説明

電気光学装置、電子機器

【課題】製造性を損なうことなくイオン性不純物のトラップ効率を向上させた電気光学装置を提供する。
【解決手段】本発明の電気光学装置は、電気光学物質層を挟持して対向配置された第1基板及び第2基板と、第1基板と第2基板とを貼り合わせるシール材と、複数の画素が配列された画素領域と、画素領域とシール材との間の周辺領域に電極を備えて設けられたイオントラップ部と、を有する電気光学装置であって、イオントラップ部は、交流電圧を印加される第1トラップ電極と交流電圧の基準電位を入力される第2トラップ電極とを有しており、前記イオントラップ部は、前記交流電圧の印加において、正極性の電圧印加時と負極性の電圧印加時とで前記電気光学物質層を流れる電流量が、前記画素領域よりも大きく異なるように設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置において、製造過程で液晶層中に混入したイオン性不純物や、光照射等による部材の劣化によって生じたイオン性不純物が、表示品質の低下を引き起こすことが知られている。これらのイオン性不純物は通電により移動し、表示領域に濃度分布を形成する。そして、イオン性不純物の濃度が高い領域において液晶層の保持率が低下し、輝度が低下する結果、シミやムラとなって視認される。
製造過程においてイオン性不純物を全く混入させないことは困難であるため、非表示領域に設けた電極にイオン性不純物を吸着させることにより表示領域へのイオン性不純物の拡散を防止することが提案されている。さらに、イオン性不純物を高効率にトラップするために、電極上に有機材料のオーバーコートを設けることも提案されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−249105号公報
【特許文献2】特開平6−289408号公報
【特許文献3】特開平4−125617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3記載の構成では、有機材料のオーバーコートを選択的に形成するためのプロセスの追加が必要であり、製造プロセスが煩雑化したり、製造コストが増加するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、製造性を損なうことなくイオン性不純物のトラップ効率を向上させた電気光学装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気光学装置は、電気光学物質層を挟持して対向配置された第1基板及び第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせるシール材と、複数の画素が配列された画素領域と、前記画素領域と前記シール材との間の周辺領域に電極を備えて設けられたイオントラップ部と、を有する電気光学装置であって、前記イオントラップ部は、交流電圧を印加される第1トラップ電極と前記交流電圧の基準電位を入力される第2トラップ電極とを有しており、前記イオントラップ部は、前記交流電圧の印加において、正極性の電圧印加時と負極性の電圧印加時とで前記電気光学物質層を流れる電流量が、前記画素領域よりも大きく異なるように設定されていることを特徴とする。
【0007】
この構成では、イオントラップ部に極性の異なる電圧を印加したときに、電気光学物質層に流れる電流量の差が、画素領域における電流量の差よりも大きくなるように設定されている。この電流量の極性差に起因して、イオントラップ部における電気光学物質層と第1基板との界面、又は電気光学物質層と第2基板との界面に電荷が滞留し、残留DC電圧が生じる。この残留DC電圧により形成される電界の作用により、電気光学物質層に含まれるイオン性不純物を第1トラップ電極又は第2トラップ電極に効率良く吸着保持させることができる。かかる構成では、イオントラップ部に電気的な非対称性を付与すればよいため、特別な構成や製造工程は不要であり、電気光学装置の製造性を損なうことはない。
【0008】
前記第1基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第1トラップ電極と、トラップ部絶縁膜と、第1配向膜とがこの順に積層されており、前記第2基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第2トラップ電極と、第2配向膜とがこの順に積層されている構成としてもよい。
この構成によれば、第1トラップ電極上にトラップ部絶縁膜を形成するという簡便な工程で製造することができる電気光学装置が提供される。
【0009】
前記第1基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第1トラップ電極と、第1配向膜とがこの順に積層されており、前記第2基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第2トラップ電極と、トラップ部絶縁膜と、第2配向膜とがこの順に積層されている構成としてもよい。
この構成によれば、第2トラップ電極上にトラップ部絶縁膜を形成するという簡便な工程で製造することができる電気光学装置が提供される。
【0010】
前記第1基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第1トラップ電極と、第1トラップ部絶縁膜と、第1配向膜とがこの順に積層され、前記第2基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第2トラップ電極と、第2トラップ部絶縁膜と、第2配向膜とがこの順に積層されており、前記第1トラップ部絶縁膜と前記第2トラップ部絶縁膜は互いに異なる膜厚を有する構成としてもよい。
