説明

電極清掃方法、コロナ放電装置、帯電装置、および画像形成装置

【課題】極めて高耐久かつ電極清掃動作の設定自由度が高い転写帯電装置を提供する。
【解決手段】細線状の放電電極11と放電電極11の近傍に配設されたシールド電極12との間に放電バイアス電源21が接続され、放電バイアス電圧を印加された放電電極11の周囲でコロナ放電を発生させる。放電電極11を用いたコロナ放電の通算放電時間が100分に達するごとに、バイアス電圧を印加したまま電極伸縮アクチュエータを複数回作動させて放電電極11を3%伸縮させる動作を繰り返す。伸縮によって疲労して放電電極の表面から分離したスケールは、間髪を入れずに高電圧によって弾き飛ばされるので、放電電極11が清掃されて放電均一性が回復する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
張設された放電電極に放電電圧を印加してコロナ放電を発生させるコロナ放電装置における電極清掃方法と、この電極清掃方法を実施可能なコロナ放電装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
尖った電極の周囲に形成される急勾配な電界によって比較的に低い電圧で持続的な放電を発生させるコロナ放電装置が実用化されている。細線状や薄帯状の放電電極を張設して三側面をシールド電極で覆ったコロナ放電装置は、シールド電極と放電電極との間に数100〜数kVの電圧を印加して、大気中で、安定した放電を継続可能である。
【0003】
コロナ放電装置における放電電極の表面は、放電中に放電生成物の被爆を受けて、突起物が形成されたり、電子放出を妨げる汚染層が形成されたりする。このような絶縁層や汚染層は、正常なコロナ放電を妨げて放電均一性を低下させる。そこで、所定の放電継続時間に達したり、所定の放電電流が得られる電圧が高まって放電効率が所定水準を割り込んだりした段階で、コロナ放電装置の放電電極を自動清掃する画像形成装置が実用化されている。
【0004】
特許文献1には、モーター駆動されるスクリュー軸を用いて、張設された細線状の放電電極に沿ってクリーニング部材を移動させるコロナ放電装置が示される。クリーニング部材は、一対のフェルト材料で放電電極を挟み込んでおり、フェルト材料を往復移動させ、放電電極を摺擦して付着物を拭き取る。
【0005】
特許文献2には、感光体ドラムの周囲に一次帯電装置としてのコロナ放電装置と、記録材への転写帯電装置としてのコロナ放電装置とを配置した静電写真方式の画像形成装置が示される。転写帯電装置としてのコロナ放電器の放電経路にレーザー光を照射して気体を励起/電離させることにより、低い放電電圧でも安定したコロナ放電を維持させている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−24620号公報
【特許文献2】特開2006−119505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されるコロナ放電装置は、張設された放電電極の全長に渡ってクリーニング部材を移動させるための大掛かりな機構が必要である。放電電極の張設距離と等しい長さのクリーニング部材案内機構、クリーニング部材の移動空間と待機空間、長いスクリュー軸を含む駆動機構が必要である。これらの機構や空間は、コロナ放電装置の組み立てを複雑化して部品点数を増大させるので、画像形成装置の小型軽量化、製造コストの削減を困難にする。
【0008】
また、クリーニング部材が放電電極を挟み込む方向にしか摺擦の圧力が作用しないので、挟み込む方向と直角な方向の側面の付着物は拭き取りできず、清掃による放電均一性の回復が十分ではない。フェルト材料に絡む突起物は除去できるが、表面が平坦な付着層や汚染層に対してはあまり除去効果を期待できない。
【0009】
特許文献2に示されるコロナ放電装置は、低い電圧で運転できるので放電電極の表面に絶縁層や汚染層を形成しないで済む。しかし、レーザー光源、光学系、ビーム走査機構等の過大な装置構成が付加されるので、特許文献1よりもさらに画像形成装置の小型軽量化、製造コストの削減を妨げる。
【0010】
本発明は、放電電極の張設方向の一端に片寄せた簡単な機構を用いて、放電電極の清掃に大きな効果を発揮できるコロナ放電装置の電極清掃方法を提供することを目的としている。また、張設された放電電極を伸縮させる操作によって、放電電極の表面に形成された絶縁層や汚染層を表面から分離できるコロナ放電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電極清掃方法は、放電電極が張設されたコロナ放電装置における電極清掃方法である。前記放電電極を伸縮させて前記放電電極の付着物を脱落容易にする第1工程と、脱落容易となった付着物を前記放電電極の表面から脱落させる第2工程とを備える。
【0012】
本発明のコロナ放電装置は、放電電極が張設されたものである。前記放電電極を張設方向に伸縮させて前記放電電極の付着物を脱落容易にする伸縮手段を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電極清掃方法では、第2工程における付着物の脱落に先立たせて、第1工程で放電電極を伸縮させる。このとき、放電電極と付着物との間の伸縮量の差によって、放電電極の表面と付着物との間に隙間が形成されたり、付着物の組織に亀裂や損傷が生じたりする。伸縮に伴って放電電極の表面組織と不純物原子との結合が緩んだり、表面組織から気体分子が追い出されたりする場合もある。
【0014】
