説明

電子顕微鏡

【課題】コンタミネーションによる分析誤差を回避し、観察データや分析データの信頼性を向上させることができる電子顕微鏡を提供することにある。
【解決手段】
荷電粒子線装置は、荷電粒子線を集束させて試料に照射する対物レンズを有する照射系と、荷電粒子線を偏向走査する偏向走査系と、荷電粒子線の照射により試料から発生する信号を検出して走査像を生成する走査像生成系と、を有する。試料の分析を開始する前に得た第1の画像と試料の分析を開始した後に得た第2の画像を比較する。それによって、試料の像の変化が観測されたら、試料の表面にコンタミネーション被膜を生成するコンタミネーション被膜の生成処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走査透過と透過形電子顕微鏡における、走査像や走査透過像と透過像と特性X線によるMapping像と画像データと陰極線光によるカソードルミネッセンス(CL)像におけるコンタミネーションによる信頼性表示とコンタミネーション低減に関する。
【背景技術】
【0002】
図14を参照して電子顕微鏡におけるコンタミネーションの発生について説明する。電子顕微鏡では、試料台の上に配置された試料は、高真空の雰囲気内にある。図示のように、高真空雰囲気下にて電気的に正に帯電した微粒子が発生する。このような微粒子は、試料以外に由来するものもあるが、大部分は、試料の内部から真空雰囲気中に放出した陽イオンである。正に帯電した微粒子は、電子線に引き付けれ、試料表面の電子線照射領域にて固定される。
【0003】
こうして観察対象物に微粒子が付着することをコンタミネーションと称する。図15aは、コンタミネーションが発生していないときの観察対象物を模式的に示し、図15bは、コンタミネーションが発生しているときの観察対象物を模式的に示す。図示のように、コンタミネーションによって観察対象物が大きくなっている。これは微粒子が電子線照射によって焼きついて固定化されたからである。
【0004】
電子線によるコンタミネーションの発生は、走査型電子顕微鏡ばかりでなく、走査透過型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡でも起きる。更に、荷電粒子線を用いる荷電粒子線装置においてもコンタミネーションは発生する。電気的に正の荷電粒子線を用いる場合には、負に帯電した微粒子が付着することによって、観察対象物が大きくなる。
【0005】
ここでは、コンタミネーションによって観察対象物が大きくなる場合を示した。即ち、微粒子が観察対象物に付着して観察対象物が大きくなる場合を示した。しかしながら、微粒子が観察対象物に衝突して観察対象物が小さくなる場合もある。これはエッジングと称される。
【0006】
いずれにしても、コンタミネーションによって、観察対象物の寸法が変化する。従って、コンタミネーションを放置すると、観察対象物を正確に観察することができなくなる。
【0007】
図9aは、コンタミネーションが発生していないときの半導体の表面を示し、図9bは、コンタミネーションが発生しているときの半導体の表面を示す。半導体の場合には、特定の材料の部分にコンタミネーションが発生する。図9bは、コンタミネーションが生じた部分の点分析901の結果を示す。点分析の結果では、コンタミネーションの部分にピークが現れる。従って、半導体の場合、観察対象物が拡大することはないが、正確な像が得られなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子顕微鏡では、走査像、走査透過像、又は、透過像を得ることができる。更に、特性X線によるMapping像、画像データ、陰極線光によるカソードルミネッセンス(CL)像等を得ることができる。
【0009】
しかしながら、これらの像では、コンタミネーションによる画像変形や分析結果の変性の信頼性を証明することができない。また、コンタミネーション付着により画像の明るさが変動するため、従来の画像処理方法では、相関計算の精度が著しく低下する問題があった。
【0010】
本発明の目的は、コンタミネーションによる分析誤差を回避し、観察データや分析データの信頼性を向上させることができる電子顕微鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の荷電粒子線装置は、荷電粒子線を集束させて試料に照射する対物レンズを有する照射系と、荷電粒子線を偏向走査する偏向走査系と、荷電粒子線の照射により試料から発生する信号を検出して走査像を生成する走査像生成系と、を有する。
【0012】
試料の分析を開始する前に得た第1の画像と試料の分析を開始した後に得た第2の画像を比較する。それによって、試料の像の変化が観測されたら、試料の表面にコンタミネーション被膜を生成するコンタミネーション被膜の生成処理を行う。
【0013】
コンタミネーション被膜の生成処理は、荷電粒子線の走査を停止し、且つ、対物レンズを生成する対物レンズコイルに対する励磁電圧の供給を停止する。又は、コンタミネーション被膜の生成処理は、荷電粒子線の走査を停止し、且つ、対物レンズを生成する対物レンズコイルに対する励磁電圧を最大にする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、コンタミネーションによる分析誤差を回避し、観察データや分析データの信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1を参照して本発明による透過走査型電子顕微鏡の例を説明する。