説明

電気式浴室暖房乾燥装置

【課題】温風の吹き出し方向を暖房運転時と乾燥運転時とで容易に変更可能とする。
【解決手段】浴室暖房乾燥装置2は、空気流を発生する送風ファン21、前記空気流を加熱する電気ヒータ22、加熱された空気流を吹き出す吹き出しグリル23及びシャッタ部材24を備える。吹き出しグリル23は、異なる方向(矢印a、b)に空気流を向かわせる第1及び第2送風路232を備える。第1送風路231は、第1ハンガーパイプ31の架設位置を通して、浴槽方向へ空気流を向かわせる。第2送風路232は、第2ハンガーパイプ32の架設位置を通して、洗い場として使用される床面12へ空気流を向かわせる。シャッタ部材24は、第1及び第2送風路231、232の双方を開放状態とする開放姿勢と、第1及び第2送風路231、232の少なくとも一方を閉止状態とする閉止姿勢との間で姿勢変更可能な部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが入浴中の浴室内を暖房する暖房機能、及び浴室内に干された洗濯物を乾燥させる乾燥する機能を備えた電気式の浴室暖房乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新築されるマンション等の新築集合住宅の浴室のほぼ100%、新築戸建て住宅の浴室の約70%に、浴室暖房乾燥装置が付設されるに至っている。浴室暖房乾燥装置は、浴室内に温風を吹き出すことで浴室内の暖房及び浴室内に干された洗濯物の乾燥を行う装置であって、電気式の浴室暖房乾燥装置にあっては空気流を加熱する熱源として電気ヒータを備える。電気式浴室暖房乾燥装置は、通常浴室の天井裏に設置され、前記暖房及び乾燥を行うための温風は、天井面の吹き出し口に組み付けられたグリルを通して浴室内に吹き出される。グリルは、温風の風向きを定める部材であり、複数枚の風向板を備える。
【0003】
前記電気ヒータは、前記吹き出し口付近の通風路内に配置され、その温度は100℃を超過する。このような高温の前記電気ヒータで加熱された空気流は80℃〜90℃にまで昇温される。この温度は、温水を熱源とするガス式の浴室暖房乾燥装置と比べて相当高い。このため、電気ヒータの下流に配置される前記グリルには耐熱性が求められる。グリルの形成材料としては、成形性、腐食性及びコスト等を考慮して樹脂材料が選ばれるが、一般に耐熱性を有する樹脂材料は硬質樹脂であり、硬質樹脂で形成されたグリルが汎用されている。
【0004】
ところで、前記グリルの風向板は、洗い場に温風が向かうように設定される。これは、浴槽から出て洗い場に居るユーザに暖気感を与える暖房運転を優先して風向が決定されているためである。このため、洗濯物を乾燥させる乾燥運転時における風向としては、最適と言えない場合がある。具体的には、前記吹き出し口は浴槽の直上に配置され、洗濯物を吊り下げる干し竿は前記吹き出し口の直下付近に2本程度平行に架設されるが、前記グリルにより決定される風向は浴槽横の洗い場を指向するので、温風が前記2本の干し竿に垂下された洗濯物に均等に当たり難くなる。このことは、洗濯物の乾燥に時間を要することに繋がり、省エネの観点からは望ましくない。
【0005】
このような問題の解決方法の一つとして、特許文献1には、複数方向に空気流を誘導する風向板を有する吹き出しグリルを備えた浴室暖房乾燥装置が提案されている。この手法によれば、温風を四方に拡散させることが可能となり乾燥運転時における乾燥効果の向上をある程度見込めるが、暖房運転時に暖気感を与える効果が希釈化する問題がある。
【0006】
もう一つの解決方法として、グリルの風向板をスィングさせる方法がある。この手法によれば、例えば暖房運転時と乾燥運転時とで温風の風向を変更することが可能である。しかし、上述の通り電気式浴室暖房乾燥装置にあっては、硬質樹脂で形成されたグリルを用いる必要があるが、この種の硬質樹脂は比較的重いため、モータ等の駆動手段でスィングさせるには不向きである。すなわち、薄くて柔軟な比較的軽量な風向板であれば、簡易な駆動手段で当該風向板をスィングさせることができるが、耐熱性を有する硬質樹脂から成る風向板をスィングさせるには高出力のモータや大掛かりな駆動機構が必要となり、実用的ではない。このため、従来の電気式浴室暖房乾燥装置では、温風の吹き出し方向が洗い場に固定されたグリルを用いざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−278956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の電気式浴室暖房乾燥装置における問題を解決するために為されたものであって、グリルの耐熱性の要請に対応しつつ、温風の吹き出し方向を暖房運転時と乾燥運転時とで容易に変更することができる電気式浴室暖房乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面に係る電気式浴室暖房乾燥装置は、浴室の天井面裏に配置され、前記天井に設けられた吹き出し口を通して前記浴室内へ送り込む空気流を発生する送風手段と、前記空気流を加熱する電気ヒータと、前記吹き出し口に配置されて前記空気流の方向を定めるグリルであって、前記浴室内の第1位置に前記空気流を向かわせる第1送風路と、前記浴室内の前記第1位置とは異なる第2位置に前記空気流を向かわせる第2送風路とを含むグリルと、前記第1及び第2送風路の双方を開放状態とする開放姿勢と、前記第1及び第2送風路の少なくとも一方を閉止状態とする閉止姿勢との間で姿勢変更可能に、前記グリルに添設されるシャッタ部材と、を備える(請求項1)。
