説明

電気光学装置、電子機器、及び電気光学装置の製造方法

【課題】有機EL素子に供給される電流の過渡現象を抑制し、機EL素子の発光強度を安定させる。
【解決手段】画素電極107と、画素電極107と対向する対向電極108と、画素電極107と対向電極108の間に挟み込まれた発光機能層110とを含む有機EL素子300と、少なくとも1つのTFT部200を含み、有機EL素子300を駆動する駆動回路と、2枚の電極板の一方が電源線103に接続され、他方がグランド線115に接続された過渡電流吸収用コンデンサ114を備え、過渡電流吸収用コンデンサ114は、発光機能層110の下層に設けられ、過渡電流吸収用コンデンサ114の2枚の電極板のうち発光機能層110に近い第1の電極板114aは、発光機能層110より発光された光を反射する反射板を兼ねる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、電子機器、及び電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)表示装置は、電気光学素子として有機EL素子を利用した電気光学装置である。有機EL表示装置は、自発光、高輝度、高視野角、薄型、高速応答、低消費電力といった優れた特徴を備えるとともに、ポリシリコンTFT(Thin Film Transistor)を用いた周辺駆動回路により、さらなる小型化、軽量化が実現できることから注目されている。
【0003】
有機EL素子は電流駆動素子である事から、有機EL素子に供給される電流は定常状態である事が望ましい。しかし、実際は電流供給の初期には過渡現象が発生し、その過渡現象により有機EL素子の発光強度が揺らぎ、輝度が安定しない場合がある。
【0004】
電流の過渡現象から回路を保護するための手段として、例えば特許文献1には回路にコンデンサを設ける技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平2−223376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、有機EL素子に供給される電流の過渡現象を抑制し、有機EL素子の発光強度を安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気光学装置は、画素電極と、前記画素電極と対向する対向電極と、前記画素電極と前記対向電極の間に挟み込まれた発光機能層とを含む発光素子と、少なくとも1つのトランジスタを含み、前記発光素子を駆動する駆動回路と、2枚の電極板の一方が電源供給線に接続され、他方がグランド線に接続された過渡電流吸収用コンデンサを備え、前記過渡電流吸収用コンデンサは、前記発光機能層の下層に設けられ、前記2枚の電極板のうち前記発光機能層に近い第1の電極板は、前記発光機能層より発光された光を反射する反射板を兼ねていることを特徴とするものである。
これにより、有機EL素子に供給される電流の過渡現象を抑制し、有機EL素子の発光強度を安定させることができる。
また、第1の電極板が反射板を兼ねるようにしたので、画素電極を金属とする必要がなくなり発光効率を高めることができる。
【0008】
また、本発明の電気光学装置は、複数の走査線と、前記走査線に直交して配置される複数の信号線と、複数の電源供給線と、各走査線と各信号線との交点付近に設けられる複数の画素部を備え、前記画素部は、前記走査線を介して走査信号がゲートに供給される選択トランジスタと、前記選択トランジスタを介して前記信号線から供給される画素信号がゲートに供給される駆動用トランジスタと、前記駆動用トランジスタを介して前記電源線に電気的に接続されたときに前記電源供給線から駆動電流が流れ込む画素電極と、前記画素電極と対向する対向電極と、前記画素電極と前記対向電極の間に挟み込まれた発光機能層と、2枚の電極板の一方が前記電源供給線に接続され、他方がグランド線に接続された過渡電流吸収用コンデンサを備え、前記過渡電流吸収用コンデンサは、前記発光機能層の下層に設けられ、前記2枚の電極板のうち前記発光機能層に近い第1の電極板は、前記発光機能層より発光された光を反射する反射板を兼ねていることを特徴とする。
これにより、有機EL素子に供給される電流の過渡現象を抑制し、有機EL素子の発光強度を安定させることができる。
また、第1の電極板が反射板を兼ねるようにしたので、画素電極を金属とする必要がなくなり発光効率を高めることができる。
【0009】
また、本発明の電気光学装置は、前記選択トランジスタを介して前記信号線から供給される画素信号を保持する保持用コンデンサを備え、前記保持用コンデンサによって保持された画素信号が、前記駆動用トランジスタのゲートに供給されるものとすることができる。
