説明

電気コネクタ

【課題】簡易な構成によって、絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体の保持及び離脱を良好に行わせることを可能とする。
【解決手段】信号伝送媒体PBの両側外方部分に一対のロック解除操作部14を互いに対向するように一対配置し、それら一対のロック解除操作部14を、絶縁ハウジング11から一体に延出する解除アーム部14aに一体的に連設して互いに近接・離間するように移動可能とし、一対のロック解除操作部14同士を近接方向に移動させたときの解除押圧面の楔作用で解除受け板を移動させてロック部材13dを解除方向に変位させるロック解除リンク機構を備えたことによって、ロック部13dを変位させるロック解除リンク機構の部品点数を低減して構造の簡易化を図るとともに、一対のロック解除操作部14によるロック部13dの解除操作が容易な操作で確実に行われるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ本体部の内部に挿入された信号伝送媒体をロック部により保持するように構成された電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の電気機器等において、フレキシブルフラットケーブル(FFC)やフレキシブルプリント基板(FPC)などの信号伝送媒体を、回路配線基板に対して電気的に接続する電気コネクタが広く採用されている。この電気コネクタは、例えば回路配線基板に接合される基板接続脚部(ホールドダウン)を介して回路配線基板の表面からコネクタ本体部が立ち上がるように実装され、当該電気コネクタのコネクタ本体部に設けられた挿入開口部から内方に向かって信号伝送媒体が挿入されて電気的な接続を行うようにしたものである。
【0003】
このような電気コネクタのうち、いわゆるノンジフ(Non-Zif)型式の電気コネクタにおいては、内部に向かって挿入される信号伝送媒体の挿入側の端末部分に、例えば切り欠き状の凹部からなる位置決め部が形成されており、その信号伝送媒体側に設けられた位置決め部に、電気コネクタ側に設けられたロック部が係合することによって、当該信号伝送媒体の挿入状態が保持される構成になされている。
【0004】
しかしながら、この種の従来の電気コネクタ(特許文献1)では、コネクタ内に保持されたコンタクト群とFPCの各ランドとの接触圧力を得るためのスライダを使用せずに、小さい接触荷重でもFPCの脱落を防止するロックレバーを軸着している。この場合、コネクタ本体部に設けられたロック部が別部材により成形されているために、部品点数の増大等によってコネクタ全体が高価になる傾向がある。また、ロック部の自重によって信号伝送媒体側へ係合する構成になされているため、信号伝送媒体に対する保持力が十分に得られないという問題がある。さらに、他の従来コネクタ(特許文献2)では、ハウジングの両端に取付けられ回路配線基板に半田付けされる補強金具に、FPCを弾性的に押圧して支持する弾性支持片が設けられていることでFPCの位置ずれ等を防止することができる。しかし、弾性支持片による押圧力の作用方向と補強金具の半田付け部とが位置ずれの関係にあるため、ロック部の解除操作を何度も繰り返すと、コネクタ本体部に継続的に付加される解除操作力によって、コネクタ本体部の実装状態等への影響が発生し、電気的な接続が不安定になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−196130号公報
【特許文献2】特開2003−100370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、簡易な構成で、絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体の保持及び離脱を良好に行わせることが出来るようにした電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明にかかる電気コネクタでは、絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体の板幅方向の両側部分にロック部を係合させて前記信号伝送媒体の保持を行う一方、ロック解除操作部を操作することによって前記ロック部の係合状態を解除させるように構成された電気コネクタにおいて、前記ロック解除操作部は、前記信号伝送媒体を前記板幅方向に挟んだ両側外方部分において互いに対向するように一対配置され、それら一対のロック解除