説明

電極基板

【課題】本発明の目的は、透明性と導電性とを両立した電極基板を提供することにある。
【解決手段】本発明の電極基板は、透明性基材上に第1導電性物質からなる第1導電層と第2導電性物質からなる第2導電層とを形成してなるものであって、該第1導電層は、該透明性基材上に形成され、該第2導電層は、該第1導電層の少なくとも一部を覆うようにして該透明性基材上に形成され、該第2導電層の幅は、該第1導電層の幅を1とする場合1.5以上300以下であり、該第2導電性物質は、該第1導電性物質よりも高い光透過率を有するが、導電性は第1導電性物質より低いことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性基材上に導電層を形成した電極基板であって、透明性と導電性とを兼ね備えた電極基板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機EL(有機エレクトロルミネセンス)、電子ペーパー等に使用される電極基板は、透明性と導電性とを兼ね備えることが要求される。これは、透明性が不十分である場合は表示画面が暗くなり、また導電性が不十分である場合は表示画面の面積を大きくすることが困難であるとともに応答速度も遅くなるからである。
【0003】
このような電極基板に用いられる透明電極としては、従来よりITO(In/Sn酸化物)やZn系酸化物が用いられてきたが、これらの透明電極においては導電性を向上させるためには厚みを厚くしなければならず、逆に厚みを厚くすると透明性が低減するという相反する特性を両立されることが求められてきた。また、これらの透明電極は、高価な金属の酸化物を用いていることから、コストを節減する目的からも薄い厚みで導電性を高めることが必要とされてきた。さらに、これらの透明電極は、酸化物で構成されることからクラック等を生じ易くこれによる導電性不良を防止するためにその強度を向上させることも必要とされている。また、これらの酸化物は結晶化が不十分であると導電性が低下する傾向を示すが、電極を形成する基材が樹脂等で構成されている場合には酸化物の形成条件が制限され、十分な結晶化が得られないことから特にその導電性の低下が問題とされていた。
【0004】
これらの諸点を解決することを目的として、種々の試みが提案されているが(特許文献1〜4)、その性能を向上させるべくさらなる改善が求められている。
【特許文献1】特開2000−072526号公報
【特許文献2】特開2000−072537号公報
【特許文献3】特開2003−078153号公報
【特許文献4】特開2004−355972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは透明性と導電性とを高度に両立させた電極基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従来技術のように1層のみの導電層により透明性と導電性とを両立させるのではなく、透明性を担保する導電層と導電性を担保する導電層とを2層に分けて形成するという全く新規な知見に基づきなされたものである。
【0007】
すなわち、本発明の電極基板は、透明性基材上に第1導電性物質からなる第1導電層と第2導電性物質からなる第2導電層とを形成してなるものであって、該第1導電層は、該透明性基材上に形成され、該第2導電層は、該第1導電層の少なくとも一部を覆うようにして該透明性基材上に形成され、該第2導電層の幅は、該第1導電層の幅を1とする場合1.5以上300以下であり、該第2導電性物質は、該第1導電性物質よりも高い光透過率を有するが、導電性は第1導電性物質より低いことを特徴としている。
【0008】
ここで、上記第1導電性物質は、Ni、Cu、Ag、Al、およびCrからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属または該金属を含む合金であり、上記第2導電性物質は、Ru、Re、Pb、Cr、Sn、In、およびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物であることが好ましい。
【0009】
また、上記第1導電層は、その厚みが0.001μm以上5μm以下であって、その幅が1μm以上3mm以下であり、上記第2導電層は、その厚みが0.001μm以上1μm以下であって、その幅が1.5μm以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上記の電極基板を含んでなる部品または製品にも関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電極基板は、上記のような構成を有することにより、透明性と導電性とを高度に両立させることに成功したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