第2工程の例は、摺擦、弾弦振動、衝撃、超音波、粒子吹き付け、高電圧の印加等である。これらの中でも高電圧を利用した場合は、電気的な反発力が、第1工程で形成された隙間を拡大する方向に付勢して、付着物を放電電極の表面から弾き飛ばすように脱落させることも可能である。言い換えれば、コロナ放電に伴って逆極性に帯電して放電電極に付着した付着物を、同極性に帯電させて放電電極から追い出すことができる。付着物や不純物が脱落した放電電極の表面は、当初の電子放出能力や表面抵抗を回復して、放電均一性や放電効率が高まる。
【0015】
第2工程で高電圧を利用する場合、伸縮と高電圧の印加とは同時並行的に行うことが望ましい。付着物に形成された隙間や損傷が回復する前に、間髪を入れずに高電圧によって一気に脱落させ得るからである。
【0016】
第2工程で高電圧を利用する場合、高電圧を印加した状態で繰り返しの伸縮を行うことはさらに望ましい。付着物の組織を疲労させて隙間や損傷を効率的に発生させるからである。
【0017】
本発明のコロナ放電装置は、本発明の電極清掃方法を行う際に、伸縮駆動機構を作動させて上記第1工程を実行する。伸縮駆動機構が放電電極を伸縮させると、放電電極と付着物との間の弾性定数差、剛性差、ひずみ量差、疲労抵抗差等が、放電電極の表面と付着物との間に隙間を形成したり、付着物の組織に損傷を与えたりする。隙間や損傷は、伸縮しない場合に比較して付着物の分離を各段に容易にする。
【0018】
従って、弱い圧力の摺擦でも付着物を効率的に除去できる。伸縮前はコロナ放電時の電圧印加に耐えて付着していた付着物でも、新たに形成された隙間や損傷に高電圧を作用させて電気的な反発力で押し広げ、弾き飛ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態であるコロナ放電装置を帯電装置として搭載した画像形成装置について、図面を参照して詳細に説明する。本発明のコロナ放電装置は、以下に説明する実施形態の限定的な構成には限定されない。張設した放電電極を張接方向に伸縮させて付着物を除去する限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実現可能である。
【0020】
本発明のコロナ放電装置は、以下で説明する画像形成装置に搭載された各種の帯電装置には限定されない。空気中で安定した放電を継続して気体分子や浮遊粒子を帯電させる各種装置に搭載して各種の用途に利用可能である。このような場合、本発明のコロナ放電装置には、これらの各種の用途に適合させるための必要な構成が付加されることは言うまでも無い。
【0021】
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置の一般的な構造、制御、運転方法、コロナ放電装置やコロナ放電現象の詳細については、一部図示を省略して詳細な説明も省略する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は分離帯電装置を搭載した画像形成装置の構成の説明図、図2は分離帯電装置としてのコロナ放電装置の構成の説明図、図3はコロナ放電装置の伸縮駆動機構の説明図である。図4は伸縮率と放電電流密度分布との関係の線図、図5は図4の部分的な拡大図、図6は伸縮率と放電むらの関係の線図である。
【0023】
図1に示すように、画像形成装置100は、感光体ドラム1に形成されたトナー像を記録材Pに転写して画像形成する。回転する感光体ドラム1の周囲には、一次帯電装置2、露光装置7、現像装置3、転写帯電装置10、およびクリーニング装置6が配置される。一次帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を一様に帯電させる。露光装置7は、不図示の光源から強度変調して出力されたレーザービームを回転ミラー7bにより走査し、ミラー7aで折り返して感光体ドラム1に照射する。これにより、一様に帯電された感光体ドラムの表面に静電潜像が書き込まれる。
【0024】
現像装置3は、現像バイアス電源22から直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアス電圧を印加された現像スリーブ3aを有する。現像スリーブ3aは、中心に固定配置された永久磁石の周囲で回転しており、ブレード3bによって厚さを規定された穂立ち状態のトナーを表面に保持する。現像スリーブ3aは、感光体ドラム1の表面の静電潜像にトナーを吸着させて感光体ドラム1の表面にトナー像を形成する。
【0025】
転写帯電装置10は、放電電源を兼ねた放電バイアス電源21から正電位の転写バイアス電圧を印加されてコロナ放電を発生させ、正電位のイオンフローを記録材Pの背面に吹き付ける。レジストローラ4から感光体ドラム1下に搬送された記録材Pは、トナーのマイナス帯電極性と反対極性の正電位に帯電してトナー像を表面に吸着する。
【0026】
クリーニング装置6は、感光体ドラム1に残った転写残トナーを除去して次回の画像形成に備えさせる。クリーニング装置6の下流側には、感光体ドラム1の表面に残った静電潜像を解消する不図示の前露光ランプも配置されている。
【0027】
搬送ベルト5は、トナー像を転写された記録材Pを定着装置9へ搬送する。定着装置9は、トナー像が転写された記録材Pを加熱加圧して記録材Pの表面にトナー像を定着させる。
【0028】
図2に示すように、転写帯電装置としてのコロナ放電装置10は、感光体ドラム1(図1)の長さに相当する細長い開口12cに細線形状の放電電極11を配置する。放電電極11の三方向の側面は、アルミニウムのシールド電極12で覆われ、放電電極11を張設する機構を格納した機構収納部12a、12bが両端に配置する。コロナ放電装置10は、シールド電極12と放電電極11との間に放電電圧を印加することにより、大気中で安定したコロナ放電を継続させる。そして、放電電極11の周囲の空間で形成された放電生成物である帯電分子を用いて記録材P(図1)を帯電させる。
