説明

電気カーペット及びその製造方法

【課題】本発明は、発熱線を断熱材と表面材の間に狭持させて固定する電気カーペットの製造方法において、発熱線が使用中にずれることがなく、また収納時に小さく折り畳んでも、曲げ部分において発熱線に無理なストレスが加わらないようにし、発熱線の耐久性能の向上した電気カーペットの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】表面材と、発熱線と、断熱材とを備え、前記表面材と断熱材との間に接着材を塗布し前記発熱線を固定した電気カーペットにおいて、電気カーペットの折り畳み方向と前記発熱線の配線方向が直行する部分では、前記発熱線を固定しないで、折り畳み部分における発熱線の自由度をあげることによって発熱線の耐久性能を向上できることを見出し本発明に到った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面材と、発熱線と、断熱材と、接着層とを備える電気カーペット及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からおこなわれている電気カーペットの製造方法は、例えばニードルパンチフェルト等からなる断熱材上に発熱線を配線し、その上に熱接着シート、表面材を重ね、熱プレスによって熱接着シートを溶かしつつ圧着して断熱材と表面材を接着し、発熱線を断熱材と表面材の間に固定し、その後外縁部をオーバーロックミシンでほつれ止め加工をし、コントローラーを取り付け電気カーペットが製造される。その後所定の畳み方で一定の大きさにして、ダンボールケースに詰めて出荷されるが、特に電気カーペットの折り畳み方向と発熱線の配線方向が直行する部分では畳みにくかったり、無理に曲げたりして発熱線の耐久性能を落としてしまうといった問題があった。
【0003】
特許文献1においては、本体を二つ折り又は四つ折りにする折り目位置に折り溝を構成する面状採暖具について記載されている。
【0004】
また、特許文献2においては、発熱線の直線状の配線部分は、外周部の直線に対して非平行状態になるように配線することが提案され、本体の折り曲げが容易にでき、発熱体へのストレスが強くかからなくて耐久性の向上した電気カーペットが記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のような折り目位置に折り溝を構成する方法は、折り目位置のクッション性が他の部分と異なってしまうことから、一枚のカーペットとは思われなく違和感を感じるものとなっていた。また、特許文献2のような方法では、配線が複雑で、片側半面だけに通電して使用するような配線には不向きであった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−30839
【特許文献2】特開平6−123435
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、発熱線を断熱材と表面材の間に狭持させて固定して製造する電気カーペットにおいて、発熱線が使用中にずれることがなく、また収納時に小さく折り畳んでも、曲げ部分において発熱線に無理なストレスが加わらないようにし、発熱線の耐久性能を落とさないようにした電気カーペット及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、電気カーペットの折り畳み部分における発熱線の自由度をあげることによって発熱線の耐久性能を向上できることを見出し本発明に到ったもので、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]表面材と、発熱線と、断熱材と、接着層とを備え、前記表面材と断熱材との間に前記発熱線を配線し、前記表面材と断熱材とで発熱線を挟み接着固定した電気カーペットにおいて、電気カーペットの折り畳み方向と前記発熱線の配線方向が直行する部分では前記表面材と断熱材と発熱線とを接着固定していないことを特徴とする電気カーペット。
【0010】
[2]表面材と、発熱線と、断熱材、接着層とを備え、前記表面材と断熱材との間に前記発熱線を配線し、前記表面材と断熱材とで発熱線を挟み接着固定する電気カーペットの製造方法において、電気カーペットの折り畳み方向と前記発熱線の配線方向が直行する部分では前記表面材と断熱材と発熱線とを接着固定しないようにし、その他の部分では表面材と断熱材と発熱線とを接着固定することを特徴とする電気カーペットの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