【0013】
<電極基板>
図1にその模式的な断面図を示したように本発明の電極基板100は、透明性基材101上に第1導電性物質からなる第1導電層102と第2導電性物質からなる第2導電層103とを形成してなるものであって、該第1導電層102は、透明性基材101上に形成され、該第2導電層103は、第1導電層102の少なくとも一部を覆うようにして透明性基材101上に形成される。
【0014】
すなわち、本発明の電極基板100は、透明性基材101上に第1導電層102と第2導電層103という2つの異なった導電層を形成させたことを特徴とするものであり、第1導電層102により主として導電性を担保させ、第2導電層103により主として透明性を担保させたものである。このような構成としたことにより、透明性と導電性とを高度に両立させることが可能となったものである。本発明において、このような第1導電層と第2導電層とからなる導電層は、通常、透明性基材上に細線状の配線パターン(または配線回路)を形成することが多い。
【0015】
なお、このような本発明の電極基板は、上記のような構成を電極基板の一部のみに含む場合であっても本発明の範囲に含まれるものとし、第1導電層および第2導電層以外の他の導電層や他の回路構成要素がたとえ形成されていたとしても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0016】
<透明性基材>
本発明で用いられる透明性基材は、透明性を有しかつ絶縁性である限り特に限定はなく、この種の用途に使用される従来公知の絶縁性透明基材を特に限定なくいずれのものでも使用することができる。なお、本発明における透明性基材は、波長350〜800nmの光透過率が50%以上となるものであることが好ましく、さらにその光透過率が80%以上となることが好ましい。光透過率が50%未満では、透明電極としての役割を奏さなくなる場合があるからである。
【0017】
このような透明性基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、アラミド、液晶ポリマー、ポリイミド等のポリマー類、ガラス、およびこれらの表面に対して透明性でかつ絶縁性の有機化合物または無機化合物をコーティングしたものからなる群より選ばれる少なくとも1種を素材として選択することが好ましい。特に、PETは、安価でありかつ割れ等が発生することもなく強度に優れているため特に好適に用いることができる。
【0018】
また、透明性基材の厚みは、3μm以上5mm以下とすることが好ましい。その厚みが3μm未満の場合、強度が十分でなかったり加工が困難となることがあり、5mmを超えると光透過率が悪化する場合がある。より好ましい厚みは、その上限が3mm、さらに好ましくは1mm、その下限が30μm、さらに好ましくは50μmである。
【0019】
<第1導電層>
本発明の第1導電層は、主として電極基板の導電性を担保する作用を有するものであり、第1導電性物質からなり上記透明性基材上に形成される。このような第1導電層は、通常、細線状の配線パターンを構成するようにして形成される。
【0020】
ここで、該第1導電性物質は、良好な導電性を有する限り特に限定なくいずれのものも用いることができるが、とりわけNi、Cu、Ag、Al、およびCrからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属または該金属を含む合金を用いることが好ましい。これらの金属または合金は、安価であるとともに導電性に優れており、しかもクラック等が発生することもなく優れた強度(すなわち安定した品質)を有するものとなるからである。特にCuは、安価かつ電気抵抗が低く(すなわち導電性が良好であり)、優れた延性を示し、またクラックが発生することもないため、特に好適に用いることができる。
【0021】
また、このような第1導電性物質で構成される第1導電層は、その第1導電性物質の種類にもよるが、その厚みが0.001μm以上5μm以下であって、その幅が1μm以上3mm以下であることが好ましい。その厚みが0.001μm未満となる場合、ピンホールが生じ易くこれにより電気抵抗が高くなることがあり、5μmを超えると幅を狭くすることが困難となり結果的に透明性を悪化させることになる。一方、その幅が1μm未満となる場合、導電性が低下することがあり、3mmを超えると透明性が悪化することがある。このように、当該第1導電層は、それ自体が透明性を有するものではないが、厚みおよび幅を低減すること(すなわち細線化すること)により、高い導電性を保持しつつ光遮蔽性(光透過性の低下)を防止することを意図している。
【0022】
