説明

電気光学装置、それを用いた電子機器、および電気光学装置の製造方法

【課題】 電気光学パネルをフラット形状に形成した後、応力が局所的に加わることがなく、電気光学パネルを容易に湾曲させることができる電気光学装置、それを用いた電子機器、および電気光学装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】 表示面3が湾曲した凸曲面6からなる電気光学装置を製造するにあたって、フィルム貼付工程では、フラット形状の電気光学パネル2の対向基板20の側に対し、面内方向における収縮率が相違する1軸延伸フィルムからなる収縮フィルム30をエポキシ−アクリル系などの接着剤40により貼り付け、湾曲工程では、それを温度が40℃から200℃の雰囲気中に約10分から約24時間放置する。その結果、1軸延伸フィルムからなる収縮フィルム30が延伸方向Fで収縮し、電気光学パネル2は、収縮フィルム30の延伸方向Fと直交する方向に軸線方向Lを向けて単曲面形状に湾曲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲した電気光学パネルを備えた電気光学装置、それを用いた電子機器、および電気光学装置の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、電気光学装置を構成する基板の薄型化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの電気光学装置では、電気光学装置用基板によって電気光学物質を保持した電気光学パネルが用いられている。また、新たな形態の表示装置として、樹脂基板で液晶を保持した液晶パネル(電気光学パネル)が単曲面の表示面を形成するように湾曲している電気光学装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−295164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、表示面を湾曲した電気光学装置を製造するにあたって、液晶パネルをフラット形状に形成した後、液晶パネルを冶具で保持して機械的に湾曲させる方法では、その保持が難しいなどの理由から、その作業が難しいという問題点がある。また、フラット形状の液晶パネルを機械的に湾曲させると、基板に対して応力が局所的に加わるため、基板が薄いガラス基板の場合には、ガラス基板が割れてしまうという問題点がある。また、液晶パネルの場合には、一対の基板間に液晶を保持し、この液晶層の厚さを基板間隔で制御しているため、基板に対して応力が局所的に加わると、基板間隔が不均一になって表示の品位が低下するという問題点がある。
【0004】
また、基板を予め湾曲させておく方法も考えられるが、このような方法では、大型基板の状態で各種要素を形成してから、単品サイズの基板に切断するという方法を採用できず、生産性が著しく低下するという問題点がある。また、湾曲した基板に各種要素を形成するのは困難であるとともに、湾曲した基板同士を貼り合せるのも極めて難しいという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、電気光学パネルをフラット形状に形成した後、応力が局所的に加わることがなく、電気光学パネルを容易に湾曲させることができる電気光学装置、それを用いた電子機器、および電気光学装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、電気光学物質を保持した電気光学パネルを単曲面の表示面を形成するように湾曲させた電気光学装置において、前記電気光学パネルの凹曲面の側には、前記単曲面の軸線方向に直交する方向における収縮率が当該軸線方向における収縮率よりも大きな収縮フィルムが貼り付けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る電気光学装置では、フラット形状の電気光学パネルの一方面側に、面内方向における収縮率が相違する収縮フィルムを貼り付けた後、加熱や加湿などの方法で収縮フィルムを収縮させる。その結果、電気光学パネルは、収縮フィルムが収縮するときの力で湾曲する。従って、収縮フィルムを貼り付けた電気光学パネルを加熱するなどの処理で電気光学パネルを湾曲させることができるので、電気パネルを冶具で保持して機械的に湾曲させる必要がなく、湾曲を容易に行うことができる。また、加熱などの処理であれば、多数枚の電気光学パネルを一括して処理できるので、生産性を向上することができる。さらに、電気光学パネルは、その一方面側に貼り付けた収縮フィルムからの力で湾曲するので、電気光学パネルには応力が局所的に加わることがない。従って、電気光学パネルに薄いガラス基板などの硬質基板を用いた場合でも、基板が割れてしまうことがない。また、液晶パネルの場合には、一対の基板間に液晶を保持し、この液晶層の厚さを基板間隔で制御しているが、本発明によれば、電気光学パネルを湾曲する際、基板に対して応力が局所的に加わることがないので、基板間隔を均一に保持でき、表示の品位が高い。
【0008】
