説明

電気加熱窓

少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライと、少なくとも一枚の中間層材料のプライと、フィルムに接着した少なくとも一つの電気伝導経路のグリッドと、窓を加熱するためにグリッドに電流を供給する電気接続手段とを備え、前記少なくとも一枚の中間層材料のプライ、グリッド及びフィルムを少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライ間に積層した電気加熱窓である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱窓、特にフィルムに取り付けた少なくとも一つの電気伝導経路のグリッドを備える電気加熱積層窓、その製造及び使用方法に関する。本発明はまた、電気加熱窓を組み込んだ車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気加熱窓は、寒冷及び/または湿潤な気象条件において窓の曇りまたは霜を取ることができるよう車両のフロントガラスまたはリアガラスのいずれかに通常使用される。車両のフロントガラスとして用いる窓に関して、電熱手段は細く(直径が30マイクロメートル未満)密集した(1mm〜3mmのワイヤー間隔)ワイヤーの配列として通常設けられる。かかる配列においてワイヤーは大抵は平行であるが、ワイヤー各々を通常正弦曲線、らせん、ジグザグまたはランダムパターンでの波形のようなうねりで設けて、車両の運転者が窓越しに物を見た際の眩しさ及び偏光作用を回避する。
【0003】
加熱機能は、欧州特許第0788294号公報に記載されたようにタングステン加熱素子を積層体内に組み込むか、または導電被膜の封入(例えば、国際公開第00/76930号公報に記載されたように内部ガラス表面または別個のプラスチック(PET)基板へのスパッタリング)により従来提供されていた。タングステンワイヤー製品には、特に車の主支柱に隣接したフロントガラスのセクションのような窓のセクションがタングステンワイヤーを含まない際に車両の運転者が気を散らし得るワイヤーの可視性に欠点があり、それゆえ相手先ブランド名製造企業の中には従来のワイヤー製品を嫌うところもある。被膜加熱製品は、フロントガラスの霜取りに十分な電力密度をもたらすために、通常導電被膜のシート抵抗(例えば、42ボルト)により標準の電圧12.0/13.0ボルトよりも高い電圧の供給を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0788294号公報
【特許文献2】国際公開第00/76930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その結果、既存のタングステンワイヤー加熱窓が示す可視性を改善する電気加熱窓を提供する必要性が存在する。また、法定の光透過率の要求を満たし、特定の電源(公称電圧12/13.0ボルト)に合うように微調整することができ、耐久性のある製品(性能保証)を提供し、車両内部の望ましくない加熱(太陽光制御特性を提供することにより)を減らし、除氷ワイパー、加熱カメラ窓及び通行料金センサーのような装置を簡単に組み込むことを可能にする電気加熱窓を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、
少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライと、
少なくとも一枚の中間層材料のプライと、
フィルムに取り付けた少なくとも一つの電気伝導経路のグリッドと、
窓を加熱するためにグリッドに電流を供給するための電気接続手段と
を備え、前記少なくとも一枚の中間層材料のプライ、グリッド及びフィルムを前記少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライ間で積層することを特徴とする電気加熱窓を提供する。
【0007】
本発明の文脈において、「グリッド」とは、例えば正方形、長方形、三角形、五角形及び/またはダイヤモンド形状の格子に基づいた少なくとも一つの十字交差したか、または平行な電気伝導経路の枠組みを意味することを理解すべきである。少なくとも一つの経路は、直線、曲線または正弦曲線のような任意適当な形状とすることができる。この配置は、グリッドが窓ガラス材料のプライと同延でより容易に機能し得るため有利である。既存のタングステンワイヤー加熱窓において、窓の形状は車の主支柱に隣接したフロントガラスのセクションにおけるように同一長さのタングステンワイヤーを窓全体にわたって組み込むのを可能にするようなものでない。このことは、種々の長さのワイヤーの抵抗率の差異によってもたらされる局所的な電力密度に影響を与える。これは、ホットスポットとして既知の非定常温度領域を創出する。一つ以上のホットスポットが窓に存在することは、二つの理由から非常に望ましくない;第一に、かかる窓を取り付けた車両の乗員が一つ以上のホットスポットの領域で窓に触れてけがを引き起こすリスクがあることであり;第二に、ホットスポットの領域で窓が局所的に層間剥離するリスクがあることである。これは、視界が悪くなるかまたは視界ゼロの窓の領域をもたらす。
