説明

電気化学電池用の電極、その製造方法及びそれを利用した電気化学電池

【課題】電気化学電池用の電極、その製造方法及びそれを利用した電気化学電池を提供する。
【解決手段】集電体の表面上にコーティングされた電極活物質の上層部の気孔率が下層部の気孔率より高いことを特徴とする電気化学電池用の電極である。これにより、気孔率が調節された電極活物質を含み、特に、圧延後にも電極内部と電極表面との間の気孔率の差がないか、またはむしろ表面部分で更に高い気孔率が得られ、電解液に対する含浸性が改善され、高率充放電でも容量減少が相対的に少ないため、その他の充放電特性を向上させうる。また、このような電極を備える電池は、充放電特性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気孔率を調節した電気化学電池用の電極及びそれを利用した電気化学電池に係り、更に詳細には、圧延時に発生する電極活物質の気孔率の不均衡を解消して、充放電特性を改善した電気化学電池用の電極及びそれを利用した電気化学電池に関する。
【背景技術】
【0002】
2次電池として代表される電気化学電池は、最近多くの携帯用電子製品等に使用されており、その需要が益々増えている。しかし、各種携帯用の機器が小型化、軽量化及び高性能化されるにつれ、電気化学電池の高容量化が重要な問題となった。
【0003】
電池の高容量化のためには、本質的な容量の大きい電極材料を使用したり、機械的な方法で電極の密度を高める方法などを使用する。
【0004】
電気容量の大きい材料としては、例えば、リチウムのような金属を挙げうる。しかし、リチウムなどの場合には、充放電を繰り返すほど金属表面で枝状リチウムが成長し、これにより電極の短絡などの問題が発生して安全性が低下する。これに対し、炭素系の材料を使用する場合には、副反応などの問題がないため安全であり、粉末形態を成形して使用することにより多様な形態に製造できるという長所はあるが、電気容量が少ないため、これを改善するために圧延などにより電極を圧縮して、その密度を上げて使用することが一般的である。
【0005】
しかし、圧延などにより電極を圧縮させる場合、電極密度は高まるが、体積の減少により電極の気孔率が減少し、電解液の含浸特性が悪くなる。このような場合、電解液が電極内部で良好に侵透できずに、電極との接触性も低下するため、電解液との実質的な接触面積が相対的に減る。したがって、イオン伝達が円滑でなくなるため、十分な電池容量が得られなくなり、高速充放電時に性能も低下する等の問題が発生する。
【0006】
このような電極の低下した含浸特性を解決するための従来の技術としては、次のようなものがある。
【0007】
特許文献1は、負極の表面にプラズマ処理を施すか、または湿潤剤を吸着させて電解液の含浸性を向上させたものであって、プラズマ処理を施すことにより電極表面を粗くしたり、湿潤剤を吸着させて電極と電解液との界面張力を減少させて含浸性を改善させたものである。
【0008】
特許文献2は、電解液に非イオン系の界面活性剤を添加して電解液の含浸性を向上させたものであって、一種の湿潤剤の役割を行う非イオン系の界面活性剤を電極にまず吸着させずに、電解液に添加した点が異なるが、基本原理は前記特許と同じである。
【0009】
特許文献3は、電極が作動時に温度上昇により電極材料が膨脹すれば、電解液が足りなくなる現象が発生するため、電極製造時に高温の電解液及び電極材料を使用して組立てて、このような問題を解決し、電解液の含浸性も改善させたものである。
【0010】
前記従来技術は、電極の表面を改質したり、温度を変化させて含浸性を改善しようとするものであって、それなりに効果があるが、圧延などにより気孔率自体が低下して、電解液と接触可能な表面自体が減る場合には、特別な対策がないという短所がある。
【0011】
特に、圧延時には電極表面部分に加えられる圧力が最も大きくなり、電極の内部から表面に近づくほど気孔率が低下して、密度が高まる。したがって、電極の内部には一定レベルの気孔率が確保されても、電極表面の気孔率が非常に低くて、電解液が電極の内部に侵透できないという問題が発生する。したがって、圧延後に電極表面部分でも一定レベルの気孔率を確保できる方法が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−060877号公報
【特許文献2】特開平8−162155号公報
【特許文献3】特開平11−086849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が達成しようとする技術的課題は、気孔率を調節した電気化学電池用の電極を提供するところにある。
【0014】
本発明が達成しようとする他の技術的課題は、前記電気化学電池用の電極を利用した電池を提供するところにある。
【0015】
本発明が達成しようとする更に他の技術的課題は、前記電気化学電池用の電極の製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は前記技術的課題を達成するために、集電体の表面上にコーティングされた電極活物質の上層部気孔率が下層部気孔率より高いことを特徴とする電気化学電池用の電極を提供する。