【0029】
図3に示すように、放電電極11は、変形量6%の負荷、除荷サイクルを10000回以上行うことができる超弾性合金より成る直径60μmの細線形状である。好適な超弾性合金材料の一例としては、古河テクノマテリアル社製のNi−Ti−Cr系超弾性合金(製品記号NT−N)がある。
【0030】
放電電極11は、5%の延伸状態で張力を持たせて張設される。放電電極11は、回転自在な電極張架部材14、15に掛け渡され、両端部分をそれぞれ電極端部ピン13、16に固定してある。放電電極11の背面には、シールド電極12が配設され、放電電極11とシールド電極12との間に放電バイアス電源21が接続されている。伸縮駆動側の電極端部ピン16は、電磁アクチュエータである電極伸縮アクチュエータ18の駆動軸17に固定される。電極伸縮アクチュエータ18を作動させると、電極端部ピン16は、放電電極11を短くする方向へ放電電極11全長の3%相当の距離移動する。
【0031】
制御装置20は、電極伸縮アクチュエータ18にアクチュエータ制御信号を出力して放電電極11の伸縮を制御する。制御装置20は、放電バイアス電源21に放電バイアス制御信号を出力して放電電極11に印加される放電バイアス電圧を制御し、放電動作時に40μA/cm前後のコロナ放電動作を継続させる。
【0032】
制御装置は、放電バイアス電源21の出力状態を検知して清掃時期を決定する。放電電流と放電時間とから通算放電電荷量を算出し、通算放電電荷量が0.3C/cmに達するごとに電極伸縮アクチュエータ18を駆動させて、放電電極11を3%収縮させた後に延伸する。例えば40μA/cmの放電動作であれば、放電時間6000秒に一回の頻度で放電電極11を伸縮(正確には縮伸)させる。毎回の収縮及び延伸は、各々5ms程度の時間で急速に成され、収縮中および延伸中も放電バイアス電圧は印加され続ける。放電バイアス電圧を印加した状態で放電電極11を素早く収縮/延伸させるので、放電電極11の表面から剥離した放電生成物は、力学的、静電的に放電電極11から弾き飛ばされる。
【0033】
このようにして放電電極11を3%伸縮させるコロナ放電装置10では、40μA/cmの放電時間7500秒ごとに一回という上述の清掃頻度で、十分な放電均一性を確保できた。そして、この清掃頻度で放電電極の清掃を繰り返すことにより、80C/cmの通算放電電荷量、すなわち40μA/cmの放電時間約560時間を過ぎても放電均一性の悪化傾向が見られなかった。
【0034】
また、コロナ放電装置10では、3%伸縮後の放電の均一性は、清掃前の放電電極11の汚染状況に依らないことが判明した。すなわち、長時間の連続運転を行って放電均一性が極端に悪化した状態からでも、3%伸縮の清掃動作を行うことにより極めて高い放電均一性を回復できる。例えば、通算放電電荷量0.6C/cmごとの清掃動作とした場合でも通算放電電荷量0.3C/cmごとの清掃動作とした場合と同等な放電均一性を回復できた。40μA/cmの放電時間15000秒に一回の清掃頻度である。
【0035】
ただし、通算放電電荷量0.6C/cmごとの清掃動作とした場合、清掃直前には有意な放電均一性の低下が見られた。すなわち、有意な放電均一性の低下をもたらすような放電生成物を3%伸縮の清掃動作によってほぼ完全に除去できると推察される。従って、コロナ放電装置10の使用目的によって決まる放電均一性を維持できる最大の連続放電時間を清掃間隔に設定しても問題を生じない。清掃間隔が長くても放電電極11の寿命が短くなることは無く、清掃実施の設定自由度は従来の清掃方法を用いたコロナ放電装置に比べて極めて高い。
【0036】
これに対して、従来のコロナ放電装置では、40μA/cmの放電時間2000秒ごとに一回という第1実施形態の1/3の周期での清掃動作を行わないと十分な放電均一性を確保できなかった。通算放電電荷量0.08C/cmごとに1回の清掃頻度となる。従来のコロナ放電装置とは、放電電極に60μmのタングステンワイヤを用いて、クリーニング部材を放電電極に沿って往復動作させて清掃するものである。
【0037】
また、従来のコロナ放電装置では、清掃間隔が長くなると放電電極の放電効率を回復できなくなる。後述する均し系クリーニング部材の場合、通算放電電荷量0.08C/cmで清掃を繰り返すと、通算放電電荷量10C/cmで放電均一性の十分な回復が得られなくなる。40μA/cmの放電時間として約70時間である。また、後述する接触剥ぎ取り系クリーニング部材の場合、同じく通算放電電荷量0.08C/cmで清掃を繰り返すと、通算放電電荷量20C/cmで放電均一性の十分な回復が得られなくなる。40μA/cmの放電時間として約140時間である。そして、清掃間隔を上記よりも長くした場合、清掃動作によって放電均一性を十分に回復できなくなるまでの運転時間は、いずれのクリーニング部材においても上記よりも短くなる。これは、後述するように、クリーニング部材の清掃効果が限定的で、付着物の完全な除去が不可能なためである。
【0038】
従って、3%伸縮の清掃動作は、均し系クリーニング部材や接触剥ぎ取り系クリーニング部材に比較して付着物をより完全に剥落させて、放電電極11の放電均一性や放電効率をより完全に回復させることが実証された。
【0039】
ところで、図4乃至図6に示すように、清掃動作における放電電極11の伸縮率は、清掃効果を大きく左右する。清掃時の電極伸縮動作の大きさで清掃の効果が変わる。図4は、伸縮率を0.1〜2%に異ならせて清掃動作を繰り返した場合の放電電極11に沿った放電出力電流密度の分布を比較している。通算放電電荷量0.3C/cmごとに清掃動作を繰り返して通算放電電荷量20C/cmに達した耐久状態で、放電出力電流密度の分布を測定した結果である。図5は同じ測定結果の部分的な拡大図である。
【0040】
