電気光学装置および電子機器
【課題】 2つの非線形素子を極性を逆向きにして並列に電気的して画素スイッチング素子を構成した場合でも、その占有面積を狭くすることのできる電気光学装置、およびこの電気光学装置を備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】 電気光学装置の素子基板には、データ線2(第1の上電極53)、第1の下電極51、第2の上電極54および第2の下電極52が略井桁状に配置され、第1の下電極51とデータ線2との重なり領域、および第2の下電極52と第2の上電極54との重なり領域に第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bが形成され、これらの非線形素子5a、5bは、極性を逆向きにして並列に接続されて画素スイッチング素子5として用いられる。
【解決手段】 電気光学装置の素子基板には、データ線2(第1の上電極53)、第1の下電極51、第2の上電極54および第2の下電極52が略井桁状に配置され、第1の下電極51とデータ線2との重なり領域、および第2の下電極52と第2の上電極54との重なり領域に第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bが形成され、これらの非線形素子5a、5bは、極性を逆向きにして並列に接続されて画素スイッチング素子5として用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非線形素子を画素スイッチング素子として用いた電気光学装置、およびこの電気光学装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の電気光学装置では、素子基板の方にデータ線あるいは素子基板に画素スイッチング素子を介して接続する画素電極が形成されている。また、画素スイッチング素子として非線形素子が用いられた電気光学装置では、液晶を反転駆動する場合、画素スイッチング素子の電流−電圧の非線形特性が正負の双方向にわたって対称となるように、極性を逆向きにした2つの非線形素子を直列接続した構造、いわゆるBack−to−Back構造の非線形素子が用いられることが多い。
【0003】
しかしながら、Back−to−Back構造の非線形素子の場合には、2つの非線形素子が直列に接続されている分、駆動電圧を高く設定する必要がある。また、一方の非線形素子に大きな負荷がかかりやすい。さらに、オン電流を確保するという点から、下電極と上電極との間に形成される素子用絶縁膜を薄くする必要がある。このため、Back−to−Back構造の非線形素子は、特性の経時変化が大きく、信頼性が低いという問題点がある。
【0004】
そこで、2つの非線形素子を極性を逆向きにして並列に電気的して、電流−電圧の非線形特性を正負の双方向にわたって対称とする構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−152079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に開示の構成では、信号線から突起を画素電極に向けて突出させる一方、画素電極から信号線に向けて突起を突出させ、この突起と重なり合う位置に非線形抵抗層を形成して非線形素子を配置するため、非線形素子と画素電極との間、および非線形素子と信号線との間に広い隙間を確保する必要がある。このため、非線形素子およびそれに付随してデッドスペースとなる部分の面積が広く、画素開口率(画素全体において表示に直接寄与する部分の面積比)が低いという問題点がある。ここで、画素開口率が低い場合には、表示光量が少ない分、表示が暗くなってしまうため、バックライトからの出射光量を増大させる必要があり、このような対策は消費電力を増大させるため好ましくない。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、極性を逆向きに2つの非線形素子を並列接続させて画素スイッチング素子を構成した場合でも、その占有面積を狭くすることのできる電気光学装置、およびこの電気光学装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、液晶を挟持する素子基板と対向基板とを有し、前記素子基板には、走査線およびデータ線のうちの少なくとも一方の信号線と、該信号線に画素スイッチング素子を介して電気的に接続された画素電極とが形成された電気光学装置において、前記画素スイッチング素子は、互いに逆極性で並列接続された第1の非線形素子と第2の非線形素子とを備え、前記第1の非線形素子は、前記一方の信号線と交差する方向に延びて当該一方の信号線に下層側で部分的に重なる第1の下電極と、該第1の下電極の表面に形成された第1の素子用絶縁膜と、前記一方の信号線からなる第1の上電極とによって構成され、前記第2の非線形素子は、前記第1の下電極と並列に形成されて前記一方の信号線に下層側で部分的に重なる第2の下電極と、該第2の下電極の表面に形成された第2の素子用絶縁膜と、前記一方の信号線と並列に形成されて前記第1の下電極および前記第2の下電極に対して上層側で部分的に重なる第2の上電極とを備え、前記第1の下電極と前記第2の上電極との重なり部分には、当該第1の下電極と当該第2の上電極との第1の接続部が形成され、前記第2の下電極と前記一方の信号線との重なり部分には、当該第2の下電極と当該一方の信号線との第2の接続部が形成され、前記画素電極は前記第2の上電極に接続していることを特徴とする。
【0008】
本願明細書において「並列接続」とは並列に電気的に接続していればよく、「直列接続」とは直列に電気的に接続していればよく、電極同士が直接接続している構成の他、他の配線や電極を介して電気的に接続している構成も含む意味である。また、「並列して形成」とは、電気的に接続しているか否かを問わず、同一方向に延びている様子を意味する。
【0009】
本発明では、画素スイッチング素子を平面的にみたとき、一方の信号線(第1の上電極)、第1の下電極と、第2の上電極および第2の下電極が井桁状や♯形状にレイアウトされ、4つの角部分のうち、対角に位置する2つの角部分では、一方の信号線と第1の下電極とが重なる部分を利用して第1の非線形素子が構成され、第2の下電極と第2の上電極とが重なる部分を利用して第2の非線形素子が構成されている。また、残りの2つの角部分では、第1の下電極と第2の上電極との重なり部分を第1の接続部として利用し、第2の下電極と信号線との重なり部分を第2の接続部として利用している。このような構成によれば、第1の下電極および第2の下電極については、短くしても、一方の信号線(第1の上電極)および第2の上電極と容易にかつ確実に重ねることができるので、狭い領域内に非線形素子および接続部を配置することができる。それ故、極性を逆向きに2つの非線形素子を並列接続して画素スイッチング素子を構成した場合でも、その占有面積が狭いので、高い画素開口率を確保することができる。
【0010】
本発明において、前記第1の下電極と前記第2の下電極とは同一の導電材料により構成され、前記一方の信号線と前記第2の上電極とは同一の導電材料により構成されていることが好ましい。このように構成すると、従来と同一の工程数で、2つの非線形素子を極性を逆向きにして並列に電気的した画素スイッチング素子を構成することができる。
【0011】
本発明において、前記画素電極は、前記第1の下電極と前記第2の上電極との重なり部分で当該第2上電極に電気的に接続し、前記第2の下電極と前記一方の信号線との重なり部分には、前記素子基板と前記対向基板との間の間隔を規定する柱状スペーサが配置されていることが好ましい。このような角部分では比較的広い面積を確保しても、画素スイッチング素子の占有面積が大きく拡がることがないので、高い画素開口率を確保することができる。
【0012】
本発明において、前記第1の接続部は、前記第1の素子用絶縁膜および前記第1の下電極の部分的な除去により露出した当該第1の下電極の端面と、前記第2の上電極との接続により構成され、前記第2の接続部は、前記第2の素子用絶縁膜および前記第2の下電極の部分的な除去により露出した当該第2の下電極の端面と、前記一方の信号線との接続により構成されていることが好ましい。素子基板の製造工程においては、給電線やブリッジ部分を利用して第1の下電極および第2の下電極に給電して陽極酸化を行い、第1の素子用絶縁膜および第2の素子用絶縁膜を形成した後、給電線やブリッジ部分をエッチング除去するため、かかる工程を利用して、第1の下電極の端面た第2の下電極の端面を露出させて第1の接続部や第2の接続部を形成すれば、接続を図るための工程を別途、行う必要がない。
【0013】
本発明において、前記第1の素子用絶縁膜の厚さは、前記第1の下電極の側面より上面で厚く、前記第2の素子用絶縁膜の厚さは、前記第2の下電極の側面より上面で厚いことが好ましい。このように構成すると、第1の非線形素子では第1の下電極の上面に寄生する容量を無視できるほど小さくでき、第2の非線形素子では第2の下電極の上面に寄生する容量を無視できるほど小さくできるので、画素スイッチング素子全体としての寄生容量を小さくできる。
【0014】
本発明は、前記対向基板に、前記画素電極と対向して前記液晶を駆動する共通電極(対向電極)が形成されているTN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Aligned Nematic)モードなどの電気光学装置に適用できる。
【0015】
また、本発明は、前記素子基板に前記走査線および前記データ線のうちの他方の信号線と、前記画素電極と対向して前記液晶を駆動する共通電極とが形成されているIPS(In−Plane Switching)モードやFFS(Fringe Field Switching)モードなど、横電界を利用するタイプの電気光学装置にも適用することができる。
【0016】
本発明において、前記素子基板には、前記非線形素子に直列接続し、かつ、前記画素電極、前記液晶および前記共通電極によって構成される液晶容量に並列接続された補助容量が形成されていることが好ましい。このように構成すると、非線形素子に容量が寄生している場合でも、画素電極に印加される電圧が高くなるので、駆動電圧を低く設定したときでも、所定の電圧を画素電極に印加することができる。
【0017】
本発明に係る電気光学装置は、例えば、携帯電話機やモバイルコンピュータなどといった電子機器に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺が各層や各部材ごとに異なる場合がある。また、各図においては、断面図および平面図に関わらず、非線形素子を構成するタンタル膜などの導電膜について右下がりの斜線を付し、クロム膜などの導電膜については右上がりの斜線を付してある。
【0019】
[実施の形態1]
(電気光学装置の構成例)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置(液晶装置)の電気的構成を示すブロック図である。図2は、図1に示す電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【0020】
図1に示す電気光学装置1はTNモードやVAモードの液晶装置であり、この電気光学装置1では、複数本の走査線3が行(X)方向に延在して形成され、複数本のデータ線2(本発明における一方の信号線)が列(Y)方向に延在して形成されている。走査線3とデータ線2との各交差点に対応する位置には複数の画素10が形成され、これらの画素10はマトリクス状に配置されている。各画素10では、データ線2と走査線3との間に、後述する画素電極、液晶層および対向電極(走査線3)によって構成された液晶容量4と、後述する非線形素子によって構成された画素スイッチング素子5とが直列接続され、図1に示す例では、液晶容量4が走査線3の側に、画素スイッチング素子5がデータ線2の側に接続されている。ここで、各走査線3は走査線駆動回路13によって駆動される一方、各データ線2はデータ線駆動回路12によって駆動される。なお、液晶容量4がデータ線2の側に接続され、画素スイッチング素子5が走査線3の側に接続されることもある。
【0021】
本形態の電気光学装置1は、具体的には図2に示すように、対向配置された一対の基板を有しており、一対の基板のうち、一方の基板は素子基板20であり、他方の基板は対向基板30である。素子基板20の内側表面には、複数本のデータ線2と、データ線2に接続される複数の画素スイッチング素子5と、画素スイッチング素子5と1対1に接続される画素電極41とが形成されている。データ線2は、図2において紙面に対して垂直方向に延在して形成される一方、画素スイッチング素子5および画素電極は、マトリクス状に配列されている。画素電極41などの表面側には、ポリイミドなどからなる配向膜22が形成されている。対向基板30の内側表面には、走査線3として機能する対向電極31(共通電極)が、データ線2と直交する方向に形成され、その表面には、ポリイミドなどからなる配向膜32が形成されている。素子基板20と対向基板30とは、シール材14によって貼り合わされ、その内側に液晶11が挟持されている。なお、本形態の電気光学装置1には、COG(Chip On Glass)技術が適用されており、素子基板20の表面に直接、液晶駆動用ICチップ15が実装されている。
【0022】
本形態では、素子基板20と対向基板30との間に所定の間隔を確保することを目的に、素子基板20には、後述する柱状スペーサが形成され、この柱状スペーサの上端部が対向基板30に当接することにより、素子基板20と対向基板30との間隔が制御されている。
【0023】
