説明

電気コネクタ

【課題】 実装エリアの省スペース化が図れ、かつケーブルとの接続信頼性の高い電気コネクタを提供する。
【解決手段】プラグ部材1は、挿嵌状態において上方向を開口方向と成す開口部11を設けたプラグボディ40を有するとともに略平板状でかつ開口部に介入し得る縦辺部31を有した加圧手段を具備しており、コンタクト20は、略U字状のビーム部21を有するとともに一方の片22の先端部分には開口部内に突出するように刃状の突き刺し部28が形成されかつ他方の片23の一部がプラグボディの外側面側に露出して挿嵌状態においてソケットコンタクトの一部と係合するようにプラグボディに位置決めされており、開口部にケーブル7の端部71が挿入されさらに開口部に縦辺部が介入した状態において、突き刺し部がケーブルの内部に突き刺され芯線75に圧接されるように端部が縦辺部と一方の片との間で挟持されているように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁被覆電線を圧接結線するのに好適な電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型化や薄型化が進展する電子機器において、複数本の素線が撚り束ねられてなる芯線の周りが絶縁被覆材により被覆された絶縁被覆電線(以下これをケーブルと称す)が、その電子機器内の配線部材として多用されている。そして、このケーブルの接続方法として、複数のケーブルを一括して(無半田で)圧接結線せしめる電気コネクタが特開平11−345640号公報(特許文献1)で提案されている。
【0003】
この特許文献1記載の従来例によれば、ハウジングに揺動自在に支持された蓋状の加圧部材は、ハウジングの側部及びこれに隣接せる部分で連通して開口せる開口部に側方から複数のケーブルが挿入された各ケーブルを各ケーブルが対応せる圧接用接触子の刃状部に対して同時に圧する加圧部を有していることを特徴としている。この構成によって複数のケーブルのそれぞれは対応せる接触子と一括して圧接結線可能となるため、作業の能率が向上するとされている。
【特許文献1】特開平11−345640号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小型化、高密度化が進む電子機器においては、その内部におけるプリント回路基板等の回路基板とケーブルとの接続用電気コネクタにおいてもその実装エリア(回路基板上のコネクタ搭載面積)の省スペース化の要求が高まっており、この要求に対応可能で、かつ接続の信頼性を高められる形態であることが望ましい。
【0005】
特許文献1記載の従来例において、結線部をなす刃状部は、刃縁がケーブルと交差する方向あるいはケーブルと平行な方向のいずれかの方向に延びるように設けていてもよいとされている。しかし、その刃縁がケーブルと交差する方向に延びている場合、結線状態においてケーブルの被覆に喰い込んで芯線と接触する刃縁が(特に確実な接触状態を得るために高い加圧力を加える必要がある場合において芯線に過度に喰い込み)芯線を損傷(喰い込み度合いによっては芯線を断線)させ、接続性能を悪化させる可能性がある。また、刃縁がケーブルと平行な方向に延びている場合、結線過程において刃縁が(外周が円弧状の)ケーブルの被覆上にて(刃状部がその板厚方向にずれるように)横方向に滑り(特にケーブル強度を高めるために硬質の被覆材が用いられる場合は、なおさら滑りやすくなり)芯線の中心位置に刃縁が突き刺さらず、芯線との確実な接触がなされない可能性がある。
【0006】
さらに、相手コネクタの接触子と接続するための接続部を設けたこの従来例の実施例において、その接続部は、刃状部が設けられた接触子の第一腕状部の延長方向に延びて形成された形態が示されており、この実施形態の電気コネクタが回路基板上にその上面と第一腕状部の延長方向とが平行して搭載された場合、相手コネクタも含めたその実装エリアは横方向(回路基板の上面と平行する方向)に広がり、省スペース化を困難とさせている。
【0007】