また、ゲートがリセット線に接続され、ソースが選択トランジスタのドレインに接続され、ドレインがグランド線に接続され消去用トランジスタをさらに備えるものとしてもよい。
また、前記画素部が前記駆動用トランジスタのゲート電圧を補償するためのトランジスタを2つ備えるようにしてもよい。
【0010】
また、前記駆動回路は、4つのトランジスタと1つのコンデンサを備え、外部に定電流源を有し、前記発光素子に流れる電流を制御する駆動用トランジスタのゲート電圧は、前記定電流源に設定された電流量によって決定されるものとしてもよい。
【0011】
本発明の電気光学装置は、過渡電流吸収用コンデンサの前記第1の電極板は、前記トランジスタのゲート電極と同一の層に形成され、前記第1の電極板に対向する第2の電極板は、前記トランジスタの半導体層と同一の層に形成されたものとすることが望ましい。
これにより、過渡電流吸収用コンデンサを形成するための製造工程を新たに設ける必要がなく、第1の電極板及び第2の電極板をトランジスタのゲート電極と半導体層の形成と同時に形成することができる。
【0012】
また、過渡電流吸収用コンデンサの前記第1の電極板は、前記駆動用トランジスタのソース電極と同一の層に形成され、前記第1の電極板に対向する第2の電極板は、前記駆動用トランジスタのゲート電極と同一の層に形成されるようにしてもよい。
これにより、過渡電流吸収用コンデンサの第1の電極板及び第2の電極板をトランジスタのソース電極とゲート電極の形成と同時に形成することができる。
【0013】
また、前記第1の電極板は、前記駆動用トランジスタのソース電極と同一の層に形成され、前記第1の電極板に対向する第2の電極板は、前記駆動用トランジスタの半導体層と同一の層に形成されるようにしてもよい。
これにより、過渡電流吸収用コンデンサの第1の電極板及び第2の電極板をトランジスタのソース電極と半導体層の形成と同時に形成することができる。
【0014】
また、本発明の電気光学装置は、前記発光機能層と前記反射板との間の距離が、前記光のマイクロキャビティ効果が発生するように調整されているものとすることが望ましい。
これにより、発光される光の強度を上げることができる。
【0015】
本発明の電気光学装置の製造方法は、画素電極と、前記画素電極と対向する対向電極と、前記画素電極と前記対向電極の間に挟み込まれた発光機能層とを含む発光素子と、少なくとも1つのトランジスタを含み、前記発光素子を駆動する駆動回路を備えた電気光学装置の製造方法であって、前記トランジスタを形成する工程において、前記発光機能層の下の位置に、2枚の電極板の一方が電源供給線に接続され、他方がグランド線に接続され、前記2枚の電極板のうち前記発光機能層に近い第1の電極板は、前記発光機能層より発光された光を反射する反射板を兼ねた過渡電流吸収用コンデンサを同時に形成することを特徴とする。
これにより、有機EL素子に供給される電流の過渡現象を抑制し、有機EL素子の発光強度を安定させることができる。
また、第1の電極板が反射板を兼ねるようにしたので、画素電極を金属とする必要がなくなり発光効率を高めることができる。
【0016】
また、本発明の電気光学装置の製造方法は、前記トランジスタのゲート電極と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板を形成する工程と、前記トランジスタの半導体層と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板に対向する第2の電極板を形成する工程を備えることが望ましい。
これにより、過渡電流吸収用コンデンサを形成するための製造工程を新たに設ける必要がなく、第1の電極板及び第2の電極板をトランジスタのゲート電極と半導体層の形成と同時に形成することができる。
【0017】
また、前記トランジスタのソース電極と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板を形成する工程と、前記トランジスタのゲート電極と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板に対向する第2の電極板を形成する工程を備えるようにしてもよい。
これにより、過渡電流吸収用コンデンサの第1の電極板及び第2の電極板をトランジスタのソース電極とゲート電極の形成と同時に形成することができる。
【0018】