本発明は、前記電気光学パネルにおいて、前記電気光学物質が樹脂基板などに保持されている場合でも、生産性が高いなどの利点があるが、前記電気光学パネルにおいて、前記電気光学物質がガラスなどの剛性の電気光学装置用基板によって保持されている電気光学装置に適用するとその効果が顕著である。すなわち、本発明では、電気光学パネルは、その一方面側に貼り付けた収縮フィルムからの力で湾曲するので、電気光学パネルには応力が局所的に加わることがない。従って、電気光学パネルに薄いガラス基板などの硬質基板を用いた場合でも、基板が割れることがない。
【0009】
本発明においては、前記電気光学パネルの凹曲面に前記表示面が形成されている構成であってもよいが、前記電気光学パネルの凸曲面に前記表示面が形成されていることが好ましい。すなわち、電気光学パネルの凹曲面には収縮フィルムが貼り付けられているので、電気光学パネルの凸曲面に表示面を形成すれば、光変調後の表示光が収縮フィルムを通過しないことになる。それ故、品位の高い画像を表示することができる。
【0010】
本発明において、前記収縮フィルムは、例えば、1軸延伸フィルムである。この場合、当該1軸延伸フィルムの延伸方向が前記軸線方向と直交する方向に向いている。1軸延伸フィルムの場合、フィルムを延伸した後、熱固定しなければ、加熱などを行った際、延伸方向で大きな収縮が発生するので、かかる収縮を利用すればよい。
【0011】
本発明において、前記収縮フィルムは、面内方向で直交する方向における延伸度合いが相違する2軸延伸フィルムを用いてもよい。この場合、当該2軸延伸フィルムにおいて延伸度合いが大きい方が前記軸線方向と直交する方向に向いている。
【0012】
本発明において、前記収縮フィルムは、単層であってもよいが、材質あるいは厚さが異なるフィルムが積層されている構成であってもよい。
【0013】
本発明において、前記収縮フィルムは、例えば、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルムである。
【0014】
本発明において、前記収縮フィルムは、厚さが30μmから400μmであることが好ましい。このような厚さであれば、各種電気光学パネルを湾曲させるの十分な力を発生させることができ、かつ、収縮フィルムを追加しても電気光学パネルが分厚くなることがない。また、厚さが30μmから400μmであれば、バックライト光などが透過する際の損失を低く抑えることができる。
【0015】
本発明において、前記収縮フィルムは、例えば、前記光学パネルに対してエポキシ−アクリル系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコン系接着剤のうちいずれかの接着剤で貼り付けられている構成を採用することができる。
【0016】
本発明に係る電気光学装置の製造方法では、フラット形状の前記電気光学パネルの一方面側に、面内方向における収縮率が相違する前記収縮フィルムを貼り付けるフィルム貼付工程と、当該収縮フィルムを加熱して収縮させることにより、当該電気光学パネルを湾曲させる湾曲工程とを行うことを特徴とする。ここで、前記湾曲工程では、前記収縮フィルムを40℃から200℃の温度まで加熱する。
【0017】
本発明に係る電気光学装置の別の製造方法では、フラット形状の前記電気光学パネルの一方面側に、面内方向における収縮率が相違する前記収縮フィルムを貼り付けるフィルム貼付工程と、当該収縮フィルムを加湿して収縮させることにより、当該電気光学パネルを湾曲させる湾曲工程とを行う。ここで、前記湾曲工程では、前記収縮フィルムを加熱した状態で加湿してもよい。この場合、前記湾曲工程では、前記収縮フィルムを貼り付けた前記電気光学パネルを温度が40℃〜80℃で湿度が60%RHから90%RHの雰囲気中に保持する。
【0018】
本発明において、前記収縮フィルムは電気光学パネルの全面に貼り付けてもよいが、その一部分のみに貼り付けてもよい。
【0019】
本発明において、前記電気光学パネルに対してICあるいは可撓性基板が実装されている場合、前記湾曲工程を行った後、前記電気光学パネルに対してICあるいは可撓性基板を実装すればよい。また、前記湾曲工程を行う前に前記電気光学パネルに対してICおよび可撓性基板のうちの少なくとも一方を実装しておいてもよい。このように構成すると、電気光学パネルがフラット形状のうちに、ICや可撓性基板を実装できるので、実装が容易である。
【0020】
本発明に係る電気光学装置は、各種表示装置といった電子機器に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明に用いた各図では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0022】
[実施の形態1]
(電気光学装置の全体構成)
図1(A)、(B)は、本発明を適用した電気光学装置を対向基板の側から見た平面図、およびその断面図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の説明図である。
【0023】
