説明

電気信号検出端子、およびそれを用いた電力測定装置

【課題】
本発明の目的は、より簡易な構造を有する非接触型の電気信号検出端子、および該電気信号検出端子を含む電力測定装置を提供することにある。
【解決手段】
電力測定に際し、合体させることにより、単芯被覆電線を包囲するクランプ領域を画定する一対の磁気コアと、前記一対の磁気コアの一部に巻回されるコイルと、前記一対の磁気コアおよび前記コイルを支持し、該一対の磁気コアが合体した状態を保持できるコアケースと、前記クランプ領域に配設される電極と、前記クランプ領域に配設され、前記一対の磁気コアにより包囲される電線を押圧して前記電極に圧接させる弾性部材と、を含む電気信号検出端子を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単芯被覆電線の電圧、およびその電線に流れる電流を検出しうる電気信号検出端子、およびその電気信号検出端子を用いてその電線に接続された負荷の消費電力を算出する電力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、単芯被覆電線の電圧を比接触で検出する電圧測定プローブと、その電線に流れる電流を検出する電流測定プローブと、検出された電圧および電流に基づいて、その電線に接続された負荷の消費電力を算出する本体部と、を備えた電力測定装置が知られている(たとえば特許文献1)。また、このような電力測定装置のプローブ(電気信号検出端子)として、固定センサアームと、可動センサアームと、固定センサアームと可動センサアームとによってクランプされた測定対象電線を固定センサアームに押さえつける押さえアームと、を備えるプローブが知られている(たとえば特許文献2)。固定センサアームは、一端部が支持体に固定されると共に検出電極が内部に配設される。可動センサアームは、一端部が支持体に回動自在に取り付けられ、他端部が固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成される。固定センサアームおよび可動センサアームは、磁気コアを含み、測定対象電線をクランプすることによって閉磁路を形成する。押さえアームは、一端部が可動センサアームの一端部と共に支持体に回動自在に取り付けられて固定センサアームと可動センサアームとの間に配設され、クランプされた測定対象電線を固定センサアームにおける検出電極の配設位置の近傍に押し付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2006−343109号公報
【特許文献2】特開第2009−041925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなプローブを用いることにより、測定対象電線の電圧を非接触で測定するときに重要となる測定対象電線と検出電極との間に形成される静電容量の容量値の変動を低減することが可能となる。ただし、より簡易な構造を有する非接触型のプローブがあれば、なお好ましいであろう。
【0005】
本発明の目的は、より簡易な構造を有する非接触型の電気信号検出端子、および該電気信号検出端子を含む電力測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、合体させることにより、単芯被覆電線を包囲するクランプ領域を画定する一対の磁気コアと、前記一対の磁気コアの一部に巻回されるコイルと、前記一対の磁気コアおよび前記コイルを支持し、該一対の磁気コアが合体した状態を保持できるコアケースと、前記クランプ領域に配設される電極と、前記クランプ領域に配設され、前記一対の磁気コアにより包囲される電線を押圧して前記電極に圧接させる弾性部材と、を含む電気信号検出端子、が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によれば、単芯被覆電線の電圧、および該電線に流れる電流を検出する電気信号検出端子と、該電線に接続された負荷が消費する電力を算出する電力測定ユニットと、を備える電力測定装置であって、前記電気信号検出端子は、合体させることにより、前記電線を包囲するクランプ領域を画定する一対の磁気コアと、前記一対の磁気コアの一部に巻回されるコイルと、前記一対の磁気コアおよび前記コイルを支持し、該一対の磁気コアが合体した状態を保持できるコアケースと、前記クランプ領域に配設される電極と、前記クランプ領域に配設され、前記一対の磁気コアにより包囲される前記電線を押圧して前記電極に圧接させる弾性部材と、を含み、前記電力測定ユニットは、前記電極により検出された電圧対応信号、および前記コイルにより検出された電流対応信号に基づいて、前記一対の磁気コアにクランプされる前記電線に接続された負荷が消費する電力を算出する制御部と、を含む電力測定装置、が提供される。
