説明

電気光学装置、電気光学装置の駆動方法および電子機器

【課題】データ信号のレベルの刻み幅を維持しながら電気光学素子の階調を微細に制御す
る。
【解決手段】単位回路Pは素子部U1・U2を含む。素子部Uk(k=1,2)は電気光学素子E
kをデータ信号Sk[j]の電圧値Vdに応じて制御する。素子部U1・U2に同じ電圧値Vdの
データ信号S1[j]・S2[j]が供給された場合に電気光学素子E1は電気光学素子E2よりも
低階調となる。信号生成回路25は、階調値Dに応じて異なる電圧値Vdのデータ信号Sk
[j]を生成する。階調値Dが範囲RL内にある場合、電気光学素子E1を当該階調値Dに対
応した階調とする電圧値Vdのデータ信号S1[j]が素子部U1に出力される。階調値Dが範
囲RLよりも高階調側の範囲RM内にある場合、電気光学素子E2を当該階調値Dに対応し
た階調とする電圧値Vdのデータ信号S2[j]が素子部U2に出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(以下「OLED(Organic Light Emitting Diode
)」素子などの電気光学素子の階調を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電気光学素子を配列した電気光学装置が従来から提案されている。各電気光学素
子は、駆動回路から出力されるデータ信号のレベル(電圧値や電流値)に応じた階調に制
御される。駆動回路は、画像データによって指定される階調値Dに対応したレベルのデー
タ信号を生成する。図19の特性FC1は、データ信号の電圧値と電気光学素子の階調(例
えばOLED素子の輝度)との関係である。
【0003】
また、特許文献1には、階調値Dと電気光学素子の実際の階調との関係がガンマ補正に
よって調整される表示装置が開示されている。図20は、ガンマ値を「2.0」としたとき
の階調値Dと電気光学素子の階調との関係を示すグラフである。
【特許文献1】特開2003−255900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気光学装置には多階調化が要求される。しかしながら、電気光学素子の階調を微細に
変化させるためにはデータ信号のレベルの刻み幅(変化量の最小値)を微細化する必要が
あるから、高性能かつ大規模な駆動回路が必要となって電気光学装置のコストが増大する
という問題がある。
【0005】
以上の問題は電気光学素子の発光効率が向上するほど顕著となる。すなわち、図19の
特性FC2に例示されるように、データ信号のレベル(電圧値)に対する階調の変化量は電
気光学素子の発光効率が向上するほど増大する。したがって、電気光学素子の階調を図1
9のΔGだけ変化させるためには、データ信号のレベルの刻み幅ΔV2が、特性FC1の場
合の刻み幅ΔV1よりも微細化されるように駆動回路を高性能化する必要がある。
【0006】
また、「1」を上回るガンマ値をガンマ補正に適用した場合、図20に例示されるよう
に、特に低階調の範囲で電気光学素子の階調の刻み幅ΔGを縮小する必要がある。この場
合にもデータ信号の電圧を微細に変化させる必要があるから、電気光学装置のコストの増
大という問題は顕在化する。以上の事情に鑑みて、本発明は、データ信号のレベルの刻み
幅を維持しながら電気光学素子の階調を微細に制御するという課題の解決を目的としてい
る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置は、第1電気光学素子をデータ
信号のレベルに応じた階調に制御する第1素子部(例えば図2の素子部U1)と、第2電
気光学素子をデータ信号のレベルに応じた階調に制御する第2素子部(例えば図2の素子
部U2)とを含み、第1素子部と第2素子部とに同じレベルのデータ信号が付与された場
合に、第1電気光学素子が第2電気光学素子よりも低階調となる単位回路と、単位回路に
指定された階調値に応じて異なるレベルのデータ信号を生成する回路であって、階調値が
第1範囲(例えば図5の範囲RL)内にある場合に、第1電気光学素子が当該階調値に対
応した階調に制御されるようにレベルが設定されたデータ信号を第1素子部に付与し、階
調値が第1範囲よりも高階調側の第2範囲(例えば図5の範囲RM)内にある場合に、第
2電気光学素子が当該階調値に対応した階調に制御されるようにレベルが設定されたデー
タ信号を第2素子部に付与する信号生成回路とを具備する。
【0008】
本発明においては、第1素子部と第2素子部とに同じレベルのデータ信号が付与された
場合に第1電気光学素子が第2電気光学素子よりも低階調となる構成(すなわち第1素子
部と第2素子部とで階調変化率が相違する構成)のもとで、第1範囲内の階調値が指定さ
れた場合には当該階調値に応じたデータ信号によって第1電気光学素子が制御される。し
たがって、単位回路に指定された階調値に拘わらず第2電気光学素子と同等の特性のひと
つの電気光学素子が制御される構成と比較して、第1範囲内の階調値が指定された場合の
データ信号のレベルの刻み幅を充分に確保することが可能となる。また、第2範囲内の階
調値が指定された場合には第2電気光学素子が制御されるから、単位回路に指定された階
調値に拘わらず第1電気光学素子と同等の特性のひとつの電気光学素子が制御される構成
と比較して、データ信号のレベルを抑制しながら(消費電力の低減)、広い範囲にわたる
多階調を表現することが可能である。
【0009】
本発明における電気光学素子は、電気エネルギの付与(電流の供給や電圧の印加)によ
って輝度や透過率といった光学的な特性が変化する要素である。本発明に適用される電気
光学素子について、自身が発光する自発光型の素子と外光の透過率を変化させる非発光型
の素子(例えば液晶素子)との区別や、電流の供給によって駆動される電流駆動型の素子
と電圧の印加によって駆動される電圧駆動型の素子との区別は不問である。例えば、OL
ED素子や無機EL素子、フィールド・エミッション(FE)素子、表面導電型エミッシ
ョン(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ball
istic electron Surface emitting)素子、LED(Light Emitting Diode)素子、
液晶素子、電気泳動素子、エレクトロクロミック素子など様々な電気光学素子を本発明に
利用することができる。
【0010】
本発明におけるデータ信号は電流信号および電圧信号の何れでもよい。データ信号のレ
ベルとは、データ信号が電流信号である場合には電流値を意味し、データ信号が電圧信号
である場合には電圧値を意味する。また、単位回路を構成する要素としては第1素子部お
よび第2素子部が明示されているが、第1素子部と第2素子部とを含む3個以上の素子部
を単位回路が備える構成も当然に本発明の範囲に含まれる。
【0011】
本発明の好適な態様において、第1電気光学素子と第2電気光学素子とは、光を出射す
る領域の面積が相違する。この態様によれば、第1電気光学素子と第2電気光学素子との
製造の工程を共通化しながら、階調変化率を第1素子部と第2素子部とで相違させること
ができる。ただし、階調変化率を素子部ごとに相違させる構成は以下の態様によっても実
現される。
【0012】
第1の態様(例えば図6)において、第1電気光学素子および第2電気光学素子は、第
1電極(例えば図6の第1電極33)と第2電極(例えば図6の第2電極36)との間に
発光層が介在する発光素子であり、第1電気光学素子と第2電気光学素子とは、第1電極
と第2電極との間隔が相違する。換言すると、第1電極と第2電極との間に介在して発光
層を含む部分(例えば図6の発光機能層35)の膜厚が第1電気光学素子と第2電気光学
素子とで相違する。
第2の態様(例えば図7)において、第1電気光学素子および第2電気光学素子は、相
互に対向する光透過性の第1電極と光反射性の第2電極との間に発光層が介在する発光素
子であり、第1電気光学素子と第2電気光学素子とは、第1電極の膜厚が相違する。
第3の態様(例えば図9)に係る電気光学装置は、基板の面上に形成された光透過性の
絶縁層(例えば図9の絶縁層32)を具備し、第1電気光学素子および第2電気光学素子
は、絶縁層の面上に形成された光透過性の第1電極と当該第1電極に対向する光反射性の