この構成によれば、第1トラップ電極及び第2トラップ電極上に厚さの異なるトラップ部絶縁膜をそれぞれ形成する簡便な工程で製造することができる電気光学装置が提供される。
【0011】
前記第1基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第1トラップ電極と、トラップ部絶縁膜と、前記第2トラップ電極と、配向膜とがこの順に積層されている構成としてもよい。
この構成によれば、電気光学物質層の厚さ方向と交差する方向(概略基板面方向)に形成した電界によりイオン性不純物をトラップするイオントラップ部を備えた電気光学装置が提供される。
【0012】
本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、信頼性に優れた光変調手段を具備した電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電気光学装置の第1実施形態である液晶装置の平面図。
【図2】図1に示すI−I線に沿う位置における液晶装置の部分断面図。
【図3】第1実施形態に係る作用説明図。
【図4】第2実施形態に係る液晶装置の要部を示す概略断面図。
【図5】第3実施形態に係る液晶装置の要部を示す概略断面図。
【図6】第4実施形態に係る液晶装置の要部を示す概略断面図。
【図7】電子機器の一実施の形態であるプロジェクターを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、電気光学装置の第1実施形態である液晶装置の平面図である。図2は、図1に示すI−I線に沿う位置における液晶装置の部分断面図である。
液晶装置(電気光学装置)100は、TFTアレイ基板(第1基板)10と、TFTアレイ基板10と対向配置された対向基板(第2基板)20と、TFTアレイ基板10と対向基板20との間に挟持された液晶層(電気光学物質層)50と、液晶層50の周囲を囲んで形成されるとともに一部に液晶注入口51aを有する矩形枠状のシール材51と、シール材51の液晶注入口51aを封止する封止剤52と、を備えている。
【0016】
TFTアレイ基板10上には、シール材51とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が対向配置され、シール材51を介してTFTアレイ基板10と対向基板20とが貼り合わされている。TFTアレイ基板10は、対向基板20よりも大きく、対向基板20の一端部よりも外側に張り出した張出部10aを備えている。張出部10aには、駆動ICチップ101が実装されており、また複数の外部回路接続端子102が形成された端子部が設けられている。
【0017】
シール材51は、TFTアレイ基板10と対向基板20との対向領域の周縁部に沿って設けられている。液晶注入口51aは、シール材51の4つの辺のうち張出部10aに面する辺に設けられている。封止剤52は、対向基板20の端面に沿って、張出部10aの液晶注入口51aを外側から閉塞する位置に塗布されている。シール材51と封止剤52とが液晶層50の周囲を囲み、液晶層50をTFTアレイ基板10と対向基板20との間に封止している。
【0018】
シール材51に囲まれた領域には、複数の画素PXがマトリクス状に配置されてなる矩形状の画素領域1Aと、画素領域1Aとシール材51との間に位置する矩形枠状の周辺領域1Bとが設けられている。シール材51の外側における対向基板20の角部には、TFTアレイ基板10と対向基板20とを電気的に接続するための銀点等を有する基板間導通部106が設けられている。
【0019】
周辺領域1Bには、画素領域1Aを取り囲む矩形枠状のダミー画素領域1Dと、ダミー画素領域1Dを取り囲む矩形枠状のイオントラップ部60と、が設けられている。
ダミー画素領域1Dには、画素領域1Aの最外周部に位置する画素PXと各々隣り合う複数のダミー画素DMが設けられている。ダミー画素DMは画像の表示には用いられない画素であり、例えば常時黒表示状態とされることにより、画素領域1Aを縁取る周辺見切りの一部として用いられる。
【0020】
イオントラップ部60は、図2に示すように、TFTアレイ基板10の基板本体10A上に形成された第1トラップ電極61を備えている。イオントラップ部60では、第1トラップ電極61と共通電極21(図2参照)との間に発生する液晶層厚方向の電界によって液晶層50中のイオン性不純物をトラップする。したがって本実施形態では、共通電極21のうちの第1トラップ電極61と液晶層50を介して対向する部分が、イオントラップ部60の第2トラップ電極62である。
【0021】
イオントラップ部60は、画素領域1Aを取り囲んで配置されている。図1では、画素領域1Aから周辺領域1Bに向かって拡散するイオン性不純物と、シール材51又は封止剤52から溶出し、画素領域1Aに向けて侵入するイオン性不純物とを漏れなくトラップするために、イオントラップ部60は、全体として、画素領域1Aの外周に沿って閉じた枠状に形成されている。
第1トラップ電極61は、画素領域1Aを取り囲む矩形枠状の電極である。第1トラップ電極61は、シール材51を跨いで延びる引き出し線63、64を介して駆動ICチップ101に接続されている。
【0022】
次に、図2を参照して液晶装置100の断面構造について説明する。
TFTアレイ基板10は、ガラスや石英などの透明基板あるいはシリコンなどの不透明基板からなる基板本体10A上に、画素電極30、ダミー画素電極30Dとそれらを駆動する図示略の駆動素子や電極を形成した素子基板である。
【0023】
