説明

電気加熱触媒装置及びその製造方法

【課題】内燃機関の排気ガス浄化のための電気加熱触媒装置の金属触媒担体の製造において、加熱回数を減らし作業の容易化をする。
【解決手段】金属触媒担体4は少なくとも波板2用又は平板3用ステンレス箔材表面に予めアルミニウム層を形成させておき、波板と平板を中心電極5を芯にして巻回後に酸化雰囲気中において加熱し、アルミニウムの層を酸化アルミナに変性させると共に、波板と平板を酸化接合して、電気的絶縁層を形成すると共に、接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス浄化のための触媒装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車では駆動用内燃機関から排出される排気ガスを浄化するため、アルミニウム含有ステンレス材からなる箔を波板と平板に加工したものを重ね合わせて、巻回してハニカム状に形成して、波板と平板相互を接合した金属触媒担体に触媒を担持させたものを、排気ガス通路に配置している。浄化作用を起こさせるためには金属触媒担体に担持された触媒が活性化する温度(300℃〜400℃)である必要がある。そこで内燃機関の始動直後から触媒が活性化するように、金属触媒担体に通電し金属触媒担体自身の発熱作用により触媒活性化温度まで短時間で達するようにした電気加熱式の触媒装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−179157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通電して発熱させるためには途中でショートせずに通電回路が確立されていることが必要となる。金属触媒担体は導電性を有するステンレス材からなるので、波板と平板間を電気的に絶縁する必要がある。そこで、箔材のときに大気雰囲気の炉中で過熱し酸化皮膜等を形成し、波板および平板に絶縁皮膜を形成して置いてこれらを、重ねて巻回し、ロウ材やセラミック接着剤等により波板と平板間を接合固定している。従って、担体は酸化皮膜形成時と接合時に加熱炉において二度加熱しなければならない問題がある。加熱、冷却を繰り返すためそれぞれの工程にて時間を要すると共の、炉からの出し入れなど多工数を要する
【0005】
本発明は、このような従来技術の技術的課題に鑑みてなされたもので、金属触媒担体12の加熱回数を減らし製造作業の短縮と容易化をすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ステンレス箔からなる波板と平板を重ねて中心電極を中心にして巻回することにより形成した金属触媒担体を、外周に電極を取り付けた外筒内に圧入して前記外筒と前記金属触媒担体および前記中心電極を電気的に接続した電気加熱触媒装置において、前記金属触媒担体は少なくとも波板用又は平板用ステンレス箔材表面に予めアルミニウム層を形成させて、両者を重ねて巻回後に酸化雰囲気中において加熱することにより前記アルミニウム層を酸化アルミナに変性させると共に、前記波板と前記平板との接触部を酸化接合して形成するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ステンレス箔の波板と平板と中心電極および外筒電極の間の電気的接続と波板と平板の絶縁層および波板と平板の接触部を接合する事を一度の加熱により形成することができるので、製造作業が短時間で容易となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の電気加熱触媒装置の全体を示す斜視図
【図2】第1の実施形態の金属触媒担体の構造を示す部分断面図
【図3】第1の実形態の中心電極と波板と平板の接合部を示す斜視図
【図4】第1の実施形態の実施例の中心電極と接合する波板と平板を示す説明図で ある。
【図5】第2の実施形態のラスメタル状箔材の平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態に係わる電気加熱触媒装置1ついて図1乃至図4に基づいて説明する。
【0010】
図1は電気加熱触媒装置1の全体を示している。ステンレス箔からなる波板2と平板3を重ねて、中心電極5を芯として巻回した金属触媒担体12とした後に、ステンレス板を円筒形に成形し両端部を突き合わせて溶接したものに外筒電極6を取り付けた外筒4内に圧入している。