第2電極との間に発光層が介在する発光素子であり、絶縁層のうち第1電気光学素子から
の出射光が透過する領域と第2電気光学素子からの出射光が透過する領域とは膜厚が相違
する。
第4の態様(例えば図10)に係る電気光学装置は、第1電気光学素子からの出射光が
透過する第1透光体(例えば図10における減光フィルタ37の部分371)と、第2電
気光学素子からの出射光が透過する第2透光体(例えば図10における減光フィルタ37
の部分372)とを具備し、第1透光体と第2透光体とは透過率が相違する。
以上に例示した第1〜第4の態様によれば、第1電気光学素子と第2電気光学素子とを
同じ面積とすることが可能である。すなわち、第2電気光学素子を第1電気光学素子より
も大面積とする必要はない。したがって、各電気光学素子の高精細化が容易であるという
利点がある。
【0013】
階調変化率を第1素子部と第2素子部とで相違させるための構成は以上の例示に限定さ
れない。例えば、第1素子部および第2素子部の各々が、ゲートの電圧に応じた駆動電流
を生成して電気光学素子に供給する駆動トランジスタを含む場合には、第1素子部の駆動
トランジスタと第2素子部の駆動トランジスタとにおいて、ゲートに同じ電圧が印加され
たときの駆動電流の電流値が相違する構成も採用される。この態様によれば、各電気光学
素子の形態(面積や各層の膜厚)を素子部ごとに相違させる必要がないという利点がある

【0014】
また、各素子部に含まれる要素(電気光学素子や駆動トランジスタ)の特性を相違させ
る必要は必ずしもない。例えば、第1素子部が、第1期間(例えば図12の発光期間PEL
1)にて、第1電気光学素子をデータ信号のレベルに応じた輝度に発光させ、第2素子部
が、第1期間よりも長い第2期間(例えば図12の発光期間PEL2)にて、第2電気光学
素子をデータ信号のレベルに応じた輝度に発光させる構成も採用される。この構成によれ
ば、第1期間と第2期間との時間長に応じて階調変化率を第1素子部と第2素子部とで相
違させることが可能である。なお、この態様の具体例は第3実施形態として後述される。
【0015】
本発明の好適な態様において、第1素子部は、第1電気光学素子をデータ信号の電圧値
に応じた階調に制御し、第2素子部は、第2電気光学素子をデータ信号の電流値に応じた
階調に制御し、信号生成回路は、単位回路に指定された階調値が第1範囲内にある場合に
、当該階調値に応じた電圧値のデータ信号を第1素子部に出力する電圧生成回路(例えば
図13の電圧生成回路251)と、階調値が第2範囲内にある場合に、当該階調値に応じ
た電流値のデータ信号を第2素子部に供給する電流生成回路(例えば図13の電流生成回
路252)とを含む。この態様においては、階調値が高階調側の第2範囲内にある場合に
はデータ信号の電圧値に応じて第1電気光学素子が駆動される一方、階調値が低階調側の
第1範囲内にある場合にはデータ信号の電流値に応じて第2電気光学素子が駆動される。
したがって、データ信号の伝送路(例えば図13のデータ線LDk[j])の時定数が高い場
合でも、第1電気光学素子を確実に所期の階調に設定することが可能である。なお、この
態様の具体例は第4実施形態として後述される。
【0016】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、
電気光学装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソ
ナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る電気光学装置の用途
は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体
に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)、液晶装置の背面側に配置されてこれを
照明する装置(バックライト)、あるいは、スキャナなどの画像読取装置に搭載されて原
稿を照明する装置など各種の照明装置など、様々な用途に本発明の電気光学装置を適用す
ることができる。
【0017】
本発明は、電気光学装置を駆動する方法としても特定される。本発明に係る駆動方法は
、単位回路に指定された階調値が、第1範囲と当該第1範囲よりも高階調側の第2範囲と
を含む複数の範囲の何れに属するかを判別する判別過程(例えば図1のデータ判別部24
1が実行する手順)と、階調値に応じて異なるレベルのデータ信号を生成する信号生成過
程(例えば図1の信号生成回路25が実行する手順)とを含み、信号生成過程においては
、階調値が第1範囲内にあると判別過程にて判別された場合に、第1電気光学素子が当該
階調値に対応した階調に制御されるようにレベルが設定されたデータ信号を第1素子部に
付与し、階調値が第2範囲内にあると判別過程にて判別された場合に、第2電気光学素子
が当該階調値に対応した階調に制御されるようにレベルが設定されたデータ信号を第2素
子部に付与する。以上の方法によっても、本発明に係る電気光学装置と同様の効果が奏さ
れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。同
図に示すように、電気光学装置100は、多数の単位回路Pが配列する素子アレイ部Aと
、各単位回路Pを駆動する走査線駆動回路22およびデータ線駆動回路24と、走査線駆
動回路22およびデータ線駆動回路24を制御する制御回路20とを具備する。多数の単
位回路Pは、相互に交差するX方向およびY方向にわたって縦m行×横n列のマトリクス
状に配列する(mおよびnの各々は2以上の自然数)。
【0019】
図2は、各単位回路Pの構成を示す回路図である。同図においては、第i行(iは1≦
i≦mを満たす整数)に属する第j列目(jは1≦j≦nを満たす整数)のひとつの単位
回路Pのみが図示されているが、総ての単位回路Pは同様の構成である。図1および図2
に示すように、素子アレイ部Aには、X方向に延在するm本の走査線120と、Y方向に
延在するn組の配線群14とが形成される。各単位回路Pは、走査線120と配線群14
との各交差に対応する位置に配置される。図2に示すように、第j列目の配線群14は、
各々がY方向に延在する3本のデータ線LD1[j]〜LD3[j]を含む。各単位回路Pには電
源線17を介して電源電位VELが供給される。
【0020】
図1の走査線駆動回路22は、素子アレイ部Aのm行の各々(各走査線120)を順番
に選択するための走査信号G[1]〜G[m]を生成して各走査線120に出力する手段(例え
ばmビットのシフトレジスタ)である。図3に示すように、第i行の走査線120に出力
される制御信号G[i]は、ひとつのフレーム期間のうち第i番目の水平走査期間Hにてハ
イレベル(選択)となり、それ以外の期間にてローレベル(非選択)を維持する。
【0021】
制御回路20は、クロック信号など各種の信号の出力によって走査線駆動回路22およ
びデータ線駆動回路24の動作のタイミングを制御するほか、各単位回路Pの階調値Dを
指定する画像データをデータ線駆動回路24に対して順次に出力する。図1に示すように
、データ線駆動回路24は、各単位回路Pの階調値Dが属する範囲Rを判別するデータ判
別部241と、配線群14の総数(単位回路Pの列数)に相当するn個の信号生成回路2
5とを含む。データ判別部241は、制御回路20から供給される階調値Dが、階調値D
の最小値から最大値までの範囲を相互に重複しないように区分した3個の範囲R(RL・
RM・RH)の何れに属するかを判別する。範囲RLは階調値Dの最小値を含み、範囲RHは
階調値Dの最大値を含む。範囲RMは範囲RLよりも高階調側の範囲であり、範囲RHは範
囲RMよりも高階調側の範囲である。
【0022】
第j列目の信号生成回路25は、データ信号S1[j]〜S3[j]を生成して第j列目の配線
群14に出力する。データ信号S1[j]〜S3[j]は、第j列目の階調値Dとデータ判別部2
41による判別の結果とに応じて電圧値Vdが設定された電圧信号である。データ信号Sk
[j](kは1≦k≦3を満たす整数)はデータ線LDk[j]に出力される。なお、信号生成
回路25の具体的な動作については後述する。
【0023】
次に、単位回路Pの具体的な構成を説明する。図2に示すように、ひとつの単位回路P