【0010】
この構成によれば、グリルが第1送風路及び第2送風路を備え、浴室内の互いに異なる第1位置又は第2位置に加熱された空気流(温風)を向かわせることが可能である。そして、前記開放姿勢と前記閉止姿勢との間で姿勢変更可能なシャッタ部材を備えるので、第1送風路及び第2送風路の双方、若しくは、第1送風路及び第2送風路のいずれか一方を用いて空気流を前記浴室内へ送り込むことが可能である。すなわち、グリルの風向板をスィングさせて空気流の方向を可変とするのではなく、異なる風向となる第1送風路及び第2送風路をグリルに具備させておき、シャッタ部材の姿勢変更で送風路を選択する方式であるので、極めて簡易な駆動機構で空気流の方向を可変とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1位置が前記浴室内の浴槽であり、前記第2位置が前記浴室内の洗い場であることが望ましい(請求項2)。
【0012】
この構成によれば、暖房若しくは乾燥等の目的に応じて、それぞれに適した位置に向けて温風を向かわせることができる。
【0013】
この場合、前記浴室は、断面構造でみて第1側壁面、前記浴槽、前記洗い場及び第2側壁面が順次配置され、前記吹き出し口が前記浴槽の上方に配置され、前記吹き出し口の下方であって前記第1側壁面寄りの位置に架設される第1干し竿と、前記吹き出し口の下方であって前記洗い場寄りの位置に架設される第2干し竿とが並置される構造を備えるものであって、前記第1送風路は、前記第1干し竿の架設位置を通して前記浴槽に前記空気流を向かわせるものであり、前記第2送風路は、前記第2干し竿の架設位置を通して前記洗い場に前記空気流を向かわせるものであることが望ましい(請求項3)。
【0014】
この構成によれば、第1干し竿及び第2干し竿に干された洗濯物の乾燥を優先させる場合、前記シャッタ部材を開放姿勢とすることで前記第1送風路及び前記第2送風路を通して第1干し竿及び第2干し竿に向けて空気流を向かわせることができ、洗濯物の乾燥効率を高めることができる。一方、洗い場に居るユーザに暖気感を与えることを優先させる場合は、前記シャッタ部材によって前記第1送風路を閉止状態とすることで、前記第2送風路を通して前記洗い場に前記空気流を向かわせることができるので、暖房効率を高めることができる。
【0015】
上記構成において、前記グリルは、上面と下面とを備え、前記上面には前記第1送風路の第1入口及び前記第2送風路の第2入口が配置され、前記下面には前記第1送風路の第1出口及び前記第2送風路の第2出口が配置され、前記シャッタ部材は、前記グリルの上面にスライド移動可能に配置され、前記第1入口又は第2入口を閉塞可能なシャッタ板と、前記第1入口及び第2入口を開放させる開口部とを備え、前記開放姿勢のとき、前記開口部が前記第1入口及び第2入口の上に位置し、前記閉止姿勢のとき、前記シャッタ板が前記第1入口又は第2入口の上に位置するようスライド移動されることが望ましい(請求項4)。
【0016】
この構成によれば、シャッタ板と開口部とを備えたシャッタ部材をスライド移動させるというシンプルな構造及び駆動機構で、空気流の吹き出し方向を変更することができる。
【0017】
この場合、前記シャッタ部材をスライド移動させる駆動力を発生する駆動手段をさらに備えることが望ましい(請求項5)。
【0018】
また、前記送風手段、前記電気ヒータ及び前記駆動手段の動作を制御する制御手段をさらに備え、前記制御手段は、当該電気式浴室暖房乾燥装置の運転モードとして、前記開口部が前記第1入口及び第2入口の上に位置するよう前記シャッタ部材をスライド移動させると共に、前記送風手段及び前記電気ヒータを動作させる乾燥モードと、前記シャッタ板が前記第1入口の上に位置するよう前記シャッタ部材をスライド移動させると共に、前記送風手段及び前記電気ヒータを動作させる暖房モードと、を実行させることが可能であることが望ましい(請求項6)。
【0019】
この構成によれば、制御手段が乾燥モード又は暖房モードに応じてシャッタ部材をスライド移動させ、それぞれのモードに応じて空気流の吹き出し方向を自動的に変更させることができる。
【0020】
この場合、前記制御手段は、前記運転モードとして、さらに、前記シャッタ板が前記第2入口の上に位置するよう前記シャッタ部材をスライド移動させると共に、前記送風手段を動作させる一方で前記電気ヒータを非動作状態とする涼風モードを実行させることが可能であることが望ましい(請求項7)。
