説明

電気ストーブ

【課題】 温度ヒューズ或いは送受信器等の特別な検知手段を使用することなく、温度センサを利用して、ストーブにカーテン、洗濯物等の可燃物が被さったことを素早く検知できる電気ストーブを提供すること。
【解決手段】 ヒータH、Hと、ヒータの周辺温度を検知する温度センサ9と、温度センサの検出値によりヒータ等を制御する制御装置10とを備えた電気ストーブ1において、制御装置は、温度センサの出力から温度上昇率を算出する上昇率検知手段と、所定のデータを記憶する記憶部10eと、上昇率検知手段により検知された温度上昇率と記憶部内に予め設定された基準値とを比較してヒータ周辺の異常過熱を判定する判定部10dと、を有し、判定部の判定結果により警報の出力及びヒータへの給電の遮断の少なくとも一方を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気ストーブに係り、特に、ストーブにカーテンや洗濯物等の可燃物が触れ或いは被さったときに警報を鳴らす或いはヒータへの給電を停止するといった安全機能が設けられた電気ストーブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭、店舗やオフィスなどの局所暖房機として、シーズヒータや石英管ヒータ等の発熱体を使用した電気ストーブが普及してきている。このような電気ストーブは、通常、使用者に近いところに置かれることから、時々、濡れたタオルや洗濯物などを手っ取り早く乾かすために、ストーブに掛けることがある。このような乾燥は、通常、使用者の監視下で短時間のつもりで掛けられることが多いが、乾いたにも拘わらず取り除かれずに放置されることがある。ところが、このような可燃物がストーブに掛ったまま放置されると、過熱されて変色、焦げ、燻りさらには発火して付近のカーテン等の可燃物に燃え移り火災の原因となることがある。また、発熱体がシーズヒータであると、この発熱体は低ワット数で赤熱しないので、外見からはヒータがオンされていることが分からず、うっかり洗濯物等を掛けてしまうことがある。このような場合も、洗濯物等が過熱されて変色、焦げ等が生じる恐れがある。そこで、このような電気ストーブには、可燃物が掛けられても発火しないようにした安全装置が設けられている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0003】
図10は下記特許文献1に記載された電気ストーブの断面図である。
【0004】
図10に示す電気ストーブ20は、ヒータユニット22が内蔵された本体ケース21と、この本体ケースを支持するスタンド23とを備え、本体ケースの上方に光信号発信部25、スタンド23に光信号受信部27がそれぞれ設けられ、操作スイッチ(図示省略)がオンされると、ヒータユニット22が発熱するとともに、光信号発信部25から光信号受信部27へ向けて赤外線信号が発信されるようになっている。この構成により、カーテンや洗濯物などの可燃物がヒータユニット22に接近すると、この可燃物が光信号発信部25から送信中の光信号を遮断し、導光体26を通して伝達される光信号受信部27への光信号が切断されるので、この切断により、制御回路24が作動してヒータユニット22への給電を停止し、可燃物の過熱、火災を未然に防ぐことができる。
【0005】
また、下記特許文献2に記載された電気ストーブは、筐体に過熱保護素子(温度ヒューズ)が設けられたもので、この温度ヒューズによりストーブの異常過熱を検知して、発熱体への給電を停止している。
【特許文献1】特開平5−157251号公報(図1、段落〔0022〕〜〔0025〕)
【特許文献2】特開平2006−23033号公報(図6、段落〔0021〕〜〔0028〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の電気ストーブによれば、ストーブに可燃物が接近したときに、これを検知して給電を停止させるので、可燃物の発火等を未然に防止することができる。しかしながら、この電気ストーブは、可燃物の検知を光信号発信部及び受信部間の光信号の送受信で行っているので、送受信部及びその付属品(例えば導光体等)からなる特別の検知手段が必要となり、そのため部品点数が増大し、取り付け作業も面倒になりコスト高になる。また、このような検知手段を首振り型電気ストーブに取り付けようとすると、送受信部を本体ケースと支持スタンドに分けて取り付けなければならなくなり、このため送信部の移動に追随させて受信部を移動させる機構が必要となるとともに、この受信部の機構が複雑になる。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された電気ストーブでは、過熱保護素子に温度ヒューズを使用しているので、このヒューズが切断されると、ユーザー自身で交換することができず、販売店等へ持ち込み修理してもらわなければならなくなり、そのため費用及び時間が掛ることになる。