なお、電気光学装置1をカラー表示用に構成する場合、対向基板30には、「R」、「G」、「B」のカラーフィルタが形成されるが、本発明とは直接、関係しないので、その図示や説明を省略する。また、対向基板30には、ブラックマトリクスなどと称せられる遮光膜や平坦化膜などが形成される場合もあるが、これらについても説明を省略する。さらに、素子基板20の外側表面や対向基板30の外側表面には、配向膜22、32へのラビング方向などに対応した光軸を有する偏光板や位相差板などの光学部材が配置されるが、これらの光学部材についても図示および説明を省略する。
【0024】
(素子基板20の詳細構成)
図3および図4はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置に用いた素子基板の数画素分のレイアウトを示す平面図、およびこの素子基板上に形成した画素スイッチング素子の斜視図である。図5(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図3のA1−A1′線、B1−B1′線、C1−C1′線、D1−D1′線で電気光学装置1を切断したときの様子を模式的に示す断面図である。
【0025】
図3、図4および図5(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、本形態の電気光学装置1において、素子基板20には、タンタル酸化膜などからなる下地層200が形成され、この下地層200の上層には、データ線2、データ線2に電気的に接続する画素スイッチング素子5、および画素スイッチング素子5を介してデータ線2に接続する画素電極41が形成されている。本形態において、画素スイッチング素子5は、以下に詳述するように、互いに逆極性で並列接続された第1の非線形素子5a(TFD(Thin Film Diode)素子)と第2の非線形素子5b(TFD)とから構成されている。
【0026】
本形態では、画素スイッチング素子5を構成するにあたって、まず、データ線2と交差する方向に、短冊状の第1の下電極51と短冊状の第2の下電極52とが並列に形成されている。ここで、第1の下電極51および第2の下電極52は、膜厚が例えば100〜150nm程度のタンタル膜などから構成されている。第1の下電極51および第2の下電極52としては、タンタル単体膜、あるいはタンタルを主成分とする合金、例えば、タングステン−タンタル合金を用いることができる。また、第1の下電極51および第2の下電極52は、ニオブ単体膜、あるいはニオブとタンタルとの合金などによって構成されることもある。
【0027】
第1の下電極51の表面には、厚さが20〜40nmのタンタル酸化膜50a(陽極酸化膜)からなる第1の素子用絶縁膜57が形成され、第2の下電極52の表面には、同じく、厚さが20〜40nmのタンタル酸化膜50a(陽極酸化膜)からなる第2の素子用絶縁膜58が形成されている。
【0028】
データ線2は、第1の下電極51および第2の下電極52の一方側端部に対して上層側で重なるように延びたクロム膜などから形成され、第1の上電極53を構成している。また、素子基板20には、データ線2と並行するように短冊状のクロム膜などからなる第2の上電極54が形成され、第2の上電極54は、第1の下電極51および第2の下電極52の他方側端部に対して上層側で重なっている。データ線2および第2の上電極54の膜厚は、例えば100〜500nm程度である。
【0029】
このように本形態では、データ線2(第1の上電極53)、第1の下電極51、第2の上電極54および第2の下電極52は、略井桁状に配置されており、第1の下電極51の一方側端部とデータ線2とが重なる領域には、第1の下電極51、第1の素子用絶縁膜57およびデータ線2(第1の上電極53)によって第1の非線形素子5aが形成され、第2の下電極52の他方側端部と信号線とが重なる領域には、第2の下電極52、第2の素子用絶縁膜58および第2の上電極54によって第2の非線形素子5bが形成されている。
【0030】
ここで、第1の下電極51と第2の上電極54は、互いに重なり合う領域が広めの矩形領域として形成されており、第1の下電極51と第2の上電極54との重なり部分には、第1の下電極51と第2の上電極54とが接続する第1の接続部55が形成されている。すなわち、第1の下電極51の矩形領域では、図5(a)、(d)に示すように、第1の素子用絶縁膜57(タンタル酸化膜50a)および第1の下電極51がスリット状に部分的に除去され、このようなスリット551の形成により露出した第1の下電極51の端面515と第2の上電極54とが直接、接触して第1の接続部55が形成されている。
【0031】
また、第2の下電極52とデータ線2は、互いに重なり合う領域が広めの矩形領域として形成されており、第2の下電極52とデータ線2との重なり部分には、第2の下電極52とデータ線2とが接続する第2の接続部56が形成されている。すなわち、第2の下電極52の矩形領域では、図5(b)、(c)に示すように、第2の素子用絶縁膜58(タンタル酸化膜50a)および第2の下電極52がスリット状に部分的に除去され、このようなスリット561の形成により露出した第2の下電極52の端面525とデータ線2とが直接、接触して第2の接続部56が形成されている。
【0032】
このように構成した画素スイッチング素子5の上層側には層間絶縁膜25が形成され、この層間絶縁膜25の上層側にはITOなどからなる画素電極41が形成されている。ここで、層間絶縁膜25には、第1の下電極51と第2の上電極54と重なる部分にコンタクトホール26が形成され、このコンタクトホール26によって、画素電極41と第2の上電極54とが電気的に接続している。
【0033】
また、本形態では、素子基板20には、素子基板20と対向基板30との間隔を制御するための柱状スペーサ18が形成され、この柱状スペーサ18は、第2の下電極52の一方側端部とデータ線2との重なり領域に形成されている。なお、画素電極41や柱状スペーサ18の上層側には配向膜22が形成されている。
【0034】
(電気光学装置の製造方法)
図6(a)〜(e)は、本形態の電気光学装置1の製造工程のうち、素子基板20の製造工程を示す説明図である。なお、図6(a)〜(e)において、左側領域には画素1つ分の平面図を示し、右側領域には、図3のD1−D1′線に相当する位置での断面図を示してある。なお、以下に説明する工程は、通常、素子基板を多数取りできる大型の元基板の状態で行われるが、以下の説明では、単品サイズの素子基板および大型の元基板を区別せずに素子基板20と称して説明する。
【0035】
まず、図6(a)に示すように、素子基板20の全面にタンタル酸化膜などにより下地層200を形成する。次に、素子基板20の全面にタンタル膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタル膜をパターニングし、給電線8b、第1の下電極51および第2の下電極52を備えたタンタルパターン8aを形成する。
【0036】
次に、給電線8bから給電してタンタルパターン8aに陽極酸化を行い、図6(b)に示すように、タンタルパターン8aの表面全体に膜厚が20〜40nmのタンタル酸化膜50aを形成する。このようなタンタル酸化膜50aのうち、第1の下電極51の表面に形成されたタンタル酸化膜50aが第1の素子用絶縁膜57であり、第2の下電極52の表面に形成されたタンタル酸化膜50aが第2の素子用絶縁膜58である。なお、陽極酸化を行った後、素子基板20を加熱炉内で加熱し、タンタル酸化膜50a(第1の素子用絶縁膜57および第2の素子用絶縁膜58)内の転位や空孔などの欠陥密度を低減してもよい。
【0037】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタルパターン8aおよびその表面に形成されたタンタル酸化膜50aを、図6(c)に示すようにパターニングし、給電線8bをエッチング除去する。その結果、第1の下電極51と第2の下電極52が島状に形成されるが、第1の下電極51の表面には第1の素子用絶縁膜57が残っており、第2の下電極52の表面には第2の素子用絶縁膜58が残っている。その際、第1の下電極51の他方側端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第1の素子用絶縁膜57にスリット551を形成し、スリット551内で第1の下電極51の端面を515露出させる。また、第2の下電極52の一方側端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第2の素子用絶縁膜58にスリット561を形成し、スリット561内で第2の下電極52の端面525を露出させる。
【0038】
次に、素子基板20の全面にクロム膜などの導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、クロム膜などの導電膜を、図6(d)に示すようにパターニングし、データ線2(第1の上電極53)および第2の上電極54を形成する。その結果、信号線2(第1の上電極53)、第1の下電極51、第2の上電極54および第2の下電極52は、略井桁状に配置され、第1の下電極51の一方側端部とデータ線2(第1の上電極53)とが重なる領域に第1の非線形素子5aが形成され、第2の下電極52の他方側端部と第2の上電極54とが重なる領域に第2の非線形素子5bが形成される。また、第1の下電極51の矩形領域では、第1の下電極51の端面515と第2の上電極54とが直接、接触して第1の接続部55が形成され、第2の下電極52の矩形領域では、第2の下電極52の端面525とデータ線2とが直接、接触して第2の接続部56が形成される。
【0039】
このようにして、第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bを備えた画素スイッチング素子5を形成した後、その表面側に、図6(e)に示すように、コンタクトホール26を備えた層間絶縁膜25を形成する。ここで、層間絶縁膜25がシリコン酸化膜である場合、素子基板20の全面にシリコン酸化膜などの絶縁膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、絶縁膜を図6(e)に示すようにパターニングし、コンタクトホール26を形成する。これに対して、層間絶縁膜25が感光性樹脂層である場合、素子基板20の全面に感光性樹脂を塗布した後、選択的に露光し、現像し、図6(e)に示すように、コンタクトホール26を備えた層間絶縁膜25を形成する。
【0040】
次に、層間絶縁膜25の表面にITO膜などの導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、ITOなどの導電膜を図3および図5に示すようにパターニングし、画素電極41を形成する。このようにして形成した画素電極41は、コンタクトホール26を介して画素スイッチング素子5の第2の上電極54に電気的に接続する。
【0041】
次に、素子基板20の全面に感光性樹脂を厚く塗布した後、選択的に露光し、現像し、図3および図5に示すように、第2の下電極52の一方側端部とデータ線2とが重なる領域に第2柱状スペーサ18を形成する。
【0042】
しかる後、素子基板20の全面にポリイミド樹脂などを塗布、焼成した後、ラビング処理を行い、配向膜22を形成する。このようにして素子基板20を形成する。
【0043】
このようにして製造した素子基板20は、対向電極31および配向膜32が形成された対向基板30とシール材14によって貼り合わせた後、シール材14の途切れ部分から液晶11を注入し、しかる後に、シール材14の途切れ部分を封止材で封止する。これにより、電気光学装置1が完成する。
【0044】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の電気光学装置1において、素子基板20には、第1の非線形素子5aと第2の非線形素子5bを極性を逆向きにして並列に電気的した画素スイッチング素子5が用いられている。このため、画素スイッチング素子5では、電流−電圧の非線形特性が正負の双方向にわたって対称であるため、反転駆動方式を採用した場合でも、品位の高い画像を安定して表示できる。しかも、本形態の画素スイッチング素子5では、Back−to−Back構造の非線形素子と違って、選択時には、第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bのうちの一方がオン状態になればよいので、駆動電圧を低く設定することができ、かつ、第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bのうちの一方に大きな負荷がかかることもない。さらに、十分なレベルのオン電流を確保する場合でも、第1の素子用絶縁膜57および第2の素子用絶縁膜58が厚くてよいので、本形態の画素スイッチング素子5は、Back−to−Back構造の非線形素子と比較して、特性の経時変化が小さく、信頼性が高い。
【0045】
また、本形態では、画素スイッチング素子5を平面的にみたとき、データ線2(第1の上電極53)、第1の下電極51と、第2の上電極54および第2の下電極52が井桁状にレイアウトされ、4つの角部分のうち、対角に位置する2つの角部分を利用して第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bが構成されている。また、残りの2つの角部分を利用して、第1の下電極51と第2の上電極54とを接続する第1の接続部55と、第2の下電極52とデータ線2とを接続させる第2の接続部56とが形成されている。このため、第1の下電極51および第2の下電極52を短くしても、第1の下電極51および第2の下電極52と、信号線2(第1の上電極53)および第2の上電極54と容易にかつ確実に重ねることができ、狭い領域内に2つの非線形素子5a、5b、および2つの接続部55、56を配置することができる。それ故、極性を逆向きにして第1の非線形素子5aと第2の非線形素子5bとを並列接続して画素スイッチング素子5を構成した場合でも、その占有面積を狭くすることができ、高い画素開口率を確保することができる。
