説明

電極材料およびそれを備えたリチウム二次電池

【課題】 電極に対する塗布特性、放電特性、サイクル特性、安全性などの特性において優れた電極材料を提供する。
【解決手段】 電極材料を、炭素材料(例えば、黒鉛など)と、この炭素材料を被覆する有機高分子であって、少なくとも第3級窒素原子を主鎖に有する有機高分子とで構成する。前記有機高分子は、例えば、ポリアルキレンイミン系樹脂(例えば、ポリエチレンイミン系樹脂)などであってもよい。このような電極材料において、有機高分子の割合(被覆割合)は、炭素材料100重量部に対して、例えば、0.001〜10重量部程度であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用などとして有用な電極材料およびそれを備えたリチウム二次電池に関する。詳細には、本発明は、電極に対する塗布特性、放電特性、サイクル特性、安全性などを向上又は改善できる電極材料(特に負極炭素材料)およびそれを備えた二次電池(特にリチウム二次電池)に関する。
【背景技術】
【0002】
負極活物質として黒鉛などの炭素材料(カーボン材)、正極活物質として金属カルコゲン化物、金属酸化物を用い、電解液として非プロトン性有機溶媒に種々の塩を溶解させた電解液を用いたリチウム二次電池は高エネルギー密度型二次電池の一種として注目され、盛んに研究が行われている。
【0003】
一方、カーボン材(特に、黒鉛などの高結晶性のカーボン材)を負極活物質として使用する場合は、還元時に、電解液(特に炭酸プロピレン)の分解が生じるという問題が指摘されている。このような問題を解決するため、従来、カーボン材の表面を結晶性の劣るカーボン(アモルファス炭素)で被覆することにより、分解の活性点を不活性化する方法などがとられてきた。
【0004】
しかし、このようなアモルファス炭素によるカーボン材の被覆は、アモルファス炭素の炭素前駆体を被覆後、炭化する工程が必要なため煩雑であり、工業的に不利であるばかりかコスト的にも不利である。
【0005】
カーボン材の表面をポリマーで被覆する試みもなされている。例えば、特開平5−275077号公報(特許文献1)には、負極の構成要素として用いられるカーボン材の表面をリチウムイオン伝導性固体電解質の薄膜でコーティングしたリチウム二次電池用の負極が開示されている。この文献には、固体電解質として、ポリエチレンオキシド(PEO)が最も好ましいことが記載されている。また、特開2001−167755号公報(特許文献2)には、水溶性高分子材料(P)を負極材料(E)に担持させてなる非水系二次電池用負極材が開示されている。この文献には、水溶性高分子材料(P)として、好適には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸、アルギン酸アルキレングリコールエステル、キサンタンガム、アラビアガム、カードラン、プルラン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、寒天、クインスシード(マルメロ)、コンニャクマンナン、ペクチン、ゼラチン、カゼイン、ニカワ、フノリをはじめとする植物、微生物、動物由来の多糖類系またはタンパク質系の水溶性高分子、ポリビニルアルコールのような合成系の水溶性高分子などが例示されている。さらに、特開2002−246020号公報(特許文献3)には、炭素粒子の表面が水溶性ポリマーで被覆されていることを特徴とする活物質が開示されている。この文献には、水溶性ポリマーとして、具体的には、ポリアクリル酸やメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等、およびこれらの水溶性塩等を使用できることが記載されている。
【0006】
しかし、これらの文献に記載の水溶性ポリマーを用いた方法では、カーボン材に対して水溶性ポリマーを十分に付着させることができず、初期放電効率を高めることが可能であっても、サイクル特性、安全性などの向上は望めなかった。
【0007】
また、特開2002−117851号公報(特許文献4)には、炭素材料基材に、脂肪族アミノ基を側鎖に有する有機高分子を付着させてなる炭素材料が開示されている。この文献には、脂肪族アミノ基を側鎖に有する有機高分子に関し、アミノ基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基あるいは第4級アンモニウムのいずれでもよく、これらの中でも、不可逆容量の低減と高い接着性の点から、第1級アミノ基が好ましいことや、アミン窒素が高分子の主鎖のみを構成している場合には、効果が十分に発揮されないことが記載されており、具体的な有機高分子として、ポリビニルアミン系重合物、ポリアリルアミン系重合物、ポリジアリルアミン系重合物、ジアリルアミン−マレイン酸共重合物などを例示している。
【0008】
この文献に記載の脂肪族アミノ基を側鎖に有する有機高分子を使用すると、炭素材料基材に対する接着性(付着性)をある程度向上できる。しかし、この文献の有機高分子であっても、未だ、サイクル特性、安全性などを十分に向上できない。
【特許文献1】特開平5−275077号公報(特許請求の範囲、段落番号[0014]、実施例)
【特許文献2】特開2001−167755号公報(特許請求の範囲、段落番号[0021][0022]、実施例)
【特許文献3】特開2002−246020号公報(特許請求の範囲、段落番号[0031])