このような第1導電層のより好ましい厚みは、その上限が0.5μm、さらに好ましくは0.3μm、その下限が0.01μm、さらに好ましくは0.1μmである。また第1導電層のより好ましい幅は、その上限が50μm、さらに好ましくは15μm、その下限が3μm、さらに好ましくは5μmである。
【0023】
なお、本発明の第1導電層は、互いに異なる第1導電性物質により、複数の層として形成することもできる。たとえば、透明性基材上にまずNiとCrとからなる合金で構成される層(便宜的に「第1導電層a」と記す)を形成し、その上にCuからなる層(便宜的に「第1導電層b」と記す)を形成したものなどを挙げることができる。この場合、第1導電層aの幅と第1導電層bの幅とは同じとし、第1導電層aの厚みと第1導電層bの厚みの合計を、第1導電層の厚みとする。
【0024】
なお、第1導電層はこのように本質的に金属である第1導電性物質で構成されるため、マイグレーション(配線や電極として使用した金属が絶縁物の上を移動し絶縁不良や短絡を発生させる現象をいう)を発生させ易いというデメリットを有しているが、このマイグレーションの発生は後述の第2導電層を形成する(特に第1導電層を覆うようにして第2導電層を形成する)ことにより防止することができる。このように本発明は、本発明の構成を有することにより、第1導電層におけるマイグレーションの発生を極めて有効に防止できるという効果を発揮するものである。
【0025】
<第2導電層>
本発明の第2導電層は、導電性を有しつつ主として透明性を担保する作用を有するものであり、第2導電性物質からなり、上記第1導電層の少なくとも一部を覆うようにして透明性基材上に形成される。このような第2導電層は、上記のように細線状に形成された第1導電層の全面を覆うようにして形成されることが好ましいが、部分的に第1導電層が表面に露出していても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0026】
ここで、該第2導電性物質は、導電性でかつ透明性であるものである限り特に限定されないが、とりわけRu、Re、Pb、Cr、Sn、In、およびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物とすることが好ましい。導電性を有しつつ、優れた透明性を有するものとなるからである。このような第2導電性物質としてより好ましくは、ITO(SnとInの酸化物、質量比でSn/In/O=2〜15/65〜95/3〜30)、SnO(Snの酸化物)、RuO(Ruの酸化物)、ReO(Reの酸化物)、ZnO(Znの酸化物)等を挙げることができる。
【0027】
また、このような第2導電性物質で構成される第2導電層は、その厚みが0.001μm以上1μm以下であって、その幅が1.5μm以上であることが好ましい。その厚みが0.001μm未満となる場合、ピンホールが生じ易くこれにより電気抵抗が高くなることがあり、1μmを超えると透明性を悪化させることになる。一方、その幅が1.5μm未満となる場合、相対的に第1導電層の比率が高くなり透明性が悪化する。一方その幅の上限は特に限定されず、第1導電層の幅に対して後述の比率となる範囲内で任意に設定することが可能である。このように、当該第2導電層は、上記第1導電層に比し導電性は低いものの、透明性を向上させることを意図している。また、第1導電層を覆うようにしてこの第2導電層を形成することにより第1導電層のマイグレーションの発生を防止することができる。
【0028】
このような第2導電層のより好ましい厚みは、その上限が0.1μm、さらに好ましくは0.05μm、その下限が0.01μm、さらに好ましくは0.03μmである。また、第2導電層のより好ましい幅は、その上限が600μm、さらに好ましくは300μm、その下限が4.5μm、さらに好ましくは7.5μmである。
【0029】
<第1導電層と第2導電層の特性>
上記のような本発明の第2導電層の幅は、上記第1導電層の幅を1とする場合1.5以上300以下とすることを要する。これにより、電極基板全体として十分な導電性と十分な透明性とを両立したものとなる。第2導電層の幅が1.5未満となる場合、所定の導電性を得るのに第1導電層の比率が高くなることから十分な透明性を得ることができず、また第2導電層の幅が300を超えると第2導電層の比率が高くなることから十分な導電性を得ることが困難となる。第2導電層のより好ましい幅は、上記第1導電層の幅を1とする場合、その上限は100、さらに好ましくは50、その下限が10、さらに好ましくは20である。
【0030】
なお、ここで第1導電層の幅とは、細線状に形成される第1導電層の長さ方向に対する垂直方向(横方向)の長さをいい、たとえば図1を例にとるとW1で表わされる長さを示し、第2導電層の幅とは同様にして同図でW2で表わされる長さをいうものとする。このようにそれぞれの幅は、両者が積層されている同一地点の幅を比較するものとする。