【0017】
本発明に係る一実施形態によれば、前記気孔率は、電解液と対向する表面部分で最も高い値を有することが好ましい。
【0018】
本発明に係る一実施形態によれば、前記気孔率は、電解液と接触する時間が長くなるにつれて更に向上することが好ましい。
【0019】
本発明に係る一実施形態によれば、前記電極活物質は、気孔形成物質を含む活物質の焼成物であることが好ましい。
【0020】
本発明は、前記他の技術的課題を達成するために、前記電気化学電池用の電極を利用した電気化学電池を提供する。
【0021】
本発明は、前記更に他の技術的課題を達成するために、電極活物質を集電体の表面上にコーティングする工程と、前記コーティングされた集電体の表面上に気孔形成物質及び電極活物質の混合物をコーティングして電極を製造する工程と、前記コーティングされた電極を圧延する工程と、前記圧延された電極を焼成する(sintering)工程と、を含む電気化学電池用の電極製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電気化学電池用の電極は、気孔率が調節された電極活物質を含み、特に、圧延後にも電極内部と電極表面との間の気孔率の差がないか、またはむしろ表面部分で更に高い気孔率が得られて、電解液に対する含浸性が改善され、高率充放電でも容量減少が相対的に少ないため、その他の充放電特性を向上させうる。また、このような電極を含む電池は、充放電特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】圧延されたコバルトオキシド電極の断面のEDS写真である。
【図2】気孔形成物質をコーティングした後の圧延された炭素系の負極電極のSEM写真である。
【図3】気孔形成物質を除去した後の圧延された炭素系の負極電極のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付された図面を参照して、本発明を更に詳細に説明する。
【0025】
本発明に係る電気化学電池用の電極は、気孔率が調節された電極活物質を含み、通常の電極で、電極活物質の気孔率が圧延により表面の近くで大きく低下して、電解液に対して含浸性が低調したこととは違って、圧延後にも一定の気孔率を確保できるため、充放電特性を改善することが可能となる。
【0026】
一般的に電極製造時に電極のエネルギー密度を向上させるために、圧延などにより体積を減少させる。この場合、集電体の表面上にコーティングされていた活物質層は、その厚さが半分以下に薄くなり、この場合、集電体の方向に最も遠く移動した活物質が相対的に最も多くの圧力を受け、密度も最も大きくなり、気孔率も最も低くなる。図1は、2次電池の正極として使用される活物質であるコバルトオキシドを導電剤及びバインダーと混合して集電体上にコーティングした後、これを圧延した電極の断面を示すEDS写真である。写真で明るく示される部分が活物質である酸化コバルトである。写真に示すように、下側の集電体から表面側に上がるほど、活物質が更に稠密に配置されたことが分かり、これから気孔率が更に低下したことを予想できる。したがって、集電体の近くで気孔率が最も高く、表面の付近で気孔率が最も低くなり、このようなパターンは、大部分の圧延された電極で表れる傾向である。
【0027】
これと異なり、本発明の電気化学電池用の電極では、集電体の表面上にコーティングされた電極活物質の上層部の気孔率が下層部の気孔率より高いことが好ましい。しかし、上層部の気孔率が下層部の気孔率と同等のレベルである場合も可能である。すなわち、上層部の気孔率が下層部の気孔率より低い従来電極と異なる気孔率パターンを有する電極であれば可能である。このような場合、集電体からの距離の近い下層部の気孔率より距離の遠い上層部の気孔率が更に高いため、電解液とまず接触する上層部の電解液に対する含浸性が改善されて、電解液の電極内部への浸透が容易であり、電極全体の含浸性が改善される。
【0028】
本発明の電極は、あらゆる種類の電気化学電池用の電極に使用されうるが、好ましくは、リチウム電池用の正極または負極が好ましく、炭素系の負極が特に好ましい。金属材料は、電解液に対する含浸性に優れており、特別な問題とはならないが、炭素系の材料の場合には、電解液に対する含浸性が相対的に悪く、特に圧延などで密度が向上すれば、含浸性が更に低下するためである。炭素系の材料としては、特別に限定されず、当業界で使用される黒鉛などのあらゆる材料を含む。
【0029】
前記電極活物質の気孔率は、電解液と対向する表面部分で最も高い値を有することが好ましい。電解液と対向する表面部分で気孔率が最も低いことが従来の圧延された電極の問題点であり、このような表面で低い気孔率は、電解液を介した集電体の近くに存在する電極活物質への電子またはイオンの移動を最初から制限する結果をもたらし、電池と電解液とが接触する実質的な面積を大きく減らして電池の性能を低下させる。したがって、電解液と対向する表面部分の気孔率が最も高い場合、前記問題点を解消して全体的な電極の含浸性が改善される。