【特許文献4】特開2002−117851号公報(特許請求の範囲、段落番号[0015][0016]、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、比表面積が大きく低減された電極材料およびこの電極材料を備えたリチウム二次電池を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、電極に対する塗布特性、放電特性、サイクル特性、安全性などの特性を向上できる電極材料およびこの電極材料を備えたリチウム二次電池を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、少ない被覆量であっても優れた特性(塗布特性、サイクル特性、放電特性など)を付与でき、コスト的に有利に製造できる電極材料およびこの電極材料を備えたリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、炭素材料(黒鉛など)を、窒素原子を有する特定の樹脂で被覆すると、効率よく炭素材料の比表面積を低下させることができること、このような比表面積の低下によるためか、電極に対する塗布特性、放電特性、サイクル特性、安全性などの特性を総合的に改善できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の電極材料は、炭素材料と、この炭素材料を被覆する有機高分子とで構成された電極材料であって、前記有機高分子が、少なくとも第3級窒素原子(又は第3級窒素原子で構成された窒素原子)を主鎖に有する電極材料である。
【0014】
前記炭素材料は、比表面積において比較的小さい粒子であってもよく、例えば、前記単層材料の比表面積は10m2/g以下の粒子であってもよい。また、前記炭素材料は、少なくとも湾曲面を有する形状の粒子、例えば、球状又はポテト状粒子で構成されていてもよい。
【0015】
前記有機高分子は、前記のような主鎖に第3級窒素原子を有しており、例えば、分子内に含まれる窒素原子全体に対して10モル%以上の第3級窒素原子を含むポリアルキレンイミン系樹脂で構成されていてもよい。前記有機高分子は、ポリエチレンイミン系樹脂で構成するのが好ましく、例えば、分子内に含まれる窒素原子全体に対して15モル%以上の第3級窒素原子を含むポリエチレンイミン系樹脂であって、数平均分子量800〜30000のポリエチレンイミン、第1級又は2級窒素原子に対して反応性の反応性化合物で変性された変性ポリエチレンイミン、およびポリエチレンイミンの金属塩から選択された少なくとも1種のポリエチレンイミン系樹脂で構成されていてもよい。特に、前記ポリアルキレンイミン系樹脂は、分子内に含まれる窒素原子全体に対して80モル%以上の第3級窒素原子を含み、かつイソシアネート類及び/又はエポキシ化合物で変性された変性ポリエチレンイミンで構成されていてもよい。
【0016】
前記電極材料において、有機高分子の割合は、例えば、炭素材料100重量部に対して0.001〜10重量部程度であってもよい。
【0017】
代表的な本発明の電極材料では、(i)炭素材料が平均粒径1〜50μm及び比表面積1.5〜10m2/gの球状又はポテト状黒鉛粒子で構成されており、(ii)有機高分子が、有機高分子に含まれる窒素原子全体に対して20モル%以上の第3級窒素原子を含むポリエチレンイミン系樹脂であって、数平均分子量800〜15000程度のポリエチレンイミン、C2-4アルキレンオキシドで変性された変性ポリエチレンイミン、およびポリエチレンイミンの金属塩から選択された少なくとも1種のポリエチレンイミン系樹脂で構成されており、(iii)有機高分子の割合が炭素材料100重量部に対して0.05〜5重量部程度であってもよい。
【0018】
本発明の電極材料は、種々の電極用途、例えば、リチウム二次電池用負極に好適に用いることができる。そのため、本発明には、前記電極材料を備えているリチウム二次電池も含まれる。
【0019】
なお、本明細書において、「主鎖」とは、「主鎖末端」を含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電極材料では、第3級窒素原子を主鎖に有する特定の有機高分子を用いるため、炭素材料の比表面積が大きく低減されている。そして、このような電極材料は、比表面積が大きく低減されているため、電極に対する塗布特性、放電特性、サイクル特性、安全性などの特性を向上できる。また、本発明の電極材料は、少ない被覆量であっても優れた特性(塗布特性、サイクル特性、放電特性など)を付与でき、コスト的に有利に製造できる。このような本発明の電極材料は、例えば、リチウム二次電池の構成材料などとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[電極材料]
本発明の電極材料は、炭素材料と、この炭素材料を被覆する(又は炭素材料に付着した)特定の窒素原子を有する有機高分子とで構成されている。
【0022】
(炭素材料)
炭素材料(又は炭素質物質)としては、電極材料の用途に応じて適宜選択でき、種々の導電性炭素材料、例えば、炭素材[又は炭素前駆体、例えば、タール(石油系又は石炭系のタール)、ピッチ、合成ピッチ、高分子化合物(例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂、セルロース系樹脂など)など]を加熱又は焼成して得られる炭素(例えば、バルクメソフェーズ、メソフェーズ小球体など)、コークス(例えば、ニードルコークス、ピッチコークス、石油コークスなど)、ハードカーボン(例えば、ナフタレン、アントラセンなどの低分子有機化合物、フェノール樹脂などの樹脂類、ピッチ類(コールタールピッチ、酸素架橋石油ピッチなど)、ヘビーオイルなどを原料とする非晶質ハードカーボン)、黒鉛(例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、前記炭素材料又は炭素を黒鉛化処理して得られる黒鉛、前記コークスを黒鉛化処理して得られる黒鉛など)などの非多孔性炭素材料;活性炭(メソカーボンマイクロビーズ活性炭などの前記炭素材を原料とする活性炭、やしがら活性炭など)、炭素繊維(例えば、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維、メソフェーズピッチ系炭素繊維、黒鉛化炭素繊維、活性炭素繊維など)などの多孔性炭素材料などが挙げられる。これらの炭素材料は、造粒物、被覆物、積層物などであってもよい。また、これらの炭素材料は、各種処理(例えば、液相、気相又は固相における各種化学処理、熱処理、酸化処理など)を施した炭素材料であってもよい。これらの炭素材料は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0023】
