電極材料及び燃料電池
【課題】固体酸化物型燃料電池燃料極の高性能化を実現でき、かつ燃料としてメタンガス等の炭化水素ガスを使用して、燃料の予備改質や加湿を行うことなく効率よく発電を行うことができる、高性能な燃料電池の作製に有用な電極材料を提供する。
【解決手段】コバルトおよびニッケルからなる金属粒子ならびに固体酸化物からなる電解質粒子を含むサーメットで構成される多孔質体からなり、気体に対する吸着能を式:吸着分子数(モル)/多孔質体の単位面積(m2)で表した場合、メタン、一酸化炭素及び水素のそれぞれの気体に対して約0.1〜10×10-6モル/m2の吸着能を有することを特徴とする燃料極104用電極材料。
【解決手段】コバルトおよびニッケルからなる金属粒子ならびに固体酸化物からなる電解質粒子を含むサーメットで構成される多孔質体からなり、気体に対する吸着能を式:吸着分子数(モル)/多孔質体の単位面積(m2)で表した場合、メタン、一酸化炭素及び水素のそれぞれの気体に対して約0.1〜10×10-6モル/m2の吸着能を有することを特徴とする燃料極104用電極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料、特に燃料電池において燃料極として有利に使用することのできる電極材料、及びそのような電極材料からなる燃料極を備えた燃料電池に関する。本発明の燃料電池は、例えばニッケルサーメットなどの多孔質体を燃料極として使用した従来の燃料電池に比較して高い燃料極性能を実現できるばかりでなく、燃料としてメタンガス等を使用した場合でも、燃料の予備改質や加湿を行うことなく効率よく発電を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
従来から、火力発電などに代わる低公害の発電手段として、あるいはガソリンなどを燃料とするエンジン自動車に代わる電気自動車の電気エネルギー源として、燃料電池が開発され、実用化されるに至っている。特に最近では、燃料電池の高効率化、高性能化、低コスト化などを目指して多くの研究がなされている。
【0003】
周知の通り、燃料電池には種々の発電形式があるけれども、なかでも固体電解質を用いた形式の燃料電池、すなわち、固体電解質型燃料電池(SOFC)は、最も高い発電効率が期待され、長寿命化、低コスト化が可能であるので、いろいろな技術分野において着目されている。固体電解質型燃料電池の一例を示すと、イットリア(Y2O3)が添加された安定化ジルコニアからなる焼成体を酸素イオン伝導型の固体電解質層として用いたものがある。この燃料電池の場合、固体電解質層の一面には空気極(カソード層)が設けられ、その反対面には燃料極(アノード層)が設けられる。固体電解質層、アノード層及びカソード層から形成された燃料電池セルをチャンバに収納して燃料電池が完成する。カソード層側に酸素又は酸素含有気体を供給し、アノード層側にメタン等の燃料ガスを供給して発電を行うことができる。この燃料電池では、カソード層に供給された酸素(O2)が、カソード層と固体電解質層との境界で酸素イオン(O2−)にイオン化され、この酸素イオンが、固体電解質層によってアノード層に伝導され、アノード層に供給された、例えばメタン(CH4)ガスと反応し、そこで、最終的には、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)が生成される。この反応において、カソード層とアノード層との間に電位差が生じる。そこで、カソード層とアノード層とにリード線を取り付ければ、アノード層の電子が、リード線を介してカソード層側に流れ、燃料電池として発電することになる。
【0004】
上記したような燃料電池や、その他のタイプの燃料電池において、発電効率などを高めるためにいろいろな改良が行われている。例えば、特許文献1は、特に固体電解質型燃料電池において燃料極として有利に使用しうるニッケルサーメットとその製造方法を記載している。この特許文献に記載されているニッケルサーメットは、金属ニッケル相35〜70%及びイットリアにより立方晶形として安定化されたジルコニア相65〜30重量%からなり、両相が1μmよりも小さいレベルで明確にかつ均一に分布しており、かつニッケルの分散率が0.2〜2.0であり、比表面積が2〜12m2/g(ニッケル)及び1〜4m2/g(サーメット)であることを特徴とする。
【0005】
燃料極としてニッケルサーメットを使用した燃料電池は、最近でも提案されている。例えば、特許文献2は、NiО(酸化ニッケル)、CoО(酸化コバルト)等の金属酸化物からなる母粒子と、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、PSZ(部分安定化ジルコニア)、SDC(サマリアドープセリア)等の酸素イオン伝導性を有するセラミックスからなる子粒子とを複合化し、得られた複合粉体を焼成してなる固体電解質型燃料電池用燃料極を記載している。
【0006】
また、特許文献3は、その50%径が0.4〜0.8μmの範囲内にあるジルコニア微粉体と、その50%径が25〜50μmの範囲内にあるジルコニア粗粉体と、その50%径が2μmより大きく5μmより小さい範囲内にある酸化ニッケル粉体とを含む混合粉体を焼結してなることを特徴とする固体電解質型燃料電池用燃料極を記載している。
【特許文献1】特開平5−255796号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−127761号公報(特許請求の範囲、段落0001)
【特許文献3】特開2005−19261号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、燃料極としてニッケルサーメットを使用した燃料電池は、依然として解決されるべき課題を有している。例えば、メタンガスを燃料として使用した場合、燃料極がニッケルサーメットからなっている場合、燃料極の活性が相対的に低いために高い燃料極性能を実現することができないばかりでなく、燃料極の表面に炭素が析出するという問題が発生する。また、燃料電池では、通常、その性能の向上のために白金等の貴金属が触媒として用いられている。しかし、例えば白金は、その資源が有限であり、高価でもあるので、かかる貴金属触媒を使用しない燃料極の開発が望まれる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、各種の燃料電池において高い燃料極性能を実現でき、かつ燃料としてメタンガス等の炭化水素ガスを使用した場合であっても、燃料の予備改質や加湿等の処理を行うことなく効率よく発電を行うことができる燃料電池用電極材料と、そのような電極材料を使用した高性能な燃料電池を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、白金族金属等の高価な原料を使用しなくとも、燃料の炭化や付着の問題を回避できる電極材料と、そのような電極材料を使用した高性能な燃料電池を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の目的は、メタンガス等の直接酸化についての活性を改善し、燃料極の過電圧を抑制することのできる電極材料と、そのような電極材料を使用した高性能な燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究した結果、固体電解質型燃料電池において燃料極として一般的に使用されているニッケルサーメットにおいて、燃料反応に関与する反応子、例えばメタン、一酸化炭素、水素などに対する燃料極の吸着能を適正に調整するのが有効であることを発見し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、1つの面において、多孔質体からなり、かつ気体に対する吸着能を式:吸着分子数(モル)/多孔質体の単位面積(m2)で表した場合、メタン、一酸化炭素及び水素のそれぞれの気体に対して約0.1〜10×10-6モル/m2の吸着能を有することを特徴とする燃料電池用電極材料にある。
【0013】
また、本発明者らは、このような電極材料において使用される多孔質体、好ましくは多孔質サーメットは、その比表面積が特定の範囲のあるとき、吸着能の向上などに大きく寄与しうるということも発見した。燃料極の比表面積は、好ましくは、約0.1〜40m2/gの範囲であり、さらに好ましくは約0.2〜10m2/gの範囲である。
【0014】
また、本発明は、もう1つの面において、固体電解質基材と、該基材の燃料室側に形成された燃料極と、該基材の空気室側に形成された空気極とから形成された燃料電池セルを含む固体電解質型燃料電池であって、前記燃料極が、本発明の電極材料からなることを特徴とする固体電解質型燃料電池にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の詳細な説明から理解されるように、本発明の電極材料を燃料極の形成に使用した場合、燃料極性能及びしたがって電池性能を顕著に改善できるという効果がある。また、本発明によれば、従来一般的な構造をもった燃料電池でも、本発明の電極材料を使用することで高い燃料極性能を実現でき、かつ燃料としてメタンガス等の炭化水素ガスを使用した場合でも、燃料の予備改質や加湿を行うことなく効率よく発電を行うことができる。また、本発明の燃料電池は、発電効率に優れ、長寿命化、低コスト化、小型化も可能である。
【0016】
また、本発明の電極材料は、燃料電池において燃料の炭化や付着の問題を回避できるばかりでなく、燃料電池の製造において白金族金属等の高価な原料を使用しなくてもすむという特長がある。
【0017】
さらに、本発明の電極材料は、メタンガス等の直接酸化についての活性を改善でき、かつ燃料極の過電圧を抑制できるという特長がある。
【0018】
さらにまた、本発明では、燃料電池を燃料電池ユニットの形で構成し、2個もしくはそれ以上の燃料電池ユニットを1つのケーシングに組み入れることで、燃料電池の空間を有効利用し、小型かつコンパクトであるにもかかわらずより高出力な燃料電池を提供することができる。
【0019】
例えば、混合燃料ガスを使用したシングルチャンバ型燃料電池の場合には、複数個の燃料電池セルを積層した形でチャンバ内に配置することによって、単一の燃料電池セルを収容した場合に比較してより高い電圧を取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による燃料電池用電極材料は、いろいろなタイプの燃料電池において燃料極(アノード層)の形成に有利に使用することができるけれども、特に固体電解質型燃料電池の燃料極の形成に有利に使用することができる。よって、以下、本発明の電極材料及び燃料電池を特に固体電解質型燃料電池を参照してそれらの好ましい実施形態について記載することとする。
【0021】
本発明の固体電解質型燃料電池は、一般的に知られている燃料電池と同様に、いろいろな構成を有することができる。本発明の実施に好適な固体電解質型燃料電池は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、燃料電池セルを固体燃料、液体燃料、ガス燃料などの燃焼によって発生せしめられた火炎が燃料極に接触するように配置してその火炎中の燃料種と熱によって発電を行う直接火炎型燃料電池、燃料電池セルをガス燃料と酸素もしくは酸素含有ガスとの混合燃料ガス雰囲気中に配置して、燃料極と空気極の間で発生する電位差に基づいて発電を行うシングルチャンバ型燃料電池などを包含する。また、かかる燃料電池の燃料電池セルは、典型的には、平板型セル、円筒型セル、セグメント型セルなどである。円筒型セルは、円筒縦縞型セルと円筒横縞型セルに分けることができる。要するに、本発明の実施において、燃料電池は、刊行物等で公知な構造及び現在実施されている構造を含めたいろいろな構造を有することができる。
【0022】
本発明の固体電解質型燃料電池は、基本的に、従来一般的な燃料電池と同様に、固体電解質基材と、該基材の燃料室側に形成された燃料極と、該基材の空気室側に形成された空気極とから形成された燃料電池セルを含むように構成することができ、本発明の範囲において任意に変更し、改良することができる。なお、本発明の燃料電池は、以下に詳細に説明するように、本発明の電極材料から燃料極が形成されていることが肝要である。
【0023】
本発明の実施において、燃料電池の固体電解質基材は、いろいろな形態で形成することができる。この基材は、典型的には、平板の形態であるかもしくはフィルム、薄膜、コーティングなどの形態である。また、固体電解質基材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、次のような公知の材料を包含する。
a)YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、これらのジルコニアにさらにCe、Al等をドープしたジルコニア系セラミックス。
b)SDC(サマリアドープドセリア)、SGC(ガドリアドープドセリア)等のセリア系セラミックス。
c)LSGM(ランタンガレート)、例えばLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3、酸化ビスマス系セラミックス、例えばBi2O3。
【0024】
固体電解質基材は、それ自体が燃料極及び空気極のための支持機能を有している自立型であってもよく、さもなければ、燃料極などによって固体電解質基材が支持される非自立型であってもよい。非自立型の基材を採用した場合、固体電解質基材を肉厚で形成したり、平板状の固体電解質基材を使用することが不要となる。したがって、固体電解質基材の厚さは、広い範囲で変更することができ、一般的に約10〜500μmであり、好ましくは約20〜50μmである。固体電解質基材を特に薄くする場合は、通常、電解質支持型構造が採用される。
【0025】
固体電解質基材は、薄膜、フィルム等の形成に慣用されている任意の技法、例えばグリーンシートプロセスを使用して形成することができる。例えば、固体電解質材料のペーストを所定のパターンで塗布し、乾燥してグリーンシートを形成した後、そのグリーンシートを高温で焼成することによって固体電解質基材を容易に形成することができる。ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷法などの印刷法を有利に使用することができる。具体的には、例えば平板状の仮支持体の片面に固体電解質材料のペーストを所定のパターンで印刷し、乾燥及び焼成することによって固体電解質基板を形成することができる。焼成温度は、使用する固体電解質材料の特徴などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約900〜1500℃の範囲である。
【0026】
空気極(カソード層)は、本発明の実施において特に限定されるものではなく、燃料電池に一般的に使用されている電極材料から形成することができる。適当な空気極形成材料として、例えば、ストロンチウム(Sr)等の周期律表第3族元素が添加されたランタンのマンガン(例えば、ランタンストロンチウムマンガナイト)、ガリウム又はコバルト酸化化合物(例えば、ランタンストロンチウムコバルタイト)などを挙げることができる。