【0008】
さらに、温度ヒューズの誤作動を避けるために、この温度ヒューズの動作温度をヒータの最大容量に合せて設定することになり、これが使用時に異常検知がされにくくなる要因となった。
【0009】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、温度ヒューズ或いは送受信器等の特別な検知手段を使用することなく、温度センサを利用して、ストーブにカーテン、洗濯物等の可燃物が被さったことを素早く検知できる電気ストーブを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、検知スピードの速い検知手段と安定性のある検知手段とを組み合わせて、可燃物を素早くしかも確実に検知できるようにして安全性を高めた電気ストーブを提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の他の目的は、使用中にヒータモードを切換え変更しても検知手段が誤動作しないようにした電気ストーブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の電気ストーブの発明は、ヒータと、前記ヒータの周辺温度を検知する温度センサと、前記温度センサの検出値により前記ヒータ等を制御する制御装置とを備えた電気ストーブにおいて、
前記制御装置は、
前記温度センサの出力から温度上昇率を算出する上昇率検知手段と、
所定のデータを記憶する記憶手段と、
該上昇率検知手段により検知された温度上昇率と前記記憶手段内に予め設定された基準値とを比較して前記ヒータ周辺の異常過熱を判定する第1判定手段と、
を有し、前記第1判定手段の判定結果により警報の出力及び前記ヒータへの給電の遮断の少なくとも一方を実行することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気ストーブにおいて、前記記憶手段に記憶された前記第1判定手段において前記温度上昇率と比較される前記基準値は、前記ヒータの温度上昇が安定する安定時点を基準として、該安定時点以前の基準値が該安定時点以降の基準値より大きくなるように設定され前記記憶手段に記憶されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電気ストーブにおいて、前記記憶手段には異常温度値が設定され記憶されており、前記制御装置は、前記温度センサにより検知された周辺温度が前記異常温度値を超えているか否かを判定する第2判定手段を更に有し、
前記第1判定手段で異常過熱が判定されず且つ第2判定手段で異常温度を超えていると判定されたときにも、この判定結果に基づいて警報の出力及び前記ヒータへの給電の遮断の少なくとも一方を実行することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電気ストーブにおいて、前記ヒータはヒータ容量の異なる複数のヒータモードを有し、前記記憶手段には前記複数のヒータモード毎に前記異常温度値が設定されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電気ストーブにおいて、前記記憶手段は、前記電気ストーブが起動されてから所定時間経過後に前記ヒータモードが変更された際に、この時点における前記ヒータの周辺温度及び前記ヒータモードが変更された旨のデータを一時的に記憶し、前記制御装置は、前記ヒータモードが変更された場合に、前記記憶手段に記憶された該ヒータモードが変更された時点の前記ヒータの周辺温度と該ヒータモードが変更された後所定時間が経過した後の前記ヒータの周辺温度とを比較して前記ヒータ周辺の異常加熱を判定する第3判定手段を更に有し、
前記ヒータモードが変更された旨のデータが前記記憶手段内に記憶されている場合には、前記第2判定手段による判定を行わずに、前記第3判定手段による判定結果により警報の出力及び前記ヒータへの給電の遮断の少なくとも一方を実行することを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電気ストーブにおいて、前記記憶手段は、前記一時的に記憶されたデータのうち、前記ヒータモードが変更された時点のヒータの周辺温度を前記複数のヒータモードに対応するように複数の段階に区分された温度区分データとして記憶し、前記第3判定手段において、前記温度区分データと前記変更された後のヒータモードとを比較し、前記温度区分データが前記変更された後のヒータモードよりも大きい場合には、前記記憶手段に一時的に記憶されたデータを削除することを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の電気ストーブにおいて、前記ヒータは、シーズヒータ又は石英管ヒータであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏するものである。すなわち、請求項1の発明によれば、周囲温度を検知する温度センサを使用し、このセンサの検出値からその上昇率を算出して、この算出値の大きさと基準となる値とを比較することで異常過熱を判定するので、特別な検知手段を設けることなく、毛布等の可燃物がストーブに掛ったときその状態を素早く検知することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、基準値となる温度上昇率をヒータの安定時点を基準として安定する時点より以前は高い温度上昇率、安定する時点より以降は低い温度上昇率に設定することにより、ヒータの加熱状態に合わせて基準値を設定することでより確実に異常過熱を検知できる。
【0021】
請求項3の発明によれば、異常過熱の検知を温度上昇率及び異常温度値双方の値を使用して判定するので、温度上昇率を用いた判別では早期に検知できない異常過熱なども確実に素早く検知ができる。特に、温度上昇率による検知を数回、例えば4回連続して基準値を超えているときに異常過熱と判定する場合、4回のうち1回でも異常が検知されないと、検知スピードが遅れるが、このような場合でも異常温度値を超えるときに確実に異常と判定されるので、安全性が向上する。
【0022】
請求項4の発明によれば、異常温度値をヒータモード毎に設定したために、ヒータモードに応じた適切な異常温度に基づいて判別を行えるので、より確実に異常過熱を検知できる。
【0023】
請求項5の発明によれば、第2判定手段によって不用意にヒータへの給電の遮断等が起こる場合、具体的には、ヒータモードがヒータ容量が小さくなるように変更された場合などには第2判別手段による判別を行うことなく第3判別手段を用いて判別を行うことにより、より適切にヒータ制御を行えるようになる。
【0024】
請求項6の発明によれば、記憶手段によって一時的に記憶されたデータを効率的に削除することにより、より機能性が向上する。
【0025】
請求項7の発明によれば、シーズヒータ又は石英管ヒータで請求項1〜6の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電気ストーブを例示するものであって、本発明をこの電気ストーブに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係る電気ストーブの正面図、図2は図1の電気ストーブに内蔵されたヒータの一部が正面から見えるようにした正面図、図3は図1の電気ストーブを一側面からみた側面図、図4は図3の側板を取り除き内蔵されたヒータが見えるようにした側面図である。
【0028】
電気ストーブ1は、図1〜図4に示すように、基台2と、この基台2から立設されてヒータが収容されたヒータ本体3とを備え、ヒータ本体3は基台2に連結部材Jで結合された構成を有している。
【0029】
基台2は、平面視で略円形ないし楕円形状をなした台座からなり、その表面2aが上方へ円弧状に湾曲し、底部2bに空間が形成され、床面に据え置きできるようになっている。この基台2は、その表面2aの略中心部に所定大きさの窪み部2cが形成され、この窪み部2cに連結部材Jが挿入されるようになっている。
【0030】
また、ヒータ本体3は、図2に示すように、前面が開口されて複数本、例えば2本のヒータH、H及びその付属品等が収容されるハウジング4と、このハウジング4の前面開口を覆う防護網7とを有し、各ヒータH、Hには、例えばシーズヒータが使用されている。
【0031】
ハウジング4は、両側板4a、4b及び裏板4cで囲まれ前面及び上下が開口された略直方体形状の箱型をなし、金属板の折曲加工により形成されている。裏板4cには、反射板が装着されている。このハウジング4は、下方の開口にベース板5が固定され、上方の開口が蓋体6で覆われている。
【0032】
この蓋体6には、図示しないがその表面に操作プレート、下方に制御基板が装着されている。この操作プレートには電源スイッチ、ヒータ容量切り換えスイッチ及び表示灯等が設けられている。また、この蓋体6の下方には、温度センサ9が取り付けられている。この温度センサ9は、各ヒータH、Hから略30mm離れた箇所に設けられている。なお、上記「ヒータ容量」とは、ヒータの電力量(ワット数)及びそれに伴う放熱量を示すものとして用いている。
【0033】
2本のシーズヒータH、Hは、それぞれ所定のヒータ容量(例えばそれぞれ400W)を有している。これらのヒータは、それぞれの端部が上下板に固定され、各シーズヒータの端子部には電源線が接続される。防護網7は、ハウジング4の前面に設けられ安全柵となっている。
【0034】
次に、本発明の電気ストーブの制御装置10及びこの制御装置10によって動作する電気ストーブの安全機能について説明を行う。
【0035】