基板本体10Aの液晶層50側の面には、シリコン酸化膜等からなる下地絶縁膜11が形成されている。下地絶縁膜11上に、複数種の配線35、36、65a、65b、67、69、71が形成されている。これらの配線を覆うようにしてシリコン酸化膜等からなる第1層間絶縁膜12が形成され、さらに第1層間絶縁膜12を覆うようにしてシリコン窒化膜等からなる第2層間絶縁膜13が形成されている。
【0024】
第2層間絶縁膜13上に、画素電極30、ダミー画素電極30D、及び配線72が形成されている。
画素電極30及びダミー画素電極30Dは、第1層間絶縁膜12及び第2層間絶縁膜13を貫通して形成されたコンタクトホールを介して、下層側の配線35、36に接続されている。画素電極30及びダミー画素電極30Dは、本実施形態の場合、チタン窒化膜上にアルミニウム膜を形成した積層膜からなる反射電極である。なお、液晶装置100を透過型の液晶装置として構成する場合には、画素電極30及びダミー画素電極30Dは、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用いて形成される。
【0025】
配線72は、第1層間絶縁膜12及び第2層間絶縁膜13を貫通して形成されたコンタクトホールを介して、下層側の配線71に接続されている。配線71及び配線72は、シール材51の内側に形成された画素PXやダミー画素DMと、シール材51の外側の駆動ICチップ101とを接続する配線である。本実施形態の場合、異なる配線層に形成された配線71、72が、シール材51の形成領域内において接続されている。
【0026】
画素電極30、ダミー画素電極30D及び配線72を覆うようにして絶縁膜31が形成されている。絶縁膜31は、液晶層50の抵抗値に対して2桁以上高抵抗の材料を用いて形成され、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる。絶縁膜31上に、第1トラップ電極61、導通部電極66、及び外部回路接続端子102が形成されている。
【0027】
第1トラップ電極61は、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13、及び絶縁膜31を貫通して形成されたコンタクトホールを介して、下層側の配線65a、65bに接続されている。配線65a、65bは、図1に示した引き出し線63、64を介して駆動ICチップ101に接続されている。本実施形態の場合、1つの第1トラップ電極61に対して、2つの配線65a、65bが接続されているが、配線65a、65bは単一の配線であってもよい。
【0028】
導通部電極66は、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13、及び絶縁膜31を貫通して形成されたコンタクトホールを介して、下層側の配線67に接続されている。配線67は駆動ICチップ101に接続されている。導通部電極66上には銀点等の基板間導通部106が設けられている。
外部回路接続端子102は、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13、及び絶縁膜31を貫通して形成されたコンタクトホールを介して、下層側の配線69に接続されている。配線69は駆動ICチップ101に接続されている。
【0029】
シール材51の内側のTFTアレイ基板10の表面には、絶縁膜31及び第1トラップ電極61を覆う第1配向膜14が形成されている。第1配向膜14としては、斜方蒸着等により柱状構造を形成したシリコン酸化膜からなる無機配向膜や、ポリイミド等の有機配向膜を適用することができる。また第1配向膜14は、シール材51の形成領域やシール材51の外側の領域まで延設されていてもよい。
【0030】
対向基板20は、ガラスや石英などの透明基板からなる基板本体20Aを備えている。
基板本体20Aの液晶層50側の面には、シリコン酸化膜等からなる下地絶縁膜23が形成されている。下地絶縁膜23は、基板本体20Aの外周部における膜厚が、シール材51よりも内側の領域における膜厚よりも薄く形成されている。すなわち下地絶縁膜23には、遮光膜BMの外周端に沿って段差部23dが形成されている。
【0031】
下地絶縁膜23上には、TFTアレイ基板10上の第1トラップ電極61と対向する領域に、金属膜やカーボン膜からなる遮光膜BMが形成されている。遮光膜BMは、ダミー画素領域1Dの周囲を縁取る矩形枠状の周辺見切りとして形成されている。遮光膜BMは、画素PX及びダミー画素DMを平面的に区画するブラックマトリクスとしての遮光膜を含んでいてもよい。
【0032】
遮光膜BM及び下地絶縁膜23を覆って、シリコン窒化膜等からなる保護絶縁膜22が形成されている。保護絶縁膜22は必要に応じて設けられる絶縁膜であり、省略することもできる。
保護絶縁膜22を覆って、ITO等の透明導電材料からなる共通電極21が形成されている。本実施形態の場合、TFTアレイ基板10上の第1トラップ電極61と対向する領域にも共通電極21が形成され、共通電極21の一部が第2トラップ電極62を構成している。
【0033】
共通電極21のほぼ全面を覆って、絶縁膜32が形成されている。絶縁膜32のうち、TFTアレイ基板10の第1トラップ電極61と対向する部分が、本実施形態におけるトラップ部絶縁膜82である。一方、絶縁膜32のうち、画素電極30と対向する領域に形成された部分が、本実施形態における画素部絶縁膜である。
【0034】
絶縁膜32は、液晶層50の抵抗値に対して2桁以上高抵抗の材料を用いて形成される。例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜の抵抗値は1×1011Ω〜1×1012Ω程度であり、絶縁膜32を形成するための高抵抗材料として好適である。