【0027】
空気極は、内部に空気又は酸素が充分に拡散でき、かつ充分な電気伝導性を維持できる程度に、多孔質に形成される。空気極の気孔率は、いろいろに変更することができるけれども、通常、約10〜60%であることが好ましい。また、固体電解質基材を比較的に薄く形成したような場合には、空気極を例えば導電性メッシュのような支持体で支持するような構成を採用してもよい。空気極を導電性メッシュで支持した場合、耐熱衝撃性を高め、急激な温度変化によるひび割れの発生を防止することができる。
【0028】
また、空気極は、燃料電池の構成、空気極の使用形態などに応じていろいろな厚さで形成することができる。空気極の厚さは、通常、約20〜200μmであり、好ましくは約30〜120μmである。空気極が薄すぎると、空気極本来の機能を得ることができなくなり、不十分なカソード反応の結果として出力の低下などの問題が引き起こされる。
【0029】
空気極は、薄膜、フィルム等の形成に慣用されている任意の技法を使用して形成することができる。例えば、空気極は、すでに形成してある固体電解質基材の表面に空気極形成性のペーストを所定のパターンで塗布し、乾燥後に焼成することによって容易に形成することができる。ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷法などの印刷法を有利に使用することができる。焼成温度は、使用する空気極形成材料の特徴などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約900〜1500℃の範囲である。もちろん、必要ならば、その他の手法を使用して空気極を形成してもよい。
【0030】
本発明の燃料電池では、特定の電極材料から燃料極(アノード層)を形成する。ここでいう特定の電極材料が、本発明の電極材料であり、多孔質体からなり、かつ気体に対する吸着能を式:吸着分子数(モル)/多孔質体の単位面積(m2)で表した場合、燃料反応の反応子であるメタン、一酸化炭素及び水素のそれぞれの気体に対して約0.1〜10×10-6モル/m2の吸着能を多孔質体が有することを特徴とする。多孔質体の吸着能は、好ましくは、約1〜5×10-6モル/m2の範囲である。なお、反応子は、必要ならば、メタン、一酸化炭素及び水素以外のものであってもよい。多孔質サーメットの吸着能が0.1×10-6モル/m2を下回ると、燃料極における酸化反応に対する活性が低くなるといった不具合が発生し、反対に10×10-6モル/m2を上回ると、反応物の電極からの脱離が起き難くなり、結果として電極反応が不活発になるといった不具合が発生する。
【0031】
本発明の電極材料では多孔質体が使用される。電極材料が多孔質体であると、燃料極に耐熱衝撃性などを付与することができる。多孔質体の燃料極において、その気孔率は、いろいろに変更することができるけれども、通常、約10〜60%であることが好ましい。また、燃料極を比較的に薄く形成したような場合には、燃料極の少なくとも一部を例えば導電性メッシュのような支持体で支持するような構成を採用してもよい。燃料極を導電性メッシュで支持した場合、耐熱衝撃性を高め、急激な温度変化によるひび割れの発生を防止することができる。
【0032】
本発明者らの知見によると、電極材料として使用される多孔質体は、好ましくは、約0.1〜40m2/gの比表面積を有している。多孔質体の比表面積は、さらに好ましくは、約2〜10m2/gの範囲である。多孔質体の比表面積が0.1m2/gを下回ると、吸着能低下による電池性能の低下といった不具合が発生し、反対に40m2/gを上回ると、金属粒子の凝集焼結による界面抵抗の増大といった不具合が発生する。本発明では、上述の吸着能と比表面積の間でバランスがとれているので、電池性能を顕著に向上できるといった効果が得られる。
【0033】
多孔質体は、好ましくは、金属粒子と固体酸化物からなる電解質粒子とを含む任意の多孔質サーメットであることができる。金属粒子は、例えば、ニッケル、銅などの粒子である。本発明の電極材料において、多孔質サーメットは、好ましくは、ニッケルを金属粒子として含むニッケルサーメットである。
【0034】
本発明の実施において、多孔質体として有利に用いることのできるニッケルサーメットは、各種の組成を有することができる。好適なニッケルサーメットは、第1の成分としてのニッケルとほぼ当量で第2の成分、コバルトが添加されているニッケルサーメットである。さらに好ましくは、本発明の実施において、ニッケルサーメットは、コバルト及びニッケルからなる金属粒子ならびに固体酸化物からなる電解質粒子を含み、また、ニッケルサーメットの金属粒子は、CoО及びNiОに換算して、20〜90モル%のコバルト及び残部のニッケルからなる。コバルトの含有量が20モル%を下回ったり90モル%を上回ったりすると、本発明の燃料極に由来する特有の効果が導かれなくなり、また、90モル%を上回ると、燃料極剥離の問題も発生するおそれがでてくる。
【0035】
多孔質サーメットにおいて上述の金属粒子と組み合わせて用いられる電解質粒子は、サーメットの形成に一般的に使用されている固体酸化物からなることができる。多孔質サーメットの形成に好適に用いられる電解質粒子は、例えば、セリア系セラミックス、ジルコニア系セラミックスなどである。これらのセラミックスは、必要ならば、2種類以上を混合して使用してもよい。さらに具体的に説明すると、多孔質サーメットの形成に好適なセラミックスは、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、サマリウムドープセリア系セラミックス、ガドリニウムドープセリア系セラミックス、イットリウム安定化ジルコニア系セラミックス、スカンジウム安定化ジルコニア系セラミックス又はその混合物である。
【0036】
また、多孔質サーメット、特に金属粒子としてコバルト及びニッケルを含むニッケルサーメットにおいて、コバルト及びニッケルは、それらの金属がそれぞれ酸化物であるCoО及びNiОの状態にあるとき、そのサーメットの全量を基準にして約10〜70重量%の量で含まれることが好ましい。コバルト及びニッケルの含有量は、さらに好ましくは、約30〜70重量%の範囲である。コバルト及びニッケルの含有量が上記の範囲を外れると、本発明の燃料極に由来する特有の効果が導かれなくなる。
【0037】
コバルト及びニッケルからなる金属粒子ならびに固体酸化物からなる電解質粒子を含み、コバルト及びニッケルの含有量が上記の範囲を満足させるサーメットは、その具体的な一例を示すと、ニッケルと、セリア系セラミックス、例えば20モル%Sm2О3ドープのCeО2、10モル%Gd2О3ドープのCeО2などか、さもなければジルコニア系セラミックス、例えば8モル%Y2О3安定化ZrО2、10モル%Sc2О3安定化Zr2О3などとの組み合わせで、ニッケルの含有量が約40〜70体積%のものである。また、これらのサーメットや本発明で使用されるその他のサーメットでは、必要に応じて、例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)などの貴金属を分散させてもよい。さらに、特例として、もしもニッケルと同等な作用及び効果が期待できるのであるならば、ニッケルに代えて銅(Cu)を使用してもよい。
【0038】
さらに、多孔質サーメットにおいて、コバルト及びニッケルは、少なくとも還元状態において、サーメット中に完全に固溶していることが好ましい。すなわち、多孔質サーメットが単一合金化している場合、本発明の燃料極に由来する特有の効果が良好に導かれることとなる。
【0039】
さらにまた、多孔質サーメットに含まれる電解質粒子は、金属粒子に比較して小さい粒径を有していることが好ましい。多孔質サーメットにおいて電解質粒子と金属粒子がこのような関係で含まれる場合、両者の間に形成される間隙が燃料極の性能向上に寄与できるからである。
【0040】
燃料極は、上記したような電極材料(例えば多孔質サーメットなどの多孔質体)から、燃料電池の構成、燃料極の使用形態などに応じていろいろな厚さで形成することができる。燃料極の厚さは、通常、約20〜200μmであり、好ましくは約30〜120μmである。燃料極が薄すぎると、燃料極本来の機能を得ることができなくなる。
【0041】
燃料極は、薄膜、フィルム等の形成に慣用されている任意の技法を使用して形成することができる。例えば、燃料極は、すでに形成してある固体電解質基材の表面に電極材料のペーストを所定のパターンで塗布し、乾燥後に焼成することによって容易に形成することができる。ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷法などの印刷法を有利に使用することができる。焼成温度は、使用する電極材料の特徴などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約900〜1500℃の範囲である。もちろん、必要ならば、その他の手法を使用して燃料極を形成してもよい。
【0042】
本発明の燃料電池セルは、例えば上記したように、固体電解質基材を形成した後にその表面に空気極及び燃料極を形成することが可能であるけれども、必要ならば、他の順序で燃料電池セルを形成してもよい。例えば、空気極形成性ペーストを所定のパターンで印刷し、必要に応じて乾燥した後、その表面にさらに固体電解質材料のペーストを所定のパターンで印刷し、必要に応じて乾燥し、次いで、その表面に燃料極形成性のペーストを所定のパターンで印刷し、必要に応じて乾燥する。最後に、未焼成の空気極、固体電解質基材及び燃料極を一括して焼成する。このようなグリーンシートプロセスは、燃料電池セルの製造プロセスを短縮するのに有効である。
【0043】
上記したような構成を有する燃料電池セルは、本発明の燃料電池において、いろいろな形で構成することができる。例えば、燃料電池セルは、単一の部材から構成してもよく、2個もしくはそれ以上の小部材(パーツ)の組み合わせから構成してもよい。すなわち、本発明の好ましい1態様において、燃料電池セルは、固体電解質基材と、燃料極と、空気極とを含む単一のセル部材から構成することができる。単一のセル部材からなる燃料電池セルの構成及び製造は、上記した説明から容易に理解することができるであろう。
【0044】
本発明のもう1つの好ましい態様によると、燃料電池セルは、縦方向、横方向又は縦横両方向に分割して配置された、それぞれ固体電解質基材と、燃料極と、空気極とを含む複数個の区画セル部材の組み合わせから構成することができる。かかる燃料電池セルの場合、それぞれの区画セル部材を相互に直列もしくは並列に電気的に接続して、目的とする燃料電池セルを完成することができる。
【0045】
本発明の実施においては、隣接して配置された複数個の区画セル部材を直列もしくは並列に接続する場合、いろいろな方法で有利に実現することができる。例えば、ある区画セル部材の空気極に取り付けた導電性メッシュと、該区画セル部材に隣接する別の区画セル部材の燃料極に取り付けた導電性メッシュとを、前記区画セル部材間の間隙を通過して延長して配置された導電性メッシュを介して有利に接続することができる。ここで、接続手段とした使用される導電性メッシュは、空気極の導電性メッシュであってもよく、燃料極の導電性メッシュであってもよく、あるいはそれらの導電性メッシュとは異なる第3の導電性メッシュであってもよい。導電性メッシュどうしの接続は、導電性メッシュの材質などに応じて任意の結合方法を使用することができる。例えば、導電性メッシュが金属メッシュからなる場合、スポット溶接法などを有利に使用することができる。もちろん、必要ならば、導電性メッシュ以外の材料を接続手段として使用してもよい。
【0046】
上記したような構成を有する燃料電池セルは、上記したように、いろいろなタイプの燃料電池に使用することができる。例えば、燃料電池セルをガス燃料と酸素もしくは酸素含有ガスとの混合燃料ガス雰囲気中に配置して、空気極と燃料極の間で発生する電位差に基づいて発電を行う方式のシングルチャンバ型燃料電池において上記の燃料電池セルを使用する場合、燃料電池セルの複数個が1つのチャンバ内に積層して多層セル構造体の形で収容されており、かつ互いに隣接する空気極と燃料極とが直接接合されていることが好ましい。
【0047】
また、燃料電池において、燃料電池セルが、それぞれの燃料電池セルの空気極及び燃料極が混合燃料ガスの流動方向に対して平行となるようにチャンバ内に収容されており、燃料極及び空気極の各々が、混合燃料ガスが通過し得る多数の微細孔が形成された多孔質層であり、かつ固体電解質基材が、混合燃料ガスが実質的に通過することのない緻密構造を有しているように構成することが好ましい。
【0048】
さもなければ、燃料電池において、燃料電池用セルが、それぞれの燃料電池セルの空気極及び燃料極が混合燃料ガスの流動方向に対して直角となるようにチャンバ内に収容されており、空気極、燃料極及び固体電解質基材の各々が、混合燃料ガスが通過し得る多数の微細孔が形成された多孔質層であるように構成することも好ましい。
【0049】
さらに、上記したような多層燃料電池セルを有する燃料電池において、チャンバ内の多層燃料電池セルを除く空間部に充填物を充填し、充填物間の間隙を、発火限界内にある混合燃料ガスが存在していても発火し得ない間隙とすることにより、混合燃料ガスの防爆を図ることが有利である。すなわち、メタンガス等の燃料ガス及び酸素を含む混合燃料ガスや排ガスの給排口が形成されたチャンバ内に燃料電池セルが収容された燃料電池において、チャンバ内の燃料電池セルを除く部分であって、混合燃料ガスや排ガスが流動するチャンバ内の空間部に充填物が充填され、充填物間の間隙が、燃料電池を駆動した際に、その空間部内に発火限界内の混合燃料ガスが存在しても発火し得ない間隙であることが好ましい。なお、適当な充填物としては、例えば、燃料電池の駆動条件で安定な金属材料又はセラミック材料からなる粉粒体、多孔体又は細管を挙げることができる。
【0050】
また、この燃料電池では、上述のように、複数個の燃料電池セルを互いに隣接する空気極と燃料極とを直接接合するように積層して形成した多層燃料電池セルを使用することによって、所望とする高電圧を取り出すことができる。また、この多層燃料電池セルを、そのそれぞれの燃料電池セルの空気極及び燃料極を混合燃料ガスの流動方向に対して平行となるようにチャンバ内に配置する場合には、空気極及び燃料極の各々を、混合燃料ガスが通過し得る多数の微細孔が形成された多孔質層とし、固体電解質基材を、混合燃料ガスが実質的に通過することのない緻密構造とすることができる。一方、多層燃料電池セルを、そのそれぞれの燃料電池セルの空気極及び燃料極を混合燃料ガスの流動方向に対して直角に配置する場合には、燃料極、空気極及び固体電解質基材の各々を、混合燃料ガスが通過し得る多数の微細孔が形成された多孔質層することにより、混合燃料ガスが多層燃料電池セルを通過でき、他の通路を形成する必要性を排除することができる。