本例の透過走査型電子顕微鏡装置は、電子銃1、第1及び第2の照射レンズコイル2、3、第1及び第2の偏向コイル4、5、対物レンズコイル6、第1及び第2の電磁式試料イメージ移動用コイル7、8、第1及び第2の中間レンズコイル9、10、第1及び第2の投射レンズコイル11、12、励磁電源13〜23、デジタルアナログ変換器(DAC)24〜34、マイクロプロッセサ35、記憶装置36、演算装置37、CRTコントローラ38、モニタ(CRT)39、インターフェース(I/F)40〜41、倍率切替用ロータリーエンコーダ42、入力用ロータリーエンコーダ43、キーボード44、マウス45、RAM46、ROM47、画像取込みインターフェース48、TVカメラ制御部49、及び、TVカメラ50を有する。TVカメラ50は、光学レンズ51及びCCD52を有する。対物レンズコイル6は強励磁レンズのため、試料の上側と下側にレンズが形成される。光軸上には、試料ステージ53及びシンチレータ54が設けられている。本例の透過走査型電子顕微鏡装置は、更に、2次電子検出器61、X線検出器62、カソードルミネッセンス(CL)検出器63、暗視野像検出器64、及び、明視野像検出器65を有する。
【0016】
本例の透過走査型電子顕微鏡によって、透過像、透過走査像、走査像、元素分布像、蛍光像、等が得られる。透過走査像、走査像、元素分布像、及び、蛍光像を走査像と総称する。尚、ここでは、電子顕微鏡について説明するが、本発明は電子顕微鏡ばかりでなく荷電粒子線装置にも適用可能である。
【0017】
図2(a)は、本例の電子顕微鏡装置のうち透過走査像を得るために使用する透過走査型電子顕微鏡部を示す。透過走査型電子顕微鏡部は、電子銃1、収束電子レンズ、偏向コイル4、5、2次電子検出器61、X線検出器62、カソードルミネッセンス(CL)検出器63、暗視野像検出器64、及び、明視野像検出器65を有する。2次電子検出器61によって検出された2次電子信号によって走査像が得られる。X線検出器62によって検出された特性X線によって、元素分布像(Mapping像)が得られる。X線検出器62の代わりにEDX検出器を設け、EDX検出器からの出力によって元素分布像(Mapping像)を求めてもよい。カソードルミネッセンス(CL)検出器63によって検出された陰極線光によりカソードルミネッセンス像が得られる。暗視野像検出器64、及び、明視野像検出器65によって走査透過像が得られる。
【0018】
走査像及び透過走査像を得る手順を簡単に説明する。観察者は、キーボード44及びマウス45を使用して、視野より撮像対象を探す。ROM47に格納された走査像又は透過走査像用のレンズデータを読み出し、デジタルアナログ変換器(DAC)24〜34に供給する。デジタルアナログ変換器(DAC)24〜34は、レンズ系のデータをアナログ信号に変換し、励磁電源13〜23に供給する。励磁電源13〜23は、各レンズ系のレンズコイル2、3、6、9〜12に電流を出力する。
【0019】
電子銃1によって生成された電子線は、第1及び第2の照射レンズコイル2、3により収束され、第1及び第2の偏向コイル4、5によって走査され、対物レンズコイル6によって結像され、試料ステージ53上の試料に照射される。試料から、2次電子、特性X線、蛍光が発生する。2次電子は2次電子検出器61によって検出され、特性X線は蛍光X線検出器62によって検出され、蛍光はカソードルミネッセンス(CL)検出器63によって検出される。2次電子検出器61によって得られた走査像、X線検出器62によって得られた元素分布像、及び、カソードルミネッセンス(CL)検出器63によって得られた蛍光像は、モニタ(CRT)39によって表示される。
【0020】
試料を透過した電子線のうち透過電子は明視野像検出器65によって検出され、散乱電子は暗視野像検出器64によって検出される。明視野像検出器65によって得られた明視野像及び暗視野像検出器64によって得られた暗視野像は、モニタ(CRT)39によって表示される。
【0021】
図2(b)は、本例の電子顕微鏡装置のうち透過像を得るために使用する透過型電子顕微鏡部を示す。透過型電子顕微鏡部は、電子銃1、収束電子レンズ、対物絞り、拡大レンズ、シンチレータ54、TVカメラ50を有する。
【0022】
次に、透過像を得る手順を簡単に説明する。観察者は、キーボード44及びマウス45を使用して、視野より撮像対象を探す。ROM47に格納された透過像用のレンズデータを読み出し、デジタルアナログ変換器(DAC)24〜34に供給する。デジタルアナログ変換器(DAC)24〜34は、レンズ系のデータをアナログ信号に変換し、励磁電源13〜23に供給する。励磁電源13〜23は、各レンズ系のレンズコイル2、3、6、9〜12に電流を出力する。
【0023】
試料を透過した電子線は、第1及び第2の電磁式試料イメージ移動用コイル7、8、第1及び第2の中間レンズコイル9、10、及び、第1及び第2の投射レンズコイル11、12を経由して、シンチレータ54上に投影される。シンチレータ54は、透明ガラス上に塗布された蛍光体を有する。従って、蛍光体は、試料の透過像を発光する。発光した透過像は、透明ガラスを透過し、光学レンズ51を介して、CCD52によって受光される。CCD52は、受光した透過像を電気信号に変換し、それをTVカメラ制御部49に送信する。TVカメラ制御部49は画像データを、画像取込みインターフェース48を介して、マイクロプロッセサ35、記憶装置36、及び、演算装置37に送信する。透過像は、記憶装置36に記憶され、モニタ(CRT)39によって表示される。
【0024】
図3を参照して本発明の電子顕微鏡によるコンタミネーション防止処理方法の概略を説明する。本発明によると、コンタミネーションの発生が予測されると、又は、コンタミネーションが実際に発生し始めたら、電子線の走査を停止し、対物レンズコイル6に対する励磁電圧の供給を、停止するか、又は、それを最大にする。電子線の走査を停止するには、偏向コイル4、5をオフにすればよい。
【0025】