【発明の効果】
【0008】
より容易に信頼性の高い電力測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1Aおよび図1Bは、第1の実施例による電気信号検出端子を示す斜視図である。
【図2】図2Aおよび図2Bは、上側ハウジング機構の底面、および下側ハウジング機構の上面を示すXY平面図である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、第1の実施例の電気信号検出端子により測定対象電線をクランプする様子を示すXZ側面図である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、第1の電気信号検出端子により比較的太い径を有する測定対象電線をクランプする様子を示すXZ側面図およびYZ断面図である。
【図5】図5A〜図5Cは、第2の実施例による電気信号検出端子のバネ機構を示すXZ断面図である。
【図6】図6A〜6Cは、第3の実施例による電気信号検出端子の上側ハウジング機構の下面を示す平面図、および電気信号検出端子により比較的太い径を有する測定対象電線をクランプする様子を示すYZ断面図である。
【図7】図7Aおよび7Bは、第4の実施例による電気信号検出端子により比較的太い径を有する測定対象電線をクランプする様子を示すYZ断面図である。
【図8】図8は、実施例による電力測定装置に用いられる電気信号検出端子を示すXZ側面図である。
【図9】図9は、実施例による電力測定装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、本体ユニットの電圧測定部の構成例を示すブロック図である。
【図11】図11は、本体ユニットの電流測定部の構成例を示すブロック図である。
【図12】図12A〜12Cは、実施例による電力測定装置により測定された押圧信号、電流実効値および電圧実効値の時間変化を概略的に示すグラフである。
【図13】図13は、実施例による電力測定装置により測定された電圧波形および電流波形の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜図2を参照して、実施例による電気信号検出端子の基本構成を説明する。
【0011】
図1Aおよび図1Bは、第1の実施例による電気信号検出端子を示す斜視図である。電気信号検出端子10は、図1Aに示すように、合体することにより単芯被覆電線40を包囲するクランプ領域11を画定する上側磁気コア12aおよび下側磁気コア12bと、下側磁気コア12bの一部に巻回されるコイル13と、を含む。なお、コイル13は、上側磁気コア12aに巻回されてもかまわない。一対の磁気コア12a,12bは、高透磁率の磁性材料であるフェライトや、パーマロイ等で形成され、たとえば、半環状の形状を有する。コイル13は、たとえば、絶縁体により被覆された銅線により構成される。
【0012】
一対の磁気コア12a,12bおよびコイル13は、図1Bに示すように、コアケース20に収容される。コアケース20は、上側ハウジング機構21a、および下側ハウジング機構21bを含む。上側ハウジング機構21aは上側磁気コア12aを包持し、下側ハウジング機構21bは下側磁気コア12b(図1A)およびコイル13(図1A)を包持する。
【0013】
コアケース20は、さらに、上下ハウジング機構21a,21bの側面に配設される結合機構、つまりヒンジ機構22(図2A,図2B)およびロック機構23と、上側ハウジング機構21aの上面に配設されるバネ機構24と、を具備する。ヒンジ機構22は、ハウジング機構21a,21bの側面に配設され、ハウジング機構21a,21bを開閉自在に連結する。ヒンジ機構22は、たとえば図1Bに示すブロック矢印の方向に、上側ハウジング機構21aを可動しうる。ロック機構23は、たとえば、上側ハウジング機構21aのヒンジ機構22と対向する側面に設けられた係止爪23a(図2A,図2B)、および下側ハウジング機構21bのヒンジ機構22と対向する側面に設けられた係止フック23b(図2A,図2B)からなる。ロック機構23は、ハウジング機構21a,21bの閉状態を保持しうる。ヒンジ機構22およびロック機構23を含む結合機構は、ハウジング機構21a,21bに包持される一対の磁気コア12a,12bが合体した状態を保持できる。バネ機構24は、たとえば、ハウジング機構21aと一体的に形成された板バネからなり、上側ハウジング機構21aに包持される磁気コア12aを、一対の磁気コア12a,12bが合体する方向に付勢する。コアケース20は、たとえばプラスチック等の樹脂で一体的に成形される。