【0051】
さらに加えて、本発明による燃料電池は、単一の燃料電池ユニットのみからなってもよく、さもなければ、それぞれ本発明の燃料電池として機能することのできる2個もしくはそれ以上の燃料電池ユニットの組み合わせからなってもよい。特に本発明の燃料電池は、複数個の燃料電池ユニットを組み合わせることで、所定のサイズにおいて出力の増加などを容易に達成することができる。
【0052】
本発明の燃料電池は、それを複数個の燃料電池ユニットの組み合わせから構成する場合、いろいろな組み合わせで実施することができる。例えば、複数個の燃料電池ユニットを1個のケーシング内に一括して並べて配置することができる。組み合わせて使用する複数個の燃料電池ユニットは、それぞれ、同一の形状、構成及び寸法を有していてもよく、さもなければ、互いに異なる形状、構成及び寸法を有していてもよい。もちろん、所望であるあらならば、いろいろな燃料電池ユニットを任意に組み合わせて、かつ任意の配置パターンで使用してもよい。また、複数個の燃料電池ユニットをケーシングに収納して使用することは一例であり、例えば共通の基板に固定して使用することなど、その他の手法で使用してもよい。
【0053】
本発明による燃料電池は、発電効率に優れ、長寿命化、低コスト化が可能であるので、いろいろな分野において有利に製造することができる。例えば、本発明の燃料電池は、自動車用発電や業務用発電、家庭用発電などの分野で有利に利用することができる。また、小型化することで、例えばLEDの点灯、LCDの表示、携帯ラジオ、携帯情報機器などの駆動にも有利に利用することができる。
【0054】
本発明による燃料電池の構成等は、上記の説明から十分に理解できるものと考える。参考のため、燃料/酸化剤セパレータ型燃料電池の一例を添付の図1を参照して説明する。なお、図示の燃料電池は一例であって、当業者に容易に理解されるように、本発明の範囲内で構造、寸法等をいろいろに変更可能である。なお、燃料電池を構成する部材の形成に好適な材料などの説明は、すでに上記してあるので、ここでの説明を省略する。
【0055】
燃料電池は、図示されるように、イットリア(Y2O3)が添加された安定化ジルコニアからなる焼成体を酸素イオン伝導型の固体電解質基材100として用い、この固体電解質基材100の一方の主たる面側に空気極102が形成されているとともに、固体電解質基材100の他方の主たる面側に本発明による燃料極104が形成された燃料電池セル106が配設されている。燃料電池セル106の空気極102の側には、酸素又は酸素含有気体が供給される。他方の燃料極104の側には、メタン等の燃料ガスが供給される。
【0056】
図1に示す燃料電池セル106の空気極102側に供給された酸素(O2)は、空気極102と固体電解質基材100との境界で酸素イオン(O2-)にイオン化され、この酸素イオン(O2-)は、固体電解質基材100によって燃料極104に伝導される。燃料極104に伝導された酸素イオン(O2-)は、燃料極104に供給されたメタン(CH4)ガスと反応し、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)、水素(H2)及び一酸化炭素(CO)を生成する。かかる反応の際に、酸素イオンが電子を放出するため、空気極102と燃料極104との間に電位差が生じる。このため、空気極102と燃料極104を取出線108によって電気的に接続することにより、燃料極104の電子は空気極102の方向に取出線108を流れ、燃料電池から電気を取り出すことができる。なお、図示の燃料電池の作動温度は、約1,000℃である。
【実施例】
【0057】
実施例1
ニッケル・コバルト合金(Ni−Co)及びSDC(サマリアドープドセリア)のサーメット:Ni1-XCoX−SDCからなる燃料極を備えた固体電解質型燃料電池を作製した。また、比較のため、コバルトを含有しないニッケルサーメット:Ni−SDCからなる燃料極を備えた従来の固体電解質型燃料電池も作製した。
【0058】
最初に、Ni1-XCoXO(式中、xは、0、0.25、0.5又は0.75である)を固溶体の形で調製した。それぞれの組成を得るのに必要な量のCo3O4粉末及びNiO粉末をアルミナ製の坩堝で混合し、大気中で1000℃で10時間にわたって反応させ、粉砕した。得られた粉末を再び坩堝で混合した後、焼成炉に入れて大気中で約1000℃で10時間にわたって反応させた。得られた粉末をX線回折分析(XRD)に供したところ、それぞれの粉末が目的とする組成をもったNi1-XCoXO固溶体であることが確認された。また、それぞれの固溶体には坩堝に由来する不純物も含まれていないことが電子プローブ・マイクロアナライザ(EPMA)によって観察された。
【0059】
次いで、上記のようにして調製したNi1-XCoXO固溶体の粉末に40重量%のSDC(Ce0.8Sm0.2O1.9)粉末を加え、エチルセルロース系バインダ(STD−100、ダウケミカル社製)を使用して混練した。燃料極形成用のペーストが得られた。
【0060】
一方、SDC(Ce0.8Sm0.2O1.9)粉末にエタノール、フタル酸ジブチル及びポリビニルブチラールを加え、ボールミルで磨砕した後にグリーンシート化した。得られたグリーンシートを円形に打ち抜いた後、焼成炉に入れて大気中で1300℃で5時間にわたって焼成した。得られたSDCディスクは、約15mmの直径及び約0.3mmの厚さを有していた。
【0061】
SDCディスクを上記のようにして作製した後、そのディスクの片面に先の工程で調製した燃料極形成用のペーストをスクリーン印刷し、焼成炉に入れて大気中で約1300℃で5時間にわたって焼成した。なお、集電手段を形成するため、ペーストの印刷時、直径0.3mmの白金リード線が接続された白金メッシュ(#100、3mm×3mm)を同時に埋め込んだ。最終的な厚さが約50μmである燃料極が形成された。
【0062】
次いで、燃料極を形成した後のSDCディスクのもう1つの面に、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト:Sm0.5Sr0.5CоO3)−SDC(Ce0.8Sm0.2O1.9)混合ペースト(組成比:70重量%−30重量%)を使用して空気極を形成した。混合ペーストをスクリーン印刷した後、ディスクを焼成炉に入れて大気中で約1200℃で5時間にわたって焼成した。なお、集電手段を形成するため、ペーストの印刷時、直径0.3mmの白金リード線が接続された白金メッシュ(#100、3mm×3mm)を同時に埋め込んだ。最終的な厚さが約50μmである空気極が形成された。
【0063】
燃料極のNi1-XCoX粒子を還元するため、得られた燃料電池セル(燃料極:Ni1-XCoX−SDC/固体電解質基材:SDC/空気極:SSC−SDC)を乾燥水素雰囲気中で約700℃で1時間にわたって保持した。次いで、燃料電池セルを2本のアルミナ製二重円筒管(肉厚:2mm、外径:15mm)の間に配置し、ガラスで封着した。燃料極の組成を異にする円筒形の固体電解質型燃料電池が得られた。
【0064】
実施例2
前記実施例1で作製した燃料電池をサンプルとして使用して、その空気極側に酸素を2×10-5m3/分の流量で供給し、一方、燃料極側には、燃料ガスとして体積比が1:9となるようにヘリウムで希釈した乾燥状態のメタン(CH4)を使用し、2×10-5m3/分の流量で供給した。約600〜700℃で、下記の項目について発電実験を行った。
【0065】
〔メタンに対する放電性能の比較〕
それぞれの燃料電池サンプルにおいて、電流密度を増加させながら開回路電圧及び出力密度を測定したところ、図2にプロットするような測定結果が得られた。図示の電流密度−電圧曲線から理解されるように、燃料極としてNi1-XCoX−SDCを使用した場合、いずれのサンプルにおいても開回路電圧が0.85V以上となり、出力密度は、Co量(x)の増加に伴い高くなり、x=0.75の燃料極が最も高く、x=0の燃料極(コバルトを含有しない従来のニッケルサーメット)では高々約100mW/cm-2であったのに反して、約160mW/cm-2となった。これらの測定結果及びその他の測定結果から、Ni1-XCoX−SDCのCo量(x)は、20〜90モル%の範囲が好適であると考察される。なお、参考のために作製したx=1の燃料極(NiO粉末を使用しないで、CoO粉末100%で作製した燃料極)を備えた燃料電池では、電極剥離が容易に発生したため、発電性能を評価することができなかった。
【0066】
〔メタンに対する燃料極過電圧(反応抵抗に比例)の比較〕
それぞれの燃料電池サンプルにおいて、電流密度を増加させながら過電圧を電流遮断法で測定したところ、図3にプロットするような測定結果が得られた。図示の電流密度−過電圧曲線から理解されるように、燃料極としてNi1-XCoX−SDCを使用した場合、いずれのサンプルにおいても電流密度の増加とともに過電圧が増加する傾向があるけれども、Co量(x)の増加に伴い過電圧を抑制することができる。過電圧の抑制は、電池性能の向上が導かれることを意味する。
【0067】
〔Ni1-XCoX粒子の微細な多孔質構造〕
燃料極として使用したNi1-XCoX−SDCについて、そのNi1-XCoX粒子の微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したところ、Co量(x)の増加に伴い金属粒子の著しい粒成長を認めることができた。また、金属粒子の粒成長は、還元処理を行うことによってさらに顕著なものとなった。
【0068】
図4及び図5は、それぞれ、Ni1-XCoX粒子(図4:x=0;図5:x=0.75)について、それらの粒子の表面で観察された微細な多孔質構造と、還元処理によって引き起こされた顕著な粒成長を示すSEM写真である。なお、これらのSEM写真を撮影するに当たって、前記実施例1に記載の手法によってSDCディスクの表面にNi1-XCoXO粉末のスラリーを塗布し、空気中で約1300℃で5時間にわたって焼成した後、乾燥水素雰囲気中で約700℃で2時間にわたって保持した。図示のSEM写真から理解されるように、焼結されたNi0.25Co0.75粒子(図5)はNiO粒子(図4)に比較して大きな粒径及び顕著な粒成長を示すとともに、粒子間に形成された多数の空孔も大きいので、吸着力が相対的に低下する。燃料極の燃料種に対する吸着力は、強すぎても弱すぎても好ましくなく、適度に調整されることにより、効率的な電極性能が発現するものと考察される。
【0069】
〔Ni1-XCoX−SDC粒子の微細な多孔質構造〕
燃料極として使用したNi1-XCoX−SDCについて、そのNi1-XCoX−SDC粒子の微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したところ、Co量(x)の増加に伴い金属粒子及びSDC粒子の双方において著しい粒成長を認めることができた。実際、x=0のときはSDC粒子よりも小さかった金属粒子が、x=0.25以上ではSDC粒子以上の大きさに成長することが確認された。
【0070】
図6は、Ni1-XCoX−SDC粒子(x=0及びx=0.75)について、それらの粒子の表面で観察された微細な多孔質構造を示すSEM写真(倍率:10,000倍)である。なお、これらのSEM写真を撮影するに当たって、前記実施例1に記載の手法によってSDCディスクの表面にNi1-XCoXO粉末及びSDC粉末から調製したペーストをスクリーン印刷し、焼成炉に入れて大気中で約1300℃で5時間にわたって焼成した。図示のSEM写真から理解されるように、焼結されたNi0.25Co0.75−SDC粒子(右側写真)はNiO−SDC粒子(左側写真)に比較して大きな粒径及び空孔を有している。また、Ni0.25Co0.75−SDC粒子において、白くて小さな粒子はSDC粒子と認められ、Co量(x)の増加に伴いNi0.25Co0.75粒子とSDC粒子がともに粒成長していることがわかる。さらに、この電池の場合、NiCo−SDC燃料極とSDC電解質の間で界面抵抗の低下が認められ、電池性能の向上の裏づけをとることができた。
【0071】
〔Ni1-XCoX−SDC粒子のX線回折図〕
異なるNi1-XCoX−SDC粒子(x=0、0.25、0.5又は0.75)についてX線回折を行ったところ、図7にプロットするようなX線回折図が得られた。このX線回折図から理解されるように、各組成ともニッケル及びコバルトが完全に固溶し、単一合金化している。
【0072】
〔昇温脱離ガス分析法(TPD)による吸着能の評価〕
異なるNi1-XCoX−SDC粒子(x=0、0.5又は0.75)についてメタンを燃料ガスとして使用したときの吸着能をTPD(Temperature-Programmed Desorption)分析法によって評価した。TPD分析法は、次のようにして実施した。
【0073】
測定試料であるNiCo−SDC粒子を入れた流通式の容器(セル)にキャリアガス(ヘリウム)を流しながら温度を上昇させ、試料表面にすでに化学吸着しているガス分子をキャリアガス中に脱離させる。脱離ガスを吸着量測定装置で測定する。次いで、約200mgの測定試料を正確に秤量した後、流通式石英セルに充填してTPD測定を行う。セル内の脱ガス処理の後、吸着ガス(メタン)を室温で2分間にわたって流し、試料表面にメタンガスを吸着させる。その後、物理吸着したガスを脱離させるため、ヘリウムガスを流しながら約100℃で30分間保持する。次いで、ヘリウムガスを流しながら、室温付近から約700℃まで10℃/分の昇温速度で試料を加熱する。熱伝導度検出器(TCD)を用いて、脱離ガス量を信号強度(mV)として測定する。
【0074】
図8は、得られた結果をプロットしたTPDスペクトル図である。脱離ピークは、Co量(x)とは無関係に180℃及び420℃において認めることができたけれども、脱離ピーク面積は、Co量(x)の増加とともに減少した。その結果、図8に示されるように、Co量(x)の増加とともにメタンの吸着能、信号強度(mV)が低下した。
【0075】
以上に実施した発電実験の結果を総合するに、例えば、次のような考察を得ることができる。
(1)Ni系SDCサーメットからなる燃料極に対してCo原子を添加することで、メタン燃料についての電池性能を改善することができる。
(2)NiCo−SDC燃料極とSDC電解質の間の界面抵抗を低下させることができるので、燃料極における過電圧を低下させることができる。
(3)原料として使用するNi1-XCoXO相においてCoOの量を増加させているので、Ni1-XCoXO粒子及びSDC粒子の双方における粒成長に大きく貢献することができる。
【0076】
実施例3
前記実施例2に記載の手法を繰り返して発電実験を行ったけれども、本例の場合、燃料ガスとして、メタンに代えて(1)3体積%の水蒸気で加湿した水素又は(2)一酸化炭素(CO)を使用した。水素及び一酸化炭素の供給流量は、それぞれ、メタンの場合と同様に2×10-5m3/分に設定した。いずれの評価項目についても、メタンの場合と同様な満足しうる評価結果を得ることができた。得られた実験結果の一部を以下に示す。
【0077】
〔水素に対する放電性能の比較〕