【0008】
グリッドの使用は、ほぼ同等の長さの電流路を例えばフロントガラスの対向する端縁の電気接続手段の間にもたらすのを可能にする抵抗シートを効果的に形成するので、前記問題を解決する。
【0009】
グリッドは、正方形または長方形格子の枠組みであるのが好ましい。
【0010】
グリッドは、二枚の窓ガラス材料のプライ内でほぼ同延とすることができる。
【0011】
少なくとも一つの電気伝導経路は、銀、銅、金またはアルミニウムからなる群より通常選択した材料から製造することができる。一般に8×10−8未満の低い抵抗率の他の金属が、適切な可視性を維持しつつ0.1〜1.0オーム・スクエアの必須シート抵抗率を提供し得るので、適している場合がある。少なくとも一つの電気伝導路は銀であるのが好ましい。
【0012】
フィルムは、ポリマーフィルムとすることができる。該ポリマーフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、架橋ポリエチレン(PEX)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリエステル(PEs)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスルホン(PES)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、エチレン酢酸ビニル(EVA)及びスチレン無水マレイン酸のフィルムからなる群より選択することができる。ポリマーフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルムであるのが好ましい。
【0013】
フィルムは、200マイクロメートル未満、好ましくは100マイクロメートル未満、より好ましくは75マイクロメートル未満、なおより好ましくは50マイクロメートル未満、最も好ましくは30マイクロメートル未満の厚さを有することができる。フィルムが厚ければ、その分複雑な形状へと積層させる際にフィルムにしわができることが多くなるので、より薄いフィルムの方が有利である。
【0014】
中間層材料は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)及びその他のポリマー中間層からなる群より選択することができる。
【0015】
窓は、例えばフロントガラスについて少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%の光透過率を示すことができる。窓は、例えばボディガラスについて少なくとも75%の光透過率を示すことができる。
【0016】
窓は、7%未満、好ましくは6%未満、より好ましくは5%未満のヘイズを示すことができる。
【0017】
窓は、通常0.1〜1.0オーム・スクエアの抵抗率を示すことができる。これは、抵抗率を多くの車両に用いる12.0〜13.0ボルトの供給のような必要な電力密度(曇り取りまたは霜取り機能用)に合うように微調整ができるので、有利である。
【0018】
電気接続手段は、少なくとも二つのバスバーを備えることができる。少なくとも二つのバスバーは、少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライ間で積層することができる。
【0019】
電気接続手段は、該少なくとも二つのバスバーのうちの少なくとも一つに接続した電気コネクターをさらに備えることができる。
【0020】
グリッドを電源に接続するためには、優れた機械的及び電気的インターフェースを得る必要がある。これは、従来の銅バスバーを用いることにより達成することができる(既にワイヤー加熱積層体内で用いた)。バスバーの組み込みは、該バスバーを少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライのうちの一つに接着することにより達成することができる。
【0021】
バスバーの少なくとも一つは、ハンダで被覆することができる。バスバーをハンダで被覆すると、グリッドに良好な電気的接続を付与するので有利である。ハンダは、銀含有ハンダ(フラックスを含む)とすることができる。かかるハンダは、グリッドに良好な電気的インターフェースを付与する。積層作業時にハンダが流動してハンダ接合部を形成するように、ハンダは低融点(<140℃)を有することができる(安全なバスバーに関する欧州特許第1110431号公報を参照)。
【0022】
バスバーの少なくとも一つは、波形にするか、または隆起部分を有することができる。この配置は、グリッドとの優れた「圧」接点を付与するため有用である。