【0014】
電気信号検出端子10は、さらに、クランプ領域11に、主面が磁気コア12a,12bが合体する方向に直交するよう配設される電極14と、クランプ領域11に電極14の主面と対向するように配設される弾性部材15を含む。電極14は、電導性部材、たとえば銅箔テープにより構成され、弾性部材15は、体積可変な非磁性部材、たとえばスポンジゴム等により構成される。クランプ領域11における電極14および弾性部材15の配設状況を、図2を参照して、さらに詳しく説明する。
【0015】
なお、一対の磁気コア12a,12bが合体する方向をZ方向、一対の磁気コア12a,12bが画定するクランプ領域11を測定対象電線40が挿通する方向をY方向、それらの方向とそれぞれ直交する方向をX方向、とするXYZ直交座標系を定義する。
【0016】
図2Aおよび図2Bは、上側ハウジング機構21aの底面、および下側ハウジング機構21bの上面を示すXY平面図である。上側ハウジング機構21aの底面は、図2Aに示すように、押え爪25により支持された上側磁気コア12aが露出し、上側磁気コア12aの凹部には両面テープ等により固定された弾性部材15が配設されている。下側ハウジング機構21bの上面は、図2Bに示すように、下側磁気コア12bが露出し、その凹部を埋める電極支持部26上に電極14が配設されている。電極支持部26およびそれに支持される電極14は、測定対象電線40(図1A)を安定に収容するよう窪み形状を有している。図2Aに示す上側磁気コア12aの合体面12aI,12aIIと、図2Bに示す下側磁気コア12bの合体面12bI,12bIIと、がそれぞれ接合して測定対象電線40を包囲するクランプ領域11(図1A)を画定する。測定対象電線40をクランプする際、弾性部材15は、クランプされる測定対象電線40(図1A)を押圧し、その形状を変化させて測定対象電線40の反発圧を吸収しながら、測定対象電線40を電極14に圧接させる。その様子を、図3を参照して、さらに詳しく説明する。
【0017】
図3Aおよび図3Bは、第1の実施例の電気信号検出端子により測定対象電線をクランプする様子を示すXZ側面図である。なお、以降、便宜的に、コアケースに設けられる結合機構(ヒンジ機構およびロック機構)の図示を省略する。
【0018】
まず、図3Aに示すように、測定対象電線40を電極14上に配置して、一対の磁気コア12a,12bを合体させようとする場合を想定する。上側磁気コア12aは、上側ハウジング機構21aに設けられる押え爪25(図2A)によって、ハウジング機構21aから脱落しないよう支持されるとともに、その一端側および他端側の先端部がハウジング機構21aから突出するよう支持される。このように、磁気コア12aの先端部をハウジング機構21aから突出させることで、一対の磁気コア12a,12bの合体面を確実に接触させることが可能である。この際、ハウジング機構21aの上面に設けられるバネ機構24は、上側磁気コア12aに当接せずに定常状態を保持している。
【0019】
次に、図3Bに示すように、一対の磁気コア12a,12bを合体させた場合を想定する。一対の磁気コア12a,12b各々の一端部および他端部の合体面は相互に接触し、その状態が保持される。この際、上側ハウジング機構21aの上面に設けられるバネ機構24は、上側磁気コア12aを、一対の磁気コア12a,12bが合体する方向(Z軸負方向)に付勢する。弾性部材15は、測定対象電線40を押圧し、その形状を変化させて測定対象電線40の反発圧を吸収しながら、測定対象電線40を電極14に圧接させる。
【0020】
このような簡易な構成を有する電気信号検出端子を用いることにより、そのクランプ領域に配設される電極に、クランプされる測定対象電線を容易に接触させることが可能となる。これにより、測定対象電線の電圧を非接触で測定する際に重要となる、測定対象電線に含まれる芯線と電極との間に形成されるコンデンサの容量値の変動を低減させることが可能となる。
【0021】
なお、一対の磁気コア12a,12bは、合体して閉磁路を形成し、測定対象電線40に流れる電流によって生じる磁束を効率的にコイル13に誘導する。磁気コア12a,12bの一部に巻回されるコイル13は、環状のコイル内部を貫通する磁束に応じた電圧を誘起する。この電圧信号は、測定対象電線40に流れる電流に対応した信号SI1,SI2として、後段の測定装置に出力される。また、測定対象電線40と圧接する電極14は、測定対象電線40の芯線と併せてコンデンサを構成し、電荷供給源(たとえば一端が接地されたコンデンサ)と接続することにより、測定対象電線の電圧に対応した電荷を充放電しうる。この電荷の充放電信号(つまり電圧信号)は、測定対象電線40の電圧に対応した信号SVとして、後段の測定装置に出力される。