操作部が、前記絶縁ハウジングから片持ち状をなして一体に延出する解除アーム部に連設され、当該解除アーム部の弾性変位によって前記一対のロック解除操作部同士が互いに近接・離間するように移動可能に構成されたものであって、前記一対のロック解除操作部同士が近接する方向に移動された際に前記ロック部を解除方向に変位させるロック解除リンク機構を備え、当該ロック解除リンク機構は、前記ロック部を一体的に有するロック部材を有しているとともに、そのロック部材に対して当接・離間するように前記ロック解除操作部に設けられた解除押圧面を有し、前記ロック部材が、前記ロック部を弾性変位可能に支持するロックアーム部と、そのロックアーム部から一体的に延出するように設けられて記ロック解除操作部の移動方向に対して傾斜する方向に延在する解除受け板と、を備え、かつ 前記ロック解除操作部の解除押圧面が、当該ロック解除操作部の移動方向において前記解除受け板と対面するように延在するものであって、前記ロック解除操作部が移動して前記解除押圧面が前記解除受け板に当接し、その解除受け板を介して前記ロックアーム部が弾性変位することによって、前記ロック部が解除方向に変位するように構成されている。
【0008】
このとき、例えば、前記ロック解除操作部に設けられた解除押圧面が、楔形状を形成するように一対配置されているとともに、その楔形状をなす一対の解除押圧面のそれぞれに対面するようにして前記解除受け板が一対配置されたものであって、前記一対の解除受け板同士の間に前記ロック解除操作部が入り込んで、当該ロック解除操作部の解除押圧面が前記一対の解除受け板同士の間を押し広げる構成を採用することが可能である。
【0009】
このような構成においては、信号伝送媒体の両側外方に配置された一対のロック解除操作部が、解除アーム部を介して絶縁ハウジングと一体的に設けられているため、ロック部を変位させるロック解除リンク機構の部品点数が低減され、構造の簡易化が図られる。また、一対のロック解除操作部を、例えば作業者の指先の間に挟み込むようにして互いに近接させる方向に押圧すること等により、ロック部の解除が容易な操作で確実に行われる。
【0010】
特に、本構成によれば、ロック解除操作部に設けられた解除押圧面の楔作用で、解除受け板の移動、すなわちロック部の解除が行われるため、比較的小さな操作力によってロック部の解除が確実に行われる。
【0011】
さらに、本発明においては、前記ロックアーム部が、前記ロック部材の基部から片持ち状に延出する揺動部材をなすように形成されたものであって、当該ロックアーム部の揺動側部分に前記ロック部が設けられているとともに、前記ロック部材の基部と前記ロック部との間部分に略U字状をなすように折曲げ形成された折返し部が設けられていることが望ましい。
【0012】
このような構成によれば、電気コネクタの小型化等に伴って比較的小さいスペース内にロックアーム部を収容する構成とした場合であっても、ロックアーム部のスパンが長く確保されることから、ロックアーム部の弾性変形が良好に行われることとなってロック部の係合・解除が円滑に行われる。
【0013】
また、本発明における前記ロック部材の基部は、印刷配線基板に半田接合される基板接続部と一体的に連続するように形成され、前記基板接続部が、前記解除受け板と対向する部材を構成するように設けられていることが望ましい。
【0014】
このような構成によれば、ロック解除操作部から解除受け板に付加された解除操作力が、基板接続部で直接的に受けられることとなり、電気コネクタ全体の強度が良好に確保される。また、解除受け板又はロック解除操作部の配置投影面内に基板接続部が隠れる傾向となることから、電気コネクタの設置面積が低減される。
【0015】
また、本発明における前記絶縁ハウジングには、前記ロックアーム部を揺動可能に収容するロックアーム収容室が設けられ、そのロックアーム収容室には、前記ロックアーム部の揺動時に当該ロックアーム部の一部に当接して前記ロック部の揺動量を規制する揺動規制壁部が設けられていることが望ましい。
【0016】
