説明

電気光学装置の評価方法

【課題】液晶装置等の電気光学装置における配向不良を、容易な方法で適切に評価する
【解決手段】電気光学装置の評価方法は、一対の基板(10,20)間に電気光学物質(50)が挟持されてなる電気光学装置を評価するものであり、複数の画素からなる画素領域(10a)において、所定のパターン(100)を一の方向に移動させるように表示するパターン表示工程と、所定のパターンが移動した後に残る残像を検出する残像検出工程と、残像に基づいて、電気光学物質の配向乱れを検出する配向乱れ検出工程とを備える。所定のパターンは、一の画素(101)と互いに隣り合う画素であって、一の画素における一の方向に位置する第1の辺を共有する第1画素(101)、及び一の画素と互いに隣り合う画素であって、一の画素における第1の辺に隣接する第2の辺を共有する第2画素(102)からなる斜めの輪郭を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶等の電気光学物質の配向乱れを評価する電気光学装置の評価方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の評価方法では、例えばライトバルブとして液晶プロジェクタに搭載される液晶パネルが評価される。このような液晶プロジェクタの検査を行う場合、液晶パネル自体は極めて小さいため、画像の異常を液晶パネルの検査によって検出することは難しい。よって、実際にスクリーンに画像を投影して、投影された画像から異常を検出するという方法が通常用いられている。
【0003】
例えば特許文献1では、投影手段によって投影された画像を取り込み、取り込んだ画像から投影装置の異常を検出する監視方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−173232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術は、投影された画像を監視して装置の不具合を検出するというものであって、例えば例えば表示装置に不具合が発生するような状況を意図的に発生させることで、表示装置の動作を検査するということはできない。即ち、上述した技術では、表示装置の不具合が検出できるのみであって、例えば製造工程における表示装置の性能評価等は行えないという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、容易な方法で適切な評価を行うことが可能な電気光学装置の評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気光学装置の評価方法は上記課題を解決するために、一対の基板間に電気光学物質が挟持されてなる電気光学装置の評価方法であって、複数の画素からなる画素領域において、所定のパターンを一の方向に移動させるように表示するパターン表示工程と、前記所定のパターンが移動した後に残る残像を検出する残像検出工程と、前記残像に基づいて、前記電気光学物質の配向乱れを検出する配向乱れ検出工程とを備え、前記所定のパターンは、一の画素と互いに隣り合う画素であって、前記一の画素における前記一の方向に位置する第1の辺を共有する第1画素、及び前記一の画素と互いに隣り合う画素であって、前記一の画素における前記第1の辺に隣接する第2の辺を共有する第2画素からなる斜めの輪郭を有する。
【0008】
本発明の電気光学装置の評価方法によって評価される電気光学装置は、一対の基板間に液晶等の電気光学物質が挟持されることによって構成されており、マトリクス状に配置された複数の画素からなる画素領域において、画素毎に電気光学物質の制御が行われることで画像が表示される。画素領域に表示された画像は、例えば光源から光を投射することによって、スクリーン等の大型画面に拡大された画像として表示される。
【0009】
本発明では、電気光学装置を評価する際に、先ず画素領域において所定のパターンが一の方向に移動するように表示させられる。一の方向は、典型的には、画素領域における左から右に向かう方向であるが、右から左に向かう方向であってもよい。また、画素領域における上下方向であっても構わない。所定のパターンの形状については後に詳述する。
【0010】
所定のパターンを移動させると、所定のパターンが通過した後に残像が残る場合がある。即ち、電気光学物質の配向乱れに起因して、所定のパターンが、一の方向とは逆の方向に尾を引くように表示されてしまう場合がある。本発明では、残像検出工程において、上述したような残像が検出される。残像の検出は、典型的には、拡大表示された画像を目視することによって検出される。
【0011】
続いて本発明では、検出された残像に基づいて、電気光学物質の配向乱れが検出される。具体的には、例えば検出された残像の大きさ(即ち、長さや幅等)から残像の残り易さを判定することで、電気光学物質の配向乱れが検出される。これにより、画素領域における電気光学物質の配向不良の程度を、適切に評価することが可能となる。例えば、画素領域において、配向不良の程度が大きい部分と配向不良の程度が小さい部分とを判別することが可能となる。
【0012】