これらの炭素材料のうち、負極材料をリチウム二次電池などに用いる場合には、炭素材料として、非多孔性炭素材料、特に、黒鉛を好適に用いることができる。黒鉛としては、メソフェーズ小球体の黒鉛化物を含め、人造黒鉛及び/又は天然黒鉛が使用できる。これらの黒鉛は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。黒鉛の結晶構造は特に制限されず、例えば、黒鉛の面間隔d(002)は、0.3350〜0.34nm、好ましくは0.3353〜0.337nm程度であってもよい。黒鉛のc軸方向の長さLcは、30〜1000nm、好ましくは50〜400nm程度であってもよく、a軸方向の長さLaは、30〜1000nm、好ましくは70〜200nm程度であってもよい。
【0024】
また、黒鉛の黒鉛化度は、例えば、0.8以上(例えば、0.85〜0.99程度)、好ましくは0.88以上(例えば、0.89〜0.97程度)、さらに好ましくは0.895以上(例えば、0.9〜0.95程度)、特に0.91以上(例えば、0.915〜0.93程度)であってもよく、通常、0.9以上[例えば、0.9〜0.925(例えば、0.905〜0.92)程度]であってもよい。本発明では、特に高い結晶性(例えば、黒鉛化度0.9以上)を有する黒鉛(特に天然黒鉛)を好適に用いることができる。なお、黒鉛化度は、X線回折測定により求めることができる。具体的には、黒鉛化度は、非対称な二次元10又は11回折線図形が黒鉛構造の発達とともに変形することを、フーリエ級数を用いて解析することにより求めることができる。
【0025】
炭素材料の形態又は形状は特に制限されず、例えば、非多孔性炭素材料(例えば、黒鉛)の形状は、無定形状、平板状(又は扁平状)、薄片状(鱗片状など)、粒状(粉粒状)などであってもよい。比表面積の点から、粒状のうち、少なくとも一部に湾曲面を有している形状、例えば、球状(真球状を含む)、楕円体状、ポテト状、俵状、多角体状などの形状を有する粒子で構成されているのが好ましく、特に、球状(ほぼ球状)又はポテト状粒子で構成されているのが好ましい。これらの形状は、通常、混在していてもよい。なお、湾曲面を有する形状の炭素材料(例えば、黒鉛粒子)は、炭素材料の角部を丸める慣用の方法(球状化処理方法)、例えば、粉砕、摩砕などの方法で製造できる。具体的な方法として、例えば、旋回気流中で炭素材料の粒子同士を摩擦したり、ボールミルなどの摩砕装置で摩砕させる方法などを利用してもよい。なお、分級などにより所定のサイズの炭素材料粉末を得ることもできる。
【0026】
炭素材料の平均粒径は、特に限定されず、例えば、0.1〜500μm、好ましくは0.5〜400μm、さらに好ましくは1〜300μm程度であってもよい。特に、黒鉛の平均粒径は、例えば、0.1〜100μm(例えば、0.5〜70μm)程度の広い範囲から選択でき、通常、1〜50μm、好ましくは2〜40μm、さらに好ましくは5〜30μm程度であってもよい。
【0027】
また、炭素材料の比表面積(BET比表面積)は、用途や炭素材料の種類に応じて適宜選択でき、例えば、黒鉛などの非多孔性炭素材料の比表面積は、50m2/g以下(例えば、0.1〜30m2/g)、好ましくは0.5〜20m2/g、さらに好ましくは1〜15m2/g(例えば、1.5〜10m2/g)、特に2〜8m2/g程度であってもよい。また、活性炭などの多孔性炭素材料の比表面積は、例えば、50〜3500m2/g、好ましくは100〜3000m2/g、さらに好ましくは200〜2000m2/g(例えば、500〜2000m2/g)程度であってもよい。なお、炭素材料(例えば、黒鉛)の嵩密度は、例えば、0.1〜1.5g/cm3、好ましくは0.5〜1.5g/cm3程度であってもよい。
【0028】
(有機高分子)
前記有機高分子は、少なくとも第3級窒素原子[又は第3級アミノ基(−N<)]を主鎖に有する有機高分子である。すなわち、本発明の電極材料において、前記有機高分子は、主鎖に窒素原子を有する高分子であって、この主鎖に存在する窒素原子[又はアミノ基、すなわち、−NH2(第1級アミノ基)、−NH−(第2級アミノ基)、および−N<(第3級アミノ基)]の少なくとも一部が第3級窒素原子で構成されている。なお、前記有機高分子は、は、少なくとも主鎖に第3級窒素原子を有していればよく、主鎖及び側鎖に第3級窒素原子を有していてもよい。
【0029】
このような主鎖の第3級窒素原子は、例えば、(i)主鎖に位置する第1級及び/又は第2級アミノ基に対する有機高分子のモノマーの付加(開環付加又は付加重合、例えば、ポリアルキレンイミンにおけるアルキレンイミンの第1又は第2級アミノ基に対する付加など)や、(ii)主鎖に第1級及び/又は第2級アミノ基を有する有機高分子と、前記第1級及び/又は2級アミノ基に対して反応可能な反応性基[エポキシ基、カルボキシル基又はその誘導性基(酸無水物基、酸ハライド基など)、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキサゾリニル基、アルデヒド基、ケトン基、アルキルハライド基、不飽和結合(ビニル基など)など]を有する化合物との反応などにより有機高分子に導入される場合が多い。
【0030】
具体的な反応性基を有する化合物(反応性化合物)としては、例えば、アルデヒド類、ケトン類、アルキルハライド類、アシルハライド類、カルボン酸、カルボン酸無水物、(チオ)イソシアネート類、不飽和結合含有化合物(アクリロニトリルなど)、エポキシ基含有化合物[例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド(例えば、C2-4アルキレンオキシド)、エピクロロヒドリンなど]、シアナマイド類、グアニジン類などが挙げられる。これらの反応性化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。このような反応性化合物で変性された有機高分子(又は反応性化合物が付加した有機高分子)は、変性により炭素材料に対する親和性がより一層向上するためか、炭素材料の比表面積を低減する効果が特に大きく、好適に用いることができる。また、このような変性により、電解液の種類に応じて、電極に対する塗布特性を改良できる。