【0031】
また、上記のように規定される第1導電層と第2導電層の幅の割合は、長さ方向の全領域において満たされていることが理想であるが、長さ方向の20%以下の領域において上記割合を満たさない部分が含まれていても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0032】
さらに、第1導電層を構成する第1導電性物質と第2導電層を構成する第2導電性物質において、該第2導電性物質は、該第1導電性物質よりも高い光透過率を有するが、導電性は該第1導電性物質より低いことを要する。これにより、第1導電層により導電性を担保させ、第2導電層により透明性を担保させることができる。なお、本発明でいう導電性とは、電気伝導度をいうが、電気抵抗値を指標としても差し支えない。
【0033】
なお、ここで光透過率および導電性は、比較する第1導電性物質と第2導電性物質とを同一の測定条件で測定するものとするが、その測定条件は従来公知のいずれの測定条件で測定されたものであってもよい。
【0034】
<製造方法>
本発明の電極基板は、上記のような構成を有する限り特にその製造方法が限定されるものではない。たとえば以下のような製造方法A〜Dのいずれかにより製造することができるが、これのみに限定されるものではない。
【0035】
<製造方法A>
透明性基材上に、第1導電層が所望の細線状の配線パターン(以下単に「細線状」と記す)を形成するようにレジストを塗布し、露光、現像する。次いで、その所望の細線状に第1導電性物質をスパッタリングすることにより第1導電層を形成した後、レジストを剥離させる。
【0036】
続いて、上記のようにして細線状に形成した第1導電層を覆うようにして第2導電層が形成されるようなパターンでレジストを塗布し、露光、現像する。次いで、そのパターン状に第2導電性物質をスパッタリングすることにより第2導電層を形成した後、レジストを剥離させる。このようにして、透明性基材上に第1導電層と第2導電層とを形成してなる電極基板を製造することができる。
【0037】
<製造方法B>
透明性基材上の全面に第1導電性物質をスパッタリングすることにより第1導電層を形成する。次いで、この第1導電層が所望の細線状に形成されるようなパターンでその第1導電層上にレジストを塗布し、露光、現像する。その後、エッチングを行なうことにより不要部の第1導電層を除去した後、レジストを剥離することにより細線状に第1導電層を形成する。
【0038】
続いて、上記のようにして第1導電層が形成された透明性基材の全面に第2導電性物質をスパッタリングすることにより第2導電層を形成する。次いで、この第2導電層が上記第1導電層を覆うものとなるようなパターンでその第2導電層上にレジストを塗布し、露光、現像する。その後、エッチングを行なうことにより不要部の第2導電層を除去した後、レジストを剥離することにより第1導電層を覆うようにして第2導電層を形成する。このようにして、透明性基材上に第1導電層と第2導電層とを形成してなる電極基板を製造することができる。
【0039】
<製造方法C>
透明性基材上に第1導電層が所望の細線状に形成されるようなパターンでレジストを塗布し、露光、現像する。次いで、その所望の細線状に第1導電性物質をスパッタリングすることにより第1導電層を形成した後、レジストを剥離させる。
【0040】
続いて、上記のようにして第1導電層が形成された透明性基材の全面に第2導電性物質をスパッタリングすることにより第2導電層を形成する。次いで、この第2導電層が上記第1導電層を覆うものとなるようなパターンでその第2導電層上にレジストを塗布し、露光、現像する。その後、エッチングを行なうことにより不要部の第2導電層を除去した後、レジストを剥離することにより第1導電層を覆うようにして第2導電層を形成する。このようにして、透明性基材上に第1導電層と第2導電層とを形成してなる電極基板を製造することができる。
【0041】
<製造方法D>
透明性基材の全面に第1導電層が形成された基材を用い、この第1導電層が所望の細線状に形成されるようなパターンでその第1導電層上にレジストを塗布し、露光、現像する。その後、エッチングを行なうことにより不要部の第1導電層を除去した後、レジストを剥離することにより細線状に第1導電層を形成する。
【0042】
続いて、上記のようにして細線状に形成した第1導電層を覆うようにして第2導電層が形成されるようなパターンでレジストを塗布し、露光、現像する。次いで、そのパターン状に第2導電性物質をスパッタリングすることにより第2導電層を形成した後、レジストを剥離させる。このようにして、透明性基材上に第1導電層と第2導電層とを形成してなる電極基板を製造することができる。
【0043】