【0022】
図4Aは、第1の電気信号検出端子により比較的太い径を有する測定対象電線をクランプする様子を示すXZ側面図である。また、図4Bは、図4AにおけるIVB−IVB断面を示す。一般的に用いられる単芯被覆電線の外径は、たとえば、定格10A電線で約2mm程度であり、定格500A電線で約25mm程度である。一対の磁気コアを合体させた際の弾性部材と電極との距離が、比較的細い電線に対応した電気信号検出端子を用いて、比較的太い電線をクランプしようとする場合を想定する。このような場合、図4Aおよび図4Bに示すように、弾性部材15が電線40の反発圧を吸収できる範囲を超えてしまい、磁気コア12a,12bの間に乖離(ギャップG)が発生する可能性がある。磁気コア12a,12b間にギャップGが存在する場合、磁気コア12a,12bが形成する磁路の磁気抵抗が増加し、コイル13は電線40に流れる電流を精度よく検出しえなくなる。
【0023】
このような場合には、一対の磁気コアの一方に当接する先端部と、ハウジング機構と係合する根元部と、で弾性係数が異なるバネ機構を用いることが好ましい。弾性部材を支持して、電線の押圧に伴う反発圧の、一対の磁気コアの一方への伝播を抑制する弾性部材支持部を具備するハウジング機構を用いてもよい。または、クランプ領域を挿通する部分を有し、常圧状態において、位置により厚みが異なる形状を有する弾性部材を用いてもよい。
【0024】
図5A〜図5Cは、第2の実施例による電気信号検出端子のバネ機構を示すXZ断面図である。本実施例において、コアケース20(図1B)に設けられるバネ機構24は、図5Aに示すように、上側磁気コア12aの上側面に当接する先端部と、ハウジング機構21aと係合する根元部と、で厚みが異なる。つまり、第1の弾性定数を有する先端部と、第1の弾性定数よりも大きい第2の弾性定数を有する根元部と、を含む。バネ機構24は、たとえば図5Bに示すように、コアケース20のロック機構23(図1B)により、ハウジング機構21a,21bを閉状態にロックするまでは、バネ機構24の先端部による相対的に弱い力で上側磁気コア12aを付勢する。比較的太い電線40をクランプし、上側磁気コア12aをさらにZ軸上方へ移動させようとする反発圧が作用する場合、バネ機構24の根元部による相対的に強い力で磁気コア12aを付勢する。
【0025】
このようなバネ機構を設けることにより、比較的太い電線をクランプした場合に生じうる一対の磁気コア間のギャップの発生を抑制し、電線に流れる電流を精度よく検出することが可能となる。なお、バネ機構24は、図5Cに示すように、先端部から根元部まで連続的に厚みが異なる形状でもかまわない。
【0026】
図6A〜6Cは、第3の実施例による電気信号検出端子の上側ハウジング機構21aの底面を示す平面図、およびその電気信号検出端子により比較的太い径を有する測定対象電線をクランプする一部の様子を示すYZ断面図である。本実施例において、上側ハウジング機構21aは、図6Aに示す底面図および図6Bに示す断面図のように、凹状の上側磁気コア12aの内側底部と弾性部材15との間に、上側ハウジング機構21aの両側端部を渡すように配設される弾性部材支持部27を具備する。弾性部材支持部27は、脱落しないよう磁気コア12aを支持するとともに、両面テープ等を介して弾性部材15を固定する。弾性部材支持部27は、弾性部材15により比較的太い電線40を電極14に圧接させる際、その圧接に伴う電線40の反発圧を上側ハウジング機構21aの両側端部にバイパスし、反発圧の上側磁気コア12aへの伝播を抑制する。
【0027】
このような弾性部材支持部を設けることにより、比較的太い電線をクランプした場合に生じうる一対の磁気コア間のギャップの発生を抑制し、電線に流れる電流を精度よく検出することが可能となる。なお、弾性部材支持部27は、図6Cに示す断面図ように、上側ハウジング機構21aとは別体とし、その両側端部ないし押え爪25(図2A)に係合するよう配設してもかまわない。
【0028】