それぞれの燃料電池サンプルにおいて、電流密度を増加させながら開回路電圧及び出力密度を測定したところ、図9にプロットするような測定結果が得られた。図示の電流密度−電圧曲線から理解されるように、燃料極としてNi1-XCoX−SDCを使用した場合、いずれのサンプルにおいても開回路電圧が0.85V以上となり、出力密度は、Co量(x)の増加に伴い高くなり、x=0.75の燃料極が最も高く、x=0の燃料極(コバルトを含有しない従来のニッケルサーメット)では高々約100mW/cm-2であったのに反して、約160mW/cm-2となった。
【0078】
〔水素に対する燃料極過電圧(反応抵抗に比例)の比較〕
それぞれの燃料電池サンプルにおいて、電流密度を増加させながら過電圧を電流遮断法で測定したところ、図10にプロットするような測定結果が得られた。図示の電流密度−過電圧曲線から理解されるように、燃料極としてNi1-XCoX−SDCを使用した場合、いずれのサンプルにおいても電流密度の増加とともに過電圧が増加する傾向があるけれども、Co量(x)の増加に伴い過電圧を抑制することができる。
【0079】
実施例4
前記実施例2に記載の手法を繰り返して発電実験:昇温脱離ガス分析法(TPD)による吸着能の評価を行った。なお、本例では、吸着能に及ぼす比表面積の影響を評価するため、次のような4種類のサーメットサンプルを調製して実験を行った。また、本例で電解質粒子とした使用したSDC粒子はCe0.8Sm0.2O1.9であり、YSZ粒子は8モル%Y2O3−ZrO2であった。
【0080】
サンプル1:
Ni1-XCoX−YSZ粒子(x=0;表面積:0.7302m2/g)
サンプル2:
Ni1-XCoX−YSZ粒子(x=0.5;表面積:0.5232m2/g)
サンプル3:
Ni1-XCoX−SDC粒子(x=0;表面積:2.9815m2/g)
サンプル4:
Ni1-XCoX−SDC粒子(x=0.75;表面積:3.8872m2/g)
【0081】
また、燃料ガスとしては、(1)一酸化炭素(CO)、(2)体積比が1:9となるようにヘリウムで希釈した乾燥状態のメタン(CH4)又は(3)3体積%の水蒸気で加湿した水素(H2)を使用した。それぞれの燃料ガスの供給流量は、前記実施例2と同様に2×10-5m3/分に設定した。図11〜図22にプロットするような測定結果が得られた。
【0082】
〔一酸化炭素の吸着能の評価(1)〕
サンプル1及び2について一酸化炭素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図11にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0083】
〔一酸化炭素の吸着能の評価(2)〕
サンプル1及び2について一酸化炭素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図12にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0084】
〔一酸化炭素の吸着能の評価(3)〕
サンプル3及び4について一酸化炭素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図13にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0085】
〔一酸化炭素の吸着能の評価(4)〕
サンプル3及び4について一酸化炭素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図14にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
〔メタンの吸着能の評価(1)〕
サンプル1及び2についてメタンを燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図15にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0086】
〔メタンの吸着能の評価(2)〕
サンプル1及び2についてメタンを燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図16にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0087】
〔メタンの吸着能の評価(3)〕
サンプル3及び4についてメタンを燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図17にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0088】
〔メタンの吸着能の評価(4)〕
サンプル3及び4についてメタンを燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図18にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
〔水素の吸着能の評価(1)〕
サンプル1及び2について水素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図19にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0089】
〔水素の吸着能の評価(2)〕
サンプル1及び2について水素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図20にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0090】
〔水素の吸着能の評価(3)〕
サンプル3及び4について水素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図21にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0091】
〔水素の吸着能の評価(4)〕
サンプル3及び4について水素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図22にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明による燃料電池の好ましい1形態を示した断面図である。
【図2】燃料極について、メタンに対する放電性能を比較したグラフである。
【図3】燃料極について、メタンに対する過電圧を比較したグラフである。
【図4】Ni1-XCoX粒子(x=0)の多孔質構造と、還元処理によって引き起こされた粒成長を示すSEM写真である。
【図5】Ni1-XCoX粒子(x=0.75)の多孔質構造と、還元処理によって引き起こされた顕著な粒成長を示すSEM写真である。
【図6】Ni1-XCoX−SDC粒子(x=0及びx=0.75)の多孔質構造を示すSEM写真である。
【図7】異なるNi1-XCoX−SDC粒子のX線回折図である。
【図8】異なるNi1-XCoX−SDC粒子のTPDスペクトル図である。
【図9】燃料極について、水素に対する放電性能を比較したグラフである。
【図10】燃料極について、水素に対する過電圧を比較したグラフである。
【図11】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子の一酸化炭素吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図12】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子の一酸化炭素吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図13】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子の一酸化炭素吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図14】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子の一酸化炭素吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図15】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子のメタン吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図16】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子のメタン吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図17】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子のメタン吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図18】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子のメタン吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図19】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子の水素吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図20】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子の水素吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図21】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子の水素吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図22】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子の水素吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【符号の説明】
【0093】
100 固体電解質基材
102 空気極
104 燃料極
106 燃料電池セル
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料、特に燃料電池において燃料極として有利に使用することのできる電極材料、及びそのような電極材料からなる燃料極を備えた燃料電池に関する。本発明の燃料電池は、例えばニッケルサーメットなどの多孔質体を燃料極として使用した従来の燃料電池に比較して高い燃料極性能を実現できるばかりでなく、燃料としてメタンガス等を使用した場合でも、燃料の予備改質や加湿を行うことなく効率よく発電を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
従来から、火力発電などに代わる低公害の発電手段として、あるいはガソリンなどを燃料とするエンジン自動車に代わる電気自動車の電気エネルギー源として、燃料電池が開発され、実用化されるに至っている。特に最近では、燃料電池の高効率化、高性能化、低コスト化などを目指して多くの研究がなされている。
【0003】
周知の通り、燃料電池には種々の発電形式があるけれども、なかでも固体電解質を用いた形式の燃料電池、すなわち、固体電解質型燃料電池(SOFC)は、最も高い発電効率が期待され、長寿命化、低コスト化が可能であるので、いろいろな技術分野において着目されている。固体電解質型燃料電池の一例を示すと、イットリア(Y2O3)が添加された安定化ジルコニアからなる焼成体を酸素イオン伝導型の固体電解質層として用いたものがある。この燃料電池の場合、固体電解質層の一面には空気極(カソード層)が設けられ、その反対面には燃料極(アノード層)が設けられる。固体電解質層、アノード層及びカソード層から形成された燃料電池セルをチャンバに収納して燃料電池が完成する。カソード層側に酸素又は酸素含有気体を供給し、アノード層側にメタン等の燃料ガスを供給して発電を行うことができる。この燃料電池では、カソード層に供給された酸素(O2)が、カソード層と固体電解質層との境界で酸素イオン(O2−)にイオン化され、この酸素イオンが、固体電解質層によってアノード層に伝導され、アノード層に供給された、例えばメタン(CH4)ガスと反応し、そこで、最終的には、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)が生成される。この反応において、カソード層とアノード層との間に電位差が生じる。そこで、カソード層とアノード層とにリード線を取り付ければ、アノード層の電子が、リード線を介してカソード層側に流れ、燃料電池として発電することになる。
【0004】
上記したような燃料電池や、その他のタイプの燃料電池において、発電効率などを高めるためにいろいろな改良が行われている。例えば、特許文献1は、特に固体電解質型燃料電池において燃料極として有利に使用しうるニッケルサーメットとその製造方法を記載している。この特許文献に記載されているニッケルサーメットは、金属ニッケル相35〜70%及びイットリアにより立方晶形として安定化されたジルコニア相65〜30重量%からなり、両相が1μmよりも小さいレベルで明確にかつ均一に分布しており、かつニッケルの分散率が0.2〜2.0であり、比表面積が2〜12m2/g(ニッケル)及び1〜4m2/g(サーメット)であることを特徴とする。
【0005】
燃料極としてニッケルサーメットを使用した燃料電池は、最近でも提案されている。例えば、特許文献2は、NiО(酸化ニッケル)、CoО(酸化コバルト)等の金属酸化物からなる母粒子と、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、PSZ(部分安定化ジルコニア)、SDC(サマリアドープセリア)等の酸素イオン伝導性を有するセラミックスからなる子粒子とを複合化し、得られた複合粉体を焼成してなる固体電解質型燃料電池用燃料極を記載している。
【0006】
また、特許文献3は、その50%径が0.4〜0.8μmの範囲内にあるジルコニア微粉体と、その50%径が25〜50μmの範囲内にあるジルコニア粗粉体と、その50%径が2μmより大きく5μmより小さい範囲内にある酸化ニッケル粉体とを含む混合粉体を焼結してなることを特徴とする固体電解質型燃料電池用燃料極を記載している。
【特許文献1】特開平5−255796号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−127761号公報(特許請求の範囲、段落0001)