なお、上記の製造方法A〜Dにおけるレジストは、ドライフィルムを用いることも可能である。また、第1導電層を形成する前の透明性基材上に対して、および/または第2導電層を形成する前の第1導電層上に対して、洗浄や陽イオン照射などの各種前処理を行なうこともできる。
【0044】
また、上記の製造方法A〜Dにおいて、第1導電層および第2導電層は、スパッタリングにより形成されているが、その形成方法はこれのみに限られるものではなく、蒸着、電気めっき、無電解めっき、印刷等の従来公知のいずれの方法をも採用することができる。また、第1導電層および第2導電層の配線パターンの形成方法も特に限定されず、直接的にパターンを形成する方法であってもよいし、エッチングによりパターンを形成する方法であってもよい。
【0045】
<用途>
本発明の電極基板は、液晶表示装置、有機EL、電子ペーパー、太陽電池等の電子製品/電気製品の電極として極めて有効に用いることができる。なお、本発明は、このように本発明の電極基板を含む液晶表示装置、有機EL、電子ペーパー、太陽電池等の製品または部品をも対象とするものである。
【0046】
さらにまた、このような製品または部品には、本発明の電極基板をその一部に含む電極基板が含まれる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
<実施例1>
透明性基材101として100μmの厚みを有するフイルム状のPET(商品名:ルミナー、東レ社製)を用い、これに厚み10μmのドライフィルム(商品名:RY3310、日立化成工業社製)をラミネートした。そして、第1導電層が所望の細線状の配線パターンを形成するようにこのラミネートしたドライフィルム104に対して、露光、現像した(図2)。
【0049】
続いて、このドライフィルム104によりパターンを形成した透明性基材101をスパッタリング装置に投入し、Arガスを使用してイオンガンにより陽イオンを照射した。引き続き、第1導電性物質としてNi/Cr合金(質量比でNi/Cr=80/20)をスパッタリングし、引き続きそのNi/Cr合金上に第1導電性物質としてCuをスパッタリングすることにより第1導電層102を形成した(図3、ただし第1導電層は1層として示してある)。FIB(集束イオンビーム)装置を用いてこの第1導電層の断面を観察したところ、Ni/Cr合金層の厚みは0.01μmであり、Cu層の厚みは0.3μmであった。
【0050】
次いで、この第1導電層102を形成した透明性基材101をレジスト剥離装置に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を吹き付けることにより、パターンを形成しない部分のドライフィルム104を第1導電層が付着した状態で剥離させることにより、パターン状の第1導電層を形成した(図4)。ここで、光学顕微鏡を用いてこの透明性基材101の表面を観察したところ、第1導電層102が透明性基材101上に幅10μmの細線状の配線パターン(配線回路)を形成していることが確認できた。
【0051】
続いて、このように第1導電層102によるパターンが形成された透明性基材101上に上記と同じドライフィルム105をラミネートし、第2導電層103がこの第1導電層102を覆うようにして形成されるように露光、現像した(図5)。
【0052】
次いで、このドライフィルム105がラミネートされた透明性基材101をスパッタリング装置に投入し、Arガスを使用してイオンガンにより陽イオンを照射した。引き続き、第2導電性物質としてITO(Sn、Inの酸化物;質量比でSn/In=10/90)にさらに少量の酸素を投入しながらスパッタリングすることにより第1導電層102上に第2導電性物質であるITO(質量比でSn/In/O=7.3/73.2/19.5)からなる第2導電層103を形成した(図6)。FIB装置を用いてこの第2導電層103の断面を観察したところ、その厚みは0.03μmであった。
【0053】
続いて、このように第2導電層103を形成した透明性基材101をレジスト剥離装置に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を吹き付けることにより、ドライフィルム105を第2導電層103が付着した状態で剥離させることにより、透明性基材101上に第1導電層102と第2導電層103とを形成してなる本発明の電極基板100を得た(図1)。光学顕微鏡を用いてこの電極基板100の表面を観察したところ、透明性基材101上に細線状の配線パターン(配線回路)として形成された第1導電層102を覆うようにして幅250μmの第2導電層103が形成されていることが確認できた。なお、配線パターン(配線回路)において、隣り合う第2導電層間は20μmの間隔を有するように設計した。
【0054】
<実施例2>