このような構成によれば、ロック解除操作部の解除操作によるロックアーム部の変位量、すなわちロック部の変位量が、揺動規制壁部によって一定量以下に抑えられることから、信号伝送媒体に対するロック部の突出量が適正に確保され、ロック部及びそのロック解除リンク機構や信号伝送媒体の破損や損傷が防止される。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように本発明にかかる電気コネクタは、ロック部の係合状態を解除させるロック解除操作部を、信号伝送媒体の両側外方部分に互いに対向するように一対配置し、それら一対のロック解除操作部を、絶縁ハウジングから一体に延出する解除アーム部に一体的に連設して互いに近接・離間するように移動可能とし、一対のロック解除操作部同士を近接方向に移動させたときの解除押圧面の楔作用で解除受け板を移動させてロック部材を解除方向に変位させるロック解除リンク機構を備えたことによって、ロック部を変位させるロック解除リンク機構の部品点数を低減して構造の簡易化を図るとともに、一対のロック解除操作部によるロック部の解除操作が容易な操作で確実に行われるように構成したものであるから、簡易な構成で、絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体の保持及び離脱を良好に行わせることができ、電気コネクタの信頼性を低廉かつ大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電気コネクタの構造を正面側から表した外観斜視説明図である。
【図2】図1に示された電気コネクタを背面側から表した外観斜視説明図である。
【図3】図1及び図2に示された電気コネクタの平面説明図である。
【図4】図1及び図2に示された電気コネクタの底面説明図である。
【図5】図1〜図4に示された電気コネクタに用いられている絶縁ハウジングの長手方向一端部分の構造を表した部分拡大斜視説明図である。
【図6】図1〜図4に示された電気コネクタに用いられているロック部材をコネクタ内方側から表した拡大斜視説明図である。
【図7】図1〜図4に示された電気コネクタに用いられているロック部材をコネクタ外方側から表した拡大斜視説明図である。
【図8】図3中の VIII−VIII 線に沿った横断面説明図である。
【図9】図3中の IX−IX 線に沿った横断面説明図である。
【図10】図3中の X−X 線に沿った横断面説明図である。
【図11】図1〜図10に表された電気コネクタに対して信号伝送媒体(FPC)を挿入する直前の状態を表した平面側の外観斜視説明図である。
【図12】図1〜図10に表された電気コネクタに対して信号伝送媒体(FPC)の挿入を完了した状態を表した平面側の外観斜視説明図である。
【図13】信号伝送媒体(FPC)の挿入状態における図9相当の横断面説明図である。
【図14】信号伝送媒体(FPC)の挿入後に解除操作を行った状態における図3中の XIV−XIV 線に沿った横断面説明図である。
【図15】信号伝送媒体(FPC)の挿入後に解除操作を行った状態における側面説明図である。
【図16】信号伝送媒体(FPC)の挿入後に解除操作を行った状態における図9相当の横断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、回路配線基板上に実装されるリセプタクルコネクタに適用した実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1〜図16に示されている本発明の一実施形態にかかるリセプタクルコネクタ1は、電気製品側の電子回路の一部を構成する回路配線基板(図示省略)に実装される電気コネクタからなるものであって、当該リセプタクルコネクタ1は、略水平に配置された回路配線基板の表面から立ち上がるように配置される細長状の絶縁ハウジング11を有している。
【0021】
以下において、回路配線基板(図示省略)の表面が水平状態に延在しているものとし、その回路配線基板の表面から絶縁ハウジング11が立ち上がる方向を「上方向」、絶縁ハウジング11の立ち上がり方向と反対の方向を「下方向」とする。また、絶縁ハウジング11の細長状の延在方向を「コネクタ長手方向」とし、当該「コネクタ長手方向」及び「上下方向」の双方向に直交する方向を「コネクタ幅方向」と呼ぶこととする。
【0022】
[絶縁ハウジングについて]
上述した絶縁ハウジング11の立上り側の端部である上端面には、後述するフレキシブルフラットケーブル(FFC)やフレキシブルプリント基板(FPC)などの信号伝送媒体PBが挿入される挿入開口部11aが、コネクタ長手方向に沿って細長スリット状をなすように形成されている。そして、その挿入開口部11aの上方位置に、回路配線基板(図示省略)の表面に略直交するようにして信号伝送媒体PBの端末部分が下方向へ向いた状態に配置され、その信号伝送媒体PBの端末部分が下降移動されることによって、前記挿入開口部11aからリセプタクルコネクタ1の内部、より具体的には絶縁ハウジング11の中空内部に信号伝送媒体PBの端末部分が挿入されるようになっている。