図7Aおよび7Bは、第4の実施例による電気信号検出端子により比較的太い径を有する測定対象電線をクランプする一部の様子を示すYZ断面図である。本実施例において、弾性部材15は、図7Aに示すように、凹状の上側磁気コア12aの底辺部分を包囲する円筒形状を有し、その周縁部の厚みが位置により異なる形状を有する。なお、上側ハウジング機構21aに弾性部材支持部27を設けた場合、この弾性部材支持部27は弾性部材15に対応する形状が好ましい。このような形状の弾性部材15を用いることにより、クランプする電線40の太さに応じて、弾性部材15を回転させて、電線40が電極14に適度に圧接するよう弾性部材15の厚さを調整することが可能となる。また、図7Bに示すように、弾性部材15を三角形状とし、その形状に対応した弾性部材支持部27を設けることにより、弾性部材15をスライドさせて、電線40が電極14に適度に圧接するよう弾性部材15の厚さを調整することも可能である。
【0029】
このような形状の弾性部材を用いることにより、比較的太い電線をクランプした場合に生じうる一対の磁気コア間のギャップの発生を抑制し、電線に流れる電流を精度よく検出することが可能となる。なお、弾性部材は、クランプ領域を挿通して延在する折り延し可能な構造であってもかまわないし、貼り剥し可能な多層構造であってもかまわない。このような弾性部材を用いても、電線が電極に適度に圧接するよう弾性部材の厚さを調整することが可能である。
【0030】
第1〜4の実施例で示したような簡易な構成を有する電気信号検出端子を用いることにより、その電気信号検出端子にクランプされる測定対象電線の電圧およびその電線に流れる電流を、精度よく検出することが可能となる。ただし、一対の磁気コアが確実に合体していることを視認することは、その構造上困難であろう。また、クランプされる電線が電極に確実に接触していることを視認することも、その構造上困難であろう。一対の磁気コアが合体していない場合、または、クランプされる電線が電極に接触していない場合、電線に接続される負荷が消費する電力を精度よく測定することは困難である。
【0031】
このような場合、測定を実施するオペレータは、一対の磁気コアをその合体方向に押圧しながら、検出される電圧値および電流値をモニターし、電気信号検出端子のクランプ状態を確認することが好ましいであろう。だたし、このようなクランプ状態の確認を、自動的に判定する手段があれば、なお好ましいであろう。このような判定は、クランプ状態の確認にかかる押圧を検出する手段を含む電気信号検出端子と、その押圧検出、および電圧・電流信号の変化に基づいて、電気信号検出端子のクランプ状態の良否を自動的に判定する本体ユニットと、を含む電力測定装置を用いることで実現することが可能であろう。以下、図8〜12を参照して、電気信号検出端子のクランプ状態の良否を自動的に判定する電力測定装置について説明する。
【0032】
図8は、実施例による電力測定装置に用いられる電気信号検出端子を示すXZ側面図である。本実施例の電気信号検出端子10は、一対の磁気コア12a,12bの合体方向と交差する外側面、つまり上側磁気コア12aの上側面に、磁気コア12a,12bの合体方向にかかる押圧を検出する圧力センサ16が設けられる。その他の構成は、たとえば第3の実施例の電気信号検出端子と同様である。オペレータは、測定に際し、圧力センサ16を介して、上側磁気コア12aを、一対の磁気コア12a,12bの合体方向に押圧する。圧力センサ16は、オペレータによる押圧に対応して、押圧信号SPを後段の測定装置に出力する。圧力センサ16は、たとえばピエゾ素子により構成される。なお、圧力センサ16は、バネ機構24による付勢に対しては反応しないものとする。
【0033】
図9は、実施例による電力測定装置の全体的な構成を示すブロック図である。実施例による電力測定装置は、圧力センサが設けられた電気信号検出端子10、および本体ユニット30を含む。本体ユニット30は、たとえば、電圧測定部31、電流測定部32、制御部33、記憶部34、通信部35、および表示部36を含む構成である。
【0034】
電気信号検出端子10は、単相交流電源に接続された電線の一方、たとえばライブライン40をクランプする。電気信号検出端子10は、電極14(図8)により検出される電圧対応信号SVaを、本体ユニットの電圧測定部31に出力する。また、コイル13(図8)により検出される電流対応信号SIa1,SIa2を本体ユニットの電流測定部32に出力する。さらに、圧力センサ16(図8)により検出される押圧信号SPを本体ユニットの制御部33に出力する。
【0035】
電圧測定部31および電流測定部32は、入力された電圧対応信号SVaおよび電流対応信号SIa1,SIa2をアナログ―デジタル変換した後、電圧対応信号SVdおよび電流対応信号SIdを制御部33に出力する。
【0036】
制御部33は、入力された電圧対応信号SVdおよび電流対応信号SIdに基づいて、たとえば測定対象電線40に接続される負荷の有効電力等を算出する。また、各モジュールのパラメータ設定、たとえば、電圧測定部31および電流測定部32のサンプリング周波数等の設定を行う。
