説明

電気コネクタ

【課題】小型であり、低コストで製造可能な信頼性の高い電気コネクタを提供する。
【解決手段】内部開口に信号端子及び電源端子を含む複数のコンタクト端子42が装着されるコンタクト端子装着部17と、複数のコンタクト端子42に接続される電線40の保持部18とを有する本体ハウジング11と、コンタクト端子装着部17及び電線40の保持部18を覆い、かつ電線40を外部へ導出した状態で本体ハウジング11に取り付けられるカバーハウジング30と、を備えた電気コネクタ10において、本体ハウジング11は、電線40の保持部18に、締結具45によって電線40と本体ハウジング11とを一体に締結するための締結具保持部21が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の引き回し負荷等を抑制した電気コネクタに関し、詳しくは、電線と本体ハウジングを一体に締結する締結具を備えた電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタが抜き差しされる方向から90°横方向にずれて電線が引出されたようなコネクタでは、電線に引張り応力が加わると、この引張り応力がコネクタ端子に直接伝達されてしまうことがある。この引張り応力が強くなると、コネクタ端子と電線との接続が外れたり、コネクタ端子がハウジング内に装着されているランスと称される部分が変形し、コネクタ端子とハウジングとの間の装着が外れ、コネクタ端子がハウジングから抜けてしまうという不都合があった。
【0003】
これらの不都合を解消するために、従来では、コネクタ端子に引張り応力が直接加わらないようにするため、下記特許文献1に示すような特殊形状の固定具を用いて電線をハウジングに固定する方法や、下記特許文献2に示すようなコネクタハウジングの背面にカバーを取付け、電線を一旦屈曲させた後に後方へ引出すようにする方法が用いられている。しかし、これらの電気コネクタは、何れも予め電線を固定するのに特殊な金具、或いは特殊形状の保持具をコネクタハウジングとは別に用意する必要があり、しかも、ハウジングはこれらの特殊金具等を取付けできるように特殊な形状に成形加工する必要があった。このため、特殊金具等をハウジングへ取付ける取付け作業が面倒であるばかりか、金具及びそれを固定する部品等を必要とするため、部品点数が多くなり、更にハウジングの成形加工が面倒なためにコネクタの製造コストが高価になる等の課題があった。
【0004】
このような課題を解決するために、下記特許文献3には、電線保持機構を備えた電気コネクタの発明が開示されている。下記特許文献3に記載された電線保持機構を備えた電気コネクタでは、図11に示したように、内部開口に複数のコネクタ端子が装着され且つ該端子に接続される電線が引出される電線引出面を有するコネクタ本体50と、この電線引出面を覆い且つ電線を外部へ導出した状態でコネクタ本体50に装着されるカバーキャップ51と、このカバーキャップ壁面に設けた電線保持機構とを備え、電線保持機構は、カバーキャップ51の電線54の引出し開口に近接する位置に、電線結束具の帯状片55が挿入される幅を有する溝52、53で形成されている。
【0005】
このような構成とすることで、下記特許文献3の電気コネクタでは、溝52、53は、カバーキャップ51の壁面に電線結束具の帯状片55が挿入される幅に形成され、この溝52、53に電線結束具の帯状片55が挿入され固定される。これにより、溝の形状がシンプルになり、溝の成形が簡単になるとされている。その結果、下記特許文献3に記載の電気コネクタによれば、特殊な電線保持具を使用しなくても、電線保持機構の構造を簡単化できると共に、コネクタハウジングへの取付け作業を簡単にして取付け工数を少なくし、且つ製造コストの低廉化を図ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−003076号公報
【特許文献2】特開平11−329574号公報
【特許文献3】特開2003−173843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献3に示されている電線保持機構を備えた電気コネクタでは、プラグとリセプタクルが嵌合される部分と同じ幅の空間内に電線結束具を収容するため、嵌合する軸方向に外形サイズを広げる必要があり電気コネクタ自体が大きくなってしまうという課題がある。また、使用時の電線引き回し負荷がカバーキャップに直接かかってしまうため、破壊等のおそれがあり、信頼性が失われることがあるが、これを補うためカバーキャップの強度を確保しようとすると、プラグ本体との係止箇所を多く形成する(上記特許文献3に記載のものでは5箇所)必要があり、製造コストが高くなってしまうという課題もある。さらに、電線にのみ電線結束具を締結し、カバー溝形状と電線結束具の厚さ部で電線を保持させるため、電線の外径にも細密な寸法精度が必要となり、電線のサイズが異なる場合、コネクタのガイド形状の品種の追加が必要となり、製造コストが高くなってしまうという課題もある。さらにまた、プラグ本体にコンタクト端子とカバーキャップを装着する、いわゆるハーネス加工を確実にするために、電線の剥離長さと電線結束具の位置にも細密な寸法精度が必要となる。また、ハーネス加工における寸法精度が悪い場合、プラグ本体とカバーキャップの装着が困難となり、手直しを伴うこととなるため、さらにコストがかかるという課題もある。