【0030】
前記電極活物質の気孔率は、電解液と接触する時間が長くなることにつれ、更に向上することが好ましい。前記電極活物質が電解液に溶解される気孔形成物質を含んでおり、電池が完成されて電解液と接触された後にも、前記気孔形成物質が電解液に溶解されることにより、気孔が追加的に形成されて気孔率が更に向上することが好ましい。
【0031】
前記電極活物質は、気孔形成物質を含む活物質の焼成物であることが好ましい。圧延された電極活物質内に含まれた気孔形成物質を焼成により熱分解させて除去することにより、圧延された電極活物質内に気孔を新たに形成して、圧延による気孔率の不均衡を解消できる。前記気孔形成物質の粒径分布度などによって、焼成により形成される気孔のサイズ及び気孔率の分布を調節できる。
【0032】
前記気孔形成物質は、熱分解性物質、電解液に溶解される物質またはそれらの混合物などであることが好ましいが、これに限定されず、気孔を形成できるその他のあらゆる種類の物質が可能である。図2は、電極活物質の表面に気孔形成物質を追加的にコーティングした後、圧延した電極表面のSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。前記電極を所定温度で焼成させる場合、気孔形成物質が分解されて除去されて、気孔率が向上する。図3は、前記電極を焼成させた後の電極表面のSEM写真であって、向上した気孔率を示す。
【0033】
このような気孔形成物質が熱分解性である場合には、熱により気体に分解されて揮発され、その位置に気孔が形成され、電解液に溶解される気孔形成物質は熱によっては変化せずに、電解質と接触した後に気孔を形成する。それらが混合される場合には、その一部は熱により分解されて気孔を形成し、このように形成された気孔に電解液が浸透すれば、他の一部が電解液に溶解されて追加的に気孔を形成する。
【0034】
前記熱分解性の気孔形成物質として使用できる化合物は、例えば、炭酸アンモニウム、二炭酸アンモニウム及びシュウ酸アンモニウムなどを挙げうる。
【0035】
前記電解液に溶解される気孔形成物質として使用されうる化合物は、リチウム塩などの非水電解質に対する溶解性に優れた塩が好ましく、更に具体的には、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化燐酸リチウム(LiPF)及び三フッ化メタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)などを挙げうる。
【0036】
前記気孔形成物質の含量は、電極活物質の全体重量に対して0.1ないし10重量%であることが好ましい。10重量%を超える場合には、電極の密度を低下させるという問題があり、0.1重量%未満である場合には、気孔率の調節効果が表れないという問題がある。
【0037】
本発明の電気化学電池は、前記の電気化学電池用の電極を備えて製造されることを特徴とする。本発明の電気化学電池は、特定形態の電池に限定されないが、リチウム電池が好ましく、例えば、次の通りに製造できる。
【0038】
まず、正極活物質、導電材、結合材及び溶媒を混合して正極活物質組成物を準備する。前記正極活物質の組成物を金属集電体上に直接コーティング及び乾燥して正極板を準備する。前記正極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを金属集電体上にラミネーションして正極板を製造することも可能である。
【0039】
前記正極活物質としては、リチウム含有金属酸化物であって、当業界で通常的に使用されるものなら何れか使用可能であり、例えば、LiCoO、LiMn2x、LiNi1−xMn2x(x=1,2)、Ni1−x−yCoMn(0≦x≦0.5,0≦y≦0.5)などを挙げ、更に具体的には、LiMn、LiCoO、LiNiO、LiFeO、V、TiS及びMoSなどのリチウムの酸化還元が可能な化合物である。
【0040】
導電材としては、カーボンブラックを使用し、結合材としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン及びその混合物、スチレンブタジエンゴム(ゴム)系のポリマーを使用し、溶媒としては、N−メチルピロリドン、アセトン、水などを使用する。この時、正極活物質、導電材、結合材及び溶媒の含量は、リチウム電池で通常的に使用する水準である。
【0041】
セパレータとしては、リチウム電池で通常的に使用されるものなら何れも使用可能である。特に、電解液のイオン移動に対して低抵抗であり、また電解液含湿能力に優れたものが好ましい。これを更に具体的に説明すれば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、その組合物のうち選択された材質であって、不織布または織布形態であってもよい。これを更に詳細に説明すれば、リチウムイオン電池の場合には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような材料からなる巻き取り可能なセパレータを使用し、リチウムイオンポリマー電池の場合には、有機電解液の含浸能力に優れたセパレータを使用するが、このようなセパレータは、下記方法により製造可能である。