絶縁膜32の膜厚は、液晶層に対して十分に高い抵抗値が得られる膜厚であれば特に限定されない。絶縁膜32をシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜により構成する場合には、100nm以上400nm以下の膜厚とすることで、通常の液晶材料を用いて形成された液晶層50に対して100倍程度の抵抗値を得ることができる。
【0035】
絶縁膜32には、基板間導通部106の形成位置に対応して開口部32aが形成されている。開口部32aの内側に露出された共通電極21には、基板間導通部106が接続されている。基板間導通部106の液晶層50側には、シール材51が設けられている。シール材51の内周端は段差部23dによって形成された対向基板20表面の段差部分に配置されている。
【0036】
シール材51に囲まれた領域の対向基板20の表面には、絶縁膜32を覆う第2配向膜16が形成されている。第2配向膜16はTFTアレイ基板10上の第1配向膜14と同様、有機配向膜又は無機配向膜により形成することができる。また第2配向膜16はシール材51の形成領域やシール材51の外側の領域まで延設されていてもよい。
【0037】
液晶層50は、画素電極30と共通電極21との間に発生する液晶層厚方向の電界(縦電界)によって駆動される縦電界方式の液晶層である。縦電界方式としては、VA(Vertical Alignment)方式が代表的であるが、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式やTN(Twisted Nematic)方式などの他の方式でもよい。
【0038】
なお、本実施形態では、TFTアレイ基板10上の画素電極30と対向基板20上の共通電極21との間に電界を形成する縦電界方式により液晶層50を駆動しているが、共通電極21として機能する電極をTFTアレイ基板10側に設け、この電極と画素電極30との間に発生する基板面方向の電界(横電界;液晶層の厚さ方向と概ね直交する方向の電界)によって液晶層50を駆動してもよい。このような駆動方式は、横電界方式と呼ばれる。横電界方式としては、IPS(In-Plane Switching)方式やFFS(Fringe Field Switching)方式が代表的である。
【0039】
液晶装置100では、画像表示前、画像表示中、または画像表示後に、第1トラップ電極61に交流電圧を印加し、液晶層に流れる電流量の極性差に起因して生じる残留DC電圧を利用して液晶層50中のイオン性不純物を効率良くトラップする。以下、かかる作用について図3を参照しつつ詳細に説明する。
【0040】
図3は第1実施形態に係る作用説明図である。
図3には、作用説明に必要な液晶装置100の要部のみが示されている。画素電極30及び第1トラップ電極61と、共通電極21とが液晶層50を介して対向配置されている。画素電極30上に絶縁膜31が形成され、絶縁膜31及び第1トラップ電極61上には第1配向膜14が形成されている。共通電極21上にトラップ部絶縁膜82を含む絶縁膜32が形成されている。絶縁膜32上に第2配向膜16が形成されている。
【0041】
まず、画素領域1Aの画素PXにおいて、画素電極30に5Vと−5Vを周期的に繰り返す交流電圧を印加し、共通電極21に0Vの電圧を印加すると、画素電極30に正極性の電圧(5V)が印加される期間には画素電極30から共通電極21に向かう電界(第1の画素電界)が形成され、負極性の電圧(−5V)が印加される期間には共通電極21から画素電極30に向かう電界(第2の画素電界)が形成される。
【0042】
画素PXでは、画素電極30上に絶縁膜31を形成し、共通電極21上に絶縁膜32を形成することで、上記の第1の画素電界が形成されたときの液晶層50の比抵抗と、第2の画素電界が形成されたときの液晶層50の比抵抗とに差が生じないように構成している。これによって、正極性の電圧を印加したときと、負極性の電圧を印加したときとで液晶層50に流れる電流がほぼ同等の値となるようにしている。この電流バランスが崩れると、画素PX内に電荷が滞留して残留DC電圧が発生し、焼き付きやフリッカーの原因となるからである。
【0043】
一方、本実施形態のイオントラップ部60では、第1トラップ電極61に5Vと−5Vを周期的に繰り返す交流電圧を印加し、共通電極21に0Vの電圧を印加すると、第1トラップ電極61に5Vが印加される期間には第1トラップ電極61から第2トラップ電極62に向かう第1の電界が形成され、−5Vが印加される期間には第2トラップ電極62から第1トラップ電極61に向かう第2の電界が形成される。
なお、第1トラップ電極61に入力する交流電圧の波形は特に限定されず、矩形波、正弦波、三角波等、任意の波形を用いることができ、画素領域1Aの画素電極30に入力される信号波形と共通化してもよい。
【0044】
ここで、本実施形態のイオントラップ部60では、図3に示すように、第2トラップ電極62上にのみトラップ部絶縁膜82を形成し、第1トラップ電極61上には絶縁膜31を形成しないことで、第1の電界が形成されたときの液晶層50の比抵抗と、第2の電界が形成されたときの液晶層50の比抵抗との間にあえて差異(比抵抗の極性差)を生じさせ、正極性の電圧が印加されたときに液晶層50に流れる電流量と、負極性の電圧が印加されたときに液晶層50に流れる電流量とを異ならせ、電流量の極性差を生じさせている。具体的には、画素PXとイオントラップ部60において、同等の交流電圧を印加したときに、イオントラップ部60において液晶層50に流れる電流量の極性差(比抵抗の極性差)が、画素PXにおける電流量の極性差よりも大きくなるように、イオントラップ部60が構成されている。
【0045】