【0008】
本発明者らは、これらの課題を解決するために種々検討を重ねた結果、電線と電気コネクタの本体ハウジングとを、電線に取り付けられたコンタクト端子をあらかじめ本体ハウジングのコンタクト接続部に装着させてから締結具で一体に締結すること、及びこの締結具を締結させる締結具保持部を本体ハウジングのコンタクト装着部の軸方向から横にずらして形成することで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、従来のコネクタに比べ、小型であり、低コストで製造可能な信頼性の高い、電線と本体ハウジングを一体に締結する締結具を備えた電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の電気コネクタは、
内部開口に信号端子及び電源端子を含む複数のコンタクト端子が装着されるコンタクト端子装着部と、前記複数のコンタクト端子に接続される電線の保持部とを有する本体ハウジングと、
前記コンタクト端子装着部及び前記電線の保持部を覆い、かつ前記電線を外部へ導出した状態で前記本体ハウジングに取り付けられるカバーハウジングと、
を備えた電気コネクタにおいて、
前記本体ハウジングは、前記電線の保持部に、締結具によって前記電線と前記本体ハウジングとを一体に締結するための締結保持部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、第2の態様の電気コネクタは、前記第1の態様の電気コネクタにおいて、
前記締結具保持部は、前記本体ハウジングの前記コンタクト端子装着部の軸方向に対して横方向に突出して形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、第3の態様の電気コネクタは、前記第1又は2の態様の電気コネクタにおいて、
前記締結具保持部は前記締結具が挿通される貫通孔が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、第4の態様の電気コネクタは、前記第1〜3のいずれかの態様の電気コネクタにおいて、
前記締結具保持部は、前記電線を圧接するための複数の突起が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、第5の態様の電気コネクタは、前記第1の態様の電気コネクタにおいて、
前記複数のコンタクト端子は少なくとも1つのユニットハウジングに装着され、前記ユニットハウジング前記本体ハウジングの前記コンタクト端子装着部に装着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の態様の電気コネクタによれば、電線は、締結具により本体ハウジングに形成された締結具保持部と一体に締結されているため、電線が引き回される際の引っ張り等の負荷が、コンタクト端子に伝わることが抑制され、十分な強度を確保することが可能となる。そして、電線引き回し時の負荷が、カバーハウジングの破壊方向に直接作用しないため、本体ハウジングに装着されるカバーハウジングの装着手段を、従来と比べて簡略化、例えば、係止箇所を少なくすることなどが可能となり、製造コストを削減することができると共に、信頼性を高めることができる。また、電線は、本体ハウジングに複数のコンタクト端子を装着した後に締結具で締結されるので、電線の外形サイズの対応範囲の幅を広く設定でき、電線の外形サイズを変更しても新たな構成を追加する必要なく従来使用される様々なサイズの電線に対して対応することができ、製造コストを削減することができる。さらに、本体ハウジングに複数のコンタクト端子を装着し、その後カバーハウジングを装着させる、いわゆるハーネス加工時において、締結具を電線の装着後に締結させることとなるので、コンタクト端子を形成するための電線剥離長さと締結具の締結位置の寸法制度が緩和され、締結を確実に行うことができ、手直し等の工程を削減することができ、係る点からも製造コストの削減が可能になる。
【0016】
また、第2の態様の電気コネクタによれば、締結具により電線が本体ハウジングに一体に締結される締結具保持部を、本体ハウジングのコンタクト端子装着部の軸方向から横方向に突出させて形成することで、本体ハウジングのコンタクト端子装着部内に締結具保持部を形成する必要がなくなるので、コネクタの高さを低くし、また、コネクタの幅を狭く形成することができ、コネクタの小型化及び省スペース化を図ることができる。
【0017】