【0042】
すなわち、高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合してセパレータ組成物を準備した後、前記セパレータ組成物を電極の上部に直接コーティング及び乾燥してセパレータフィルムを形成するか、または前記セパレータ組成物を支持体上にキャスティング及び乾燥した後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムを電極の上部にラミネーションして形成できる。
【0043】
前記高分子樹脂は、特別に限定されず、電極板の結合材に使用される物質が何れも使用可能である。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート及びその混合物を使用できる。
【0044】
電解液としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジエチレングリコールまたはジメチルエーテルなどの溶媒またはそれらの混合溶媒に、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(但し、x、yは自然数)、LiCl、LiIなどのリチウム塩からなる電解液のうち、1種またはそれらを2種以上混合したものを溶解して使用できる。
【0045】
前記のような正極極板と負極極板との間にセパレータを配置して、電池構造体を形成する。このような電池構造体をワインディングするか、または折って円筒形の電池ケースや角形の電池ケースに入れた後、本発明の有機電解液を注入すれば、リチウムイオン電池が完成する。
【0046】
また、前記電池構造体をバイセル構造に積層層した後、これを有機電解液に含浸させ、得られた結果物をポーチに入れて密封すれば、リチウムイオンポリマー電池が完成する。
【0047】
前記本発明に係る電気化学電池用の電極の製造方法は、次の通りである。
【0048】
まず、電極活物質を集電体の表面上にコーティングし、ここに、前記コーティングされた集電体の表面上に気孔形成物質及び電極活物質の混合物を追加的にコーティングして電極を製造し、ここで前記コーティングされた電極を圧延し、前記圧延された電極を焼成して電気化学電池用の電極を製造できる。
【0049】
それに対し、まず、電極活物質を集電体の表面上にコーティングし、ここで前記コーティングされた電極表面上に気孔形成物質を追加的にコーティングして、ここで前記活物質及び気孔形成物質が順にコーティングされた電極を圧延し、前記圧延された電極を焼成して電気化学電池用の電極を製造できる。
【0050】
前記方法で製造される電気化学電池用の電極は、原則的にあらゆる種類の電気化学電池用の電極を含むが、好ましくは、リチウム電池用の正極または負極が好ましく、炭素系の負極が特に好ましい。金属材料は、電解液に対する含浸性が優れており、特別な問題とはならないが、炭素系の材料の場合には、電解液に対する含浸性が相対的に悪く、特に圧延などで密度が向上すれば、含浸性が更に低下するためである。炭素系の材料としては特別に限定されず、当業界で使用される黒鉛などのあらゆる材料を含む。
【0051】
前記製造方法で前記気孔形成物質は、熱分解性物質、電解液に溶解される物質またはそれらの混合物であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、気孔を形成できるその他のあらゆる種類の物質が可能である。
【0052】
前記製造方法で熱分解性気孔形成物質として使用されうる化合物は、炭酸アンモニウム、二炭酸アンモニウム及びシュウ酸アンモニウムなどが好ましい。
【0053】
前記製造方法で、電解液に溶解される気孔形成物質として使用されうる化合物は、リチウム塩などの非水電解質に対する溶解性に優れた塩が好ましく、更に具体的には、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、LiBF、LiPF及びLiCFSOなどを挙げうる。
【0054】
前記気孔形成物質の含量は、電極活物質の全体重量に対して0.1ないし10重量%であることが好ましい。10重量%を超える場合には、電極の密度を低下させるという問題点があり、0.1重量%未満である場合には、気孔率の調節効果が表れないという問題点がある。
【0055】
前記電池の製造方法は、本発明に係る電気化学電池の製造方法として好ましいが、これに限定されるものではなく、気孔形成物質を含むなら、その他の当業界に知られているいかなる方法でも制限なしに使用できる。
【0056】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。但し、実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらのみで本発明の範囲を限定するものではない。