対物レンズコイル6に対する励磁電圧の供給を停止する場合を説明する。図示のように、集束電子レンズ300によって集束された電子線束311は再び拡大して対物レンズ301に導かれる。しかしながら、対物レンズコイル6に対する励磁電圧の供給が停止されているため対物レンズ機能が生じない。そのため、拡大した電子線束312はそのまま試料302に照射される。従って、試料表面における電子線照射領域は観察視野範囲より大きくなる。
【0026】
電子線照射領域が大きくなると、電子線密度は小さくなる。例えば、対物レンズ機能が働いていない場合の電子線照射領域の面積は、対物レンズ機能が働いている場合の電子線スポットの面積の100倍以上である。従って、電子線密度は、1/100以下になる。
【0027】
電子線が照射された領域では、コンタミネーションが発生する。しかしながら、電子線密度が小さいため、コンタミネーションの発生量は僅かであり且つ緩慢である。試料表面の電子線照射領域では、コンタミネーションによる薄い層が形成される。これをコンタミネーション被膜と称することとする。コンタミネーション被膜が形成されると、通常の電子線密度の電子線を照射しても、新たにコンタミナーションが発生することがない。即ち、コンタミネーション被膜は、新たにコンタミネーションが発生することを阻止するための保護膜として機能する。
【0028】
対物レンズコイル6に対する励磁電圧を最大にする場合を説明する。この場合、対物レンズ機能が強く作用する。そのため、焦点の位置は、試料表面から遠ざかる。対物レンズ301によって焦点を結んだ電子線束313は、拡大して試料302に照射される。そのため、図示のように、電子線照射領域は観察視野範囲より大きくなる。そこで、対物レンズコイル6に対する励磁電圧を停止する場合と同様に、電子線照射領域では、コンタミネーション被膜が生成される。
【0029】
本発明によると、試料の表面にコンタミネーション被膜を生成することにより、新たにコンタミネーションが発生することを防止する。コンタミネーション被膜は、観察視野範囲より大きな領域にて生成される。
【0030】
ここでは、電子線を走査する走査型又は走査透過型について説明した。しかしながら、電子線を走査しない透過型電子顕微鏡であっても同様である。但し、透過型電子顕微鏡では、単に、対物レンズコイル6に対する励磁電圧を、停止するか、又は、最大にする。
【0031】
図4を参照して本発明の電子顕微鏡による試料の分析方法の第1の例の操作手順を説明する。ステップS101にて分析時間又は取り込みフレーム枚数を設定する。ここで、分析時間及び取り込みフレーム枚数を説明する。本例では、分析として元素分布像(Mapping像)を生成する。元素分布像を得るには2つの方法が想定される。第1の方法では、1画素毎にスキャンを行い、元素分布像を得る。これを全ての画素に対して順に実行する。1つの画素に対するスキャンの時間は比較的長いが、各画素に対して1回のスキャンを行う。この場合、1つの視野の元素分布像を得るための時間が分析時間である。第2の方法では、画素のライン毎にスキャンを行い、1フレームの元素分布像を得る。これを繰り返すことにより複数のフレームの元素分布像が得られる。これらの元素分布像を積算することによって1つの視野の元素分布像が得られる。1フレームの時間は比較的短いが複数のフレームを得る必要がある。この場合、取り込みフレーム枚数を設定する。
【0032】
ステップS102にて、一致度の閾値と照射時間を設定する。ここでは、2つの閾値を設定する。第1の閾値は、一致度の最大許容値である。第2の閾値は、一致度の最小許容値である。例えば、第1の閾値を90%、第2の閾値を85%とする。照射時間は、上述のように、コンタミネーション被膜を生成するために、電子線を試料に照射する時間である。ステップS103にて、視野探しを行い、ステップS104にて視野を決める。
【0033】
こうして観察対象物が存在する視野が決まると、ステップS105にて、画像I1を取り込む。画像I1は、走査像又は走査透過像である。こうして取り込んだ画像I1は、モニタ(CRT)39に表示され、RAM46又は記憶装置36に保存される。
【0034】
ステップS106からステップS113は、分析時間内に行う処理、又は、取り込みフレーム枚数が終了するまで行う処理である。ステップS106にて、X線検出器62によって元素分布像(Mapping像)の生成を開始する。元素分布像(Mapping像)の代わりにカソードルミネッセンス(CL)像を得てもよい。ステップS107にて、分析時間が経過した又は取り込みフレーム枚数が終了したか否かを判定する。分析時間及び取り込みフレーム枚数はステップS101にて設定した。分析時間が経過していない場合又は取り込みフレーム枚数が終了していない場合には、ステップS108に進み、分析時間が経過している場合又は取り込みフレーム枚数が終了している場合には、ステップS114に進む。
【0035】
ステップS108にて、画像I2を取り込み、保存する。画像I2は、走査像又は走査透過像である。ステップS109にて、画像I1と画像I2の一致度を計算し、それが第1の閾値より大きいか否かを判定する。ここでは、第1の閾値は90%である。一致度の計算方法は後に説明する。一致度と共に移動量の計算を行ってもよい。更に、正規化相関で計算を行ってもよい。2つの画像I1、I2の一致度が90%より大きい場合には、ステップS107に戻る。即ち、一致度が、第1の閾値を超えていれば、コンタミネーションの発生の可能性は無いと判定する。2つの画像I1、I2の一致度が90%より大きくない場合にはステップS110に進む。即ち、一致度が、第1の閾値を超えていない場合には、コンタミネーションの発生の可能性が有ると判定し、ステップS110にて、コンタミネーション低減処理を実行する。コンタミネーション低減処理は図3を参照して説明した。電子線の走査を停止し、対物レンズコイル6に対する励磁電圧の供給を停止するか、又は、それを最大にする。それによって、観察視野範囲より大きな領域にて電子線が照射される。電子線照射領域にてコンタミネーション被膜が生成される。
