説明

電極用基板及びこれを用いた光電変換装置

【課題】耐湿性及び衝撃耐久性に優れた電極用基板及びこれを用いた光電変換装置を提供する。
【解決手段】特に色素増感型太陽電池に好ましく用いられる電極用基板であって、複数枚の積層されたガラス板6aと、ガラス板6aの間に配されるイオン液体からなる液体層6bとを備える電極用基板2である。上記電極基板は、ガラス板を有しているため、水分の透過を抑制することができ、またガラス板の間に液体層が配されているため、衝撃を緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用基板及びこれを用いた光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換装置として、シリコンを用いた太陽電池、色素増感型太陽電池などが知られている。中でも、色素増感型太陽電池は、安価で、高い光電変換効率が得られることから注目されており、種々の開発が行われている。
【0003】
色素増感型太陽電池は一般に、作用極と、対極と、作用極の半導体電極に担持される光増感色素と、作用極及び対極間に配置される電解液とを主要構成要素としている。
【0004】
上記作用極は、透明基板からなる電極用基板上に透明導電膜および半導体電極を順次積層してなり、電極用基板としては、ガラス基板やプラスチック基板などが用いられる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−147412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、色素増感型太陽電池においては、電解液が揮発すると有効発電面積が低下して光電変換特性が低下する。また外部から水分が侵入しても同様に光電変換特性が低下する。このため、色素増感型太陽電池の電極用基板には耐湿性が求められる。一方、色素増感型太陽電池は、主として屋外に設置されることを想定しているため、何らかの物体が衝突する可能性が高い。そのため、色素増感型太陽電池に使用される電極用基板には、衝撃耐久性も要求される。
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の色素増感型太陽電池では、電極用基板がガラス基板である場合には衝撃耐久性の点で改善の余地があり、電極用基板がプラスチック基板である場合には耐湿性の点で改善の余地がある。
【0007】
従って、色素増感型太陽電池に使用される電極用基板には、優れた耐湿性及び衝撃耐久性が求められる。
【0008】
上記のような電極用基板の特性は、色素増感型太陽電池以外の光電変換装置の電極基板にも同様に求められるものである。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐湿性及び衝撃耐久性に優れた電極用基板及びこれを用いた光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した。例えば電極用基板としてガラス基板とプラスチック基板との積層体を用いることを考えた。しかし、この場合、ガラス基板に大きな衝撃が加わると、プラスチック基板ではその衝撃を十分に吸収しきれず、ガラス基板が割れやすいと考えられる。そこで、本発明者はさらに鋭意検討を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、複数枚の積層されたガラス板と、前記ガラス板の間に配される液体層と、を備えることを特徴とする電極用基板である。
【0012】
この電極用基板は、ガラス板を有しているため、水分の透過を十分に抑制することができる。またガラス板の間に液体層が配されているため、ガラス板に衝撃が加わっても、その衝撃が液体層によって吸収され、ガラス板が割れることを十分に防止することができる。
【0013】
ここで、液体層がイオン液体を含有していることが好ましい。ガラス板及びイオン液体は耐熱性に優れるため、電極用基板を高温下に置くことが可能となる。このため、電極用基板は、成膜や焼成などに対して耐久性を有する。
【0014】
また本発明は、一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられる電解液とを備える光電変換装置であって、前記一対の電極のうちの少なくとも1つが上述した電極用基板を有することを特徴とする光電変換装置である。
【0015】
この光電変換装置によれば、一対の電極のうち少なくとも1つが上述した電極用基板を有するため、耐湿性に優れる。このため、電解液が揮発して有効発電面積が低下することを十分に抑制することができ、光電変換性能の低下を抑制することができる。また複数枚の積層されたガラス板間に液体層が配された電極用基板に衝撃が加わっても、その衝撃が液体層によって吸収されるため、ガラス板が割れることを十分に防止することができる。従って、光電変換装置の長寿命化を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐湿性及び衝撃耐久性に優れた電極用基板及びこれを用いた光電変換装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る光電変換装置の実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明に係る光電変換装置の好適な実施形態を示す断面図である。