図1(A)、(B)において、本形態の電気光学装置1では、透過型、反射型あるいは半透過反射型のアクティブマトリクス型の液晶装置からなる電気光学パネル2が用いられている。この電気光学パネル2では、矩形枠状に塗布されたシール材52により貼り合わされた素子基板10(電気光学装置用基板)と対向基板20(電気光学装置用基板)との間に電気光学物質としての液晶50が保持されている。本形態において、素子基板10は、対向基板20より大きく、対向基板20からの張り出し領域12には、駆動用IC110がCOG実装されるととともに、可撓性基板120が実装される。なお、駆動用IC110については素子基板10にCOG実装する代わりに、可撓性基板120にCOF実装しておく場合もあり、このような構成であっても本発明を適用できる。
【0024】
このような電気光学パネル2としては、周知のものを用いることができるので、その詳細な説明を省略するが、素子基板10の側には、画素電極9aおよび非線形素子としてのTFT(Thin Film Transistor/図示せず)がマトリクス状に形成されている。対向基板20には、素子基板10の画素電極9aの縦横の境界領域と対向する領域にブラックマトリクス、あるいはブラックストライプなどと称せられる遮光膜23が形成され、その上層側には、ITO(Indium Tin Oxide)膜などからなる対向電極21などが形成されている。なお、電気光学パネル2をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、素子基板10の各画素電極(後述する。)に対向する領域にRGBのカラーフィルタをその表面保護膜とともに形成する。電気光学装置100では、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(ツイステッドネマティック)モード、STN(スーパーTN)モード等々の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差フィルムや偏光板などが所定の向きに配置されるが、ここでは、偏光板140、150のみを表してある。
【0025】
本形態の電気光学装置1において、電気光学パネル2は、図2に示すように単曲面をもつように湾曲しており、電気光学パネル2の凸曲面6の側が表示面3とされている。このため、素子基板10および対向基板20として、厚さが100μm以下、さらには50μm以下のものが用いられている。このような薄い基板を用いて電気光学パネル2を構成するには、薄い基板に対して半導体プロセスで各種要素を構成して素子基板10および対向基板20を形成した後、貼り合せてもよいが、厚い基板に対して半導体プロセスで各種要素を構成して素子基板10および対向基板20を形成した後、貼り合せ、しかる後に研磨を施すことが好ましい。
【0026】
このように構成した電気光学装置1において、電気光学パネル2が透過型の場合には、バックライト装置(図示せず)から出射された光は、矢印L1で示すように、電気光学パネル2にその凹曲面7の側から入射した後、電気光学パネル2で光変調し、矢印L0で示すように、凸曲面6の側から出射されて表示面3で画像を表示する(透過モード)。また、電気光学パネル2が半透過反射型の場合には、上記の透過モードで画像を表示することができるとともに、矢印L2で示すように、凸曲面6の側から電気光学パネル2に入射した外光が、対向基板20で反射して、矢印L0で示すように電気光学パネル2の凸曲面6の側から再び、出射される間に光変調され、表示面3に画像を表示することができる(透過モード)。なお、電気光学パネル2が反射型の場合には偏光板150は省略できる。また、電気光学パネル2が透過型、反射型あるいは半透過反射型のいずれであるかによって、素子基板10や対向基板20の構成が変更されるが、このような構成については周知であるため、説明を省略する。
【0027】
本形態では、詳しくは図3を参照して後述するように、電気光学パネル2を湾曲させる際には、電気光学パネル2の対向基板20に貼り付けた収縮フィルム30を利用する。この収縮フィルム30は、単曲面の軸線方向Lに直交する方向における収縮率が軸線方向における収縮率よりも大きくなるように貼り付けられた1軸延伸フィルムである。すなわち、1軸延伸フィルムは、フィルムを延伸した後、熱固定しなければ、加熱などを行った際、延伸方向Fで大きな収縮が発生する。従って、本形態では、1軸延伸フィルムの延伸方向Fが、単曲面の軸線方向Lと直交する方向に向いている。ここで、収縮フィルム30は、例えば、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルムである。また、収縮フィルム30の厚さは、例えば、30μmから400μmである。
【0028】
(電気光学装置の製造方法)
このように構成した電気光学装置1の製造方法において、本形態では、電気光学パネル2を、図3(A)、(B)、(C)を参照して以下に説明するようにして湾曲させる。
【0029】
図3(A)、(B)、(C)は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【0030】
まず、図3(A)に示すように、フラット形状の電気光学パネル2を形成した後、図3(B)に示すように、フィルム貼付工程において、このフラット形状の電気光学パネル2の対向基板20の側(一方面側)の全面に、面内方向における収縮率が相違する収縮フィルム30をエポキシ−アクリル系、アクリル系、ウレタン系、シリコン系などの接着剤40により貼り付ける。本形態では、前記したように、収縮フィルム30として1軸延伸フィルムを用いているので、1軸延伸フィルムの延伸方向Fが、湾曲させた後の単曲面の軸線方向Lと直交する方に向くように収縮フィルム30を貼り付ける。