【0046】
[実施の形態2]
図7(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置1を図3のA1−A1′線、B1−B1′線、C1−C1′線、D1−D1′線に相当する位置で切断したときの構造を模式的に示す断面図である。図8(a)〜(e)は、本形態の電気光学装置の製造工程のうち、素子基板の製造工程を示す説明図である。なお、図8(a)〜(e)において、左側領域には画素1つ分の平面図を示し、右側領域には、図3のD1−D1′線に相当する位置での断面図を示してある。なお、本形態の電気光学装置の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0047】
本形態の電気光学装置1は、図7(a)〜(d)に示すように、画素スイッチング素子5は、実施の形態1と同様、互いに逆極性で並列接続された第1の非線形素子5a(TFD)と第2の非線形素子5b(TFD)とから構成されている。第1の非線形素子5aは、データ線2と交差する方向に延びてデータ線2に下層側で部分的に重なるタンタル膜からなる第1の下電極51と、第1の下電極51の表面に形成されたタンタル酸化膜(陽極酸化膜)からなる第1の素子用絶縁膜57と、データ線2からなる第1の上電極53とによって構成されている。また、第2の非線形素子5bは、第1の下電極51と並列に形成されてデータ線2に下層側で部分的に重なるタンタル膜からなる第2の下電極52と、第2の下電極52の表面に形成されたタンタル酸化膜(陽極酸化膜)からなる第2の素子用絶縁膜58と、データ線2と並列に形成されて第1の下電極51および第2の下電極52に対して上層側でG部分的に重なるクロム膜からなる第2の上電極54とを備えている。
【0048】
このように構成した画素スイッチング素子5において、第1の素子用絶縁膜57は、第1の下電極51の側面に形成されているタンタル酸化膜50cより上面に形成されているタンタル酸化膜50bの方が厚い。また、第2の素子用絶縁膜58でも、第2の下電極52の側面に形成されているタンタル酸化膜50cより上面に形成されているタンタル酸化膜50bの方が厚い。例えば、第1の下電極51および第2の下電極52の上面に形成されているタンタル酸化膜50bの膜厚は50nm〜100nmであるが、側面に形成されているタンタル酸化膜50cの膜厚は20〜40nmである。
【0049】
このように構成した画素スイッチング素子5では、第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bのいずれにおいても、第1の下電極51の上面とデータ線2との間に寄生する容量、および第2の下電極52の上面と第2の上電極54との間に寄生する容量が無視できるほど小さいので、画素スイッチング素子5全体としての寄生容量が小さい。
【0050】
このような構成の画素スイッチング素子5を備えた電気光学装置1を製造するには、まず、図8(a)に示すように、素子基板20の表面全体にタンタル酸化膜などからなる下地層200を形成した後、下地層200の表面全体にタンタル膜8cを形成する。
【0051】
次に、タンタル膜8cに陽極酸化を行い、膜厚が50nm〜100nmの厚いタンタル酸化膜50bを形成する。
【0052】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタル酸化膜50bおよびタンタル膜8cをパターニングし、図8(c)に示すように、給電線8b、第1の下電極51および第2の下電極52を備えたタンタルパターン8aを形成する。
【0053】
次に、給電線8bから給電してタンタルパターン8aに陽極酸化を行い、図8(d)に示すように、タンタルパターン8aの側面に、膜厚が20〜40nmの薄いタンタル酸化膜50cを形成する。このようにして第1の下電極51および第2の下電極52の表面に第1の素子用絶縁膜57および第2の素子用絶縁膜58を形成するが、第1の素子用絶縁膜57および第2の素子用絶縁膜58のいずれにおいても、その上面に形成されたタンタル酸化膜50bは、側面に形成されたタンタル酸化膜50cより厚い。
【0054】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタルパターン8aおよびその表面に形成されたタンタル酸化膜50a、50bを、図8(e)に示すようにパターニングし、給電線8bを除去する。その結果、第1の下電極51および第2の下電極52が島状に形成され、その表面には第1の素子用絶縁膜57および第2の素子用絶縁膜58が残っている。その際、第1の下電極51の他方側端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第1の素子用絶縁膜57をスリット551を形成し、スリット551内で第1の下電極51の端面515を露出させる。また、第2の下電極52の一方側端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第2の素子用絶縁膜58にスリット561を形成し、スリット561内で第2の下電極52の端面525を露出させる。
【0055】
それ以降の工程は、実施の形態1に関して、図6(d)〜図6(e)などを参照して説明した工程と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
[実施の形態3]
(全体構成)
図9は、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置(液晶装置)の電気的構成を示すブロック図である。図10は、図9に示す電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【0057】
図9に示す電気光学装置1はIPSモードの液晶装置であり、この電気光学装置1では、X方向に延びた走査線3(本発明における一方の信号線)と、Y方向に延びたデータ線2との交差点に対応して複数の画素10がマトリクス状に構成されている。データ線2はデータ線駆動回路12に接続され、走査線3は走査線駆動回路13に接続されている。本形態では、走査線3に画素スイッチング素子5が接続され、この画素スイッチング素子5を介して画素電極46が接続されている。データ線2には共通電極205が接続しており、共通電極205と画素電極46との間には液晶容量4が形成され、液晶容量4と画素スイッチング素子5とは直列接続されている。また、本形態では、データ線2と画素電極46との間には補助容量9が形成されており、補助容量9は、画素スイッチング素子5に直列接続され、液晶容量4には並列接続されている。
【0058】
このような構成の電気光学装置1は、例えば、図10に示すように構成され、対向配置された一対の基板を有している。一方の基板は、画素スイッチング素子5や画素電極46が形成された素子基板20であり、他方の基板は対向基板30である。素子基板20と対向基板30とはシール材14によって貼り合わされ、その内側に液晶11が封入されている。本形態の電気光学装置1でも、実施の形態1と同様、素子基板20の表面に直接、液晶駆動用ICチップ15が実装されている。
【0059】
本形態において、液晶11はIPSモードで駆動されるため、素子基板20の内側表面には、複数本のデータ線2、データ線2に接続される複数の画素スイッチング素子5、および画素スイッチング素子5と1対1に接続される画素電極46に加えて、詳しくは後述するように、図9に示した走査線3、共通電極205および補助容量9も形成されている。なお、画素電極46などの表面には、ポリイミドなどからなる配向膜22が形成されている。対向基板30の内側表面には、ポリイミドなどからなる配向膜32が形成され、実施の形態1と違って、対向基板30の内側表面には対向電極が形成されていない。なお、本形態でも、電気光学装置1をカラー表示用に構成する場合、対向基板30には、「R」、「G」、「B」のカラーフィルタが形成されるが、本発明とは直接、関係しないので、その図示や説明を省略する。また、対向基板30には、ブラックマトリクスなどと称せられる遮光膜や、平坦化膜が形成される場合もあるが、これらについても説明を省略する。また、素子基板20の外側表面や対向基板30の外側表面には、偏光板や位相差板などの光学部材が配置されるが、これらの光学部材についても図示および説明を省略する。
【0060】
(素子基板20の詳細構成)
図11は、本発明の実施の形態3に係る電気光学装置に用いた素子基板において、数画素分のレイアウトを示す平面図である。図12(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図11のA2−A2′線、B2−B2′線、C2−C2′線、D2−D2′線で電気光学装置を切断したときの構造を模式的に示す断面図である。
【0061】
図11および図12(a)、(b)、(c)、(d)において、本形態の電気光学装置1では、Y方向に延びたデータ線2は、タンタルなどからなる金属配線であり、X方向に延びた走査線3は、クロムなどからなる金属配線である。
【0062】
本形態でも、データ線2と走査線3との交差点の近傍には、画素スイッチング素子5が形成され、この画素スイッチング素子5には、Y方向に延びた画素配線部305、X方向に延びた容量用上電極301、Y方向に延びた櫛歯状の画素電極46、およびX方向に延びた容量用上電極302がこの順に接続されている。これらの電極などは、走査線3と同時形成されたクロム膜によって形成されている。また、画素10内には、データ線2からのX方向への突出部分によって2本の容量用下電極201、202が構成され、容量用下電極201、202同士を接続するように櫛歯状の共通電極205がY方向に延びている。これらの電極などは、データ線2と同時形成されたタンタル膜によって形成されている。ここで、共通電極205と画素電極46とは、X方向において交互に配置され、その間で液晶11を駆動する。
【0063】
共通電極205、容量用下電極201、202およびデータ線2の表面には、膜厚が100〜250nmの厚いタンタル酸化膜50eが形成され、このタンタル酸化膜50eのうち、容量用下電極201、202の表面を覆うタンタル酸化膜50eによって、補助容量9の容量用絶縁膜91が構成されている。すなわち、本形態では、容量用下電極201、この容量用下電極201の表面に形成された容量用絶縁膜91、およびこの容量用絶縁膜91を介して容量用下電極201に対向する容量用上電極301によって第1の補助容量9aが形成され、容量用下電極202、この容量用下電極202の表面に形成された容量用絶縁膜91、およびこの容量用絶縁膜91を介して容量用下電極202に対向する容量用上電極302によって第2の補助容量9bが構成され、これらの補助容量9a、9bが補助容量9として機能する。
【0064】
本形態において、画素スイッチング素子5は、以下に説明するように、基本的には、実施の形態1で用いた画素スイッチング素子と同様な構成を備えている。但し、本形態では、実施の形態1とは違って、タンタル膜の陽極酸化に用いた給電線をそのままデータ線2として用いた構成になっている。
【0065】
本形態において、画素スイッチング素子5は、実施の形態1と同様、互いに逆極性で並列接続された第1の非線形素子5a(TFD)と第2の非線形素子5b(TFD)とから構成されている。すなわち、本形態では、まず、走査線3と交差する方向に、短冊状の第1の下電極51と短冊状の第2の下電極52とが並列に形成されている。また、第1の下電極51の表面には、補助容量9を構成するタンタル酸化膜50eよりも薄いタンタル酸化膜50d(陽極酸化膜)からなる第1の素子用絶縁膜57が形成され、第2の下電極52の表面にも、補助容量9を構成するタンタル酸化膜50eよりも薄いタンタル酸化膜50d(陽極酸化膜)からなる第2の素子用絶縁膜58(図13を参照して後述する)が形成されている。ここで、タンタル酸化膜50dの膜厚は、例えば20〜40nmである。走査線3は、第1の下電極51および第2の下電極52の一方側端部に対して上層側で重なるように延びたクロム膜などから形成され、第1の上電極53を構成している。また、素子基板20には、データ線2と並行するように短冊状のクロム膜などからなる第2の上電極54が形成され、第2の上電極54は、第1の下電極51および第2の下電極52の他方側端部に対して上層側で重なっている。
【0066】
このように本形態では、走査線3(第1の上電極53)、第1の下電極51、第2の上電極54および第2の下電極52は、略井桁状に配置されており、第1の下電極51の一方側端部とデータ線2とが重なる領域に第1の非線形素子5aが形成され、第2の下電極52の他方側端部と信号線とが重なる領域に第2の非線形素子5bが形成されている。
【0067】
本形態でも、第1の下電極51と第2の上電極54は、互いに重なり合う領域が広めの矩形領域として形成されており、第1の下電極51の矩形領域では、図12(a)に示すように、第1の素子用絶縁膜57(タンタル酸化膜50d)および第1の下電極51がスリット状に部分的に除去され、このようなスリット551の形成により露出した第1の下電極51の端面515と第2の上電極54とが直接、接触して第1の接続部55が形成されている。また、第2の下電極52と走査線3は、互いに重なり合う領域が広めの矩形領域として形成されており、第2の下電極52の矩形領域では、図12(b)に示すように、第2の素子用絶縁膜58(タンタル酸化膜50d)および第2の下電極52がスリット状に部分的に除去され、スリット561の形成により露出した第2の下電極52の端面525とデータ線2とが直接、接触して第2の接続部56が形成されている。
【0068】