【0019】
図1に示すように、光電変換装置100は、作用極1と、作用極1に対向するように配置される対極2とを備えている。作用極1には、光増感色素が担持されている。作用極1と対極2との間には電解液3が配置され、電解液3の周囲には、作用極1と対極2との間に封止部4が設けられている。
【0020】
作用極1は、電極用基板としての透明基板6と、透明基板6の対極2側に設けられる透明導電層7と、透明導電層7の上に設けられる1つの半導体電極8とを備えており、光増感色素は半導体電極8に担持されている。
【0021】
透明基板6は、複数枚積層されたガラス板6aと、隣り合うガラス板6a間に配された液体層6bとで構成されている。
【0022】
ここで、ガラス板6aを構成する材料は、ガラスであれば特に限定されず、このようなガラスとしては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどが挙げられる。ガラス板6aの厚さは、光電変換装置100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、0.1mm以下であることが作用極1に可とう性を付与するという観点から好ましく、0.05mm以下であることがより好ましい。但し、ガラス板6aの厚さは、小さすぎると積層数が増えて多大なコストがかかるとともに、曲げた時にガラスに加わる引張応力に耐えられなくなるという理由から、0.005mm以上であることが好ましい。またガラス板6aの枚数は複数であれば特に限定されるものではないが、作用極1の耐衝撃性を高める点からは、7枚以上であることが好ましい。
【0023】
液体層6bを構成する材料は、液体であれば特に限定されるものではないが、このような液体としては、例えば油その他の有機液体、水、イオン液体が挙げられる。また液体層6bを構成する材料は、耐衝撃性を向上させる観点からは、粘性率0.05〜5のニュートン粘性液体が好ましい。
【0024】
イオン液体としては、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩を挙げることができる。特に、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が好ましい。
【0025】
好ましく用いることのできる溶融塩としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【化1】


【化2】

【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】

【0026】
上記構造式中、Xはヨウ素アニオンを表す。上記溶融塩は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよく、また、上記溶融塩は、ヨウ素アニオンを他のアニオンで置き換えた溶融塩と併用してもよい。ヨウ素アニオンと置き換えるアニオンとしては、ハロゲン化物イオン(Cl-、Br-等)、NSC-、BF4-、PF6-、ClO4-、(CF3SO22-、(CF3CF2SO22-、CF3SO3-、CF3COO-、Ph4-、(CF3SO23-等が好ましい例として挙げられ、(CF3SO22-又はBF4-であるのがより好ましい。また、LiIなど他のヨウ素塩を添加してもよい。
【0027】
上記溶融塩は常温で溶融状態であるものが好ましく、溶媒を用いない方が好ましい。但し、溶媒を添加しても構わない。
【0028】
上記溶融塩の中でも、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが好適に用いられる。
【0029】
透明導電層7を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(Indium−Tin−Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO)、フッ素添加酸化スズ(Fluorine−doped−Tin−Oxide:FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電層7は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電層7が単層で構成される場合、透明導電層7は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。また透明導電層7として、複数の層で構成される積層体を用いると、各層の特性を反映させることが可能となることから好ましい。中でも、ITOで構成される層と、FTOで構成される層との積層体を用いることが好ましい。この場合、高い導電性、耐熱性及び耐薬品性を持つ透明導電層7が実現できる。透明導電層7の厚さは例えば0.01μm〜2μmの範囲にすればよい。
【0030】
