説明

電気光学装置および電子機器

【課題】電気光学装置のコストを低減しながら給電線における電圧降下を抑制する。
【解決手段】基板10には複数の電気光学素子Eを含む素子部20が形成される。ICチップ60は、各電気光学素子Eを制御するための制御信号Sを出力する。基板10の表面に形成された複数の信号線32は、ICチップ60から出力された制御信号Sを素子部20に伝送する。給電端子44は、基板10の表面のうち相隣接する各信号線32の間隙に形成される。給電端子44には、基板10に固定されてICチップ60を跨ぐ給電用配線基板70を介して電源電位VELが供給される。給電線34は、電源電位VELを給電端子44から素子部20に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子などの電気光学素子を利用した電気光学装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電気光学素子を配列した素子部が基板の表面に形成された電気光学装置が従来から提案されている。例えば特許文献1には、図17に示すように、各電気光学素子を駆動するICチップ91が素子部93とともに基板95の表面に実装された構成が開示されている。基板95の面上には、各電気光学素子に電源電位を供給するための電源線97が形成される。電源線97は、ICチップ91と素子部93とを包囲するように基板95の周縁に沿って略コ字状(略C字状)に形成される。
【特許文献1】特開2004−127924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の構成においては電源線97の全長が長いから、電源線97における電圧降下が顕著となって各電気光学素子に供給される電源電位の相違が増大する。そして、電源電位が電気光学素子ごとに相違すると、各電気光学素子の光量にムラが発生するという問題がある。以上の問題を解決するために、図18に例示するように、素子部93を横断して電源線97の途中の部分に連結される配線99を形成した構成も採用され得る。しかし、図18の構成においては、配線99を挟むように複数のICチップ91Aおよび91Bを分散して配置する必要があるから、電気光学装置の製造のコストが増大するという問題がある。以上の事情に鑑みて、本発明は、電気光学装置のコストを低減しながら給電線における電圧降下を抑制するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、本発明のひとつの態様に係る電気光学装置は、複数の電気光学素子を含む素子部が形成された基板と、各電気光学素子を制御するための制御信号を出力するICチップと、基板の面上に形成され、ICチップから出力された制御信号を素子部に伝送する複数の信号線と、基板の面上のうち相隣接する2本の信号線の間隙に形成された第1給電端子(例えば各図面における給電端子44)と、基板に固定されて第1給電端子に所定の電位を供給する第1配線基板(例えば各図面における給電用配線基板70)と、所定の電位を第1給電端子から素子部に供給する給電線とを具備する。
【0005】
以上の構成によれば、相隣接する2本の信号線の間隙に形成された第1給電端子が給電線に対する電位の供給に利用されるから、例えば素子部の両側のみから給電線に電位が供給される構成と比較して給電線における電圧降下が抑制される。しかも、第1給電端子には第1配線基板を介して電位が供給されるから、第1給電端子を挟む各位置に複数のICチップを分散して配置する必要はない。したがって、電気光学装置の製造に必要なコストを低減することが可能である。もっとも、複数のICチップを備えた構成を本発明の範囲から除外する趣旨ではない。
【0006】
本発明の第1の態様に係る電気光学装置は、基板の面上に配列する複数の接続端子を含む端子群(例えば図5の端子群G1)と、基板に固定された第2配線基板(例えば図5の配線基板50)とを具備し、第2配線基板は、ICチップから出力された制御信号を各接続端子に伝送し、複数の信号線は、制御信号を各接続端子から素子部に伝送する。ICチップは、例えば第2配線基板に実装される。
【0007】
第1の態様に係る電気光学装置において、例えば、第1給電端子は、複数の接続端子が配列する直線から離間した位置に形成され、複数の接続端子は、基板の面上のうち第1給電端子から複数の接続端子の配列に垂直な方向に沿う領域(例えば図7の領域16)内には形成されない。以上の態様によれば、第1給電端子を避けるように複数の接続端子が形成されるから、第1給電端子が複数の接続端子の配列に近接して配置された構成においても、第1給電端子と各接続端子とを確実に絶縁することが可能となる。したがって、第1給電端子と複数の接続端子との配置に必要なスペースが削減され、この結果として基板(さらには電気光学装置)の小型化が実現され得るという利点がある。なお、本態様の具体例は第2実施形態として後述される。