【0023】
バスバーの少なくとも一つを導電性接着剤で被覆することができる。かかるバスバーをグリッド及びフィルムに接着することができる。この配置は、良好な電気接触と、窓の組み立て中にバスバーをグリッド及びフィルム上の適所に保持するのに十分な結合強度とをもたらす。
【0024】
或いはまた、バスバーの少なくとも一つを銀で印刷したバスバーとすることができ、これを少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライのうちの一つに内部積層表面で組み込んで、組み立て中にフィルムに接着したグリッドとの機械的接触を与えることができる。
【0025】
フィルムに接着したグリッドは、銅及び/またはニッケルのような少なくとも一つの導電体の被覆をさらに含むことができる。かかる被覆は、窓の反射特性に起因する太陽光の制御特性を改善することができるので、有利な場合がある。少なくとも一つの波形バスバーを利用して、該少なくとも一つのバスバー上の隆起点が積層中に被覆を突き破ることを可能にすることができる。この配置は、グリッドと、少なくとも一つのバスバーとの間のインターフェースの品質を改善することができる。
【0026】
かかるグリッド上の被覆は、機械的(研磨を用いて)または化学的に除去することができる。被覆の除去により、グリッドと、少なくとも二つのバスバーとの間のインターフェースの品質を改善する。
【0027】
グリッドは、少なくとも一つのバスバーに隣接する領域で、少なくとも一つの電気伝導経路の表面積を増加させることができる。この配置は、グリッドと、少なくとも一つのバスバーとのインターフェースの品質を改善する。
【0028】
グリッドは、少なくとも一つのバスバーに隣接する領域で、少なくとも一つの電気伝導経路の厚さを増加させることができる。この文脈において、「厚さ」とは、少なくとも一つの電気伝導経路のポリマーフィルムの接続表面からの高さを意味することを理解すべきである。この配置は、ハンダ付け性を改善することにより、グリッドと、少なくとも一つのバスバーとのインターフェースの品質を改善する。少なくとも一つのバスバーに隣接しない領域における少なくとも一つの電気伝導経路の厚さは、2〜30マイクロメートル、好ましくは3〜20マイクロメートル、より好ましくは4〜15マイクロメートル、なおより好ましくは5〜13マイクロメートル、最も好ましくは6〜12マイクロメートルとすることができる。少なくとも一つのバスバーに隣接する領域における少なくとも一つの電気伝導経路の厚さは、少なくとも2マイクロメートル、好ましくは少なくとも10マイクロメートル、より好ましくは少なくとも20マイクロメートル、なおより好ましくは少なくとも30マイクロメートル、なおより好ましくは少なくとも40マイクロメートルとすることができる。
【0029】
グリッドが正方形または長方形格子の枠組みを備える場合、少なくとも一つの電気伝導経路は、第一の方向(「垂直」経路)または第二の方向(「水平」経路)のいずれかに配置することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、グリッドは水平経路よりも多く垂直経路を備えることができる。経路がより少ないグリッド配置は、窓の光透過率を高めるので、有利である。また、いくつかの水平経路を保持することは、万一垂直経路がいくつか損傷したときに、それらが代替の電流路として機能するので、有利である。
【0031】
隣接する垂直経路の間及び/または隣接する水平経路の間の間隔は、少なくとも100マイクロメートル、好ましくは少なくとも300マイクロメートル、より好ましくは少なくとも500マイクロメートル、なおより好ましくは少なくとも1000マイクロメートル、なおより好ましくは少なくとも1500マイクロメートル、最も好ましくは少なくとも2000マイクロメートルとすることができる。隣接する垂直経路の間及び/または隣接する水平経路の間の間隔が大きくなると、「開口領域」(即ち、電気伝導経路を含まない窓の断面部分)が増加し、より高い光透過率をもたらす。揺らぎ歪みのようなあらゆる光学的歪みを製品の加熱時に低減するためには、隣接する垂直経路の最小間隔を約2.0mm(2000マイクロメートル)とするのが好適である。
【0032】
少なくとも一つの電気伝導経路の幅は、50マイクロメートル未満、好ましくは25マイクロメートル未満、なおより好ましくは17マイクロメートル未満、なおより好ましくは15マイクロメートル未満、最も好ましくは13マイクロメートル未満とすることができる。光透過率を改善するためにかかる経路の幅をより小さくすることが有用である。
【0033】