【0031】
前記有機高分子において、第3級窒素原子(主鎖及び側鎖の第3級窒素原子)の割合は、有機高分子(分子内)に含まれる窒素原子全体(すなわち、有機高分子の主鎖および側鎖を構成する窒素原子)に対して、5モル%以上の範囲から選択でき、例えば、10モル%以上(例えば、12〜100モル%程度)、好ましくは15モル%以上(例えば、18〜99モル%程度)、さらに好ましくは20モル%以上(例えば、25〜98モル%程度)であってもよい。
【0032】
なお、第3級窒素原子の割合は、前記反応性基を有する化合物(反応性化合物、変性化合物)との反応(ii)などにより変性されたか否かに応じて適宜選択できる。例えば、反応性化合物により変性されていない有機高分子では、第3級窒素原子の割合が、有機高分子に含まれる窒素原子全体に対して、10〜60モル%、好ましくは15〜50モル%、さらに好ましくは20〜45モル%、特に25〜40モル%(例えば、28〜35モル%)程度であってもよい。また、反応性化合物により変性された有機高分子では、第3級窒素原子の割合が、有機高分子に含まれる窒素原子全体に対して、50モル%以上(例えば、60〜100モル%程度)、好ましくは70モル%以上(例えば、75〜99.9モル%)、さらに好ましくは80モル%以上(例えば、85〜99.5モル%)、特に90モル%以上(例えば、90〜99モル%程度)であってもよい。
【0033】
また、前記有機高分子は、主鎖に少なくとも第3級窒素原子を有していればよく、第1級窒素原子及び/又は第2級窒素原子を有していてもよい。第1級窒素原子及び/又は第2級窒素原子を有している場合、第1級窒素原子と第2級窒素原子との割合は、前者/後者(モル比)=100/0〜0/100、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは80/20〜20/80、特に70/30〜30/70(例えば、60/40〜40/60)程度であってもよい。
【0034】
なお、前記有機高分子を構成する窒素原子(例えば、第3級窒素原子)は、塩(又は錯体)を形成していてもよい。すなわち、前記有機高分子は、塩(又は錯体)を形成した有機高分子であってもよい。塩としては、無機酸塩、有機酸塩、金属塩などが挙げられる。特に、前記窒素原子に配位可能な金属(又は前記窒素原子と錯形成可能な金属)と塩を形成した有機高分子は、炭素材料に対する親和性が向上するためか、より一層効率よく炭素材料の比表面積を低減するのに有用である。また、電極材料(又は電極)表面における金属複合化が可能になり、電極特性(例えば、放電特性)などを向上するのに有用である。
【0035】
前記金属としては、例えば、アルカリ金属(Li,Na、Kなど)、アルカリ土類金属(Mg,Caなど)、遷移金属(V、Y、Mo、Fe、Mn、Ni、Cu、Agなど)、第12族金属(例えば、Znなど)、第13族金属(例えば、B、Alなど)、第14族金属(例えば、Si、Sn)、第15族金属(Pなど)などが挙げられる。これらの金属は、単独で又は2種以上組みあわせて塩を形成していてもよい。
【0036】
なお、塩を形成した有機高分子において、塩の割合は、窒素原子1モルに対して、塩0.1〜2モル等量、好ましくは0.5〜1.5モル等量、好ましくは0.8〜1.2モル等量程度であってもよい。
【0037】
有機高分子のアミン価は、例えば、1〜40ミリモル/g、好ましくは5〜30ミリモル/g、さらに好ましくは8〜25ミリモル/g程度であってもよい。
【0038】
代表的な前記有機高分子としては、例えば、ポリアルキレンイミン系樹脂(例えば、ポリC2-4アルキレンイミン系樹脂など)、ポリエーテルポリアミン系樹脂[例えば、ポリオキシアルキレンアルキルアミン系樹脂(例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミンなど)]などが挙げられる。これらの有機高分子は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、このような有機高分子は、結晶性が高い場合が多く、塗布特性(成膜性)が改善される場合が多い。また、これらの有機高分子(例えば、ポリアルキレンイミン系樹脂)は、水や低級アルコール(例えば、C1-3アルカノールなど)などの溶媒への溶解性がよいため、低温度でかつ高濃度で炭素材料を被覆処理でき、工業的なコストダウンが可能となる。
【0039】
これらの有機高分子のうち、特に、ポリアルキレンイミン系樹脂が好ましい。ポリアルキレンイミン系樹脂において、ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリイソプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリイソブチレンイミンなどのホモポリC1-6アルキレンイミン(好ましくはポリC2-4アルキレンイミン)、これらのホモポリアルキレンイミンに対応するコポリアルキレンイミン(コポリC2-4アルキレンイミンなど)などが挙げられる。特に、これらのポリアルキレンイミンのうち、窒素原子濃度の観点から、ポリエチレンイミンが好ましい。
【0040】
また、ポリアルキレンイミン系樹脂には、前記のように、塩を形成したポリアルキレンイミン、反応性化合物により変性された変性ポリアルキレンイミンなども含まれる。
【0041】