図5は本発明の電気ストーブが備える制御装置の構成を示すブロック図、図6は図1の電気ストーブのヒータへの給電開始から20分までの各特性を示すものであり、図6(a)は温度センサで計測したヒータの周辺温度と時間との関係を示す特性図、図6(b)は温度センサで計測した周辺温度に基づく温度上昇率を示す特性図である。図7は図1の電気ストーブのヒータへの給電開始から15分が経過した後の各特性を示すものであり、図7(a)は温度センサで計測したヒータの周辺温度と時間との関係を示す特性図、図7(b)は温度センサで計測した周辺温度に基づく温度上昇率を示す特性図である。なお、これらの値は、実験により確認した値である。
【0036】
制御装置10は、入力部10、出力部10、制御部10a、演算部10b、計時部10c、判定部10d及び記憶部10eを有するマイクロコンピュータからなる制御手段10Aを有し、この制御手段10Aの入力部10には、電源スイッチ11、ヒータモード切り換え手段11、タイマー設定手段11及びヒータの周囲温度を検知する温度センサ9が接続され、また、出力部10には、シーズヒータH、H、警報表示器13及び電源スイッチオフ手段14が接続されている。また、記憶部10eには、温度上昇率/異常温度設定手段12から基準となる所定の温度上昇率及び異常温度値が入力されてメモリーされる。そして入力部10に入力されたデータは制御部10a及び演算部10bにより各種処理が行われ所定の制御信号が生成されることにより電気ストーブ1全体の制御を行うものである。
【0037】
制御装置の動作を説明する前に、先ず、図6を参照して、温度センサ9で検知した400W及び800Wヒータの周辺の温度特性及び各ヒータに毛布を掛けたときの温度特性について説明する。なお、各図の温度は、ヒータから略30mm離れた箇所に設けられた温度センサ9により検出された値である。
【0038】
電源スイッチがオンされて400Wヒータへ給電されると、図6(a)の曲線Aに示すように、温度センサ9で検知されるヒータの周囲温度は、室温の20℃から時間の経過とともに徐々に上昇し始めて、略15分後に、その表面温度は略最高温度(約510℃)に達して、その後の温度は、ほぼ平衡状態となってヒータの安定状態となる。このとき温度センサ9は、略47℃を検知している。また、同様に800Wヒータも図6(a)の曲線Bに示すように、略15分後に温度上昇率はほぼ停止し、このヒータの安定状態(このときのヒータの表面温度は約660℃)となる。このとき温度センサ9は、約62℃を検知している。
【0039】
このように400W及び800Wヒータは、図6(a)の曲線A、Bに示すように、室温20℃から徐々に上昇して略15分後に安定状態になるが、これらのヒータに毛布が掛けられると、周囲温度は、例えばヒータオン時及び安定時において、以下に説明するように急激な変化を生じる。
(i)ヒータ安定時以前
ヒータ安定時以前の、例えばヒータオン時に毛布が掛けられ或いは既に掛けられていると、400W及び800Wヒータの周辺温度は、図6(a)に示すように急上昇し、その温度曲線は、曲線A、Bから曲線A’、B’へ変化する。また、このときの温度上昇率は、図6(b)の曲線A’、B’に示すように、いずれのヒータもヒータオンされた約1分後から一気に上昇し、2分後には10℃/分を超え、この上昇率は毛布が掛けられる前の上昇率(図6(b)の曲線A、B参照)に比べて格段に高くなる。
(ii)ヒータ安定時以降
ヒータが安定した以降に毛布が掛けられると、400W及び800Wの各ヒータの周辺温度は、各ヒータが毛布等がない場合における略最高温度で安定状態となっているので、温度上昇カーブが更に急峻になる。すなわち、この周囲温度は、図7(a)の温度曲線C、Dに示すように、400Wヒータは、安定時に入った15分時点の約47℃を越えた温度から2〜3分経過後(すなわち、17〜18分後)に80℃を超え、同様に800Wヒータも約62℃から1〜2分後に100℃を超えた値となる。このときの温度上昇率は、図7(b)の温度曲線C、Dに示すように、400W及び800Wの各ヒータは、安定時に入った直後の1分未満に上昇温度は5℃/分を超えた値となる。
【実施例1】
【0040】
このようにヒータに毛布が掛けられると、ヒータ周辺温度は上記(i)、(ii)のように、急激な上昇率で昇温するので、以下には、この急激な温度上昇等を検知してヒータオフ等の制御を行う本発明の実施例1にかかる安全機能について説明を行う。なお、図8は実施例1の電子ストーブの制御フローチャートである。
【0041】
実施例1の電気ストーブにおいては、この温度上昇率が所定の値、例えば上記(i)にあっては10℃/分、上記(ii)にあっては5℃/分を超えることを判定部10d(第1判定手段)で検知することにより、ヒータの異常過熱を検出できる。なお、この傾き値(例えば10℃/分及び5℃/分)は温度上昇率/異常温度設定手段12により設定されて記憶部10eに保存されているものを参照することにより判定部10dでの判定を行う。
