説明

電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに電気ヒーターを備えた炉

【課題】 発熱時の軟化によっても基本形状を維持でき、しかも取付の容易な電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに電気ヒーターを備えた炉を提供すること。
【解決手段】 スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体10と、この発熱体10を支持する絶縁体20とを備える。この発熱体10のうちスリットに沿う幅方向Xに位置する一対の幅方向端部13,13で絶縁体20に支持される。発熱体10は一対の幅方向端部13,13の間で下側へ凸となる円弧状を呈する。幅方向端部13を略鉛直方向Zに向かって絶縁体20に形成した溝23に挿入し、溝23内で幅方向端部13を絶縁体20に係止してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに電気ヒーターを備えた炉に関する。さらに詳しくは、スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに電気ヒーターを備えた炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如き電気ヒーターとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この電気ヒーターは、発熱体端部を屈曲させると共にその屈曲部を碍子の第一、第二分割体で挟持させて発熱体を支持している。しかし、発熱に伴う変形による幅方向への抜けを防止するために、第一、第二分割体に突状の係止部や押さえ部を形成しなければならず、構造が複雑となっていた。しかも、屈曲部を係止部で係止させると共に、屈曲部近傍を押さえ部で押さえなければならず、発熱体の取付作業も煩雑なものとなっていた。
【0003】
また、発熱体の支持方法として、例えば特許文献2,3の如きものが知られている。特許文献2の抵抗発熱体は上側に凸の半円筒状を呈し、その頂部を支持すると共に発熱体端部を接続部を介して焼結装置に固定している。そのため、接続部により発熱体の変形の影響を吸収するため、構造が複雑となっていた。
【0004】
特許文献3の熱処理炉では、半円形の底部と直線上の側部を連結板で連結した帯状の複数の発熱体を各側部をリード部に固定するため、発熱体の形成及び取付作業が煩雑となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−359061号公報
【特許文献2】実開昭62−116484号公報
【特許文献3】特開2003−240442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、発熱時の軟化によっても基本形状を維持でき、しかも取付の容易な電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに電気ヒーターを備えた炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気ヒーターの特徴は、スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構成において、前記発熱体は前記一対の幅方向端部の間で下側へ凸となる円弧状を呈し、前記幅方向端部を略鉛直方向に向かって前記絶縁体に形成した溝に挿入し、前記溝内で前記幅方向端部を前記絶縁体に係止したことにある。
【0008】
上記構成によれば、発熱体は一対の幅方向端部の間で下側へ凸となる円弧状に形成しているので、発熱体が発熱により軟化しても、発熱体の自重が鉛直方向Zに作用し、その変形を鉛直方向へ誘導することができ、カテナリー曲線の如き形状となる。この形状は力学的に安定するので、軟化しても発熱体の形状は維持されると共に脱落が防止される。しかも、発熱体の幅方向端部を略鉛直方向に向かって絶縁体に形成した溝に挿入すればよく、取付作業が容易となる。
【0009】
前記幅方向端部に貫通孔を形成し、この貫通孔に絶縁体を挿入することで前記係止を行ってもよい。また、前記幅方向端部を屈曲させ、前記係止を行うようにしてもよい。これらの態様により、幅方向端部を確実に溝内で係止でき、発熱体の脱落を防止することができる。前記絶縁体の一部を碍子で構成し、この碍子に前記溝を形成しても構わない。
【0010】
また、前記溝の開口部に前記幅方向端部の屈曲部を係止する係止部を設けても構わない。係る場合、前記溝に前記スリットに直交する長手方向に沿って前記幅方向端部を挿入することで、容易に発熱体を取り付けることができる。
【0011】