なお、本形態では、データ線2と走査線3とが厚いタンタル酸化膜50eを介して交差しているが、このような交差部分での寄生容量が問題となる場合には、データ線2と走査線3との層間に層間絶縁膜を形成すればよい。この場合、画素スイッチング素子5を形成する領域については、層間絶縁膜を部分的に除去した開口部とすれば、第1の素子用絶縁膜57のみを介して第1の下電極51と走査線3(第1の上電極53)とを対向させることができ、第2の素子用絶縁膜58を介して第2の下電極52と第2の上電極54とを対向させることができる。また、層間絶縁膜を形成した場合、画素電極46および共通電極205が形成されている領域についても、層間絶縁膜を部分的に除去した開口部とすれば、画素電極46と共通電極205とを層間絶縁膜を介さずに対向させることができる。
【0069】
また、本形態では、共通電極205がタンタル膜から構成され、画素電極46がクロム膜から構成されているが、例えば、タンタル膜とクロム膜とを電気的に接続することにより、共通電極205および画素電極46の双方をタンタル膜とした構成、あるいは共通電極205および画素電極46の双方をクロム膜とした構成を採用してもよい。なお、このようなタンタル膜とクロム膜とを電気的に接続するには、後述する素子基板20の製造工程において、ブリッジ部をエッチング除去する際、タンタル膜およびその表面に形成されたタンタル酸化膜を部分的に除去してタンタル膜の端面を露出させ、この端面とクロム膜とを接続すれば、接続を図るための工程を別途、行う必要がない。
【0070】
(電気光学装置1の製造方法)
図13(a)〜(e)は、本形態の電気光学装置の製造工程のうち、素子基板20の製造工程を示す説明図である。なお、図13(a)〜(e)において、左側領域には1つの画素の非線形素子周辺部分の平面図を示し、右側領域には、図13(a)のF2−F2′線に相当する位置での断面図を示してある。
【0071】
まず、図13(a)に示すように、素子基板20の表面全体にタンタル酸化膜などにより下地層200を形成する。次に、素子基板20の全面にタンタル膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタル膜をパターニングし、データ線2、第1の下電極51、第2の下電極52、および共通電極205を備えたタンタルパターン8hを形成する。ここで、第1の下電極51および第2の下電極52は、データ線2に対してブリッジ部8gを介して接続している。
【0072】
次に、データ線2から給電してタンタルパターン8hの表面全体に陽極酸化を行い、図13(b)に示すように、タンタルパターンの表面に薄いタンタル酸化膜50dを形成する。このようなタンタル酸化膜50dのうち、第1の下電極51の表面に形成されたタンタル酸化膜50dが第1の素子用絶縁膜57であり、第2の下電極52の表面に形成されたタンタル酸化膜50dが第2の素子用絶縁膜58である。
【0073】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタルパターン8hおよびその表面に形成されたタンタル酸化膜50dを、図13(c)に示すようにパターニングし、ブリッジ部8gを除去する。その結果、表面に第1の素子用絶縁膜57が形成された第1の下電極51と、表面に第2の素子用絶縁膜58が形成された第2の下電極52とが島状に形成される。その際、第1の下電極51の端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第1の素子用絶縁膜57をスリット状に除去し、このスリット551内で第1の下電極51の端面515を露出させる。また、第2の下電極52の端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第2の素子用絶縁膜58をスリット状に除去し、このスリット561内で第2の下電極52の端面525を露出させる。
【0074】
次に、データ線2から給電して共通電極205の表面全体に陽極酸化を行い、図13(d)に示すように、容量用下電極201、202の表面に厚いタンタル酸化膜50e(容量用絶縁膜91)を形成する。その際、データ線2および共通電極205の表面にも厚いタンタル酸化膜50eが形成されるが、第1の下電極51および第2の下電極52には、厚いタンタル酸化膜50eが形成されない。
【0075】
次に、素子基板20の全面にクロム膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、クロム膜を、図13(e)に示すようにパターニングし、走査線3(第1の上電極53)、第2の上電極54、画素電極46、および容量用上電極301、302を形成する。
【0076】
その結果、走査線3(第1の上電極53)、第1の下電極51、第2の上電極54および第2の下電極52は、略矩形に配置され、第1の下電極51の一方側端部と走査線3とが重なる領域に第1の非線形素子5aが形成され、第2の下電極52の他方側端部と第2の上電極54とが重なる領域に第2の非線形素子5bが形成される。また、第1の下電極51の矩形領域では、第1の下電極51の端面515と第2の上電極54とが直接、接触して第1の接続部55が形成される。同様に、第2の下電極52の矩形領域では、第2の下電極52の端面525と走査線3とが直接、接触して第2の接続部56が形成される。また、容量用上電極301、302が容量用絶縁膜91を介して容量用下電極201、202と重なる領域に形成され、補助容量9(補助容量9a、9b)が形成される。さらに、画素電極46に対して共通電極205が対向するように形成される。それ以降の工程は、基本的には、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0077】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の電気光学装置1においても、素子基板20には、極性を逆向きにして第1の非線形素子5aと第2の非線形素子5bとを並列接続した画素スイッチング素子5が用いられているため、電流−電圧の非線形特性が正負の双方向にわたって対称である。従って、反転駆動方式を採用した場合でも、品位の高い画像を安定して表示できるなど実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0078】
また、本形態では、液晶容量4に並列に補助容量9を形成したため、画素スイッチング素子5に十分な電圧を印加することができる。それ故、画素スイッチング素子5を迅速、かつ確実にオン状態に変化させることができるので、液晶容量4に対して所定の電荷を精度よく蓄積することができ、その結果、表示品位(とりわけコントラスト)の向上を図ることができる。また、液晶容量4に印加される電荷は、補助容量9にも蓄積されるので、液晶11に所定の電圧を印加し続けることができるので、その点でも、表示品位(とりわけコントラスト)の向上を図ることができる。
【0079】
さらに、本形態では、電気光学装置1がIPSモードで構成されているため、素子基板20に液晶容量4および補助容量9の双方を形成できる。このため、素子基板20と対向基板30の間を電気的に接続する必要がないなど、構造の簡素化を図ることができる。また、データ線2および走査線3を形成するプロセスを利用して画素電極46および共通電極205を形成することができる。
【0080】
[その他の実施の形態]
実施の形態1、2では、TNモードやVANモードを採用した電気光学装置1においてデータ線2に画素スイチング素子5が接続され、実施の形態3では、IPSモードを採用した電気光学装置1において走査線3に画素スイッチング素子5が接続された構成であったが、TNモードやVANモードを採用した電気光学装置1において走査線3に画素スイチング素子5が接続され、IPSモードを採用した電気光学装置1においてデータ線2に画素スイッチング素子5が接続された構成を採用した場合に本発明を適用してもよい。
【0081】
また、実施の形態3では、IPSモードを採用した電気光学装置1において液晶容量4に補助容量9を並列に接続したが、TNモードやVANモードを採用した電気光学装置1において補助容量9を形成してもよい。
【0082】
[電子機器への搭載例]
本発明を適用した電気光学装置1は、携帯電話機やモバイル型のパーソナルコンピュータの他、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルなどの電子機器に適用できる他、30インチを越えるような大画面を備えた電子機器を構成するのに用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】図2に示す素子基板の数画素分のレイアウトを示す平面図である。
【図4】本発明を適用した電気光学装置に用いた画素スイッチング素子の斜視図である。
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図3のA1−A1′線、B1−B1′線、C1−C1′線、D1−D1′線で電気光学装置を切断したときの様子を模式的に示す断面図である。
【図6】(a)〜(e)は、図1に示す素子基板の製造工程を示す説明図である。
【図7】図3のA1−A1′線、B1−B1′線、C1−C1′線、D1−D1′線に相当する位置で本発明の実施の形態2に係る電気光学装置を切断したときの様子を模式的に示す断面図である。
【図8】(a)〜(e)は、図7に示す素子基板の製造工程を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】図9に示す素子基板の数画素分のレイアウトを示す平面図である。
【図12】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図11のA2−A2′線、B2−B2′線、C2−C2′線、D2−D2′線で電気光学装置を切断したときの様子を模式的に示す断面図である。
【図13】(a)〜(e)は、図10に示す素子基板の製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0084】
1・・電気光学装置、2・・データ線、3・・走査線、4・・液晶容量、5・・画素スイッチング素子、5a・・第1の非線形素子(TFD)、5b・・第2の非線形素子(TFD)、9・・補助容量、10・・画素、11・・液晶、18・・柱状スペーサ、20・・素子基板、30・・対向基板、31・・対向電極(共通電極)、41、46・・画素電極、51・・第1の下電極、52・・第2の下電極、53・・第1の上電極、54・・第2の上電極、57・・第1の素子用絶縁膜、58・・第2の素子用絶縁膜、55・・第1の接続部、56・・第2の接続部、91・・容量用絶縁膜、201、202・・容量用下電極、205・・共通電極、301、302・・容量用上電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、非線形素子を画素スイッチング素子として用いた電気光学装置、およびこの電気光学装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の電気光学装置では、素子基板の方にデータ線あるいは素子基板に画素スイッチング素子を介して接続する画素電極が形成されている。また、画素スイッチング素子として非線形素子が用いられた電気光学装置では、液晶を反転駆動する場合、画素スイッチング素子の電流−電圧の非線形特性が正負の双方向にわたって対称となるように、極性を逆向きにした2つの非線形素子を直列接続した構造、いわゆるBack−to−Back構造の非線形素子が用いられることが多い。
【0003】
しかしながら、Back−to−Back構造の非線形素子の場合には、2つの非線形素子が直列に接続されている分、駆動電圧を高く設定する必要がある。また、一方の非線形素子に大きな負荷がかかりやすい。さらに、オン電流を確保するという点から、下電極と上電極との間に形成される素子用絶縁膜を薄くする必要がある。このため、Back−to−Back構造の非線形素子は、特性の経時変化が大きく、信頼性が低いという問題点がある。
【0004】
そこで、2つの非線形素子を極性を逆向きにして並列に電気的して、電流−電圧の非線形特性を正負の双方向にわたって対称とする構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−152079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に開示の構成では、信号線から突起を画素電極に向けて突出させる一方、画素電極から信号線に向けて突起を突出させ、この突起と重なり合う位置に非線形抵抗層を形成して非線形素子を配置するため、非線形素子と画素電極との間、および非線形素子と信号線との間に広い隙間を確保する必要がある。このため、非線形素子およびそれに付随してデッドスペースとなる部分の面積が広く、画素開口率(画素全体において表示に直接寄与する部分の面積比)が低いという問題点がある。ここで、画素開口率が低い場合には、表示光量が少ない分、表示が暗くなってしまうため、バックライトからの出射光量を増大させる必要があり、このような対策は消費電力を増大させるため好ましくない。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、極性を逆向きに2つの非線形素子を並列接続させて画素スイッチング素子を構成した場合でも、その占有面積を狭くすることのできる電気光学装置、およびこの電気光学装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、液晶を挟持する素子基板と対向基板とを有し、前記素子基板には、走査線およびデータ線のうちの少なくとも一方の信号線と、該信号線に画素スイッチング素子を介して電気的に接続された画素電極とが形成された電気光学装置において、前記画素スイッチング素子は、互いに逆極性で並列接続された第1の非線形素子と第2の非線形素子とを備え、前記第1の非線形素子は、前記一方の信号線と交差する方向に延びて当該一方の信号線に下層側で部分的に重なる第1の下電極と、該第1の下電極の表面に形成された第1の素子用絶縁膜と、前記一方の信号線からなる第1の上電極とによって構成され、前記第2の非線形素子は、前記第1の下電極と並列に形成されて前記一方の信号線に下層側で部分的に重なる第2の下電極と、該第2の下電極の表面に形成された第2の素子用絶縁膜と、前記一方の信号線と並列に形成されて前記第1の下電極および前記第2の下電極に対して上層側で部分的に重なる第2の上電極とを備え、前記第1の下電極と前記第2の上電極との重なり部分には、当該第1の下電極と当該第2の上電極との第1の接続部が形成され、前記第2の下電極と前記一方の信号線との重なり部分には、当該第2の下電極と当該一方の信号線との第2の接続部が形成され、前記画素電極は前記第2の上電極に接続していることを特徴とする。