【0042】
しかしながら、例えばストーブの首振り動作や風等により掛った毛布が位置ズレし、或いは電源ノイズや瞬間的な風の影響などでセンシング温度に狂いが生じたような場合は、上記(i)、(ii)のような温度上昇率とならず、異常過熱を検知できないことがある。すなわち、温度上昇率を検知する場合に、単位時間間隔で連続で複数回傾き値が異常傾き値よりも大きくなるような出力があった場合に傾き異常と判断するように傾き値の検出を行っている場合には、可熱物が電気ヒータに接触等している場合であっても外部環境によっては所望のセンシングが行われずに誤差が生じる場合がある。
【0043】
このような場合に備えて、400W、800W等のヒータ容量別、すなわちヒータモード別に異常温度を設定しておき、この異常温度を超えたときに、異常過熱と判定できるようにすると更に好ましい。そこでヒータモード別の異常温度は、下記表1に示す判別テーブルを予め温度上昇率/異常温度設定手段12により記憶部10e内に設定しておき、判定部10d(第2判定部)により判定を行うようにする。なお、この判定テーブルに設定される異常温度は、ストーブに毛布等の可燃物が掛ったときに、この可燃物が変色、焦げ、燻り或いは発火しない値であり、実験により求めたものである。
【0044】
【表1】


この異常温度は、ヒータモード別に安定時の温度に所定マージンが加算された値となっている。このマージンは、毛布が掛らない正常動作時に異常判定となる誤動作をなくするとともに、上記の毛布位置ズレ或いはセンシング温度の狂いを考慮して設定されるものであり、環境に応じて温度上昇率/異常温度設定手段12により適宜変更すると好ましい。
【0045】
また、所定マージンの設定については、例えば、800Wヒータは、室温の20℃における安定時の周辺温度(温度センサ9で検知した値)は、約62℃(図6参照)であるが、この温度及びこの温度の近傍値を異常温度に設定すると、毛布が掛らない正常動作時にも異常判定がなされ誤動作の原因となる。そこで、この温度62℃に所定のマージン、例えば39℃を加算し101℃に設定する。
【0046】
この異常温度値は、上記(i)、(ii)において温度上昇率で異常過熱が検出されないときの安全値となる。また、400W、500Wヒータでは、ヒータは赤熱しないが、この異常温度を設定しておくと毛布等の可燃物の変色、焦げをなくすることができる。
【0047】
以下、図8を参照して、実施例1の制御装置及びその動作を説明する。
【0048】
先ず、所定のヒータ容量、例えばヒータ容量800Wのヒータモード5(表1参照)が設定されて電源スイッチがオンされると(ステップS10)、ヒータへの通電が開始され(ステップS11)、周辺温度は、スイッチがオンされた直後から徐々に上昇し始め、ほぼ15分経過後に安定状態になる(図6参照)。そして、ヒータ容量800Wのヒータモード5に設定されて駆動されているときに、計時部10cにより計時されている経過時間を検出し(ステップS12)、経過時間が15分以上であれば後に温度上昇率を検知する際に用いる異常傾き値を5℃/分に設定し(ステップS13)、経過時間が15分以下であれば異常傾き値を10℃/分に設定する(ステップS14)。そして、異常傾き値が設定されると、温度センサ9により検出された周囲温度から演算部10bにより算出される温度上昇率の傾き値と前記ステップS13、S14で設定された異常傾き値とを判別部10dで比較して、異常な温度上昇が発生していないかを検知する(ステップS15)。これにより、可燃物がヒータに触れ或いは被さったか否かを検知することができるようになる。
【0049】
例えば、ヒータ安定時以前に可燃物が被さったときには、電源スイッチのオン直後から暫くの間は、可熱物の有無に関わらずヒータ温度は低く且つ温度上昇も低く、所定時間後に急激な温度上昇が生じるので、基準となる温度上昇率、すなわち異常傾き値を高く、詳しくはステップS14で示す10℃/分として、判定部10dによる比較を行う。また、ヒータ安定時以降に可燃物が被さったときには、ヒータは既に安定状態として最高温度に達しているので、基準となる温度上昇率、すなわち異常傾き値を低く、詳しくはステップS13で示す5℃/分として、判定部10dによる比較を行う。
【0050】
上述したように、ステップS15で検知された結果、周囲温度の温度上昇率が異常傾き値より大きな傾き値を示した場合には(ステップS15でYes)、ステップS17に移行して電源スイッチオフ手段14によりヒータをOFFとする。また、このとき警報表示器13により警報を発するようにしても良い。
【0051】