【0008】
第1の態様に係る電気光学装置において、例えば、第1給電端子は、複数の接続端子が配列する直線上に形成され、第2配線基板のうち第1給電端子に対応した部分には切欠(例えば図11の切欠521)が形成され、第1配線基板は、切欠の内側にて基板に接合される。以上の態様によれば、第1給電端子が複数の接続端子とともに直線上に配列するから、複数の接続端子の配列から離間して第1給電端子が形成された構成と比較して、第1給電端子と複数の接続端子との配置に必要なスペースが削減され、この結果として基板(さらには電気光学装置)の小型化が実現され得るという利点がある。なお、本態様の具体例は第3実施形態として後述される。
【0009】
本発明の第2の態様に係る電気光学装置は、基板の面上に配列する複数の接続端子を含む端子群(例えば図13の端子群G2)と、基板に固定されて各接続端子に信号を供給する第2配線基板とを具備し、ICチップは、基板の面上に実装され、第2配線基板から各接続端子に供給された信号に応じた制御信号を各信号線に出力する。なお、本態様の具体例は第4実施形態として後述される。
【0010】
以上の各態様に係る電気光学装置において、基板の面上のうち複数の接続端子の配列の方向に沿って端子群を挟む位置に形成されるとともに所定の電位が供給される複数の第2給電端子がさらに設置され、給電線は、電気光学素子の配列に沿って延在する第1部分(例えば図1の部分341)と、第1部分の各端部を第2給電端子に連結する複数の第2部分(例えば図1の部分342)と、第1部分の中途の部分を第1給電端子に連結する第3部分(例えば図1の部分343)とを含む。以上の態様によれば、第1給電端子と複数の第2給電端子とが給電線に対する電位の供給に利用されるから、給電線における電圧降下が有効に抑制される。
【0011】
さらに好適な態様において、第1配線基板と第2配線基板とは相互に重なり合う。本態様によれば、第1配線基板と第2配線基板とが重なり合わない構成と比較して、電気光学装置が全体として小型化されるという利点がある。また、例えば第2配線基板にICチップが実装された構成においては、第1配線基板はICチップと重なり合う。
【0012】
また、別の態様において、第1配線基板と第2配線基板とはひとつの回路基板に固定される。例えば、第1配線基板は回路基板の一方の表面に固定され、第2配線基板は回路基板の他方の表面に固定される。この態様によれば、第1配線基板と第2配線基板とが回路基板の別個の表面に形成されるから、各配線基板が回路基板のひとつの表面に形成された構成と比較して回路基板が小型化される。
【0013】
以上の各態様に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。本発明に係る電子機器の典型例は、以上の各態様に係る電気光学装置を感光体ドラムなどの像担持体の露光に利用した電子写真方式の画像形成装置である。この画像形成装置は、露光によって潜像が形成される像担持体と、像担持体を露光する本発明の電気光学装置と、像担持体の潜像に対する現像剤(例えばトナー)の付加によって顕像を形成する現像器とを含む。もっとも、本発明に係る電気光学装置の用途は像担持体の露光に限定されない。例えば、スキャナなどの画像読取装置においては、本発明に係る電気光学装置を原稿の照明に利用することが可能である。この画像読取装置は、以上の各態様に係る電気光学装置と、電気光学装置から出射して読取対象(原稿)で反射した光を電気信号に変換する受光装置(例えばCCD(Charge Coupled Device)素子などの受光素子)とを具備する。さらに、電気光学素子がマトリクス状に配列された電気光学装置は、パーソナルコンピュータや携帯電話機など各種の電子機器の表示装置としても利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示す平面図である。電気光学装置Dは、感光体ドラムを露光する露光装置(ラインヘッド)として電子写真方式の画像形成装置に採用される。図1に示すように、電気光学装置Dは、所望の画像に応じた光線を感光体ドラムに向けて放射するヘッドモジュールHと、ヘッドモジュールHの駆動に利用される信号や電源を生成する各種の回路(図示略)が実装された回路基板65と、ヘッドモジュールHと回路基板65とを電気的に接続するための配線基板50および給電用配線基板70とを具備する。ヘッドモジュールHは、X方向(主走査方向)を長手として配置された略長方形状の基板10と、基板10の表面に形成された素子部20および給電線34とを備える。なお、図1および以下の各平面図においては給電線34に対して便宜的に斜線が付されている。