図4、図5に示すように、放電電極11の放電均一性が際限なく悪化して異常放電に至る事態を回避するためには、放電時間6000秒に一回の頻度で、放電電極11を0.1%伸縮させる清掃動作を繰り返せば十分である。但し、図4からわかるように、0.1%伸縮では、維持される放電均一性は低く、初期状態の100倍程度の放電むらを許容しなくてはならない。
【0041】
清掃動作における放電電極11の伸縮率と耐久後の放電電流密度のむらの大きさの関係を図6に初期状態と比較して示す。図6に示すように、放電むらを初期状態の10倍程度に維持するには0.5%の伸縮率、2倍程度に維持するには1%の伸縮率が必要であった。2%以上の伸縮動作では、放電むらが初期状態とほぼ変わらない状態を維持できる。
【0042】
このように定めた伸縮率と清掃頻度とで制御装置が20が放電電極11を伸縮させるので、コロナ放電装置10の放電電極11に沿った放電電流密度のむらは耐久状態でも低く抑制される。放電電流密度のむらが抑制されるため、コロナ放電装置10による記録材Pの幅方向における帯電量のばらつきが小さくなり、帯電量のばらつきに起因するトナー像の転写不良が減る。これにより、画像形成装置100が形成する画像の品質と均一性とが向上する。
【0043】
<第2実施形態>
図7は第2実施形態のコロナ放電装置の構成の説明図である。第2実施形態のコロナ放電装置30は、図1に示す画像形成装置100のコロナ放電装置10を置き換えて設置される。第1実施形態との違いは、放電電極31を形状記憶合金として通電加熱により伸縮させて清掃を行い、放電電極31に沿って往復移動するクリーニング部材41も付加したことである。これ以外は第1実施形態と同様に構成されているので、図7中、図3と共通する構成には共通の符号を付して、一部図示を省略し、詳細な説明を省略する。
【0044】
第2実施形態で用いる放電電極31は、変態温度70度、変形量6%の変形、復元サイクルを10000回以上行うことができる形状記憶合金の細線(直径60μm)である。好適な形状記憶合金材料の一例は、古河テクノマテリアルのNi−Ti−Cu系形状記憶合金(製品記号NT−H)である。
【0045】
放電電極31は、回転自在な通電電極34、35に掛け渡され、通電電極35側の端部を電極端部ピン36に固定してある。通電電極34側の端部は、張架ばね32を介して電極端部ピン13に固定され、放電電極31は、張架ばね32の張力によって電極端部ピン13、36の間に張り渡される。放電電極31の伸縮に伴って張架ばね32が伸縮して放電電極31の張力を確保し、放電電極31にたるみを生じさせない。
【0046】
放電電極31の背面には、シールド電極12が配設され、放電電極31とシールド電極12との間には放電バイアス電源21が接続されている。通電電極34、35には通電電源33が接続され、通電電極34、35間の放電電極31に所定の電流を流すことで、放電電極31は、変態点を越える100度程度にまで加熱される。
【0047】
放電電極31は、非通電時に5%の伸びで張り渡され、変態点を越える通電加熱によって、張架ばね32の復元力に逆らって2%の伸びまで収縮する。張架ばね32は、そのように長さ及びばね定数を設定してある。
【0048】
放電電極31の通電電極35近傍の非放電領域には、2枚のウレタンスポンジから成るクリーニング部材41が配設されている。クリーニング部材41は、清掃部材駆動装置44によって通電電極35近傍の非放電領域(実線位置)から通電電極34近傍の非放電領域(破線位置)まで往復移動が可能である。クリーニング部材41は、モーター駆動されるスクリュー軸42に係合された送りねじ43に取り付けられ、往復移動に伴って、放電電極31を拭き取り動作する。
【0049】
なお、クリーニング部材41は、通電電極35近傍の非放電領域にあるときは、図示しない離間部材により放電電極31から離間されており、移動して放電領域を通過する際には、離間部材から外れて放電電極31に接触する。
【0050】
制御装置20からは、放電バイアス電源21に対して放電バイアス制御信号、通電電源33に対して通電電源制御信号、清掃部材駆動装置44に対して清掃部材駆動信号がそれぞれ出力される。
【0051】
制御装置20は、放電動作時に放電バイアス電源21から帯電バイアス電圧を出力させて、40μA/cm前後のコロナ放電を継続させる。制御装置20は、放電バイアス電源21が出力する放電電流と放電時間とを検知して通算放電電荷量を算出する。そして、通算放電電荷量が0.3C/cm(40μA/cmの放電動作であれば放電時間6000秒)に達するごとに放電バイアス電源21を停止させて、伸縮動作による放電電極31の非接触清掃動作を行う。放電停止した放電電極31は、通電電源33によって通電されて変態点を越える温度まで加熱され、形状記憶合金の形状復元作用により3%収縮した後、通電を停止されて常温の5%延伸状態に復帰する。
【0052】
この非接触清掃動作によって放電生成物は、放電電極31の表面から剥離するが、収縮、延伸の早さが遅いため、放電電極31の表面上に留まる。通電電源33を用いた放電電極31の伸縮動作後、制御装置20は、清掃部材駆動装置44を作動させて拭き取り動作による放電電極31の接触清掃動作を行う。クリーニング部材41を往復移動させて放電電極31の表面の放電生成物を拭き取ることにより、放電電極31の表面上の剥離した放電生成物は放電電極31の放電領域からほぼ完全に除去される。
【0053】
以上をもって、非接触清掃動作と接触清掃動作とによる放電電極31の清掃が完了して、放電電流密度のむらを抑制したコロナ放電動作を再び得られる。
【0054】
第2実施形態では、クリーニング部材41によって放電生成物が回収されるため、第1実施形態に比較して、コロナ放電装置30の内部や近傍に放電生成物が飛散しにくい。従って、放電生成物の飛散によるコロナ放電装置30近傍(例えば感光体ドラム1:図1)の汚染を嫌う用途ではこの構成が望ましい。