【0057】
負極電極の製造
[実施例1]
黒鉛粉末97gと、スチレンブタジエンゴム(SBR)1.5gと、カルボキシメチルセルロース(CMC)1.5gとを混合して、150mLの蒸溜水を投入した後、機械式な攪拌器を使用して30分間攪拌してスラリーを製造した。
【0058】
このスラリーをドクターブレードを使用して10μmの厚さの銅(Cu)集電体上に約8mg/cmになるように約100μmの厚さに塗布及び乾燥して、負極板を製造した。
【0059】
前記負極板上に二炭酸アンモニウム5gと、黒鉛粉末97gと、スチレンブタジエンゴム(SBR)1.5gと、カルボキシメチルセルロース(CMC)1.5gとを混合して、150mLの蒸溜水を投入した後、機械式攪拌器を使用して30分間攪拌して製造したスラリーを、約2mg/cmになるように追加的に塗布及び乾燥して、負極板を製造した。
【0060】
前記負極板を合剤密度1.7g/cmになるように圧延した後、真空、摂氏145℃の条件で3時間乾燥して負極板を製造した。
【0061】
[実施例2]
黒鉛粉末97gと、スチレンブタジエンゴム(SBR)1.5gと、カルボキシメチルセルロース(CMC)1.5gとを混合して、(150)mLの蒸溜水を投入した後、機械式な攪拌器を使用して30分間攪拌してスラリーを製造した。
【0062】
このスラリーをドクターブレードを使用して10μmの厚さのCu集電体上に約10mg/cmになるように塗布及び乾燥して、負極板を製造した。
【0063】
前記負極板上にエタンオールを利用したスプレーコーティング方法で、二炭酸アンモニウムを約0.1mg/cmになるように追加的にコーティングした。
【0064】
前記負極板を合剤密度1.7g/cmになるように圧延した後、真空、摂氏145℃の条件で3時間乾燥して負極板を製造した。
【0065】
[実施例3]
実施例1と同じ条件で実験した。但し、二炭酸アンモニウムの代りにシュウ酸アンモニウムを使用した。
【0066】
[実施例4]
実施例2と同じ条件で実験した。但し、二炭酸アンモニウムの代りにシュウ酸アンモニウムを使用した。
【0067】
[実施例5]
実施例1と同じ条件で実験した。但し、二炭酸アンモニウムの代りにLiClOを使用した。
【0068】
[実施例6]
実施例2と同じ条件で実験した。但し、二炭酸アンモニウムの代りにLiClOを使用した。
【0069】
[実施例7]
実施例1と同じ条件で実験した。但し、二炭酸アンモニウムの代りにシュウ酸アンモニウムとLiClOを使用した。
【0070】
[実施例8]
実施例2と同じ条件で実験した。但し、二炭酸アンモニウムの代りにシュウ酸アンモニウムとLiClOを使用した。
【0071】
[実施例9]
実施例1と同じ条件で実験した。但し、追加的にコーティングするスラリーの二炭酸アンモニウム含量を5gから10gに増やして添加した。
【0072】
[実施例10]
実施例1と同じ条件で実験した。但し、追加的にコーティングするスラリーの二炭酸アンモニウム含量を5gから20gに増やして添加した。
【0073】
[実施例11]
実施例2と同じ条件で実験した。但し、追加的にコーティングする二炭酸アンモニウムが0.2mg/cmになるようにコーティングした。
【0074】
[実施例12]
実施例2と同じ条件で実験した。但し、追加的にコーティングする二炭酸アンモニウムが0.4mg/cmになるようにコーティングした。
【0075】
[比較例1]
実施例1と同じ条件で実験した。但し、気孔形成物質を添加しなかった。
【0076】
[比較例2]
実施例2と同じ条件で実験した。但し、気孔形成物質をコーティングするステップを省略した。
【0077】
半電池の製造
実施例1ないし実施例12及び比較例1ないし比較例2で製造した前記負極板を、2×3cmのサイズに切ってリチウム金属を相手電極とし、VC(ビニレンカーボネート)が2.3重量%添加されたEC(エチレンカーボネート)+DEC(ジエチルカーボネート)+FB(フルオロベンゼン)+DMC(ジメチルカーボネート)(体積費3:5:1:1)に溶けている溶液を電解液として半電池を製造した。
【0078】
充放電の実験
製造した半電池を活物質1g当り35mAの電流でLi電極に対して0.001Vに到達するまで定電流放電し、次いで0.001Vの電圧を維持しつつ、電流が活物質1g当り3.5mAに低くなるまで定電圧放電を実施した。
【0079】
放電が完了したセルは、約30分間の休止期間を経た後、活物質1g当り35mAの電流で、電圧が1.5Vになるまで定電流充電した。
【0080】
前記0.1C放電/充電サイクルの後、0.2C放電/充電2サイクル、0.5C放電/充電1サイクル、1C放電/充電1サイクル、2C放電/充電1サイクルで高率充放電実験を行った。高率充放電特性は、第二のサイクル0.2C充電容量に対する高率充電容量の割合で評価した。前記実施例及び比較例の実験結果を下記表1に表した。
【0081】
【表1】

【0082】