【0008】
本願明細書において「並列接続」とは並列に電気的に接続していればよく、「直列接続」とは直列に電気的に接続していればよく、電極同士が直接接続している構成の他、他の配線や電極を介して電気的に接続している構成も含む意味である。また、「並列して形成」とは、電気的に接続しているか否かを問わず、同一方向に延びている様子を意味する。
【0009】
本発明では、画素スイッチング素子を平面的にみたとき、一方の信号線(第1の上電極)、第1の下電極と、第2の上電極および第2の下電極が井桁状や♯形状にレイアウトされ、4つの角部分のうち、対角に位置する2つの角部分では、一方の信号線と第1の下電極とが重なる部分を利用して第1の非線形素子が構成され、第2の下電極と第2の上電極とが重なる部分を利用して第2の非線形素子が構成されている。また、残りの2つの角部分では、第1の下電極と第2の上電極との重なり部分を第1の接続部として利用し、第2の下電極と信号線との重なり部分を第2の接続部として利用している。このような構成によれば、第1の下電極および第2の下電極については、短くしても、一方の信号線(第1の上電極)および第2の上電極と容易にかつ確実に重ねることができるので、狭い領域内に非線形素子および接続部を配置することができる。それ故、極性を逆向きに2つの非線形素子を並列接続して画素スイッチング素子を構成した場合でも、その占有面積が狭いので、高い画素開口率を確保することができる。
【0010】
本発明において、前記第1の下電極と前記第2の下電極とは同一の導電材料により構成され、前記一方の信号線と前記第2の上電極とは同一の導電材料により構成されていることが好ましい。このように構成すると、従来と同一の工程数で、2つの非線形素子を極性を逆向きにして並列に電気的した画素スイッチング素子を構成することができる。
【0011】
本発明において、前記画素電極は、前記第1の下電極と前記第2の上電極との重なり部分で当該第2上電極に電気的に接続し、前記第2の下電極と前記一方の信号線との重なり部分には、前記素子基板と前記対向基板との間の間隔を規定する柱状スペーサが配置されていることが好ましい。このような角部分では比較的広い面積を確保しても、画素スイッチング素子の占有面積が大きく拡がることがないので、高い画素開口率を確保することができる。
【0012】
本発明において、前記第1の接続部は、前記第1の素子用絶縁膜および前記第1の下電極の部分的な除去により露出した当該第1の下電極の端面と、前記第2の上電極との接続により構成され、前記第2の接続部は、前記第2の素子用絶縁膜および前記第2の下電極の部分的な除去により露出した当該第2の下電極の端面と、前記一方の信号線との接続により構成されていることが好ましい。素子基板の製造工程においては、給電線やブリッジ部分を利用して第1の下電極および第2の下電極に給電して陽極酸化を行い、第1の素子用絶縁膜および第2の素子用絶縁膜を形成した後、給電線やブリッジ部分をエッチング除去するため、かかる工程を利用して、第1の下電極の端面た第2の下電極の端面を露出させて第1の接続部や第2の接続部を形成すれば、接続を図るための工程を別途、行う必要がない。
【0013】
本発明において、前記第1の素子用絶縁膜の厚さは、前記第1の下電極の側面より上面で厚く、前記第2の素子用絶縁膜の厚さは、前記第2の下電極の側面より上面で厚いことが好ましい。このように構成すると、第1の非線形素子では第1の下電極の上面に寄生する容量を無視できるほど小さくでき、第2の非線形素子では第2の下電極の上面に寄生する容量を無視できるほど小さくできるので、画素スイッチング素子全体としての寄生容量を小さくできる。
【0014】
本発明は、前記対向基板に、前記画素電極と対向して前記液晶を駆動する共通電極(対向電極)が形成されているTN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Aligned Nematic)モードなどの電気光学装置に適用できる。
【0015】
また、本発明は、前記素子基板に前記走査線および前記データ線のうちの他方の信号線と、前記画素電極と対向して前記液晶を駆動する共通電極とが形成されているIPS(In−Plane Switching)モードやFFS(Fringe Field Switching)モードなど、横電界を利用するタイプの電気光学装置にも適用することができる。
【0016】
本発明において、前記素子基板には、前記非線形素子に直列接続し、かつ、前記画素電極、前記液晶および前記共通電極によって構成される液晶容量に並列接続された補助容量が形成されていることが好ましい。このように構成すると、非線形素子に容量が寄生している場合でも、画素電極に印加される電圧が高くなるので、駆動電圧を低く設定したときでも、所定の電圧を画素電極に印加することができる。
【0017】
本発明に係る電気光学装置は、例えば、携帯電話機やモバイルコンピュータなどといった電子機器に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺が各層や各部材ごとに異なる場合がある。また、各図においては、断面図および平面図に関わらず、非線形素子を構成するタンタル膜などの導電膜について右下がりの斜線を付し、クロム膜などの導電膜については右上がりの斜線を付してある。
【0019】
[実施の形態1]
(電気光学装置の構成例)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置(液晶装置)の電気的構成を示すブロック図である。図2は、図1に示す電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【0020】
図1に示す電気光学装置1はTNモードやVAモードの液晶装置であり、この電気光学装置1では、複数本の走査線3が行(X)方向に延在して形成され、複数本のデータ線2(本発明における一方の信号線)が列(Y)方向に延在して形成されている。走査線3とデータ線2との各交差点に対応する位置には複数の画素10が形成され、これらの画素10はマトリクス状に配置されている。各画素10では、データ線2と走査線3との間に、後述する画素電極、液晶層および対向電極(走査線3)によって構成された液晶容量4と、後述する非線形素子によって構成された画素スイッチング素子5とが直列接続され、図1に示す例では、液晶容量4が走査線3の側に、画素スイッチング素子5がデータ線2の側に接続されている。ここで、各走査線3は走査線駆動回路13によって駆動される一方、各データ線2はデータ線駆動回路12によって駆動される。なお、液晶容量4がデータ線2の側に接続され、画素スイッチング素子5が走査線3の側に接続されることもある。
【0021】
本形態の電気光学装置1は、具体的には図2に示すように、対向配置された一対の基板を有しており、一対の基板のうち、一方の基板は素子基板20であり、他方の基板は対向基板30である。素子基板20の内側表面には、複数本のデータ線2と、データ線2に接続される複数の画素スイッチング素子5と、画素スイッチング素子5と1対1に接続される画素電極41とが形成されている。データ線2は、図2において紙面に対して垂直方向に延在して形成される一方、画素スイッチング素子5および画素電極は、マトリクス状に配列されている。画素電極41などの表面側には、ポリイミドなどからなる配向膜22が形成されている。対向基板30の内側表面には、走査線3として機能する対向電極31(共通電極)が、データ線2と直交する方向に形成され、その表面には、ポリイミドなどからなる配向膜32が形成されている。素子基板20と対向基板30とは、シール材14によって貼り合わされ、その内側に液晶11が挟持されている。なお、本形態の電気光学装置1には、COG(Chip On Glass)技術が適用されており、素子基板20の表面に直接、液晶駆動用ICチップ15が実装されている。
【0022】
本形態では、素子基板20と対向基板30との間に所定の間隔を確保することを目的に、素子基板20には、後述する柱状スペーサが形成され、この柱状スペーサの上端部が対向基板30に当接することにより、素子基板20と対向基板30との間隔が制御されている。
【0023】
なお、電気光学装置1をカラー表示用に構成する場合、対向基板30には、「R」、「G」、「B」のカラーフィルタが形成されるが、本発明とは直接、関係しないので、その図示や説明を省略する。また、対向基板30には、ブラックマトリクスなどと称せられる遮光膜や平坦化膜などが形成される場合もあるが、これらについても説明を省略する。さらに、素子基板20の外側表面や対向基板30の外側表面には、配向膜22、32へのラビング方向などに対応した光軸を有する偏光板や位相差板などの光学部材が配置されるが、これらの光学部材についても図示および説明を省略する。
【0024】
(素子基板20の詳細構成)
図3および図4はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置に用いた素子基板の数画素分のレイアウトを示す平面図、およびこの素子基板上に形成した画素スイッチング素子の斜視図である。図5(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図3のA1−A1′線、B1−B1′線、C1−C1′線、D1−D1′線で電気光学装置1を切断したときの様子を模式的に示す断面図である。
【0025】
図3、図4および図5(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、本形態の電気光学装置1において、素子基板20には、タンタル酸化膜などからなる下地層200が形成され、この下地層200の上層には、データ線2、データ線2に電気的に接続する画素スイッチング素子5、および画素スイッチング素子5を介してデータ線2に接続する画素電極41が形成されている。本形態において、画素スイッチング素子5は、以下に詳述するように、互いに逆極性で並列接続された第1の非線形素子5a(TFD(Thin Film Diode)素子)と第2の非線形素子5b(TFD)とから構成されている。
【0026】
本形態では、画素スイッチング素子5を構成するにあたって、まず、データ線2と交差する方向に、短冊状の第1の下電極51と短冊状の第2の下電極52とが並列に形成されている。ここで、第1の下電極51および第2の下電極52は、膜厚が例えば100〜150nm程度のタンタル膜などから構成されている。第1の下電極51および第2の下電極52としては、タンタル単体膜、あるいはタンタルを主成分とする合金、例えば、タングステン−タンタル合金を用いることができる。また、第1の下電極51および第2の下電極52は、ニオブ単体膜、あるいはニオブとタンタルとの合金などによって構成されることもある。
【0027】
第1の下電極51の表面には、厚さが20〜40nmのタンタル酸化膜50a(陽極酸化膜)からなる第1の素子用絶縁膜57が形成され、第2の下電極52の表面には、同じく、厚さが20〜40nmのタンタル酸化膜50a(陽極酸化膜)からなる第2の素子用絶縁膜58が形成されている。
【0028】
データ線2は、第1の下電極51および第2の下電極52の一方側端部に対して上層側で重なるように延びたクロム膜などから形成され、第1の上電極53を構成している。また、素子基板20には、データ線2と並行するように短冊状のクロム膜などからなる第2の上電極54が形成され、第2の上電極54は、第1の下電極51および第2の下電極52の他方側端部に対して上層側で重なっている。データ線2および第2の上電極54の膜厚は、例えば100〜500nm程度である。
【0029】
このように本形態では、データ線2(第1の上電極53)、第1の下電極51、第2の上電極54および第2の下電極52は、略井桁状に配置されており、第1の下電極51の一方側端部とデータ線2とが重なる領域には、第1の下電極51、第1の素子用絶縁膜57およびデータ線2(第1の上電極53)によって第1の非線形素子5aが形成され、第2の下電極52の他方側端部と信号線とが重なる領域には、第2の下電極52、第2の素子用絶縁膜58および第2の上電極54によって第2の非線形素子5bが形成されている。
【0030】
ここで、第1の下電極51と第2の上電極54は、互いに重なり合う領域が広めの矩形領域として形成されており、第1の下電極51と第2の上電極54との重なり部分には、第1の下電極51と第2の上電極54とが接続する第1の接続部55が形成されている。すなわち、第1の下電極51の矩形領域では、図5(a)、(d)に示すように、第1の素子用絶縁膜57(タンタル酸化膜50a)および第1の下電極51がスリット状に部分的に除去され、このようなスリット551の形成により露出した第1の下電極51の端面515と第2の上電極54とが直接、接触して第1の接続部55が形成されている。
【0031】