また、前記トランジスタのソース電極と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板を形成する工程と、前記トランジスタの半導体層と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板に対向する第2の電極板を形成する工程を備えるようにしてもよい。
これにより、過渡電流吸収用コンデンサの第1の電極板及び第2の電極板をトランジスタのソース電極と半導体層の形成と同時に形成することができる。
【0019】
また、本発明の電子機器は、上述した電気光学装置を表示部として備える。ここで、電子機器とは、電気光学装置を表示部として備えるあらゆる機器を含むもので、ディスプレイ装置、テレビジョン装置、電子ペーパ、時計、電卓、携帯電話、携帯情報端末等を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明による電気光学装置の例である有機EL装置(電気光学装置)100の回路構成を示す図である。有機EL装置100は、複数の走査線101と、走査線101に直交して配置される複数の信号線102と、信号線102に並列に延びる複数の電源線(電源供給線)103と、各走査線101と各信号線102との交点付近にそれぞれ設けられる複数の画素部Aとを含んでいる。すなわち、本例の有機EL装置100は、複数の画素部Aを備え、当該各画素部がマトリクス状に配列されてなるアクティブマトリクス型の表示装置である。
【0021】
各走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路105が接続されている。また、各信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路104が接続されている。各画素部Aには、走査線101を介して走査信号がゲートに供給されるスイッチングトランジスタ(選択トランジスタ)112と、このスイッチングトランジスタ112を介して信号線102から供給される画素信号を保持するコンデンサ(保持用コンデンサ)111と、このコンデンサ111によって保持された画素信号がゲートに供給される駆動用トランジスタ113と、この駆動用トランジスタ113を介して電源線103に電気的に接続されたときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(陽極)と、この画素電極と対向する対向電極(陰極)との間に挟み込まれた発光機能層と、が設けられている。これらの画素電極と対向電極と発光機能層によって有機EL素子(発光素子)300が構成されている。なお、発光機能層は正孔輸送層、発光層、電子注入層を含む。
【0022】
この有機EL装置100では、走査線101が駆動されてスイッチングトランジスタ112がオン状態となると、そのときの信号線102の電位がコンデンサ111に保持され、このコンデンサ111の状態に応じて、駆動用トランジスタ113のオン/オフ状態が決まる。そして、駆動用トランジスタ113のチャネルを介して、電源線103から画素電極に電流がながれ、さらに発光機能層を介して陰極に電流がながれる。発光機能層は、この流れる電流量に応じて発光する。各発光機能層の発光状態を制御することにより、所望の画像表示を行うことができる。
【0023】
さらに、有機EL装置100は、一方の電極板が電源線103に接続され、他方の電極板がグランド線115に接続されたコンデンサ(過渡電流吸収用コンデンサ)114を備えている。コンデンサ114は有機EL素子に供給される電流の過渡現象を抑制する。
【0024】
図2は、有機EL装置100の画素部Aの構成を示す平面図である。また、図3は、図2のB−B’線での断面図である。
図2及び図3に示すように、画素部Aは、ガラス基板151の上にSiO2膜による絶縁層152が形成されており、その上にTFT部200、有機EL素子300、及びコンデンサ114が形成されている。
【0025】
TFT部200は、例えば図に示すようなトップゲート型のTFTであり、絶縁層152の上にシリコン層153が形成されている。シリコン層153は、不純物が高濃度にドーピングされたソース領域153S、ドレイン領域153D、及びそれらの間のチャネル領域153Cを有する。
シリコン層153の上にはゲート絶縁膜154(SiO2膜)が形成され、更にその上にゲート電極155が形成される。ゲート電極155の上には層間絶縁膜156が形成されている。層間絶縁膜156及びその下のゲート絶縁膜154に形成された開口部を介して、ソース領域153Sに接続されたソース電極157が形成され、ITO(Indium−Tin Oxide)などの透明導電膜からなる画素電極107と接続されている。