【0011】
外筒4の軸方向前後には図示しない排気ガスを導くパイプが接続される。また、波板2と平板3の表面には、排気ガス浄化触媒がコーティングされており、パイプによって上流の内燃機関から排出された排気ガスが導かれて、排気ガス浄化触媒の働きにより浄化されて大気中に放出される。しかし、排気ガス浄化触媒は、活性温度以下では浄化性能が十分に発揮されないため、内燃機関始動後は速やかに活性化温度(300℃〜400℃)に達するように、始動前または始動直後に中心電極5と外筒電極6間に通電し、金属触媒担体12による発熱作用を利用している。
【0012】
通電し発熱させるためには、金属触媒担体1の波板2と平板3の間を電気的に絶縁して通電経路を確保したおく必要がある。図2に示すように本件電気加熱触媒装置1は、平板3となるステンレス箔材と波板2となるステンレス箔材の両面にアルミニウムをあらかじめ蒸着工程によりアルミニウム蒸着層7を形成している。最終の絶縁層が薄くても良い場合は平板3となるステンレス箔材のみにアルミニウム蒸着層7を設けて置けば良い。
【0013】
図3に示すように、中心電極5にはスリット8が設けられており、波板2と平板3が両者の間にロウ材10を挟んだ状態で挿入されている。この中心電極5のスリット8に挿入されている部分のアルミニウム蒸着層7は剥がされた剥離部9となっている。電気的絶縁層が形成されないようにしている。
【0014】
更に、図4に示すように、ロウ材10が熔融して、波板2と平板3および中心電極5との電気的接続が同時に行われるように穴11が設けられている。
【0015】
最外周の外筒電極と接する部分もアルミニウム蒸着層7が剥がされロウ材がスポット溶接で取り付けられている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0016】
最初に、波板2と平板3となるステンレス箔には予めアルミニウムを蒸着によりコーティングしておく。
【0017】
次に、ロール状に巻かれたステンレス箔材を図示しない波板製造装置によりステンレス箔材を波状に成形する。成形された波板2と平板3の巻き始めとなる部分のアルミニウム蒸着層を剥がすと共に箔状のロウ材10を挟んで重ねると共にプレス機により穴11を打ち抜く。そして、波板2と平板3およびロウ材10の三者を重ねた状態で中心電極5のスリットに挿入すると共に、中心電極5を芯として必要回転させることで中心電極5の周りに波板2と平板3により排気ガス通路を設けた金属触媒担体12を造る。巻き回数を制御することにより必要な直径の金属触媒担体12が造られる。
【0018】
最外周となる波板2と平板3の最終端部も前記巻き始め部と同様に蒸着層を剥がしロール材から切断すると共にロウ材と一緒にスポット溶接等で固定する。ロウ材を巻回して外筒電極と電気的通路を形成するようにしても良い。
【0019】
その後、金属触媒担体12はステンレス板を円形に成形し両端部を突き合わせて溶接した外筒4の外筒電極6の位置に一致するようにして圧入する。
【0020】
外筒4に圧入されて、波板2と平板3の接触部に加圧力が掛かった金属触媒担体12を酸化雰囲気の炉中においてウイスカー生成温度(700℃〜900℃)以上で保持時間30分程度の加熱処理を行う。この加熱処理により、雰囲気中の酸素がアルミニウムに三次元的に拡散侵入する。波板2と平板3の表面にコーティングされたアルミニウムは絶縁破壊電圧10KV/mm〜15KV/mmの高電気絶縁性を有する酸化アルミナ(Al)へと変性すると共に、蒸着層の剥がされた部分以外の両板の接触点および外筒4との接触点において酸化接合が行われる。これにより、波板2と平板3の接触点は絶縁皮膜の形成と同時に波板2と平板3の接合が行われて金属触媒担体12が強固なものになる。
【0021】
この加熱処理により、中心電極5のスリット8に挿入されたロウ材10と金属触媒担体12外周に置かれたロウ材がそれぞれの場所で溶融して、波板2と平板3と中心電極5および外筒電極4との電気的接続が同時に行われる。特に中心電極5のスリット8に挿入された波板2と平板3には穴が設けられているため、溶融したロウ材は毛細管現象により、波板2と平板3の接合部から中心電極5とそれぞれの板との接触している面に広がり接合が行われる。このようにして、一度の加熱処理により、電気加熱触媒装置1が作られる。製造作業が容易となるという効果がある。