[1]および[2]の発明では、表面材と、発熱線と、断熱材と、接着層とを備え、前記表面材と断熱材との間に前記発熱線を挟み接着固定した電気カーペットにおいて、電気カーペットの折り畳み方向と前記発熱線の配線方向が直行する部分では前記表面材と断熱材と発熱線とを接着固定していないので、畳みやすく、発熱線に無理なストレスがかかりにくいので発熱線の耐久性能を向上することができる電気カーペット及びその製造方法とすることができる。また、前記折り畳み部以外の場所では表面材と断熱材との間に発熱線はしっかりと固定されるので、発熱線がずれて接近したり離れたりして発熱温度のムラを発生することのない電気カーペットとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による電気カーペット1は、図1〜図3に示すように表面材2と発熱線3と断熱材4と接着層5とを備えており、表面材2と断熱材4との間に接着層5を具備し、発熱線3を固定している(図2)。図1において電気カーペットの折り畳み方向と前記発熱線の配線方向が直行する折り畳み部6では発熱線3は固定されずに、表面材2と断熱材4の間で狭持されている(図3)。このためた折り畳み部6は、折り畳みやすく、発熱線3に無理なストレスがかかりにくいので、発熱線3の耐久性能を向上した電気カーペットとすることができるものである。
【0013】
本発明において表面材2と断熱材4は、接着剤で接着できるものであれば特に限定されないが、ポリエステル製ニードルパンチフェルトが好ましい。ポリエステル製ニードルパンチフェルトは、安価で断熱性に優れ、多くの電気カーペットで使用されている。通常断熱材4の床面側には、滑り止めを目的にアクリル樹脂を塗布することが多い。また、表面材2の表面側には、毛羽立ち防止を目的にSBRラテックスが塗布されることが多い。また、表面材2の重ね合わせ面側には、予め酢酸ビニル等の接着層を塗布し、断熱材4上に配線された発熱線に重ね熱プレスによって、表面材2と断熱材4を接着して発熱線3を固定する。
【0014】
発熱線3は、ヒーター線を塩化ビニール等の樹脂で覆い、さらにその表面を塩化ビニールより低い融点のポリエチレン樹脂で被覆した線材を使用するのが好ましい。例えば、図1のような配線パターンにシリコン板の上で配線し、その上に断熱材4を置いて、熱プレスを行うことにより、ヒーター線を被覆したポリエチレン樹脂が溶融し断熱材4と発熱線3が接着される。この時、電気カーペットの折り畳み方向と発熱線の配線方向が直行する折り畳み部のシリコン板に窪地もしくは穴をあけるようにすると、その部分の熱プレスの圧力が弱くなることから、その部分の断熱材4と発熱線3は接着されないようにすることができる。
【0015】
次に、断熱材4に発熱線3を接着したものと表面材2を重ね合わせ熱プレスすれば、表面材2に具備した酢酸ビニルの接着層によって表面材2と断熱材4がしっかりと接着され、電気カーペットの折り畳み方向と発熱線の配線方向が直行する折り畳み部以外の表面材2と断熱材4が接着することになる。(酢酸ビニルと発熱線は非接着。発熱線は断熱材と溶融接着するのみ。)
【0016】
また、発熱線3の配線方法は、人力で行なってもかまわないが、配線ロボットの方が効率的である。色々な配線パターンを例示できるが、図1の場合は、電気カーペットの全面を一系統で配線している。この配線を片面ずつ二系統で配線すれば、片面ずつ使用でき省エネタイプの電気カーペットとして使用することができる。
【0017】
なお、この発明の電気カーペットは上記製造方法で製造されるものに特に限定されるものではなく、例えば、電気カーペットの折り畳み方向と発熱線の配線方向が直行する折り畳み部分に断熱材を置き、熱プレス時に加熱されない様にして発熱線と断熱材とを接着固定しないようにしてもよい。
【0018】
電気カーペットの折り畳み方法は、電気カーペットの大きさによって色々であるが、図1に示すように二枚重ねの部分から四枚重ね、八枚重ねと、重ねる枚数を増やしながら小さく畳まれていく。この時一番外側の重ね合わせ部分の外周が最も大きくなることから、この部分に無理なストレスがかかりやすくなる。図1の畳み方は、(1)まず9−Aの折り目にそってカーペットの両端が中央で合うように内側に折り曲げる。(2)次に9−Bの折り目にそってカーペットの上下の両端が中央で重なるように内側に折り曲げる。(3)次に9−Cの折り目にそって内側に折り曲げさらに反対側を包み込むように9−Dの折り目にそって畳むと十二枚重ねの折り畳みとなりコンパクトに畳まれる。この畳み方では、電気カーペットの折り畳み部のうち発熱線と直角に交差する部分は、9−Cと9−Dの折り目の部分であって、最も外側の大きな曲がりとなり、発熱線に無理なストレスのかかりが少ないように畳まれている。
【実施例】
【0019】
<実施例1>
本発明の実施方法を具体的に説明する。なお、この発明の電気カーペット及びその製造方法は、実施例に限定されるものではない。