上記のような電流量の極性差(電気的な非対称性)を生じさせることで、イオントラップ部60内に電荷を蓄積させ、液晶層50に作用する直流電圧(残留DC電圧)を発生させることができる。本実施形態の場合、トラップ部絶縁膜82の表面に負電荷が集積し、かかる負電荷に起因する直流電圧(残留DC電圧)が発生する。本実施形態のイオントラップ部60では、上記の残留DC電圧を利用して液晶層50中の正電荷のイオン性不純物51pをトラップ部絶縁膜82の表面(第2配向膜16の表面)に吸着させる。
なお、イオントラップ部60は表示に利用されない領域であり、遮光膜BMにより遮光されているため、大きな残留DC電圧が発生したとしても表示品質に影響することはない。
【0046】
以上詳細に説明したように、本実施形態の液晶装置100によれば、イオントラップ部60を作動させることにより、画素領域1Aで発生したイオン性不純物や、シール材51や封止剤52から溶出したイオン性不純物を周辺領域1Bに固定することができる。その結果、イオン性不純物が画素領域1A内の無機配向膜等に吸着することによって生じる焼きつきなどの表示不良が少ない液晶装置とすることができる。
【0047】
また本実施形態のトラップ部絶縁膜82(絶縁膜32)は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などの従来から液晶装置の構成材料として用いられている絶縁膜を用いて形成することができるため、特別な材料や製造工程は不要である。したがって、トラップ部絶縁膜82を設けたとしても液晶装置100の製造性が損なわれることはない。
【0048】
本発明者は、上記した電圧条件において、イオントラップ部60の効果を検証した。具体的には、第1実施形態の液晶装置100において、イオントラップ部60を動作させた場合と、動作させない場合とで、画素領域1Aにおける輝度の経時変化を比較した。その結果、イオントラップ部60を動作させない場合には最大で35%程度の輝度低下が生じる箇所が存在したのに対して、イオントラップ部60を動作させた場合には、輝度低下は最大で18%程度にまで抑えられた。このことから、本実施形態に係る構成を具備したイオントラップ部60によりイオン性不純物を十分にトラップできることが確認された。
【0049】
なお、本実施形態では、イオントラップ部60が画素領域1Aを取り囲む平面視矩形枠状である場合について説明したが、かかる構成に限定されるものではない。
具体的に、周辺領域1Bにおいて、間欠的に複数のイオントラップ部60(第1トラップ電極61)が配置されている構成としてもよい。例えば、画素領域1Aの角部に対応する位置にのみイオントラップ部60が設けられていてもよく、画素領域1Aの辺縁に沿って直線状のイオントラップ部60が設けられている構成としてもよい。また他の例としては、矩形枠状のイオントラップ部60を二重枠状や三重枠状に複数配置した構成としてもよい。上記各変形例は、後述の各実施形態においても同様に適用することができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、図4を参照しつつ電気光学装置の第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態に係る液晶装置(電気光学装置)200の要部を示す概略断面図である。
本実施形態の液晶装置200は、第1実施形態に係る液晶装置100とその基本構成において共通する一方、イオントラップ部の構成において異なる。したがって、図4に示さない構成要素についても、特に断りの無い限り液晶装置100と同様の構成を備えているものとする。
【0051】
液晶装置200におけるイオントラップ部60では、第1トラップ電極61上に絶縁膜31が形成されている一方、第2トラップ電極62(共通電極21)上には絶縁膜32は形成されていない。
画素PXにおいて、画素電極30上に絶縁膜31が形成され、共通電極21上に絶縁膜32が形成されている点は第1実施形態と同様である。また図4では省略されているが、ダミー画素DMにおいても、ダミー画素電極30D上に絶縁膜31が形成され、共通電極21上に絶縁膜32が形成されている。
【0052】
絶縁膜31のうちの第1トラップ電極61上に形成された部分がトラップ部絶縁膜81である。一方、絶縁膜31のうちの画素電極30上に形成された部分が、本実施形態における画素部絶縁膜である。絶縁膜31は、例えば、厚さ100nm以上400nm以下のシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜からなる。
【0053】
本実施形態の液晶装置において、第1トラップ電極61に5Vと−5Vを周期的に繰り返す交流電圧を印加し、第2トラップ電極62(共通電極21)に0Vの電圧を印加すると、第1トラップ電極61上にのみトラップ部絶縁膜81が形成されていることで、第1トラップ電極61に5Vが印加された期間において液晶層50に流れる電流量と、第1トラップ電極61に−5Vが印加された期間に液晶層50に流れる電流量との間に差異が生じる。その結果、トラップ部絶縁膜81の表面に正電荷が滞留し、残留DC電圧が発生する。この残留DC電圧により、液晶層50中の負電荷のイオン性不純物51nが第1トラップ電極61上に吸着保持される。
【0054】
また本実施形態では、画素電極30及び第1トラップ電極61上にわたって形成されている絶縁膜31の一部をトラップ部絶縁膜81として用いているが、TFTアレイ基板10に形成されている第1層間絶縁膜12や第2層間絶縁膜13の一部をトラップ部絶縁膜として用いることもできる。具体的には、図2に示した第1トラップ電極61を、配線65a、65bと同じ配線層に形成することで、第1層間絶縁膜12と第2層間絶縁膜13と絶縁膜31の積層膜からなるトラップ部絶縁膜を備えた構成とすることができる。また、第1トラップ電極61を第1層間絶縁膜12上に形成することで、第2層間絶縁膜13と絶縁膜31の積層膜からなるトラップ部絶縁膜を備えた構成とすることができる。