よって、本発明の目的とするところは、上記のごとき従来技術の有する問題点を解決するものであって、実装エリアの省スペース化が図れ、かつケーブルとの接続信頼性の高い電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電気コネクタは、回路基板上に搭載され、ソケットコンタクトが配されたソケット部材と、前記回路基板上に搭載されたソケット部材に対して前記搭載面の上方向より挿嵌し、その挿嵌状態において前記ソケットコンタクトと電気的に接続せしめるコンタクトが配されたプラグ部材と、を備えた電気コネクタであって、前記プラグ部材は前記挿嵌状態において前記上方向を開口方向と成す開口部を設けたプラグボディを有するとともに略平板状でかつ前記開口部に前記開口方向より介入し得る縦辺部を有した加圧手段を具備しており、さらに前記コンタクトは略U字状のビーム部を有するとともにそのビーム部の略対向する二片のうち一方の片の先端部分には前記開口部内に突出するように刃状の突き刺し部が形成されかつ前記二片のうち他方の片の少なくともその一部が前記プラグボディの外側面側に露出して前記挿嵌状態において前記ソケットコンタクトの一部と係合するように前記プラグボディに位置決めされており、前記開口部に前記開口方向よりケーブルの端部が挿入されさらに前記開口部に前記開口方向より前記縦辺部が介入した状態において、前記突き刺し部が前記ケーブルの内部に突き刺されその内部に突き刺され前記ケーブルの芯線に圧接されるように前記ケーブルの端部が前記縦辺部と前記コンタクトの前記一方の片との間で挟持されるように構成されている。
【0009】
また、前記加圧手段が金属製であるとともに前記縦辺部に対して略直角方向に繋がる略平板状の横辺部を有するように構成されていても良い。
【0010】
そして、前記コンタクトの前記突き刺し部が形成された前記一方の片の先端部分に、前記開口方向に略向かって突出する先細状の突状部が形成されていても良い。
【0011】
さらに、前記絶縁被覆電線の端部が、前記突き刺し方向の厚みを減少せしめるように、押し潰されて塑性変形されていても良い。
【0012】
また、前記絶縁被覆電線の端部の前記突き刺しする工程で前記突き刺し部に臨む位置に、切り込み口が設けられていても良い。
【0013】
さらにそして、前記絶縁被覆電線の端部の前記突き刺しする工程で前記突き刺し部に臨む位置に、前記突き刺し方向に対して直交する平面が設けらていても良い。
【0014】
さらにまた、前記絶縁被覆電線は少なくとも前記端部において複数の芯線が平行に並べられてフラット状の形態に成形されて構成されていても良い。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の電気コネクタにあっては、コンタクトが有する(好適には、バネ用銅合金などの導電性弾性部材から成形される)略U字状のビーム部のその二片の剛性を利用したU字形弾性ばね構造は、その二片の間に加圧手段を介在させたときその加圧手段を付勢し(ケーブルの端部を挟持するための加圧手段の)その加圧機能を高められるものである。また、上方向(前記開口方向)より挿入されるケーブルの端部を挟持せしめるビーム部の一部をプラグボディの外側面側に露出させてソケットコンタクトと係合するように位置決めさせる構成は、(例えば、前記挿嵌状態において、略U字状の弾性バネ片を有したソケットコンタクトを配したソケット部材にプラグ部材をほぼ埋没させるような形態にした場合)プラグ部材の相手コネクタとなるソケット部材との接続部を横方向(搭載される回路基板の上面に平行する方向)に延ばして(従来例では横方向を挿嵌方向とし、このため横方向に接続部を)形成させなくともプラグ部材とソケット部材とは(上方向よりの挿嵌により)接続可能となり、横方向(搭載される回路基板の上面に平行する方向のソケット部材の横幅方向)の寸法を広げなくともよく、その実装エリアの省スペース化が可能となる。
【0016】
請求項2に記載の電気コネクタにあっては、加圧手段が、金属製であるとともに縦辺部に対して略直角方向に繋がる略平板状の横辺部を有しているので、合成樹脂等と比べて剛性に優れた金属製の加圧手段は横辺部の形成によって、(縦辺部と繋がる部分が略L字状断面の形態となるため、小型化に寄与する薄板状であっても不用意な曲げなどの外力に対して変形し難い構造であり)より強度が高められるものとなる。