【0015】
図2は、素子部20の電気的な構成を示す回路図である。同図に示すように、素子部20は、電気光学素子Eと駆動トランジスタTDRとを各々が含むn個(nは2以上の自然数)の単位回路Uから構成される。n個の電気光学素子Eは、基板10の表面に形成されるとともにX方向に沿って直線状(単列または複数列)に配列する。各電気光学素子Eは、相互に対向する陽極と陰極との間に有機EL(Electroluminescence)材料の発光層が介在する有機発光ダイオード素子である。
【0016】
各単位回路Uの電気光学素子Eは、高位側の電源電位VELが供給される給電線34と接地電位GNDが供給される接地線とを連結する経路上に配置され、当該経路に流れる駆動電流IDRの電流量に応じた光量(光度)で発光する。駆動トランジスタTDRは、駆動電流IDRの経路上(給電線34と電気光学素子Eとの間)に配置されたnチャネル型のトランジスタである。各駆動トランジスタTDRのドレインは給電線34に対して共通に接続される。
【0017】
基板10の表面には、各々が別個の単位回路Uに対応するn本の信号線32が形成される。各信号線32は、図1に示すようにX方向に直交するY方向に延在するとともに、図2に示すように、当該信号線32に対応した単位回路Uにおける駆動トランジスタTDRのゲートに接続される。駆動トランジスタTDRのドレイン−ソース間には、信号線32に供給される制御信号Sの電位に応じた駆動電流IDRが流れる。したがって、電気光学素子Eは、制御信号Sに応じた光量に駆動される。
【0018】
図3は、基板10のひとつの長辺に相当する周縁12の近傍を拡大して示す平面図である。同図においては配線基板50や給電用配線基板70が設置されていない状態が図示されている。図3に示すように、基板10の表面のうち素子部20からみて配線基板50側の領域14には、各々が別個の信号線32に連結されたn個の接続端子42(以下ではこれらの集合を「端子群G1」という)が形成される。これらの接続端子42は、配線基板50の周縁12に沿ってX方向に配列する。接続端子42のピッチP1は、素子部20における信号線32のピッチP2よりも狭い。したがって、素子部20からY方向の正側に延在して領域14内に至ったn本の信号線32は、各接続端子42に近づくほど基板10におけるX方向の中央部に接近する(すなわちn本の信号線32が端子群G1に向かって収束する)ように斜め方向に延在する部分321を介して各接続端子42に連結される。
【0019】
図3に示すように、基板10の領域14のうち端子群G1からY方向の負側に離間した領域(端子群G1と素子部20との間隙)には3個の給電端子44が形成される。これらの給電端子44は、基板10のX方向に沿った中央部の近傍にてX方向に配列する。図3に示すように、各給電端子44は、信号線32が分布する領域の内部に形成される。さらに詳述すると、各給電端子44は、相隣接する2本の信号線32のうちピッチP2で並列する部分の間隙に位置する。本形態においては、n本の信号線32を同数ずつ区分した各グループの間隙(すなわち、図1の左方から数えて第n/2番目の信号線32と第(n/2)+1番目の信号線32との間隙)に3個の給電端子44が形成される。また、基板10の表面のうちn個の接続端子42の配列の方向(X方向)に沿って端子群G1を挟む各位置(すなわち接続端子42が配列する直線上)には給電端子46が2個ずつ形成される。
【0020】
図1および図3に示すように、給電線34は、基板10の表面のうち素子部20を挟んで領域14とは反対側の領域にてX方向に延在する部分341と、素子部20をX方向に挟む各位置にて部分341の両端部から領域14に向かってY方向に延在する部分342と、部分341におけるX方向の途中の部分(中央部)から領域14に向かってY方向に延在する部分343とを含む。図3に示すように、部分342のうち領域14内に至った端部は各給電端子46に連結される。同様に、部分343のうち領域14内に至った端部は各給電端子44に連結される。
【0021】
給電線34は、例えば素子部20を構成する要素と共通の導電層から形成される。したがって、素子部20の内部に存在する部分343は、相隣接する素子部20(単位回路U)の間隙を通過してY方向に延在する。もっとも、素子部20の要素とは別個の導電層で給電線34を形成する場合には、電気光学素子Eや駆動トランジスタと給電線34とが基板10に垂直な方向からみて重なり合う構成も採用される。