本発明では特に、所定のパターンは、一の画素と互いに隣り合う画素であって、一の画素における一の方向に位置する第1の辺を共有する第1画素、及び一の画素と互いに隣り合う画素であって、一の画素における第1の辺に隣接する第2の辺を共有する第2画素からなる斜めの輪郭を有する形状とされている。即ち、所定のパターンは、一の画素から見て進行方向で隣接している第1画素、及び進行方向と交わる方向で隣接している第2画素からなる斜めの輪郭を有している。より具体的には、一の方向が左から右に向かう方向である場合には、第1画素は一の画素の右側で隣接している画素であり、第2画素は一の画素の上側又は下側で隣接している画素である。
【0013】
所定のパターンの形状は、上述した輪郭を有する限り特に限定されないが、典型的には、上述した第1画素及び第2画素が連続するような、斜めに延びる輪郭を有する細長い形状とされる。より具体的には、所定のパターンは、例えば上述した第1画素及び第2画素を含む輪郭を一辺とする平行四辺形とされる。
【0014】
所定のパターンが上述したような輪郭を有することにより、所定のパターンが移動する際には、一の画素となる部分に残像が発生し易くなる。即ち、所定のパターンの輪郭となる第1画素及び第2画素のいずれにも隣接している画素において、配向乱れによる残像が発生し易くなる。よって、画素領域における配向乱れの程度を容易に評価することが可能となる。
【0015】
尚、上述したように、第2画素が一の画素に対して隣接する方向は2つ存在するが(上述の例では、上側又は下側)、2つの方向のうち適切な一方を選択しなければ、上述した残像を発生し易くするという効果は得られない。しかしながら、本願発明者の研究によれば、第2画素が隣接する方向は、当該電気光学装置における明視方向又は明視方向に寄与する他のパラメータに基づいて決定すればよいことが判明している。よって、装置の明視方向が分かっていれば、適切な第2画素の隣接方向を決定できる。即ち、適切な所定のパターンの形状を決定できる。
【0016】
また、所定のパターンの大きさや移動速度を変化させることで、残像の大きさは変化する。よって、所定のパターンの大きさや移動速度を、より検出し易い大きさの残像が表示されるように適宜設定することで、より好適に電気光学装置の配向乱れを評価することが可能となる。
【0017】
以上説明したように、本発明の電気光学装置の評価方法によれば、本発明特有の所定のパターンを一の方向に移動させることで、意図的に配向乱れが発生し易い状況を作り出すことができる。よって、好適に電気光学装置の評価を行うことが可能である。
【0018】
本発明の電気光学装置の評価方法の一態様では、前記所定のパターンは、前記一の方向に移動させることで、前記輪郭が前記画素領域における全ての画素を通過する形状である。
【0019】
この態様によれば、所定のパターンを一の方向に移動させることで、所定のパターンにおける輪郭が画素領域における全ての画素を通過するため、表示工程において画素領域全体の評価が行える。よって、何度も所定のパターンを表示させずとも済むため、非常に効率的に装置の評価を行うことができる。また、画素領域全体の評価を同時に行えるため、画素領域の部分的な比較が可能となり、配向乱れの起こり易い領域と起こり難い領域とを好適に判別できる。
【0020】
尚、上述した本態様における効果は、所定のパターンにおける輪郭が通過することになる画素が全ての画素では無い場合であっても、通過する画素を増加させることで相応に得られる。即ち、所定のパターンの形状を、輪郭ができるだけ多くの画素を通過するようなものとすれば、効率的に装置の評価を行うことが可能となる。
【0021】
本発明の電気光学装置の評価方法の他の態様では、前記所定のパターンは、前記画素領域において前記一の方向に交わる方向に並ぶように複数表示される。
【0022】
この態様によれば、所定のパターンが一の方向に交わる方向に並ぶように複数表示されるため、表示工程において、所定のパターンの輪郭が、より多くの画素を通過するようにすることができる。即ち、所定のパターンが、進行方向とは交わる方向に複数表示されることで、所定パターンの輪郭が通過する部分を、効率的に増加させることができる。従って、より好適に装置の評価を行うことが可能となる。
【0023】
尚、複数表示される所定のパターンは、典型的には、互いに同一の形状とされるが、上述した輪郭を有してさえいれば、互いに異なる形状とされてもよい。但し、複数の所定のパターンを同一の形状とすることで、領域毎の配向乱れの比較評価を好適に行うことが可能である。
【0024】
本発明の電気光学装置の評価方法の他の態様では、前記表示工程において、前記所定のパターンは、少なくとも部分的に色調を変化させつつ移動される。
【0025】
この態様によれば、所定のパターンが、少なくとも部分的に色調(即ち、階調)を変化させつつ移動されるため、所定のパターンが通過した後に残る残像の大きさが色調に応じて変化する。よって、色調が変化することによる配向乱れの起き易さの変化を評価することが可能となる。
【0026】
実際の装置の動作時には、様々な色調が画素領域に表示されることを考えれば、上述した色調の変化に対応した評価を行えることは極めて有益であるといえる。
【0027】