【0031】
次に、湾曲工程で収縮フィルム30を加熱する。このような加熱を行うにあたって、本形態では、収縮フィルム30を貼り付けた電気光学パネル2を温度が40℃から200℃の雰囲気中に約10分から約24時間放置する。その結果、1軸延伸フィルムからなる収縮フィルム30は、延伸方向Fで収縮し、その収縮するときの力が電気光学パネル2に伝わり、電気光学パネル2は、図3(C)に示すように、収縮フィルム30の延伸方向Fと直交する方向に軸線方向Lを向けた単曲面形状に湾曲する。
【0032】
しかる後には、図2に示すように、電気光学パネル2の張り出し領域12にIC110および可撓性基板120を実装するとともに、偏光板140、150を積層する。その結果、電気光学装置1が完成する。
【0033】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の電気光学装置1では、フラット形状の電気光学パネル2の一方面側に、面内方向における収縮率が相違する収縮フィルム30を貼り付けた後、加熱により収縮フィルム30を収縮させる。その結果、電気光学パネル2は、収縮フィルム30が収縮するときの力で湾曲する。従って、電気パネル2を冶具で保持して機械的に湾曲させる必要がなく、湾曲を容易に行うことができる。また、加熱処理であれば、多数枚の電気光学パネル2を一括して処理できるので、生産性を向上することができる。
【0034】
さらに、電気光学パネル2は、その一方面側に貼り付けた収縮フィルム30からの力で湾曲するので、電気光学パネル2には応力が局所的に加わることがない。従って、電気光学パネル2に薄いガラス基板などの硬質基板(素子基板10および対向基板20)を用いた場合でも、基板が割れてしまうことがない。また、液晶パネルの場合には、一対の基板間に液晶50を保持し、この液晶50の層厚を基板間隔で制御しているが、本形態によれば、電気光学パネル2を湾曲する際、基板に対して応力が局所的に加わることがないので、基板間隔を均一に保持でき、表示の品位が高い。
【0035】
また、本形態では、電気光学パネル2の凸曲面6の側が表示面3になっているため、明るくて品位の高い画像を表示することができる。すなわち、凹曲面7には収縮フィルム30が貼り付けられているが、表示光は、収縮フィルム30を通過しないので、品位の高い画像を表示することができる。
【0036】
さらに、本形態では、収縮フィルム30として、厚さが30μmから400μmのものを用いてるため、電気光学パネル2を湾曲させるの十分な力を発生させることができ、かつ、収縮フィルム30を追加しても電気光学パネルが分厚くなることがない。また、厚さが30μmから400μmであれば、バックライト光などが透過する際の損失を低く抑えることができる。
【0037】
さらにまた、本形態では、対向基板20の側に収縮フィルム30を貼り付けたため、素子基板10の張り出し領域12は、わずかに湾曲しているか、あるいは一切湾曲していない。従って、IC110や可撓性基板120を容易に実装できるという利点がある。
【0038】
(別の製造方法)
なお、上記形態では、湾曲工程で収縮フィルム30を加熱により収縮させたが、収縮フィルム30を加湿して収縮させることにより、電気光学パネル2を湾曲させてもよい。この場合、収縮フィルム30を加熱した状態で加湿してもよい。このような場合、湾曲工程では、収縮フィルム30を貼り付けた電気光学パネル2を温度が40℃〜80℃で湿度が60%RHから90%RHの雰囲気中に10分から24時間保持する。
【0039】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る電気光学装置の製造方法を説明しながら、その構成を説明する。なお、本形態および後述する形態の電気光学装置はいずれも、その基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、共通する機能を有する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0040】
図4(A)、(B)、(C)は、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【0041】
本形態では、図4(A)に示すように、フラット形状の電気光学パネル2を形成した後、電気光学パネル2の張り出し領域12にIC110および可撓性基板120を実装する。
【0042】
次に、図4(B)に示すように、フィルム貼付工程において、このフラット形状の電気光学パネル2の対向基板20の側(一方面側)の全面に、面内方向における収縮率が相違する収縮フィルム30をエポキシ−アクリル系、アクリル系、ウレタン系、シリコン系などの接着剤40により貼り付ける。本形態でも、収縮フィルム30として1軸延伸フィルムを用いているので、1軸延伸フィルムの延伸方向Fが、湾曲させた後の単曲面の軸線方向Lと直交する方に向くように収縮フィルム30を貼り付ける。
【0043】