【0026】
有機EL素子300は、絶縁層160(SiO2層)の上に形成され、画素電極107と対向電極108に挟まれた発光機能層110によって構成されている。有機EL装置100は、ガラス基板151の反対側(図中a方向)から光を取り出すトップエミッション構造の有機EL装置である。トップエミッション構造の有機EL装置では、光を取り出す方向が基板と逆方向なので、基板上に設けられたTFT等により発光面積が小さくなることがないという利点がある。トップエミッション構造の有機EL装置では、一般に画素電極107を金属で形成することにより反射板を兼ねるようにし、発光機能層110から発光された光を画素電極107で反射することによりガラス基板151の反対側から光を取り出している。
【0027】
しかし、実施の形態1では、画素電極107は透明電極とし、有機EL素子300の下の層に設けられたコンデンサ114の第1の電極板114aを反射板としている。一般に有機EL装置では、陽極(画素電極)としては金属電極よりも透明電極を用いた方が発光効率が良いという特徴があるので、トップエミッション構造の有機EL装置でも、実施の形態1のように第1の電極板114aを反射板として用いることにより、陽極を金属とする必要がなくなり発光効率を高めることができる。
【0028】
コンデンサ114は、第1の電極板114aがゲート電極155と同一の層に形成されている。第1の電極板114aは、ゲート電極155と同じ材料で形成され、ゲート電極155を形成する際に同時に形成することができる。また、コンデンサ114の第2の電極板114bは、シリコン層153と同一の層に同一の材料で形成されており、シリコン層153を形成する際に同時に形成することができる。
第2の電極板114bは、コンタクト部158と、層間絶縁膜156及びその下のゲート絶縁膜154に形成された開口部を貫通する接続用電極を介して電源線103に接続されている。一方、第1の電極板114aはグランド線115に接続されている。これにより、コンデンサ114は、電源線103から画素電極107に供給される駆動電流の過渡現象を抑制する。
【0029】
以上のように、実施の形態1によれば、有機EL素子300の下部に、第2の電極板114bが電源線103に接続され、第1の電極板114aがグランド線115に接続されたコンデンサ114を設けたことにより、有機EL素子300に供給される電流の過渡現象を抑制し、有機EL素子の発光強度を安定させることができる。
また、第1の電極板114aが反射板を兼ねるようにしたので、画素電極107を金属とする必要がなくなり発光効率を高めることができる。
さらに、第1の電極板114aはTFT部200のゲート電極155と同一の層に形成し、第2の電極板114bはシリコン層153と同一の層に形成するようにしたので、コンデンサ114を形成するための製造工程を新たに設ける必要がなく、それぞれゲート電極155とシリコン層153の形成と同時に形成することができる。
【0030】
また、発光機能層110と第1の電極板114aとの間の距離を調整することにより、マイクロキャビティ効果を利用できるようにすることも可能である。
例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)それぞれの光を発光する有機EL素子300が配列されている場合、発光機能層110で発光されたそれぞれの光が、対向電極108と第1の電極板114a(反射板)で反射する際に生じる位相シフトをΦR、ΦG、ΦB、各色の光を発光する有機EL素子300における対向電極108と第1の電極板114aとの間の光学距離をLR、LG、LB、対向電極108側から取り出される光のピーク波長をλR、λG、λB、とした場合、光学距離LR、LG、LBが式(1)を満たすように設定する。
2LR/λR+ΦR/2π=2LG/λG+ΦG/2π=2LB/λB+ΦB/2π
=q+1 …(1)
(qは0を含む正の整数。)
マイクロキャビティ効果を利用することにより、発光機能層110から発光された光を対向電極108と第1の電極板114aの間で共振させて、外部に取り出す光の強度を強めることができる。
【0031】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2による有機EL装置100の画素部Aの構成を示す平面図である。また、図5は、図4のB−B’線での断面図である。
【0032】