【0055】
(第3実施形態)
次に、図5を参照しつつ電気光学装置の第3実施形態について説明する。
図5は、第3実施形態に係る液晶装置(電気光学装置)300の要部を示す概略断面図である。
本実施形態の液晶装置300は、第1実施形態に係る液晶装置100とその基本構成において共通する一方、イオントラップ部の構成において異なる。したがって、図5に示さない構成要素についても、特に断りの無い限り液晶装置100と同様の構成を備えているものとする。
【0056】
液晶装置300におけるイオントラップ部60では、第1トラップ電極61上に絶縁膜31が形成されるとともに、第2トラップ電極62(共通電極21)上にも絶縁膜32が形成されている。絶縁膜31のうちの第1トラップ電極61上に形成された部分が第1トラップ部絶縁膜91であり、絶縁膜32のうち、第1トラップ電極61と対向する部分が第2トラップ部絶縁膜92である。また絶縁膜31のうちの画素電極30上に形成された部分と、絶縁膜32のうちの画素電極30と対向する領域に形成された部分がそれぞれ本実施形態における画素部絶縁膜である。
【0057】
絶縁膜31及び絶縁膜32は、例えばシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜からなる。絶縁膜31及び絶縁膜32は、互いに異なる厚さを有して形成されている。絶縁膜31及び絶縁膜32の膜厚は特に限定されないが、例えば合計の厚さが100nm以上400nm以下となる膜厚とされる。さらに具体的に例示すると、第1トラップ電極61上における絶縁膜31(第1トラップ部絶縁膜91)の厚さが300nm、第2トラップ電極62上における絶縁膜32(第2トラップ部絶縁膜92)の厚さが100nmであり、合計厚さが400nmである。
【0058】
ここで、第1トラップ電極61上に厚さ300nmの第1トラップ部絶縁膜91が形成され、かつ第2トラップ電極62上に厚さ100nmの第2トラップ部絶縁膜92が形成されている場合に、第1トラップ電極61に5Vと−5Vを周期的に繰り返す交流電圧を印加し、第2トラップ電極62(共通電極21)に0Vの電圧を印加したとする。
【0059】
そうすると、第1トラップ部絶縁膜91と第2トラップ部絶縁膜92の膜厚が互いに異なっているために、第1トラップ電極61に5Vが印加された期間に液晶層50に流れる電流量と、第1トラップ電極61に−5Vが印加された期間に液晶層50に流れる電流量との間に差異が生じる。この電流量の極性差によって、膜厚が大きい第1トラップ部絶縁膜91の表面に正電荷が滞留し、残留DC電圧が発生する。かかる残留DC電圧により、液晶層50中の負電荷のイオン性不純物51nが第1トラップ電極61上に吸着保持される。
【0060】
なお、本実施形態において、第1トラップ部絶縁膜91の膜厚を、第2トラップ部絶縁膜92の膜厚よりも小さくすれば、第2トラップ部絶縁膜92の表面に負電荷が滞留し残留DC電圧が生じるので、第2トラップ電極62上に正電荷のイオン性不純物をトラップする構成とすることができる。
また本実施形態においても、先の第2実施形態と同様に、第1トラップ部絶縁膜91が第1層間絶縁膜12や第2層間絶縁膜13を含んでいる構成とすることができる。
【0061】
(第4実施形態)
次に、図6を参照しつつ電気光学装置の第4実施形態について説明する。
図6は、第4実施形態に係る液晶装置(電気光学装置)400の要部を示す概略断面図である。
本実施形態の液晶装置400は、第1実施形態に係る液晶装置100とその基本構成において共通する一方、イオントラップ部の構成において異なる。したがって、図6に示さない構成要素についても、特に断りの無い限り液晶装置100と同様の構成を備えているものとする。
【0062】
液晶装置400におけるイオントラップ部60では、TFTアレイ基板10上に第1トラップ電極61と第2トラップ電極62の両方が形成されており、これらの第1トラップ電極61及び第2トラップ電極62の間に絶縁膜31が形成されている構成である。より具体的には、TFTアレイ基板10の基板本体10A側から順に、第2トラップ電極62、絶縁膜31、及び第1トラップ電極61が積層されている。
【0063】
本実施形態において、第2トラップ電極62は平面視矩形枠状の電極である。第2トラップ電極62を覆って、例えば、厚さが50nm以上200nm以下のシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜からなる絶縁膜31が形成されている。絶縁膜31のうち、第2トラップ電極62上の部分がトラップ部絶縁膜93である。トラップ部絶縁膜93上に、第2トラップ電極62よりも狭い幅を有する矩形枠状の第1トラップ電極61が形成されている。
【0064】
対向基板20の共通電極21は、画素領域1A及びダミー画素領域1Dには形成されているが、イオントラップ部60には形成されていない。共通電極21上に形成された絶縁膜32は、イオントラップ部60まで延設されている。
なお、図6ではダミー画素領域1Dについては図示を省略している。また本実施形態において、イオントラップ部60に絶縁膜32が形成されていない構成としてもよい。
【0065】
第1トラップ電極61と第2トラップ電極62との間に厚さ200nmの絶縁膜31(トラップ部絶縁膜93)が形成されている場合に、第1トラップ電極61に5Vと−5Vを周期的に繰り返す交流電圧を印加し、第2トラップ電極62に0Vの電圧を印加したとする。そうすると、第1トラップ電極61に5Vを印加している期間に、第1トラップ電極61から液晶層50、トラップ部絶縁膜93を経由して第2トラップ電極62に達する第1の電界が形成され、第1トラップ電極61に−5Vを印加している期間には、第2トラップ電極62、トラップ部絶縁膜93、液晶層50を経由して第1トラップ電極61に達する第2の電界が形成される。