【0022】
次に、図4は、基板10に配線基板50が固定された状態を示す平面図である。同図に示すように、配線基板50(例えばFPC(Flexible Printed Circuit))は、可撓性を有するフィルム状の基材52を具備する。基材52のうちひとつの周縁に沿った領域は、接続端子42や給電端子46と重なり合うように基板10の領域14に接合され、これとは反対側の周縁に沿った領域は回路基板65の表面に接合される。配線基板50は、例えば異方性導電膜を介して基板10や回路基板65に固定される。
【0023】
図4に示すように、基材52のうち基板10に対向する表面には、n本の配線54と4本の配線55と複数の配線56とが形成される。また、基材52のうち基板10とは反対側の表面にはIC(Integrated Circuit)チップ60が実装される。ICチップ60は、回路基板65から各配線56を介して供給される各種の信号(例えばクロック信号や画像信号)に基づいてn系統の制御信号Sを出力する駆動回路を具備する。各配線54は、一方の端部が基材52の貫通孔を介してICチップ60の出力端子に電気的に接続され、基材52のうち基板10に対向する領域に至った他方の端部が接続端子42に電気的に接続される。したがって、ICチップ60から出力された制御信号Sは、配線54と接続端子42とを介して信号線32に供給される。
【0024】
また、各配線55は、配線基板50のうち回路基板65側の周縁から基板10側の周縁にわたってY方向に延在する。配線55のうち基板10と重なり合う端部は各給電端子46に対して電気的に接続される。各配線55には、回路基板65に実装された電源回路(図示略)の生成した電源電位VELが供給される。電源電位VELは、配線55と給電端子46とを介して給電線34(部分342)に供給される。
【0025】
図5は、図4の状態からさらに給電用配線基板70が基板10に固定された状態を示す平面図である。同図に示すように、給電用配線基板70(例えばFFC(Flexible Flat Cable))は、可撓性を有するフィルム状の基材72を含む。図6は、図1におけるVI−VI線からみた断面図である。図5および図6に示すように、基材72は、Y方向を長手として配置された長尺状の部材である。基材72の全長は、配線基板50のY方向の寸法よりも長い。
【0026】
図6に示すように、基材72のひとつの端部は、基板10のうち給電端子44と重なり合う領域に接合され、これとは反対側の端部は回路基板65の表面に接合される。給電用配線基板70は、例えば異方性導電膜を介して基板10や回路基板65に接合される。図5および図6に示すように、給電用配線基板70と配線基板50とは基板10に垂直な方向からみて相互に重なり合う。また、給電用配線基板70は、X方向を長手とするICチップ60を跨いでY方向に延在する。
【0027】
基材72には3本の配線74が形成される。これらの配線74は、基材72の全長にわたって直線状に延在する。各配線74の一方の端部は、基板10上の給電端子44に対して電気的に接続され、他方の端部は、回路基板65の配線(図示略)に対して電気的に接続される。各配線74には、回路基板65に実装された電源回路の生成した電源電位VELが供給される。電源電位VELは、配線74と給電端子44とを介して給電線34(部分343)に供給される。
【0028】
以上に説明したように、本形態においては、基板10の両端部に形成された2箇所の給電端子46に加えて中央部に形成された給電端子44からも、給電線34に電源電位VELが供給されるから、各給電端子46のみから電源電位VELが供給される構成と比較して給電線34での電圧降下が抑制される。したがって、各単位回路Uに供給される電源電位VELの相違が低減され、これによって各電気光学素子Eの光量を均一化することが可能である。
【0029】
また、本形態においては、ICチップ60と立体的に交差するように設置された給電用配線基板70を介して給電端子44に電源電位VELが供給されるから、給電線34の中央部に電源電位VELが供給されるとは言っても、複数のICチップ(90Aおよび90B)を図18のように配線99の両側に分散して配置する必要はない。したがって、電気光学装置Dの製造に必要なコストを図18の構成よりも低減しながら、給電線34における電圧降下を抑制するという所期の効果を得ることができる。