実施の形態2では、有機EL素子300の下部に、一方の電極板が電源線103に接続され、他方の電極板がグランド線115に接続されたコンデンサ114を備え、コンデンサ114は有機EL素子に供給される電流の過渡現象を抑制する点は実施の形態1と同じである。
【0033】
また、実施の形態1と同様に、画素電極107は透明電極とし、コンデンサ114の第1の電極板114aを反射板としている。
ただし、実施の形態2では実施の形態1と異なり、コンデンサ114は、第1の電極板114aがソース電極157と同一の層に形成されている。第1の電極板114aは、ソース電極157と同じ材料で形成され、ソース電極157を形成する際に同時に形成することができる。また、コンデンサ114の第2の電極板114bは、ゲート電極155と同一の層に同一の材料で形成されており、ゲート電極155を形成する際に同時に形成することができる。
第1の電極板114aは電源線103に接続され、第2の電極板114bはグランド線115に接続されている。これにより、コンデンサ114は、電源線103から画素電極107に供給される駆動電流の過渡現象を抑制する。
【0034】
以上のように、実施の形態2によれば、有機EL素子300の下部に、第1の電極板114aが電源線103に接続され、第2の電極板114bがグランド線115に接続されたコンデンサ114を設けたことにより、有機EL素子300に供給される電流の過渡現象を抑制し、有機EL素子の発光強度を安定させることができる。
また、第1の電極板114aが反射板を兼ねるようにしたので、画素電極107を金属とする必要がなくなり発光効率を高めることができる。
さらに、第1の電極板114aはTFT部200のソース電極157と同一の層に形成し、第2の電極板114bはゲート電極155と同一の層に形成するようにしたので、コンデンサ114を形成するための製造工程を新たに設ける必要がなく、それぞれソース電極157とゲート電極155の形成と同時に形成することができる。
【0035】
また、実施の形態1と同様に、発光機能層110と第1の電極板114aとの間の距離を調整することにより、マイクロキャビティ効果を利用できるようにすることも可能である。
【0036】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3による有機EL装置100の画素部Aの構成を示す平面図である。また、図7は、図6のB−B’線での断面図である。
【0037】
実施の形態3では、有機EL素子300の下部に、一方の電極板が電源線103に接続され、他方の電極板がグランド線115に接続されたコンデンサ114を備え、コンデンサ114は有機EL素子に供給される電流の過渡現象を抑制する点は実施の形態1及び実施の形態2と同じである。
【0038】
また、実施の形態1、2と同様に、画素電極107は透明電極とし、コンデンサ114の第1の電極板114aを反射板としている。
ただし、実施の形態3では実施の形態1または実施の形態2と異なり、コンデンサ114は、第1の電極板114aがソース電極157と同一の層に形成されている。第1の電極板114aは、ソース電極157と同じ材料で形成され、ソース電極157を形成する際に同時に形成することができる。また、コンデンサ114の第2の電極板114bは、ゲート電極155と同一の層に同一の材料で形成されており、ゲート電極155を形成する際に同時に形成することができる。
第1の電極板114aは電源線103に接続され、第2の電極板114bはグランド線115に接続されている。これにより、コンデンサ114は、電源線103から画素電極107に供給される駆動電流の過渡現象を抑制する。
【0039】
以上のように、実施の形態3によれば、有機EL素子300の下部に、第1の電極板114aが電源線103に接続され、第2の電極板114bがグランド線115に接続されたコンデンサ114を設けたことにより、有機EL素子300に供給される電流の過渡現象を抑制し、有機EL素子の発光強度を安定させることができる。
また、第1の電極板114aが反射板を兼ねるようにしたので、画素電極107を金属とする必要がなくなり発光効率を高めることができる。
さらに、第1の電極板114aはTFT部200のソース電極157と同一の層に形成し、第2の電極板114bはゲート電極155と同一の層に形成するようにしたので、コンデンサ114を形成するための製造工程を新たに設ける必要がなく、それぞれソース電極157とゲート電極155の形成と同時に形成することができる。
【0040】
また、実施の形態1と同様に、発光機能層110と第1の電極板114aとの間の距離を調整することにより、マイクロキャビティ効果を利用できるようにすることも可能である。
【0041】
実施の形態4.