次に、湾曲工程で収縮フィルム30を加熱、加湿、あるいは加熱加湿を行う。その結果、1軸延伸フィルムからなる2枚の収縮フィルム30は、いずれも延伸方向Fで収縮し、その収縮するときの力が電気光学パネル2に伝わる。従って、電気光学パネル2は、図4(C)に示すように、収縮フィルム30の延伸方向Fと直交する方向に軸線方向Lを向けた単曲面形状に湾曲する。しかる後には、電気光学パネル2の張り出し領域12にIC110および可撓性基板120(図2を参照)を実装する。このように構成した電気光学パネル2でも凸曲面6の側を表示面3とする。
【0044】
このように本形態では、湾曲工程を行う前に電気光学パネル2に対してIC110および可撓性基板110を実装しておく。このため、電気光学パネル2がフラット形状のうちに、IC110および可撓性基板120を実装できるので、実装が容易である。なお、湾曲工程を行う前に電気光学パネル2に対してIC110および可撓性基板110のうちの一方のみを実装しておき、他方は湾曲工程の後に実装してもよい。
【0045】
[実施の形態3]
図5(A)、(B)、(C)は、本発明の実施の形態3に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【0046】
本形態では、図5(A)に示すように、フラット形状の電気光学パネル2を形成した後、図5(B)に示すように、フィルム貼付工程において、このフラット形状の電気光学パネル2の対向基板20の側(一方面側)に、面内方向における収縮率が相違する収縮フィルム30をエポキシ−アクリル系、アクリル系、ウレタン系、シリコン系などの接着剤40により貼り付ける。本形態でも、収縮フィルム30として1軸延伸フィルムを用いているので、1軸延伸フィルムの延伸方向Fが、湾曲させた後の単曲面の軸線方向Lと直交する方に向くように収縮フィルム30を貼り付ける。
【0047】
ここで、収縮フィルム30としては、2枚を対向基板20の両側のみに貼り付ける。すなわち、収縮フィルム30を対向基板20の全面ではなく、その一部分のみに貼り付ける。
【0048】
次に、湾曲工程で収縮フィルム30を加熱、加湿、あるいは加熱加湿を行う。その結果、1軸延伸フィルムからなる2枚の収縮フィルム30は、いずれも延伸方向Fで収縮し、その収縮するときの力が電気光学パネル2に伝わる。従って、電気光学パネル2は、図5(C)に示すように、収縮フィルム30の延伸方向Fと直交する方向に軸線方向Lを向けた単曲面形状に湾曲する。しかる後には、電気光学パネル2の張り出し領域12にIC110および可撓性基板120(図2を参照)を実装する。このように構成した電気光学パネル2でも凸曲面6の側を表示面3とする。
【0049】
[実施の形態4]
図6(A)、(B)、(C)は、本発明の実施の形態4に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【0050】
本形態では、図6(A)に示すように、フラット形状の電気光学パネル2を形成した後、図6(B)に示すように、フィルム貼付工程において、このフラット形状の電気光学パネル2の素子基板10の側(一方面側)の全面に、面内方向における収縮率が相違する収縮フィルム30をエポキシ−アクリル系、アクリル系、ウレタン系、シリコン系などの接着剤40により貼り付ける。本形態でも、収縮フィルム30として1軸延伸フィルムを用いているので、1軸延伸フィルムの延伸方向Fが、湾曲させた後の単曲面の軸線方向Lと直交する方に向くように収縮フィルム30を貼り付ける。
【0051】
次に、湾曲工程で収縮フィルム30を加熱、加湿、あるいは加熱加湿を行う。その結果、1軸延伸フィルムからなる2枚の収縮フィルム30は、いずれも延伸方向Fで収縮し、その収縮するときの力が電気光学パネル2に伝わる。従って、電気光学パネル2は、図6(C)に示すように、収縮フィルム30の延伸方向Fと直交する方向に軸線方向Lを向けた単曲面形状に湾曲する。しかる後には、電気光学パネル2の張り出し領域12にIC110および可撓性基板120(図2を参照)を実装する。このように構成した電気光学パネル2でも凸曲面6の側を表示面3とする。
【0052】
このように構成すると、素子基板10の側を表示面3とすることができる。なお、本形態でも、湾曲工程を行う前に電気光学パネル2に対してIC110あるいは可撓性基板110を実装しておいてもよい。
【0053】
[実施の形態5]
図7(A)、(B)、(C)は、本発明の実施の形態5に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【0054】
本形態では、図7(A)に示すように、フラット形状の電気光学パネル2を形成した後、図7(B)に示すように、フィルム貼付工程において、このフラット形状の電気光学パネル2の素子基板10の側(一方面側)のうち、張り出し領域12と平面的に重なるような領域を避けて、面内方向における収縮率が相違する収縮フィルム30をエポキシ−アクリル系、アクリル系、ウレタン系、シリコン系などの接着剤40により貼り付ける。すなわち、フラット形状の電気光学パネル2の一方面側の一部分のみに収縮フィルム30を貼り付ける。本形態でも、収縮フィルム30として1軸延伸フィルムを用いているので、1軸延伸フィルムの延伸方向Fが、湾曲させた後の単曲面の軸線方向Lと直交する方に向くように収縮フィルム30を貼り付ける。