【0023】
このような信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBの上方側からの挿入構造によれば、絶縁ハウジング11の挿入開口部11aに信号伝送媒体PBを挿入するにあたって、当該挿入開口部11aと信号伝送媒体PBとの位置関係が上方側から容易に観察されることとなり、信号伝送媒体PBの挿入動作が容易かつ正確に行われるとともに、信号伝送媒体PBの挿入後の状態が良好に確保される。
【0024】
[導電コンタクトについて]
上述した絶縁ハウジング11には、当該絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向に沿って多数の導電コンタクト(導電端子)12,12,・・・が所定のピッチ間隔をなして多極状に取り付けられている。これらの各導電コンタクト12は、特に図8に示されているように、側面略L字状をなすように折曲げ形成された金属部材からなり、上述したようにしてリセプタクルコネクタ1の内部に挿入された信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBの端末部に接触する接点部12aを上端部分に有している。それらの各導電コンタクト12の本体部分は、上述した接点部12aから下方に向かって延在しており、回路配線基板(図示省略)に接触する下端部分で略直角後方(図8の右方)に折れ曲がってコネクタ幅方向の後方側に延出している。そして、その導電コンタクト12の後方側延出端部分に接続端子部12bが設けられており、その接続端子部12bが、上述した回路配線基板(図示省略)に形成された信号用導電路に半田接合されるようになっている。
【0025】
[ロック部材について]
さらに、上述した絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向の両端部分には、薄板状の金属部材を所定の形状に折り曲げ成形した一対のロック部材(ホールドダウン)13,13が設けられている。それらの各ロック部材13は、上述した絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向の両端部分に対して下方側から装着するようにして取り付けられており、特に図6及び図7に示されているように、前記絶縁ハウジング11の底面に沿って配置された基部としての底面基板13aを有しているとともに、その底面基板(基部)13aのコネクタ内方側部分には、固定部としての固定片13bが上方に向かって突出するように複数設けられており、それら複数の固定片(固定部)13bが、絶縁ハウジング11の本体部分に差し込まれることによってロック部材13全体の固定が行われている。
【0026】
また、上述した底面基板(基部)13aには、弾性変位可能な揺動部材をなすように形成された一対のロックアーム部13c,13cが、底面基板13aを挟んで互いに対面するように連設されている。これらの両ロックアーム部13c,13cを構成している揺動部材は、底面基板13aから上方の挿入開口部11aに向かって一体的に突出するように設けられていて、前記底面基板13aの端縁部から略直角上方に折れ曲がった後に片持ち状に立ち上がるように形成されている。そして、それらの各ロックアーム部13cの立ち上がり方向の上端部分には、略U字状をなすようにして下方に折曲げ形成された折返し部13c1が設けられていて、その折返し部13c1から下方に延出している当該ロックアーム部13cの揺動側部分に、信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBの保持を行うロック部13dが設けられている。
【0027】
このとき、前述した絶縁ハウジング11の内部には、特に図9及び図10に示されているように、上述した一対のロックアーム部13c,13cを揺動可能に収容するロックアーム収容室11b,11bが設けられている。それらの両ロックアーム収容室11b,11b同士の間部分には、当該両ロックアーム収容室11b,11b及び挿入開口部11aの壁面を構成する揺動規制壁部11c,11cが、両ロックアーム部13c,13cの対面部分を両側に仕切るように設けられている。これらの各揺動規制壁部11cの壁面には、ロックアーム部13c,13cの一部、より具体的には前記折返し部13c1から下方に延出している揺動側部分が当接可能となるように配置されており、このような位置関係によってロック部13d,13dの揺動量が適宜の範囲に規制されるようになっている。