【0030】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の各形態において機能や作用が第1実施形態と同様である要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0031】
図7は、基板10のうち配線基板50が接合される領域を拡大して示す平面図である。第1実施形態においてはn個の接続端子42が等間隔に配列された構成を例示した。これに対し、本形態においては図7に示すように、基板10の領域14のうち各給電端子44からみてY方向(接続端子42の配列に垂直な方向)の正側の領域16内には接続端子42が形成されない。すなわち、領域16に対してX方向の負側の領域と正側の領域との各々に形成されたn/2個の接続端子42が等間隔に配列する。3個の給電端子44は、各々におけるY方向の正側の端部が、各接続端子42におけるY方向の負側の端部を結んだ直線L上に位置するように、基板10上に配列される。
【0032】
図8は、配線基板50と給電用配線基板70とが基板10に実装された状態を示す平面図である。図7および図8に示すように、給電用配線基板70は、基板10に垂直な方向からみると、接続端子42が形成されない領域16と重なり合うようにY方向に延在する。
【0033】
第1実施形態(図3)のようにn個の接続端子42を等間隔に配列した構成においては、特に配列の中央部に位置する接続端子42に連結された信号線32を各給電端子44から離間させながら基板10の表面上で引き廻すため、各接続端子42の配列と各給電端子44との間に間隔Δ(図3参照)を確保する必要がある。これに対し、本形態においては、給電端子44からみてY方向の正側に接続端子42は存在しないから、各接続端子42の配列と各給電端子44との間に間隔Δを確保しなくても、各信号線32を給電端子44から離間した位置に形成することが可能である。したがって、本形態によれば、基板10の面積を縮小して電気光学装置Dを小型化できるという利点がある。
【0034】
<C:第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図9は、基板10のうち配線基板50が接合される領域を拡大して示す平面図である。同図に示すように、本形態における3個の給電端子44は、n個の接続端子42が配列する直線上に形成される。すなわち、n個の接続端子42と4個の給電端子46と3個の給電端子44とが基板10の周縁12に沿って直線状に配列する。
【0035】
図10は、基板10に配線基板50が接合された状態を示す平面図である。第1実施形態と同様に、配線基板50は、基板10の周縁12に沿った領域と重なり合うように実装される。ただし、図10に示すように、本形態の配線基板50は、各給電端子44に対応した領域(給電端子44と対向する領域)に略矩形状の切欠521が形成されている。したがって、基板10に垂直な方向からみると、各給電端子44は切欠521の内側にて配線基板50から露出する。
【0036】
図11は、給電用配線基板70が基板10に接合された状態を示す平面図である。同図に示すように、給電用配線基板70は、基板10に垂直な方向からみて切欠521の内側で基板10に接合される。各給電端子44には、給電用配線基板70の配線74を介して電源電位VELが供給される。
【0037】
以上に説明したように、本形態においては、各給電端子44が接続端子42や給電端子46とともに直線状に配列するから、接続端子42および給電端子46の配列から離間した位置に給電端子44が形成された第1実施形態や第2実施形態の構成と比較して基板10の面積が縮小される。したがって、電気光学装置Dを小型化できるという利点がある。
【0038】
また、本形態においては、配線基板50のうちICチップ60の実装面と対向するように給電用配線基板70が配置された図11の構成のほか、図12に示すように、配線基板50の切欠521の内周縁と基板10の周縁12との間隙に給電用配線基板70を通過させて、配線基板50のうちICチップ60とは反対側の表面と対向するように給電用配線基板70が配置された構成を採用することも可能である。したがって、配線基板50や給電用配線基板70を回路基板65に接合する構成の自由度を充分に確保できるという利点もある。
【0039】