【0022】
外筒電極6との電気的接続はこの加熱処理とは別に行うことも出来る。
【0023】
その後に、外筒4内の金属触媒担体12の波板2と平板3の表面に排気浄化触媒のコーティングが行われる。加熱処理により、それぞれの板の表面に髭状の凸、いわゆるウイスカーが発生しているため、排気浄化触媒の強固なコーティング層を作ることが出来る。
【0024】
次に、第2の実施例を図5により説明する。本実施例は、波板と平板のステンレス箔材の形状が異なっている他は第1の実施例と同じ処理を行う。但し、第2実施例においては、ステンレス箔材へのアルミニウムの蒸着処理を金属触媒担体の巻回組み立て後に行うことも可能である。
【0025】
第2の実施例のステンレス箔材は、箔材に不連続にスリットを切ると共に、箔材の長手方向に力を加えて伸ばす、所謂ラス加工を行う。これにより、ステンレス箔材は網目状に拡げられ成形される。
【0026】
そして、蒸着すべき面積も少なくて済むとともに、中心電極から外筒電極までの通路の電気的抵抗地が増大するため、同電流で発熱量を大きくする事が出来る。その他、使用材料が少なくなるため、装置全体を軽量化することが出来る。また、排気ガスを流通させるとき、流れを乱す作用があるため、排気浄化触媒と排気ガスの接触が促進されて、浄化効率を高めることが可能となる。空間が平板状のステンレス箔材より多いため、巻回後にアルミニウム層を蒸着する事も可能となる。
【0027】
このようにして作られた電気加熱触媒装置1の外筒4に排気ガスを金属触媒担体12に平均的に通過させるため図示しないディフューザを取り付け、図示しない排気通路の途中に配置することで、通電により内燃機関の始動直後から排気浄化触媒が活性温度に達して浄化作用が開始される。
【符号の説明】
【0028】
1 電気加熱触媒装置
2 波板
3 平板
4 外筒
5 中心電極
6 外筒電極
7 アルミニウム層
8 スリット
9 剥離部
10 ロウ材
11 穴
12 金属触媒担体
13 ラスメタル状箔材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス箔の波板と平板を重ねて中心電極を中心にして巻回することにより形成した金属触媒担体を、外周に外筒電極を取り付けた外筒内に圧入して前記外筒電極と前記金属触媒担体および前記中心電極を電気的に接続した電気加熱触媒装置において、前記金属触媒担体は少なくとも波板用又は平板用ステンレス箔材表面に予めアルミニウム層を形成させて、両者を重ねて巻回後に酸化雰囲気中において加熱することにより前記アルミニウム層を酸化アルミナに変性させると共に、前記波板と前記平板との接触部を酸化接合することを特徴とする電気加熱触媒装置。
【請求項2】
前記金属触媒担体の波板および平板がラス加工を行った箔材からなる請求項1の電気加熱触媒装置。
【請求項3】
前記アルミニウム層が、蒸着工程により形成されている請求項1ないし請求項2の電気加熱触媒装置
【請求項4】
金属触媒担体の中心電極との接合点および外周電極との接合点のアルミニウム層を剥離し、接合点にロウ材を設けてなる請求項1ないし請求項3の電気加熱触媒装置。
【請求項5】
ステンレス箔の波板と平板を重ねて中心電極を中心にして巻回することにより形成した金属触媒担体を、外周に電極を取り付けた外筒内に圧入して前記外筒と前記金属触媒担体および前記中心電極を電気的に接続した電気加熱触媒装置の製造方法において、前記金属触媒担体は少なくとも波板用又は平板用ステンレス箔材表面に予めアルミニウム層を形成させて、両者を重ねて巻回後に酸化雰囲気中において加熱することにより前記アルミニウム層を酸化アルミナに変性させると共に、前記波板と前記平板との接触部を酸化接合することを特徴とする電気加熱触媒装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−147855(P2011−147855A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9566(P2010−9566)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】