また、第3の態様の電気コネクタによれば、締結具保持部には締結具が挿通される貫通孔が形成されているから、この貫通孔に締結具を挿通させれば電線を締結具保持部に締結させることができるので、電線と本体ハウジングとの一体締結を確実に且つより強固に行うことができる。
【0018】
また、第4の態様の電気コネクタによれば、電線と締結保持部とが締結されるとき、締結保持部の電線保持部に形成された複数の突起が締結具によって電線と圧接され、この突起が電線に食い込むことで電線の保持強度を確保し、抜け止めが可能となる。
【0019】
また、第5の態様の電気コネクタによれば、複数のコンタクト端子のうちから必要に応じて少なくとも1つのユニットを形成し、形成されたユニットごとにユニットハウジングにあらかじめ装着しておき、このユニットハウジングを本体ハウジングに装着するようにすることで、コンタクト端子の一つ一つを本体ハウジングに装着するよりも効率的に作業をすることができる。また、ユニットハウジングを本体ハウジングと異なる材料及び部材で形成することができるので、本体ハウジングを薄型に形成しても装着が容易となり、コネクタ全体の薄型化が可能となる。さらに、複数のコンタクト端子をユニットに分ける際のバリエーションを多様化することができるので、ユニットハウジングにおける嵌合位相差や穴塞ぎ等の構成を組替えることで使用者の様々な要求に柔軟且つ迅速に対応することができる。なお、複数のコンタクト端子の中でも、信号コンタクト端子は用いられる構成において、より多くのバリエーションが考えられるので、信号コンタクトにユニットハウジングを用いるようにするとより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1Aは本発明の実施形態に係る電気コネクタと電気コネクタに接続されるリセプタクルを示した斜視図であり、図1Bは電気コネクタとリセプタクルが接続した状態を示した斜視図である。
【図2】図2は図1の電気コネクタ及びリセプタクルの分解斜視図である。
【図3】図3Aは本体ハウジングの正面斜視図であり、図3Bは本体ハウジングの裏面斜視図である。
【図4】図4Aはカバーハウジングの上方から見た正面斜視図であり、図4Bはカバーハウジングの下方から見た正面斜視図である。
【図5】図5は電線の斜視図である。
【図6】図6Aは締結具の引き伸ばした状態を示した斜視図であり、図6Bは締結具の締結状態を示した斜視図である。
【図7】図7Aは本体ハウジングと電線の装着を説明する斜視図であり、図7Bは図7Aの続きを説明する斜視図であり、図7Cは図7Bの続きを説明する斜視図である。
【図8】図8Aは図7Cを裏側から見た斜視図であり、図8Bは図8AのVIIIB‐VIIIB線での断面図である。
【図9】図9は電線が締結された本体ハウジングにカバーハウジングを装着させる状態を示した斜視図である。
【図10】図10Aは電線とユニットハウジングを示した斜視図であり、図10Bは電線の信号端子にユニットハウジングを装着した状態を示した斜視図である。
【図11】図11A〜図11Cは従来の電気コネクタを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電気コネクタを例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0022】
図1〜図9を参照して、実施形態にかかる電気コネクタについて説明する。図1及び図2に示すように、実施形態にかかる電気コネクタ10は、他の機器等に設けられたリセプタクル29と着脱自在に接続できるリセプタクル装着部16を有し、リセプタクル29が抜き差しされる方向からずれた方向、例えば横方向に向かって電線40が引出されて構成されている。
【0023】
電気コネクタ10は、電線40に取り付けられた複数のコンタクト端子42が装着されるコンタクト端子装着部17を有する本体ハウジング11と、本体ハウジング11に装着された複数のコンタクト端子42と電線40の一部を覆うカバーハウジング30と、電線40と本体ハウジング11とを一体に締結させる締結具45とで構成されている。以下、各構成部品について説明する。
【0024】
図3を参照して本体ハウジングについて説明する。本体ハウジング11は、扁平なブロック状のハウジング部12と電線保持部18とで構成されている。ハウジング部12は、上壁面12a、下壁面12b、左側壁面12c及び右側壁面12dを有し、これらの壁面のうちの一面、例えば右側壁面12dに電線保持部18が突出して形成されている。また、ハウジング部12の内部には、複数のコンタクト端子42が装着されるコンタクト端子装着部17が形成されている。
【0025】
ハウジング部12の上壁面12aには、リセプタクル29と装着されるとき、リセプタクル29が着脱自在に掛止される掛止部13aが2箇所に設けられた可動板13となっており、この可動板13は、端部に形成された押圧部13bを押圧することで可動し、リセプタクル29との掛止状態を解除できるようになっている。