<D:第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図13は、本形態の電気光学装置Dのうち給電端子44の近傍を拡大した平面図である。以上の各形態においては、ICチップ60がCOF(Chip On Film)技術によって配線基板50に実装された構成を例示した。これに対し、本形態においては図13に示すように、ICチップ60がCOG(Chip On Glass)技術によって基板10の表面に実装される。ICチップ60の機能は以上の各形態と同様である。n本の信号線32の各々はICチップ60の出力端子に対して電気的に接続される。3個の給電端子44は、基板10の表面のうち相隣接する2本の信号線32の間隙に形成される。
【0040】
また、基板10のうち周縁12に沿った領域には、複数の接続端子48を含む端子群G2と、X方向に沿って端子群G2を挟む複数の給電端子46とが形成される。配線基板50は、各接続端子48および各給電端子46と重なり合うように基板10に接合される。各接続端子48は配線基板50の配線56に接続され、各給電端子46は配線基板50の配線55に接続される。また、給電用配線基板70は、以上の各形態と同様に、各配線74が給電端子44に接続されるように基板10に接合され、Y方向に延在して配線基板50やICチップ60と重なり合う。
【0041】
回路基板65から出力された各種の信号(例えばクロック信号や画像信号)は配線56および接続端子48を介してICチップ60に供給される。ICチップ60は、各信号に応じたn系統の制御信号Sを生成して各信号線32に出力する。各給電端子46には配線55を介して電源電位VELが供給される。また、各給電端子44には給電用配線基板70を介して電源電位VELが供給される。したがって、本形態においても第1実施形態と同様の作用および効果が奏される。
【0042】
<E:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0043】
(1)変形例1
以上の各形態においては、図6のように配線基板50および給電用配線基板70が回路基板65のひとつの表面に接合された構成を例示したが、図14に例示するように、回路基板65の一方の表面S1に配線基板50が固定されるとともに他方の表面S2に給電用配線基板70が固定された構成としてもよい。さらに具体的には、表面S1のうち配線基板50が接合された領域と表面S2のうち給電用配線基板70が接合された領域とは、回路基板65に垂直な方向からみて重なり合う。図14の構成によれば、配線基板50を接合する領域と給電用配線基板70を接合する領域とを回路基板65のひとつの表面に個別に確保する必要がないから、回路基板65を小型化することが可能である。
【0044】
(2)変形例2
以上の形態においては、給電端子46に電源電位VELを供給するための配線55が、ICチップ60を実装した配線基板50に形成された構成を例示したが、図15に示すように、配線基板50とは別個の給電用配線基板58に配線55を形成してもよい。各給電用配線基板58(例えばFFC)は、ひとつの端部が基板10に接合されるとともに他方の端部が回路基板65に接合される。電源電位VELは各給電用配線基板58の配線55を介して給電端子46に供給される。
【0045】
(3)変形例3
有機発光ダイオード素子は電気光学素子の例示に過ぎない。本発明に適用される電気光学素子について、自身が発光する自発光型と外光の透過率を変化させる非発光型(例えば液晶素子)との区別や、電流の供給によって駆動される電流駆動型と電圧の印加によって駆動される電圧駆動型との区別は不問である。例えば、無機EL素子、フィールド・エミッション(FE)素子、表面導電型エミッション(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子、LED(Light Emitting Diode)素子、液晶素子、電気泳動素子、エレクトロクロミック素子など様々な電気光学素子を本発明に利用することができる。
【0046】
<F:応用例>
本発明に係る電気光学装置を利用した電子機器(画像形成装置)の具体的な形態を説明する。
図16は、以上の各形態に係る電気光学装置Dを採用した画像形成装置の構成を示す断面図である。画像形成装置は、タンデム型のフルカラー画像形成装置であり、以上の形態に係る4個の電気光学装置D(DK,DC,DM,DY)と、各電気光学装置Dに対応する4個の感光体ドラム80(80K,80C,80M,80Y)とを具備する。ひとつの電気光学装置Dは、これに対応した感光体ドラム80の像形成面(外周面)と対向するように配置される。なお、各符号の添字「K」「C」「M」「Y」は、黒(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各顕像の形成に利用されることを意味している。
【0047】