表面材2および断熱材4として、それぞれ厚さ2mm目付300g/mと厚さ4mm目付500g/mのポリエステル再生綿によるニードルパンチフェルトを用意し、断熱材4の下側にはアクリル樹脂による滑り止め加工と、表面材2の上側には毛羽立ち防止を別工程で施した。また表面材2の下側には、酢酸ビニルの接着層を別工程で施して用意した。発熱線3としては、ヒーター線を塩化ビニールの樹脂で覆い、さらにその表面を塩化ビニールより低い融点のポリエチレン樹脂で被覆した線材を用意した。次に、シリコン板の上に発熱線3を図1の配線パターンに応じて、配線した。この時シリコン板には、電気カーペットの折り畳み部のうち発熱線と直角に交差する部分に図4に示すような穴(3cm×1cmの穴を1.5cm間隔に3個)をあけたものを使用した。次に該シリコン板上に発熱線を配線したものに、断熱材4を重ね、熱プレス機にて、加熱圧着した。これによって、発熱線は 電気カーペットの折り畳み部と直角に交差する部分を除いてしっかりと断熱材4に接着されたものとなった。次に発熱線の接着された断熱材4の上側に表面材2の酢酸ビニルの接着層のある側を重ねて熱プレス機にて断熱材4と表面材2を接着させた。次にコーナー部にコントローラーを接合し、外縁部をオーバーロックミシンでほつれ止め加工をして電気カーペットとした。こうして得られた電気カーペットは折り畳み部に沿って簡単に畳むことができ、発熱線にストレスが強くかかることがなかった。図1の9−C部の折り畳み部の耐久試験をおこなったが、変形もなく、発熱線の断線はみられなかった。
【0020】
<比較例1>
実施例1において、シリコン板に、穴をあけていないものを使用した以外は実施例1と同様にして電気カーペットを作成した。折り畳みは実施例1よりも畳みにくく嵩張ったものとなり、発熱線にストレスが強くかかるものであった。図1の9−C部の折り畳み部の耐久試験をおこなったが、発熱線が変形し断線する結果となっていた。
【0021】
<耐久試験>
折り畳み部分に5000回の繰り返し折り曲げを行い、外観観察と、通電して断線の有無と、温度確認をして判定した。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係わる電気カーペットの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる電気カーペットの概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係わる電気カーペットの折り畳み部のうち発熱線と直角に交差する部分の概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係わるシリコン板で、電気カーペットの折り畳み部のうち発熱線と直角に交差する部分のシリコン板に穴をあける例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0023】
1・・電気カーペット
2・・表面材
3・・発熱線
4・・断熱材
5・・接着層
5−1・・酢酸ビニルの接着層
5−2・・ポリエチレン樹脂の溶融接着層
6・・電気カーペットの折り畳み部のうち発熱線と直角に交差する部分
7・・コントローラー
8・・外縁部(オーバーロック部)
9・・折り畳み部
9−A・・二枚重ねの折り畳み部
9−B・・四枚重ねの折り畳み部
9−C・・八枚重ねの折り畳み部
9−D・・十二枚重ねの折り畳み部
10・・シリコン板の穴あけ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面材と、発熱線と、断熱材と、接着層とを備え、前記表面材と断熱材との間に前記発熱線を配線し、前記表面材と断熱材とで発熱線を挟み接着固定した電気カーペットにおいて、電気カーペットの折り畳み方向と前記発熱線の配線方向が直行する部分では前記表面材と断熱材と発熱線とを接着固定していないことを特徴とする電気カーペット。
【請求項2】
表面材と、発熱線と、断熱材と、接着層とを備え、前記表面材と断熱材との間に前記発熱線を配線し、前記表面材と断熱材とで発熱線を挟み接着固定する電気カーペットの製造方法において、電気カーペットの折り畳み方向と前記発熱線の配線方向が直行する部分では前記表面材と断熱材と発熱線とを接着固定しないようにし、その他の部分では表面材と断熱材と発熱線とを接着固定することを特徴とする電気カーペットの製造方法。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−52858(P2009−52858A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221992(P2007−221992)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】