【0026】
また、ハウジング部12の左側壁面12cには、カバーハウジング30が装着されるとき、後述するカバーハウジング30の第1係止片33a(図4参照)が案内される第1案内溝14aと、第1係止片33aに形成された第1係止溝34aが係止される係止突起15aが形成されている。
【0027】
ハウジング部12の正面12eには、リセプタクル29が装着されるリセプタクル装着部16が形成され、ハウジング部12の裏面12fには内部に形成されたコンタクト端子装着部17にコンタクト端子42が装着される複数の開口17aが形成され、正面12eのリセプタクル装着部16にまで連通されている。
【0028】
ハウジング部12の右側壁面12dに突出して形成されている電線保持部18は、ハウジング部12の上壁面12a及び下壁面12bの一部分から延長されて形成された上壁部18a及び下壁部18bと、ハウジング部12の右側壁面12dの中途部分からと略直角に延設された正面部18eと、電線40が挿入される電線挿通孔19が形成された側壁部18cとで囲まれて構成されている。また、正面部18eと対向する裏面部18fは開放されており、電線40が配置される部分となっている。
【0029】
電線保持部18は、略中央で2つに分かれて構成され、ハウジング部12から延設され内部に電線40が挿通させる挿通部20と、挿通部20の先に形成され電線40が締結される締結具保持部21とが設けられている。
【0030】
挿通部20は、内側に電線40が挿通されると共に、外側の上壁部18a及び下壁部18bには、カバーハウジング30の第2係止片33b及び第3係止片33c(図4参照)が案内される第2案内溝14b及び第3案内溝14cと、第2係止片33b及び第3係止片33cに形成された第2係止溝34b及び第3係止溝34c(図4参照)が係止される第2係止突起15b及び第3係止突起15cがそれぞれ形成されている。すなわち、本体ハウジング11には、3箇所の係止溝及び係止突起が形成されている。
【0031】
一方、締結具保持部21は、正面部18eから裏面部18fにかけて締結具45が挿通される第1貫通孔22及び第2貫通孔23が上壁部18a側と下壁部18b側との2箇所に形成されており、これらの第1及び第2貫通孔22、23に挟まれた部分が締結具45によって締結される締結部24となる。また、締結具保持部21の内側には、挿通される電線40が支持される半円状の2つの第1支持部25及び第2支持部26が形成され、これらの第1及び第2支持部25、26に挟まれた部分には複数個の突起27が形成された圧着部28が形成されている。
【0032】
なお、実施形態では、貫通孔は2箇所に設けているが、これに限らず、本体ハウジングと一体に締結可能であれば1箇所でもよい。
【0033】
次に、図4を参照してカバーハウジングを説明する。カバーハウジング30は、正面30eが開放された扁平の箱状体で形成され、上面30a、下面30b、左側面30c、右側面30d及び裏面30fで構成されている。そして、カバーハウジング30は、本体ハウジング11のハウジング部12と電線保持部18とを覆うことができるような大きさで形成され、また、カバーハウジング30の内部は、本体ハウジング11が収容される空間が形成され、ハウジング部12と電線保持部18とが収容される部分では異なる構造で形成されている。
【0034】
カバーハウジング30のハウジング部12が収容される部分30Aの上面30aは、本体ハウジング11のハウジング部12の上壁面12aに形成された可動板13が侵入可能な切り欠き部31が、上面30aの奥行き方向の半分程度に渡って形成されている。また、カバーハウジング30の上面30aの奥行き方向の残りの部分には、楔状の突起32が形成されており、この楔状の突起32に使用者が手又は指を添えることで、電気コネクタ10とリセプタクル29の着脱を効率的に行うことができる。
【0035】
また、カバーハウジング30の左側面30cの内側には、中央部に第1係止溝34aが形成された第1係止片33aが設けられており、ハウジング部12の左側壁面12cに形成された第1案内溝14aを通り、第1係止突起15a(図3参照)と係止される部分となる。また、カバーハウジング30の右側面30dには、電線40が挿通される電線挿通孔35が設けられており、この電線挿通孔35は、カバーハウジング30の右側面30dに略U字状に形成されている。
【0036】
カバーハウジング30の電線保持部18の挿通部20が収容される部分30Bには、挿通部20の上壁部18a及び下壁部18bにそれぞれ形成された第2及び第3案内溝14b、14cを通り、第2及び第3係止突起15b、15c(図3参照)と係止される中央に第2係止溝34b、第3係止溝34cが形成された第2係止片33b、第3係止片33cがそれぞれ設けられている。すなわち、実施形態のカバーハウジング30には、係止片及び係止溝が3箇所設けられている。
【0037】