前記スリットに直交する長手方向端部に位置する電流路端部の前記幅方向の中間部にリード部材の端部を固定すると共に延長部を介して外部に延長させるとよい。延長部を介してリード部材を外部に延長することで、リード部材による発熱体の局所的な温度低下を防止でき、均一な加熱が可能となる。しかも、この延長部により、リード部材は発熱体の熱変形の動きに追従可能となり、発熱体の偏った熱変形による脱落を防止することができる。上記いずれかに記載の電気ヒーターは、これを備えた炉として実施することができる。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気ヒーターの製造方法の特徴は、上記いずれかに記載の電気ヒーターの製造方法において、スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構造であり、前記幅方向端部に貫通孔を形成してあり、前記幅方向端部を略鉛直方向に向かって前記絶縁体に形成した溝に挿入し、前記溝に液状のセラミックスを充填し、前記液状のセラミックスを硬化させることで前記溝内で前記幅方向端部を前記絶縁体に係止させることにある。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る他の電気ヒーターの製造方法の特徴は、上記いずれかに記載の電気ヒーターの製造方法において、スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構造であり、前記溝は碍子により構成され、前記幅方向端部を略鉛直方向に向かって配向すると共に前記幅方向端部を屈曲させてあり、前記溝に前記幅方向端部を挿入して前記溝内で前記幅方向端部を前記絶縁体に係止させることにある。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明に係る電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに電気ヒーターを備えた炉の特徴によれば、発熱時の軟化によっても基本形状を維持でき、しかも発熱体の取付を容易に行うことが可能となった。
【0015】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係る電気ヒーターの縦断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】(a)は湾曲前の薄板部材の平面図、(b)は発熱体の幅方向端部の部分拡大側面図である。
【図4】絶縁体近傍の部分拡大断面図である。
【図5】(a)は本発明の第二実施形態に係る電気ヒーターの図4相当図、(b)は(a)における発熱体の幅方向端部の部分拡大側面図である。
【図6】第二実施形態の改変例を示す図4相当図である。
【図7】(a)は本発明の第三実施形態に係る電気ヒーターの縦断面図、(b)は発熱体の幅方向端部近傍の部分拡大断面図である。
【図8】第三実施形態の改変例を示す図であり、(a)(b)は第一改変例を示す図5相当図、(c)(d)は他の改変例を示す発熱体の幅方向端部近傍の部分拡大断面図である。
【図9】本発明に係る他の実施形態を示す図4相当図である。
【図10】(a)(b)は本発明に係るさらに他の実施形態を示すリード部材近傍の拡大正面図、(c)は比較例のリード部材近傍の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図1〜4を参照しながら、本発明の第一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、本発明に係る電気ヒーター1は、主として炉の天井に設置されるものであって、炉内部を加熱する発熱体10と、この発熱体10を支持する絶縁体20とを備えている。発熱体10には、この発熱体10に電力を供給するリード部材30が接続されている。絶縁体20は、取付部材40を介して鋼材により構成されるフレーム2に取り付けられる。このフレーム2は、チャンネル状の縦フレーム3と、縦フレーム3同士を繋ぐ横フレーム4とを備えている。縦フレーム3の上側開口部は間欠的に補助材3aにより固定され、変形が防止されている。
【0018】
図1〜3に示すように、発熱体10は板状に且つ矩形状に形成され、複数のスリット11を幅方向Xから交互に切り込むことで、蛇行状の電流路12を有するように構成されている。この発熱体10のうちスリット11に沿う幅方向Xの一対の幅方向端部13,13には、適宜間隔をおいて複数の略円形の貫通孔14が形成されている。図1に示すように、発熱体10における一対の幅方向端部13,13の間は、スリット11に直交する長手方向Y視でなだらかな円弧状(アーチ状)をなすように形成しており、下側(炉内部側)に凸状を呈している。この発熱体10は、発熱により軟化すると共に熱膨張すると、発熱体10の自重が鉛直方向Zに作用し、カテナリー曲線の如き形状となる。この形状は力学的に安定しており、軟化しても発熱体10の形状は維持されると共に脱落が防止される。
【0019】
図3に示すように、発熱体10の製作は、まず、適宜大きさに切断した薄板部材10’に上述のスリット11を形成すると共に幅方向Xの一対の端部13’,13’に貫通孔14を形成する。そして、その薄板部材10’を幅方向Xに沿うように円弧状に形成し、端部13’を折曲部15で薄板部材10’のなす円弧の内側へ折り曲げて、幅方向端部13を形成する。ここで、円弧の内側へ折り曲げるとは、両方の幅方向端部13,13を略鉛直方向Zに沿うように互いに平行に配向させることをいう。このように構成することで、発熱体に加熱による軟化が生じても、発熱体10は幅方向端部13,13で鉛直に支持されており、支持部分に不要な応力は発生しない。