反対にステップS15において周囲温度の温度上昇率が異常傾き値よりも小さな傾き値を示した場合には(ステップS15でNo)、ステップS16に移行して、温度センサ9により検知された周囲温度がヒータモードごとに設定された異常温度よりも小さいか否かを判別部10dで判別する。この際、例えばヒータ容量800Wのヒータモード5でヒータを駆動している場合には、表1に示すように、異常温度101℃よりも周囲温度が高いと、ステップS17に移行して電源スイッチオフ手段14によりヒータをOFFとし、異常温度101℃よりも周囲温度が低い場合にはステップS12に移行して、以後ステップS12〜S16をループすることとなる。
【0052】
上述した実施例1の異常検知動作によれば、特別な検知手段を使用することなく、通常の周囲温度を検知する温度センサを使用して、その温度上昇率を算出するだけで異常過熱を検知できるので、検知のスピードを上げることができる。
【0053】
また、ヒータに可燃物が被さってもステップS15に示す判別の際にヒータオフを行うと判別されない場合、すなわち異常傾き値よりも大きな温度上昇率が得られないことがある。しかし、ステップS16に示す異常温度を用いた判別を行うようになせば、温度上昇率では判定できない異常をヒータモード別の異常温度を設定することにより、確実に検知できるようになる。よって、検知スピードの速い温度上昇率を用いた判別手段と安定的に検知できる絶対温度による判別手段を組み合わせることにより、誤作動を防止しながら、確実でなおかつすばやい異常検知が可能となる。
【実施例2】
【0054】
上記実施例1に示す電気ストーブの制御動作によれば、可熱物の接触等を効率よく検出することができるが、反面例えば所定時間ヒータをヒータモード5(ヒータ容量800W)でオン状態とした後にヒータモード1(ヒータ容量400W)に変更された場合には、周囲温度によってはヒータモードの変更に伴って異常温度も変更されるために不用意に電源スイッチオフ手段14が作動してしまう場合が考えられる。そこで、以下には実施例2として上述したような場合であっても不用意にヒータオフとされないようにしたものを説明する。なお、図9は本発明の実施例2の電気ストーブの制御フローチャートである。また、本実施例2に係る電気ストーブの制御装置は、図5に示すものと同様であるのでここでは説明を省略する。
【0055】
本実施例2に係る制御装置10の記憶部10eには、上記実施例1で述べたデータに加えて、ヒータモードの変更が行われた旨を記憶するためのフラグを格納する領域が設けられているとともに、下記表2に示すような複数の温度区分に対応する判別テーブルが記憶されている。なお、この温度区分とは、温度センサ9により検知される周囲温度を逐次検知してその周囲温度がどの温度区分に属するかを常に監視するものであり、また、この温度区分はヒータモードに対応するように設定されて、ヒータモードの判別テーブルと同じくそれぞれに異常温度が設定されている。また、近接する温度区分レベルの検出温度の幅には重複する温度が存在するが、これは検出温度の微小な変化に対して温度区分レベルが毎回変更されることがないようにヒステリシス特性を持たせたものである。
【0056】
【表2】


次に、上記構成を備える実施例2の電気ストーブ1の制御動作について図9を参照して説明する。
【0057】
実施例2の電気ストーブ1が備える制御装置10は、先ず、所定のヒータ容量、例えばヒータ容量800Wのヒータモード5(表1参照)が設定されて電源スイッチがオンされると(ステップS20)、ヒータへの通電が開始され(ステップS21)、周辺温度は、スイッチがオンされた直後から徐々に上昇し始め、ほぼ15分経過後に安定状態になる(図6参照)。なお、電源スイッチがオンされると同時に、温度センサ9により検知された周囲温度の温度区分を監視するようになっている。次に、ヒータモード切り換え手段11によりヒータモードの変更がなされたか否かを検出する(ステップS22)。このとき、ヒータモードが変更されていると、逐次監視していた周囲温度の温度区分を記憶部10eに一時的に記憶する(ステップS23)とともに、記憶部10e内のヒータモードの変更を示すフラグを立てて(ステップS24)ステップS25に移行する。なお、ヒータモードの変更がなされていない場合には、そのままステップS25に移行する。
【0058】
次に、計時部10cによりステップS20から計時されている経過時間を検出し(ステップS25)、経過時間が15分以上であれば後に温度上昇率を検知する際に用いる異常傾き値を5℃/分に設定し(ステップS26)、経過時間が15分以下であれば異常傾き値を10℃/分に設定する(ステップS27)。そして、異常傾き値が設定されると、温度センサ9により検出された周囲温度から演算部10bにより算出される温度上昇率の傾き値と前記ステップS13、S14で設定された異常傾き値とを判別部10dで比較して、異常な温度上昇が発生していないかを検知する(ステップS28)。これにより、可燃物がヒータに触れ或いは被さったか否かを検知することができるようになる。
【0059】