【0066】
上記においても、第1の電界の経路と第2の電界の経路が異なるために、正極性の電圧が印加されている期間に液晶層50に流れる電流量と、負極性の電圧が印加されている期間に液晶層50に流れる電流量との間に差異が生じ、残留DC電圧が生じる。具体的には、トラップ部絶縁膜93の表面のうち第1トラップ電極61が形成されていない領域に負電荷が滞留することにより残留DC電圧が生じる。本実施形態のイオントラップ部60では、この残留DC電圧により、液晶層50中の正電荷のイオン性不純物51pをトラップ部絶縁膜93の表面に吸着保持することができる。
【0067】
(電子機器)
次に、上記実施形態の液晶装置を適用した電子機器について説明する。
図7は、電子機器の一実施の形態であるプロジェクターを示す図である。
【0068】
図7(a)は、透過型ライトバルブを用いたプロジェクターを示す図である。
プロジェクター110は、観察者の前方に配置されたスクリーン111に光を照射し、スクリーン111に映像を投影する投射型表示装置である。
プロジェクター110は、光源112を備えた光源部130と、ダイクロイックミラー113、114と、液晶ライトバルブ115〜117(液晶装置100、200、300、400)と、投射光学系118と、クロスダイクロイックプリズム119と、リレー光学系120とを備えている。
【0069】
光源112は、赤色光、緑色光、及び青色光を含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光を透過させる一方、緑色光及び青色光を反射する。ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光及び青色光のうち、青色光のみを透過させ、緑色光は反射する。すなわち、ダイクロイックミラー113、114は、光源112から射出された光を赤色光、緑色光、青色光に分離する色分離光学系を構成している。
【0070】
ダイクロイックミラー113と光源112との間には、光源から射出された光を均一化するインテグレーターレンズ121と、光源からの光を特定の直線偏光(例えばs偏光)に変換する偏光変換素子122と、が光源112側から順に配置されている。
【0071】
液晶ライトバルブ115〜117には、透過型の液晶装置として構成した先の実施形態の液晶装置100が用いられている。液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光を画像信号に応じて変調し、クロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶パネル115c、及び第2偏光板115dを備えている。λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bは、透過光への位相差をほとんど付与しない透明なガラス板115eに接着されている。これにより、λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bの発熱による歪みを抑制することができる。
【0072】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー114で反射された緑色光を変調し、クロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する。液晶ライトバルブ116は、第1偏光板116b、液晶パネル116c及び第2偏光板116dを備えている。
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー114を透過した後、リレー光学系120を経由して入射する青色光を変調し、クロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する。液晶ライトバルブ117は、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶パネル117c、及び第2偏光板117dを備えている。リレー光学系120は、ダイクロイックミラー114側(光入射側)から順に配列された、リレーレンズ124a、反射ミラー125a、リレーレンズ124b、及び反射ミラー125bを備えている。反射ミラー125bで反射された青色光が液晶ライトバルブ117に向けて射出される。
【0073】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX形に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光を反射する一方、緑色光を透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光を反射する一方、緑色光を透過する膜である。クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117から入射する赤色光、緑色光、青色光を合成し、投射光学系118へ向けて射出する。投射光学系118は、入射した光をスクリーン111に投射する。
【0074】
次に、図7(b)は、反射型ライトバルブを用いたプロジェクターを示す図である。
プロジェクター1000は、光源部890と、3つの反射型の液晶ライトバルブ100R、100G、100B(液晶装置100、200、300、400)とを備えている。
【0075】