また、第2の下電極52とデータ線2は、互いに重なり合う領域が広めの矩形領域として形成されており、第2の下電極52とデータ線2との重なり部分には、第2の下電極52とデータ線2とが接続する第2の接続部56が形成されている。すなわち、第2の下電極52の矩形領域では、図5(b)、(c)に示すように、第2の素子用絶縁膜58(タンタル酸化膜50a)および第2の下電極52がスリット状に部分的に除去され、このようなスリット561の形成により露出した第2の下電極52の端面525とデータ線2とが直接、接触して第2の接続部56が形成されている。
【0032】
このように構成した画素スイッチング素子5の上層側には層間絶縁膜25が形成され、この層間絶縁膜25の上層側にはITOなどからなる画素電極41が形成されている。ここで、層間絶縁膜25には、第1の下電極51と第2の上電極54と重なる部分にコンタクトホール26が形成され、このコンタクトホール26によって、画素電極41と第2の上電極54とが電気的に接続している。
【0033】
また、本形態では、素子基板20には、素子基板20と対向基板30との間隔を制御するための柱状スペーサ18が形成され、この柱状スペーサ18は、第2の下電極52の一方側端部とデータ線2との重なり領域に形成されている。なお、画素電極41や柱状スペーサ18の上層側には配向膜22が形成されている。
【0034】
(電気光学装置の製造方法)
図6(a)〜(e)は、本形態の電気光学装置1の製造工程のうち、素子基板20の製造工程を示す説明図である。なお、図6(a)〜(e)において、左側領域には画素1つ分の平面図を示し、右側領域には、図3のD1−D1′線に相当する位置での断面図を示してある。なお、以下に説明する工程は、通常、素子基板を多数取りできる大型の元基板の状態で行われるが、以下の説明では、単品サイズの素子基板および大型の元基板を区別せずに素子基板20と称して説明する。
【0035】
まず、図6(a)に示すように、素子基板20の全面にタンタル酸化膜などにより下地層200を形成する。次に、素子基板20の全面にタンタル膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタル膜をパターニングし、給電線8b、第1の下電極51および第2の下電極52を備えたタンタルパターン8aを形成する。
【0036】
次に、給電線8bから給電してタンタルパターン8aに陽極酸化を行い、図6(b)に示すように、タンタルパターン8aの表面全体に膜厚が20〜40nmのタンタル酸化膜50aを形成する。このようなタンタル酸化膜50aのうち、第1の下電極51の表面に形成されたタンタル酸化膜50aが第1の素子用絶縁膜57であり、第2の下電極52の表面に形成されたタンタル酸化膜50aが第2の素子用絶縁膜58である。なお、陽極酸化を行った後、素子基板20を加熱炉内で加熱し、タンタル酸化膜50a(第1の素子用絶縁膜57および第2の素子用絶縁膜58)内の転位や空孔などの欠陥密度を低減してもよい。
【0037】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタルパターン8aおよびその表面に形成されたタンタル酸化膜50aを、図6(c)に示すようにパターニングし、給電線8bをエッチング除去する。その結果、第1の下電極51と第2の下電極52が島状に形成されるが、第1の下電極51の表面には第1の素子用絶縁膜57が残っており、第2の下電極52の表面には第2の素子用絶縁膜58が残っている。その際、第1の下電極51の他方側端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第1の素子用絶縁膜57にスリット551を形成し、スリット551内で第1の下電極51の端面を515露出させる。また、第2の下電極52の一方側端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第2の素子用絶縁膜58にスリット561を形成し、スリット561内で第2の下電極52の端面525を露出させる。
【0038】
次に、素子基板20の全面にクロム膜などの導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、クロム膜などの導電膜を、図6(d)に示すようにパターニングし、データ線2(第1の上電極53)および第2の上電極54を形成する。その結果、信号線2(第1の上電極53)、第1の下電極51、第2の上電極54および第2の下電極52は、略井桁状に配置され、第1の下電極51の一方側端部とデータ線2(第1の上電極53)とが重なる領域に第1の非線形素子5aが形成され、第2の下電極52の他方側端部と第2の上電極54とが重なる領域に第2の非線形素子5bが形成される。また、第1の下電極51の矩形領域では、第1の下電極51の端面515と第2の上電極54とが直接、接触して第1の接続部55が形成され、第2の下電極52の矩形領域では、第2の下電極52の端面525とデータ線2とが直接、接触して第2の接続部56が形成される。
【0039】
このようにして、第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bを備えた画素スイッチング素子5を形成した後、その表面側に、図6(e)に示すように、コンタクトホール26を備えた層間絶縁膜25を形成する。ここで、層間絶縁膜25がシリコン酸化膜である場合、素子基板20の全面にシリコン酸化膜などの絶縁膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、絶縁膜を図6(e)に示すようにパターニングし、コンタクトホール26を形成する。これに対して、層間絶縁膜25が感光性樹脂層である場合、素子基板20の全面に感光性樹脂を塗布した後、選択的に露光し、現像し、図6(e)に示すように、コンタクトホール26を備えた層間絶縁膜25を形成する。
【0040】
次に、層間絶縁膜25の表面にITO膜などの導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、ITOなどの導電膜を図3および図5に示すようにパターニングし、画素電極41を形成する。このようにして形成した画素電極41は、コンタクトホール26を介して画素スイッチング素子5の第2の上電極54に電気的に接続する。
【0041】
次に、素子基板20の全面に感光性樹脂を厚く塗布した後、選択的に露光し、現像し、図3および図5に示すように、第2の下電極52の一方側端部とデータ線2とが重なる領域に第2柱状スペーサ18を形成する。
【0042】
しかる後、素子基板20の全面にポリイミド樹脂などを塗布、焼成した後、ラビング処理を行い、配向膜22を形成する。このようにして素子基板20を形成する。
【0043】
このようにして製造した素子基板20は、対向電極31および配向膜32が形成された対向基板30とシール材14によって貼り合わせた後、シール材14の途切れ部分から液晶11を注入し、しかる後に、シール材14の途切れ部分を封止材で封止する。これにより、電気光学装置1が完成する。
【0044】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の電気光学装置1において、素子基板20には、第1の非線形素子5aと第2の非線形素子5bを極性を逆向きにして並列に電気的した画素スイッチング素子5が用いられている。このため、画素スイッチング素子5では、電流−電圧の非線形特性が正負の双方向にわたって対称であるため、反転駆動方式を採用した場合でも、品位の高い画像を安定して表示できる。しかも、本形態の画素スイッチング素子5では、Back−to−Back構造の非線形素子と違って、選択時には、第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bのうちの一方がオン状態になればよいので、駆動電圧を低く設定することができ、かつ、第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bのうちの一方に大きな負荷がかかることもない。さらに、十分なレベルのオン電流を確保する場合でも、第1の素子用絶縁膜57および第2の素子用絶縁膜58が厚くてよいので、本形態の画素スイッチング素子5は、Back−to−Back構造の非線形素子と比較して、特性の経時変化が小さく、信頼性が高い。
【0045】
また、本形態では、画素スイッチング素子5を平面的にみたとき、データ線2(第1の上電極53)、第1の下電極51と、第2の上電極54および第2の下電極52が井桁状にレイアウトされ、4つの角部分のうち、対角に位置する2つの角部分を利用して第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bが構成されている。また、残りの2つの角部分を利用して、第1の下電極51と第2の上電極54とを接続する第1の接続部55と、第2の下電極52とデータ線2とを接続させる第2の接続部56とが形成されている。このため、第1の下電極51および第2の下電極52を短くしても、第1の下電極51および第2の下電極52と、信号線2(第1の上電極53)および第2の上電極54と容易にかつ確実に重ねることができ、狭い領域内に2つの非線形素子5a、5b、および2つの接続部55、56を配置することができる。それ故、極性を逆向きにして第1の非線形素子5aと第2の非線形素子5bとを並列接続して画素スイッチング素子5を構成した場合でも、その占有面積を狭くすることができ、高い画素開口率を確保することができる。
【0046】
[実施の形態2]
図7(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置1を図3のA1−A1′線、B1−B1′線、C1−C1′線、D1−D1′線に相当する位置で切断したときの構造を模式的に示す断面図である。図8(a)〜(e)は、本形態の電気光学装置の製造工程のうち、素子基板の製造工程を示す説明図である。なお、図8(a)〜(e)において、左側領域には画素1つ分の平面図を示し、右側領域には、図3のD1−D1′線に相当する位置での断面図を示してある。なお、本形態の電気光学装置の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0047】
本形態の電気光学装置1は、図7(a)〜(d)に示すように、画素スイッチング素子5は、実施の形態1と同様、互いに逆極性で並列接続された第1の非線形素子5a(TFD)と第2の非線形素子5b(TFD)とから構成されている。第1の非線形素子5aは、データ線2と交差する方向に延びてデータ線2に下層側で部分的に重なるタンタル膜からなる第1の下電極51と、第1の下電極51の表面に形成されたタンタル酸化膜(陽極酸化膜)からなる第1の素子用絶縁膜57と、データ線2からなる第1の上電極53とによって構成されている。また、第2の非線形素子5bは、第1の下電極51と並列に形成されてデータ線2に下層側で部分的に重なるタンタル膜からなる第2の下電極52と、第2の下電極52の表面に形成されたタンタル酸化膜(陽極酸化膜)からなる第2の素子用絶縁膜58と、データ線2と並列に形成されて第1の下電極51および第2の下電極52に対して上層側でG部分的に重なるクロム膜からなる第2の上電極54とを備えている。
【0048】
このように構成した画素スイッチング素子5において、第1の素子用絶縁膜57は、第1の下電極51の側面に形成されているタンタル酸化膜50cより上面に形成されているタンタル酸化膜50bの方が厚い。また、第2の素子用絶縁膜58でも、第2の下電極52の側面に形成されているタンタル酸化膜50cより上面に形成されているタンタル酸化膜50bの方が厚い。例えば、第1の下電極51および第2の下電極52の上面に形成されているタンタル酸化膜50bの膜厚は50nm〜100nmであるが、側面に形成されているタンタル酸化膜50cの膜厚は20〜40nmである。
【0049】
このように構成した画素スイッチング素子5では、第1の非線形素子5aおよび第2の非線形素子5bのいずれにおいても、第1の下電極51の上面とデータ線2との間に寄生する容量、および第2の下電極52の上面と第2の上電極54との間に寄生する容量が無視できるほど小さいので、画素スイッチング素子5全体としての寄生容量が小さい。
【0050】
このような構成の画素スイッチング素子5を備えた電気光学装置1を製造するには、まず、図8(a)に示すように、素子基板20の表面全体にタンタル酸化膜などからなる下地層200を形成した後、下地層200の表面全体にタンタル膜8cを形成する。
【0051】
次に、タンタル膜8cに陽極酸化を行い、膜厚が50nm〜100nmの厚いタンタル酸化膜50bを形成する。
【0052】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタル酸化膜50bおよびタンタル膜8cをパターニングし、図8(c)に示すように、給電線8b、第1の下電極51および第2の下電極52を備えたタンタルパターン8aを形成する。
【0053】
次に、給電線8bから給電してタンタルパターン8aに陽極酸化を行い、図8(d)に示すように、タンタルパターン8aの側面に、膜厚が20〜40nmの薄いタンタル酸化膜50cを形成する。このようにして第1の下電極51および第2の下電極52の表面に第1の素子用絶縁膜57および第2の素子用絶縁膜58を形成するが、第1の素子用絶縁膜57および第2の素子用絶縁膜58のいずれにおいても、その上面に形成されたタンタル酸化膜50bは、側面に形成されたタンタル酸化膜50cより厚い。
【0054】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタルパターン8aおよびその表面に形成されたタンタル酸化膜50a、50bを、図8(e)に示すようにパターニングし、給電線8bを除去する。その結果、第1の下電極51および第2の下電極52が島状に形成され、その表面には第1の素子用絶縁膜57および第2の素子用絶縁膜58が残っている。その際、第1の下電極51の他方側端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第1の素子用絶縁膜57をスリット551を形成し、スリット551内で第1の下電極51の端面515を露出させる。また、第2の下電極52の一方側端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第2の素子用絶縁膜58にスリット561を形成し、スリット561内で第2の下電極52の端面525を露出させる。