は、範囲Rの区分数に相当する3個の素子部U1〜U3を含む。素子部Ukは、電源線17
から接地線(接地電位Gnd)に至る経路上に配置された電気光学素子Ekを備える。本実
施形態の電気光学素子Ekは、相互に対向する各電極の間に有機EL(ElectroLuminescen
t)材料の発光層が介在するOLED素子である。発光層は電流(以下「駆動電流」とい
う)IELの供給によって発光する。
【0024】
素子部Ukにおける駆動電流IELの経路上(電源線17と電気光学素子Ekとの間)には
pチャネル型の駆動トランジスタQdrが配置される。駆動トランジスタQdrは、ゲートの
電圧に応じた電流量の駆動電流IELを生成して電気光学素子Ekに供給する薄膜トランジ
スタである。素子部Ukの駆動トランジスタQdrのゲートとデータ線LDk[j]との間には
、両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する選択トランジスタQslが介在する。第
i行の各単位回路Pの素子部U1〜U3に含まれる選択トランジスタQslのゲートは第i行
の走査線120に対して共通に接続される。駆動トランジスタQdrのゲートとソース(電
源線17)との間には容量素子Cが介在する。
【0025】
水平走査期間Hにて走査信号G[i]がハイレベルに遷移すると、第i行に属する各単位
回路Pの素子部U1〜U3に含まれる選択トランジスタQslが同時にオン状態に変化する。
したがって、素子部Ukの駆動トランジスタQdrのゲートは、当該水平走査期間Hにてデ
ータ線LDk[j]に供給されているデータ信号Sk[j]の電圧値Vdに設定される。このとき
に容量素子Cには電圧値Vdに応じた電荷が蓄積されるから、走査信号G[i]がローレベル
に遷移して選択トランジスタQslがオフ状態に変化しても、駆動トランジスタQdrのゲー
トは電圧値Vdに維持される。したがって、次回に走査信号G[i]がハイレベルに遷移する
まで、電気光学素子Ekには電圧値Vdに応じた駆動電流IELが継続的に供給される。以上
の動作によって電気光学素子Ekはデータ信号Sk[j]の電圧値Vdに応じた階調(発光量)
となる。
【0026】
次に、図4は、ひとつの単位回路Pの各電気光学素子E1〜E3と各配線との配置を例示
する平面図である。同図に示すように、電気光学素子E1〜E3の各々の面積は相違する。
すなわち、電気光学素子E2は電気光学素子E1よりも大面積であり、電気光学素子E3は
電気光学素子E2よりも大面積である。電気光学素子E1・E2は、走査線120を挟んで
Y方向の負側の領域にてX方向に配列する。電気光学素子E3は、走査線120を挟んで
Y方向の正側の領域に配置される。データ線LD1[j]・LD3[j]は電気光学素子E1〜E3
からみてX方向の負側の領域にてY方向に延在する。データ線LD2[j]および電源線17
は電気光学素子E1〜E3からみてX方向の正側の領域にてY方向に延在する。
【0027】
図5は、データ信号Sk[j]の電圧値Vdと電気光学素子Ekの階調との関係を示すグラフ
である。同図の特性FAkは、データ信号Sk[j]の電圧値Vdの絶対値と電気光学素子Ekの
実際の階調(発光量)との関係を示す。図4に例示したように本実施形態においては電気
光学素子E1〜E3の面積が相違するから、素子部U1〜U3の各々に対して仮に同じ電圧値
Vdのデータ信号S1[j]〜S3[j]が供給されたとしても、図5に示すように電気光学素子
E1〜E3の階調(発光量)は相違する。すなわち、同じ電圧値Vdのデータ信号S1[j]〜
S3[j]が供給されると、電気光学素子E1は電気光学素子E2よりも低階調となり、電気光
学素子E3は電気光学素子E2よりも高階調となる。換言すると、データ信号S1[j]〜S3[
j]の電圧値Vdの変化量に対する各電気光学素子E1〜E3の階調の変化量の相対比(以下
「階調変化率」という)は、電気光学素子E3が最大であって電気光学素子E1が最小であ
る。階調変化率は、「(階調の変化量)/(電圧値Vdの変化量)」と定義され、電圧値
Vdに応じて電気光学素子Ekの階調が変化する感度の指標(階調変化率が高いほど電圧値
Vdの変化に対して高感度に電気光学素子Ekの階調が変化する)となる数値である。
【0028】
第j列目の信号生成回路25は、第j列目の単位回路Pの電気光学素子E1〜E3のうち
階調値Dが属する範囲Rに応じたひとつの電気光学素子Ekが選択的に当該階調値Dに応
じた階調に駆動されるようにデータ信号S1[j]〜S3[j]の各々の電圧値Vdを設定する。
【0029】
例えば、階調値Dが範囲RL内の数値であるとデータ判別部241が判定した場合、信
号生成回路25は、図5の範囲B1内にあって階調値Dに応じて異なる電圧値Vdのデータ
信号S1[j]を生成し、データ信号S2[j]・S3[j]については各々に対応する電気光学素子
E2・E3を消灯させる電圧値Vd(電源電位VEL)に設定する。同様に、階調値Dが範囲
RM内の数値である場合、信号生成回路25は、図5の範囲B2のうち階調値Dに応じた電
圧値Vdのデータ信号S2[j]と、電気光学素子E1・E3を消灯させる電圧値Vdのデータ信
号S1[j]・S3[j]とを生成する。また、階調値Dが範囲RH内の数値である場合、信号生
成回路25は、図5の範囲B3のうち階調値Dに応じた電圧値Vdのデータ信号S3[j]と、
電気光学素子E1・E2を消灯させる電圧値Vdのデータ信号S1[j]・S2[j]とを生成する

【0030】
例えばいま、第j列のうち第i行の単位回路Pに範囲RH内の階調値Dが指定され、第(
i+1)行の単位回路Pに範囲RL内の階調値Dが指定され、第(i+2)行の単位回路Pに範囲R
M内の階調値Dが指定された場合を想定する。図3に示すように、走査信号G[i]がハイレ
ベルとなる水平走査期間Hにおいて、データ信号S3[j]は電気光学素子E3を階調値Dに
応じた階調に点灯させる電圧値Vd(電源電位VELよりも低電位)に設定され、データ信
号S1[j]・S2[j]は電気光学素子Eを消灯させる電圧値Vd(電源電位VEL)に設定され
る。また、走査信号G[i+1]がハイレベルとなる水平走査期間Hにおいては、データ信号
S1[j]が階調値Dに応じた電圧値Vdに設定され、データ信号S2[j]・S3[j]は電源電位
VELに設定される。同様に、走査信号G[i+2]がハイレベルとなる水平走査期間Hにおい
ては、データ信号S2[j]が階調値Dに応じた電圧値Vdに設定され、データ信号S1[j]・
S3[j]は電源電位VELに設定される。
【0031】
以上のようにデータ信号S1[j]〜S3[j]のうち階調値Dの範囲Rに応じて選択されたひ
とつのデータ信号Sk[j]の電圧値Vdが階調値Dに応じて決定される。したがって、図5
において電気光学素子Ekの特性FAkを示す曲線のうち実線で図示された部分fkが使用さ
れる。すなわち、範囲RL内の階調は電気光学素子E1の発光(部分f1)によって出力(
表示)され、範囲RM内の階調は電気光学素子E2の発光(部分f2)によって出力され、
範囲RH内の階調は電気光学素子E3の発光(部分f3)によって出力される。
【0032】
以上のように本実施形態においては、低階調側の範囲RL内の階調値Dが指定された場
合には階調変化率が最小である電気光学素子E1が駆動され、高階調側の範囲RH内の階調
値Dが指定された場合には階調変化率が最大である電気光学素子E3が駆動されるから、
データ信号S1[j]〜S3[j]の電圧値Vdの刻み幅を充分に確保しながら各々の電圧値Vdを
低減できるという利点がある。この効果について詳述すると以下の通りである。
【0033】
いま、ひとつの単位回路Pが素子部U3のみを含む構成(階調変化率が高い電気光学素
子E3のみによって総ての階調値Dが表現される構成)を第1対比例として検討する。第
1対比例の構成のもとで、電気光学素子E3の階調を範囲RL内でΔGだけ変化させるため
には、図5に示すように、データ信号S3[j]の電圧値Vdを微細な変化量ΔV1だけ変化さ
せる必要があるから、電圧値Vdの微細な調整が可能である高価なデータ線駆動回路24
が不可欠となる。これに対し、本実施形態において範囲RL内の階調値Dは階調変化率が
低い電気光学素子E1によって表現されるから、階調値DをΔGだけ変化させるために必
要な電圧値Vdの変化量ΔV2は第1対比例の変化量ΔV1よりも大きい。このように本実