窓は、別の二枚の窓ガラス材料のプライ間に積層した追加的なフィルムをさらに備えることができ、該追加的なフィルムは少なくとも部分的に光を反射することのできる被覆を含む。かかるフイルムは、相当な自動車の窓のような多くの窓が車両内部の望ましくない加熱を減らすための改善された太陽光制御特性を要求することから、有用である。前記少なくとも部分的に光を反射することのできる被覆は、金属とすることができる。
【0034】
或いはまた、少なくとも一つの電気伝導経路のグリッドに取り付けたフィルムは、反対表面に少なくとも部分的に光を反射することのできる被覆をさらに備えることができる。この配置は、窓の組み立ての複雑さを低減するので、有利である。或いは、またはさらに、少なくとも部分的に光を反射することのできる被覆を、グリッドに取り付けたフィルムの同一表面上に設けることができる。
【0035】
グリッドは、一つ以上の電気伝導経路に一つ以上の間隙を含むことができる。グリッドのセクションは、機械的研磨、レーザー除去及び/または化学的除去のような適切な方法により除去することができる。かかるグリッドデザインの変更は、例えば、除氷ワイパーや加熱カメラ窓に対し特注の分離した回路機能をもたらし、また通行料金センサー及び雨センサーのような特定の装置にとっての電磁妨害を防ぐのに有利な場合がある。或いはまた、除去プロセスの必要性を回避するために除去したセクションでグリッドを新品として製造することができる。窓は、さらに一つ以上の除氷ワイパー、加熱カメラ窓、通行料金センサー及び雨センサーを備えることができる。
【0036】
本発明の別の態様によれば、
少なくとも一枚の中間層材料のプライと、フィルムに接着した少なくとも一つの電気伝導経路のグリッドとを、少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライ間に積層させる工程と、
窓を加熱するために前記グリッドに電流を供給する電気接続手段を提供する工程と
を備えることを特徴とする電気加熱窓の製造方法を提供する。
【0037】
本発明の別の態様によれば、乗用車、バン、トラック、バス、普通客車、機関車、航空機、ボートまたは船のような車両への本発明に係る電気加熱窓の使用を提供する。
【0038】
本発明の別の態様によれば、本発明に係る電気加熱窓を少なくとも一つ組み込んだ車両を提供する。
【0039】
当然のことながら、本発明の一態様に適用できる任意の特徴を、任意の組み合わせで、任意の数だけ用いることができる。さらには、それらを、本発明の任意の別の態様で、任意の組み合わせで、任意の数だけ用いることもできる。これは、限定されるものではなく、本願の請求項内における他の請求項の従属請求項として使用されるいずれの請求項からの従属請求項を含む。
【0040】
本発明の実施形態を、一例として以下の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来技術によるワイヤーの無い領域を有するワイヤー加熱窓の概略平面図である。
【図2】図1に示すワイヤー加熱窓の側端領域の概略断面図である。
【図3】バスバーの分離部分を示す図1の窓の概略平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電気加熱窓の概略断面図である。
【図5】図4の窓の概略平面図である。
【図6】グリッドの寸法を強調するPETフィルムに接着した銀のグリッドの概略平面図である。
【図7】16マイクロメートルの経路幅を強調するPETフィルムに接着した銀のグリッドの概略平面図である。
【図8】12マイクロメートルの経路幅を強調するPETフィルムに接着した銀のグリッドの概略平面図である。
【図9】PETフィルムに接着した銀のグリッドの経路の概略断面図である。
【図10】未変更グリッド(左)と、特定の領域において経路の表面積を増加させたグリッド(右)の概略平面図である。
【図11】未変更経路(左)と、厚さを増加させた経路(右)を有するPETフィルムに接着したグリッドの経路の概略断面図である。
【図12】左側から未変更グリッド、水平経路数を低減させたグリッド、経路幅を低減させたグリッド、及び水平経路幅を低減させたグリッドの概略平面図である。
【図13】いくつかの経路に間隙を有するグリッドの概略平面図である。
【図14】加熱ワイパーにレスト域の回路をもたらすためにいくつかの経路に間隙を有するグリッドの概略平面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る車両の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、従来技術によるワイヤー加熱窓の概略平面図である。ワイヤー加熱窓1は、一般に台形状であり、細くて密集したワイヤーの配列2を備えるが、明確化のため一部のみを示す。該ワイヤーの配列2は、第一の電気接続手段またはバスバー3と、第二の電気接続手段またはバスバー4とにより囲まれる。配列2内のワイヤーは、第一及び第二の電気接続手段3、4間に延在する。これら電気接続手段3、4は、前記配列を従来技術で既知のプラグコネクターまたはその他のコネクターとし得るコネクター5,6,7及び8によって電源(図示せず)に接続する。点線9は、窓の周辺が不明瞭化バンドによって覆われる範囲を示す。不明瞭化バンドは、通常窓の内部表面上に配置した印刷焼成黒色セラミックインクにより得られる。不明瞭化バンドの機能は二つある:第一に、美的機能であり、窓の端縁を隠し、窓を車両に接合するのに用いた接着剤並びに窓の開口を囲むフレームを覆う働きをする;第二に、窓を車両に接合するのに用いた接着剤が太陽光の紫外線に晒されることによって劣化するのを防止する機能である。