【0028】
また、上述した揺動規制壁部11c,11cであって前記ロックアーム部13c,13cの一部が当接する部分には、スリット状の切欠き部11d,11dがコネクタ長手方向に位置をずらして設けられており、それらの切欠き部11d,11dを通して、それぞれのロック部13d,13dの先端部分が、絶縁ハウジング11内に設けられた信号伝送媒体PBの挿入空間内に突出可能となるように構成されている。
【0029】
[ロック部について]
そのロック部13dは、信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBの端末部分に形成された位置決め部PB1に対応して設けられたものである。すなわち、特に図11に示されているように、信号伝送媒体PBの端末部分には、当該信号伝送媒体PBの板幅方向(コネクタ長手方向)の両側端縁部分に、切り欠き状の凹部からなる位置決め部PB1が形成されていて、リセプタクルコネクタ1の内部に信号伝送媒体PBが差し込まれた際に、上述したようにリセプタクルコネクタ1側に設けられたロック部13dが、信号伝送媒体PB側に設けられた位置決め部PB1に係合し、その位置決め部PB1に対するロック部13dの係合作用によって信号伝送媒体PBの挿入状態が保持されるようになっている。
【0030】
このようにロック部13dは、前述した信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBの位置決め部PB1の内方に入り込む板状部材から形成されたものであって、上述したロックアーム部13cの揺動側部分から、上述した信号伝送媒体PBの挿入空間内に向かって突出するように折曲げ形成されている。このロック部13dの突出方向における先端部分は、いわゆるフック形状をなすように形成されており、より長い突出長を有する下端縁から短い突出長の上端縁までの間を傾斜案内辺が傾斜して延在する形状になされている。このようなフック形状からなるロック部13dは、前述したように対面配置された一対のロックアーム部13c,13cにそれぞれ設けられていて、それら両ロックアーム部13c,13cに設けられたロック部13d,13d同士が、互いに干渉することのないようにコネクタ長手方向に位置をずらした配置関係になされている。尚、本実施形態におけるロック部13dは、上述の様にコネクタ幅方向に一対、計4ケを設ける事としたが、コネクタ前方、あるいは後方、のいずれか片側のみ設けるようにしても良い。
【0031】
そして、例えば図11に示されているようにして絶縁ハウジング11の挿入空間内に信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBの端末部分が上方側から挿入されてくると、その信号伝送媒体PBの挿入側先端縁が、前述したロック部13dの傾斜案内辺に当接し、挿入前の初期状態において上方向に略直立していた一対のロックアーム部13c,13cが、下端側の揺動支点を中心としてコネクタ外方側に倒されるように弾性変位される。その弾性変位状態から、さらに信号伝送媒体PBの端末部分が下方に押し込まれていくと、例えば図13及び図14に示されているように、上述したロック部13dのフック形状部分が、ロックアーム部13cの弾性復元力によって信号伝送媒体PBの位置決め部(切り欠き状の凹部)PB1の内部に向かって突出するように揺動される。これによって、ロック部13dが信号伝送媒体PBの位置決め部PB1に対して係合状態となり、信号伝送媒体PBの挿入状態が保持される。
【0032】
[ロック解除リンク機構について]
一方、このような信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBに対するロック部13dの係合状態から、後述するようにロック解除操作部14を操作してロック解除操作が行われると、次に説明するロック解除リンク機構を介してロックアーム部13cが、自身の弾性力に抗してコネクタ外方側に倒れるように揺動し(図14、および図16参照)、ロック部13dのフック状部分が、信号伝送媒体PBの位置決め部PB1から離脱される。このロック解除操作部14及びそのロック解除操作部14に付設されたロック解除リンク機構について次に説明する。
【0033】