【特許文献3】特開2005−19261号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、燃料極としてニッケルサーメットを使用した燃料電池は、依然として解決されるべき課題を有している。例えば、メタンガスを燃料として使用した場合、燃料極がニッケルサーメットからなっている場合、燃料極の活性が相対的に低いために高い燃料極性能を実現することができないばかりでなく、燃料極の表面に炭素が析出するという問題が発生する。また、燃料電池では、通常、その性能の向上のために白金等の貴金属が触媒として用いられている。しかし、例えば白金は、その資源が有限であり、高価でもあるので、かかる貴金属触媒を使用しない燃料極の開発が望まれる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、各種の燃料電池において高い燃料極性能を実現でき、かつ燃料としてメタンガス等の炭化水素ガスを使用した場合であっても、燃料の予備改質や加湿等の処理を行うことなく効率よく発電を行うことができる燃料電池用電極材料と、そのような電極材料を使用した高性能な燃料電池を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、白金族金属等の高価な原料を使用しなくとも、燃料の炭化や付着の問題を回避できる電極材料と、そのような電極材料を使用した高性能な燃料電池を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の目的は、メタンガス等の直接酸化についての活性を改善し、燃料極の過電圧を抑制することのできる電極材料と、そのような電極材料を使用した高性能な燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究した結果、固体電解質型燃料電池において燃料極として一般的に使用されているニッケルサーメットにおいて、燃料反応に関与する反応子、例えばメタン、一酸化炭素、水素などに対する燃料極の吸着能を適正に調整するのが有効であることを発見し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、1つの面において、多孔質体からなり、かつ気体に対する吸着能を式:吸着分子数(モル)/多孔質体の単位面積(m2)で表した場合、メタン、一酸化炭素及び水素のそれぞれの気体に対して約0.1〜10×10-6モル/m2の吸着能を有することを特徴とする燃料電池用電極材料にある。
【0013】
また、本発明者らは、このような電極材料において使用される多孔質体、好ましくは多孔質サーメットは、その比表面積が特定の範囲のあるとき、吸着能の向上などに大きく寄与しうるということも発見した。燃料極の比表面積は、好ましくは、約0.1〜40m2/gの範囲であり、さらに好ましくは約0.2〜10m2/gの範囲である。
【0014】
また、本発明は、もう1つの面において、固体電解質基材と、該基材の燃料室側に形成された燃料極と、該基材の空気室側に形成された空気極とから形成された燃料電池セルを含む固体電解質型燃料電池であって、前記燃料極が、本発明の電極材料からなることを特徴とする固体電解質型燃料電池にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の詳細な説明から理解されるように、本発明の電極材料を燃料極の形成に使用した場合、燃料極性能及びしたがって電池性能を顕著に改善できるという効果がある。また、本発明によれば、従来一般的な構造をもった燃料電池でも、本発明の電極材料を使用することで高い燃料極性能を実現でき、かつ燃料としてメタンガス等の炭化水素ガスを使用した場合でも、燃料の予備改質や加湿を行うことなく効率よく発電を行うことができる。また、本発明の燃料電池は、発電効率に優れ、長寿命化、低コスト化、小型化も可能である。
【0016】
また、本発明の電極材料は、燃料電池において燃料の炭化や付着の問題を回避できるばかりでなく、燃料電池の製造において白金族金属等の高価な原料を使用しなくてもすむという特長がある。
【0017】
さらに、本発明の電極材料は、メタンガス等の直接酸化についての活性を改善でき、かつ燃料極の過電圧を抑制できるという特長がある。
【0018】
さらにまた、本発明では、燃料電池を燃料電池ユニットの形で構成し、2個もしくはそれ以上の燃料電池ユニットを1つのケーシングに組み入れることで、燃料電池の空間を有効利用し、小型かつコンパクトであるにもかかわらずより高出力な燃料電池を提供することができる。
【0019】
例えば、混合燃料ガスを使用したシングルチャンバ型燃料電池の場合には、複数個の燃料電池セルを積層した形でチャンバ内に配置することによって、単一の燃料電池セルを収容した場合に比較してより高い電圧を取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による燃料電池用電極材料は、いろいろなタイプの燃料電池において燃料極(アノード層)の形成に有利に使用することができるけれども、特に固体電解質型燃料電池の燃料極の形成に有利に使用することができる。よって、以下、本発明の電極材料及び燃料電池を特に固体電解質型燃料電池を参照してそれらの好ましい実施形態について記載することとする。
【0021】
本発明の固体電解質型燃料電池は、一般的に知られている燃料電池と同様に、いろいろな構成を有することができる。本発明の実施に好適な固体電解質型燃料電池は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、燃料電池セルを固体燃料、液体燃料、ガス燃料などの燃焼によって発生せしめられた火炎が燃料極に接触するように配置してその火炎中の燃料種と熱によって発電を行う直接火炎型燃料電池、燃料電池セルをガス燃料と酸素もしくは酸素含有ガスとの混合燃料ガス雰囲気中に配置して、燃料極と空気極の間で発生する電位差に基づいて発電を行うシングルチャンバ型燃料電池などを包含する。また、かかる燃料電池の燃料電池セルは、典型的には、平板型セル、円筒型セル、セグメント型セルなどである。円筒型セルは、円筒縦縞型セルと円筒横縞型セルに分けることができる。要するに、本発明の実施において、燃料電池は、刊行物等で公知な構造及び現在実施されている構造を含めたいろいろな構造を有することができる。
【0022】
本発明の固体電解質型燃料電池は、基本的に、従来一般的な燃料電池と同様に、固体電解質基材と、該基材の燃料室側に形成された燃料極と、該基材の空気室側に形成された空気極とから形成された燃料電池セルを含むように構成することができ、本発明の範囲において任意に変更し、改良することができる。なお、本発明の燃料電池は、以下に詳細に説明するように、本発明の電極材料から燃料極が形成されていることが肝要である。
【0023】
本発明の実施において、燃料電池の固体電解質基材は、いろいろな形態で形成することができる。この基材は、典型的には、平板の形態であるかもしくはフィルム、薄膜、コーティングなどの形態である。また、固体電解質基材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、次のような公知の材料を包含する。
a)YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、これらのジルコニアにさらにCe、Al等をドープしたジルコニア系セラミックス。
b)SDC(サマリアドープドセリア)、SGC(ガドリアドープドセリア)等のセリア系セラミックス。
c)LSGM(ランタンガレート)、例えばLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3、酸化ビスマス系セラミックス、例えばBi2O3。
【0024】
固体電解質基材は、それ自体が燃料極及び空気極のための支持機能を有している自立型であってもよく、さもなければ、燃料極などによって固体電解質基材が支持される非自立型であってもよい。非自立型の基材を採用した場合、固体電解質基材を肉厚で形成したり、平板状の固体電解質基材を使用することが不要となる。したがって、固体電解質基材の厚さは、広い範囲で変更することができ、一般的に約10〜500μmであり、好ましくは約20〜50μmである。固体電解質基材を特に薄くする場合は、通常、電解質支持型構造が採用される。
【0025】
固体電解質基材は、薄膜、フィルム等の形成に慣用されている任意の技法、例えばグリーンシートプロセスを使用して形成することができる。例えば、固体電解質材料のペーストを所定のパターンで塗布し、乾燥してグリーンシートを形成した後、そのグリーンシートを高温で焼成することによって固体電解質基材を容易に形成することができる。ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷法などの印刷法を有利に使用することができる。具体的には、例えば平板状の仮支持体の片面に固体電解質材料のペーストを所定のパターンで印刷し、乾燥及び焼成することによって固体電解質基板を形成することができる。焼成温度は、使用する固体電解質材料の特徴などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約900〜1500℃の範囲である。
【0026】
空気極(カソード層)は、本発明の実施において特に限定されるものではなく、燃料電池に一般的に使用されている電極材料から形成することができる。適当な空気極形成材料として、例えば、ストロンチウム(Sr)等の周期律表第3族元素が添加されたランタンのマンガン(例えば、ランタンストロンチウムマンガナイト)、ガリウム又はコバルト酸化化合物(例えば、ランタンストロンチウムコバルタイト)などを挙げることができる。
【0027】
空気極は、内部に空気又は酸素が充分に拡散でき、かつ充分な電気伝導性を維持できる程度に、多孔質に形成される。空気極の気孔率は、いろいろに変更することができるけれども、通常、約10〜60%であることが好ましい。また、固体電解質基材を比較的に薄く形成したような場合には、空気極を例えば導電性メッシュのような支持体で支持するような構成を採用してもよい。空気極を導電性メッシュで支持した場合、耐熱衝撃性を高め、急激な温度変化によるひび割れの発生を防止することができる。
【0028】
また、空気極は、燃料電池の構成、空気極の使用形態などに応じていろいろな厚さで形成することができる。空気極の厚さは、通常、約20〜200μmであり、好ましくは約30〜120μmである。空気極が薄すぎると、空気極本来の機能を得ることができなくなり、不十分なカソード反応の結果として出力の低下などの問題が引き起こされる。
【0029】
空気極は、薄膜、フィルム等の形成に慣用されている任意の技法を使用して形成することができる。例えば、空気極は、すでに形成してある固体電解質基材の表面に空気極形成性のペーストを所定のパターンで塗布し、乾燥後に焼成することによって容易に形成することができる。ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷法などの印刷法を有利に使用することができる。焼成温度は、使用する空気極形成材料の特徴などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約900〜1500℃の範囲である。もちろん、必要ならば、その他の手法を使用して空気極を形成してもよい。
【0030】
本発明の燃料電池では、特定の電極材料から燃料極(アノード層)を形成する。ここでいう特定の電極材料が、本発明の電極材料であり、多孔質体からなり、かつ気体に対する吸着能を式:吸着分子数(モル)/多孔質体の単位面積(m2)で表した場合、燃料反応の反応子であるメタン、一酸化炭素及び水素のそれぞれの気体に対して約0.1〜10×10-6モル/m2の吸着能を多孔質体が有することを特徴とする。多孔質体の吸着能は、好ましくは、約1〜5×10-6モル/m2の範囲である。なお、反応子は、必要ならば、メタン、一酸化炭素及び水素以外のものであってもよい。多孔質サーメットの吸着能が0.1×10-6モル/m2を下回ると、燃料極における酸化反応に対する活性が低くなるといった不具合が発生し、反対に10×10-6モル/m2を上回ると、反応物の電極からの脱離が起き難くなり、結果として電極反応が不活発になるといった不具合が発生する。
【0031】
本発明の電極材料では多孔質体が使用される。電極材料が多孔質体であると、燃料極に耐熱衝撃性などを付与することができる。多孔質体の燃料極において、その気孔率は、いろいろに変更することができるけれども、通常、約10〜60%であることが好ましい。また、燃料極を比較的に薄く形成したような場合には、燃料極の少なくとも一部を例えば導電性メッシュのような支持体で支持するような構成を採用してもよい。燃料極を導電性メッシュで支持した場合、耐熱衝撃性を高め、急激な温度変化によるひび割れの発生を防止することができる。
【0032】
本発明者らの知見によると、電極材料として使用される多孔質体は、好ましくは、約0.1〜40m2/gの比表面積を有している。多孔質体の比表面積は、さらに好ましくは、約2〜10m2/gの範囲である。多孔質体の比表面積が0.1m2/gを下回ると、吸着能低下による電池性能の低下といった不具合が発生し、反対に40m2/gを上回ると、金属粒子の凝集焼結による界面抵抗の増大といった不具合が発生する。本発明では、上述の吸着能と比表面積の間でバランスがとれているので、電池性能を顕著に向上できるといった効果が得られる。
【0033】
多孔質体は、好ましくは、金属粒子と固体酸化物からなる電解質粒子とを含む任意の多孔質サーメットであることができる。金属粒子は、例えば、ニッケル、銅などの粒子である。本発明の電極材料において、多孔質サーメットは、好ましくは、ニッケルを金属粒子として含むニッケルサーメットである。
【0034】
本発明の実施において、多孔質体として有利に用いることのできるニッケルサーメットは、各種の組成を有することができる。好適なニッケルサーメットは、第1の成分としてのニッケルとほぼ当量で第2の成分、コバルトが添加されているニッケルサーメットである。さらに好ましくは、本発明の実施において、ニッケルサーメットは、コバルト及びニッケルからなる金属粒子ならびに固体酸化物からなる電解質粒子を含み、また、ニッケルサーメットの金属粒子は、CoО及びNiОに換算して、20〜90モル%のコバルト及び残部のニッケルからなる。コバルトの含有量が20モル%を下回ったり90モル%を上回ったりすると、本発明の燃料極に由来する特有の効果が導かれなくなり、また、90モル%を上回ると、燃料極剥離の問題も発生するおそれがでてくる。
【0035】
多孔質サーメットにおいて上述の金属粒子と組み合わせて用いられる電解質粒子は、サーメットの形成に一般的に使用されている固体酸化物からなることができる。多孔質サーメットの形成に好適に用いられる電解質粒子は、例えば、セリア系セラミックス、ジルコニア系セラミックスなどである。これらのセラミックスは、必要ならば、2種類以上を混合して使用してもよい。さらに具体的に説明すると、多孔質サーメットの形成に好適なセラミックスは、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、サマリウムドープセリア系セラミックス、ガドリニウムドープセリア系セラミックス、イットリウム安定化ジルコニア系セラミックス、スカンジウム安定化ジルコニア系セラミックス又はその混合物である。