実施の形態1、2及び3では、有機EL装置100の回路構成は図1に示すように、2つのトランジスタと1つの電位保持用コンデンサ111、及び過渡電流吸収用コンデンサ114を備えている。しかし、画素回路の構成は、図1に示すものに限定されず、例えば、図8〜図10に示すような構成の回路であってもよい。なお、図8〜図10では1画素分の回路を示している。
図8に示す画素回路は、スイッチングトランジスタ112、駆動用トランジスタ113、有機EL素子300、コンデンサ111、コンデンサ114の他に、消去用トランジスタ116を含んで構成される。消去用トランジスタ116は、ゲートがリセット線117に接続され、ソースがスイッチングトランジスタ112のドレインに接続され、ドレインがグランド線115に接続されている。
【0042】
図8に示す画素回路の動作は以下の通りである。走査線101を介して走査信号が供給され、スイッチングトランジスタ112が選択されている期間には、信号線102を介して駆動用トランジスタ113のゲートにデータ信号が書き込まれる。駆動用トランジスタ113のソース−ドレイン経路を通じて、データ信号の大きさに応じた電流が電源線103から有機EL素子300に供給される。これにより、有機EL素子300がデータ信号の大きさに応じた輝度で発光する。また、リセット線117を介してリセット信号が供給され、消去用トランジスタ116が選択されている期間には、駆動用トランジスタ113のソース−ドレイン間の電位が0ボルトとなり、駆動用トランジスタ113はオフ状態となる。それにより、有機EL素子300に電流が供給されなくなり、有機EL素子300は非発光状態となる。
【0043】
また、図9に示す画素回路は、3つのスイッチングトランジスタSw−TFT1,2,3、駆動用トランジスタDr−TFT、有機EL素子300、コンデンサC1,C2、コンデンサ114を含んでいる。
図9に示す画素回路は、電圧プログラム方式の画素回路である。この画素回路の動作について説明する。まず、データ線Dataの電圧が0ボルトの状態でSelect線に信号が入力されてSw−TFT1がオンになる。次に、AZ線に信号が入力されてSw−TFT3もオンになる。さらに、AZB線に信号が入力されてSw−TFT2がオンになる。これにより駆動用トランジスタDr−TFTのゲート電圧が充電される。このとき、Dr−TFTのゲート電圧VGは、有機ELの発光閾値電圧Vthよりも高い電位に充電される。次に、AZB線の信号がオフになってSw−TFT2がオフになり、Dr−TFTのゲート電圧VGが発光閾値電圧Vthになるまで放電される。次に、AZ線の信号がオフになってSw−TFT3がオフになる。次に、データ線Dataからデータ信号Vdataが入力され、Dr−TFTのゲート電圧VGがVth+Vdataとなる。次に、Select線の信号とデータ信号Vdataがオフになると共に、AZB線に信号が入力されてSw−TFT2がオンになることにより、ゲート電圧VGによって有機EL素子300に電流が流れ発光する。
【0044】
また、図10に示す画素回路は、3つのスイッチングトランジスタSw−TFT1,2,3、駆動用トランジスタDr−TFT、有機EL素子300、コンデンサC1,C2、コンデンサ114を含んでいる。VGPは可変電流源である。
図10に示す画素回路は、電流プログラム方式の画素回路である。この画素回路の動作について説明する。まず、Select1線に信号が入力され、Sw−TFT1,2がオンになる。Sw−TFT1がオンになることによりDr−TFTのゲート電圧VGが上昇する。そして、VGが一定値以上になるとDr−TFTがオンになりドレインーソース間に電流が流れる。ここで、VGPには一定の電流が流れるようにプログラムされているため、Dr−TFTからVGPに流れる電流量はVGPにプログラムされた電流量によって決定される。よって、Dr−TFTのゲート電圧VGもこの電流量により決まる。次に、Select1線の信号をオフにし、Select2線の信号をオンにすると、Sw−TFT3がオンになる。このとき、Dr−TFTのプログラムされたゲート電圧VGにしたがって有機EL素子300に電流が流れ発光する。
【0045】
いずれの回路を用いても、図1に示す画素回路を用いた場合と同様の効果を得ることができる。また、以上に示す画素回路の他にも、各種の電圧プログラム方式または電流プログラム方式の画素回路を用いることができる。
なお、電圧プログラム方式と電流プログラム方式は、有機EL素子を用いた画素へのデータ供給方法であり、電圧プログラム方式では、データ線に対するデータ信号の供給を電圧ベースで行い、電流プログラム方式ではデータ線に対するデータ信号の供給を電流ベースで行う。
【0046】
電子機器
次に、上述した有機EL装置100を備えた電子機器の具体例について説明する。