【0055】
第2実施形態では、また、形状記憶合金の加熱による復元動作を用いて放電電極31の伸縮動作を実現しているので、第1実施形態のような機械的に放電電極を伸縮させる駆動機構を設ける必要が無い。
【0056】
<第3実施形態>
第3実施形態のコロナ放電装置は、図7に示される第2実施形態の構成からクリーニング部材41、送りねじ43、スクリュー軸42、清掃部材駆動装置44を取り除いて構成される。このため、極めて簡易な構成と言える。周囲に対する放電生成物の飛散を防ぐ必要が無い場合、クリーニング部材41を用いた接触清掃動作を、第1実施形態と同様な高電圧印加に置き換えることができる。第3実施形態では、制御装置20は、放電バイアス電源21により帯電バイアス電圧を印加した状態で、通電電源33を作動させて放電電極31を通電加熱/停止を繰り返す。これにより、放電電極31が3%伸縮動作を繰り返して放電生成物が表面から剥離すると、剥離した放電生成物は、第1実施形態と同様な電気的な力によって間髪を入れずに弾き飛ばされる。
【0057】
第3実施形態では、放電を継続しながら放電電極31の非接触清掃動作を行うことで、剥離した放電生成物の殆どを静電的にはじき出して除去する。放電電極31上に放電生成物が残る場合もあるが、この場合、放電バイアス電源21のオン、オフを繰り返すことでほぼ完全に除去できる。例えば、帯電バイアス電圧のオンを5ms、オフを5msのオンオフを100サイクル繰り返す。
【0058】
第3実施形態のコロナ放電装置は、機械的な駆動部や駆動機構を備えることなく放電電極31のクリーニングを実施できるので、極めて高耐久かつ電極清掃動作の設定自由度が高いコロナ放電装置を実現できる。
【0059】
<第4実施形態>
図8は第4実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。第1実施形態〜第3実施形態は、画像形成装置100の分離帯電装置としてのコロナ放電装置を説明したが、本発明のコロナ放電装置は、画像形成装置の一次帯電装置としても利用可能である。一次帯電装置として本発明のコロナ放電装置を使用する場合、一次帯電電位を制御するためのグリッドが付加されることが望ましい。
【0060】
図8に示すように、画像形成装置200の感光体ドラム51の周囲には、一次帯電装置50、露光装置57、現像装置53、一次転写帯電装置70、クリーニング装置56、前露光装置58が配置される。
【0061】
一次帯電装置50は、矢印方向に回転する感光体ドラム51の表面を一様な正電位の帯電状態に帯電させる。露光装置57は、感光体ドラム51の表面にレーザービームを走査して、露光点の電位を画素濃度に応じた電位まで放電させて静電潜像を形成する。現像装置53は、現像スリーブ53aに磁気的に担持させた負電位のトナーを感光体ドラム51表面の正電位の静電潜像に電気的に付着させてトナー像を形成する。
【0062】
無端ベルト状の中間転写ベルト67は、感光体ドラム51の表面に接触させて配置され、同一方向へ同一速度で循環する。一次転写帯電装置70は、中間転写ベルト67を裏面側から正電位に帯電させて、トナー像を感光体ドラム51から中間転写ベルト67へ転写する。クリーニング装置56は、クリーニングブレード56aによって感光体ドラム51に残留した転写残トナーを除去する。前露光装置58は、転写残トナーを除去された感光体ドラム51の表面を露光して前回の静電潜像を放電させて消去する。中間転写ベルト67に一次転写されたトナー像は、不図示の二次転写部で記録材に転写される。
【0063】
一次帯電装置は、感光体ドラム51の長さに相当する長さを持たせた細線状の放電電極61の両側面にシールド電極62を配置している。放電電極61とシールド電極62との間に、不図示の放電バイアス電源から放電電圧が印加されて、放電電極61の周囲で安定したコロナ放電が形成される。
【0064】
放電電極61と感光体ドラム51の表面との間にグリッド63が配置される。放電電極61とグリッド63との間には、可変電圧を出力するグリッドバイアス電源が接続されている。グリッドバイアス電源は、放電電極61の周囲で形成されたイオンが感光体ドラム51の表面に達して一次帯電に寄与する量を調整して、一次帯電の電位を制御する。
【0065】
このように構成された一次帯電装置50は、第2実施形態と同様な放電電極61のクリーニング機構を備えている。そして、放電電極61を通電加熱して張設方向に3%伸縮させた後に、拭き取り部材を張設方向に往復移動させて放電電極61の表面を摺擦することにより、放電生成物を取り除く。
【0066】
<第5実施形態>
本発明のコロナ放電装置は、画像形成装置に搭載される各種の帯電装置以外にも各種の用途に利用できる。
【0067】
空気中の浮遊粒子を帯電させてフィルタに吸着させる粒子分離装置や空気清浄機に搭載可能である。静電塗装物、布、樹脂製品等の除電装置等、コロナ放電を利用して帯電、除電を行う各種帯電装置、除電装置に搭載可能である。オゾンを発生して各種処理を行う殺菌装置、オゾン発生装置にも搭載可能である。
【0068】
<開発の経緯>
コロナ放電装置の放電電極には、孤立した針や、針の並び、板を鋸刃状に加工して鋭い先端を多数形成したもの、細線など、用途に応じて好適な放電特性を持つものが選択される。細線状の放電電極は、放電電流値は小さいが放電分布が一次元的に高い均一性を持つので、画像形成装置の各種帯電装置に採用されている。細線状の放電電極を用いた場合の放電均一性は、放電動作に伴う放電生成物による放電電極の汚染のため損なわれる。放電電極表面の放電生成物は、放電電極を被う鞘状の部分と、ひげ状もしくは樹状突起部分とから成り、主にシリコン酸化物、カルシウム酸化物等の無機化合物から形成されている。放電電極の汚染による放電均一性の悪化を防ぐため、上述したように、放電電極の清掃機構を設けることが実施されている。広く用いられているのは、清掃時に放電電極に当接して放電電極に沿って移動するクリーニング部材を用いた清掃方式である。