代表的なポリアルキレンイミン系樹脂には、ポリアルキレンイミン(例えば、ポリC2-4アルキレンイミン、特にポリエチレンイミン)、反応性化合物[例えば、イソシアネート化合物(例えば、オクタデシルイソシアネートなどのアルキルイソシアネートなど)、エポキシ化合物(エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのC2-4アルキレンオキシドなど)など]により変性されたポリアルキレンイミン(特に、エポキシ化合物で変性されたポリエチレンイミン)、塩(又は錯体、特に金属塩又は金属錯体)を形成したポリアルキレンイミン[例えば、ポリアルキレンイミン(特に、ポリエチレンイミン)の金属塩(例えば、ポリアルキレンイミンのアルミニウム塩など)など]などが挙げられる。ポリアルキレンイミン系樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0042】
好ましいポリアルキレンイミン系樹脂には、ポリエチレンイミン系樹脂が含まれる。なお、ポリエチレンイミン系樹脂は、有機溶媒(炭化水素類、エステル類など)に対する溶解性においても優れている。
【0043】
なお、ポリアルキレンイミンは、慣用の方法[アルキレンイミン(例えば、エチレンイミンなど)の開環重合など]により合成してもよく、市販品を用いてもよい。例えば、ポリアルキレンイミン(ポリエチレンイミン)は、例えば、日本触媒(株)から、エポミンシリーズなどとして入手できる。
【0044】
前記有機高分子の数平均分子量は、例えば、200以上(例えば、250〜1500000程度)、好ましくは400以上(例えば、500〜100000程度)、さらに好ましくは600以上(例えば、700〜50000程度)、特に800〜30000(例えば、900〜20000)、通常800〜15000(例えば、1000〜10000)程度であってもよい。
【0045】
なお、有機高分子は、室温(例えば、25℃)において、固体状又は液体状であってもよい。特に塗布性の観点から液体状の有機高分子を好適に用いることができる。液体状の有機高分子の粘度は、例えば、25℃において、100mPa・s以上(例えば、150〜300000mPa・s程度)、好ましくは300mPa・s以上(例えば、500〜250000mPa・s程度)、さらに好ましくは2000mPa・s以上(例えば、3000〜200000mPa・s程度)であってもよい。
【0046】
本発明の電極材料において、有機高分子の割合(被覆割合)は、炭素材料100重量部に対して、例えば、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜8重量部、さらに好ましくは0.05〜5重量部、特に0.1〜4重量部(例えば、0.3〜3重量部)程度であってもよい。本発明では、少量の有機高分子であっても、薄くかつ十分に炭素材料を被覆できる。
【0047】
本発明の電極材料は、前記炭素材料と有機高分子とを接触(面接触)させることにより得ることができる。接触方法(詳細には、炭素材料を有機高分子で被覆する方法)としては、特に限定されず、例えば、(i)炭素材料と、有機高分子又は有機高分子及び溶媒[例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1-4アルカノール、好ましくはC1-3アルカノールなどの低級アルコール)など]を含む混合液(溶液など)とを混合する方法、(ii)炭素材料に、有機高分子又は有機高分子及び溶媒を含む混合液(溶液など)を噴霧する方法、(iii)炭素材料と、有機高分子又は有機高分子及び溶媒とを含む混合物を造粒する方法、(iv)加熱により有機高分子を気化させて、炭素材料に有機高分子を蒸着する方法(気体蒸着法)などが挙げられる。なお、混合液を使用する場合には、炭素材料との接触に先立って必要に応じて混合液を濾過してもよく、接触後の炭素材料に対して溶媒を除去するため加熱処理や減圧処理を施してもよい。
【0048】
本発明の電極材料では、特定の前記有機高分子により炭素材料を被覆するので、被覆前後において、炭素材料の比表面積が大きく低減されている。そして、このような比表面積が低減されるためか、電極に対する塗布特性(製膜性)、放電特性(充放電特性)、サイクル特性、安全性(電解液の分解反応や副反応の抑制)などの特性において総合的に向上できる。
【0049】
本発明の電極材料は、種々の電極用途、例えば、二次電池(リチウム二次電池など)用電極、電気二重層キャパシタ用電極、電解コンデンサー用電極などに利用できる。特に、本発明の電極材料は、大電流での使用にも耐えうるため、二次電池(特に、リチウム二次電池)の負極材料として好適に利用できる。以下に、リチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池について詳述する。
【0050】
リチウム二次電池において、負極材料を構成する好適な炭素材料としては、黒鉛、特に天然黒鉛が挙げられる。そして、前記負極材料は、常法により、リチウム二次電池用負極の構成材料として使用できる。例えば、負極材料、バインダーなどを含む混合物を成形する方法;負極材料、有機溶媒、バインダーなどを含むペーストを負極集電体に塗布手段(ドクターブレードなど)を用いて塗布する方法などにより、任意の形状のリチウム二次電池用負極とすることができる。負極の形成においては、必要に応じて端子と組み合わせてもよい。
【0051】
負極集電体は、特に制限されず、公知の集電体、例えば、銅などの導電体を使用することができる。有機溶媒としては、通常、バインダーを溶解又は分散可能な溶媒が使用され、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒、水などの水性溶媒を例示することができる。溶媒の使用量は、ペースト状又はスラリー状となる限り特に制限されず、例えば、負極材料100重量部に対して、通常、30〜150重量部程度、好ましくは50〜100重量部程度であってもよい。
【0052】