【0055】
それ以降の工程は、実施の形態1に関して、図6(d)〜図6(e)などを参照して説明した工程と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
[実施の形態3]
(全体構成)
図9は、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置(液晶装置)の電気的構成を示すブロック図である。図10は、図9に示す電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【0057】
図9に示す電気光学装置1はIPSモードの液晶装置であり、この電気光学装置1では、X方向に延びた走査線3(本発明における一方の信号線)と、Y方向に延びたデータ線2との交差点に対応して複数の画素10がマトリクス状に構成されている。データ線2はデータ線駆動回路12に接続され、走査線3は走査線駆動回路13に接続されている。本形態では、走査線3に画素スイッチング素子5が接続され、この画素スイッチング素子5を介して画素電極46が接続されている。データ線2には共通電極205が接続しており、共通電極205と画素電極46との間には液晶容量4が形成され、液晶容量4と画素スイッチング素子5とは直列接続されている。また、本形態では、データ線2と画素電極46との間には補助容量9が形成されており、補助容量9は、画素スイッチング素子5に直列接続され、液晶容量4には並列接続されている。
【0058】
このような構成の電気光学装置1は、例えば、図10に示すように構成され、対向配置された一対の基板を有している。一方の基板は、画素スイッチング素子5や画素電極46が形成された素子基板20であり、他方の基板は対向基板30である。素子基板20と対向基板30とはシール材14によって貼り合わされ、その内側に液晶11が封入されている。本形態の電気光学装置1でも、実施の形態1と同様、素子基板20の表面に直接、液晶駆動用ICチップ15が実装されている。
【0059】
本形態において、液晶11はIPSモードで駆動されるため、素子基板20の内側表面には、複数本のデータ線2、データ線2に接続される複数の画素スイッチング素子5、および画素スイッチング素子5と1対1に接続される画素電極46に加えて、詳しくは後述するように、図9に示した走査線3、共通電極205および補助容量9も形成されている。なお、画素電極46などの表面には、ポリイミドなどからなる配向膜22が形成されている。対向基板30の内側表面には、ポリイミドなどからなる配向膜32が形成され、実施の形態1と違って、対向基板30の内側表面には対向電極が形成されていない。なお、本形態でも、電気光学装置1をカラー表示用に構成する場合、対向基板30には、「R」、「G」、「B」のカラーフィルタが形成されるが、本発明とは直接、関係しないので、その図示や説明を省略する。また、対向基板30には、ブラックマトリクスなどと称せられる遮光膜や、平坦化膜が形成される場合もあるが、これらについても説明を省略する。また、素子基板20の外側表面や対向基板30の外側表面には、偏光板や位相差板などの光学部材が配置されるが、これらの光学部材についても図示および説明を省略する。
【0060】
(素子基板20の詳細構成)
図11は、本発明の実施の形態3に係る電気光学装置に用いた素子基板において、数画素分のレイアウトを示す平面図である。図12(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図11のA2−A2′線、B2−B2′線、C2−C2′線、D2−D2′線で電気光学装置を切断したときの構造を模式的に示す断面図である。
【0061】
図11および図12(a)、(b)、(c)、(d)において、本形態の電気光学装置1では、Y方向に延びたデータ線2は、タンタルなどからなる金属配線であり、X方向に延びた走査線3は、クロムなどからなる金属配線である。
【0062】
本形態でも、データ線2と走査線3との交差点の近傍には、画素スイッチング素子5が形成され、この画素スイッチング素子5には、Y方向に延びた画素配線部305、X方向に延びた容量用上電極301、Y方向に延びた櫛歯状の画素電極46、およびX方向に延びた容量用上電極302がこの順に接続されている。これらの電極などは、走査線3と同時形成されたクロム膜によって形成されている。また、画素10内には、データ線2からのX方向への突出部分によって2本の容量用下電極201、202が構成され、容量用下電極201、202同士を接続するように櫛歯状の共通電極205がY方向に延びている。これらの電極などは、データ線2と同時形成されたタンタル膜によって形成されている。ここで、共通電極205と画素電極46とは、X方向において交互に配置され、その間で液晶11を駆動する。
【0063】
共通電極205、容量用下電極201、202およびデータ線2の表面には、膜厚が100〜250nmの厚いタンタル酸化膜50eが形成され、このタンタル酸化膜50eのうち、容量用下電極201、202の表面を覆うタンタル酸化膜50eによって、補助容量9の容量用絶縁膜91が構成されている。すなわち、本形態では、容量用下電極201、この容量用下電極201の表面に形成された容量用絶縁膜91、およびこの容量用絶縁膜91を介して容量用下電極201に対向する容量用上電極301によって第1の補助容量9aが形成され、容量用下電極202、この容量用下電極202の表面に形成された容量用絶縁膜91、およびこの容量用絶縁膜91を介して容量用下電極202に対向する容量用上電極302によって第2の補助容量9bが構成され、これらの補助容量9a、9bが補助容量9として機能する。
【0064】
本形態において、画素スイッチング素子5は、以下に説明するように、基本的には、実施の形態1で用いた画素スイッチング素子と同様な構成を備えている。但し、本形態では、実施の形態1とは違って、タンタル膜の陽極酸化に用いた給電線をそのままデータ線2として用いた構成になっている。
【0065】
本形態において、画素スイッチング素子5は、実施の形態1と同様、互いに逆極性で並列接続された第1の非線形素子5a(TFD)と第2の非線形素子5b(TFD)とから構成されている。すなわち、本形態では、まず、走査線3と交差する方向に、短冊状の第1の下電極51と短冊状の第2の下電極52とが並列に形成されている。また、第1の下電極51の表面には、補助容量9を構成するタンタル酸化膜50eよりも薄いタンタル酸化膜50d(陽極酸化膜)からなる第1の素子用絶縁膜57が形成され、第2の下電極52の表面にも、補助容量9を構成するタンタル酸化膜50eよりも薄いタンタル酸化膜50d(陽極酸化膜)からなる第2の素子用絶縁膜58(図13を参照して後述する)が形成されている。ここで、タンタル酸化膜50dの膜厚は、例えば20〜40nmである。走査線3は、第1の下電極51および第2の下電極52の一方側端部に対して上層側で重なるように延びたクロム膜などから形成され、第1の上電極53を構成している。また、素子基板20には、データ線2と並行するように短冊状のクロム膜などからなる第2の上電極54が形成され、第2の上電極54は、第1の下電極51および第2の下電極52の他方側端部に対して上層側で重なっている。
【0066】
このように本形態では、走査線3(第1の上電極53)、第1の下電極51、第2の上電極54および第2の下電極52は、略井桁状に配置されており、第1の下電極51の一方側端部とデータ線2とが重なる領域に第1の非線形素子5aが形成され、第2の下電極52の他方側端部と信号線とが重なる領域に第2の非線形素子5bが形成されている。
【0067】
本形態でも、第1の下電極51と第2の上電極54は、互いに重なり合う領域が広めの矩形領域として形成されており、第1の下電極51の矩形領域では、図12(a)に示すように、第1の素子用絶縁膜57(タンタル酸化膜50d)および第1の下電極51がスリット状に部分的に除去され、このようなスリット551の形成により露出した第1の下電極51の端面515と第2の上電極54とが直接、接触して第1の接続部55が形成されている。また、第2の下電極52と走査線3は、互いに重なり合う領域が広めの矩形領域として形成されており、第2の下電極52の矩形領域では、図12(b)に示すように、第2の素子用絶縁膜58(タンタル酸化膜50d)および第2の下電極52がスリット状に部分的に除去され、スリット561の形成により露出した第2の下電極52の端面525とデータ線2とが直接、接触して第2の接続部56が形成されている。
【0068】
なお、本形態では、データ線2と走査線3とが厚いタンタル酸化膜50eを介して交差しているが、このような交差部分での寄生容量が問題となる場合には、データ線2と走査線3との層間に層間絶縁膜を形成すればよい。この場合、画素スイッチング素子5を形成する領域については、層間絶縁膜を部分的に除去した開口部とすれば、第1の素子用絶縁膜57のみを介して第1の下電極51と走査線3(第1の上電極53)とを対向させることができ、第2の素子用絶縁膜58を介して第2の下電極52と第2の上電極54とを対向させることができる。また、層間絶縁膜を形成した場合、画素電極46および共通電極205が形成されている領域についても、層間絶縁膜を部分的に除去した開口部とすれば、画素電極46と共通電極205とを層間絶縁膜を介さずに対向させることができる。
【0069】
また、本形態では、共通電極205がタンタル膜から構成され、画素電極46がクロム膜から構成されているが、例えば、タンタル膜とクロム膜とを電気的に接続することにより、共通電極205および画素電極46の双方をタンタル膜とした構成、あるいは共通電極205および画素電極46の双方をクロム膜とした構成を採用してもよい。なお、このようなタンタル膜とクロム膜とを電気的に接続するには、後述する素子基板20の製造工程において、ブリッジ部をエッチング除去する際、タンタル膜およびその表面に形成されたタンタル酸化膜を部分的に除去してタンタル膜の端面を露出させ、この端面とクロム膜とを接続すれば、接続を図るための工程を別途、行う必要がない。
【0070】
(電気光学装置1の製造方法)
図13(a)〜(e)は、本形態の電気光学装置の製造工程のうち、素子基板20の製造工程を示す説明図である。なお、図13(a)〜(e)において、左側領域には1つの画素の非線形素子周辺部分の平面図を示し、右側領域には、図13(a)のF2−F2′線に相当する位置での断面図を示してある。
【0071】
まず、図13(a)に示すように、素子基板20の表面全体にタンタル酸化膜などにより下地層200を形成する。次に、素子基板20の全面にタンタル膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタル膜をパターニングし、データ線2、第1の下電極51、第2の下電極52、および共通電極205を備えたタンタルパターン8hを形成する。ここで、第1の下電極51および第2の下電極52は、データ線2に対してブリッジ部8gを介して接続している。
【0072】
次に、データ線2から給電してタンタルパターン8hの表面全体に陽極酸化を行い、図13(b)に示すように、タンタルパターンの表面に薄いタンタル酸化膜50dを形成する。このようなタンタル酸化膜50dのうち、第1の下電極51の表面に形成されたタンタル酸化膜50dが第1の素子用絶縁膜57であり、第2の下電極52の表面に形成されたタンタル酸化膜50dが第2の素子用絶縁膜58である。
【0073】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、タンタルパターン8hおよびその表面に形成されたタンタル酸化膜50dを、図13(c)に示すようにパターニングし、ブリッジ部8gを除去する。その結果、表面に第1の素子用絶縁膜57が形成された第1の下電極51と、表面に第2の素子用絶縁膜58が形成された第2の下電極52とが島状に形成される。その際、第1の下電極51の端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第1の素子用絶縁膜57をスリット状に除去し、このスリット551内で第1の下電極51の端面515を露出させる。また、第2の下電極52の端部に形成されている矩形領域、およびその表面に形成されている第2の素子用絶縁膜58をスリット状に除去し、このスリット561内で第2の下電極52の端面525を露出させる。
【0074】
次に、データ線2から給電して共通電極205の表面全体に陽極酸化を行い、図13(d)に示すように、容量用下電極201、202の表面に厚いタンタル酸化膜50e(容量用絶縁膜91)を形成する。その際、データ線2および共通電極205の表面にも厚いタンタル酸化膜50eが形成されるが、第1の下電極51および第2の下電極52には、厚いタンタル酸化膜50eが形成されない。
【0075】
次に、素子基板20の全面にクロム膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、クロム膜を、図13(e)に示すようにパターニングし、走査線3(第1の上電極53)、第2の上電極54、画素電極46、および容量用上電極301、302を形成する。
【0076】