【0020】
絶縁体20は、大略、一対の碍子21,21と、この一対の碍子21,21に発熱体10の貫通孔14に貫通させる碍管22とを備え、一対の碍子21,21により発熱体10の幅方向端部13を挿入する溝23が鉛直方向Zに向かって形成される。一対の碍子21,21及び碍管22は、アルミナ質、アルミナシリカ質、ムライト質、ジルコン質又はコージライトを主体とするいわゆるセラミックス材料や窒化珪素質材料により構成され、発熱体10とフレーム2とを電気的に絶縁する。
【0021】
図4に示すように、各碍子21には凹部24が形成されており、この凹部24に碍管22を貫通させる貫通孔25が形成されている。一対の碍子21,21を対向させることで凹部24,24により溝23が形成される。また、碍子21には、チャンネル部材41に固定するボルト、ナット等の固定具42を取り付ける取付孔26が形成されている。このチャンネル部材41は、ビスや溶接等の取付手段によりフレーム2に取り付けられている。
【0022】
図1,2に示すように、発熱体10には、スリット11に直交する長手方向Yの端部に位置する電流路端部12a,12bの中間部にリード部材30の端部31が溶接により固定される。このリード部材30は、端部31から幅方向Xへ延びる延長部32を備え、この延長部32は発熱体10とほぼ同様の薄板部材からなる。この延長部32は発熱体10に沿うように配置されており、発熱体10に固定されていない。そして、延長部32は、発熱体10の幅方向端部13近傍で鉛直方向Zに向かう鉛直部33を介して外部へ延長されている。
【0023】
通常、リード部材は、リード部材自体の発熱を防止するために肉厚の部材により構成されており、剛性を有し且つ発熱体10に比べ低温となる。しかも、リード部材は外部と接続されるので、発熱体10の熱を外部へ伝導する。そのため、図10(c)に示すように、幅方向端部13近傍においてリード部材30’を固定すると共に屈曲させて鉛直部33’を介して外部へ延長すると、鉛直部33’が発熱体10の熱を外部に伝導し局所的に低温となる。しかも、リード部材30’の剛性により、発熱体10の鉛直方向Zへの熱変形の動きが制限される。これらにより、発熱体10の均一な加熱が困難となり、また発熱体10全体において熱変形のバランスが崩れてしまう。
【0024】
一方、図1,2に示す如き本実施形態では、延長部32を薄板部材により形成することで、発熱体10の局所的な温度低下を抑制することができる。しかも、延長部32は発熱体10に沿うだけで固定されておらず、発熱体10の略中央部から幅方向端部13近傍まで延長しているので、リード部材30により発熱体10の熱変形の動きが制限されることもない。よって、発熱体10全体で熱変形のバランスが保たれることとなり、結果として発熱体10の脱落も防止される。
【0025】
ここで、本実施形態における電気ヒーター1の組立製造手順について説明する。
まず、一対の碍子21,21を対向させて発熱体10の幅方向端部13を挿入する溝23を形成する。この溝23に発熱体10の幅方向端部13を下方から挿入する。挿入後、発熱体10の貫通孔14及び一対の碍子21,21の貫通孔25,25に碍管22を挿入して連結させる。これら連結された部材をフレーム2に予め取り付けたチャンネル部材41に嵌め込み、固定具42によりチャンネル部材41で挟持させるように碍子21,21を固定する。これにより、幅方向端部13が溝23内で碍管22に係止され、発熱体10は絶縁体20に吊り下げられる。
【0026】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において、上記第一実施形態と同様の部材には同一の符号を附してあり、主として上記第一実施形態と異なる部分について説明する。
【0027】
図5(a)(b)に示す第二実施形態では、上記第一実施形態における貫通孔14に代えて、発熱体10の幅方向端部13の先端部分を幅方向端部13に対し略垂直に屈曲させた屈曲部16を形成している。この屈曲部16の屈曲加工は、上述の薄板部材10’を円弧状に湾曲させた後に行い、その屈曲部16の形成後に幅方向端部13を形成すればよい。また、絶縁体20には、形状の異なる第一、第二碍子21a,21bを用いている。第二碍子21bは一端に突状の係止部27を設けている。第一碍子21aの凹部24aに幅方向端部13を挿入、位置させ、第二碍子21bを第一碍子21aに対向させて固定具42によりチャンネル部材41に取り付ける。これにより、幅方向端部13の屈曲部16が係止部27に係止され、発熱体10の脱落が防止される。このように、一対の碍子21a,21bを対向させて固定すればよく、発熱体10の取付が容易となる。
【0028】