また、カバーハウジング30の電線保持部18の締結具保持部21が収容される部分30Cには、締結具保持部21が電線40を締結した締結具45とともに収容される空間となっている。このとき、カバーハウジング30の内側の締結具45が接する部分には、締結具45が嵌まり込み締結具45の位置固定する固定部36が形成されている。
【0038】
そして、カバーハウジング30には、本体ハウジング11に形成された第1支持部25及び第2支持部26に対応するように、それぞれ第1支持部37及び第2支持部38が形成されており、本体ハウジング11とカバーハウジング30が装着されたとき、これらの支持部の間に、電線40が挟まれるようになる。
【0039】
次に、図5を参照して電線について説明する。電線40は、ケーブル例えば多芯ケーブルを含み、既に公知のものであって、内部に複数のリード線41を有し、これらリード線41は外皮により覆われている構造を有する。電線40の先端には信号端子42a及び電源端子42bからなる複数のコンタクト端子42が取り付けられており、これらの複数のコンタクト端子42が本体ハウジング11の内部のコンタクト端子装着部17にそれぞれ装着されることになる。
【0040】
次に、図6を参照して締結具について説明する。締結具45は、所定の幅及び厚さを有する可撓性の帯条片46からなり、この帯条片46の先端46aに方形枠状等の留め具47が設けられ、片面には留め具47から先端46aに向けて鋸歯状に多数の係止縁48が形成されている。留め具47は帯条片46を挿通可能であるとともに、その開口縁には任意の係止縁48を係止するフック爪49が形成されている。
【0041】
次に、図1、図2及び図7〜図9を参照して実施形態に係る電気コネクタ10の組み立てについて説明する。まず、本体ハウジング11に電線40を装着させる。この装着は、電線40に取り付けられた信号端子42a及び電源端子42bからなる複数のコンタクト端子42を、本体ハウジング11の内部に形成されたコンタクト端子装着部17にそれぞれ装着させる。
【0042】
次に、締結具45を用いて本体ハウジング11と電線40を締結させる。まず、電線40を本体ハウジング11に形成された電線保持部18の締結具保持部21の圧着部28に接触させて配置させる。その後、締結具保持部21に形成された第2貫通孔23から締結具45の先端46aを締結具保持部21の正面部18e側から挿入し、締結具保持部21の締結部24と電線40とを一体にして巻き込むようにしてから、引続き第1貫通孔22から締結具45の先端46aを締結具保持部21の裏面部18f側から再度挿入させる。そして、締結具45の先端46aを留め具47に挿入させ、締結具保持部21の締結部24と電線40を固く固定させるように絞り上げて、締結具45の任意の係止縁48とフック爪49を係止させる。係止させた後、締結具45の留め具47からはみ出した部分の帯条片46を切断して締結具保持部21と電線40の締結が完了する。
【0043】
このようにすることで、電線40と本体ハウジング11との一体締結を確実に且つより強固に行うことができ、電線40が引き回される際の引っ張り等の負荷が、コンタクト端子42に伝わることが抑制され、十分な強度を確保することが可能となる。このとき、締結具保持部21の内側の圧着部28に形成された複数の突起27が、電線40に食い込むことで、高い保持強度を確保することができ電線が移動したり外れたりすることを抑制することができる。
【0044】
このとき、実施形態にかかる電気コネクタ10では、電線保持部18が、本体ハウジング11のハウジング部12の軸方向から横方向に突出させて形成されていることで、本体ハウジング11のハウジング部内に電線保持部18を形成する必要がなくなるため、電気コネクタ10の高さを低くして形成することができる。さらにまた、電気コネクタの幅を狭くして形成することもできるので、電気コネクタの小型化及び省スペース化を図ることができる。
【0045】
本体ハウジング11と電線40とが締結された後、本体ハウジング11にカバーハウジング30を装着させる。この装着は、図9に示すように、本体ハウジング11の裏面12f側からカバーハウジング30の正面30eの開放された部分を挿入させ、本体ハウジング11の左側壁面12cと電線保持部18の挿通部20の上壁部18a及び下壁部18bに形成された第1〜第3案内溝14a〜14cに沿ってカバーハウジング30の対応する第1〜第3係止片33a〜33cを滑らせ、それぞれの第1〜第3係止片33a〜33cに形成された第1〜第3係止溝34a〜34cに、本体ハウジング11の対応するそれぞれの第1〜第3係止突起15a〜15cを係止させることで行われる(図3及び図4参照)。このとき、実施形態にかかる電気コネクタ10では、電線40と本体ハウジング11が一体に締結されているため、電線引き回し時の負荷が、カバーハウジング30の破壊方向に直接作用しないため、本体ハウジング11に装着されるカバーハウジング30の装着手段である係止箇所を、従来例では5箇所必要なところ実施形態では3箇所にすることが可能となり、製造コストを削減することができると共に、信頼性を高めることができるようになる。