その結果、走査線3(第1の上電極53)、第1の下電極51、第2の上電極54および第2の下電極52は、略矩形に配置され、第1の下電極51の一方側端部と走査線3とが重なる領域に第1の非線形素子5aが形成され、第2の下電極52の他方側端部と第2の上電極54とが重なる領域に第2の非線形素子5bが形成される。また、第1の下電極51の矩形領域では、第1の下電極51の端面515と第2の上電極54とが直接、接触して第1の接続部55が形成される。同様に、第2の下電極52の矩形領域では、第2の下電極52の端面525と走査線3とが直接、接触して第2の接続部56が形成される。また、容量用上電極301、302が容量用絶縁膜91を介して容量用下電極201、202と重なる領域に形成され、補助容量9(補助容量9a、9b)が形成される。さらに、画素電極46に対して共通電極205が対向するように形成される。それ以降の工程は、基本的には、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0077】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の電気光学装置1においても、素子基板20には、極性を逆向きにして第1の非線形素子5aと第2の非線形素子5bとを並列接続した画素スイッチング素子5が用いられているため、電流−電圧の非線形特性が正負の双方向にわたって対称である。従って、反転駆動方式を採用した場合でも、品位の高い画像を安定して表示できるなど実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0078】
また、本形態では、液晶容量4に並列に補助容量9を形成したため、画素スイッチング素子5に十分な電圧を印加することができる。それ故、画素スイッチング素子5を迅速、かつ確実にオン状態に変化させることができるので、液晶容量4に対して所定の電荷を精度よく蓄積することができ、その結果、表示品位(とりわけコントラスト)の向上を図ることができる。また、液晶容量4に印加される電荷は、補助容量9にも蓄積されるので、液晶11に所定の電圧を印加し続けることができるので、その点でも、表示品位(とりわけコントラスト)の向上を図ることができる。
【0079】
さらに、本形態では、電気光学装置1がIPSモードで構成されているため、素子基板20に液晶容量4および補助容量9の双方を形成できる。このため、素子基板20と対向基板30の間を電気的に接続する必要がないなど、構造の簡素化を図ることができる。また、データ線2および走査線3を形成するプロセスを利用して画素電極46および共通電極205を形成することができる。
【0080】
[その他の実施の形態]
実施の形態1、2では、TNモードやVANモードを採用した電気光学装置1においてデータ線2に画素スイチング素子5が接続され、実施の形態3では、IPSモードを採用した電気光学装置1において走査線3に画素スイッチング素子5が接続された構成であったが、TNモードやVANモードを採用した電気光学装置1において走査線3に画素スイチング素子5が接続され、IPSモードを採用した電気光学装置1においてデータ線2に画素スイッチング素子5が接続された構成を採用した場合に本発明を適用してもよい。
【0081】
また、実施の形態3では、IPSモードを採用した電気光学装置1において液晶容量4に補助容量9を並列に接続したが、TNモードやVANモードを採用した電気光学装置1において補助容量9を形成してもよい。
【0082】
[電子機器への搭載例]
本発明を適用した電気光学装置1は、携帯電話機やモバイル型のパーソナルコンピュータの他、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルなどの電子機器に適用できる他、30インチを越えるような大画面を備えた電子機器を構成するのに用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】図2に示す素子基板の数画素分のレイアウトを示す平面図である。
【図4】本発明を適用した電気光学装置に用いた画素スイッチング素子の斜視図である。
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図3のA1−A1′線、B1−B1′線、C1−C1′線、D1−D1′線で電気光学装置を切断したときの様子を模式的に示す断面図である。
【図6】(a)〜(e)は、図1に示す素子基板の製造工程を示す説明図である。
【図7】図3のA1−A1′線、B1−B1′線、C1−C1′線、D1−D1′線に相当する位置で本発明の実施の形態2に係る電気光学装置を切断したときの様子を模式的に示す断面図である。
【図8】(a)〜(e)は、図7に示す素子基板の製造工程を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】図9に示す素子基板の数画素分のレイアウトを示す平面図である。
【図12】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、図11のA2−A2′線、B2−B2′線、C2−C2′線、D2−D2′線で電気光学装置を切断したときの様子を模式的に示す断面図である。
【図13】(a)〜(e)は、図10に示す素子基板の製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0084】
1・・電気光学装置、2・・データ線、3・・走査線、4・・液晶容量、5・・画素スイッチング素子、5a・・第1の非線形素子(TFD)、5b・・第2の非線形素子(TFD)、9・・補助容量、10・・画素、11・・液晶、18・・柱状スペーサ、20・・素子基板、30・・対向基板、31・・対向電極(共通電極)、41、46・・画素電極、51・・第1の下電極、52・・第2の下電極、53・・第1の上電極、54・・第2の上電極、57・・第1の素子用絶縁膜、58・・第2の素子用絶縁膜、55・・第1の接続部、56・・第2の接続部、91・・容量用絶縁膜、201、202・・容量用下電極、205・・共通電極、301、302・・容量用上電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶を挟持する素子基板と対向基板とを有し、前記素子基板には、走査線およびデータ線のうちの少なくとも一方の信号線と、該信号線に画素スイッチング素子を介して電気的に接続された画素電極とが形成された電気光学装置において、
前記画素スイッチング素子は、互いに逆極性で並列接続された第1の非線形素子と第2の非線形素子とを備え、
前記第1の非線形素子は、前記一方の信号線と交差する方向に延びて当該一方の信号線に下層側で部分的に重なる第1の下電極と、該第1の下電極の表面に形成された第1の素子用絶縁膜と、前記一方の信号線からなる第1の上電極とによって構成され、
前記第2の非線形素子は、前記第1の下電極と並列に形成されて前記一方の信号線に下層側で部分的に重なる第2の下電極と、該第2の下電極の表面に形成された第2の素子用絶縁膜と、前記一方の信号線と並列に形成されて前記第1の下電極および前記第2の下電極に対して上層側で部分的に重なる第2の上電極とを備え、
前記第1の下電極と前記第2の上電極との重なり部分には、当該第1の下電極と当該第2の上電極との第1の接続部が形成され、
前記第2の下電極と前記一方の信号線との重なり部分には、当該第2の下電極と当該一方の信号線との第2の接続部が形成され、
前記画素電極は前記第2の上電極に接続していることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1の下電極と前記第2の下電極とは同一の導電材料により構成され、
前記一方の信号線と前記第2の上電極とは同一の導電材料により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記画素電極は、前記第1の下電極と前記第2の上電極との重なり部分で当該第2上電極に電気的に接続し、
前記第2の下電極と前記一方の信号線との重なり部分には、前記素子基板と前記対向基板との間の間隔を規定する柱状スペーサが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1の接続部は、前記第1の素子用絶縁膜および前記第1の下電極の部分的な除去により露出した当該第1の下電極の端面と、前記第2の上電極との接続により構成され、
前記第2の接続部は、前記第2の素子用絶縁膜および前記第2の下電極の部分的な除去により露出した当該第2の下電極の端面と、前記一方の信号線との接続により構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第1の素子用絶縁膜の厚さは、前記第1の下電極の側面より上面で厚く、
前記第2の素子用絶縁膜の厚さは、前記第2の下電極の側面より上面で厚いことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記対向基板には、前記画素電極と対向して前記液晶を駆動する共通電極が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記素子基板には、前記走査線および前記データ線のうちの他方の信号線と、前記画素電極と対向して前記液晶を駆動する共通電極とが形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記素子基板には、前記非線形素子に直列接続され、かつ、前記画素電極、前記液晶および前記共通電極によって構成される液晶容量に並列接続された補助容量が形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に規定する電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
液晶を挟持する素子基板と対向基板とを有し、前記素子基板には、走査線およびデータ線のうちの少なくとも一方の信号線と、該信号線に画素スイッチング素子を介して電気的に接続された画素電極とが形成された電気光学装置において、
前記画素スイッチング素子は、互いに逆極性で並列接続された第1の非線形素子と第2の非線形素子とを備え、
前記第1の非線形素子は、前記一方の信号線と交差する方向に延びて当該一方の信号線に下層側で部分的に重なる第1の下電極と、該第1の下電極の表面に形成された第1の素子用絶縁膜と、前記一方の信号線からなる第1の上電極とによって構成され、
前記第2の非線形素子は、前記第1の下電極と並列に形成されて前記一方の信号線に下層側で部分的に重なる第2の下電極と、該第2の下電極の表面に形成された第2の素子用絶縁膜と、前記一方の信号線と並列に形成されて前記第1の下電極および前記第2の下電極に対して上層側で部分的に重なる第2の上電極とを備え、
前記第1の下電極と前記第2の上電極との重なり部分には、当該第1の下電極と当該第2の上電極との第1の接続部が形成され、
前記第2の下電極と前記一方の信号線との重なり部分には、当該第2の下電極と当該一方の信号線との第2の接続部が形成され、
前記画素電極は前記第2の上電極に接続していることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1の下電極と前記第2の下電極とは同一の導電材料により構成され、
前記一方の信号線と前記第2の上電極とは同一の導電材料により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記画素電極は、前記第1の下電極と前記第2の上電極との重なり部分で当該第2上電極に電気的に接続し、
前記第2の下電極と前記一方の信号線との重なり部分には、前記素子基板と前記対向基板との間の間隔を規定する柱状スペーサが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1の接続部は、前記第1の素子用絶縁膜および前記第1の下電極の部分的な除去により露出した当該第1の下電極の端面と、前記第2の上電極との接続により構成され、
前記第2の接続部は、前記第2の素子用絶縁膜および前記第2の下電極の部分的な除去により露出した当該第2の下電極の端面と、前記一方の信号線との接続により構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第1の素子用絶縁膜の厚さは、前記第1の下電極の側面より上面で厚く、
前記第2の素子用絶縁膜の厚さは、前記第2の下電極の側面より上面で厚いことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記対向基板には、前記画素電極と対向して前記液晶を駆動する共通電極が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記素子基板には、前記走査線および前記データ線のうちの他方の信号線と、前記画素電極と対向して前記液晶を駆動する共通電極とが形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記素子基板には、前記非線形素子に直列接続され、かつ、前記画素電極、前記液晶および前記共通電極によって構成される液晶容量に並列接続された補助容量が形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に規定する電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−337424(P2006−337424A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158517(P2005−158517)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(304053854)三洋エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(304053854)三洋エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】
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