そして、ステップS28で検知された結果、周囲温度の温度上昇率が異常傾き値より大きな傾き値を示した場合には(ステップS28でYes)、ステップS34に移行して電源スイッチオフ手段14によりヒータをOFFとする。なお、このとき警報表示器13により警報を発するようにしても良い。反対にステップS28において周囲温度の温度上昇率が異常傾き値よりも小さな傾き値を示した場合には(ステップS28でNo)、ステップS29に移行して、現在の周囲温度に基づく温度区分のレベルと現在駆動しているヒータモードのレベルとを比較して、現在のヒータモードが現在の温度区分のレベル以下である場合には(ステップS29でNo)、ステップS24でフラグが立てられている場合、そのフラグをリセットする(ステップS30)とともにステップS23で記憶した切換時の温度区分のデータも削除し、ステップS22に戻る。反対に現在のヒータモードが現在の温度区分のレベルより大きい場合には(ステップS29でYes)、記憶部10e内にフラグが立っているか否かを検出し(ステップS31)、フラグが立っている場合には(ステップS31でYes)、現在温度センサ9により検出された周囲温度の温度区分レベルとステップS23で一時的に記憶した切換時の温度区分レベルとを比較し、現在の温度区分レベルの方が大きい場合(ステップS32でNo)にはステップS22に戻り、切換時の温度区分レベルの方が大きい場合には(ステップS32でYes)、ステップS34に移行して電源スイッチオフ手段14によりヒータをOFFとする。また、ステップS31においてフラグが立っていない場合、すなわちヒータモードが変更されていない場合には、ステップS33において温度センサ9により検知された周囲温度がヒータモードごとに設定された異常温度よりも小さいか否かを判定部10dで判別する。この際、例えばヒータ容量800Wのヒータモード5でヒータを駆動している場合には、表1に示すように、異常温度101℃よりも周囲温度が高いと、ステップS34に移行して電源スイッチオフ手段14によりヒータをOFFとし、異常温度101℃よりも周囲温度が低い場合にはステップS22に移行して、以後ステップS22〜S33をループすることとなる。
【0060】
これらの動作について具体例を用いて説明すると、例えば電源オン時にはヒータ容量800Wのヒータモード5で駆動を開始し、所定時間経過後、例えば20分後に周囲温度85℃の状態でヒータモード5からヒータモード1に変更した場合には、ステップS23、S24において切換時の温度区分レベルは表2からレベル3が選択されて記憶され、ヒータモードの変更を示すフラグが設定されることになる。この際、実施例1に示す動作で制御を行うと、現在駆動しているヒータモードがレベル1であり、このヒータモードにおける異常温度は80℃であるから、異常温度の検出を行った時点で異常が検知されてヒータがOFFされる。しかしながら、ヒータ容量の小さいヒータモードに変更されたことによって変更後の温度は低下し、特に危険性を生じない場合も考えられる。そこで。実施例2の制御を行うことで、すなわち、ステップS31においてフラグを確認し、フラグが立っている場合において、現在の温度区分が切換時の温度区分以下の場合、すなわち、ヒータモード切換後の周囲温度が低下している場合には、異常温度の検知を行うことなく、ステップS22に戻してループさせるようにしている。
【0061】
上述のような構成を備えることにより、不用意に電源スイッチオフ手段14及び警報表示器13が作動することがなく、より使い勝手のよい電気ストーブを提供することができるようになる。なお、表1及び表2から分かるように、温度区分及びヒータモードの判別テーブルにはそれぞれレベル「異常」を設けてあり、この場合にはヒータ容量はゼロ、つまりヒータオフ状態とすると同時に、異常状態を解除するには、表2に示すように温度センサ9により検出される周囲温度が50℃を下回る必要があることとすると、より安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る電気ストーブの正面図である。
【図2】図2は図1の電気ストーブに内蔵されたヒータの一部が正面から見えるようにした正面図である。
【図3】図3は図1の電気ストーブを一側面から見た側面図である。
【図4】図4は図3の側板を取り除き内蔵されたヒータが見えるようにした側面図である。
【図5】図5は本発明の電気ストーブが備える制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は図1の電気ストーブのヒータへの給電開始から20分までの各特性を示すものであり、図6(a)は温度センサで計測したヒータの周辺温度と時間との関係を示す特性図、図6(b)は温度センサで計測した周辺温度に基づく温度上昇率を示す特性図である。