【0017】
請求項3に記載の電気コネクタにあっては、コンタクトの突き刺し部が形成された一方の片の先端部分に、開口方向に略向かって突出する先細状の突状部が形成されているので、加圧手段の横辺部により略L字状に折り曲げられたケーブルに対して、この突状部が喰い込むことによりプラグ部材に対するケーブル保持機能を高めることが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の電気コネクタにあっては、ケーブルの端部が、突き刺し方向の厚みを減少せしめるように、押し潰されて塑性変形されており、その端部における突き刺し部の突き刺し深さ(突き刺し部への端部の突き刺し相対移動量)が低減できるため、突き刺し方向のコネクタ幅の狭小化が図れ、電気コネクタの小型化が可能となる。また、厚みを減少させるように塑性変形される際に、ケーブルの絶縁被覆の断面形状を突き刺し方向に対して直交する平面とするならば、断面形状が円弧状のものに比較して、突き刺し部が突き刺す位置がずれることがなく、それだけ確実に芯線に突き刺し部を突き刺すことが出来、確実な電気的導通が得られる。
【0019】
請求項5に記載の電気コネクタにあっては、ケーブルの端部の突き刺しされる部分の絶縁被覆材が、突き刺しする工程で突き刺し部を受け入れ易くせしめるように、突き刺し部に臨む位置に、切り込み口が設けられているので、この切り込み口が突き刺し部の挿入の案内機能を有することとなり、(好適には、芯線の中心に対応する位置に切り込みを入れるにより)比較的に細いケーブルであっても芯線の中心付近への突き刺し操作が容易となって小型化に好適であるとともに、芯線の中心付近に突き刺されることにより、突き刺し部が深く突き刺されて、突き刺し部に圧接される素線の数を増大させることができる。
【0020】
請求項6に記載の電気コネクタにあっては、ケーブルの端部に突き刺し方向に対して直交する平面が設けられているので、その端部に突き刺し部を突き刺す際に、突き刺し部の先端位置がずれるようなことがなく、細いケーブルであっても芯線の中心付近への突き刺し操作が容易となる。
【0021】
請求項7に記載の電気コネクタにあっては、ケーブルは、少なくとも端部において複数の芯線が平行に並べられてフラット状の形態に成形されているので、複数の芯線を一括してコンタクトに対して結線することが可能となり、結線作業の能率が向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の電気コネクタの一実施例を構成するプラグ部材にケーブルを接続した状態の斜視図、図2は本発明の電気コネクタの一実施例を構成するソケット部材の斜視図である。また、図3から図5は図1に示すプラグ部材を構成するプラグボディ、コンタクト、加圧部材を示しており、さらに、図6から図8は図2に示すソケット部材を構成するソケットボディ、ソケットコンタクト、ソケット固定手段を示しており、さらにまた、図9は図1に示すケーブルの一例を示している。
【0023】
図1に示すように、フラット状に並べられた複数のケーブル7が接続されたプラグ部材1は、細長い略方形のプラグボディ10と、その長手方向に沿って一定のピッチで配列された複数のコンタクト20と、両遠端側の側端部33より延出する延出片34を有しプラグボディ10の上面側にケーブル7を部分的に覆うように装着された加圧手段30とで構成されている。また、図2に示すように、ソケット部材4は、細長い略薄方形のソケットボディ40と、その長手方向に沿ってプラグ部材1のコンタクト20の配列に対応して一定のピッチで配列された複数のソケットコンタクト50と、加圧手段30の延出片34の配置に対応して両遠端側に装着されたソケット固定手段60とで構成されている。
【0024】