図16に示すように、駆動ローラ811と従動ローラ812とには無端の中間転写ベルト82が巻回される。4個の感光体ドラム80は、相互に所定の間隔をあけて中間転写ベルト82の周囲に配置される。各感光体ドラム80は、中間転写ベルト82の駆動に同期して回転する。
【0048】
各感光体ドラム80の周囲には、電気光学装置Dのほかにコロナ帯電器831(831K,831C,831M,831Y)と現像器832(832K,832C,832M,832Y)とが配置される。コロナ帯電器831は、これに対応する感光体ドラム80の像形成面を一様に帯電させる。この帯電した像形成面を各電気光学装置Dが露光することで静電潜像が形成される。各現像器832は、静電潜像に現像剤(トナー)を付着させることで感光体ドラム80に顕像(可視像)を形成する。
【0049】
以上のように感光体ドラム80に形成された各色(黒・シアン・マゼンタ・イエロー)の顕像が中間転写ベルト82の表面に順次に転写(一次転写)されることでフルカラーの顕像が形成される。中間転写ベルト82の内側には4個の一次転写コロトロン(転写器)84(84K,84C,84M,84Y)が配置される。各一次転写コロトロン84は、これに対応する感光体ドラム80から顕像を静電的に吸引することによって、感光体ドラム80と一次転写コロトロン84との間隙を通過する中間転写ベルト82に顕像を転写する。
【0050】
シート(記録材)85は、ピックアップローラ861によって給紙カセット862から1枚ずつ給送され、中間転写ベルト82と二次転写ローラ87との間のニップに搬送される。中間転写ベルト82の表面に形成されたフルカラーの顕像は、二次転写ローラ87によってシート85の片面に転写(二次転写)され、定着ローラ対88を通過することでシート85に定着される。排紙ローラ対89は、以上の工程を経て顕像が定着されたシート85を排出する。
【0051】
以上に例示した画像形成装置は有機発光ダイオード素子を光源(露光手段)として利用しているので、レーザ走査光学系を利用した構成よりも装置が小型化される。なお、以上に例示した以外の構成の画像形成装置にも電気光学装置Dを適用することができる。例えば、ロータリ現像式の画像形成装置や、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムからシートに対して直接的に顕像を転写するタイプの画像形成装置、あるいはモノクロの画像を形成する画像形成装置にも電気光学装置Dを利用することが可能である。
【0052】
なお、電気光学装置Dの用途は像担持体の露光に限定されない。例えば、電気光学装置Dは、原稿などの読取対象に光を照射する照明装置として画像読取装置に採用される。この種の画像読取装置としては、スキャナ、複写機やファクシミリの読取部分、バーコードリーダ、あるいはQRコード(登録商標)のような二次元画像コードを読む二次元画像コードリーダがある。
【0053】
また、電気光学素子Eがマトリクス状に配列された電気光学装置は、各種の電子機器の表示装置としても利用される。本発明が適用される電子機器としては、例えば、可搬型のパーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器などがある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示す平面図である。
【図2】素子部の電気的な構成を示す回路図である。
【図3】基板のうち配線基板が実装される領域を拡大して示す平面図である。
【図4】基板に配線基板が実装された状態を示す平面図である。
【図5】基板に給電用配線基板が実装された状態を示す平面図である。
【図6】図1におけるVI−VI線からみた断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電気光学装置の基板を拡大して示す平面図である。
【図8】基板に配線基板と給電用配線基板とが実装された状態を示す平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る電気光学装置の基板を拡大して示す平面図である。
【図10】基板に配線基板が実装された状態を示す平面図である。
【図11】基板に給電用配線基板が実装された状態を示す平面図である。
【図12】第3実施形態の他の態様を示す平面図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る電気光学装置の基板を拡大して示す平面図である。
【図14】変形例における各基板の関係を示す断面図である。