【0043】
ワイヤーの無い領域10を斜線領域によって表し、本例では窓1の上端(車両に取り付けた場合)に隣接して位置する。バスバー3は、ワイヤーの無い領域がデータ信号をワイヤーの無い領域の近傍に位置した装置に窓を介して伝送できるように画定するように成形される。理想的には、ワイヤーの無い領域10を不明瞭化バンドによって隠す。さらに、窓1は、ミラーボスを取り付けるための領域11と、光センサーまたは湿度センサーのようなセンサーを取り付けるための領域12とを具える。
【0044】
図2は、図1に示したワイヤー加熱窓の側端領域の概略断面図を示す。窓1は、焼きなましたケイ酸塩フロートガラスの第一プライ13及び第二プライ14を備え、その間に延在し、積層したポリビニルブチラールの中間層材料15のプライを有する。不明瞭化バンド16を窓1の周辺に設けてバスバー3の一つを隠す。窓1の側部では、配列2中のワイヤーが窓1の端縁と平行である。
【0045】
図3は、バスバーの分離部分を示す図1の窓の概略平面図である。図3では明確化のためにバスバー3,4及び窓の一般的形状のみを示す。窓1の上端に沿って延び、ワイヤーの無い領域10に隣接するバスバー3は、いくつかの曲がり角または隅部でワイヤーの無い領域を画成するように成形される。この例において、窓1の上端に沿って延びるバスバー3は、ほぼ鏡面対称な線上で窓1の中央で垂直に位置した小さな途切れにより分離された二つの部分を有する。
【0046】
窓1の端部領域において窓1の上端に沿って延びるバスバー3と、該窓の下端に沿って延びるバスバー4との間隔(車両へ取り付けた際に主支柱に隣接するであろう)を、距離xで表す。ワイヤーの無い領域10に隣接した中央で、窓1の上端に沿って延びるバスバー3と、該窓の下端に沿って延びるバスバー4との間隔を、間隔yで表す。通常、窓1の中央にある間隔yは、主支柱に隣接した窓1の端部にある間隔xよりも10%大きい。これは、抵抗率の減少と、その結果としてより短いワイヤーに流れる電流の増加に起因して、窓の他の部分に比べて温度が上昇したワイヤーの無い領域と同じ幅の領域をもたらす。ワイヤーの無い領域は、最大で300mmの幅とすることができるので、このホットスポット領域もまた少なくとも300mmの幅とすることができる。
【0047】
図4は、本発明の一実施形態による電気加熱窓20の概略断面図を示す。この実施形態は、個々の経路の抵抗率の変動を防止する銀のグリッド21を利用することによりホットスポットの問題を解決し、ホットスポットの発生を最小限にする。かかる銀のグリッドは、電流が必ずしもバスバーに垂直に流れない導電シートとして有効に機能する。グリッドは、局所的なホットスポットの形成を防ぐように変更(研磨やレーザー除去等により小さなセクションを手作業で除去することにより)することができる。上述した従来技術による窓と同様に、窓20は一般に形状が台形(図示せず)であり、二つの対向した長い端部と、二つの対向した短かい端部とを有する。グリッド21をPETフィルム22に接着し、二つのスズメッキした銅バスバー23,24に接続する。グリッド21、PETフィルム22及びバスバー23,24を、二枚の透明ガラスのプライ25,26間にPVBの中間層27を用いて積層する。バスバー23,24を直接PVB中間層27に接着してグリッド21に接触させるか、または直接グリッド自体に接続(ハンダ付けまたは導電性接着剤により)することができる。
【0048】
図5は、図4に示した電気加熱窓20の概略平面図である。図5は、明確化のため一般的に台形状の窓20を銀のグリッド21の一部とともに示す。グリッド21の経路は、厚さが6〜12マイクロメートルであり、幅が約16マイクロメートルである。隣接する垂直経路の間及び/または隣接する水平経路の間の間隔は280マイクロメートルである。PETフィルム22は、厚さが100マイクロメートルである。バスバー23,24は、幅が3〜6mm及び厚さが0.03〜0.08mmであって、スズメッキされた表面はSn元素またはSn:Pbの比が60:40の合金を含む。バスバー23,24は、単一箔片とすることができるか、またはグリッド21の経路間に部分的に挟んで重ね合わせた複数枚の箔片で形成することができる。通常、PVB中間層材料のプライは、厚さが0.76mm(それぞれ厚さが0.38mmのものが2部)であり、ガラスプライは、厚さが1.2〜3.0mmの範囲である。