上述した所定パターンの色調を変化させつつ移動させる態様では、前記表示工程において、前記所定のパターンは、少なくとも前記輪郭の色調を変化させつつ移動されるように構成してもよい。
【0028】
このように構成すれば、所定パターンにおける輪郭の色調が変化させられるため、色調が変化することで生ずる残像の変化を、より顕著なものとすることができる。よって、より容易に残像の変化を認識することが可能となり、好適に装置の評価が行える。また、色調を変化させる部分が輪郭だけで済むので、色調を変化させることに起因して処理が複雑化してしまうことを防止できる。
【0029】
尚、所定のパターンが比較的大きい輪郭を有する場合は、輪郭の一部における色調を変化させることによっても、上述した効果は相応に得られる。即ち、輪郭全ての色調を変化させなくとも構わない。
【0030】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0032】
先ず、本実施形態に係る電気光学装置の評価方法によって評価される電気光学装置の構成について、図1から3を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0033】
本実施形態に係る液晶装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、電気光学装置である液晶装置の全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
【0034】
図1及び図2において、本実施形態に係る評価方法によって評価される電気光学装置は、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、本発明の「電気光学物質」の一例である液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。尚、画像表示領域10aは、本発明の「画素領域」の一例である。
【0035】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0036】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0037】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0038】
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域には、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0039】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
【0040】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0041】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクタ用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0042】
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルタが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0043】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0044】
次に、上述した電気光学装置の画素部の電気的な構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0045】
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学装置の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0046】
TFT30のゲートには、走査線3aが電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学装置は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0047】
液晶層50(図2参照)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
【0048】
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21(図2参照)との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと並列してTFT30のドレインに電気的に接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量線300に電気的に接続されている。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカの低減といった表示特性の向上が可能となる。
【0049】