【0046】
以上で、実施形態にかかる電気コネクタの組み立てが完了する。そして、図1に示すように、この電気コネクタをリセプタクル等と接続して使用される。
【0047】
以上より、実施形態の電気コネクタでは、上述した他にも優れた効果を発揮する。例えば、電線は、本体ハウジングに複数のコンタクト端子を装着した後に締結具で締結されるので、電線の外形サイズの対応範囲の幅を広く設定でき、電線の外形サイズを変更しても新たな構成を追加する必要なく従来使用される様々なサイズの電線に対して対応することができ、製造コストを削減することができる。さらに、本体ハウジングに複数のコンタクト端子を装着し、その後カバーハウジングを装着させる、いわゆるハーネス加工時において、締結具を電線の装着後に締結させることとなるので、コンタクト端子を形成するための電線剥離長さと締結具の締結位置の寸法制度が緩和され、締結を確実に行うことができ、手直し等の工程を削減することができるので製造コストの削減が可能になる。
【0048】
上記実施形態では、複数のコンタクト端子を本体ハウジングに装着させるのに各端子をそれぞれ装着するようにしているが、これに限らず、図10に示すような、ユニットハウジングを用いるようにしてもよい。すなわち、複数のコンタクト端子42を、1つ又は複数のユニットにわけ、このユニットごとに装着できるようなユニットハウジング43を設ける。このようにすることで、複数のコンタクト端子42をあらかじめ製造されたユニットハウジング43に装着させることで、本体ハウジング11へのコンタクト端子42の装着を容易に行うことができるようになる。また、ユニットハウジングを本体ハウジングと異なる材料及び部材で形成することができるので、本体ハウジングを薄型に形成しても装着が容易となり、コネクタ全体の薄型化が可能となる。さらに、複数のコンタクト端子をユニットに分ける際のバリエーションを多様化することができるので、ユニットハウジングにおける嵌合位相差や穴塞ぎ等の構成を組替えることで使用者の様々な要求に柔軟且つ迅速に対応することができるようになる。
【符号の説明】
【0049】
10…電気コネクタ 11…本体ハウジング 12…ハウジング部 12a…上壁面 12b…下壁面 12c…左側壁面 12d…右側壁面 12e…正面 12f…裏面 13…可動板 14a〜14c…第1〜第3案内溝 15a〜15c…第1〜第3係止突起 16…リセプタクル装着部 17…コンタクト端子装着部 18…電線保持部 19…電線挿通孔 20…挿通部 21…締結具保持部 22…第1貫通孔 23…第2貫通孔 24…締結部 27…突起 28…圧着部 29…リセプタクル 30…カバーハウジング 33a〜33c…第1〜第3係止片 34a〜34c…第1〜第3係止溝 35…電線挿通孔 40…電線 42…コンタクト端子 42a…信号端子 42b…電源端子 43…ユニットハウジング 45…締結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部開口に信号端子及び電源端子を含む複数のコンタクト端子が装着されるコンタクト端子装着部と、前記複数のコンタクト端子に接続される電線の保持部とを有する本体ハウジングと、
前記コンタクト端子装着部及び前記電線の保持部を覆い、かつ前記電線を外部へ導出した状態で前記本体ハウジングに取り付けられるカバーハウジングと、
を備えた電気コネクタにおいて、
前記本体ハウジングは、前記電線の保持部に、締結具によって前記電線と前記本体ハウジングとを一体に締結するための締結保持部が形成されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記締結具保持部は、前記本体ハウジングの前記コンタクト端子装着部の軸方向に対して横方向に突出して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記締結具保持部は前記締結具が挿通される貫通孔が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記締結具保持部は、前記電線を圧接するための複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記複数のコンタクト端子は少なくとも1つのユニットハウジングに装着され、前記ユニットハウジング前記本体ハウジングの前記コンタクト端子装着部に装着されることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−119240(P2012−119240A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269809(P2010−269809)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】