施形態においてはデータ信号Sk[j]の電圧値Vdの変化量を微細に調整する必要性が低減
されるから、第1対比例と比較して低廉なデータ線駆動回路24を採用することが可能で
ある。
【0034】
次に、ひとつの単位回路Pが素子部U1のみを含む構成(階調変化率が低い電気光学素
子E1のみによって総ての階調値Dが表現される構成)を第2対比例として検討する。第
2対比例のもとで電気光学素子E1を範囲RH内の階調GHに制御するためには、図5に示
すようにデータ信号S1[j]を電圧値Vd1まで上昇させる必要があるから、データ線駆動回
路24における消費電力が過大になるという問題がある。これに対し、本実施形態におい
ては、電気光学素子E1よりも階調変化率が高い電気光学素子E2やE3によって範囲RMお
よび範囲RHの階調値Dが表現される。したがって、例えば電気光学素子E3を階調GHに
制御するために必要となるデータ信号S3[j]の電圧値Vdは、第2対比例での電圧値Vd1
よりも大幅に低い電圧値Vd2となる。このように本実施形態によれば、高階調の出力に必
要となる電圧値Vdが低減されるから、第2対比例と比較してデータ線駆動回路24にお
ける消費電力が低減されるという利点がある。
【0035】
<B:第2実施形態>
第1実施形態においては電気光学素子E1〜E3の面積に応じて各々の階調変化率を相違
させる構成を例示したが、電気光学素子Ekごとに階調変化率を選定するための具体的な
方法は、以下の各態様のように適宜に変更される。なお、以下では電気光学素子E1・E2
に着目して説明するが、電気光学素子E3についても同様の構成によって階調変化率が所
期値に調整される。また、電気光学素子E1〜E3の各々を特に区別する必要がない場合に
は単に「電気光学素子E」と表記する。以下の各態様にて参照する図面では、作用や機能
が共通する要素に同じ符号が付されている。
【0036】
<B−1:第1の態様>
図6は、本態様に係る素子アレイ部Aの断面図である。同図に示すように、光透過性の
基板30の表面には、駆動トランジスタQdrのドレインに電気的に接続された配線31が
形成される。駆動トランジスタQdrなどの各素子や配線31が形成された基板30の表面
は絶縁層32に覆われる。絶縁層32の面上には、電気光学素子Eの陽極として機能する
第1電極33が電気光学素子Eごとに相互に離間して形成される。
【0037】
第1電極33は、ITO(Indium Tin Oxide)など光透過性の導電材料によって形成さ
れるとともに絶縁層32のコンタクトホールを介して配線31(さらには駆動トランジス
タQdr)に導通する。第1電極33が形成された絶縁層32の表面には隔壁層34が形成
される。隔壁層34は、第1電極33と重なり合う各領域に開口部341が形成された絶
縁性の膜体である。
【0038】
隔壁層34の開口部341の内周面に包囲されて第1電極33の表面を底面とする凹部
には発光機能層35が形成される。発光機能層35は、有機EL材料で形成された発光層
を含む。なお、発光層による発光を促進または効率化するための各種の機能層(正孔注入
層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層)と発光層
との積層を発光機能層35としてもよい。隔壁層34および発光機能層35の面上には、
電気光学素子Eの陰極として機能する第2電極36が形成される。第2電極36は、複数
の電気光学素子Eにわたって連続に形成された導電膜である。第2電極は光反射性を有す
る。したがって、図6に矢印で示されるように、発光機能層35から基板30側への出射
光と第2電極36の表面での反射光とは絶縁層32や基板30を透過して電気光学装置1
00の外部に出射する。
【0039】
第1実施形態においては、発光機能層35の面積(すなわち第1電極33と第2電極3
6との間に電流が流れる領域の面積)に応じて電気光学素子E1〜E3の各々の階調変化率
を相違させる構成を例示した。これに対して本態様においては、各電気光学素子Eの発光
機能層35は略等しい面積とされる一方、発光機能層35の膜厚(換言すると第1電極3
3と第2電極36との間隔)を電気光学素子Eごとに調整することで各々の階調変化率を
相違させる。図6に示すように、電気光学素子E1の発光機能層35の膜厚Ta1は電気光
学素子E2の発光機能層35の膜厚Ta2よりも大きい。第1電極33と第2電極36との
間に所定の電圧を印加したときの発光量は発光機能層35が薄いほど増大するから、図6
の構成においても第1実施形態と同様に、電気光学素子E1は電気光学素子E2よりも階調
変化率が低い。
【0040】
<B−2:第2の態様>
図7は、第2の態様に係る素子アレイ部Aの断面図である。同図に示すように、電気光
学素子Eを構成する要素やその積層の順番は図6の態様と同様である。ただし、本態様に
おいては、第1電極33の膜厚が電気光学素子Eごとに相違する。例えば、図7に示すよ
うに、電気光学素子E1の第1電極33の膜厚Tb1は、電気光学素子E2の第1電極33の
膜厚Tb2よりも大きい。
【0041】
図7の構成における絶縁層32は、基板30とは屈折率が相違する材料で形成される。
したがって、絶縁層32と基板30との界面は、当該界面に対する入射光の一部を基板3
0側に透過させるとともに他の一部を基板30とは反対側に反射させる半透過反射面とし
て機能する。以上の構成においては、半透過反射面と第2電極36の表面との間で発光機
能層35からの出射光が共振する共振器構造が形成される。すなわち、発光機能層35か
らの出射光は半透過反射面と第2電極36の表面との間で往復し、両界面間の距離に応じ
た周波数帯域(共振波長)に属する成分が選択的に基板30を透過して出射する。
【0042】
本態様においては、共振器構造を構成する第1電極33の膜厚(発光機能層35からの
出射光が半透過反射面を透過するまでの光路長)が電気光学素子Eごとに相違するから、
第1電極33と第2電極36との間に所定の電圧を印加したときに発光機能層35から出
射して基板30を透過する光の分光特性は電気光学素子E1とE2とで相違する。例えば、
図8に示すように、電気光学素子E1からの出射光は、広い範囲にわたって強度が平坦に
分布する特性FB1を示すのに対し、電気光学素子E2からの出射光は、共振波長を含む狭
い範囲にて高い強度となる特性FB2を示す。この構成によっても第1実施形態と同様に、
電気光学素子E1の階調変化率を電気光学素子E2よりも低く設定することが可能である。
【0043】
<B−3:第3の態様>
図9は、第3の態様に係る素子アレイ部Aの断面図である。同図に示すように、本態様
においては、絶縁層32の膜厚が電気光学素子Eごとに相違する。例えば、図9に示すよ
うに、電気光学素子E1に対応する絶縁層32の膜厚Tc1は、電気光学素子E2に対応する
絶縁層32の膜厚Tc2よりも大きい。図9の構成においても、発光機能層35からの出射
光が半透過反射面を透過するまでの光路長が電気光学素子Eごとに相違するから、基板3
0の透過光の分光特性は図8のように電気光学素子E1とE2とで相違する。したがって、
電気光学素子E1の階調変化率を電気光学素子E2よりも低く設定することができる。
【0044】
<B−4:第4の態様>
図10は、第4の態様に係る素子アレイ部Aの断面図である。同図に示すように、本態
様の電気光学装置100は、図6の要素に加えて、基板30の表面に貼着された減光フィ
ルタ37(ND(Neutral Density)フィルタ)を具備する。絶縁層32は、光透過性の
接着剤38によって減光フィルタ37の表面に接着される。各電気光学素子Eからの出射
光は減光フィルタ37と基板30とを透過して外部に出射する。
【0045】
減光フィルタ37のうち電気光学素子E1〜E3の各々に重なり合う部分の透過率は相違
する。例えば、図10に示すように、減光フィルタ37のうち電気光学素子E1に重なり
合う部分371の透過率は電気光学素子E2に重なり合う部分372の透過率よりも低い
。したがって、第1実施形態と同様に、電気光学素子E1の階調変化率は電気光学素子E2
よりも低い。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、各電気光学素子Eを同面積としながら各々の階調
変化率を個別に設定することができるから、電気光学素子E3を相対的に大面積とする必