バインダー(又は結着剤)としては、特に限定されず、例えば、フッ素含有樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなど)、水溶性高分子[例えば、セルロースエーテル(カルボキシメチルセルロースなど)など]、ゴム系バインダー(例えば、スチレンブタジエン系ゴムなどのジエン系ゴム)などが例示できる。バインダーの使用量(分散液の場合には、固形分換算の使用量)は、特に限定されず、例えば、負極材料100重量部に対して、0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部(例えば、2〜10重量部)程度であってもよい。ペーストの調製方法は、特に制限されず、例えば、バインダーと溶媒との混合液(又は分散液)と電極材料とを混合する方法などを例示することができる。
【0053】
なお、本発明の電極材料と導電材(又は炭素質材料、導電性炭素材料)とを併用して、負極を製造してもよい。導電材(又は炭素質材料)の使用割合は特に制限されないが、電極材料及び導電性炭素材料の総量に対して、通常、1〜10重量%程度、好ましくは1〜5重量%程度であってもよい。導電材(炭素質材料)を併用することにより、電極としての導電性を向上させることができる。このような導電材(炭素質材料)として、例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック)などが例示できる。導電材(導電性炭素材料)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、導電材(炭素質材料)は、例えば、電極材料と溶媒とを含むペーストに混合し、このペーストを負極集電体に塗布する方法などにより、電極材料とともに有効に利用できる。
【0054】
前記ペーストの負極集電体への塗布量は特に制限されず、通常、5〜15mg/cm2程度、好ましくは7〜13mg/cm2程度である。また、負極集電体に塗布した膜の厚さ(前記ペーストの膜厚)は、例えば、50〜300μm、好ましくは70〜200μm、さらに好ましくは80〜150μm程度である。なお、塗布後、負極集電体には、乾燥処理(例えば、真空乾燥など)を施してもよい。
【0055】
このような本発明の電極材料で構成されたリチウム二次電池用負極を用いることにより、リチウム二次電池を製造できる。具体的には、リチウム二次電池は、前記負極(前記電極材料を含む負極)、リチウムを吸蔵・放出可能な正極、電解液、セパレータ、集電体、ガスケット、封口板、ケースなどの電池構成要素を用い、常法により製造することができる。図1は、リチウム二次電池の一例を示す部分断面図である。
【0056】
リチウム二次電池は、正極活物質で構成された正極1と、前記電極材料を含む負極3と、前記正極1と負極3との間に介在するセパレータ2を備えている。このセパレータ2には非水溶媒系電解液が含浸されている。前記正極1、セパレータ2及び負極3は、ケース4内に収容され、ケース4の開口部は封口板5で封止されている。また、ケース4と負極1との間には、ニッケルメッシュ、金属金網などで構成された集電体6が配されている。符合7は絶縁パッキンである。
【0057】
正極は、特に制限されず、公知の正極が使用でき、正極は、例えば、正極集電体、正極活物質、導電剤などで構成できる。正極集電体として、例えば、リチウム、アルミニウムなどを例示することができる。正極活物質として、TiS2,MoS3,NbSe3,FeS,VS2,VSe2等の層状構造を有する金属カルコゲン化物;CoO2,Cr35,TiO2,CuO,V36,Mo3O,V25(・P25),Mn2O(・Li2O)、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24などの金属酸化物;ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性を有する共役系高分子物質などが例示できる。好ましい正極活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24などのリチウム複合酸化物である。正極活物質は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。導電剤として、例えば、導電性カーボンブラック(例えば、アセチレンブラックなど)などが例示できる。
【0058】
電解液は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、電解液として、有機溶媒に電解質を溶解させた溶液を用いることにより、非水系リチウム二次電池を製造することができる。電解質としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiClF4、LiAsF6、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCl、LiIなどの溶媒和しにくいアニオンを生成するリチウム塩を例示することができる。有機溶媒としては、例えば、カーボネート類(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートなど)、ラクトン類(γ−ブチロラクトンなど)、鎖状エーテル類(1,2−ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなど)、環状エーテル類(テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソランなど)、スルホラン類(スルホランなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、ポリオキシアルキレングリコール類(ジエチレングリコールなど)などの非プロトン性溶媒を例示することができる。有機溶媒は、単独で用いてもよく二種以上の混合溶媒として用いてもよい。
【0059】
電解質濃度は、例えば、電解液1Lに対して、電解質0.3〜5モル、好ましくは0.5〜3モル、さらに好ましくは0.8〜1.5モル程度である。
【0060】
セパレータは、特に制限されず公知のセパレータ、例えば、多孔質ポリプロピレン製不織布、多孔質ポリエチレン製不織布などのポリオレフィン系の多孔質膜などが例示できる。