すなわち、そのロック解除リンク機構は、信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBからロック部13dを離脱させるように設けられた一対のロック解除操作部14,14に付設されたものであるが、当該ロック解除リンク機構が付設された一対のロック解除操作部14,14は、上述した絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向の両端部分に配置されている。それらの各ロック解除操作部14は、信号伝送媒体PBを板幅方向(コネクタ長手方向)に挟んだ位置、つまり前述した挿入開口部11aの両側外方部分に互いに対向するように一対配置されていて、例えば図12及び図14中の矢印で表されているように、それら一対の両ロック解除操作部14,14同士が互いに近接する方向に解除操作力が付加される構成になされている。
【0034】
このとき、両ロック解除操作部14,14は、絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向の両端部分に解除アーム部14a,14aを介して、絶縁ハウジング11と一体的に形成されている。より具体的には、前記各解除アーム部14aは、絶縁ハウジング11の底面部から片持ち状をなしてコネクタ外方に延出しており、略L字状をなす当該解除アーム部14aの上端部にロック解除操作部14が連設されている。そして、それらの各解除アーム部14aが弾性変位することによって、上述した一対のロック解除操作部14,14同士が互いに近接・離間するように移動可能に構成されている。
【0035】
実際のロック解除操作が行われるにあたっては、上述した両ロック解除操作部14,14同士が、例えば作業者の指先の間に挟み込まれることによって、図12中の矢印で示したように、互いに近接する方向に移動されることとなるが、その互いに近接された状態から作業者の手が開放されると、解除アーム部14aが有する弾性復帰力によって、両ロック解除操作部14,14同士が再び離間状態となるように移動する。
【0036】
そして、これら一対のロック解除操作部14,14には、前述したようにロック解除リンク機構がそれぞれ付設されていて、ロック解除操作部14,14同士を互いに近接させるようにロック解除操作が行われた際に、当該ロック解除リンク機構を介して信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBからロック部13dが解除方向に移動されるようになっている。以下においては、コネクタ長手方向の片側に配置された一方側のロック解除リンク機構の構造を説明するが、他方側のロック解除リンク機構についても同様な構成を有するものである。
【0037】
ロック解除操作部14に付設されたロック解除リンク機構は、上述したロック部13dを弾性変位可能に支持する一対のロックアーム部13c,13cを含むものであって、それら一対のロックアーム部13c,13cに設けられた解除受け板13e,13eと、その解除受け板13e,13eと対面するようにして前記ロック解除操作部14に形成された解除押圧面14b,14bとを有している。
【0038】
そのうちの解除受け板13e,13eは、ロックアーム部13c,13cのコネクタ長手方向における外方側端縁からコネクタ外方に向かって一体的に延出する一対の板状部材から形成されている。これらの各解除受け板13eは、ロック解除操作部14の移動方向に対して傾斜する方向に延在しており、コネクタ長手方向の両端部分に設けられた両ロック解除操作部14,14同士が近接・離間する方向(コネクタ長手方向)に対して、平面視において約30度前後の角度をなすように配置されている。
【0039】
このような解除受け板13e,13eに対応してロック解除操作部14には、楔形状を形成するように一対の解除押圧面14b,14bが形成されている。これらの両解除押圧面14b,14bは、上述した解除受け板13e,13eと略同一の角度をなして延在する傾斜面から構成されており、解除受け板13e,13eにコネクタ長手方向に対面した状態で接触するように配置されている。
【0040】
そして、前述したようにコネクタ長手方向の両端部分に設けられた一対のロック解除操作部14,14が互いに近接させられるようにしてロック解除操作が行われた際に、当該ロック解除操作部14,14が、解除押圧面14c,14cを介して解除受け板13e,13eを押圧し、それらの解除受け板13e,13e同士の間部分にロック解除操作部14が楔状に入り込むように押し込まれていく。その結果、図15及び図16中の矢印で表されているように、解除受け板13e,13e同士の間が押し広げられて互いに離間するように移動し、それに伴ってロックアーム部13c,13cが弾性変位してコネクタ幅方向の外方側に倒れるように揺動すると、ロック部13dのフック状部分が信号伝送媒体PBの位置決め部PB1から離脱し、それによってロック部13dが解除が行われるように構成されている。