半導体電極8は通常、酸化物半導体多孔膜で構成される1つの半導体層を有する。半導体層を構成する酸化物半導体多孔膜は、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、酸化ニオブ(Nb25)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)又はこれらの2種以上で構成される酸化物半導体粒子で構成される。これら酸化物半導体粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、即ち光電変換を行う場が広くなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。ここで、半導体層が、粒度分布の異なる酸化物半導体粒子を積層させて構成されることが好ましい。この場合、半導体層内で繰り返し光の反射を起こさせることが可能となり、入射光を半導体層の外部へ逃がすことなく効率よく光を電子に変換することができる。半導体電極8の厚さは、例えば0.5〜50μmとすればよい。なお、半導体電極8は、異なる材料からなる複数の半導体層の積層体で構成することもできる。
【0031】
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。
【0032】
対極2は、対極基板9と、対極基板9のうち作用極1側に設けられて対極2の表面における還元反応を促進する触媒層10とを備えている。
【0033】
対極基板9は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン等の耐食性の金属材料や、ITO、FTO等の導電性酸化物や、炭素、導電性高分子で構成される。
【0034】
触媒層10は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。
【0035】
電解液3としては、上述したイオン液体を含む電解質が用いられる。
【0036】
封止部4を構成する材料としては、例えば非鉛系の透明な低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料や、アイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などの樹脂が挙げられる。なお、封止部4は樹脂のみで構成されてもよいし、樹脂と無機フィラーとで構成されていてもよい。
【0037】
次に、光電変換装置100の作用効果について説明する。
【0038】
上記光電変換装置100においては、透明基板6がガラス板6aを有しているため、水分の透過を十分に抑制することができる。このため、電解液3が揮発して有効発電面積が低下することを十分に抑制することができる。また外部の水分が透明基板6を透過することが抑制されるため、光増感色素の変質や電解液3の変質による変色を抑制することができ、変色による光の透過率低下を抑制することができる。よって、光電変換装置100によれば、光電変換効率の低下を抑制することができる。
【0039】
また光電変換装置100によれば、透明基板6においてガラス板6aの間に液体層6bが配されているため、透明基板6のガラス板6aに衝撃が加わっても、その衝撃が液体層6bによって吸収され、ガラス板6aが割れることを十分に防止することができる。即ち透明基板6は耐衝撃性に優れる。従って、光電変換装置100は、安心して屋外に配置することが可能であり、また光電変換装置100の長寿命化を実現することができる。
【0040】
さらに作用極1では透明基板6のガラス板6aの上に透明導電層7が形成されているため、光増感型太陽電池100を曲げた場合でも、プラスチック板上に透明導電層7を形成する場合に比べて透明導電層7に亀裂が生じにくくなる。
【0041】
次に、光電変換装置100の製造方法について説明する。
【0042】
まず作用極1を準備する。作用極1は、透明基板6上に透明導電層7を形成した後、透明導電層7の上に半導体電極8を形成し、半導体電極8に光増感色素を担持させることによって得ることができる。
【0043】
透明基板6は、まずガラス板を複数枚準備し、複数枚のガラス板6aの間に液体層61bを挟むことによって得ることができる。ここで、液体層6bとして、イオン液体を用いる場合は、ガラス板6aにイオン液体を塗布した後、その上にガラス板6aを載せ、ガラス板6aによってイオン液体を挟むという操作を繰り返すことによって透明基板6を得ることができる。液体層6bとして水を用いる場合は、ガラス板6aの表面を予めアルカリで親水処理し、そのガラス板6aに水を滴下した後、その上に、同様に表面をアルカリで親水処理したガラス板6aを載せ、ガラス板6aによって水を挟むという操作を繰り返すことによって透明基板6を得ることができる。また液体層6bとして油を用いる場合は、ガラス板6aの表面をシランカップリング剤などで親油化処理した後、そのガラス板6aに油を塗り、その上に、同様に表面を親油化処理したガラス板6aを載せ、ガラス板6aによって油を挟むという操作を繰り返すことによって透明基板6を作製することができる。
【0044】