図11は、有機EL装置100を備えた電子機器の具体例を示す斜視図である。図11(A)は、電子機器の一例である携帯電話機を示す斜視図である。この携帯電話機1000は、本発明にかかる有機EL装置100を用いて構成された表示部1001を備えている。図11(B)は、電子機器の一例である腕時計を示す斜視図である。この腕時計1100は、本発明にかかる有機EL装置100を用いて構成された表示部1101を備えている。図11(C)は、電子機器の一例である携帯型情報処理装置1200を示す斜視図である。この携帯型情報処理装置1200は、キーボード等の入力部1201、演算手段や記憶手段などが格納された本体部1202、および本発明にかかる有機EL装置100を用いて構成された表示部1203を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明による電気光学装置の例である有機EL装置の回路構成を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1による有機EL装置の画素部の構成を示す平面図である。
【図3】図3は、図2のB−B’線での断面図である。
【図4】図4は、実施の形態2による有機EL装置の画素部の構成を示す平面図である。
【図5】図5は、図4のB−B’線での断面図である。
【図6】図6は、実施の形態3による有機EL装置の画素部の構成を示す平面図である。
【図7】図7は、図6のB−B’線での断面図である。
【図8】図8は、本発明による電気光学装置の例である有機EL装置の回路構成の他の例を示す図である。
【図9】図9は、本発明による電気光学装置の例である有機EL装置の回路構成の他の例を示す図である。
【図10】図10は、本発明による電気光学装置の例である有機EL装置の回路構成の他の例を示す図である。
【図11】本発明による電子機器の例を示した図である。
【符号の説明】
【0048】
100 有機EL装置、101 走査線、102 信号線、103 電源線、104 データ線駆動回路、105 走査線駆動回路、107 画素電極、108 対向電極、110 発光機能層、111 コンデンサ、112 スイッチングトランジスタ、113 駆動用トランジスタ、114 コンデンサ、114a 第1の電極板、114b 第2の電極板、115 グランド線、116 消去用トランジスタ、117 リセット線、151 ガラス基板、152 絶縁層、153 シリコン層、153S ソース領域、153D ドレイン領域、153C チャネル領域、154 ゲート絶縁膜、155 ゲート電極、156 層間絶縁膜、157 ソース電極、158,159 コンタクト部、160,161 絶縁層、162 感光性アクリル層、163 透明シール層、200 TFT部、300 有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極と、前記画素電極と対向する対向電極と、前記画素電極と前記対向電極の間に挟み込まれた発光機能層とを含む発光素子と、
少なくとも1つのトランジスタを含み、前記発光素子を駆動する駆動回路と、
2枚の電極板の一方が電源供給線に接続され、他方がグランド線に接続された過渡電流吸収用コンデンサを備え、
前記過渡電流吸収用コンデンサは、前記発光機能層の下層に設けられ、
前記2枚の電極板のうち前記発光機能層に近い第1の電極板は、前記発光機能層より発光された光を反射する反射板を兼ねていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
複数の走査線と、前記走査線に直交して配置される複数の信号線と、複数の電源供給線と、各走査線と各信号線との交点付近に設けられる複数の画素部を備え、
前記画素部は、
前記走査線を介して走査信号がゲートに供給される選択トランジスタと、
前記選択トランジスタを介して前記信号線から供給される画素信号がゲートに供給される駆動用トランジスタと、
前記駆動用トランジスタを介して前記電源線に電気的に接続されたときに前記電源供給線から駆動電流が流れ込む画素電極と、
前記画素電極と対向する対向電極と、
前記画素電極と前記対向電極の間に挟み込まれた発光機能層と、
2枚の電極板の一方が前記電源供給線に接続され、他方がグランド線に接続された過渡電流吸収用コンデンサを備え、
前記過渡電流吸収用コンデンサは、前記発光機能層の下層に設けられ、
前記2枚の電極板のうち前記発光機能層に近い第1の電極板は、前記発光機能層より発光された光を反射する反射板を兼ねていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
前記選択トランジスタを介して前記信号線から供給される画素信号を保持する保持用コンデンサを備え、
前記保持用コンデンサによって保持された画素信号が、前記駆動用トランジスタのゲートに供給されることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