光源部890は、偏光照明装置800と、偏光ビームスプリッター840と、ダイクロイックミラー842、843と、を備えている。偏光照明装置800は、システム光軸Lに沿って配置された光源810と、光源から射出された光を均一化するインテグレーターレンズ820と、光源からの光を特定の直線偏光(例えばs偏光)に変換する偏光変換素子830と、を有する。
【0076】
偏光ビームスプリッター840は、偏光照明装置800から射出されたs偏光をs偏光反射面841で反射させ、ダイクロイックミラー842に向けて射出する。ダイクロイックミラー842は、入射する光に含まれる青色光成分を選択的に反射させ、液晶ライトバルブ100Bへ向けて射出する。ダイクロイックミラー842を透過した光(赤色光、緑色光)は、ダイクロイックミラー843へ向けて射出される。ダイクロイックミラー843は、入射する光に含まれる赤色光成分を選択的に反射させ、液晶ライトバルブ100Rへ向けて射出する。ダイクロイックミラー843を透過した光(緑色光成分)は液晶ライトバルブ100Gに向けて射出される。このように、光源部890は、3つの液晶ライトバルブ100R、100G、100Bに対して、所定の色光を供給する。
【0077】
液晶ライトバルブ100R、100G、100Bは、入射した光を画像信号に基づいて変調するとともに反射させ、光源部890に向けて射出する。光源部890は、液晶ライトバルブ100R、100G、100Bから入射する変調された赤色光、緑色光、青色光を合成し、投射光学系850に向けて射出する。投射光学系850は、入射した光をスクリーン860に投射する。
【0078】
なお、図7に示したプロジェクター110、1000において、LED(Light Emitting Diode)光源を用いた光源部を備えた構成としてもよい。LED光源は、白色光を射出するものでも、赤、緑、青の各色の光を射出するものでもよい。
また、先の実施形態の液晶装置は、上記したプロジェクターに限られず、種々の電子機器に用いることができる。例えば、携帯電話、情報端末、デジタルカメラ、液晶テレビ、ナビゲーション装置、テレビ電話、POS端末等に用いることができる。またこれらの電子機器において直視型表示装置として用いてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1A…画素領域、1B…周辺領域、10…TFTアレイ基板(第1基板)、14…第1配向膜、16…第2配向膜、20…対向基板(第2基板)、31,32…絶縁膜、50…液晶層(電気光学物質層)、51…シール材、60…イオントラップ部、61…第1トラップ電極、62…第2トラップ電極、81,82,93…トラップ部絶縁膜、91…第1トラップ部絶縁膜、92…第2トラップ部絶縁膜、PX…画素、100,200,300,400,500…液晶装置(電気光学装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学物質層を挟持して対向配置された第1基板及び第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせるシール材と、複数の画素が配列された画素領域と、前記画素領域と前記シール材との間の周辺領域に電極を備えて設けられたイオントラップ部と、を有する電気光学装置であって、
前記イオントラップ部は、交流電圧を印加される第1トラップ電極と前記交流電圧の基準電位を入力される第2トラップ電極とを有しており、
前記イオントラップ部は、前記交流電圧の印加において、正極性の電圧印加時と負極性の電圧印加時とで前記電気光学物質層を流れる電流量が、前記画素領域よりも大きく異なるように設定されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第1トラップ電極と、トラップ部絶縁膜と、第1配向膜とがこの順に積層されており、
前記第2基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第2トラップ電極と、第2配向膜とがこの順に積層されている、請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第1トラップ電極と、第1配向膜とがこの順に積層されており、
前記第2基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第2トラップ電極と、トラップ部絶縁膜と、第2配向膜とがこの順に積層されている、請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第1トラップ電極と、第1トラップ部絶縁膜と、第1配向膜とがこの順に積層され、
前記第2基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第2トラップ電極と、第2トラップ部絶縁膜と、第2配向膜とがこの順に積層されており、
前記第1トラップ部絶縁膜と前記第2トラップ部絶縁膜は互いに異なる膜厚を有する、請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第1基板の前記電気光学物質層側の面に、前記第1トラップ電極と、トラップ部絶縁膜と、前記第2トラップ電極と、配向膜とがこの順に積層されている、請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73183(P2013−73183A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214088(P2011−214088)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】