【0037】
記憶部34は、制御部33と接続され、たとえば、制御部33により取得された電圧および電流対応信号を時系列に記憶する。記憶部34は、たとえば、ランダムアクセスメモリやハードディスクドライブ等により構成される。
【0038】
通信部35は、制御部33に接続され、各種設定およびデータ等を外部機器との間で送受信する。
【0039】
表示部36は、制御部33に接続され、制御部33のステータスや算出される消費電力、または測定対象電線の電圧・電流の時間変化を示す波形などを表示する。
【0040】
図10および図11は、本体ユニットの電圧測定部31、および電流測定部32の具体的な構成例を示すブロック図である。電圧測定部31は、たとえば図10に示すように、負荷容量C1と、入力抵抗R1と、オペアンプOp1および増幅率規定抵抗R2,R3を含む増幅回路Cir1と、アナログ―デジタルコンバータAD1と、を含む構成である。測定対象電線40と併せてコンデンサを構成する電極14は、一端が接地された負荷容量C1と接続することにより、測定対象電線40の電圧に対応した電荷を充放電しうる。この電荷の充放電信号(電圧対応信号SVa)は、入力抵抗R1を介して、所定の増幅率を有する増幅回路Cir1に入力される。増幅回路Cir1によって増幅された電圧対応信号は、アナログ―デジタルコンバータAD1によって、所定のサンプリング周波数fでアナログ―デジタル変換される。アナログ―デジタル変換された電圧対応信号SVdは、後段の制御部33(図9)に出力される。
【0041】
電流測定部32は、たとえば図11に示すように、負荷抵抗R4と、オペアンプOp2および増幅率規定抵抗R5,R6を含む増幅回路Cir2と、アナログ―デジタルコンバータAD2と、を含む構成である。電気信号検出端子のコイル13から出力される電流対応信号SIa1は基準電位(接地、コモングランド)に接続され、電流対応信号SIa2は負荷抵抗R4を介して所定の増幅率を有する増幅回路Cir2に入力される。増幅回路Cir2によって増幅された電流対応信号は、アナログ―デジタルコンバータAD2によって、所定のサンプリング周波数fでアナログ―デジタル変換される。アナログ―デジタル変換された電流対応信号SIdは、後段の制御部33(図9)に出力される。
【0042】
以下、図8および図9と併せて、本体ユニットの制御部による一対の磁気コアの合体状態判定フロー、および測定対象電線と電極との接触状態判定フローについて説明する。
【0043】
図12Aは、電気信号検出端子に設けられる圧力センサにより検出された押圧信号の時間変化を示すグラフである。測定に際し、オペレータは、電気信号検出端子により、交流電源および負荷に接続された測定対象電線をクランプし、圧力センサを介して、一対の磁気コアをその合体方向に押圧する。制御部33は、電圧測定部31および電流測定部32から出力される交流電圧および交流電流データ、ないしそれらのデータから算出する実効値データを逐次記憶部34に記憶している。そして、制御部33に圧力センサから出力される押圧信号が入力されたとき、制御部33は、その押圧信号が入力された時刻(t0)の前後一定時間内(−t1〜t1)における電圧・電流実効値データを記憶部34から読み出す。
【0044】
図12Bは、実施例による電力測定装置により測定された電流実効値の時間変化を示すグラフである。制御部33は、記憶部34から読み出した時間(−t1〜t0)内における電流実効値の平均値Ieff1と、時間(t0〜t1)内における電流実効値の平均値Ieff2と、を算出し、それら平均値を比較する。このとき、たとえば図中WF1に示す波形ように、Ieff1とIeff2との比率(Ieff1/Ieff2)が相対的に小さい場合、具体的には70%以下である場合、一対の磁気コアの間には著しいギャップが存在すると判定する。この結果は、たとえば本体ユニットの通信部35に接続された外部機器や表示部36を介してオペレータに通知される。
【0045】
一方、たとえば図中WF2に示す波形ように、Ieff1/Ieff2が相対的に大きい場合、具体的には70%より大きい場合、一対の磁気コアは所定の測定精度を満足する程度に合体して閉磁路を形成していると判定する。このとき、制御部33は、たとえば、自動的に電力測定を開始する。なお、(−t1〜t0),(t0〜t1)の時間幅やIeff1/Ieff2の判定値などの各種パラメータは、たとえば通信部35に接続された外部機器から適宜設定することが可能である。
【0046】