【0049】
本発明は焼きなましたケイ酸塩フロートガラスに関して説明しているが、他のタイプのガラス若しくは、ポリカーボネートまたはプラスチックのような窓ガラス材料をかかるガラスのプライに代えて用いることができる。
【0050】
バスバー23,24は、グリッド21を電源(図示せず)に当業界で既知のプラグコネクターまたはその他のコネクターとし得るコネクターによって接続する。不明瞭化バンドを、窓の内部表面上に設けた印刷焼成した黒色セラミックインクによって得ることができる。
【0051】
良好な霜取り性能に関しては、窓全体にわたって500−600W/mの均一な電力密度を確保することが一般に望ましい。曇り取りに関しては、低めの電力密度(400W/m)が許容し得る。ワイパーブレード領域の迅速な霜取りに関しては、高めの電力密度(2000W/m)を用いることができる。
【0052】
図6は、グリッドの寸法を強調するPETフィルムに接着した銀のグリッドの概略平面図を示す。この特定のグリッドにおいて、隣接する垂直経路の間及び隣接する水平経路の間の間隔は、280マイクロメートルである。
【0053】
図7及び図8はそれぞれ、PETフィルムに接着した銀のグリッドの概略平面図を示し、グリッドの経路幅はそれぞれ16マイクロメートル及び12マイクロメートルである。
【0054】
図9は、PETフィルム22に接着した銀のグリッド21の経路の断面の概略図を示す。ここで見られるように、経路21の断面は対称でなく、一般に経路の断面形状は電流を経路に流すのを可能にする任意適当な形状とすることができる。
【0055】
図10は、未変更グリッド21(左)と、特定の領域28に経路の表面積を増加させたグリッド21(右)との概略平面図を示す。上述したように、バスバーに隣接する領域に経路の表面積を増加させたグリッド21は、グリッドとバスバーとの間の電気的及び機械的インターフェースを改善すること。
【0056】
図11は、未変更経路29(左)と、いくつかの厚さを増加させた経路30(右)を有するPETフィルム22に接着したグリッドの経路の概略断面図を示す。上述したように、バスバーインターフェース領域で経路の厚さ(PETの表面からの高さ)を増加させることは、グリッドとバスバーとのインターフェースを改善し、またハンダ付け性を改善する。
【0057】
図12は、左側から、未変更グリッド31、水平経路の数を低減させたグリッド32、経路幅を低減させたグリッド33、及び水平経路幅を低減させたグリッド34の概略平面図を示す。上述したように、個々の経路の数及び/または経路幅を低減させることは、窓の光透過率を改善するため、有用である。
【0058】
図13は、いくつかの経路に間隙35を有するグリッド21の概略平面図を示し、これは加熱カメラ窓、通行料金センサー等に分離した回路機能をもたらすのでいくつかの実施形態において有利である。同様に、図14は加熱ワイパーにレスト域の回路37をもたらすためにいくつかの経路に間隙36を有するグリッド21の概略平面図を示す。
【0059】
図15は、本発明の一実施形態に係る車両38の斜視図を示す。車両38は、本発明に係る電気加熱窓39を組み込んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライと、
少なくとも一枚の中間層材料のプライと、
フィルムに接着した少なくとも一つの電気伝導経路のグリッドと、
窓を加熱するために該グリッドに電流を供給する電気接続手段とを備え、
前記少なくとも一枚の中間層材料のプライ、グリッド及びフィルムを少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライ間に積層することを特徴とする電気加熱窓。
【請求項2】
前記グリッドが、正方形または長方形の格子の枠組みである請求項1に記載の電気加熱窓。
【請求項3】
前記少なくとも一つの電気伝導経路を銀、銅、金及びアルミニウムからなる群より選択した材料から製造し得る請求項1または2に記載の電気加熱窓。
【請求項4】
前記フィルムは、厚さが50マイクロメートル未満である前記請求項のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項5】
前記窓が少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%の光透過率を示す前記請求項のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項6】
前記電気接続手段が少なくとも二つのバスバーを備える前記請求項のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項7】
前記バスバーの少なくとも一つが波形であるか、または隆起部分を有する請求項6に記載の電気加熱窓。
【請求項8】