【0036】
ステップS111にて、コンタミネーション低減処理のための電子線の照射時間が終了したか否かを判定する。照射時間はステップS102にて設定した。照射時間が終了したらステップS112に進む。ステップS112にて、画像I3を取り込み、保存する。画像I3は、走査像又は走査透過像である。ステップS113にて、画像I1と画像I3の一致度を計算し、それが第2の閾値より大きいか否かを判定する。ここでは、第2の閾値は85%である。一致度の計算方法は後に説明する。2つの画像I1、I3の一致度が85%より大きい場合には、ステップS106に戻り、再度、元素分布像(Mapping像)を得る。コンタミネーション低減処理によって観察対象物の像が変化するが、その変化量は許容範囲であると判定し、分析を継続する。再度、元素分布像(Mapping像)を得るのは、コンタミネーション防止処理によって観察対象物の像が変化している可能性を考慮したものである。2つの画像I1、I3の一致度が85%より大きくない場合には、ステップS115に進む。
【0037】
こうして、ステップS106からステップS113の処理を行い、分析時間が経過したか、又は、取り込みフレーム枚数が終了すると、ステップS114に進む。ステップS114にて、分析処理を終了し、元素分布像(Mapping像)と一致度を、モニタ(CRT)39に表示し、RAM46又は記憶装置36に保存する。分析中に、ドリフトにより画像I2、I3が移動した場合は、イメージシフトで位置補正を行ってもよい。
【0038】
ステップS115にて、分析領域を試料の位置情報にリンクさせて保存する。更に、分析領域をカラーで画像にオーバーラップして表示する。
【0039】
図8は、画像に分析領域801、802をカラーでオーバーラップさせて表示した例を示す。図8aは、比較的大きな拡大率で表示した画像の例を示し、図8bは比較的小さな拡大率で表示した画像の例を示す。分析領域801、802の周囲に黒い領域が示されているのがコンタミネーションである。
【0040】
再び、図4に戻る。ステップS112を経由してステップS115に進んだ場合を説明する。この場合、画像I3と画像I1の一致度は85%以下である。画像I3と最初の画像I1の差異が大きいため、画像I3をデータとして保存する必要はない。この場合、分析領域を試料の位置情報にリンクさせて保存する。
【0041】
図5を参照して本発明の電子顕微鏡による試料の分析方法の第2の例の操作手順を説明する。図4を参照して説明した第1の例では、ステップS109及びステップS113の判定処理において、一致度を用いたが、本例では、ステップS209及びステップS213の判定処理において倍率誤差を用いる点が異なる。それ以外は第1の例と同様であってよい。以下に、第1の例と異なる処理のみを説明する。
【0042】
ステップS202にて、倍率誤差の閾値と照射時間を設定する。倍率誤差の閾値として2つの閾値を設定する。第1の閾値は、倍率誤差の最大許容値である。第2の閾値は、倍率誤差の最小許容値である。例えば、第1の閾値を5%、第2の閾値を10%とする。照射時間は、上述のように、コンタミネーション被膜を生成するために、電子線を試料に照射する時間である。
【0043】
ステップS209にて、画像I1と画像I2を比較し、画像I1に対する画像I2の倍率誤差を計算し、それが第1の閾値より小さいか否かを判定する。ここでは、第1の閾値は5%である。倍率誤差の計算方法は後に説明する。倍率誤差と共に移動量の計算を行ってもよい。更に、正規化相関で計算を行ってもよい。画像I1に対する画像I2の倍率誤差が第1の閾値5%より小さい場合には、コンタミネーションの発生の可能性は無いと判定する。この場合にはステップS207に戻る。画像I1に対する画像I2の倍率誤差が第1の閾値5%より小さくない場合にはコンタミネーションの発生の可能性が有ると判定する。この場合には、ステップS210に進み、コンタミネーション低減処理を実行する。
【0044】
ステップS213にて、画像I1と画像I3を比較し、画像I1に対する画像I3の倍率誤差を計算し、それが第2の閾値より小さいか否かを判定する。ここでは、第2の閾値は10%である。画像I1に対する画像I3の倍率誤差が第2の閾値10%より小さい場合には、ステップS206に戻り、再度、元素分布像(Mapping像)を得る。コンタミネーション低減処理によって観察対象物の像が変化するが、その変化量は許容範囲であると判定し、分析を継続する。再度、元素分布像(Mapping像)を得るのは、コンタミネーション防止処理によって観察対象物の像が変化している可能性を考慮したものである。
【0045】
画像I3の倍率誤差が10%より小さくない場合には、画像I3と最初の画像I1の差異が大きいため、画像I3をデータとして保存する必要はない。この場合は、ステップS215に進む。
【0046】
ステップS207の判断にて、分析時間が経過している場合又は取り込みフレーム枚数が終了している場合には、ステップS214に進む。ステップS214にて、分析処理を終了し、元素分布像(Mapping像)と倍率誤差を、モニタ(CRT)39に表示し、RAM46又は記憶装置36に保存する。
【0047】
図6を参照して本発明の電子顕微鏡による試料の分析方法の第3の例の操作手順を説明する。図4を参照して説明した第1の例では、ステップS105、ステップS108、及び、ステップS112にて、走査像又は走査透過像を取得した。即ち、画像I1、I2、I3は走査像又は走査透過像である。本例では、ステップS305、ステップS308、及び、ステップS312にて、走査像、走査透過像又は透過像を取得する。即ち、本例では、画像I1、I2、I3は走査像、走査透過像又は透過像である。透過像の場合、ステップS301にて、分析時間、取り込みフレーム及び待ち時間を設定する。待ち時間は、透過像を得る場合に像が安定化するまでの時間である。