透明基板6による液体層6bの加圧は、液体層6bを構成する液体の種類によるので一概には言えないが、通常は0.2〜2000N/cmの範囲で行えばよく、20〜200N/cmの範囲で行うことが、液体層6bの厚さが適当になるという理由から好ましい。
【0045】
透明導電層7を透明基板6上に形成する方法としては、例えばスパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD:Spray Pyrolysis Deposition)及びCVD法などが挙げられる。
【0046】
なお、透明導電層7は、複数のガラス板6aのうち最後に積層するガラス板6aの上に予め形成しておいてもよい。
【0047】
半導体電極8は通常、酸化物半導体多孔膜で構成される。この酸化物半導体多孔膜は、例えば上述した酸化物半導体粒子を含むペーストを透明導電膜7上に印刷し焼結させることによって得ることができる。このとき、透明基板6を構成する液体層6bとして、耐熱性に優れたイオン液体を用いると、上記ペーストの高温焼成が可能となり、得られる色素増感型太陽電池100において光電変換性能の低下を抑制することができる。
【0048】
次に、光増感色素を作用極1の半導体電極8に担持させるために、例えば透明導電層7上に半導体電極8を形成した作用極1を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、光増感色素を半導体電極8に吸着させる。
【0049】
一方、対極2は、対極基板9の上に、スパッタ法を用いて触媒層10を形成することによって得ることができる。なお、対極基板9としては、上述の金属材料からなる金属箔で構成してもよい。
【0050】
次に、作用極1の上に、例えば封止剤を接着させる。封止剤としては、例えば非鉛系の透明な低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料や、アイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などの樹脂が挙げられる。なお、封止剤は樹脂のみで構成されてもよいし、樹脂と無機フィラーとで構成されていてもよい。
【0051】
そして、以下のようにして、色素を担持した作用極1と対極2との間に電解液3を配置させる。即ち、まず上記イオン液体を含むペーストを例えばスクリーン印刷法等によって、色素を担持した作用極1上に接着した封止剤の内側領域に塗布する。その後、色素を担持した作用極1と対極2とを対向させる。上記封止剤が例えば熱可塑性樹脂である場合は、上記封止樹脂を加熱溶融することにより作用極1と対極2とが連結され、封止部4が得られる。こうして、色素増感型太陽電池100の製造方法の製造が完了する。
【0052】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、作用極1の透明基板6のみに本発明の電極用基板が適用されているが、図2に示す光電変換装置200のように、作用極1の透明基板6のみならず、対極2の対極基板9にも本発明の電極用基板が適用されてよい。
【0053】
また上記実施形態では、光電変換装置として色素増感型太陽電池が用いられているが、色素増感型太陽電池に限らず、薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池などが用いられてもよい。
【0054】
さらに本発明の電極用基板は、光電変換装置の透明基板又は対極基板としてのみならず、有機EL素子の電極用基板としても用いることができる。
【0055】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
はじめに、10cm×10cm×0.05mmのホウケイ酸ガラスを22枚準備した。22枚のガラス板のうち1枚のガラス板には、SPD法によって厚さ0.5μmのITO膜を予め形成しておいた。そして、これらのガラス板を、イオン液体(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)を介して積層し、この積層体を、プレス機により200N/cmで30秒間プレスし、透明基板を得た。このとき、隣り合うガラス板の間に配するイオン液体の量は0.001mlとした。
【0057】
次に、透明基板のITO膜側の表面上に、メンディングテープで、ほぼ中央に約8cm角の領域を非マスキング領域とするようにマスキングを形成した。
【0058】
次に、ガラス基板用酸化チタンペースト(Solaronix社製、Ti nanoxide-T)を上記の約8cm角の非マスキング領域に手塗り塗布した後、マスキングを剥がして350℃で焼成し、厚さ約10μmの多孔質酸化チタン膜をITO膜上に形成し、作用極を得た。
【0059】
続いて、上記多孔質酸化チタン膜を囲むように、9cm角の環状のガラスパイプをホットメルト接着剤で取り付けた。そして、環状のガラスパイプの内側に、色素(Solaronix社製、Ruthenium535)を0.3mMとなるように溶解した脱水エタノール溶液を注ぎ、多孔質酸化チタン膜を脱水エタノール溶液中に一昼夜浸漬させ、多孔質酸化チタン膜に色素を担持させた。その後、ホットメルト接着剤を加熱して溶融させて、ガラスパイプを除去した。こうして色素を担持した作用極を得た。