【0069】
クリーニング部材を用いた清掃方式は、大きく2つに分類できる。ひとつは放電電極の表面に付着した放電生成物の表面を均すことで放電の均一性を維持する方式である。これを均し系と呼ぶ。均し系では、スポンジのような柔らかいクリーニング部材を用いて放電電極の表面を撫でるように擦ることにより、放電生成物の鞘状の部分を傷付けること無く、突出部分のみを取り除く。残された鞘状の部分は放電に伴って均一に成長する傾向があるため、放電の均一性は維持できる。均し系クリーニング部材を用いた場合の放電電極の寿命は、クリーニング部材やその駆動系に由来する清掃状態の長手方向不均一により鞘状の部分の厚さの不均一が徐々に大きくなり、この不均一に依る放電むらが無視できなくなった時点である。もしくは厚くなった鞘状の部分が損傷して突然部分的に強い放電むらを来した時点である。すなわち、放電に伴って鞘状の部位が確実に肥厚していくことに由来しており、これを回避することには限界がある。
【0070】
もう一つは放電電極の表面に付着した放電生成物をできる限り剥ぎ取ることで放電の均一性を維持する方式である。これを接触剥ぎ取り系と呼ぶ。接触剥ぎ取り系のクリーニング部材では、放電生成物の樹状突起部分に加えて鞘状の部分も取り除くことを目指している。接触剥ぎ取り系のクリーニング部材は、細かくても1000番程度の粗い研磨粒子を不織布の上にエポキシで固着したような比較的硬くて研磨力の高い部材を放電電極に強く押し当てて用い、鞘状部位を削り取る強研磨系が広く用いられている。強研磨系では清掃を繰り返すことによる研磨粒子の脱落や削り取った放電生成物による目詰まりで研磨能力が落ち、鞘状部位を剥ぎ取れなくなることで放電電極の寿命が決まってくる。
【0071】
他に曲率の大きい突き当て部材を放電電極に押し当てて放電電極大きな曲率で曲げることにより、硬くてもろい放電生成物の鞘状の部分を剥離させる屈曲系も提案されている。しかし、屈曲系は、放電電極に対する機械的ダメージが大きく、複数の方向に曲げる構成が複雑になり、放電電極の全周に渡る放電生成物の剥離を保証することが難しい等の理由からあまり用いられていない。
【0072】
以上述べたように、クリーニング部材を用いた清掃方式では、放電電極の寿命は制限があり、これを回避することは難しい。加えて均し系、剥ぎ取り系共に必要最低限の清掃頻度があり、これは放電環境により変化する。例えば放電雰囲気中に含まれるシリコンオイルの蒸気が多いと必要最低限の清掃頻度は高くなる。必要最低限の清掃頻度で清掃を行うことを怠ると回復不能な寿命の短縮が起きることから、想定される最悪の動作環境に合わせた清掃頻度を設定する必要があり、通常の動作条件に対して必要以上に高い頻度である。このため、放電動作の中断を伴う清掃動作を行うことを余儀なくされる。
【0073】
これに対して第1実施形態〜第5実施形態で説明したコロナ放電装置は、放電電極が伸長、収縮される時、伸縮する放電電極の表面と硬く脆い放電生成物の鞘との間にずれが生じ、放電生成物は放電電極表面から剥離する。放電電極の伸縮に伴う薄利作用は極めて高く、ある程度放電生成物が堆積した状態でも一定の状態まで一気に剥がしきることができる。従って、クリーニング部材に頼る従来の装置に比較して、放電電極の全周に渡ってより完全に放電生成物を除去できる。
【0074】
放電電極の伸縮プロセスにおける長さの変化率は、0.1%以上10%以下である。この数値は、我々の実験において、変化率が0.1%以上で有意な清掃効果が見られたこと、及び10%を越える電極長伸縮プロセスを10回以上行うことができる金属材料を見出すことができなかったことに由来する。1%以上の変化率の場合、清掃効果は十分に高く、それ以上変化率を大きくしても放電むらの維持効果の改善は見られない。
【0075】
0.1%、好適には1%以上の電極長伸縮プロセスを行った場合、通常の金属材料では疲労により早晩破断を来す。これを回避するには、大きな可逆変形を行うことができる材料を用いれば良い。このような材料としてTiとNiを主成分とする超弾性材料が広く一般に用いられている。このような材料の中には、5%以上の電極長伸縮プロセスを10000回以上行うことができるものもある。その他にも構造相転移を伴わない弾性変形で1%以上の可逆変形を行うことができる材料も存在するが、一般的ではなく高価で、現状細線状に加工することは難しい。
【0076】
また、放電電極として変態温度以上に加熱することにより構造相転移を伴う変形をきたし所定形状に復元する形状記憶材料で形成された細線を用いることができる。この場合、放電電極に所定の電流を流して通電加熱により変態温度以上に加熱し、張力を変えることで放電電極の長さを変えることができる。繰り返し大変形が可能な材料として形状記憶合金を用いることにより、放電電極の伸縮プロセスを機械的駆動機構無しに実現できる。
【0077】
ところで、放電電極の伸縮プロセスが保証するのは、放電電極の表面からの放電生成物の剥離であり、除去については一般には保証しない。伸縮プロセスを、例えば放電電極を弾くようにして極めて早く実施する、もしくは/及び放電を行いながら実施することで、剥離した放電生成物を放電電極から除去することは可能である。しかし、除去された放電生成物は周囲に飛散することになり、これを許容しない用途も多い。伸張プロセスを0.1秒以上の時間をかけてゆっくりと行うことで放電生成物の飛散を防ぐことができる。この場合、剥離した放電生成物は、放電電極に付着した状態で残るので、これをクリーニング部材で拭き取って回収することが望ましい。放電電極に当接した状態で放電電極に沿って移動するクリーニング部材を設け、清掃動作時には放電電極を伸縮させた後にクリーニング部材に拭き取り動作を行わせる。このような構成と制御とを採用することで、剥ぎ取った放電生成物を飛散させずに放電電極から除去することが可能になり、極めて高耐久かつ電極清掃動作の設定自由度が高いコロナ放電装置を実現できる。