【0061】
リチウム二次電池の形状は、円筒型、角型、ボタン型など任意の形態とすることができる。本発明のリチウム二次電池は、分散型、可搬性電池として、電子機器、電気機器、自動車、電力貯蔵などの電源や補助電源として利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明では、黒鉛などの炭素材料の比表面積を大きく低減でき、電極に対する塗布特性、放電特性、サイクル特性、安全性などの特性を総合的に大きく改善又は改良できる。そして、このような電極材料は、炭素材料の種類に応じて、二次電池(リチウム二次電池)、電気二重層キャパシタなどに適用できる。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0064】
なお、実施例において、黒鉛の面間隔および黒鉛化度は、X線回折装置((株)リガク製、RINT2000)を用いて、管電圧40kVおよび管電流200mAの条件下で測定した11回折線強度に基づいて求めた。
【0065】
また、電極材料の比表面積、平均細孔径、および細孔容積の測定は、比表面積測定装置(ユアサアイオニックス社製、「ADTOSRB−6」)を用いて行った。また、電極材料の粒径分布(平均粒子径、平均粒度)の測定は、粒度分布測定装置(日機装(株)製、「FRA−9200マイクロトラック」)を用いて行った。
【0066】
さらに、以下に、実施例で用いた炭素材料およびコーティング用樹脂(有機高分子)を示す。
【0067】
(炭素材料)
天然黒鉛A:平均粒径20.8μm、ポテト状、比表面積5.34m2/g、面間隔(d002)0.3354nm、黒鉛化度0.918
天然黒鉛B:平均粒径10.0μm、鱗片状、比表面積7.99m2/g、面間隔(d002)0.3355nm、黒鉛化度0.914
人造黒鉛C:平均粒径12.0μm、鱗片状、比表面積11.12m2/g、面間隔(d002)0.3356nm、黒鉛化度0.885
ハードカーボンD:コールタールピッチを原料とする1100℃炭化品、平均粒径14.0μm、破砕状、比表面積2.10m2/g。
【0068】
(コーティング用樹脂)
(第3級アミノ基を主鎖に有する有機高分子)
有機高分子1:ポリエチレンイミン[日本触媒(株)製、商品名「エポミン」、品番「SP−003」、数平均分子量約300、粘度200〜500mPa・s(25℃)]
有機高分子2:ポリエチレンイミン[日本触媒(株)製、商品名「エポミン」、品番「SP−006」、数平均分子量約600、粘度500〜2500mPa・s(25℃)]
有機高分子3:ポリエチレンイミン[日本触媒(株)製、商品名「エポミン」、品番「SP110」、分子量約1000、粘度5000〜15000mPa・s(25℃)]
有機高分子4:ポリエチレンイミン[日本触媒(株)製、商品名「エポミン」、品番「SP−012」、数平均分子量約1200、粘度3500〜7500mPa・s(25℃)]
有機高分子5:ポリエチレンイミン[日本触媒(株)製、商品名「エポミン」、品番「SP−018」、分子量約1800、粘度8500〜15000mPa・s(25℃)]
有機高分子6:ポリエチレンイミン[日本触媒(株)製、商品名「エポミン」、品番「SP−200」、数平均分子量約10000、粘度40000〜150000mPa・s(25℃)]
有機高分子7:ポリエチレンイミン水溶液[日本触媒(株)製、商品名「エポミン」、品番「P−1000」、数平均分子量約70000、粘度(溶液粘度)400〜900mPa・s(25℃)]
有機高分子8:プロピレンオキサイド変性ポリエチレンイミン[日本触媒(株)製、商品名「エポミン」、品番「PP−061」、数平均分子量約1400、粘度200mPa・s以下(25℃)]
有機高分子9:ポリエチレンイミンのアルミニウム塩(又はアルミニウムが配位したポリエチレンイミン)を含む水溶液
なお、上記有機高分子9は、ポリエチレンイミン[日本触媒(株)製、商品名「エポミン」、品番「SP−200」、数平均分子量約10000、粘度40000〜150000mPa・s(25℃)]を30重量%の割合で含む水溶液に対して、ポリエチレンイミンの窒素原子1モルに対して1モルの割合で塩化アルミニウムを混合することにより調製した。
【0069】
(第3級アミノ基を有しない有機高分子)
有機高分子10:ポリアリルアミン[日東紡績(株)製、商品名「PAA−10C」、数平均分子量約15000]
有機高分子11:ポリアリルアミン[日東紡績(株)製、商品名「PAA−H−10C」、数平均分子量約60000]
有機高分子12:ポリエチレンオキサイド[明成化学工業(株)製、商品名「E−30」、数平均分子量約30〜50万]。
【0070】
[電極材料の作製および比表面積の測定]
天然黒鉛Aと、表1に示すコーティング用樹脂(有機高分子)とをそれぞれ表2に示す重量比となるように混合した混合物に、水を適量加え、室温で1時間攪拌後、ろ過し、120℃で常圧乾燥することにより、有機高分子で被覆された電極材料を得た。そして、得られた電極材料の比表面積をそれぞれ測定した。
【0071】
有機高分子の特性を表1に、比表面積の測定結果を表2にそれぞれ示す。なお、表1において、「溶解性」とは、コーティング用樹脂の溶媒に対する溶解性を以下の基準で評価したものである。また、表2において、「4.15」などの値は、比表面積を表し、単位は「m2/g」である。
【0072】
○…溶解している
△…わずかに溶解しないものが見られる
×…溶解しない。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表2から明らかなように、第3級アミノ基を主鎖に有するポリエチレンイミンは、比表面積の低減効果が大きく、特に、分子量が1000〜10000程度で、有機溶媒への溶解性が良好な有機高分子であるほど、比表面積の減少効果が大きかった。この理由は定かではないが、主鎖にアミノ基を有し、分子サイズが適切で、天然黒鉛Aとの親和性に優れた有機高分子ほど、比表面積の減少効果が大きいものと考えられる。