前記バスバーの少なくとも一つを導電性接着剤で被覆する請求項6または7に記載の電気加熱窓。
【請求項9】
前記グリッドが、銅及び/またはニッケルのような少なくとも一つの導電体の被覆をさらに備える前記請求項のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項10】
前記グリッドが、少なくとも一つのバスバーに隣接する領域で少なくとも一つの電気伝導経路の表面積を増加させた請求項6〜9のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項11】
前記グリッドが、少なくとも一つのバスバーに隣接する領域で少なくとも一つの電気伝導経路の厚さを増加させた請求項6〜10のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項12】
前記少なくとも一つのバスバーに隣接しない領域における少なくとも一つの電気伝導経路の厚さが5〜13マイクロメートルである請求項6〜11のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項13】
前記少なくとも一つのバスバーに隣接する領域における少なくとも一つの電気伝導経路の厚さが少なくとも20マイクロメートルである請求項6〜12のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項14】
前記少なくとも一つの電気伝導経路を第一の方向(「垂直」経路)または第二の方向(「水平」経路)のいずれかに配置する請求項2〜13のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項15】
前記グリッドが、水平経路よりも多い垂直経路を備える請求項14に記載の電気加熱窓。
【請求項16】
前記隣接する垂直経路の間及び/または隣接する水平経路の間の間隔が少なくとも2000マイクロメートルである請求項14または15に記載の電気加熱窓。
【請求項17】
前記少なくとも一つの電気伝導経路の幅が17マイクロメートル未満である前記請求項のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項18】
前記窓が、少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライ間に積層された追加的なフィルムをさらに備え、該追加的なフィルムが少なくとも部分的に光を反射することのできる被覆を備える前記請求項のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項19】
前記少なくとも一つの電気伝導経路のグリッドに接着したフィルムが、少なくとも部分的に光を反射することのできる被覆をさらに備える前記請求項のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項20】
前記グリッドが、一つ以上の電気伝導経路に一つ以上の間隙を備える前記請求項のいずれか一項に記載の電気加熱窓。
【請求項21】
少なくとも一枚の中間層材料のプライ及びフィルムに接着した少なくとも一つの電気伝導経路のグリッドを少なくとも二枚の窓ガラス材料のプライ間に積層させる工程と、
窓を加熱するために該グリッドに電流を供給する電気接続手段を提供する工程と
を備えることを特徴とする電気加熱窓の製造方法。
【請求項22】
乗用車、バン、トラック、バス、普通客車、機関車、航空機、ボートまたは船のような車両への請求項1〜20のいずれか一項に記載の電気加熱窓の使用。
【請求項23】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の電気加熱窓を少なくとも一つ組み込んだ車両。
【請求項24】
実質的に本明細書に記載され、図4〜図15を参照した電気加熱窓。
【請求項25】
実質的に本明細書に記載され、図4〜図15を参照した電気加熱窓の製造方法。
【請求項26】
実質的に本明細書に記載され、図4〜図15を参照した電気加熱窓の使用。
【請求項27】
実質的に本明細書に記載され、図4〜図15を参照した電気加熱窓を少なくとも一つ組み込んだ車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−503424(P2013−503424A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526119(P2012−526119)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051213
【国際公開番号】WO2011/023974
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(591229107)ピルキントン グループ リミテッド (82)
【Fターム(参考)】