図12Cは、実施例による電力測定装置により測定された電圧実効値の時間変化を示すグラフである。測定対象電線40と電極14との接触状態は、コアケース20のロック機構23(図1B)により、ハウジング機構21a,21bを閉状態にロックした時点で概ね規定される。このため、制御部33は、押圧信号とは独立に、電圧実効値の平均値を算出し、その平均値と所定の判定値とを比較し、測定対象電線40と電極14との接触状態の良否判定を行えばよい。ただし、押圧信号を利用して、一対の磁気コアが押圧される時点の前後一定時間内における電圧実効値の平均値を算出してもかまわない。
【0047】
たとえば、図中WF3に示す波形ように、時間(−t1〜t1)内における電圧実効値の平均値Veff1と、所定の判定値Vrefと、を比較し、Veff1<Vrefである場合、測定対象電線40と電極14とが接触していないと判定する。この結果は、たとえば本体ユニットの通信部35に接続された外部機器や表示部36を介してオペレータに通知される。また、たとえば、図中WF4に示す波形ように、時間(−t1〜t1)内における電圧実効値の平均値Veff2、所定の判定値Vrefと、を比較し、Veff2>Vrefである場合、測定対象電線40と電極14とが接触していると判定する。このとき、制御部33は、たとえば、自動的に電力測定を開始する。なお、測定対象電線に接続される交流電源の振幅値が既知であるような場合、たとえば、国内規格の交流100Vであるような場合、電力算出に際し、検出される電圧対応信号は、位相情報のみを採用し、振幅情報は既知である振幅値を採用してもかまわない。
【0048】
図13は、実施例による電力測定装置により測定された電圧波形および電流波形の一例を示すグラフである。測定対象電線に接続された交流電源は、たとえば50Hz100Vである。本体ユニットの制御部は、図13に示すような測定波形から、電圧実効値、電流実効値、および皮相電力を逐次算出することが可能である。また、電圧波形と電流波形との位相差から力率を算出し、さらに、皮相電力と力率から有効電力を逐次算出することが可能である。
【0049】
本体ユニットの制御部にこのようなフローを設けることにより、電気信号検出端子のクランプ状態を容易に確認することが可能となる。たとえば、長時間にわたる消費電力モニターを行うに際し、以上のようなフローによって一対の磁気コアの合体状態、および測定対象電線と電極との接触状態を確認することで、信頼性の高い測定データを得ることが可能となる。このような電気信号検出端子、および本体ユニットを含む電力測定装置を用いることにより、容易に信頼性の高い電力測定を行うことができる。
【0050】
以上、実施例を用いて本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。たとえば、実施例では単相交流電源に接続された負荷の消費電力測定について説明したが、三相交流電源の場合についても、同様に消費電力測定を行うことが可能である。三相交流電源の場合には、三線各々をクランプする電気信号検出端子、および三線各々の電圧および電流を測定する電圧測定部および電流測定部を備える電力測定装置を用いればよい。三線各々の電圧・電流波形が得られれば、既知の計算式により電力、力率等算出することが可能である。そのほか、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0051】
10 電気信号検出端子、
11 クランプ領域、
12a 上側磁気コア、
12aI,II 上側磁気コア合体面、
12b 下側磁気コア、
12bI,II 下側磁気コア合体面、
13 コイル、
14 電極、
15 弾性部材、
16 圧力センサ、
21a,21b ハウジング部、
22 ヒンジ部、
23 ロック部、
23a 係止爪、
23b 係止フック、
24 バネ部、
25 押え爪、
26 電極支持部、
27 弾性部材支持部、
30 電力測定ユニット、
31 電圧測定部、
32 電流測定部、
33 制御部、
34 記憶部、
35 通信部、
36 表示部
40 電線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合体させることにより、単芯被覆電線を包囲するクランプ領域を画定する一対の磁気コアと、
前記一対の磁気コアの一部に巻回されるコイルと、
前記一対の磁気コアおよび前記コイルを支持し、該一対の磁気コアが合体した状態を保持できるコアケースと、
前記クランプ領域に配設される電極と、
前記クランプ領域に配設され、前記一対の磁気コアにより包囲される電線を押圧して前記電極に圧接させる弾性部材と、
を含む電気信号検出端子。
【請求項2】
前記コアケースは、