【0078】
<発明との対応>
第1実施形態のコロナ放電装置10は、放電電極11が張設されたコロナ放電装置10における電極清掃方法である。放電電極11を伸縮させて放電電極11の付着物を脱落容易にする第1工程と、脱落容易となった付着物を放電電極11の表面から脱落させる第2工程とを備える。
【0079】
第1実施形態では、第2工程で印加される放電バイアス電圧を兼ねた高電圧が、放電電極11の表面に堆積した付着物を脱落させる。高電圧は、放電バイアス電圧以外の電圧としてもよく、高電圧は、第2実施形態のような摺擦、弾弦振動、衝撃、超音波、研磨粒子の吹き付け等に置き換えてもよい。
【0080】
付着物の脱落に先立たせて、制御装置20が電極伸縮アクチュエータ18を作動させて放電電極11を伸縮させる。このとき、放電電極11と付着物との間の伸縮量の差によって、放電電極11の表面と付着物との間に隙間が形成されたり、付着物の組織に亀裂や損傷が生じたりする。伸縮に伴って放電電極11の表面組織と不純物原子との結合が緩んだり、表面組織から気体分子が追い出されたりする場合もある。
【0081】
第1実施形態では、付着物を脱落させるために高電圧を利用しているので、電気的な反発力が、第1工程で形成された隙間を拡大する方向に付勢して、付着物を放電電極11の表面から弾き飛ばすように脱落させる。言い換えれば、コロナ放電に伴って逆極性に帯電して放電電極11に付着した付着物を、同極性に帯電させて放電電極11から追い出すことができる。付着物や不純物が脱落した放電電極11の表面は、当初の電子放出能力や表面抵抗を回復して、放電均一性や放電効率が高まる。
【0082】
第1実施形態では、第2工程は、放電電極11に高電圧を印加して前記付着物を前記放電電極11から脱落させる工程であって、第1工程と第2工程とを同時に行う。放電電極11の伸縮と高電圧の印加とを同時並行的に行うので、付着物に形成された隙間や損傷が回復する前に、間髪を入れずに高電圧によって一気に脱落させ得る。
【0083】
第1実施形態では、高電圧を印加した状態で放電電極11を繰り返し伸縮させることが望ましい。高電圧を印加した状態で繰り返しの伸縮を行うことにより、付着物の組織を疲労させて隙間や損傷を効率的に発生させ得ることは、第3実施形態で説明したとおりである。
【0084】
第1実施形態では、放電電極11の長さの伸縮による変化率は、0.1%以上10%以下である。図6に示すように、0.5%以上3%以下がさらに望ましいことが実験により確認されている。数値限定の下限は、実験によって十分な清掃効果が確認された範囲であり、上限は耐用寿命を通じた繰り返しの伸縮回数で疲労破壊に至らない範囲である。2%は、それ以上では放電生成物の清掃効果に大差が無いため、疲労耐久と伸縮ストロークの小さな機構の採用という観点からさらに好適である。
【0085】
第1実施形態のコロナ放電装置10は、放電電極11が張設されたものである。放電電極11を張設方向に伸縮させて放電電極11の付着物を脱落容易にする伸縮手段を備えている。
【0086】
コロナ放電装置10は、本発明の電極清掃方法を行う際に、電極伸縮アクチュエータ18を作動させることにより第1工程を実行可能である。電極伸縮アクチュエータ18は、放電電極11を伸縮させることにより、弾性定数、剛性差、ひずみ量差によって放電電極11の表面と付着物との間に隙間を形成したり、付着物の組織に損傷を与えたりする。隙間や損傷は、付着物の分離を容易にするだけでなく、第2工程に高電圧を利用した場合には、電気的な反発力によって拡張されて付着物を放電電極11から分離脱落させることも可能にする。
【0087】
第1実施形態のコロナ放電装置10における放電電極11は、常温で外部応力により構造相転移を伴う可逆変形を発生する超弾性材料で形成された細線である。伸縮手段は、放電電極11の少なくとも一端側を張設方向に移動させて放電電極11を伸縮方向に変形させる電極伸縮アクチュエータ18である。
【0088】
第2実施形態のコロナ放電装置30における放電電極11は、変態温度以上に加熱することにより構造相転移を伴う伸縮を発生する形状記憶材料で形成された細線である。伸縮手段は、放電電極11に電流を通じて前記変態温度以上に加熱する通電電源33である。
【0089】
第1実施形態のコロナ放電装置10は、放電電極11に沿って配置されて前記放電電極11から絶縁されたシールド電極12と、放電電極11とシールド電極との間に前記高電圧を印加する放電バイアス電源21と、放電バイアス電源21によって前記高電圧を印加した状態で、電極伸縮アクチュエータ18を作動させて放電電極11を伸縮させる制御装置20とを備える。
【0090】
第1実施形態のコロナ放電装置10における清掃用の高電圧電源は、放電電極11に放電電圧を印加してコロナ放電を発生させる放電バイアス電源21を兼ねる。制御装置20は、放電バイアス電源21の出力状態を検知して放電電極11の清掃開始時期を判断する。
【0091】
第2実施形態のコロナ放電装置30は、放電電極11に沿って移動して放電電極11を摺擦するクリーニング部材41と、通電電源33によって放電電極11を伸縮させた後に、通電電源33により放電電極11を拭き取り清掃する制御装置20とを備える。
【0092】
画像形成装置100の転写帯電装置は、コロナ放電装置10を備え、放電電極11に対向して放電電極11と交差する方向に移動する記録材Pを帯電させる。