【0036】
また、多孔質サーメット、特に金属粒子としてコバルト及びニッケルを含むニッケルサーメットにおいて、コバルト及びニッケルは、それらの金属がそれぞれ酸化物であるCoО及びNiОの状態にあるとき、そのサーメットの全量を基準にして約10〜70重量%の量で含まれることが好ましい。コバルト及びニッケルの含有量は、さらに好ましくは、約30〜70重量%の範囲である。コバルト及びニッケルの含有量が上記の範囲を外れると、本発明の燃料極に由来する特有の効果が導かれなくなる。
【0037】
コバルト及びニッケルからなる金属粒子ならびに固体酸化物からなる電解質粒子を含み、コバルト及びニッケルの含有量が上記の範囲を満足させるサーメットは、その具体的な一例を示すと、ニッケルと、セリア系セラミックス、例えば20モル%Sm2О3ドープのCeО2、10モル%Gd2О3ドープのCeО2などか、さもなければジルコニア系セラミックス、例えば8モル%Y2О3安定化ZrО2、10モル%Sc2О3安定化Zr2О3などとの組み合わせで、ニッケルの含有量が約40〜70体積%のものである。また、これらのサーメットや本発明で使用されるその他のサーメットでは、必要に応じて、例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)などの貴金属を分散させてもよい。さらに、特例として、もしもニッケルと同等な作用及び効果が期待できるのであるならば、ニッケルに代えて銅(Cu)を使用してもよい。
【0038】
さらに、多孔質サーメットにおいて、コバルト及びニッケルは、少なくとも還元状態において、サーメット中に完全に固溶していることが好ましい。すなわち、多孔質サーメットが単一合金化している場合、本発明の燃料極に由来する特有の効果が良好に導かれることとなる。
【0039】
さらにまた、多孔質サーメットに含まれる電解質粒子は、金属粒子に比較して小さい粒径を有していることが好ましい。多孔質サーメットにおいて電解質粒子と金属粒子がこのような関係で含まれる場合、両者の間に形成される間隙が燃料極の性能向上に寄与できるからである。
【0040】
燃料極は、上記したような電極材料(例えば多孔質サーメットなどの多孔質体)から、燃料電池の構成、燃料極の使用形態などに応じていろいろな厚さで形成することができる。燃料極の厚さは、通常、約20〜200μmであり、好ましくは約30〜120μmである。燃料極が薄すぎると、燃料極本来の機能を得ることができなくなる。
【0041】
燃料極は、薄膜、フィルム等の形成に慣用されている任意の技法を使用して形成することができる。例えば、燃料極は、すでに形成してある固体電解質基材の表面に電極材料のペーストを所定のパターンで塗布し、乾燥後に焼成することによって容易に形成することができる。ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷法などの印刷法を有利に使用することができる。焼成温度は、使用する電極材料の特徴などに応じて広い範囲で変更することができるけれども、通常、約900〜1500℃の範囲である。もちろん、必要ならば、その他の手法を使用して燃料極を形成してもよい。
【0042】
本発明の燃料電池セルは、例えば上記したように、固体電解質基材を形成した後にその表面に空気極及び燃料極を形成することが可能であるけれども、必要ならば、他の順序で燃料電池セルを形成してもよい。例えば、空気極形成性ペーストを所定のパターンで印刷し、必要に応じて乾燥した後、その表面にさらに固体電解質材料のペーストを所定のパターンで印刷し、必要に応じて乾燥し、次いで、その表面に燃料極形成性のペーストを所定のパターンで印刷し、必要に応じて乾燥する。最後に、未焼成の空気極、固体電解質基材及び燃料極を一括して焼成する。このようなグリーンシートプロセスは、燃料電池セルの製造プロセスを短縮するのに有効である。
【0043】
上記したような構成を有する燃料電池セルは、本発明の燃料電池において、いろいろな形で構成することができる。例えば、燃料電池セルは、単一の部材から構成してもよく、2個もしくはそれ以上の小部材(パーツ)の組み合わせから構成してもよい。すなわち、本発明の好ましい1態様において、燃料電池セルは、固体電解質基材と、燃料極と、空気極とを含む単一のセル部材から構成することができる。単一のセル部材からなる燃料電池セルの構成及び製造は、上記した説明から容易に理解することができるであろう。
【0044】
本発明のもう1つの好ましい態様によると、燃料電池セルは、縦方向、横方向又は縦横両方向に分割して配置された、それぞれ固体電解質基材と、燃料極と、空気極とを含む複数個の区画セル部材の組み合わせから構成することができる。かかる燃料電池セルの場合、それぞれの区画セル部材を相互に直列もしくは並列に電気的に接続して、目的とする燃料電池セルを完成することができる。
【0045】
本発明の実施においては、隣接して配置された複数個の区画セル部材を直列もしくは並列に接続する場合、いろいろな方法で有利に実現することができる。例えば、ある区画セル部材の空気極に取り付けた導電性メッシュと、該区画セル部材に隣接する別の区画セル部材の燃料極に取り付けた導電性メッシュとを、前記区画セル部材間の間隙を通過して延長して配置された導電性メッシュを介して有利に接続することができる。ここで、接続手段とした使用される導電性メッシュは、空気極の導電性メッシュであってもよく、燃料極の導電性メッシュであってもよく、あるいはそれらの導電性メッシュとは異なる第3の導電性メッシュであってもよい。導電性メッシュどうしの接続は、導電性メッシュの材質などに応じて任意の結合方法を使用することができる。例えば、導電性メッシュが金属メッシュからなる場合、スポット溶接法などを有利に使用することができる。もちろん、必要ならば、導電性メッシュ以外の材料を接続手段として使用してもよい。
【0046】
上記したような構成を有する燃料電池セルは、上記したように、いろいろなタイプの燃料電池に使用することができる。例えば、燃料電池セルをガス燃料と酸素もしくは酸素含有ガスとの混合燃料ガス雰囲気中に配置して、空気極と燃料極の間で発生する電位差に基づいて発電を行う方式のシングルチャンバ型燃料電池において上記の燃料電池セルを使用する場合、燃料電池セルの複数個が1つのチャンバ内に積層して多層セル構造体の形で収容されており、かつ互いに隣接する空気極と燃料極とが直接接合されていることが好ましい。
【0047】
また、燃料電池において、燃料電池セルが、それぞれの燃料電池セルの空気極及び燃料極が混合燃料ガスの流動方向に対して平行となるようにチャンバ内に収容されており、燃料極及び空気極の各々が、混合燃料ガスが通過し得る多数の微細孔が形成された多孔質層であり、かつ固体電解質基材が、混合燃料ガスが実質的に通過することのない緻密構造を有しているように構成することが好ましい。
【0048】
さもなければ、燃料電池において、燃料電池用セルが、それぞれの燃料電池セルの空気極及び燃料極が混合燃料ガスの流動方向に対して直角となるようにチャンバ内に収容されており、空気極、燃料極及び固体電解質基材の各々が、混合燃料ガスが通過し得る多数の微細孔が形成された多孔質層であるように構成することも好ましい。
【0049】
さらに、上記したような多層燃料電池セルを有する燃料電池において、チャンバ内の多層燃料電池セルを除く空間部に充填物を充填し、充填物間の間隙を、発火限界内にある混合燃料ガスが存在していても発火し得ない間隙とすることにより、混合燃料ガスの防爆を図ることが有利である。すなわち、メタンガス等の燃料ガス及び酸素を含む混合燃料ガスや排ガスの給排口が形成されたチャンバ内に燃料電池セルが収容された燃料電池において、チャンバ内の燃料電池セルを除く部分であって、混合燃料ガスや排ガスが流動するチャンバ内の空間部に充填物が充填され、充填物間の間隙が、燃料電池を駆動した際に、その空間部内に発火限界内の混合燃料ガスが存在しても発火し得ない間隙であることが好ましい。なお、適当な充填物としては、例えば、燃料電池の駆動条件で安定な金属材料又はセラミック材料からなる粉粒体、多孔体又は細管を挙げることができる。
【0050】
また、この燃料電池では、上述のように、複数個の燃料電池セルを互いに隣接する空気極と燃料極とを直接接合するように積層して形成した多層燃料電池セルを使用することによって、所望とする高電圧を取り出すことができる。また、この多層燃料電池セルを、そのそれぞれの燃料電池セルの空気極及び燃料極を混合燃料ガスの流動方向に対して平行となるようにチャンバ内に配置する場合には、空気極及び燃料極の各々を、混合燃料ガスが通過し得る多数の微細孔が形成された多孔質層とし、固体電解質基材を、混合燃料ガスが実質的に通過することのない緻密構造とすることができる。一方、多層燃料電池セルを、そのそれぞれの燃料電池セルの空気極及び燃料極を混合燃料ガスの流動方向に対して直角に配置する場合には、燃料極、空気極及び固体電解質基材の各々を、混合燃料ガスが通過し得る多数の微細孔が形成された多孔質層することにより、混合燃料ガスが多層燃料電池セルを通過でき、他の通路を形成する必要性を排除することができる。
【0051】
さらに加えて、本発明による燃料電池は、単一の燃料電池ユニットのみからなってもよく、さもなければ、それぞれ本発明の燃料電池として機能することのできる2個もしくはそれ以上の燃料電池ユニットの組み合わせからなってもよい。特に本発明の燃料電池は、複数個の燃料電池ユニットを組み合わせることで、所定のサイズにおいて出力の増加などを容易に達成することができる。
【0052】
本発明の燃料電池は、それを複数個の燃料電池ユニットの組み合わせから構成する場合、いろいろな組み合わせで実施することができる。例えば、複数個の燃料電池ユニットを1個のケーシング内に一括して並べて配置することができる。組み合わせて使用する複数個の燃料電池ユニットは、それぞれ、同一の形状、構成及び寸法を有していてもよく、さもなければ、互いに異なる形状、構成及び寸法を有していてもよい。もちろん、所望であるあらならば、いろいろな燃料電池ユニットを任意に組み合わせて、かつ任意の配置パターンで使用してもよい。また、複数個の燃料電池ユニットをケーシングに収納して使用することは一例であり、例えば共通の基板に固定して使用することなど、その他の手法で使用してもよい。
【0053】
本発明による燃料電池は、発電効率に優れ、長寿命化、低コスト化が可能であるので、いろいろな分野において有利に製造することができる。例えば、本発明の燃料電池は、自動車用発電や業務用発電、家庭用発電などの分野で有利に利用することができる。また、小型化することで、例えばLEDの点灯、LCDの表示、携帯ラジオ、携帯情報機器などの駆動にも有利に利用することができる。
【0054】
本発明による燃料電池の構成等は、上記の説明から十分に理解できるものと考える。参考のため、燃料/酸化剤セパレータ型燃料電池の一例を添付の図1を参照して説明する。なお、図示の燃料電池は一例であって、当業者に容易に理解されるように、本発明の範囲内で構造、寸法等をいろいろに変更可能である。なお、燃料電池を構成する部材の形成に好適な材料などの説明は、すでに上記してあるので、ここでの説明を省略する。
【0055】
燃料電池は、図示されるように、イットリア(Y2O3)が添加された安定化ジルコニアからなる焼成体を酸素イオン伝導型の固体電解質基材100として用い、この固体電解質基材100の一方の主たる面側に空気極102が形成されているとともに、固体電解質基材100の他方の主たる面側に本発明による燃料極104が形成された燃料電池セル106が配設されている。燃料電池セル106の空気極102の側には、酸素又は酸素含有気体が供給される。他方の燃料極104の側には、メタン等の燃料ガスが供給される。
【0056】
図1に示す燃料電池セル106の空気極102側に供給された酸素(O2)は、空気極102と固体電解質基材100との境界で酸素イオン(O2-)にイオン化され、この酸素イオン(O2-)は、固体電解質基材100によって燃料極104に伝導される。燃料極104に伝導された酸素イオン(O2-)は、燃料極104に供給されたメタン(CH4)ガスと反応し、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)、水素(H2)及び一酸化炭素(CO)を生成する。かかる反応の際に、酸素イオンが電子を放出するため、空気極102と燃料極104との間に電位差が生じる。このため、空気極102と燃料極104を取出線108によって電気的に接続することにより、燃料極104の電子は空気極102の方向に取出線108を流れ、燃料電池から電気を取り出すことができる。なお、図示の燃料電池の作動温度は、約1,000℃である。
【実施例】
【0057】
実施例1
ニッケル・コバルト合金(Ni−Co)及びSDC(サマリアドープドセリア)のサーメット:Ni1-XCoX−SDCからなる燃料極を備えた固体電解質型燃料電池を作製した。また、比較のため、コバルトを含有しないニッケルサーメット:Ni−SDCからなる燃料極を備えた従来の固体電解質型燃料電池も作製した。
【0058】
最初に、Ni1-XCoXO(式中、xは、0、0.25、0.5又は0.75である)を固溶体の形で調製した。それぞれの組成を得るのに必要な量のCo3O4粉末及びNiO粉末をアルミナ製の坩堝で混合し、大気中で1000℃で10時間にわたって反応させ、粉砕した。得られた粉末を再び坩堝で混合した後、焼成炉に入れて大気中で約1000℃で10時間にわたって反応させた。得られた粉末をX線回折分析(XRD)に供したところ、それぞれの粉末が目的とする組成をもったNi1-XCoXO固溶体であることが確認された。また、それぞれの固溶体には坩堝に由来する不純物も含まれていないことが電子プローブ・マイクロアナライザ(EPMA)によって観察された。
【0059】
次いで、上記のようにして調製したNi1-XCoXO固溶体の粉末に40重量%のSDC(Ce0.8Sm0.2O1.9)粉末を加え、エチルセルロース系バインダ(STD−100、ダウケミカル社製)を使用して混練した。燃料極形成用のペーストが得られた。
【0060】
一方、SDC(Ce0.8Sm0.2O1.9)粉末にエタノール、フタル酸ジブチル及びポリビニルブチラールを加え、ボールミルで磨砕した後にグリーンシート化した。得られたグリーンシートを円形に打ち抜いた後、焼成炉に入れて大気中で1300℃で5時間にわたって焼成した。得られたSDCディスクは、約15mmの直径及び約0.3mmの厚さを有していた。
【0061】
SDCディスクを上記のようにして作製した後、そのディスクの片面に先の工程で調製した燃料極形成用のペーストをスクリーン印刷し、焼成炉に入れて大気中で約1300℃で5時間にわたって焼成した。なお、集電手段を形成するため、ペーストの印刷時、直径0.3mmの白金リード線が接続された白金メッシュ(#100、3mm×3mm)を同時に埋め込んだ。最終的な厚さが約50μmである燃料極が形成された。