要がある第1実施形態の構成と比較して、単位回路Pの配置に要するスペースを低減でき
、これによって画像の高精細化が容易に実現されるという利点がある。
【0047】
なお、第1〜第3の態様のように基板30上の要素の膜厚が電気光学素子Eごとに異な
る構成は、例えば、当該要素を構成する膜体の積層数を電気光学素子Eごとに相違させる
方法や、電気光学素子Eごとに独立の工程にて当該要素を所期の膜厚に形成する方法によ
って製造される。例えば、図7における電気光学素子E1の第1電極33は、電気光学素
子E2の第1電極33よりも多数の導電膜の積層によって作成される。以上のように、第
1〜第3の態様に係る素子アレイ部Aの製造には、階調変化率を決定する要素を形成する
工程を電気光学素子Eごとに変える必要がある。これに対し、第1実施形態のように各電
気光学素子Eの面積に応じて各々の階調変化率が決定される構成によれば、各電気光学素
子Eの要素を製造する方法は共通であるから、素子アレイ部Aの製造の工程が簡素化され
るという利点がある。
【0048】
<C:第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態においては、電気光学素
子E1〜E3の階調変化率を各々の特性に応じて相違させる構成を例示した。これに対し、
本実施形態においては、各電気光学素子Eを実際に発光させる時間長に応じて各々の階調
変化率を異ならせる構成となっている。なお、本実施形態のうち作用や機能が第1実施形
態と共通する要素については以上と同じ符号を付してその詳細な説明を適宜に省略する。
【0049】
図11は、第i行に属する第j列目の単位回路Pの構成を示す回路図である。同図に示
すように、本実施形態の素子アレイ部Aには、走査線120と平行に延在する3本の制御
線(121〜123)が形成される。走査線駆動回路22は、走査線120に走査信号G
[i]を出力するほか、制御線121に制御信号G1[i]を出力し、制御線122に制御信号
G2[i]を出力し、制御線123に制御信号G3[i]を出力する。なお、各信号の具体的な波
形については後述する。
【0050】
図11に示すように、ひとつの単位回路Pは2個の素子部U1・U2を具備する。素子部
Uk(本実施形態のkは1または2)は電気光学素子Ekを含む。電気光学素子E1および
E2の各々の面積や各層の膜厚は等しい。本実施形態においては、階調値Dの最小値から
最大値までの範囲が低階調側の範囲RLと高階調側の範囲RHとに区分される。そして、階
調値Dが範囲RL内の数値であれば電気光学素子E1が駆動され、階調値Dが範囲RH内の
数値であれば電気光学素子E2が駆動される。
【0051】
素子部Ukの駆動トランジスタQdrのドレインと電気光学素子Ekの陽極との間には両者
の電気的な接続を制御するnチャネル型のトランジスタ(以下「発光制御トランジスタ」
という)Qelが介在する。素子部U1の発光制御トランジスタQelのゲートには制御線1
22から制御信号G2[i]が供給される。素子部U2の発光制御トランジスタQelのゲート
には制御線123から制御信号G3[i]が供給される。
【0052】
素子部Ukの駆動トランジスタQdrのゲートとドレインとの間には両者の電気的な接続
を制御するnチャネル型のトランジスタQsw1が介在する。素子部U1およびU2の各々に
おけるトランジスタQsw1のゲートには制御線121から制御信号G1[i]が共通に供給さ
れる。
【0053】
素子部Ukは、誘電体を挟んで電極E1とE2とを対向させた容量素子C1(容量値c1)
を含む。電極E1は駆動トランジスタQdrのゲートに接続される。素子部Ukの選択トラン
ジスタQslは、電極E2とデータ線LDk[j]との間に介在して両者の電気的な接続を制御
する。駆動トランジスタQdrのゲートとソース(電源線17)との間には第1実施形態と
同様に容量素子C(容量値c)が介在する。
【0054】
図12は、各信号の具体的な波形を例示するタイミングチャートである。同図に示すよ
うに、各水平走査期間Hの開始前には初期化期間P0と補償期間PCPとが設定される。制
御信号G1[i]は、走査信号G[i]がハイレベルとなる水平走査期間Hの直前の初期化期間
P0と補償期間PCPとにおいてハイレベルとなり、それ以外の期間にてローレベルを維持
する。制御信号G2[i]は、水平走査期間Hの直前の初期化期間P0と当該水平走査期間H
の経過後の発光期間PEL1とにおいてハイレベルとなり、それ以外の期間にてローレベル
を維持する。制御信号G3[i]は、水平走査期間Hの直前の初期化期間P0と当該水平走査
期間Hの経過後の発光期間PEL2とにおいてハイレベルとなり、それ以外の期間にてロー
レベルを維持する。図12に示すように発光期間PEL2は発光期間PEL1よりも長時間であ
る。
【0055】
次に、ひとつの単位回路Pの動作を説明する。まず、初期化期間P0においては、制御
信号G2[i]・G3[i]がハイレベルに遷移することで素子部U1・U2の各発光制御トランジ
スタQelがオン状態に変化する。また、制御信号G1[i]がハイレベルに遷移することで素
子部U1・U2の各トランジスタQsw1はオン状態となる。これによって素子部U1・U2の
各駆動トランジスタQdrはダイオード接続されるから、各々のゲートは電気光学素子E1
・E2の特性に応じた電圧に初期化される。
【0056】
補償期間PCPが開始すると、制御信号G2[i]・G3[i]がローレベルに遷移することで素
子部U1・U2の各発光制御トランジスタQelがオフ状態に変化する。したがって、補償期
間PCPの終点が到来するまでに、素子部U1・U2の各駆動トランジスタQdrのゲートは、
電源線17の電源電位VELと当該駆動トランジスタQdrの閾値電圧Vthとの差分値(VEL
−Vth)に収束する。
【0057】
補償期間PCPが経過して走査信号G[i]がハイレベルに遷移すると選択トランジスタQs
lがオン状態に変化するから、電極E2の電圧はその直前の電圧値V0からデータ信号Sk[j
]の電圧値Vdに変化する。電圧値Vdは、電圧値V0よりも低位であって階調値Dに応じた
電圧値に設定される。一方、制御信号G1[i]がローレベルに遷移することで駆動トランジ
スタQdrのダイオード接続は解除される。駆動トランジスタQdrのゲートのインピーダン
スは充分に高いから、電極E2が電圧値V0から電圧値Vdまで変化量ΔV(=V0−Vd)
だけ減少すると、電極E1の電圧は、補償期間PCPにて設定された電圧値「VEL−Vth」
から「ΔV・c1/(c1+c)」だけ変動(減少)する。すなわち、駆動トランジスタQ
drのゲートは以下の式(1)の電圧Vgに設定される。
Vg=VEL−Vth−k・ΔV ……(1)
(k=c1/(c1+c))
【0058】
制御信号G2[i]がハイレベルを維持する発光期間PEL1においては素子部U1の発光制御
トランジスタQelがオン状態となる。同様に、発光期間PEL2においては素子部U2の発光
制御トランジスタQelがオン状態となる。したがって、発光期間PELkにおいては、素子
部Ukの駆動トランジスタQdrのゲートの電圧に応じた駆動電流IELが電気光学素子Ekに
供給される。
【0059】
第j列目の信号生成回路25は、走査信号G[i]がハイレベルとなる水平走査期間Hに
おいて、データ信号S1[j]およびS2[j]の一方を階調値Dに応じた電圧値Vdに設定する
とともに他方を電圧値V0に設定する。例えば、階調値Dが範囲RL内の数値であるとデー
タ判別部241が判定した場合、信号生成回路25は、図12に示すように、データ信号
S1[j]を階調値Dに応じた電圧値Vd(電圧値V0よりも低電位)に設定するとともに、デ
ータ信号S2[j]については電気光学素子E2を消灯させる電圧値Vd(電圧値V0)に設定
する。また、階調値Dが範囲RH内の数値である場合、信号生成回路25は、階調値Dに
応じた電圧値Vdのデータ信号S2[j]と電気光学素子E1を消灯させる電圧値Vd(電圧値
V0)のデータ信号S1[j]とを生成する。
【0060】
したがって、階調値Dが範囲RL内の数値である場合には、電気光学素子E1が発光期間
PEL1の始点から終点までにわたって当該階調値Dに応じた輝度に発光するとともに電気
光学素子E2は消灯する。また、階調値Dが範囲RH内の数値である場合には、電気光学素