【0060】
一方、9cm×9cm×50μmのチタン金属箔を準備し、スパッタによりPtを厚さ50nmとなるように成膜して対極を得た。
【0061】
そして、色素を担持した作用極のうち多孔質酸化チタン膜を覆うようにイオン液体電解液を塗布した後、色素を担持した作用極と対極とを重ね合わせた。
【0062】
そして、作用極と対極とを、これらの隙間を塞ぐようにホットメルト樹脂(三井デュポン・ポリケミカル製ハイミラン)で貼り合わせた。
【0063】
最後に、ホットメルト樹脂の周囲を紫外線硬化性樹脂(スリーボンド社製)でさらに封止した。
【0064】
以上のようにして色素増感型太陽電池を得た。
【0065】
(実施例2)
ガラス板の枚数を37枚とし、各ガラス板の厚さを0.03mmとしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を得た。
【0066】
(比較例1)
透明基板として、ポリエチレンナフタレート(PEN)からなる厚さ150μmのプラスチック板を用いたこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を得た。
【0067】
(比較例2)
透明基板として、厚さ1.1mmの1枚のガラス板を用いたこと以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を得た。
【0068】
[光電変換特性の評価]
実施例1,2及び比較例1,2の色素増感型太陽電池の作用極及び対極に、取出しフレキシブル印刷配線板(FPC)を導電性接着剤で貼り合わせた。そして、その直後に、これを用いて光電変換効率を測定した。結果を表1に示す。
【表1】

【0069】
表1に示すように、実施例1,2の色素増感型太陽電池では、比較例1の色素増感型太陽電池に比べて光電変換効率が顕著に大きいことが分かった。
【0070】
[高温高湿耐久性]
実施例1,2及び比較例1,2の色素増感型太陽電池を85℃、85%RHの条件に設定した恒温恒湿器に入れて1ヶ月間放置した。そして、透明基板における変色の有無を調べた。結果を表1に示す。なお、変色は、外部からの水分の侵入により光増感色素または電解液が変質することによって生じるものである。
【0071】
表1に示すように、実施例1,2の色素増感型太陽電池では変色が見られなかったが、比較例1の色素増感型太陽電池では変色が見られた。このことから、実施例1,2の色素増感型太陽電池は、比較例1の色素増感型太陽電池に比べて、外部からの水分の侵入が十分に抑制できており、高温高湿耐久性に優れることが分かった。
【0072】
[耐衝撃性評価]
実施例1,2及び比較例1,2のようにして得られた色素増感型太陽電池についてJIS C8938に従って耐衝撃性の評価を行った。結果を表1に示す。表1中、基板に割れが生じなかった場合には「○」と表示し、基板に割れが生じた場合には「×」と表示した。その結果、実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池は、比較例2の色素増感型太陽電池よりも耐衝撃性に優れることが分かった。
【0073】
以上の結果より、実施例1,2の色素増感型太陽電池は、比較例1,2の色素増感型太陽電池に比べて耐衝撃性及び耐湿性に優れることが分かった。
【0074】
従って、本発明の電極用基板によれば、耐湿性及び衝撃耐久性に優れることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る光電変換装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る光電変換装置の第2実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1…作用極、2…対極、3…電解液、6…透明基板(電極用基板)、6a…ガラス板、6b…液体層、9…対極基板(電極用基板)、100,200…光電変換装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の積層されたガラス板と、
前記ガラス板の間に配される液体層と、
を備えることを特徴とする電極用基板。
【請求項2】
前記液体層がイオン液体を含有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電極用基板。
【請求項3】
一対の電極と、
前記一対の電極の間に設けられる電解液と、を備える光電変換装置であって、
前記一対の電極のうちの少なくとも1つが請求項1又は2に記載の電極用基板を有する、
ことを特徴とする光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−153295(P2010−153295A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332366(P2008−332366)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】