図3において、(3−a)図は、プラグボディ10の斜視図であり、(3−b)図は、(3−a)図におけるA−A線に沿った断面図である。合成樹脂製のプラグボディ10には、上方から底部15が臨めるように上方向(図3における上方向)を開口方向としてプラグボディ10の長手方向の両端近くまでに亘って長溝状に開口した開口部11が設けられており、また、プラグボディ10の外側面13には、コンタクト20を一定のピッチで配列せしめる位置決め溝14が設けられている。図4は、コンタクト20の斜視図であり、バネ性の良い薄金属板から打ち抜き成形されたコンタクト20は、略U字状のビーム部21を有しており、その対向する一方の片22と他方の片23との先端部に形成された突部24,25の対向間隔を押し広げる作用が加わった場合、一方の片22と他方の片23がその対向間隔が広がる方向に弾性変位し、互いにその対向する方向に向けて弾性反発力を発生させることを可能としている。また、突部24には他方の片23に向い突出した刃状の突き刺し部28が形成されているとともに上方(図4における上方向)に向かって突出する先細状の突状部29が形成されている。
【0025】
図5において、(5−a)図は、加圧手段30の斜視図であり、(5−b)図は、(5−a)図における加圧手段30のその長手方向の中央部分35をF−F線で断面視した断面図である。薄金属板から打ち抜き曲げ成形された加圧手段30は、平板状の横辺部32に対して直角方向に(内壁面37の垂直面38と水平面39とが直角に向き合うように)繋がる平板状の縦辺部31とを有しており、剛性に優れた略L字状断面形状となっている。また、その縦辺部31の長手方向の幅寸法はプラグボディ10の(長溝状の)開口部11の長手方向の幅寸法より僅かに小さく設定されている。そして、横辺部32の両側の側端部33からは、略角状の窓部36を有した延出片34が下方(図5における下方向)に延出されている。
【0026】
図6は、ソケットボディ40の斜視図であり、合成樹脂製のソケットボディ40には、上方から底面42が臨めるように上方向(図6における上方向)を開口方向としてプラグ部材1の下方部分を受容せしめるように長溝状に開口した凹部41が設けられており、また、その凹部41の内側面43には、ソケットコンタクト50をコンタクト20の配列ピッチに対応した一定のピッチで配列せしめる位置決め溝44が設けられている。さらに、両遠端側には装着されたソケット固定手段60を装着するための装着溝45が設けられている。図7は、ソケットコンタクト50の斜視図であり、バネ製の良い薄金属板から打ち抜き曲げ成形されたソケットコンタクト50は、略U字状の弾性バネ片51を有しており、さらに基端部側に(ソケット部材1が回路基板に搭載されたとき、その回路基板に半田付けなどの接続手段により接続固定せしめるための)水平方向に延びたテール部52を有している。図8において、(8−a)図は、ソケット固定手段60の斜視図であり、(8−b)図は、(8−a)図に示したソケット固定手段60をその斜視方向を(反対方向に)変えて示した斜視図である。薄金属板から打ち抜き曲げ成形されたソケット固定手段60は、対向する略倒立U字状断面の係合バネ片62を有するとともに(ソケット部材1が回路基板に搭載されたとき、その回路基板に半田付けなどの接続手段により接続固定せしめるための)水平方向に延出した固定片61を有している。また、対向する係合バネ片62のその対向間隔は、前記挿嵌状態において加圧手段30の延出片34と係合可能となるように(好適には、対向する係合バネ片62間で延出片34が挟持されるように)設定されている。
【0027】
図9において、(9−a)図は、ケーブル7がフラット状に並べられた形態のフラットケーブル70の端末部分を平面視した部分平面図、(9−b)図は、(9−a)図におけるB−B線に沿った部分断面図、(9−c)図は、(9−a)図におけるC−C線に沿った部分断面図である。ケーブル7は、複数本の(軟銅線などの導電性を有する)素線76が撚り束ねられた芯線75が、(電気絶縁性のビニールやフッ素樹脂などの樹脂材料からなる)絶縁被覆材77で被覆されたものであり、そのケーブル7が、それぞれの芯線75の間隔(隣接ピッチ)が(プラグ部材1のコンタクト20の配列に対応して)一定となるように(接着や熱融着などの方法により)並べられて、フラットケーブル70を形成している。また、端部71は、その肉厚方向(9−b図における上下方向)の厚さが薄くなるよう(加熱圧延などの方法により)絶縁被覆材77が押し潰されるとともに肉厚方向に対して(すなわち、突き刺し部28の突き刺す方向に対して)直交する平面が形成されるように塑性変形されており、さらにその片面側73には、絶縁被覆材77の表皮より芯線75の中心に向い(刃状工具にて突き刺すなどの方法により)開口された切り込み口79が(ケーブル7の並列方向に)並んで形成されている。この切り込み口79は、開口部11にケーブル7の端部71を挿入した状態で、突き刺し部28に臨む位置に設けられている。
