a…突上棒下部、10b…突上棒上部、10c…先端、10d…上端部、11…ペダルユニット、11a…ペダル、11b…ペダル箱、11c…ペダル脚、12…脚柱、13…キャスタ、14,14a〜14d…リンク機構、15…リンク、15a,15b…軸受、16,22…凹部、16a,22a…面、21…蝶番、22…凹部、23,24…軸、25…角部、
30…面スピーカ、31…第3の絶縁性シート、32…第1の固定電極シート、32a…貫通孔、33…第1の絶縁性シート、34…振動電極シート、35…第2の絶縁性シート、36…第2の固定電極シート、36a…貫通孔、37…第4の絶縁性シート、38a〜38h,39a〜39h…接着層、
40…面スピーカ、41a,41b,41c…接着層、
50A,50B…面スピーカ、511〜515…面スピーカユニット、52…連接部、531〜534…面スピーカユニット、54a,54b…連接部、54c…周縁部、
61…検出部、62…制御部、63…音源部、64…操作子、65…自動演奏部、66…曲データ記憶部、67…MIDIインタフェース、68L,68R,70L,70R…増幅器、69L,69R…外部端子、70L,70R…増幅器、71L,71R…ダイナミック型コーンスピーカ、72…混合部、73…増幅器、74…昇圧トランス、75…バイアス直流電源、76…抵抗器、77,78,79…端子、
81…脇側面板、82…側面板、82a…取っ手凹部、82b…凹部、82c…透孔、82d,82e…枠体部、82f…貫通孔、82g…係着部、82h…貫通孔、83…側面蓋、83a…取っ手凹部、83b…凹部、83c…枠体部、831…枠体部83cの一側面、83d…透孔、83e…係合突起、84…前脚、85…ステー、86…鍵盤蓋、87…口棒、88…上前板、89…譜面受、90…背面板、91…天板、92…譜面板、93…ペダルユニット、93a…ペダル、94…下前板、94a…透孔、95…面スピーカ、96a…摘み部、96b…作動子、96…解除ボタン、97,98…コーン型スピーカ、101…音響反射板、102…音響伝搬空間、103…ネット、104…蝶番、105…復帰バネ、
111…側面板、112…天板、112a…線状孔、112b…後傾斜板、112c…線状板、113…底板、113a…基板、113b…前方傾斜板、113c…後板、113d…下前板、113e…後上底板、114…鍵盤部、114a…鍵盤フレーム、114b…垂直リブ、114c…白鍵、114d…黒鍵、114e,114f…拍子木、115…上前部、116a,116b,116c…操作パネル、117…ディスプレイ、118…上前板、118a…透孔、118b…格子部、118c,118d…取付孔、118e…段差部、119…面スピーカパネル、120…コーン型スピーカ、120a…前面開口部、121…フレーム板、122…保持部材、122a…取付部、122b…ネジ孔、122c,122d…取付孔、123…電子回路ブロック、124…内部空間、131…枠体、131a…開口部、131b…弾性変形部、131c…係止部、131d…取付孔、131e…弾性変形部、131f…係止部、131g…取付孔、132,132L,132R…面スピーカ、133…パンチングパネル板、133a…上端部、133b…ネジ孔、133c…下端部、133d…取付部、133e…ネジ孔、134…マイナスドライバ、135…ネジ部材、141,142…防振部材、143…ネジ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面部と屋根部と底面部と鍵盤部を有する楽器本体部と、前記鍵盤部に対する鍵操作により楽音信号を生成する楽音信号生成部を有する電子鍵盤楽器において、
1又は複数の面スピーカが、前記側面部と前記屋根部と前記底面部の少なくとも1つに配設され、前記楽音信号生成部により生成された楽音信号に応じた音を出力する、
ことを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項2】
前記屋根部は、前記面スピーカが配設された屋根板を有し、
前記屋根板は、前記楽器本体部に対し、当該屋根板の1辺に沿った軸を中心に回動自在に取り付けられ、前記楽器本体部の上部分を開閉し、
前記屋根板に配設された面スピーカは、前記屋根板の裏面に沿って配設され、前記屋根板の回動により前記楽器本体部の上部分が開かれたときに外界に露出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項3】
前記面スピーカは、内部空間と外界とを仕切る位置に配設され、当該面スピーカから出力された音が前記内部空間と前記外界との双方に伝搬する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項4】
前記側面部は、左側面部及び右側面部を有し、
前記面スピーカ及び該面スピーカを前記外界に対し開閉可能にする蓋体が、前記左側面部又は前記右側面部の少なくとも一方に配設される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項5】
前記蓋体は、直線を軸として回転するものであり、前記面スピーカが配設された左側面部及び又は右側面部を前記外界に対し開閉可能にする、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項6】
前記側面部は、左側面部、右側面部、及び、背面部を有し、
前記面スピーカは、前記左側面部又は前記右側面部の少なくとも一方、及び、前記背面部に配設され、
前記面スピーカが配設されている左側面部及び又は右側面部と前記背面部とが隣設する辺において、前記辺に沿った軸を中心に回転する音響反射板を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項1】
側面部と屋根部と底面部と鍵盤部を有する楽器本体部と、前記鍵盤部に対する鍵操作により楽音信号を生成する楽音信号生成部を有する電子鍵盤楽器において、
1又は複数の面スピーカが、前記側面部と前記屋根部と前記底面部の少なくとも1つに配設され、前記楽音信号生成部により生成された楽音信号に応じた音を出力する、
ことを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項2】
前記屋根部は、前記面スピーカが配設された屋根板を有し、
前記屋根板は、前記楽器本体部に対し、当該屋根板の1辺に沿った軸を中心に回動自在に取り付けられ、前記楽器本体部の上部分を開閉し、
前記屋根板に配設された面スピーカは、前記屋根板の裏面に沿って配設され、前記屋根板の回動により前記楽器本体部の上部分が開かれたときに外界に露出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項3】
前記面スピーカは、内部空間と外界とを仕切る位置に配設され、当該面スピーカから出力された音が前記内部空間と前記外界との双方に伝搬する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項4】
前記側面部は、左側面部及び右側面部を有し、
前記面スピーカ及び該面スピーカを前記外界に対し開閉可能にする蓋体が、前記左側面部又は前記右側面部の少なくとも一方に配設される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項5】
前記蓋体は、直線を軸として回転するものであり、前記面スピーカが配設された左側面部及び又は右側面部を前記外界に対し開閉可能にする、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項6】
前記側面部は、左側面部、右側面部、及び、背面部を有し、
前記面スピーカは、前記左側面部又は前記右側面部の少なくとも一方、及び、前記背面部に配設され、
前記面スピーカが配設されている左側面部及び又は右側面部と前記背面部とが隣設する辺において、前記辺に沿った軸を中心に回転する音響反射板を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−22038(P2012−22038A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157825(P2010−157825)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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