前記一対の磁気コアの一方を包持するとともに、前記クランプ領域に配設される前記電極を支持して前記弾性部材による前記電線を介した前記電極への押圧を受ける第1のハウジング機構と、
前記一対の磁気コアの他方を包持する第2のハウジング機構と、
前記第1および第2のハウジング機構に支持される一対の磁気コアが合体した状態を保持する結合機構と、
前記第1および第2のハウジング部に支持される一対の磁気コアを、該一対の磁気コアが合体する方向に付勢するバネ機構と、
を含む請求項1記載の電気信号検出端子。
【請求項3】
前記第2のハウジング機構は、前記クランプ領域に配設される前記弾性部材を支持して、前記弾性部材による前記電線の押圧に伴う反発圧の、前記一対の磁気コアの他方への伝播を抑制する弾性部材支持部を含む請求項2記載の電気信号検出端子。
【請求項4】
前記バネ機構は、第1の弾性定数を有し、前記一対の磁気コアの外側面に当接する先端部と、前記第1の弾性定数よりも大きい第2の弾性定数を有し、前記ハウジング機構と係合する根元部と、を含む請求項2または3記載の電気信号検出端子。
【請求項5】
前記弾性部材は、常圧状態において、位置により厚みが異なる形状を有し、前記一対の磁気コアにより包囲される電線の外径に応じて、前記クランプ領域に配設される部分を移動させることができる請求項1〜4いずれか1項記載の電気信号検出端子。
【請求項6】
単芯被覆電線の電圧、および該電線に流れる電流を検出する電気信号検出端子と、該電線に接続された負荷が消費する電力を算出する電力測定ユニットと、を備える電力測定装置であって、
前記電気信号検出端子は、
合体させることにより、前記電線を包囲するクランプ領域を画定する一対の磁気コアと、
前記一対の磁気コアの一部に巻回されるコイルと、
前記一対の磁気コアおよび前記コイルを支持し、該一対の磁気コアが合体した状態を保持できるコアケースと、
前記クランプ領域に配設される電極と、
前記クランプ領域に配設され、前記一対の磁気コアにより包囲される前記電線を押圧して前記電極に圧接させる弾性部材と、
を含み、
前記電力測定ユニットは、
前記電極により検出された電圧対応信号、および前記コイルにより検出された電流対応信号に基づいて、前記一対の磁気コアにクランプされる前記電線に接続された負荷が消費する電力を算出する制御部と、
を含む電力測定装置。
【請求項7】
前記コアケースは、
前記一対の磁気コアの一方を包持するとともに、前記クランプ領域に配設される前記電極を支持して前記弾性部材による前記電線を介した前記電極への押圧を受ける第1のハウジング機構と、
前記一対の磁気コアの他方を包持するとともに、前記クランプ領域に配設される前記弾性部材を支持して、前記弾性部材による前記電線の押圧に伴う反発圧の、前記一対の磁気コアの他方への伝播を抑制する第2のハウジング機構と、
前記第1および第2のハウジング機構に支持される一対の磁気コアが合体した状態を保持する結合機構と、
前記第1および第2のハウジング部に支持される一対の磁気コアを、該一対の磁気コアが合体する方向に付勢するバネ機構と、
を含む請求項6記載の電力測定装置。
【請求項8】
前記バネ機構は、第1の弾性定数を有し、前記一対の磁気コアの外側面に当接する先端部と、前記第1の弾性定数よりも大きい第2の弾性定数を有し、前記ハウジング機構と係合する根元部と、を含む請求項7記載の電力測定装置。
【請求項9】
前記弾性部材は、常圧状態において、位置により厚みが異なる形状を有し、前記一対の磁気コアにより包囲される電線の外径に応じて、前記クランプ領域に配設される部分を移動させることができる請求項6〜8いずれか1項記載の電力測定装置。
【請求項10】
前記電気信号検出端子は、さらに、前記一対の磁気コアの該一対の磁気コアが接合する方向と交差する外側面に配設され、前記一対の磁気コアの合体方向にかかる押圧を検出する圧力センサと、を含み、
前記電力測定ユニットは、さらに、前記電流対応信号を時系列に記憶する記憶部と、を含み、
前記電力測定ユニットに設けられる制御部は、前記圧力センサによる押圧信号に基づいて、前記一対の磁気コアが押圧される時点の前後一定時間内における電流対応信号を前記記憶部から読出し、該記憶部から読出された押圧前後の電流対応信号の比較に基づいて、電力算出の可否判定を行う請求項6〜9いずれか1項記載の電力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−44532(P2013−44532A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180139(P2011−180139)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】