【0028】
図10は、プラグボディ10にコンタクト20が装着配置された状態を示した断面図である。コンタクト20は、一方の片22の突き刺し部28が開口部11の内側壁12より突出するように、また、露出部19が外側面13より露出するように位置決め溝14に他方の片23が案内されて、かつ、他方の片23の突部25と第3の片26の突部27とによりプラグボディ10を挟持するようにプラグボディ10の下方(図10における下方向)より装着されている。この状態において、突き刺し部28と他方の内側壁17との対向間隔は、ケーブル7の端部71の肉厚と加圧手段30の縦辺部31の肉厚との和より小さくなるように設定されている。また、一方の片22は、略U字状のビーム部21のそのバネ機能により横方向(図10における左方向)に弾性変位可能である。さらに、図11は、(図10において説明した状態の)コンタクト20が配されたプラグボディ10に、その開口部11よりケーブル7の端部71を、切り込み口79と突き刺し部28とが対抗する方向にて挿入した状態を示している。肉厚が薄くされた端部71は、開口部11の間口が狭い場合でも容易に挿入可能であり、プラグボディ10の横幅寸法(図11における左右方向の寸法)の狭小化(すなわち、電気コネクタの小型化)を実現していることがわかる。
【0029】
図12は、(図11において説明した状態の)ケーブル7が挿入されたプラグボディ10に、さらに加圧手段30を介入させた状態を示した平面図であり、図13図は、図12におけるD−D線に沿った部分断面図である。図14は、図13におけるE−E線に沿った部分断面図である。開口部11にはその上方(図13における上方向)より底部15に向けてケーブル7の端部71が挿入されており、さらに、開口部11にはその上方(図13における上方向)より底部15に向けて加圧手段30の縦辺部31が介入されている。端部71の他方の片面側74と開口部11の他方の内側壁17との隙間に介入した縦辺部31は、端部71の芯線75ともどもビーム部21の一方の片22を横方向(図13における左方向)に加圧しており、この状態で端部71は、(ビーム部21の略U字状弾性バネ機能による他方の片23の付勢効果も加わって)縦辺部31と一方の片22との間で強固に挟持されており、きり込み口79より(切り込み口79が設けられていない状態と比較して喰い込み負荷が低減されるため)容易に芯線75の内部中心付近に(切り込み口79が芯線75の中心に向い切り込まれているため、突き刺し部28がその中心に案内されて)喰い込んだ突き刺し部28は、複数の素線76との(接触する確率が上がり)良好な接触(結線)がなされている。そして、この状態で、ケーブル7の芯線75とコンタクト20とは(無半田でありながら)電気的に導通(接続)可能であることがわかる。
【0030】
さらに、加圧手段30の横辺部32が覆うことにより略L字状断面形状となるように折り曲げられたケーブル7の端部71には、その折り曲げ部分の内側において、一方の片22の突状部29が(絶縁被覆材77に喰い込む状態で)当接しており、このような形態は、横方向(図13における左方向)に延びる延長部72に不用意な引っ張り外力が加わった場合のケーブル7の抜け防止機能を果たすことができるものである。ここで、突状部29がケーブル7の絶縁被覆材77に喰い込み、さらにケーブル7の芯線75に押圧当接しまた突き刺さるならば、突状部29においても芯線75とコンタクト20の電気的導通が得られる。またさらに、端部71を部分的に覆うように位置する横片部32は、延長部72が上方(図13における上方向)に浮き上がることを防止していることがわかる。
【0031】
図15は、ソケット部材4を示した断面図である。ソケットボディ40には、ソケットコンタクト50が、略U字状の弾性バネ片51のその先端側の突部53を開口部11の内側面43より突出させ、さらにテール部52を外側面46より突出させた設定にて装着配置されている。この状態で弾性バネ片51の突部53は、(弾性バネ片51のそのU字バネの対向バネ間隔が広がる方向である)横方向(図15における右方向)に弾性変位可能であることがわかる。