【0062】
次いで、燃料極を形成した後のSDCディスクのもう1つの面に、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト:Sm0.5Sr0.5CоO3)−SDC(Ce0.8Sm0.2O1.9)混合ペースト(組成比:70重量%−30重量%)を使用して空気極を形成した。混合ペーストをスクリーン印刷した後、ディスクを焼成炉に入れて大気中で約1200℃で5時間にわたって焼成した。なお、集電手段を形成するため、ペーストの印刷時、直径0.3mmの白金リード線が接続された白金メッシュ(#100、3mm×3mm)を同時に埋め込んだ。最終的な厚さが約50μmである空気極が形成された。
【0063】
燃料極のNi1-XCoX粒子を還元するため、得られた燃料電池セル(燃料極:Ni1-XCoX−SDC/固体電解質基材:SDC/空気極:SSC−SDC)を乾燥水素雰囲気中で約700℃で1時間にわたって保持した。次いで、燃料電池セルを2本のアルミナ製二重円筒管(肉厚:2mm、外径:15mm)の間に配置し、ガラスで封着した。燃料極の組成を異にする円筒形の固体電解質型燃料電池が得られた。
【0064】
実施例2
前記実施例1で作製した燃料電池をサンプルとして使用して、その空気極側に酸素を2×10-5m3/分の流量で供給し、一方、燃料極側には、燃料ガスとして体積比が1:9となるようにヘリウムで希釈した乾燥状態のメタン(CH4)を使用し、2×10-5m3/分の流量で供給した。約600〜700℃で、下記の項目について発電実験を行った。
【0065】
〔メタンに対する放電性能の比較〕
それぞれの燃料電池サンプルにおいて、電流密度を増加させながら開回路電圧及び出力密度を測定したところ、図2にプロットするような測定結果が得られた。図示の電流密度−電圧曲線から理解されるように、燃料極としてNi1-XCoX−SDCを使用した場合、いずれのサンプルにおいても開回路電圧が0.85V以上となり、出力密度は、Co量(x)の増加に伴い高くなり、x=0.75の燃料極が最も高く、x=0の燃料極(コバルトを含有しない従来のニッケルサーメット)では高々約100mW/cm-2であったのに反して、約160mW/cm-2となった。これらの測定結果及びその他の測定結果から、Ni1-XCoX−SDCのCo量(x)は、20〜90モル%の範囲が好適であると考察される。なお、参考のために作製したx=1の燃料極(NiO粉末を使用しないで、CoO粉末100%で作製した燃料極)を備えた燃料電池では、電極剥離が容易に発生したため、発電性能を評価することができなかった。
【0066】
〔メタンに対する燃料極過電圧(反応抵抗に比例)の比較〕
それぞれの燃料電池サンプルにおいて、電流密度を増加させながら過電圧を電流遮断法で測定したところ、図3にプロットするような測定結果が得られた。図示の電流密度−過電圧曲線から理解されるように、燃料極としてNi1-XCoX−SDCを使用した場合、いずれのサンプルにおいても電流密度の増加とともに過電圧が増加する傾向があるけれども、Co量(x)の増加に伴い過電圧を抑制することができる。過電圧の抑制は、電池性能の向上が導かれることを意味する。
【0067】
〔Ni1-XCoX粒子の微細な多孔質構造〕
燃料極として使用したNi1-XCoX−SDCについて、そのNi1-XCoX粒子の微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したところ、Co量(x)の増加に伴い金属粒子の著しい粒成長を認めることができた。また、金属粒子の粒成長は、還元処理を行うことによってさらに顕著なものとなった。
【0068】
図4及び図5は、それぞれ、Ni1-XCoX粒子(図4:x=0;図5:x=0.75)について、それらの粒子の表面で観察された微細な多孔質構造と、還元処理によって引き起こされた顕著な粒成長を示すSEM写真である。なお、これらのSEM写真を撮影するに当たって、前記実施例1に記載の手法によってSDCディスクの表面にNi1-XCoXO粉末のスラリーを塗布し、空気中で約1300℃で5時間にわたって焼成した後、乾燥水素雰囲気中で約700℃で2時間にわたって保持した。図示のSEM写真から理解されるように、焼結されたNi0.25Co0.75粒子(図5)はNiO粒子(図4)に比較して大きな粒径及び顕著な粒成長を示すとともに、粒子間に形成された多数の空孔も大きいので、吸着力が相対的に低下する。燃料極の燃料種に対する吸着力は、強すぎても弱すぎても好ましくなく、適度に調整されることにより、効率的な電極性能が発現するものと考察される。
【0069】
〔Ni1-XCoX−SDC粒子の微細な多孔質構造〕
燃料極として使用したNi1-XCoX−SDCについて、そのNi1-XCoX−SDC粒子の微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したところ、Co量(x)の増加に伴い金属粒子及びSDC粒子の双方において著しい粒成長を認めることができた。実際、x=0のときはSDC粒子よりも小さかった金属粒子が、x=0.25以上ではSDC粒子以上の大きさに成長することが確認された。
【0070】
図6は、Ni1-XCoX−SDC粒子(x=0及びx=0.75)について、それらの粒子の表面で観察された微細な多孔質構造を示すSEM写真(倍率:10,000倍)である。なお、これらのSEM写真を撮影するに当たって、前記実施例1に記載の手法によってSDCディスクの表面にNi1-XCoXO粉末及びSDC粉末から調製したペーストをスクリーン印刷し、焼成炉に入れて大気中で約1300℃で5時間にわたって焼成した。図示のSEM写真から理解されるように、焼結されたNi0.25Co0.75−SDC粒子(右側写真)はNiO−SDC粒子(左側写真)に比較して大きな粒径及び空孔を有している。また、Ni0.25Co0.75−SDC粒子において、白くて小さな粒子はSDC粒子と認められ、Co量(x)の増加に伴いNi0.25Co0.75粒子とSDC粒子がともに粒成長していることがわかる。さらに、この電池の場合、NiCo−SDC燃料極とSDC電解質の間で界面抵抗の低下が認められ、電池性能の向上の裏づけをとることができた。
【0071】
〔Ni1-XCoX−SDC粒子のX線回折図〕
異なるNi1-XCoX−SDC粒子(x=0、0.25、0.5又は0.75)についてX線回折を行ったところ、図7にプロットするようなX線回折図が得られた。このX線回折図から理解されるように、各組成ともニッケル及びコバルトが完全に固溶し、単一合金化している。
【0072】
〔昇温脱離ガス分析法(TPD)による吸着能の評価〕
異なるNi1-XCoX−SDC粒子(x=0、0.5又は0.75)についてメタンを燃料ガスとして使用したときの吸着能をTPD(Temperature-Programmed Desorption)分析法によって評価した。TPD分析法は、次のようにして実施した。
【0073】
測定試料であるNiCo−SDC粒子を入れた流通式の容器(セル)にキャリアガス(ヘリウム)を流しながら温度を上昇させ、試料表面にすでに化学吸着しているガス分子をキャリアガス中に脱離させる。脱離ガスを吸着量測定装置で測定する。次いで、約200mgの測定試料を正確に秤量した後、流通式石英セルに充填してTPD測定を行う。セル内の脱ガス処理の後、吸着ガス(メタン)を室温で2分間にわたって流し、試料表面にメタンガスを吸着させる。その後、物理吸着したガスを脱離させるため、ヘリウムガスを流しながら約100℃で30分間保持する。次いで、ヘリウムガスを流しながら、室温付近から約700℃まで10℃/分の昇温速度で試料を加熱する。熱伝導度検出器(TCD)を用いて、脱離ガス量を信号強度(mV)として測定する。
【0074】
図8は、得られた結果をプロットしたTPDスペクトル図である。脱離ピークは、Co量(x)とは無関係に180℃及び420℃において認めることができたけれども、脱離ピーク面積は、Co量(x)の増加とともに減少した。その結果、図8に示されるように、Co量(x)の増加とともにメタンの吸着能、信号強度(mV)が低下した。
【0075】
以上に実施した発電実験の結果を総合するに、例えば、次のような考察を得ることができる。
(1)Ni系SDCサーメットからなる燃料極に対してCo原子を添加することで、メタン燃料についての電池性能を改善することができる。
(2)NiCo−SDC燃料極とSDC電解質の間の界面抵抗を低下させることができるので、燃料極における過電圧を低下させることができる。
(3)原料として使用するNi1-XCoXO相においてCoOの量を増加させているので、Ni1-XCoXO粒子及びSDC粒子の双方における粒成長に大きく貢献することができる。
【0076】
実施例3
前記実施例2に記載の手法を繰り返して発電実験を行ったけれども、本例の場合、燃料ガスとして、メタンに代えて(1)3体積%の水蒸気で加湿した水素又は(2)一酸化炭素(CO)を使用した。水素及び一酸化炭素の供給流量は、それぞれ、メタンの場合と同様に2×10-5m3/分に設定した。いずれの評価項目についても、メタンの場合と同様な満足しうる評価結果を得ることができた。得られた実験結果の一部を以下に示す。
【0077】
〔水素に対する放電性能の比較〕
それぞれの燃料電池サンプルにおいて、電流密度を増加させながら開回路電圧及び出力密度を測定したところ、図9にプロットするような測定結果が得られた。図示の電流密度−電圧曲線から理解されるように、燃料極としてNi1-XCoX−SDCを使用した場合、いずれのサンプルにおいても開回路電圧が0.85V以上となり、出力密度は、Co量(x)の増加に伴い高くなり、x=0.75の燃料極が最も高く、x=0の燃料極(コバルトを含有しない従来のニッケルサーメット)では高々約100mW/cm-2であったのに反して、約160mW/cm-2となった。
【0078】
〔水素に対する燃料極過電圧(反応抵抗に比例)の比較〕
それぞれの燃料電池サンプルにおいて、電流密度を増加させながら過電圧を電流遮断法で測定したところ、図10にプロットするような測定結果が得られた。図示の電流密度−過電圧曲線から理解されるように、燃料極としてNi1-XCoX−SDCを使用した場合、いずれのサンプルにおいても電流密度の増加とともに過電圧が増加する傾向があるけれども、Co量(x)の増加に伴い過電圧を抑制することができる。
【0079】
実施例4
前記実施例2に記載の手法を繰り返して発電実験:昇温脱離ガス分析法(TPD)による吸着能の評価を行った。なお、本例では、吸着能に及ぼす比表面積の影響を評価するため、次のような4種類のサーメットサンプルを調製して実験を行った。また、本例で電解質粒子とした使用したSDC粒子はCe0.8Sm0.2O1.9であり、YSZ粒子は8モル%Y2O3−ZrO2であった。
【0080】
サンプル1:
Ni1-XCoX−YSZ粒子(x=0;表面積:0.7302m2/g)
サンプル2:
Ni1-XCoX−YSZ粒子(x=0.5;表面積:0.5232m2/g)
サンプル3:
Ni1-XCoX−SDC粒子(x=0;表面積:2.9815m2/g)
サンプル4:
Ni1-XCoX−SDC粒子(x=0.75;表面積:3.8872m2/g)
【0081】
また、燃料ガスとしては、(1)一酸化炭素(CO)、(2)体積比が1:9となるようにヘリウムで希釈した乾燥状態のメタン(CH4)又は(3)3体積%の水蒸気で加湿した水素(H2)を使用した。それぞれの燃料ガスの供給流量は、前記実施例2と同様に2×10-5m3/分に設定した。図11〜図22にプロットするような測定結果が得られた。
【0082】
〔一酸化炭素の吸着能の評価(1)〕
サンプル1及び2について一酸化炭素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図11にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0083】
〔一酸化炭素の吸着能の評価(2)〕
サンプル1及び2について一酸化炭素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図12にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0084】
〔一酸化炭素の吸着能の評価(3)〕
サンプル3及び4について一酸化炭素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図13にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0085】
〔一酸化炭素の吸着能の評価(4)〕
サンプル3及び4について一酸化炭素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図14にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
〔メタンの吸着能の評価(1)〕
サンプル1及び2についてメタンを燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図15にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0086】
〔メタンの吸着能の評価(2)〕
サンプル1及び2についてメタンを燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図16にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0087】
〔メタンの吸着能の評価(3)〕
サンプル3及び4についてメタンを燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図17にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0088】
〔メタンの吸着能の評価(4)〕
サンプル3及び4についてメタンを燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図18にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
〔水素の吸着能の評価(1)〕
サンプル1及び2について水素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図19にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0089】
〔水素の吸着能の評価(2)〕