【0076】
[電極材料の作製および電池特性の評価]
(実施例1〜12、比較例2〜3、比較例5〜7)
表3に示す炭素材料と、表3に示すコーティング用樹脂(有機高分子)とをそれぞれ表3に示す重量比(固形分換算)となるように混合した混合物に、水を適量加え、室温で1時間攪拌後、ろ過し、120℃で常圧乾燥することにより、有機高分子で被覆された電極材料を得て、得られた電極材料の比表面積をそれぞれ測定した。
【0077】
得られた電極材料を、結着剤(カルボキシメチルセルロース、日本ゼオン(株)製、「セロゲンWSC」、以下「CMC」という)及びジエン系ゴムバインダー(BM−400B、日本ゼオン(株)製、以下「SBR」という)とを含む混合水溶液に分散させて、スラリー状にした後、負極成形機を用いて、銅板ロールに得られたスラリーを厚みが100〜110μmになるように塗布し、200℃にて真空乾燥を行い、負極を作製した。なお、前記混合水溶液において、CMCおよびSBRの混合割合は、負極材料、結着剤及びバインダーの合計を100重量部として、CMCを1.5重量部、SBRを1.5重量部の割合となるようにした。
【0078】
次いで、上記で得られた負極とともに、正極活物質として金属リチウム箔を用いた正極、電解液としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを、前者/後者(体積比)=1/1の割合で混合した溶媒に、過塩素酸リチウム(LiClO4)を1mol/Lの割合で溶解した溶液を用い、セパレーターとしてポリプロピレン不繊布を用いて、図1に示す構造のリチウム二次電池を作製した。なお、図1において、リチウム二次電池は、正極1、セパレータ2、負極3、ケース4、封口板5、集電体6、及び絶縁パッキン7で構成されている。
【0079】
そして、得られたリチウム二次電池の放電特性(放電容量、初期充放電効率)を測定した。測定は、1mA/cm2の定電流充電後10mV停電位充電を行い、総充電時間を12時間とした。また、放電は1mA/cm2の定電流とした。放電容量は、電圧が1.2Vに低下するまでの容量とした。なお、表3において、「効率」とは初期充放電効率を意味する。
【0080】
(比較例1、4、8及び9)
コーティング用樹脂を使用しなかったこと以外は、上記と同様にリチウム二次電池を作製し、放電特性を測定した。
【0081】
結果を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
表3から明らかなように、第3級アミノ基を主鎖に有するポリエチレンイミンを用いることにより、少ない被覆量(コーティング量)で炭素材料の比表面積を低下できることが確認できた。特に、数平均分子量が1000〜10000程度の有機溶媒に対する溶解性が良好なポリエチレンイミンが、比表面積の減少効果が大きく、電池特性の向上効果に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、リチウム二次電池の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1…正極
2…セパレータ
3…負極
4…ケース
5…封口板
6…集電体
7…絶縁パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料と、この炭素材料を被覆する有機高分子とで構成された電極材料であって、前記有機高分子が、少なくとも第3級窒素原子を主鎖に有する電極材料。
【請求項2】
炭素材料が比表面積10m2/g以下の粒子である請求項1記載の電極材料。
【請求項3】
炭素材料が、球状又はポテト状粒子で構成されている請求項1記載の電極材料。
【請求項4】
有機高分子が、分子内に含まれる窒素原子全体に対して10モル%以上の第3級窒素原子を含むポリアルキレンイミン系樹脂で構成されている請求項1記載の電極材料。
【請求項5】
ポリアルキレンイミン系樹脂が、分子内に含まれる窒素原子全体に対して15モル%以上の第3級窒素原子を含むポリエチレンイミン系樹脂であって、数平均分子量800〜30000のポリエチレンイミン、第1級又は2級窒素原子に対して反応性の反応性化合物で変性された変性ポリエチレンイミン、およびポリエチレンイミンの金属塩から選択された少なくとも1種のポリエチレンイミン系樹脂で構成されている請求項4記載の電極材料。
【請求項6】
ポリアルキレンイミン系樹脂が、分子内に含まれる窒素原子全体に対して80モル%以上の第3級窒素原子を含み、かつイソシアネート類及び/又はエポキシ化合物で変性された変性ポリエチレンイミンで構成されている請求項4記載の電極材料。
【請求項7】
有機高分子の割合が、炭素材料100重量部に対して0.001〜10重量部である請求項1記載の電極材料。
【請求項8】
(i)炭素材料が平均粒径1〜50μm及び比表面積1.5〜10m2/gの球状又はポテト状黒鉛粒子で構成されており、(ii)有機高分子が、有機高分子に含まれる窒素原子全体に対して20モル%以上の第3級窒素原子を含むポリエチレンイミン系樹脂であって、数平均分子量800〜15000のポリエチレンイミン、C2-4アルキレンオキシドで変性された変性ポリエチレンイミン、およびポリエチレンイミンの金属塩から選択された少なくとも1種のポリエチレンイミン系樹脂で構成されており、(iii)有機高分子の割合が炭素材料100重量部に対して0.05〜5重量部である請求項1記載の電極材料。
【請求項9】
リチウム二次電池用負極に用いる請求項1記載の電極材料。
【請求項10】
請求項1記載の電極材料を備えているリチウム二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2007−95494(P2007−95494A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283443(P2005−283443)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】