【0032】
図16は、任意の回路配線(図示せず)が施工されている回路基板100上に搭載されたソケット部材4に対して、その上方(図16における上方向)より、ケーブル7が接続されたプラグ部材1を挿嵌(挿入嵌合)した状態を示した断面図である。ソケットボディ40の凹部41に底部15を下方(図16における下方向)に向けて挿入されたプラグ部材1は、コンタクト20の他方の片23と第3の片26とを弾性バネ片51が挟持する位置付けでソケット部材4と嵌合している。この状態で横方向(図16における右方向)に弾性変位された弾性バネ片51の突部53は、その(弾性バネ片51の略U字状弾性バネ機能により発生する)弾性反発力により他方の片23を加圧しており、コンタクト20とソケットコンタクト50とは(露出部19と突部53とが当接しており)電気的に導通(接続)可能であることがわかる。そして、このようなプラグ部材1をソケット部材4にほぼ埋没させるような嵌合形態は、嵌合状態での電気コネクタの搭載高さ(回路基板100の上面からプラグ部材1の最高部までの高さ)を低減させ易い形態であるとともに、その実装エリアを(前述の従来例のような相手コネクタが横方向に延長接続される形態と比較して)省スペース化させ易い形態であることがわかる。ここで、ケーブル7の絶縁被覆を予め突き刺し方向の厚みを減少させるように押し潰して塑性変形させておくことで、電気コネクタの設置スペースを軽減させるのに好適であるとともに、略L字状に折り曲げらて配設されることで、厚みが減少された分だけ電気コネクタを低背型に構成するのに好適である。
【0033】
図17は、図9において示されたフラットケーブル70の端末部分の成形方法の実施例を示している。(17−a)図において、予め(好適には、絶縁被覆材77と同質の材料で成形された)整列シート78に(接着などの手段により)それぞれの芯線75が間隔が一定となるように整列された複数のケーブル7は、上面に凹部111が(前記間隔に対応する間隔にて)配設された固定体110に載せられており、その上方(17−a図における上方向)には、(固定体110の上面に対面する)下面に凹部121を(前記間隔に対応する間隔にて)配設された可動体120が下方向(17−a図におけるP1方向)に押し下げ可能となるように設置されている。また、固定体110および可動体120の少なくともいずれか一方には、(電気ヒーターなどの)加熱手段(図示せず)が設けられている。(17−b)図において、固定体110と(17−a図におけるP1方向に)押し下げられた可動体120との間に押し潰されるように挟まれたケーブル7と整列シート78とは、加熱手段の加熱効果も加わって(好適には、絶縁被覆材77と整列シート78とが溶融して一体化されるように)ほぼフラット(偏平)状に成形されている。そして、この状態における凹部111と凹部121との対面間隔は、フラット化された成形部分のその(17−b図における上下方向)厚さが、押し潰される前段階のケーブル7の被服外径より小さくなるように設定されており、さらに次の工程(図示せず)で可動体120が引き上げられた場合、固定体110上には、芯線75が一定間隔で並んだ薄肉状多芯ケーブルが残存できることがわかる。
【0034】
(17−c)図は、図9において示された切り込み口79の形成方法の実施例を示しており、固定体130の上面には、(17−a)図および(17−b)図に示した工程を経てフラット化されたフラットケーブル70が(凹部131の真上に芯線75が位置するように)位置決めされて載せられており、その上方(17−c図における上方)には、(固定体130の上面に対面する)下面に先細状の刃状部141を(芯線75の間隔に対応する間隔にて)配設した可動体140が下方向(17−c図におけるP2方向)に押し下げ可能となるように設置されている。また、刃状部141の突出長さと可動体140の押し下げ量(可動距離)とは、押し下げ終了時点(図示せず)で、刃状部141の先端部が絶縁被覆材77を切り込み、さらに芯線75の中心付近まで喰い込むように設定されており、この構成により、押し下げ操作が終了し、さらに次の工程(図示せず)で可動体140が引き上げられた場合、フラットケーブル70には、図9に示されるように開口された切り込み口79が形成できていることがわかる。