実施例1と同じ透明性基材101を準備し、この透明性基材101をスパッタリング装置に投入し、Arガスを使用してイオンガンにより陽イオンを照射した。引き続き、第1導電性物質としてNi/Cr合金(質量比でNi/Cr=80/20)を透明性基材101の片側全面にスパッタリングし、引き続きそのNi/Cr合金上に第1導電性物質としてCuをスパッタリングすることにより透明性基材101の片側全面に第1導電層102を形成した(図7、ただし第1導電層は1層として示してある)。FIB装置を用いてこの第1導電層102の断面を観察したところ、Ni/Cr合金層の厚みは0.01μmであり、Cu層の厚みは0.3μmであった。
【0055】
次いで、上記で形成した第1導電層102上に実施例1で用いたのと同じドライフィルム104をラミネートし、第1導電層102が所望の細線状の配線パターンを形成するようにこのラミネートしたドライフィルム104に対して、露光、現像した(図8)。
【0056】
続いて、これをエッチング装置に投入し、第1導電層102をエッチングするとともにドライフィルム104を剥離させることにより、透明性基材101上にパターン状の第1導電層102を形成した(図9)。ここで、光学顕微鏡を用いてこの透明性基材101の表面を観察したところ、第1導電層102が透明性基材101上に幅10μmの細線状の配線パターン(配線回路)を形成していることが確認できた。
【0057】
続いて、このように第1導電層102によるパターンが形成された透明性基材101をスパッタリング装置に投入し、Arガスを使用してその表面に対してイオンガンにより陽イオンを照射した。引き続き、その表面の全面に対して、第2導電性物質としてITO(Sn、Inの酸化物;質量比でSn/In=10/90)にさらに少量の酸素を投入しながらスパッタリングすることにより、第1導電層102がパターン状に形成された透明性基体101上の全面に第2導電性物質であるITO(質量比でSn/In/O=7.3/73.2/19.5)からなる第2導電層103を形成した(図10)。FIB装置を用いてこの第2導電層103の断面を観察したところ、その厚みは0.03μmであった。
【0058】
次いで、上記で形成した第2導電層103上に上記と同じドライフィルム105をラミネートし、第2導電層103が第1導電層102を覆い所望の細線状の配線パターンを形成するようにこのラミネートしたドライフィルム105に対して、露光、現像した(図11)。
【0059】
続いて、これをエッチング装置に投入し、不要部分の第2導電層103をエッチングするとともにドライフィルム105を剥離させることにより、透明性基材101上に第1導電層102と第2導電層103とを形成してなる本発明の電極基板100を得た(図1)。光学顕微鏡を用いてこの電極基板100の表面を観察したところ、透明性基材101上に細線状の配線パターン(配線回路)状に形成された第1導電層102を覆うようにして幅250μmの第2導電層103が形成されていることが確認できた。なお、配線パターン(配線回路)において、隣り合う第2導電層間は20μmの間隔を有するように設計した。
【0060】
<実施例3>
透明性基材101上にパターン状の第1導電層102を形成させるところまでは、全て実施例1と同様にして行なった(図2〜4)。
【0061】
引き続き、実施例2と同様にして、透明性基材101上に細線状の配線パターン(配線回路)状に形成された第1導電層102を覆うようにして第2導電層103を形成することにより(図9〜11)、本発明の電極基板100を得た(図1)。
【0062】
<実施例4>
透明性基材101上にパターン状の第1導電層102を形成させるところまでは、全て実施例2と同様にして行なった(図7〜9)。
【0063】
引き続き、実施例1と同様にして、透明性基材101上に細線状の配線パターン(配線回路)状に形成された第1導電層102を覆うようにして第2導電層103を形成することにより(図4〜6)、本発明の電極基板100を得た(図1)。
【0064】
<実施例5>
実施例1において、第2導電層の幅を18μmとすることを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の電極基板を得た。
【0065】
<実施例6>
実施例1において、第2導電層の幅を100μmとすることを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の電極基板を得た。
【0066】
<実施例7>
実施例1において、第2導電層の幅を500μmとすることを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の電極基板を得た。
【0067】
<実施例8>
実施例1において、第2導電層の幅を1000μmとすることを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の電極基板を得た。