【0048】
更に、本例では、画像I1、I2、I3が透過像の場合、ステップS306にて、X線分析装置の出力より点(スポット)分析又は線(ライン)分析を行う。
【0049】
図9は、点分析による像の例を示す。この例では、試料は、半導体である。図9aは、試料にコンタミネーションが起きていない場合の像、図9bは、試料にコンタミネーションが起きていない場合の像である。図9bの右上に点分析の結果を示すスペクトラムが示されている。
【0050】
図7を参照して本発明の電子顕微鏡による試料の分析方法の第4の例の操作手順を説明する。図6を参照して説明した第3の例では、ステップS309及びステップS313の判定処理において、一致度を用いたが、本例では、ステップS409及びステップS413の判定処理において倍率誤差を用いる点が異なる。それ以外は第3の例と同様であってよい。尚、倍率誤差を用いる点は、図5を参照して説明した第2の例と同様である。
【0051】
図10はモニタ装置に表示された入力画面の例を示す。この入力画面にて、図4のステップS101及びステップS102の処理、及び、図6のステップS301及びステップS302の処理において、パラメータの設定を行う。この入力画面には、分析時間1000、照射時間1001、一致度の第1の閾値1002、一致度の第2の閾値1003、及び、待ち時間1004を、それぞれ入力するための欄が設けられている。待ち時間1004は、透過像を得る場合に像が安定するまでの待ち時間である。
【0052】
図11はモニタ装置に表示された入力画面の他の例を示す。この入力画面にて、図5のステップS201及びステップS202の処理、及び、図7のステップS401及びステップS402の処理において、パラメータの設定を行う。この入力画面には、分析時間1100、照射時間1101、倍率誤差の第1の閾値1102、倍率誤差の第2の閾値1103、及び、待ち時間1104を、それぞれ入力するための欄が設けられている。
【0053】
以下に、(1)移動量の計算、(2)一致度の計算、及び、(3)画像間の回転量及び拡大縮小率の推定について説明する。
【0054】
(1)移動量を計算する方法(ドリフトの影響を判断)
図12を参照して、2つの像の移動量の計算方法を説明する。先ず、撮像対象物像を含む基準画像1201を設定する。基準画像1201はM×Nの画素数を有し、これを画像ベクトルf1(m、n)として記録する。次に、基準画像1201に対して移動した撮像対象物像を含む測定対象画像1202を記録する。測定対象画像1202は、M×Nの画素数を有し、これを画像ベクトルf2(m、n)として記録する。基準画像1201及び測定対象画像1202は自然画像(虚数を含まない)であり、m=0,1,2,・・・M-1、 n=0,1,2,・・・N-1である。
【0055】
基準画像1201のベクトルf1(m,n) 、及び、測定対象画像1202のベクトルf2(m,n)の離散フーリエ画像F1(m,n) 、F2(m,n)はそれぞれ式(1)、(2)によって定義される。
F1(u,v)=A(u,v)ejθ(u,v) ・・・・・(1)
F2(u,v)=B(u,v)ejφ(u,v) ・・・・・(2)
但し、u=0,1,2,・・・M-1、 v=0,1,2,・・・N-1
【0056】
ここに、A(u,v)、B(u,v)は振幅スペクトル、θ(u,v)、φ(u,v)は位相スペクトルである。位相相関では、2画像間で像の平行移動があった場合には相関のピークの位置が像の移動量だけずれる。従って、以下に説明するように、2画像間で像の平行移動量の求めるために、相関のピーク位置の移動量を求める、まず、測定対象画像1202が、x方向にr’だけ移動したと仮定して、移動後の測定対象画像のベクトルをf4(m,n)=f2(m+r’,n)とする。
【0057】
式(2)と同様に移動後の測定対象画像ベクトルf4(m,n) の離散フーリエ画像F4(u,v)を求めると式(3)が得られる。
F4(u,v)= ΣΣ f2(m+r’,n)e -j2π(mu/M+nv/N)
=B(u,v)ej(φ+2πr’u/M) ・・・・・(3)
【0058】
振幅スペクトルB(u,v)を定数と仮定すると、離散フーリエ画像F4(u,v)は、画像のコントラストに依存しない位相画像である。移動後の測定対象画像ベクトルf4(m,n)の位相画像F’4 (u,v)は、式(4)によって表される。
F4’(u,v)= ej(φ+2πr’u/M) ・・・・・(4)
【0059】
位相画像F’1(u,v)にF’2(u,v)の複素供役を乗ずることによって、式(5)の合成位相画像1203のベクトルH14(u,v)が得られる。
H14(u,v)=F’1(u,v)(F’2(u,v))*
= ej(θ-φ-2πru/M ) ・・・・・(5)
【0060】
合成位相画像1203のベクトルH14(u,v)を逆フーリエ変換することによって、式(6)の相関強度画像1204のベクトルG14(r,s)が得られる。
G14(r,s)=ΣΣ(H14(u,v)) ej2π(ur/M+us/N)
=ΣΣ(ej(θ-φ-2πr’u/M )) ej2π(ur/M+us/N)
=G12(r-r’) ・・・・・(6)
【0061】
式(6)より、2つの画像1,2間にX方向に位置ずれ量r’が存在する場合、相関強度画像のピークの位置は-r’だけずれることがわかる。即ち、相関強度画像より、ピークの位置の移動量-r’を求めることにより、2つの画像1,4間のX方向の移動量r’を求めることができる。
【0062】