上述した電気光学装置は、例えばライトバルブとしてプロジェクタ等の電子機器に適用される他、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等にも適用することが可能である。
【0050】
次に、本実施形態に係る電気光学装置の評価方法について、図4から図8を参照して説明する。ここに図4は、本実施形態に係る電気光学表示装置の評価方法において用いられるパターンの一例を示す平面図であり、図5は、配向乱れによる残像の発生をパターンの移動と共に時系列で示す概念図である。また図6は、パターンを構成する画素の詳細を示す拡大平面図であり、図7は、比較例に係るパターンを示す平面図である。図8は、本実施形態に係る電気光学装置の評価方法の変形例を示す拡大平面図である。
【0051】
図4において、本実施形態に係る電気光学装置の評価方法では、上述した電気光学装置における画像表示領域10a上に、平行四辺形状のパターン100が複数表示される。複数のパターン100は、図に示すように、画像表示領域10a上における縦方向(即ち、図中のY方向)に並ぶように表示される。
【0052】
評価を行う際には、先ず複数のパターン100が、夫々画像表示領域10aの左端から右端に向かって移動するように(即ち、図中のX方向に移動するように)表示される。尚、複数のパターン100は、互いの相対的な位置関係を崩さないように移動する。言い換えれば、複数のパターン100は、互いに同じスピードで同じ方向に移動する。
【0053】
ここで、パターン100が移動した後には、配向乱れに起因する残像が残る場合がある。即ち、
配向膜16(図2参照)によって、所定の方向に揃うように配向されている液晶分子にずれが生じていることにより、意図した表示が行われず、表示不良が発生してしまう場合がある。
【0054】
図5において、例えば時刻t=1に、図に示すようなパターンが表示されていたとする。パターンをX方向に移動させるように表示する場合、時刻t=2においては、時刻t=1においてパターンが表示されていた画素に残像が残る。即ち、本来は何も表示されるべきではない画素に残像が表示される。同様に、続く時刻t=3においても、パターンがそれまで表示されていた画素に残像が残る。このように連続的に残像が表示されてしまうことで、パターンは尾を引いて移動するように見える。
【0055】
上述した残像は、実際の電気光学装置の動作時において、高品質な画像を表示させる観点からすれば、発生しない方が好ましい。しかし逆の観点からすれば、製造段階において残像の発生し易さを知ることにより、装置の性能を正確に評価することが可能となる。即ち、電気光学装置の製品としての評価を、より好適に行うことができる。具体的には、例えば検出された残像の大きさから残像の残り易さを判定することで、液晶層50(図2参照)における配向乱れが検出される。これにより、画像表示領域10aにおける液晶層50の配向不良の程度を、適切に評価することが可能となる。
【0056】
図6において、本実施形態に係る電気光学装置の評価方法では特に、表示されるパターン100は、図に示すような斜めの(即ち、図中のD1方向に傾いた)輪郭を有している。具体的には、パターン100は、本発明の「一の画素」の一例である画素101と互いに隣り合う画素であって、画素101におけるパターンの進行方向(即ち、X方向)に位置する第1の辺を共有する、本発明の「第1画素」の一例である画素102、及び画素101と互いに隣り合う画素であって、画素101における第1の辺に隣接する第2の辺を共有する、本発明の「第2画素」の一例である画素103からなる斜めの輪郭を有している。
【0057】
また、画素104を「一の画素」の一例として見た場合、「第1画素」は画素105となり、「第2画素」は画素102となる。パターン100は、典型的には、このように「第1画素」及び「第2画素」が連続するような輪郭を有する形状とされている。
【0058】
パターン100が上述したような輪郭を有することにより、パターン100が移動する際には、一の画素となる部分(即ち、画素101や画素104)に残像が発生し易くなる。即ち、パターン100の輪郭となる第1画素及び第2画素のいずれにも隣接している画素において、配向乱れによる残像が発生し易くなる。よって、画像表示領域10aにおける配向乱れの程度を容易に評価することが可能となる。
【0059】
尚、斜めの輪郭としては、図に示すような輪郭と90°で交わる方向のものも考えられるが、2つの方向のうち適切な一方を選択しなければ、上述した残像を発生し易くするという効果は得られない。しかしながら、本願発明者の研究によれば、パターン100における輪郭の方向は、当該電気光学装置における明視方向又は明視方向に寄与する他のパラメータに基づいて決定すればよいことが判明している。よって、装置の明視方向が分かっていれば、適切な輪郭を決定できる。即ち、適切なパターン100の形状を決定できる。
【0060】