【0035】
なお、上記実施例の説明において、加圧手段30は薄金属板で構成されているが、合成樹脂などで形成させても良く、また、その断面形状は、縦辺部31と横辺部32を略倒立L字状としたものに限られず、略T字状など加圧手段30が所望の剛性を得られる形状であればいかなるものであっても良い。また、ケーブル7が並べられてフラット状と成すフラットケーブル70の形態は、絶縁被覆材77の外周が上記実施例に示したごとくの円弧状の形態に限られず、山形状や平坦状など複数の芯線75が平行に並べられたものであればいかなる外周形状でも良く、また(例えば、通電される電流値の大小に対応して)断面積が異なる芯線75が混在して並べられている形態でも良い。さらに、そのフラット化の成形方法は、(17−a)図および(17−b)図にその工程を示した熱融着に限られず、超音波融着や押し出し射出成形などの方法でも良い。またさらに、ケーブル7の端部71を突き刺し方向の厚みを減少させ、また突き刺し方向に対して直交する平面を設ける加工方法は、加熱を伴う加圧成形による塑性変形や、加熱を伴わない単なる加圧成形による塑性変形や、熱融着を伴う成形方法などのいかなるものであっても良い。そしてまた、切り込み口79の成形は、(17−c)図に示すごとくフラット化されたフラットケーブル70に後の工程で形成するものに限られず、フラット化と同一工程で切り込み口79が形成されても良い。さらにまた、コンタクト20が有する突き刺し部28をコンタクト20あたり単数として説明したが、これを複数設けた形態としても良く、これに対応するようにケーブル7の切り込み口79を増加させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の電気コネクタの一実施例を構成するプラグ部材にケーブルを接続した状態を示した斜視図である。
【図2】本発明の電気コネクタの一実施例を構成するソケット部材を示した斜視図である。
【図3】図1で示したプラグ部材を構成するプラグボディを示し、(3−a)図はプラグボディの斜視図であり、(3−b)図は(3−a)図におけるA−A線に沿った断面図である。
【図4】図1で示したプラグ部材を構成するコンタクトを示した斜視図である。
【図5】図1で示したプラグ部材を構成する加圧手段を示し、(5−a)図は加圧手段の斜視図であり、(5−b)図は(5−a)図における加圧手段をF−F線で断面視した断面図である。
【図6】図2で示したソケット部材を構成するソケットボディを示した斜視図である。
【図7】図2で示したソケット部材を構成するソケットコンタクトを示した斜視図である。
【図8】図2で示したソケット部材を構成するソケット固定手段を示し、(8−a)図は斜視図であり、(8−b)図は(8−a)図とその斜視方向を反対方向に変えて示した斜視図である。
【図9】本発明の電気コネクタに用いて好適なケーブルの一例を示し、(9−a)図はケーブルがフラット状に並べられた形態のフラットケーブルの端末部分を平面視した部分平面図、(9−b)図は(9−a)図におけるB−B線に沿った部分断面図、(9−c)図は(9−a)図におけるC−C線に沿った部分断面図である。
【図10】図3で示したプラグボディに図4で示したコンタクトを配した状態を示した断面図である。
【図11】図10で示したプラグ部材にケーブルが挿入された状態を示した部分断面図である。
【図12】図1で示したケーブルが接続された状態のプラグ部材の平面図である。
【図13】図12におけるD−D線に沿った部分断面図である。
【図14】図13におけるE−E線に沿った部分断面図である。
【図15】図6で示したソケットボディに図7で示したソケットコンタクトを配した状態を示した断面図である。
【図16】図2で示したソケット部材に図1で示したケーブルが接続された状態のプラグ部材が挿嵌された状態を示した断面図である。