以上のように、本例の相関計算は、位相成分のみによる演算であり、相関強度画像G14(r,s)は位相成分のみを含む。従って、基準画像と測定対象画像の間に、明るさやコントラストの差があっても、基準画像と測定対象画像の間の移動量を求めることができる。
【0063】
2つの画像1,2間にX方向に位置ずれ量が存在する場合は、相関強度画像1204の中心1205よりΔG(pixel)の位置1206にピークが発生する。例えば2つの画像1、2間にてX方向に2pixelのずれがあると、合成位相画像1203のベクトルH14は2周期の波になる。これを逆フーリエ変換すると相関強度画像1204のベクトルG12が得られる。相関強度画像1204のベクトルG12では、中心1205からΔG =2pixelずれた位置1206にピークが発生する。このΔG(pixel)は、TVカメラ50のCCDの受光面における移動量に相当する。ここで、CCD上の移動量ΔGを試料面上の実際の移動量Δxに変換する。CCDの受光面の径をL、受光面上の透過電子顕微鏡像の倍率をM、CCDの受光面の画素数Lmとすると、移動量Δxは式(7)によって表される。
Δx=ΔG(pixel)×L/Lm(pixel)/M ・・・・・(7)
【0064】
Δxは2つ画像1,2間の試料面上におけるX方向の相対的な移動量である。同様にY方向の移動量を計算する。
【0065】
(2)一致度を計算する方法(画像の変化を判断)
次に、基準画像に対する測定対象画像の一致度、即ち、測定対象画像の精度について説明する。上述の相関計算では、数学的に位相成分のみを使用して移動量を演算する。従って、相関強度画像1204に現れるピークはδピークとなる。例えば2つの画像1,2間にて1.5画素ずれると合成位相画像1203は1.5周期の波となる。これを逆フーリエ変換して得られる相関強度画像1204では、中心1205より1.5pixelずれた位置にδピークが現れるはずであるが、1.5の画素は存在しないので、δピークの値は1pixel目と2pixel目に振り分けられる。1pixel目と2pixel目の間の重心を計算することにより、真のδピーク位置を計算すると1/10pixel程度の精度の計算結果が得られる。
【0066】
また、相関強度画像1204には、δピークが現れるため、2つの画像1、2間における類似性の評価を相関強度画像1204のピークの高さによって行うことができる。基準画像1201のベクトルをf1(m、n)、相関強度画像1204のピークの高さPeak(pixel)とすると、一致度(%)は式(8)によって表される。
一致度(%)=(Peak)/(m×n)×100 ・・・・・・・・・・(8)
【0067】
例えば、基準画像1201の画素数を128pixel×128pixel、相関強度画像1204のPeak(pixel)を16384(pixel)とすると、一致度=(16384)/(128×128)×100=100(%)となる。
【0068】
(3)画像間の回転量・拡大縮小率を推定する方法
連続空間で定義された2次元画像fc(x1,x2)を考える。ここで、x1およびx2は実数である。fc(x1,x2)をx1およびx2方向にそれぞれδ1およびδ2だけ平行移動し、その画像の原点(x1,x2)=(0,0)を中心に角度θ回転し、s倍に拡大した画像をgc(x1,x2)とする。このとき、連続空間画像gc(x1,x2)は以下の式で表される。
gc(x1,x2)=fc(s(x11)cosθ-s(x22)sinθ,
s(x11)sinθ+s(x22)cosθ) ・・・・・(9)
【0069】
これらの連続空間画像fc(x1,x2)およびgc(x1,x2)を標本化間隔T1とT2で標本化した離散空間画像をそれぞれf(n1,n2)とg(n1,n2)とし、次式で定義する。
f(n1,n2)=fc(x1,x2)x1=n1T1,x2=n2T2 ・・・・・(10)
g(n1,n2)=fc(s(x11)cosθ-s(x22)sinθ,
s(x11)sinθ+s(x22)cosθ) ・・・・・(11)
【0070】
ここで、x1=n1T1,x2=n2T2とする。以下では単純化するため、M1=M2=M,N1=N2=N,T1=T2=1とする。連続空間画像fc(x1,x2)の2次元フーリエ変換をFc(Ω12)とし、離散空間画像f(n1,n2)およびg(n1,n2)の2次元DFTをそれぞれF(k1,k2)およびG(k1,k2)とすると、以下の関係式が成り立つ。
|F(k1,k2)|≒|Fc(Ω12)| ・・・・・(12)
|G(k1,k2)|≒1/s2|Fc(1/s (Ω1 cosθ- Ω2 sinθ) ,
1/s(Ω1sinθ+Ω2cosθ) | ・・・・・(13)
【0071】
ここで、k1=k2=-M,・・・,M,Ω1=2πk1/N,Ω2=2πk2/Nとする。したがって、振幅スペクトル|F(k1,k2)| および|G(k1,k2)| を用いることで画像の回転および拡大縮小のみを取り扱うことができる。
【0072】
離散空間画像FLP(l1,l2)およびGLP(l1,l2)をそれぞれF(k1,k2)およびG(k1,k2)のLog-Polar変換とする。ただし、l1=-M,・・・,Mおよびl2=-M,・・・,Mとする。このとき
|FLP(l1,l2)| および|GLP(l1,l2)| は以下の式で表される。
|FLP(l1,l2)|≒1/s2|Fc (rπcosφ,rπsinφ) | ・・・・・(14)
|GLP(l1,l2)|≒1/s2|Fc(r/sπcos(φ+θ),
r/sπsin(φ+θ))|・・・・・(15)
【0073】
ただし,φ=l1π/Nおよびr=N(2l2+2M+1)/2Nである。式(14)および式(15)から、以下の関係式が成り立つ。
|GLP(l1,l2)|≒1/s2|FLP・(l1+N/πθ,l2-NlogNs)|・・・・・(16)
【0074】