ゲートがリセット線に接続され、ソースが選択トランジスタのドレインに接続され、ドレインがグランド線に接続された消去用トランジスタをさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記画素部は、前記駆動用トランジスタのゲート電圧を補償するためのトランジスタを2つ備えたことを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記駆動回路は、4つのトランジスタと1つのコンデンサを備え、
外部に定電流源を有し、
前記発光素子に流れる電流を制御する駆動用トランジスタのゲート電圧は、前記定電流源に設定された電流量によって決定されることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第1の電極板は、前記トランジスタのゲート電極と同一の層に形成され、
前記第1の電極板に対向する第2の電極板は、前記トランジスタの半導体層と同一の層に形成されたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第1の電極板は、前記駆動用トランジスタのソース電極と同一の層に形成され、
前記第1の電極板に対向する第2の電極板は、前記駆動用トランジスタのゲート電極と同一の層に形成されたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記第1の電極板は、前記駆動用トランジスタのソース電極と同一の層に形成され、
前記第1の電極板に対向する第2の電極板は、前記駆動用トランジスタの半導体層と同一の層に形成されたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記発光機能層と前記反射板との間の距離が、前記光のマイクロキャビティ効果が発生するように調整されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10に記載のいずれかの電気光学装置を備えた電子機器。
【請求項12】
画素電極と、前記画素電極と対向する対向電極と、前記画素電極と前記対向電極の間に挟み込まれた発光機能層とを含む発光素子と、
少なくとも1つのトランジスタを含み、前記発光素子を駆動する駆動回路を備えた電気光学装置の製造方法であって、
前記トランジスタを形成する工程において、前記発光機能層の下の位置に、2枚の電極板の一方が電源供給線に接続され、他方がグランド線に接続され、前記2枚の電極板のうち前記発光機能層に近い第1の電極板は、前記発光機能層より発光された光を反射する反射板を兼ねた過渡電流吸収用コンデンサを同時に形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
前記トランジスタのゲート電極と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板を形成する工程と、
前記トランジスタの半導体層と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板に対向する第2の電極板を形成する工程を備えたことを特徴とする請求項12に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項14】
前記トランジスタのソース電極と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板を形成する工程と、
前記トランジスタのゲート電極と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板に対向する第2の電極板を形成する工程を備えたことを特徴とする請求項12に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項15】
前記トランジスタのソース電極と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板を形成する工程と、
前記トランジスタの半導体層と同一層で前記発光機能層の下の位置に、前記第1の電極板に対向する第2の電極板を形成する工程を備えたことを特徴とする請求項12に記載の電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−293076(P2007−293076A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121671(P2006−121671)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】