【図17】図9で示したフラットケーブルの端末部分の成形方法の一実施例を示し、(17−a)図は押し潰される前の状態を示す断面図、(17−b)図は押し潰してフラット化された状態を示す断面図、(17−c)図は切り込み口を形成する前の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 プラグ部材
4 ソケット部材
7 絶縁被覆電線(ケーブル)
10 プラグボディ
11 開口部
13 外側面
20 コンタクト
21 ビーム部
22 一方の片
23 他方の片
28 突き刺し部
29 突状部
30 加圧手段
31 縦辺部
32 横辺部
50 ソケットコンタクト
70 フラットケーブル
71 端部
75 芯線
76 素線
77 絶縁被覆材
78 整列シート
79 切り込み口
100 回路基板
110、130 固定体
111、121、131 凹部
120、140 可動体
141 刃状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に搭載され、ソケットコンタクトが配されたソケット部材と、前記回路基板上に搭載されたソケット部材に対して前記搭載面の上方向より挿嵌し、その挿嵌状態において前記ソケットコンタクトと電気的に接続せしめるコンタクトが配されたプラグ部材と、を備えた電気コネクタであって、前記プラグ部材は前記挿嵌状態において前記上方向を開口方向と成す開口部を設けたプラグボディを有するとともに略平板状でかつ前記開口部に前記開口方向より介入し得る縦辺部を有した加圧手段を具備しており、さらに前記コンタクトは略U字状のビーム部を有するとともにそのビーム部の略対向する二片のうち一方の片の先端部分には前記開口部内に突出するように刃状の突き刺し部が形成されかつ前記二片のうち他方の片の少なくともその一部が前記プラグボディの外側面側に露出して前記挿嵌状態において前記ソケットコンタクトの一部と係合するように前記プラグボディに位置決めされており、前記開口部に前記開口方向より絶縁被覆電線の端部が挿入されさらに前記開口部に前記開口方向より前記縦辺部が介入した状態において、前記突き刺し部が前記絶縁被覆電線の内部に突き刺され前記絶縁被覆電線の芯線に圧接されるように前記絶縁被覆電線の端部が前記縦辺部と前記コンタクトの前記一方の片との間で挟持されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記加圧手段が金属製であるとともに前記縦辺部に対して略直角方向に繋がる略平板状の横辺部を有することを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記コンタクトの前記突き刺し部が形成された前記一方の片の先端部分に、前記開口方向に略向かって突出する先細状の突状部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記絶縁被覆電線の端部が、前記突き刺し方向の厚みを減少せしめるように、押し潰されて塑性変形されていることを特徴とする請求項1ないし3に記載のいずれかの電気コネクタ。
【請求項5】
前記絶縁被覆電線の端部の前記突き刺しする工程で前記突き刺し部に臨む位置に、切り込み口が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4に記載のいずれかの電気コネクタ。
【請求項6】
前記絶縁被覆電線の端部の前記突き刺しする工程で前記突き刺し部に臨む位置に、前記突き刺し方向に対して直交する平面が設けらていることを特徴とする請求項1ないし5に記載のいずれかの電気コネクタ。
【請求項7】
前記絶縁被覆電線は少なくとも前記端部において複数の芯線が平行に並べられてフラット状の形態に成形されていることを特徴とする請求項1ないし6に記載のいずれかの電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−156148(P2006−156148A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345426(P2004−345426)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】