子E2が発光期間PEL2の始点から終点までにわたって当該階調値Dに応じた輝度に発光す
るとともに電気光学素子E1は消灯する。
【0061】
電気光学素子Ekの階調(輝度の時間積分値(発光量))は、発光期間PELkにおける輝
度と当該発光期間PELkの時間長とに応じて決定される。発光期間PEL1は発光期間PEL2
よりも短時間に設定されるから、電気光学素子E1の階調変化率は電気光学素子E2の階調
変化率よりも低い数値となる。したがって、本実施形態においても第1実施形態と同様の
効果が奏される。
【0062】
ところで、駆動トランジスタQdrが飽和領域で動作する場合を想定すると、発光期間P
ELkにて電気光学素子Ekに供給される駆動電流IELは以下の式(2)で表現される。ただし
、式(2)における「β」は駆動トランジスタQdrの利得係数であり、「Vgs」は駆動トラ
ンジスタQdrのゲート−ソース間の電圧である。
IEL=(β/2)(Vgs−Vth)2 ……(2)
=(β/2)(VEL−Vg−Vth)2
式(1)の代入によって式(2)は以下のように変形される。
IEL=(β/2)(k・ΔV)2
すなわち、電気光学素子Ekに供給される駆動電流IELは駆動トランジスタQdrの閾値
電圧Vthに依存しない。したがって、本実施形態によれば、各駆動トランジスタQdrの閾
値電圧Vthのバラツキ(設計値からの相違や他の駆動トランジスタQdrとの相違)に起因
した電気光学素子Ekの階調のムラを抑制することができる。
【0063】
<D:第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
第1実施形態においては、電気光学素子Ekの階調がデータ信号Sk[j]の電圧値Vdに応
じて設定される電圧プログラミング方式を例示した。これに対し、本実施形態においては
、電気光学素子Ekの階調をデータ信号Sk[j]の電流値Idに応じて設定する電流プログラ
ミング方式と電圧プログラミング方式とが併用される。なお、本実施形態のうち作用や機
能が第1実施形態と共通する要素については同じ符号を付してその詳細な説明を適宜に省
略する。
【0064】
図13は、第i行に属する第j列目の単位回路Pの構成を示す回路図である。同図に示
すように、単位回路Pは2個の素子部U1・U2を具備する。素子部Uk(本実施形態のk
は1または2)は電気光学素子Ekを含む。第1実施形態と同様に電気光学素子E1の階調
変化率は電気光学素子E2よりも低い(例えば電気光学素子E2は電気光学素子E1よりも
大面積である)。本実施形態においては、第3実施形態と同様に、階調値Dが低階調側の
範囲RL内の数値であれば電気光学素子E1が駆動され、階調値Dが高階調側の範囲RH内
の数値であれば電気光学素子E2が駆動される。
【0065】
図13に示すように、本実施形態の素子アレイ部Aには、走査線120と平行に延在す
る制御線121が形成される。走査線駆動回路22は、制御線121に制御信号G1[i]を
出力する。素子部Ukの駆動トランジスタQdrのドレインと電気光学素子Ekの陽極との間
には発光制御トランジスタQelが介在する。素子部U1・U2の各々における発光制御トラ
ンジスタQelのゲートには制御線121から制御信号G1[i]が供給される。
【0066】
素子部U1の選択トランジスタQslは、第1実施形態と同様に、駆動トランジスタQdr
のゲートとデータ線LD1[j]との間に介在する。一方、素子部U2の選択トランジスタQs
lは、駆動トランジスタQdrのドレインとデータ線LD2[j]との間に介在する。さらに、
素子部U2は、駆動トランジスタQdrのゲートとドレインとの間に介在して両者の電気的
な接続を制御するトランジスタQsw2を含む。トランジスタQsw2のゲートは走査線120
に接続される。
【0067】
図13に示すように、各信号生成回路25は、電圧生成回路251と電流生成回路25
2とスイッチSW1・SW2とを含む。第j列目の信号生成回路25のスイッチSW1はデ
ータ線LD2[j]と電圧生成回路251との間に介在し、スイッチSW2はデータ線LD2[j
]と電流生成回路252との間に介在する。電圧生成回路251にはデータ線LD1[j]も
接続される。
【0068】
図14は、本実施形態の動作を説明するためのタイミングチャートである。図14の部
分(a)には、第i行に属する第j列目の単位回路Pに対して低階調の範囲RL内の階調値D
を指定した場合が例示され、同図の部分(b)には、同じ単位回路Pに対して高階調の範囲
RH内の階調値Dを指定した場合が例示されている。図14の部分(a)および部分(b)に示
すように、制御信号G1[i]は、走査信号G[i]がハイレベルとなる水平走査期間Hの経過
後にハイレベルとなる。
【0069】
階調値Dが範囲RL内の数値であるとデータ判別部241が判定すると、信号生成回路
25は、図14の部分(a)に示すように、走査信号G[i]がハイレベルとなる水平走査期間
Hにおいて、スイッチSW1をオン状態に設定するとともにスイッチSW2をオフ状態に設
定する。これに対し、階調値Dが範囲RHに属する場合、信号生成回路25は、図14の
部分(b)に示すように、水平走査期間HにおいてスイッチSW1をオフ状態に設定するとと
もにスイッチSW2をオン状態に設定する。
【0070】
電圧生成回路251は、階調値Dが範囲RLに属する場合に、当該階調値Dに応じた電
圧値Vdのデータ信号S1[j]を出力するとともに電源電圧VELをスイッチSW1に出力する
。また、電圧生成回路251は、階調値Dが範囲RHに属する場合に電源電圧VELをデー
タ線LD1[j]に出力する。一方、電流生成回路252は、階調値Dが範囲RHに属する場
合に、当該階調値Dに応じた電流値Idの電流をスイッチSW2に出力し、階調値Dが範囲
RLに属する場合には電流の出力を停止する。
【0071】
したがって、階調値Dが範囲RLに属する場合には、図14の部分(a)に示すように、電
圧値Vdのデータ信号S1[j]がデータ線LD1[j]に出力されるとともに電圧値VELのデー
タ信号S2[j]がスイッチSW1を介してデータ線LD2[j]に出力される。一方、階調値D
が範囲RHに属する場合には、図14の部分(b)に示すように、電圧値VELのデータ信号S
1[j]がデータ線LD1[j]に出力されるとともに電流値Idのデータ信号S2[j]がスイッチ
SW2を介してデータ線LD2[j]に出力される。
【0072】
素子部U1の駆動トランジスタQdrのゲートには、第1実施形態と同様に、選択トラン
ジスタQslがオン状態となったときのデータ信号S1[j]が供給される。したがって、図1
4の部分(a)のようにデータ信号S1[j]が電圧値Vdであれば、制御信号G1[i]がハイレベ
ルとなる期間にて電気光学素子E1が電圧値Vd(階調値D)に応じた階調に制御され、図
14の部分(b)のようにデータ信号S1[j]が電圧値VELである場合に電気光学素子E1は消
灯する。
【0073】
また、走査信号G[i]がオン状態に遷移する水平走査期間Hにおいては、素子部U2の選
択トランジスタQslとトランジスタQsw2とがオン状態となる。図14の部分(a)の場合に
は、当該水平走査期間Hにて駆動トランジスタQdrのゲートがデータ信号S2[j]の電圧値
VELに設定されるから、制御信号G1[j]がハイレベルとなる期間において電気光学素子E
2は消灯する。一方、図14の部分(b)の場合には、図13に破線の矢印で示すように、水
平走査期間Hにて電源線17から駆動トランジスタQdrおよび選択トランジスタQslを経
由して電流値Idのデータ信号S2[j]が流れるから、容量素子Cには電流値Idに応じた電
圧が保持される。したがって、制御信号G1[j]がハイレベルとなる期間において、電気光
学素子E2は電流値Idに応じた階調に制御される。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態においても、階調変化率が相違する各電気光学素子
Ekが階調値Dの範囲Rに応じて選択的に駆動されるから、第1実施形態と同様の効果が
奏される。また、本実施形態においては、階調値Dが高い場合には電気光学素子E2の階
調がデータ信号S2[j]の電流値Idに応じて設定(電流プログラミング方式)される一方
、階調値Dが低い場合には電気光学素子E1の階調がデータ信号S1[j]の電圧値Vdに応じ