上式において、元の画像f(n1,n2)およびg(n1,n2)間の回転量θと拡大縮小率sが、画像FLP(l1,l2)およびGLP(l1,l2)間の平行移動量(Nθ/π,-NlogNs)に変換されていることがわかる。したがって、前記で述べた位相限定相関法に基づく平行移動量推定を行うことで元の画像f(n1,n2)およびg(n1,n2)の回転量θと拡大縮小率sを推定することができる。
以下に回転量および拡大縮小率を推定する手順を示す。また、図13に推定手順の各ステップで得られる画像を図示する。
(a):画像f(n1,n2)およびg(n1,n2)の2次元DFT F(k1,k2)およびG(k1,k2)をそれぞれ計算する。
(b):振幅スペクトル|F(k1,k2)| および|G(k1,k2)| を計算する。
【0075】
自然画像では,そのエネルギーの大部分が低周波領域に集中し,高周波成分のエネルギーは相対的に小さいことが知られている。したがって,|F(k1,k2)| および|G(k1,k2)| の代わりに,log(F(k1,k2)+1)およびlog(G(k1,k2)+1)を用いる。
【0076】
(c):|Log-Polar| 変換|FLP(l1,l2|)| および|GLP(l1,l2)| を計算する。ただし、変換の際に|F(k1,k2)| および|G(k1,k2)| の非整数値座標の値を補間手法により推定する。
(d):|FLP(l1,l2)| および|GLP(l1,l2)| 間の平行移動量を位相限定相関法による関数を用いて推定することにより,回転量θおよび拡大縮小率sを求めることができる。
【0077】
以上本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明による透過走査型電子顕微鏡の例を示す図である。
【図2】本発明による電子顕微鏡装置の透過走査型電子顕微鏡部及びを透過型電子顕微鏡部を示す図である。
【図3】本発明の電子顕微鏡によるコンタミネーション低減処理方法の概略を説明する図である。
【図4】本発明の電子顕微鏡による画像取得方法の第1の例の操作手順を説明する図である。
【図5】本発明の電子顕微鏡による画像取得方法の第2の例の操作手順を説明する図である。
【図6】本発明の電子顕微鏡による画像取得方法の第3の例の操作手順を説明する図である。
【図7】本発明の電子顕微鏡による画像取得方法の第4の例の操作手順を説明する図である。
【図8】本発明の電子顕微鏡において画像に分析領域をカラーでオーバーラップさせて表示した例を示す図である。
【図9】試料である半導体の表面の点分析による像の例を示す図である。
【図10】モニタ装置に表示された入力画面の例を示す図である。
【図11】モニタ装置に表示された入力画面の他の例を示す図である。
【図12】2つの像の移動量の計算方法を説明する図である。
【図13】回転量および拡大縮小率を推定する手順の各ステップで得られる画像を示す図である。
【図14】電子顕微鏡におけるコンタミネーションの発生を説明する図である。
【図15】電子顕微鏡におけるコンタミネーションの発生によって像が変化する状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0079】
1:電子銃、2:第1照射レンズコイル、3:第2照射レンズコイル、4:第1偏向コイル、5:第2偏向コイル、6:対物レンズコイル、7:第1電磁式試料イメージ移動用コイル、8:第2電磁式試料イメージ移動用コイル、9:第1中間レンズコイル、10:第2中間レンズコイル、11:第1投射レンズコイル、12:第2投射レンズコイル、13〜23:励磁電源、24〜34:デジタルアナログ変換器(DAC)、35:マイクロプロッセサ、36:記憶装置、37:演算装置、38:CRTコントローラ、39:モニタ(CRT)、40〜41:I/F、42:倍率切替用ロータリーエンコーダ、43:入力用ロータリーエンコーダ、44:キーボード、45:マウス、46:RAM、47:ROM、48:画像取込みインターフェース、49: TVカメラ制御部、50:TVカメラ、51:光学レンズ、52:CCD、53:試料ステージ、54:シンチレータ、55:対物絞り、61:2次電子検出器、62:X線検出器、63:カソードルミネッセンス(CL)検出器、64:暗視野像検出器、65:明視野像検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線を集束させて試料に照射する対物レンズを有する照射系と、上記荷電粒子線を偏向走査する偏向走査系と、上記荷電粒子線の照射により試料から発生する信号を検出して走査像を生成する走査像生成系と、を有し、上記試料の分析を開始する前に得た第1の画像と上記試料の分析を開始した後に得た第2の画像を比較し、上記試料の像の変化を観測したときに、上記試料の表面にコンタミネーション被膜を生成するコンタミネーション被膜の生成処理を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、上記コンタミネーション被膜の生成処理は、上記荷電粒子線の走査を停止し、且つ、上記対物レンズを生成する対物レンズコイルに対する励磁電圧の供給を停止した状態で荷電粒子線を照射することを含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、上記コンタミネーション被膜の生成処理は、上記荷電粒子線の走査を停止し、且つ、上記対物レンズを生成する対物レンズコイルに対する励磁電圧を最大にした状態で荷電粒子線を照射することを含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、上記コンタミネーション被膜の生成処理を行った後に第3の画像を取得し、上記第1の画像と上記第3の画像を比較し、両者の差異が大きい場合に、上記第3の画像のデータを削除し、両者の差異が小さい場合に、上記試料の分析を