【図15】変形例に係る電気光学装置の構成を示す平面図である。
【図16】電子機器のひとつの形態(画像形成装置)を示す断面図である。
【図17】従来の電気光学装置の構成を示す平面図である。
【図18】従来の電気光学装置の問題を解決するための構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0055】
D……電気光学装置、10……基板、20……素子部、U……単位回路、E……電気光学素子、32……信号線、34……給電線、42……接続端子、44,46……給電端子、50……配線基板、60……ICチップ、65……回路基板、70……給電用配線基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気光学素子を含む素子部が形成された基板と、
前記各電気光学素子を制御するための制御信号を出力するICチップと、
前記基板の面上に形成され、前記ICチップから出力された制御信号を前記素子部に伝送する複数の信号線と、
前記基板の面上のうち相隣接する2本の信号線の間隙に形成された第1給電端子と、
前記基板に固定されて前記第1給電端子に所定の電位を供給する第1配線基板と、
前記所定の電位を前記第1給電端子から前記素子部に供給する給電線と
を具備する電気光学装置。
【請求項2】
前記基板の面上に配列する複数の接続端子を含む端子群と、
前記基板に固定された第2配線基板とを具備し、
前記第2配線基板は、前記ICチップから出力された制御信号を前記各接続端子に伝送し、
前記複数の信号線は、制御信号を前記各接続端子から前記素子部に伝送する
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1給電端子は、前記複数の接続端子が配列する直線から離間した位置に形成され、
前記複数の接続端子は、前記基板の面上のうち前記第1給電端子から前記複数の接続端子の配列に垂直な方向に沿う領域内には形成されない
請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1給電端子は、前記複数の接続端子が配列する直線上に形成され、
前記第2配線基板のうち前記第1給電端子に対応した部分には切欠が形成され、
前記第1配線基板は、前記切欠の内側にて前記基板に接合される
請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記基板の面上に配列する複数の接続端子を含む端子群と、
前記基板に固定されて前記各接続端子に信号を供給する第2配線基板とを具備し、
前記ICチップは、前記基板の面上に実装され、前記第2配線基板から前記各接続端子に供給された信号に応じた制御信号を前記各信号線に出力する
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記基板の面上のうち前記複数の接続端子の配列の方向に沿って前記端子群を挟む位置に形成されるとともに前記所定の電位が供給される複数の第2給電端子を具備し、
前記給電線は、前記電気光学素子の配列に沿って延在する第1部分と、前記第1部分の各端部を前記第2給電端子に連結する複数の第2部分と、前記第1部分の中途の部分を前記第1給電端子に連結する第3部分とを含む
請求項2から請求項5の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第1配線基板と前記第2配線基板とは相互に重なり合う
請求項2から請求項6の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第1配線基板と前記第2配線基板とはひとつの回路基板に固定される
請求項2から請求項7の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記第1配線基板は前記回路基板の一方の表面に固定され、前記第2配線基板は前記回路基板の他方の表面に固定される
請求項8に記載の電気光学装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れかに記載の電気光学装置を具備する電子機器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−52000(P2008−52000A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227464(P2006−227464)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】