【図7】図7は図1の電気ストーブのヒータへの給電開始から15分が経過した後の各特性を示すものであり、図7(a)は温度センサで計測したヒータの周辺温度と時間との関係を示す特性図、図7(b)は温度センサで計測した周辺温度に基づく温度上昇率を示す特性図である。
【図8】図8は実施例1の電気ストーブの制御フローチャートである。
【図9】図9は実施例2の電気ストーブの制御フローチャートである。
【図10】図10は従来技術の電気ストーブの断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 電気ストーブ(電気暖房機)
2 基台
3 ヒータ本体
4 ハウジング
9 温度センサ
、H ヒータ
10 制御装置
10a 制御部
10b 演算部
10c 計時部
10d 判定部
10e 記憶部
10A 制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータと、前記ヒータの周辺温度を検知する温度センサと、前記温度センサの検出値により前記ヒータ等を制御する制御装置とを備えた電気ストーブにおいて、 前記制御装置は、前記温度センサの出力から温度上昇率を算出する上昇率検知手段と、所定のデータを記憶する記憶手段と、該上昇率検知手段により検知された温度上昇率と前記記憶手段内に予め設定された基準値とを比較して前記ヒータ周辺の異常過熱を判定する第1判定手段と、を有し、前記第1判定手段の判定結果により警報の出力及び前記ヒータへの給電の遮断の少なくとも一方を実行することを特徴とする電気ストーブ。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶された前記第1判定手段において前記温度上昇率と比較される前記基準値は、前記ヒータの温度上昇が安定する安定時点を基準として、該安定時点以前の基準値が該安定時点以降の基準値より大きくなるように設定され前記記憶手段に記憶されていることを特徴とする請求項1に記載の電気ストーブ。
【請求項3】
前記記憶手段には異常温度値が設定され記憶されており、前記制御装置は、前記温度センサにより検知された周辺温度が前記異常温度値を超えているか否かを判定する第2判定手段を更に有し、
前記第1判定手段で異常過熱が判定されず且つ第2判定手段で異常温度を超えていると判定されたときにも、この判定結果に基づいて警報の出力及び前記ヒータへの給電の遮断の少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項1に記載の電気ストーブ。
【請求項4】
前記ヒータはヒータ容量の異なる複数のヒータモードを有し、前記記憶手段には前記複数のヒータモード毎に前記異常温度値が設定されていることを特徴とする請求項3に記載の電気ストーブ。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記電気ストーブが起動されてから所定時間経過後に前記ヒータモードが変更された際に、この時点における前記ヒータの周辺温度及び前記ヒータモードが変更された旨のデータを一時的に記憶し、前記制御装置は、前記ヒータモードが変更された場合に、前記記憶手段に記憶された該ヒータモードが変更された時点の前記ヒータの周辺温度と該ヒータモードが変更された後所定時間が経過した後の前記ヒータの周辺温度とを比較して前記ヒータ周辺の異常加熱を判定する第3判定手段を更に有し、前記ヒータモードが変更された旨のデータが前記記憶手段内に記憶されている場合には、前記第2判定手段による判定を行わずに、前記第3判定手段による判定結果により警報の出力及び前記ヒータへの給電の遮断の少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項4に記載の電気ストーブ。
【請求項6】
前記記憶手段は、前記一時的に記憶されたデータのうち、前記ヒータモードが変更された時点のヒータの周辺温度を前記複数のヒータモードに対応するように複数の段階に区分された温度区分データとして記憶し、前記第3判定手段において、前記温度区分データと前記変更された後のヒータモードとを比較し、前記温度区分データが前記変更された後のヒータモードよりも大きい場合には、前記記憶手段に一時的に記憶されたデータを削除することを特徴とする請求項5に記載の電気ストーブ。
【請求項7】
前記ヒータは、シーズヒータ又は石英管ヒータであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電気ストーブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−25958(P2008−25958A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201528(P2006−201528)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】