【0068】
<実施例9>
実施例1において、第2導電層の幅を2500μmとすることを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の電極基板を得た。
【0069】
<実施例10>
実施例1において、第1導電層を構成するCu層に代えてNiからなるNi層(厚み0.3μm)を形成することを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の電極基板を得た。
【0070】
<実施例11>
実施例1において、ITOに代えてSnOにより第2導電層(厚み0.03μm、幅250μm)を構成することを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の電極基板を得た。
【0071】
<比較例1>
実施例1と同じ透明性基材101を準備し、この透明性基材101をスパッタリング装置に投入し、実施例1と同様にしてArガスを使用してイオンガンにより陽イオンを照射した。引き続き、実施例1と同じ第2導電性物質としてITOにさらに少量の酸素を投入しながらスパッタリングすることにより透明性基材101の片側全面に第2導電層103を形成した。
【0072】
次いで、上記で形成した第2導電層103上に実施例1で用いたのと同じドライフィルム104をラミネートし、第2導電層103が実施例1と同じ細線状の配線パターンを形成するようにこのラミネートしたドライフィルム104に対して、露光、現像した。
【0073】
続いて、これをエッチング装置に投入し、第2導電層103をエッチングするとともにドライフィルム104を剥離させることにより、透明性基材101上にパターン状の第2導電層103のみを形成した比較例の電極基板を得た(図12)。
【0074】
FIB装置を用いてこの電極基板の第2導電層103の断面を観察したところ、その厚みは0.05μmであった。また、光学顕微鏡を用いてこの透明性基材101の表面を観察したところ、第2導電層103が実施例1と同様の幅250μmの細線状の配線パターン(配線回路)を形成していることが確認できた。
【0075】
<比較例2>
比較例1において、第2導電層の厚みを0.2μmとすることを除き、他は全て比較例1と同様にして比較例の電極基板を得た。
【0076】
<比較例3>
実施例1において、第2導電層を形成せず第1導電層のみを形成したことを除き、他は全て実施例1と同様にして比較例の電極基板を得た。
【0077】
<比較例4>
実施例1において、第2導電層の幅を13μmとすることを除き、他は全て実施例1と同様にして比較例の電極基板を得た。
【0078】
<比較例5>
実施例1において、第2導電層の幅を3500μmとすることを除き、他は全て実施例1と同様にして比較例の電極基板を得た。
【0079】
<評価>
上記の実施例1〜11および比較例1〜5で得られた電極基板を用いて、以下のようにして導電性、透明性、耐マイグレーション性を評価した。その評価結果を表1に示す。
【0080】
(導電性の評価−電気抵抗の測定)
電気抵抗測定装置(三菱化学社製、品番:MCP−T610)を用いて四端子法により、1点当りの測定面積を直径20mmのサークルとし、配線パターン(配線回路)部において異なった5点(ただしこの5点の測定箇所は各実施例/比較例間で共通とする)の電気抵抗値を測定し、その平均値を表1に示す。各実施例/比較例間で配線パターンは第2導電層間の間隔が上記の通り20μmとなるように設計されているため、各測定箇所においては第1導電層の幅と第2導電層の幅の比率に応じて両者が存在することとなる。なお、その数値が小さいもの程導電性に優れていることを示す。
【0081】
(導電性の評価−線間電気伝導度の測定)
LCRメータ(カスタム社製、品番:ELC−100)を用いて、配線パターン(配線回路)部の両端間の電気伝導度を測定し、その結果を表1に示す。各実施例/比較例間で配線パターンの両端間の距離は等しくなるように設計されているため、数値が小さいもの程、導電性に優れていることを示す。
【0082】
(透明性の評価)
濁度計(日本電色工業社製、品番:NDH−2000)を用いて、上記の電気抵抗の測定と同じ測定面積および測定箇所(5点)で配線パターン(配線回路)部の光透過率を測定し、その平均値を表1に示す。各実施例/比較例間で配線パターンは第2導電層間の間隔が上記の通り20μmとなるように設計されているため、各測定箇所においては第1導電層の幅と第2導電層の幅の比率に応じて両者が存在することとなる。なお、その数値が大きいもの程、透明性に優れていることを示す。
【0083】
(耐マイグレーション性の評価)