前記表1に示すように、実施例の場合には、高速充放電時にも充電容量が大きく減少せずに、85%以上の率別特性を維持して、比較例に比べて最大20%以上の優れた結果を表した。これは、気孔形成物質を使用して電極活物質の気孔率を調節して、電解液と接する部分の気孔率を高める場合、電解液に対する含浸性が改善されて、電解液が電極の内部に更に円滑に浸透し、実質的に電解液と接触する有効面積が大きくなって、イオンの移動が更に円滑に行われたためであると思われる。このような優れた率別特性は、電池の高容量化を可能にして、電池性能の低下を防止する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の表面上にコーティングされた電極活物質の上層部の気孔率が下層部の気孔率より高いことを特徴とする電気化学電池用の電極。
【請求項2】
前記気孔率は、電解液と対向する表面部分で最も高いことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池用の電極。
【請求項3】
前記電極活物質は、気孔形成物質を含む活物質の焼成物であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池用の電極。
【請求項4】
前記気孔形成物質は、熱分解性物質、電解液に溶解される物質またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項3に記載の電気化学電池用の電極。
【請求項5】
前記熱分解性の気孔形成物質は、炭酸アンモニウム、二炭酸アンモニウム及びシュウ酸アンモニウムからなる群から選択された1以上であることを特徴とする請求項3に記載の電気化学電池用の電極。
【請求項6】
前記電解液に溶解される気孔形成物質は、過塩素酸リチウム(LiClO)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化燐酸リチウム(LiPF)及び三フッ化メタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)からなる群から選択された1以上であることを特徴とする請求項3に記載の電気化学電池用の電極。
【請求項7】
前記気孔形成物質の含量は、電極活物質の全体重量に対して0.1ないし10重量%であることを特徴とする請求項3に記載の電気化学電池用の電極。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうち、何れか1項に記載の電気化学電池用の電極を採用したことを特徴とする電気化学電池。
【請求項9】
電極活物質を集電体の表面上にコーティングする工程と、
前記コーティングされた集電体の表面上に気孔形成物質及び電極活物質の混合物をコーティングして電極を製造する工程と、
前記コーティングされた電極を圧延する工程と、
前記圧延された電極を焼成する工程と、を含むことを特徴とする電気化学電池用の電極製造方法。
【請求項10】
電極活物質を集電体の表面上にコーティングする工程と、
前記コーティングされた集電体の表面上に気孔形成物質をコーティングする工程と、
前記活物質及び気孔形成物質が順にコーティングされた電極を圧延する工程と、
前記圧延された電極を焼成する工程と、を含むことを特徴とする電気化学電池用の電極製造方法。
【請求項11】
前記気孔形成物質は、熱分解性物質、電解液に溶解される物質またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電気化学電池用の電極製造方法。
【請求項12】
前記熱分解性の気孔形成物質は、炭酸アンモニウム、二炭酸アンモニウム及びシュウ酸アンモニウムからなる群から選択された1以上であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電気化学電池用の電極製造方法。
【請求項13】
前記電解液に溶解される気孔形成物質は、LiClO、LiBF、LiPF及びLiCFSOからなる群から選択された1以上であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電気化学電池用の電極製造方法。
【請求項14】
前記気孔形成物質の含量は、電極活物質の全体重量に対して0.1ないし10重量%であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電気化学電池用の電極製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−153403(P2010−153403A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89741(P2010−89741)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【分割の表示】特願2006−795(P2006−795)の分割
【原出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】