図6(a)に示す第二実施形態の第一改変例では、上記各実施形態と異なり、取付部材40を用いず碍子21cをフレーム2に固定している。この碍子21cには、幅方向端部13を挿入する溝23cと、固定具を取り付ける取付孔28とが形成されている。また、図6(b)に示す第二改変例では、略中央に取付孔28を設けると共に、一対の溝23d,23dを形成している。この碍子21dにより、幅方向Xに沿って複数の発熱体を設置することが可能となる。これらの改変例では、碍子21c,21dとは別体の係止部27を溝21c,21dの開口部に設けることで、溝23c,23d内部で幅方向端部13に形成した屈曲部16を係止させている。
【0029】
図7に示す第三実施形態に係る電気ヒーター1は、上記第一、第二実施形態と異なり、絶縁体としてのセラミックボード50を備える。このセラミックボード50には、発熱体10の幅方向端部13を挿入する溝51が鉛直方向Zに向かって形成されている。本実施形態では、発熱体10の幅方向端部13を溝51に挿入すると共に液状のセラミックス52を注入し硬化させることで、発熱体10の幅方向端部13を溝51内で接着させて係止させる。
【0030】
図7(b)に示すように、溝51に注入された液状セラミックス52は、発熱体10の貫通孔14内部にまで入り込んで硬化する。なお、同図は、説明の便宜上、液状セラミックス52全体を示すハッチングを省略して記載してある。
ここで、発熱体10の貫通孔14近傍においても熱変形が生じる。貫通孔14の縁部14x近傍の領域52xにおける液状セラミックスは縁部14xに接着するため、その熱変形の影響を受けやすく剥離しやすい。一方、貫通孔14の中心軸Mの周囲の領域52yにおける液状セラミックスは、発熱体10と接触しないので、貫通孔14近傍における熱変形の影響を受けにくい。よって、仮に、液状セラミックス52が縁部14xで剥離したとしても、貫通孔14の中心軸M近傍の液状セラミックス52は連通しているので、発熱体10の脱落が防止される。なお、貫通孔14に絶縁体としてのピンを挿入した状態で液状セラミックス52を注入し硬化させてもよい。このピンにより発熱体10の支持強度をさらに向上させることができる。
【0031】
図8(a)(b)に示す第三実施形態の第一改変例では、幅方向端部13の一部を打ち抜き半曲げ加工して打抜部17を形成すると共に貫通孔14aを形成している。また、図8(c)に示す第二改変例では、上記第二実施形態と同様に、屈曲部16を形成した幅方向端部13を挿入し、溝51内で液状セラミックス52により係止させる。さらに、図8(d)に示す第三改変例では、セラミックボード50の溝51に絶縁体としての碍子53を取り付けている。この碍子53には溝54が形成されており、この溝54に幅方向端部13を挿入し、液状セラミックス52を硬化させて発熱体10を係止させる。
【0032】
最後に、本発明のさらに他の実施形態の可能性について列挙する。
例えば、図9(a)に示すように、溝23e及び取付部29を形成した碍子21eを用いても構わない。係る場合、碍子21eを取付部29で固定具42によりフレーム2に取り付けた後、溝23eに幅方向端部13を挿入し、上述の液状セラミックス52を充填し硬化させることにより溝23e内部で幅方向端部13を係止させる。また、図9(b)に示すように、鉛直方向Zに延びる溝23fを形成した略矩形の碍子21fを用いることも可能である。係る場合、フレーム2に取り付けたチャンネル部材41に固定具42により碍子21fを取り付けた後、溝23fに幅方向端部13を挿入して、液状セラミックス52を充填して硬化させることにより溝23f内部で発熱体10を係止させる。
【0033】
さらに、図9(c)に示すように、セラミックボード50の溝51に鉛直方向Zに向かって形成した溝54を有する碍子53を挿入して取り付けると共に、その溝54に幅方向端部13を挿入し、その後、係止片55を取り付けて、屈曲部16を係止片55に係止させても構わない。なお、この係止片55を碍子53と一体に形成しても構わない。係る場合、発熱体10の幅方向端部13を長手方向Yに沿って溝54に挿入して、その幅方向端部13を溝53内で係止片55に係止させる。このように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な改変が可能であり、上記各実施形態を組み合わせて実施することも可能である。
【0034】
上記各実施形態において、リード部材30の端部31をスリット11に直交する長手方向Yの端部に位置する電流路端部12a,12bの略中央部に取り付けた。しかし、リード部材30の取付は上記態様に限られるものではない。例えば、図10(a)に示すように、幅方向端部13近傍にリード部材30の端部31を固定すると共に、延長部32aをセラミックボード50に沿うように湾曲させて形成しても構わない。また、図10(b)に示すように、リード部材30の延長部32bと鉛直部33との間に、例えばニクロムより線よりなる接続部34を介在させることも可能である。接続部34をニクロムより線等の柔軟性を有する部材で構成することで、発熱体10の鉛直方向Zへの熱変形の動きに追従させることができる。
【0035】