【0055】
次に、湾曲工程で収縮フィルム30を加熱、加湿、あるいは加熱加湿を行う。その結果、1軸延伸フィルムからなる2枚の収縮フィルム30は、いずれも延伸方向Fで収縮し、その収縮するときの力が電気光学パネル2に伝わる。従って、電気光学パネル2は、図7(C)に示すように、収縮フィルム30の延伸方向Fと直交する方向に軸線方向Lを向けた単曲面形状に湾曲する。しかる後には、電気光学パネル2の張り出し領域12にIC110および可撓性基板120(図2を参照)を実装する。このように構成した電気光学パネル2でも凸曲面6の側を表示面3とする。
【0056】
このように本形態では、フィルム貼付工程において、電気光学パネル2の素子基板10の側(一方面側)のうち、張り出し領域12と平面的に重なるような領域を避けて収縮フィルム30を貼り付ける。従って、素子基板10の張り出し領域12は、わずかに湾曲しているか、あるいは一切湾曲していない。それ故、IC110や可撓性基板120を容易に実装できるという利点がある。なお、本形態でも、湾曲工程を行う前に電気光学パネル2の張り出し領域12に対してIC110あるいは可撓性基板110を実装しておいてもよく、この場合でも、素子基板10の張り出し領域12がわずかに湾曲するか、あるいは一切湾曲しないので、実装後に電気電気光学パネル2が湾曲しても、IC110や可撓性基板110の実装領域に大きな応力が加わらないという利点がある。
【0057】
[その他の実施の形態]
上記実施の形態のいずれにおいても、張り出し領域12が延びている幅方向に単曲面の軸線方向Lが向くように電気光学パネル2を湾曲させたが、例えば、図8(A)〜(C)に示す縦方向に延伸方向Fが向くように収縮フィルム30を貼って、張り出し領域12を横切る方向に単曲面の軸線方向Lが向くように電気光学パネル2を湾曲させてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態のいずれにおいても、凸曲面6の側を表示面としたが、収縮フィルム30が光透過性を備えているので、凹曲面7の方を表示面としてもよい。
【0059】
さらに上記形態のいずれにおいても、電気光学パネル2において、液晶50(電気光学物質)がガラス基板などの硬質基板からなる素子基板10および対向基板20で保持されている構成であったが、素子基板10および対向基板20の一方、あるいは双方が樹脂基板などの場合にも本発明を適用することができる。
【0060】
また、上記実施の形態のいずれにおいても、収縮フィルム30として1軸延伸フィルムを用いたが、面内方向で直交する方向における延伸度合いが相違する2軸延伸フィルムを収縮フィルム30として用いてもよい。この場合、2軸延伸フィルムにおいて延伸度合いが大きい方を軸線方向Lと直交する方向に向かせればよい。また、上記実施の形態のいずれにおいても、収縮フィルム30は単層であったが、材質あるいは厚さが異なるフィルムが積層されている構成であってもよい。さらに、収縮フィルム30が収縮後、所定の光学特性を有している場合には、収縮フィルム30自身を偏光板や位相差板として利用してもよい。
【0061】
さらに、本発明は上記の実施形態に限るものではなく、画素スイッチング素子としてTFDを用いたアクティブマトリクス型液晶装置(パネル)、あるいはパッシブマトリクス型液晶装置(パネル)を用いてもよい。
【0062】
さらに、有機エレクトロルミネッセンスタイプの電気光学装置に本発明を適用してもよい。この場合の電気光学パネルでは、1枚の基板に有機エレクトロルミネッセンス素子が形成され、その上面が封止樹脂、封止基板、あるいは封止缶で覆われた構造になるが、このような有機エレクトロルミネッセンスタイプの電気光学パネルを湾曲させる場合に収縮フィルムの収縮力を利用してもよい。
【0063】
[電子機器への適用]
本発明を適用した電気光学装置1は、小型のものでは、モバイルコンピュータや携帯電話機に搭載でき、また、各種器具の単曲面に表示面を構成するのに用いることができる。また、大型のものは、公共の場に設置される大型表示装置などとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】(A)、(B)は、本発明を適用した電気光学装置を対向基板の側から見た平面図、およびその断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の説明図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【図4】(A)、(B)、(C)は、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【図5】(A)、(B)、(C)は、本発明の実施の形態3に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【図6】(A)、(B)、(C)は、本発明の実施の形態4に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【図7】(A)、(B)、(C)は、本発明の実施の形態5に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【図8】(A)、(B)、(C)は、本発明のその他の実施の形態に係る電気光学装置の製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 電気光学装置、2 電気光学パネル、3 表示面、6 凸曲面、7 凹曲面、10 素子基板、12 素子基板の張り出し領域、20 対向基板、30 収縮フィルム、40 接着剤、F 1軸延伸フィルムの延伸方向、L 単曲面の軸線方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学物質を保持した電気光学パネルを単曲面の表示面を形成するように湾曲させた電気光学装置において、