継続することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、上記試料の分析は、上記荷電粒子線の照射により試料から発生する特性X線を検出することにより得た元素分布像(Mapping像)を生成することを含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、上記試料の分析は、上記荷電粒子線の照射により試料から発生する陰極線光を検出することにより得たカソードルミネッセンス像を生成することを含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、上記第1の画像と上記第2の画像の比較は、2つの画像の一致度を計算することによって行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項7記載の荷電粒子線装置において、上記一致度が第1の閾値より大きい場合に、上記試料の像の変化を観測しないと判定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、上記第1の画像と上記第2の画像の比較は、上記第1の画像に対する上記第2の画像の倍率誤差を計算することによって行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項9記載の荷電粒子線装置において、上記第2の画像の倍率誤差が第1の閾値より大きい場合に、上記試料の像の変化を観測しないと判定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項4記載の荷電粒子線装置において、上記第1の画像と上記第3の画像の比較は、2つの画像の一致度を計算することによって行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項11記載の荷電粒子線装置において、上記一致度が第2の閾値より小さい場合に、上記第1の画像と上記第3の画像の差異が大きいと判定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項4記載の荷電粒子線装置において、上記第1の画像と上記第3の画像の比較は、上記第1の画像に対する上記第3の画像の倍率誤差を計算することによって行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項14】
請求項13記載の荷電粒子線装置において、上記第3の画像の倍率誤差が第2の閾値より大きい場合に、上記第1の画像と上記第3の画像の差異が大きいと判定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項15】
荷電粒子線を集束させて試料に照射する対物レンズを有する照射系と、試料を透過した上記荷電粒子線を検出して透過像を生成する透過像生成系と、を有し、上記試料の分析を開始する前に得た第1の画像と上記試料の分析を開始した後に得た第2の画像を比較し、上記試料の像の変化を観測したときに、上記試料の表面にコンタミネーション被膜を生成するコンタミネーション被膜の生成処理を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項16】
請求項15記載の荷電粒子線装置において、上記コンタミネーション被膜の生成処理は、上記対物レンズを生成する対物レンズコイルに対する励磁電圧の供給を停止した状態で荷電粒子線を照射することを含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項17】
請求項15記載の荷電粒子線装置において、上記コンタミネーション被膜の生成処理は、上記対物レンズを生成する対物レンズコイルに対する励磁電圧を最大にした状態で荷電粒子線を照射することを含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項18】
請求項15記載の荷電粒子線装置において、上記コンタミネーション被膜の生成処理を行った後に第3の画像を取得し、上記第1の画像と上記第3の画像を比較し、両者の差異が大きい場合に、上記第3の画像のデータを削除し、両者の差異が小さい場合に、上記試料の分析を継続することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項19】
請求項15記載の荷電粒子線装置において、上記試料の分析は、上記荷電粒子線の照射により試料から発生する特性X線を検出することにより得た点分析像又は線分析象を生成することを含むことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項20】
対物レンズを有する照射系によって荷電粒子線を集束させて試料に照射することと、上記荷電粒子線を偏向走査することと、上記荷電粒子線の照射により試料から発生する信号を検出して走査像を生成することと、上記試料の分析を開始する前に得た第1の画像と上記試料の分析を開始した後に得た第2の画像を比較することと、上記試料の像の変化を観測したときに、上記荷電粒子線の走査を停止し、且つ、上記対物レンズを生成する対物レンズコイルに対する励磁電圧の供給を停止した状態で荷電粒子線を照射するか、又は、上記荷電粒子線の走査を停止し、且つ、上記対物レンズを生成する対物レンズコイルに対する励磁電圧を最大にした状態で荷電粒子線を照射することによって、上記試料の表面にコンタミネーション被膜を生成することと、
を含む荷電粒子線を用いた試料の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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