【0041】
さらに、上述したロックアーム部13c,13cの基部を構成している底面基板13aには、コネクタ幅方向に延在する帯板状部材からなる基板接続部13fが一体的に連設されている。この基板接続部13fは、底面基板13aに対してコネクタ長手方向の外方側の領域に配置されており、当該帯板状部材からなる基板接続部13fのコネクタ幅方向における両端部分が、印刷配線基板(図示省略)に半田接合されて固定されるようになっている。
【0042】
このときの基板接続部13fは、前述した解除受け板13e,13eに対して、当該解除受け板13e,13eの直下位置に対向するように配置されており、解除受け板13e,13eと対向する部材を構成するように基板接続部13fが一対設けられている。
【0043】
このような構成を有する本実施形態によれば、信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBの両側に配置された一対のロック解除操作部14,14が、解除アーム部14a,14aを介して絶縁ハウジング11と一体的に設けられているため、ロック部13dを変位させるロック解除リンク機構の部品点数が低減されて構造の簡易化が図られる。また、一対のロック解除操作部14,14を、例えば作業者の指先の間に挟み込むようにして互いに近接させる方向に押圧すること等により、ロック部13dの解除操作が容易な作業で確実に行われる。
【0044】
特に、本実施形態においては、ロック解除操作部14,14の解除押圧面14c,14cが解除受け板13e,13eを押し広げるように楔状に押圧するため、比較的小さな操作力によってロック部13dの解除が確実に行われる。
【0045】
また、本実施形態では、電気コネクタの小型化等に伴って絶縁ハウジング11のロックアーム収容室11b内における比較的小さいスペースにロックアーム部13cが収容された構成になされているが、ロックアーム部13cの途中部分に略U字状に折曲げ形成された折返し部13c1が設けられていることから、ロックアーム部13cのスパンが長く確保されており、それによってロックアーム部13cの弾性変形が良好に行われるため、ロック部13dの係合・解除が円滑に行われる。
【0046】
さらに、本実施形態においては、解除受け板13e,13eと対向する部材を構成するように基板接続部13fが設けられていることから、ロック解除操作部14から解除受け板13e,13eに付加された解除操作力が、回路基板に接続される基板接続部13fによって直接的に受けられ、電気コネクタ全体に不所望な力が作用されにくいことから、電気コネクタの接続強度が良好に確保される。また、解除受け板13e,13e又はロック解除操作部14の配置投影面内に基板接続部13fの一部が隠れる傾向となることから、電気コネクタの設置面積が低減される。
【0047】
さらにまた、本実施形態では、絶縁ハウジング11に設けられたロックアーム収容室11bに、ロックアーム部13cの揺動時に当該ロックアーム部13cの一部に当接してロック部13dの揺動量を規制する揺動規制壁部11cが設けられていることから、ロック解除操作部14,14の解除操作によるロックアーム部13cの弾性変位量、すなわちロック部13dの弾性変位量が、揺動規制壁部11cにより一定量以下に抑えられるため、信号伝送媒体(FFC又はFPC)PBに対するロック部13dの突出量が適正に確保されるとともに、ロック部13dを含むロック機構又はその解除機構や信号伝送媒体PBの破損や損傷が防止される。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0049】
例えば、上述した各実施形態は、垂直挿入型の電気コネクタに本発明を適用したものであるが、本発明はそれに限定されるものではなく、水平挿入型の電気コネクタに対しても同様に適用することが可能である。
【0050】
さらに、本発明にかかる電気コネクタは、上述した実施形態のようなフレキシブルフラットケーブル(FFC)やフレキシブルプリント基板(FPC)の接続を行うものに限定されることはなく、基板と基板、或いはケーブルと基板を電気的に接続する多種多様な電気コネクタに対しても本発明は同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように本発明は、電気機器に使用される多種多様な電気コネクタに対して広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 リセプタクルコネクタ(電気コネクタ)