また、上記各実施形態において、主として炉の天井に設置する電気ヒーターについて説明した。しかし、炉の天井に限らず、壁部に設置することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る電気ヒーターは、例えばガラス、セラミック、金属等の被加熱物の熱処理用のヒーターとして利用することができる。また、反応炉、拡散炉にも適用可能である。さらに、電気ヒーター及び電気ヒーターの製造方法並びに電気ヒーターを備えた炉は、例えば半導体ウエハの半導体製造装置やガラス基板等を加熱処理する基板処理装置等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1,1a:電気ヒーター、2:フレーム、3:縦フレーム、4:横フレーム、
10:発熱体、10’:薄板部材、11:スリット、12:電流路、12a,12b:電流路端部、13:幅方向端部、13’:端部、14:貫通孔、15:折曲部、16:屈曲部、17:打抜部、20:絶縁体、21,21a〜g:碍子(絶縁体)、22:碍管(絶縁体)、23,23a〜g:溝、24,24a:凹部、25:貫通孔、26,26a,26b,26f:取付孔、27:係止片(絶縁体)、28:取付孔、29:取付部、30,30a,30b:リード部材、31:端部、32,32a,32b:延長部、33:鉛直部、34:接続部、40:取付部材、41:チャンネル部材、42:固定具、50,50a:セラミックボード(絶縁体)、51:溝、52:液状セラミックス、53,53a,53b:碍子(絶縁体)、54,54a:溝、55:係止片(絶縁体)、60:支持碍子、M:中心軸、X:幅方向、Y:長手方向、Z:鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、
この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される電気ヒーターであって、
前記発熱体は前記一対の幅方向端部の間で下側へ凸となる円弧状を呈し、
前記幅方向端部を略鉛直方向に向かって前記絶縁体に形成した溝に挿入し、前記溝内で前記幅方向端部を前記絶縁体に係止してある電気ヒーター。
【請求項2】
前記幅方向端部に貫通孔を形成し、この貫通孔に絶縁体を挿入することで前記係止を行う請求項1記載の電気ヒーター。
【請求項3】
前記幅方向端部を屈曲させ、前記係止を行う請求項1記載の電気ヒーター。
【請求項4】
前記絶縁体の一部を碍子で構成し、この碍子に前記溝を形成してある請求項1〜3のいずれかに記載の電気ヒーター。
【請求項5】
前記溝の開口部に前記幅方向端部の屈曲部を係止する係止部を設ける請求項3又は4記載の電気ヒーター。
【請求項6】
前記溝に対し、前記スリットに直交する長手方向に沿って前記発熱体の前記幅方向端部を挿入する請求項5記載の電気ヒーター。
【請求項7】
前記スリットに直交する長手方向端部に位置する電流路端部の前記幅方向の中間部にリード部材の端部を固定すると共に延長部を介して外部に延長させる請求項1〜6のいずれかに記載の電気ヒーター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電気ヒーターの製造方法であって、
スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、
この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構造であり、
前記幅方向端部に貫通孔を形成してあり、
前記幅方向端部を略鉛直方向に向かって前記絶縁体に形成した溝に挿入し、前記溝に液状のセラミックスを充填し、
前記液状のセラミックスを硬化させることで前記溝内で前記幅方向端部を前記絶縁体に係止させる電気ヒーターの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の電気ヒーターの製造方法であって、
スリットを形成することにより電流路を形成した板状の発熱体と、この発熱体を支持する絶縁体とを備え、
この発熱体のうち前記スリットに沿う幅方向に位置する一対の幅方向端部で前記絶縁体に支持される構造であり、
前記溝は碍子により構成され、
前記幅方向端部を略鉛直方向に向かって配向すると共に前記幅方向端部を屈曲させてあり、
前記溝に前記幅方向端部を挿入して前記溝内で前記幅方向端部を前記絶縁体に係止させる電気ヒーターの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の電気ヒーターを備えた炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−119132(P2011−119132A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275943(P2009−275943)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(393000571)貞徳舎株式会社 (18)
【Fターム(参考)】