前記電気光学パネルの凹曲面の側には、前記単曲面の軸線方向に直交する方向における収縮率が当該軸線方向における収縮率よりも大きな収縮フィルムが貼り付けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1において、前記電気光学パネルでは、前記電気光学物質が剛性の電気光学装置用基板によって保持されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記電気光学パネルの凸曲面に前記表示面が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記収縮フィルムは1軸延伸フィルムであり、
当該1軸延伸フィルムの延伸方向が前記軸線方向と直交する方向に向いていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記収縮フィルムは、面内方向で直交する方向における延伸度合いが相違する2軸延伸フィルムであり、当該2軸延伸フィルムにおいて延伸度合いが大きい方が前記軸線方向と直交する方向に向いていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項4または5において、前記収縮フィルムは、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、塩化ビニル系フィルム、およびポリイミド系フィルムのうちのいずれかであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、前記収縮フィルムは、厚さが30μmから400μmであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記収縮フィルムは前記光学パネルに対してエポキシ−アクリル系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコン系接着剤のうちいずれかの接着剤で貼り付けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに規定する電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに規定する電気光学装置の製造方法において、
フラット形状の前記電気光学パネルの一方面側に、面内方向における収縮率が相違する前記収縮フィルムを貼り付けるフィルム貼付工程と、
当該収縮フィルムを加熱して収縮させることにより、当該電気光学パネルを湾曲させる湾曲工程と
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、前記湾曲工程では、前記収縮フィルムを40℃から200℃の温度まで加熱することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし8のいずれかに規定する電気光学装置の製造方法において、
フラット形状の前記電気光学パネルの一方面側に、面内方向における収縮率が相違する前記収縮フィルムを貼り付けるフィルム貼付工程と、
当該収縮フィルムを加湿して収縮させることにより、当該電気光学パネルを湾曲させる湾曲工程と
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、前記湾曲工程では、前記収縮フィルムを加熱した状態で加湿することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13において、前記湾曲工程では、前記収縮フィルムを貼り付けた前記電気光学パネルを温度が40℃〜80℃で湿度が60%RHから90%RHの雰囲気中に保持することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項15】
請求項11ないし14のいずれかにおいて、前記湾曲工程を行う前に前記電気光学パネルに対してICおよび可撓性基板のうちの少なくとも一方を実装しておくことを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−106079(P2006−106079A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288691(P2004−288691)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】