11 絶縁ハウジング
11a 挿入開口部
11b ロックアーム収容室
11c 揺動規制壁部
11d 切欠き部
12 導電コンタクト
12a 接点部
12b 接続端子部
13 ロック部材(ホールドダウン)
13a 底面基板(基部)
13b 固定片(固定部)
13c ロックアーム部
13c1 折返し部
13d ロック部
13e 解除受け板
13f 基板接続部
14 ロック解除操作部
14a 解除アーム部
14b 解除押圧面
PB 信号伝送媒体(FFC又はFPC)
PB1 位置決め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体の板幅方向の両側部分にロック部を係合させて前記信号伝送媒体の保持を行う一方、ロック解除操作部を操作することによって前記ロック部の係合状態を解除させるように構成された電気コネクタにおいて、
前記ロック解除操作部は、前記信号伝送媒体を前記板幅方向に挟んだ両側外方部分において互いに対向するように一対配置され、
それら一対のロック解除操作部が、前記絶縁ハウジングから片持ち状をなして一体に延出する解除アーム部に連設され、当該解除アーム部の弾性変位によって前記一対のロック解除操作部同士が互いに近接・離間するように移動可能に構成されたものであって、
前記一対のロック解除操作部同士が近接する方向に移動された際に前記ロック部を解除方向に変位させるロック解除リンク機構を備え、
当該ロック解除リンク機構は、前記ロック部を一体的に有するロック部材を有しているとともに、そのロック部材に対して当接・離間するように前記ロック解除操作部に設けられた解除押圧面を有し、
前記ロック部材が、前記ロック部を弾性変位可能に支持するロックアーム部と、そのロックアーム部から一体的に延出するように設けられて記ロック解除操作部の移動方向に対して傾斜する方向に延在する解除受け板と、を備え、かつ
前記ロック解除操作部の解除押圧面が、当該ロック解除操作部の移動方向において前記解除受け板と対面するように延在するものであって、
前記ロック解除操作部が移動して前記解除押圧面が前記解除受け板に当接し、その解除受け板を介して前記ロックアーム部が弾性変位することによって、前記ロック部が解除方向に変位するように構成されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ロック解除操作部に設けられた解除押圧面が、楔形状を形成するように一対配置されているとともに、
その楔形状をなす一対の解除押圧面のそれぞれに対面するようにして前記解除受け板が一対配置されたものであって、
前記一対の解除受け板同士の間に前記ロック解除操作部が入り込んで、当該ロック解除操作部の解除押圧面が前記一対の解除受け板同士の間を押し広げるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ロックアーム部が、前記ロック部材の基部から片持ち状に延出する揺動部材をなすように形成されたものであって、
当該ロックアーム部の揺動側部分に前記ロック部が設けられているとともに、前記ロック部材の基部と前記ロック部との間部分に略U字状をなすように折曲げ形成された折返し部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記ロック部材の基部は、印刷配線基板に半田接合される基板接続部と一体的に連続するように形成され、
前記基板接続部が、前記解除受け板と対向する部材を構成するように設けられていることを特徴とする請求項3記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記絶縁ハウジングには、前記ロックアーム部を揺動可能に収容するロックアーム収容室が設けられ、
そのロックアーム収容室には、前記ロックアーム部の揺動時に当該ロックアーム部の一部に当接して前記ロック部の揺動量を規制する揺動規制壁部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−16337(P2013−16337A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147949(P2011−147949)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(592028846)第一精工株式会社 (94)
【Fターム(参考)】