図7において、仮に図に示すような円形パターン200を用いるとすると、円形パターン200の下半分は輪郭がD1に近い方向に傾いているが、円形パターン200の上半分は輪郭がD1とは逆のD2に近い方向に傾いている。このため、円形パターン200の下半分が通過する画素においては残像が発生し易くなるものの、円形パターン200の上半分が通過する画素においては残像が発生し易くならない。従って、円形パターン200を画像表示領域10aの左端から右端へ一度移動させただけでは、評価できない画素が生じてしまう。
【0061】
しかるに本実施形態では、図4に示すようなパターン100が用いられるため、パターン100を一度移動させれば、画像表示領域10aの全ての画素において残像が発生し易い状況を作り出せる。従って、電気光学装置の評価を極めて効率的に行うことが可能である。
【0062】
図8において、本実施形態に係る電気光学装置の評価方法では更に、パターン100の輪郭を構成する画素100pにおける色調を変化させつつ移動させる。このような表示を行えば、パターン100が通過した後に残る残像の大きさが色調に応じて変化する。よって、色調が変化することによる配向乱れの起き易さの変化を評価することが可能となる。尚、色調を変化させる部分は、上述した輪郭を構成する画素100pであることが望ましいが、他の部分の色調を変化させた場合であっても、上述した効果は相応に得られる。また、パターン100全体の色調を変化させるようにしてもよい。
【0063】
加えて、パターン100は、その大きさや移動速度を変化させることでも、残像の大きさが変化する。よって、パターン100の大きさや移動速度を、より検出し易い大きさの残像が表示されるように適宜設定することで、より好適に電気光学装置の配向乱れを評価することが可能となる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る電気光学装置の評価方法によれば、意図的に配向乱れが発生し易い状況を作り出すことができため、好適に電気光学装置の評価を行うことが可能である。
【0065】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置の評価方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】電気光学装置である液晶装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された各種素子、配線等の等価回路図である。
【図4】実施形態に係る電気光学表示装置の評価方法において用いられるパターンの一例を示す平面図である。
【図5】配向乱れによる残像の発生をパターンの移動と共に時系列で示す概念図である。
【図6】パターンを構成する画素の詳細を示す拡大平面図である。
【図7】比較例に係るパターンを示す平面図である。
【図8】実施形態に係る電気光学装置の評価方法の変形例を示す拡大平面図である。
【符号の説明】
【0067】
3a…走査線、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、20…対向基板、30…TFT、50…液晶層、100…パターン、200…円形パターン、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に電気光学物質が挟持されてなる電気光学装置の評価方法であって、
複数の画素からなる画素領域において、所定のパターンを一の方向に移動させるように表示するパターン表示工程と、
前記所定のパターンが移動した後に残る残像を検出する残像検出工程と、
前記残像に基づいて、前記電気光学物質の配向乱れを検出する配向乱れ検出工程と
を備え、
前記所定のパターンは、一の画素と互いに隣り合う画素であって、前記一の画素における前記一の方向に位置する第1の辺を共有する第1画素、及び前記一の画素と互いに隣り合う画素であって、前記一の画素における前記第1の辺に隣接する第2の辺を共有する第2画素からなる斜めの輪郭を有する
ことを特徴とする電気光学装置の評価方法。
【請求項2】
前記所定のパターンは、前記一の方向に移動させることで、前記輪郭が前記画素領域における全ての画素を通過する形状であることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の評価方法。
【請求項3】
前記所定のパターンは、前記画素領域において前記一の方向に交わる方向に並ぶように複数表示されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の評価方法。
【請求項4】
前記表示工程において、前記所定のパターンは、少なくとも部分的に色調を変化させつつ移動されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置の評価方法。
【請求項5】
前記表示工程において、前記所定のパターンは、少なくとも前記輪郭の色調を変化させつつ移動されることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−78945(P2010−78945A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247522(P2008−247522)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】