て設定(電圧プログラミング方式)される。したがって、以下に詳述するように、階調値
Dが低い場合であっても電気光学素子E1を階調値Dに応じた階調に確実に制御できると
いう利点がある。
【0075】
データ線LDk[j]には抵抗や容量が付随する。したがって、電流プログラミング方式に
おいて特に低階調が指定された場合(電流値Idが低い場合)には、データ信号Sk[j]を
階調値Dに応じた電流値Idに設定するために相当の時間を要するという問題がある。換
言すると、データ信号Sk[j]を供給する時間が不充分であると、駆動トランジスタQdrの
ゲートは階調値Dに応じた電圧に正確に設定されない。これに対し、本実施形態において
は、階調値Dが低階調の範囲RLにある場合に、駆動トランジスタQdrのゲートの電圧が
電圧プログラミング方式によって設定される。この構成によれば、駆動トランジスタQdr
のゲートにおける電圧の書込の不足が解消されるから、データ線LDk[j]の時定数が高い
場合であっても電気光学素子E1を高精度に所期の階調に制御することが可能となる。
【0076】
<E:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば
以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0077】
(1)変形例1
第1実施形態や第2実施形態においては、各電気光学素子Ekの形態(面積や各層の膜
厚)に応じて各々の階調変化率を相違させた構成を例示したが、階調変化率を素子部Uご
とに設定するための構成は適宜に変更される。より具体的には、ひとつの単位回路Pに含
まれる電気光学素子E1〜E3の各々を同じ形態とする一方、駆動トランジスタQdrの特性
(ゲートの電圧と駆動電流IELとの関係)を素子部Uごとに選定することで素子部Uごと
に階調変化率を相違させてもよい。
【0078】
例えば、第1実施形態の構成(図2)のもとで素子部U1〜U3の各々の駆動トランジス
タQdrのゲートに同じ電圧が印加されたと仮定した場合に、電気光学素子E1の駆動電流
IELが電気光学素子E2の駆動電流IELよりも小さく、電気光学素子E2の駆動電流IELが
電気光学素子E3の駆動電流IELよりも小さくなるように、素子部U1〜U3の各々におけ
る駆動トランジスタQdrの特性(例えばチャネル幅やチャネル長)が決定される。この構
成によっても第1実施形態や第2実施形態と同様の効果が奏される。
【0079】
以上のように本発明の形態においては、各素子部Ukに対して同じレベル(電圧値Vdや
電流値Id)のデータ信号Sk[j]が供給された場合の電気光学素子Ekの階調(階調変化率
)がひとつの素子部Uと他の素子部Uとで相違する構成であれば足り、この相違を実現す
るための具体的な構成の如何は不問である。
【0080】
(2)変形例2
以上の各形態においては各素子部Ukに対して別個のデータ信号Sk[j]が供給される構
成を例示したが、図15に示すように、ひとつの単位回路Pに属する複数の素子部Ukに
ついて1本のデータ線LD[j](1系統のデータ信号S[j])が共用される構成も採用され
る。同図に例示された単位回路Pは、素子部U1・U2と選択トランジスタQslとを含む。
素子部U1は、電気光学素子E1に供給される駆動電流IELをゲートの電圧に応じて制御す
るpチャネル型の駆動トランジスタQdr_pを含む。素子部U2は、電気光学素子E2に供給
される駆動電流IELをゲートの電圧に応じて制御するnチャネル型の駆動トランジスタQ
dr_nを含む。駆動トランジスタQdr_p・Qdr_nの各々のゲートとデータ線LD[j]との間
には選択トランジスタQslが介在する。
【0081】
階調値Dが範囲RL内の数値である場合、選択トランジスタQslがオン状態となる水平
走査期間Hにて駆動トランジスタQdr_p・Qdr _nの各々のゲートに供給されるデータ信
号S[j]は、駆動トランジスタQdr_pをオン状態とする範囲内で階調値Dに応じた電圧値
Vdに設定される。したがって、電気光学素子E1には駆動トランジスタQdr_pから階調値
Dに応じた駆動電流IELが供給される一方、駆動トランジスタQdr_nはオフ状態となるか
ら電気光学素子E2は消灯する。また、階調値Dが範囲RH内の数値である場合には、駆動
トランジスタQdr_nをオン状態とする範囲内で階調値Dに応じた電圧値Vdに設定された
データ信号S[j]が供給される。したがって、電気光学素子E2が階調値Dに応じた階調に
制御されるとともに電気光学素子E1は消灯する。図15の構成によっても、素子部U1と
U2との階調変化率を相違させることで以上の各形態と同様の効果が奏される。
【0082】
<F:応用例>
次に、本発明に係る電気光学装置を利用した電子機器について説明する。図16ないし
図18には、以上に説明した何れかの形態に係る電気光学装置100を表示装置として採
用した電子機器の形態が図示されている。
【0083】
図16は、電気光学装置100を採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成
を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する電気光
学装置100と、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部201
0とを具備する。電気光学装置100はOLED素子を電気光学素子Eとして使用してい
るので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0084】
図17は、電気光学装置100を適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。携帯
電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種
の画像を表示する電気光学装置100とを備える。スクロールボタン3002を操作する
ことによって、電気光学装置100に表示される画面がスクロールされる。
【0085】
図18は、電気光学装置100を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital
Assistants)の構成を示す斜視図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4
001および電源スイッチ4002と、各種の画像を表示する電気光学装置100とを備
える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった様々な情報
が電気光学装置100に表示される。
【0086】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図16から図18に
示した機器のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション
装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーショ
ン、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパ
ネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る電気光学装置の用途は画像の
表示に限定されない。例えば、光書込み型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置
においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する光ヘッド
(書込ヘッド)が使用されるが、この種の光ヘッドとしても本発明の電気光学装置は利用
される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。
【図2】各単位回路の構成を示す回路図である。
【図3】電気光学装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】電気光学素子や配線の形態を例示する平面図である。
【図5】データ信号の電圧値と各電気光学素子の階調(発光量)との関係を示すグラフである。