サンプル1及び2について水素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図20にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−YSZ粒子に比較してNiCo−YSZ粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0090】
〔水素の吸着能の評価(3)〕
サンプル3及び4について水素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(表面積あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図21にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【0091】
〔水素の吸着能の評価(4)〕
サンプル3及び4について水素を燃料ガスとして使用したときの吸着能(重量あたり)をTPD分析法によって評価したところ、図22にプロットするようなTPDスペクトル図が得られた。この図からわかるように、Ni−SDC粒子に比較してNiCo−SDC粒子のほうが小さな吸着能を示している。すなわち、CoNi合金化に伴い吸着能を約20%低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明による燃料電池の好ましい1形態を示した断面図である。
【図2】燃料極について、メタンに対する放電性能を比較したグラフである。
【図3】燃料極について、メタンに対する過電圧を比較したグラフである。
【図4】Ni1-XCoX粒子(x=0)の多孔質構造と、還元処理によって引き起こされた粒成長を示すSEM写真である。
【図5】Ni1-XCoX粒子(x=0.75)の多孔質構造と、還元処理によって引き起こされた顕著な粒成長を示すSEM写真である。
【図6】Ni1-XCoX−SDC粒子(x=0及びx=0.75)の多孔質構造を示すSEM写真である。
【図7】異なるNi1-XCoX−SDC粒子のX線回折図である。
【図8】異なるNi1-XCoX−SDC粒子のTPDスペクトル図である。
【図9】燃料極について、水素に対する放電性能を比較したグラフである。
【図10】燃料極について、水素に対する過電圧を比較したグラフである。
【図11】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子の一酸化炭素吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図12】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子の一酸化炭素吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図13】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子の一酸化炭素吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図14】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子の一酸化炭素吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図15】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子のメタン吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図16】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子のメタン吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図17】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子のメタン吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図18】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子のメタン吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図19】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子の水素吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図20】Ni−YSZ粒子及びNiCo−YSZ粒子の水素吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図21】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子の水素吸着能(表面積あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【図22】Ni−SDC粒子及びNiCo−SDC粒子の水素吸着能(重量あたり)を示すTPDスペクトル図である。
【符号の説明】
【0093】
100 固体電解質基材
102 空気極
104 燃料極
106 燃料電池セル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体からなり、かつ気体に対する吸着能を式:吸着分子数(モル)/多孔質体の単位面積(m2)で表した場合、メタン、一酸化炭素及び水素のそれぞれの気体に対して0.1〜10×10-6モル/m2の吸着能を有することを特徴とする燃料電池用電極材料。
【請求項2】
前記多孔質体が、0.1〜40m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項3】
前記多孔質体がサーメットであり、該多孔質サーメットが、ニッケルサーメットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項4】
前記多孔質体が、コバルト及びニッケルからなる金属粒子ならびに固体酸化物からなる電解質粒子を含むサーメットであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項5】
前記金属粒子が、CoО及びNiОに換算して、20〜90モル%のコバルト及び残部のニッケルからなることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項6】
前記コバルト及びニッケルがそれぞれ酸化物であるCoО及びNiОの状態にあるとき、前記電解質粒子が前記サーメットの全量を基準にして10〜70重量%の量で含まれることを特徴とする請求項4又は5に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項7】
前記コバルト及びニッケルが少なくとも還元状態において完全に固溶していることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項8】
前記多孔質体に固体酸化物からなる電解質粒子が含まれ、かつ前記電解質粒子が、セリア系セラミックス、ジルコニア系セラミックス又はその混合物からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項9】
前記電解質粒子が、サマリウムドープセリア系セラミックス、ガドリニウムドープセリア系セラミックス、イットリウム安定化ジルコニア系セラミックス、スカンジウム安定化ジルコニア系セラミックス又はその混合物からなることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項10】
前記電解質粒子が、前記金属粒子に比較して小さい粒径を有していることを特徴とする請求項8又は9に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項11】
薄膜の形で使用されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項12】
燃料電池の燃料極として使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項13】
固体電解質基材と、該基材の燃料室側に形成された燃料極と、該基材の空気室側に形成された空気極とから形成された燃料電池セルを含む固体電解質型燃料電池であって、前記燃料極が、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電極材料からなることを特徴とする固体電解質型燃料電池。
【請求項14】
前記燃料電池セルが、単一のセル部材からなるかもしくは複数個のセル部材の組み合わせからなることを特徴とする請求項13に記載の燃料電池。
【請求項15】
前記燃料電池セルを固体燃料、液体燃料又はガス燃料の燃焼によって発生せしめられた火炎が燃料極に接触するように配置してその火炎中の燃料種と熱によって発電を行う直接火炎型燃料電池であることを特徴とする請求項13又は14に記載の燃料電池。
【請求項16】
前記燃料電池セルをガス燃料と酸素もしくは酸素含有ガスとの混合燃料ガス雰囲気中に配置して、前記燃料極と前記空気極の間で発生する電位差に基づいて発電を行うシングルチャンバ型燃料電池であることを特徴とする請求項13又は14に記載の燃料電池。
【請求項17】
それぞれが燃料電池として機能する2個もしくはそれ以上の燃料電池ユニットの組み合わせからなることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項1】
多孔質体からなり、かつ気体に対する吸着能を式:吸着分子数(モル)/多孔質体の単位面積(m2)で表した場合、メタン、一酸化炭素及び水素のそれぞれの気体に対して0.1〜10×10-6モル/m2の吸着能を有することを特徴とする燃料電池用電極材料。
【請求項2】
前記多孔質体が、0.1〜40m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項3】
前記多孔質体がサーメットであり、該多孔質サーメットが、ニッケルサーメットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項4】
前記多孔質体が、コバルト及びニッケルからなる金属粒子ならびに固体酸化物からなる電解質粒子を含むサーメットであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項5】
前記金属粒子が、CoО及びNiОに換算して、20〜90モル%のコバルト及び残部のニッケルからなることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項6】
前記コバルト及びニッケルがそれぞれ酸化物であるCoО及びNiОの状態にあるとき、前記電解質粒子が前記サーメットの全量を基準にして10〜70重量%の量で含まれることを特徴とする請求項4又は5に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項7】
前記コバルト及びニッケルが少なくとも還元状態において完全に固溶していることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項8】
前記多孔質体に固体酸化物からなる電解質粒子が含まれ、かつ前記電解質粒子が、セリア系セラミックス、ジルコニア系セラミックス又はその混合物からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項9】
前記電解質粒子が、サマリウムドープセリア系セラミックス、ガドリニウムドープセリア系セラミックス、イットリウム安定化ジルコニア系セラミックス、スカンジウム安定化ジルコニア系セラミックス又はその混合物からなることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項10】
前記電解質粒子が、前記金属粒子に比較して小さい粒径を有していることを特徴とする請求項8又は9に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項11】
薄膜の形で使用されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項12】
燃料電池の燃料極として使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項13】
固体電解質基材と、該基材の燃料室側に形成された燃料極と、該基材の空気室側に形成された空気極とから形成された燃料電池セルを含む固体電解質型燃料電池であって、前記燃料極が、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電極材料からなることを特徴とする固体電解質型燃料電池。
【請求項14】
前記燃料電池セルが、単一のセル部材からなるかもしくは複数個のセル部材の組み合わせからなることを特徴とする請求項13に記載の燃料電池。
【請求項15】
前記燃料電池セルを固体燃料、液体燃料又はガス燃料の燃焼によって発生せしめられた火炎が燃料極に接触するように配置してその火炎中の燃料種と熱によって発電を行う直接火炎型燃料電池であることを特徴とする請求項13又は14に記載の燃料電池。
【請求項16】
前記燃料電池セルをガス燃料と酸素もしくは酸素含有ガスとの混合燃料ガス雰囲気中に配置して、前記燃料極と前記空気極の間で発生する電位差に基づいて発電を行うシングルチャンバ型燃料電池であることを特徴とする請求項13又は14に記載の燃料電池。
【請求項17】
それぞれが燃料電池として機能する2個もしくはそれ以上の燃料電池ユニットの組み合わせからなることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2006−318769(P2006−318769A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140353(P2005−140353)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り インターネットアドレス(http://www.electrochem.org/meetings/future/207/technical_program.htm)にて発表
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り インターネットアドレス(http://www.electrochem.org/meetings/future/207/technical_program.htm)にて発表
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】
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