マイグレーション試験装置(ESPEC社製、品番:AMI−025−PL−5)を用いて、電極基板を温度85℃、湿度85%に保持しながら配線パターン(配線回路)部に60mVの電圧を48時間継続して印加した。その後、その配線パターン部を光学顕微鏡で観察することによりマイグレーションの有無を確認した。第1導電層のマイグレーションが発生しているものは「有」、マイグレーションが発生していないものは「無」とし、その結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1より明らかなように、本発明の構成を有する電極基板は、比較例の電極基板に比し、導電性と透明性とを高度に両立していた。
【0086】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0087】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の電極基板の模式的断面図である。
【図2】電極基板の製造途中の仕掛品であって、透明性基材上にドライフィルムをラミネートし露光、現像した状態の模式的断面図である。
【図3】電極基板の製造途中の仕掛品であって、ドライフィルム上に第1導電層を形成した状態の模式的断面図である。
【図4】電極基板の製造途中の仕掛品であって、透明性基材上に配線パターン状の第1導電層を形成した状態の模式的断面図である。
【図5】電極基板の製造途中の仕掛品であって、透明性基材上に第2導電層形成用のドライフィルムをラミネートし露光、現像した状態の模式的断面図である。
【図6】電極基板の製造途中の仕掛品であって、第1導電層上に第2導電層を形成した状態の模式的断面図である。
【図7】電極基板の製造途中の仕掛品であって、透明性基材上の片側全面に第1導電層を形成した状態の模式的断面図である。
【図8】電極基板の製造途中の仕掛品であって、第1導電層上にドライフィルムをラミネートし露光、現像した状態の模式的断面図である。
【図9】電極基板の製造途中の仕掛品であって、透明性基材上に配線パターン状の第1導電層を形成した状態の模式的断面図である。
【図10】電極基板の製造途中の仕掛品であって、第1導電層上に第2導電層を形成した状態の模式的断面図である。
【図11】電極基板の製造途中の仕掛品であって、第2導電層上にドライフィルムをラミネートし露光、現像した状態の模式的断面図である。
【図12】比較例の電極基板の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0089】
100 電極基板、101 透明性基材、102 第1導電層、103 第2導電層、104,105 ドライフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性基材上に第1導電性物質からなる第1導電層と第2導電性物質からなる第2導電層とを形成してなる電極基板であって、
前記第1導電層は、前記透明性基材上に形成され、
前記第2導電層は、前記第1導電層の少なくとも一部を覆うようにして前記透明性基材上に形成され、
前記第2導電層の幅は、前記第1導電層の幅を1とする場合1.5以上300以下であり、
前記第2導電性物質は、前記第1導電性物質よりも高い光透過率を有するが、導電性は第1導電性物質より低いことを特徴とする電極基板。
【請求項2】
前記第1導電性物質は、Ni、Cu、Ag、Al、およびCrからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属または該金属を含む合金であり、
前記第2導電性物質は、Ru、Re、Pb、Cr、Sn、In、およびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物である請求項1記載の電極基板。
【請求項3】
前記第1導電層は、その厚みが0.001μm以上5μm以下であって、その幅が1μm以上3mm以下であり、
前記第2導電層は、その厚みが0.001μm以上1μm以下であって、その幅が1.5μm以上である請求項1または2に記載の電極基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電極基板を含んでなる部品または製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−181736(P2009−181736A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17889(P2008−17889)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【特許番号】特許第4156021号(P4156021)
【特許公報発行日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(500356038)FCM株式会社 (10)
【Fターム(参考)】