【図6】第1の態様に係る素子アレイ部の構成を示す断面図である。
【図7】第2の態様に係る素子アレイ部の構成を示す断面図である。
【図8】各電気光学素子からの出射光の分光特性を示すグラフである。
【図9】第3の態様に係る素子アレイ部の構成を示す断面図である。
【図10】第4の態様に係る素子アレイ部の構成を示す断面図である。
【図11】第3実施形態における単位回路の構成を示す回路図である。
【図12】電気光学装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図13】第4実施形態における単位回路の構成を示す回路図である。
【図14】電気光学装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図15】変形例に係る単位回路の構成を示す回路図である。
【図16】本発明に係る電子機器の形態(パーソナルコンピュータ)を示す斜視図である。
【図17】本発明に係る電子機器の形態(携帯電話機)を示す斜視図である。
【図18】本発明に係る電子機器の形態(携帯情報端末)を示す斜視図である。
【図19】データ信号の電圧値と電気光学素子の階調との関係を示すグラフである。
【図20】階調値と電気光学素子の実際の階調との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0088】
100……電気光学装置、A……素子アレイ部、P……単位回路、Uk(U1〜U3)……
素子部、Ek(E1〜E3)……電気光学素子、Qdr,Qdr_p,Qdr_n……駆動トランジス
タ、Qsl……選択トランジスタ、C,C1……容量素子、Qsw1,Qsw2……トランジスタ
、Qel……発光制御トランジスタ、120……走査線、121〜123……制御線、14
……配線群、LDk[j](LD1[j]〜LD3[j])……データ線、17……電源線、20……
制御回路、22……走査線駆動回路、24……データ線駆動回路、241……データ判別
部、25……信号生成回路、30……基板、31……配線、32……絶縁層、33……第
1電極、34……隔壁層、341……開口部、35……発光層、36……第2電極、37
……減光フィルタ、G[i]……走査信号、G1[i]〜G3[i]……制御信号、Sk[j](S1[j]
〜S3[j])……データ信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気光学素子をデータ信号のレベルに応じた階調に制御する第1素子部と、第2電
気光学素子をデータ信号のレベルに応じた階調に制御する第2素子部とを含み、前記第1
素子部と前記第2素子部とに同じレベルのデータ信号が付与された場合に、前記第1電気
光学素子が前記第2電気光学素子よりも低階調となる単位回路と、
前記単位回路に指定された階調値に応じて異なるレベルのデータ信号を生成する回路で
あって、前記階調値が第1範囲内にある場合に、前記第1電気光学素子が当該階調値に対
応した階調に制御されるようにレベルが設定されたデータ信号を前記第1素子部に付与し
、前記階調値が前記第1範囲よりも高階調側の第2範囲内にある場合に、前記第2電気光
学素子が当該階調値に対応した階調に制御されるようにレベルが設定されたデータ信号を
前記第2素子部に付与する信号生成回路と
を具備する電気光学装置。
【請求項2】
前記第1電気光学素子と前記第2電気光学素子とは、光を出射する領域の面積が相違す

請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1電気光学素子および前記第2電気光学素子は、第1電極と第2電極との間に発
光層が介在する発光素子であり、
前記第1電気光学素子と前記第2電気光学素子とは、第1電極と第2電極との間隔が相
違する
請求項1または請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1電気光学素子および前記第2電気光学素子は、相互に対向する光透過性の第1
電極と光反射性の第2電極との間に発光層が介在する発光素子であり、
前記第1電気光学素子と前記第2電気光学素子とは、前記第1電極の膜厚が相違する
請求項1から請求項3の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項5】
基板の面上に形成された光透過性の絶縁層を具備し、
前記第1電気光学素子および前記第2電気光学素子は、前記絶縁層の面上に形成された
光透過性の第1電極と当該第1電極に対向する光反射性の第2電極との間に発光層が介在
する発光素子であり、
前記絶縁層のうち前記第1電気光学素子からの出射光が透過する領域と前記第2電気光
学素子からの出射光が透過する領域とは膜厚が相違する
請求項1から請求項4の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記第1電気光学素子からの出射光が透過する第1透光体と、
前記第2電気光学素子からの出射光が透過する第2透光体とを具備し、
前記第1透光体と前記第2透光体とは透過率が相違する
請求項1から請求項5の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第1素子部および前記第2素子部の各々は、ゲートの電圧に応じた駆動電流を生成
して電気光学素子に供給する駆動トランジスタを含み、
前記第1素子部の駆動トランジスタと前記第2素子部の駆動トランジスタとは、ゲート
に同じ電圧が印加されたときの駆動電流の電流値が相違する
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第1素子部は、第1期間にて、前記第1電気光学素子をデータ信号のレベルに応じ
た輝度に発光させ、前記第2素子部は、前記第1期間よりも長い第2期間にて、前記第2
電気光学素子をデータ信号のレベルに応じた輝度に発光させる
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記第1素子部は、前記第1電気光学素子をデータ信号の電圧値に応じた階調に制御し

前記第2素子部は、前記第2電気光学素子をデータ信号の電流値に応じた階調に制御し

前記信号生成回路は、前記単位回路に指定された階調値が前記第1範囲内にある場合に
、当該階調値に応じた電圧値のデータ信号を前記第1素子部に出力する電圧生成回路と、
前記階調値が前記第2範囲内にある場合に、当該階調値に応じた電流値のデータ信号を前
記第2素子部に供給する電流生成回路とを含む
請求項1から請求項8の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れかに記載の電気光学装置を具備する電子機器。
【請求項11】
第1電気光学素子をデータ信号のレベルに応じた階調に制御する第1素子部と、第2電
気光学素子をデータ信号のレベルに応じた階調に制御する第2素子部とを含み、前記第1
素子部と前記第2素子部とに同じレベルのデータ信号が付与された場合に、前記第1電気
光学素子が前記第2電気光学素子よりも低階調となる単位回路を具備する電気光学装置を
駆動する方法であって、
前記単位回路に指定された階調値が、第1範囲と当該第1範囲よりも高階調側の第2範
囲とを含む複数の範囲の何れに属するかを判別する判別過程と、
前記階調値に応じて異なるレベルのデータ信号を生成する信号生成過程とを含み、
前記信号生成過程においては、前記階調値が前記第1範囲内にあると前記判別過程にて
判別された場合に、前記第1電気光学素子が当該階調値に対応した階調に制御されるよう
にレベルが設定されたデータ信号を前記第1素子部に付与し、前記階調値が前記第2範囲
内にあると前記判別過程にて判別された場合に、前記第2電気光学素子が当該階調値に対
応した階調に制御されるようにレベルが設定されたデータ信号を前記第2素子部に付与す

電気光学装置の駆動方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−286470(P2007−286470A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115433(P2006−115433)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】