【0093】
画像形成装置100は、静電潜像が形成される感光体ドラム1を一次帯電する一次帯電手段と、一次帯電させた感光体ドラム1に静電潜像を形成した後にトナー像に現像させる現像装置3と、形成された前記トナー像を記録材Pに転写させる転写帯電手段とを備える。一次帯電手段と転写帯電手段との少なくとも一方をコロナ放電装置10としている。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】分離帯電装置を搭載した画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】分離帯電装置としてのコロナ放電装置の構成の説明図である。
【図3】コロナ放電装置の伸縮駆動機構の説明図である。
【図4】伸縮率と放電電流密度分布との関係の線図である。
【図5】図4の部分的な拡大図である。
【図6】伸縮率と放電むらの関係の線図である。
【図7】第2実施形態のコロナ放電装置の構成の説明図である。
【図8】第4実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1、51 像担持体(感光体ドラム)
2、50 一次帯電装置
3、53 トナー像形成手段(現像装置)
6、56 クリーニング装置
7、57 トナー像形成手段(露光装置)
9 定着装置
10、30 コロナ放電装置
11、31 放電電極
12 シールド電極
13、16 電極端部ピン
14、15 電極張架部材
18、33 伸縮手段(電極伸縮アクチュエータ、通電電源)
20 制御手段(制御装置)
21 高電圧電源(放電バイアス電源)
41 摺擦機構(クリーニング部材)
50 コロナ放電装置(一次帯電装置)
58 前露光装置
100、200 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極が張設されたコロナ放電装置における電極清掃方法において、
前記放電電極を伸縮させて前記放電電極の付着物を脱落容易にする第1工程と、
脱落容易となった付着物を前記放電電極の表面から脱落させる第2工程と、を備えたことを特徴とする電極清掃方法。
【請求項2】
前記第2工程は、前記放電電極に高電圧を印加して前記付着物を前記放電電極から脱落させる工程であって、
前記第1工程と前記第2工程とを同時に行うことを特徴とする請求項1記載の電極清掃方法。
【請求項3】
前記高電圧を印加した状態で前記放電電極を繰り返し伸縮させることを特徴とする請求項2記載の電極清掃方法。
【請求項4】
前記放電電極の長さの伸縮による変化率は、0.1%以上10%以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の電極清掃方法。
【請求項5】
放電電極が張設されたコロナ放電装置において、
前記放電電極を張設方向に伸縮させて前記放電電極の付着物を脱落容易にする伸縮手段を備えたことを特徴とするコロナ放電装置。
【請求項6】
前記放電電極は、常温で外部応力により構造相転移を伴う可逆変形を発生する超弾性材料で形成された細線であって、
前記伸縮手段は、前記放電電極の少なくとも一端側を張設方向に移動させて前記放電電極を伸縮方向に変形させる駆動機構であることを特徴とする請求項5記載のコロナ放電装置。
【請求項7】
前記放電電極は、変態温度以上に加熱することにより構造相転移を伴う伸縮を発生する形状記憶材料で形成された細線であって、
前記伸縮手段は、前記放電電極に電流を通じて前記変態温度以上に加熱する通電電源であることを特徴とする請求項5記載のコロナ放電装置。
【請求項8】
前記放電電極に沿って配置されて前記放電電極から絶縁されたシールド電極と、
前記放電電極と前記シールド電極との間に高電圧を印加する高電圧電源と、
前記高電圧電源によって前記高電圧を印加した状態で、前記伸縮手段を作動させて前記放電電極を伸縮させる制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項6または7記載のコロナ放電装置。
【請求項9】
前記高電圧電源は、前記放電電極に放電電圧を印加してコロナ放電を発生させる放電電源を兼ね、
前記制御手段は、前記放電電源の出力状態を検知して前記放電電極の清掃開始時期を判断することを特徴とする請求項8記載のコロナ放電装置。
【請求項10】
前記放電電極に沿って移動して前記放電電極を摺擦する摺擦機構と、
前記伸縮手段によって前記放電電極を伸縮させた後に、前記摺擦機構により前記放電電極を拭き取り清掃する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項6または7記載のコロナ放電装置。
【請求項11】
請求項5乃至10いずれか1項記載のコロナ放電装置を備え、
前記放電電極に対向して前記放電電極と交差する方向に移動する帯電対象物を帯電させることを特徴とする帯電装置。
【請求項12】
静電潜像が形成される像担持体を一次帯電する一次帯電手段と、
一次帯電させた前記像担持体に前記静電潜像を形成した後にトナー像に現像させるトナー像形成手段と、
形成された前記トナー像を転写媒体に転写させる転写帯電手段と、を備え、
前記一次帯電手段と前記転写帯電手段との少なくとも一方を請求項11記載の帯電装置としたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−40143(P2008−40143A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214429(P2006−214429)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】