【0021】
この構成によれば、上記涼風モードにおいて、浴槽に向けて電気ヒータで加熱されない空気流を向かわせることができる。従って、夏季等において、入浴中のユーザに対して涼感を与えることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電気式浴室暖房乾燥装置によれば、極めて簡易な駆動機構で吹き出し口から吹き出される空気流の方向を、シャッタ部材の姿勢変更によって可変とすることができるので、暖房又は乾燥の目的に応じて最適な温風の吹き出しを実現することができる。また、グリルに備えられている第1送風路及び第2送風路自体は固定的なもので足り可動させる必要がないので、比較的重い硬質樹脂等でグリルを形成することができ、耐熱性の要請を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るシステムバスの構造を概略的に示す一点透視図である。
【図2】上記システムバスの断面図である。
【図3】浴室暖房乾燥装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】浴室暖房乾燥装置の暖房機能が利用されている状態を示すシステムバスの模式図である。
【図5】乾燥運転時におけるグリル及びシャッタ部材の状態を示す断面図である。
【図6】乾燥運転が実行されている状態を示すシステムバスの模式図である。
【図7】暖房運転時におけるグリル及びシャッタ部材の状態を示す断面図である。
【図8】暖房運転が実行されている状態を示すシステムバスの模式図である。
【図9】涼風(暖房)運転時におけるグリル及びシャッタ部材の状態を示す断面図である。
【図10】涼風(暖房)運転が実行されている状態を示すシステムバスの模式図である。
【図11】グリル及びシャッタ部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシステムバスSの構造を概略的に示す一点透視図、図2は、システムバスSの断面図である。システムバスSは、浴室内の暖房及び乾燥機能を備えたシステムバスであって、浴室1、浴室暖房乾燥装置2及びハンガーパイプ3を含む。
【0025】
浴室1は、湯が張られる浴槽11(第1位置)と、洗い場として使用される床面12(第2位置)と、浴槽11及び床面12の周囲を囲む側壁面13と、側壁面13で囲まれた空間の上部を覆う天井面14とを備える。側壁面13は、奥壁面131(第1側壁面)、左壁面132、右壁面133及び前壁面134(第2側壁面)からなる。浴槽11は奥壁面131の側に配置され、洗い場の床面12は前壁面134の側に配置されている。
【0026】
左壁面132には、物置台やテーブルを備えた鏡ユニット15、浴室1内を照らす照明具16、及びカラン・シャワー具17等が取り付けられている。また、前壁面134には、ユーザが出入りするためのドア18が取り付けられている。このドア18には、通気用のガラリ181が備えられている。さらに、天井面14には、浴室暖房乾燥装置2が生成する温風の浴室1内へ吹き出し、浴室1内の空気の吸い込みのための開口141(吹き出し口)が設けられている。この開口141は、浴槽11の上方位置に対応する天井面14に配置されている。
【0027】
浴室暖房乾燥装置2は、浴室1内の乾燥及び暖房機能を備え、浴室1の天井面14の裏に配置される天井ビルトインタイプのものであって、ハウジング20、空気流を発生する送風ファン21(送風手段)、前記空気流を加熱する電気ヒータ22、加熱された空気流(温風)を吹き出す吹き出しグリル23(グリル)、吹き出しグリル23から吹き出される空気流の方向を定めるシャッタ部材24、及び、浴室1内の空気を吸い込む吸い込みグリル27を備えている。
【0028】
ハウジング20は、浴室暖房乾燥装置2の構成部材を収容するハウジングであって、天井面14の開口141を上方から塞ぐように、天井面14の裏に取り付けられている。このハウジング20の下面に、吹き出しグリル23及び吸い込みグリル27が組み付けられ、ハウジング20の内部には吸い込みグリル27から吹き出しグリル23に至る通風路が形成されている。この通風路内の適所に、上記の送風ファン21及び電気ヒータ22が配置されている。また、シャッタ部材24は吹き出しグリル23の上面に接して配置されている。なお、図示は省略しているが、ハウジング20には排気口が備えられており、この排気口を開閉するダンパも備えられている。
【0029】
ハンガーパイプ3は、被服ハンガーを支持可能な長尺のパイプであり、浴槽11の上方空間であって開口141(吹き出しグリル23)の下部近傍に固定的に配置されている。本実施形態ではハンガーパイプ3として、奥壁面131寄りの位置に架設される第1ハンガーパイプ31(第1干し竿)と、これよりも床面12寄り(洗い場寄り)の位置に架設される第2ハンガーパイプ32(第2干し竿)とが、開口141の直下位置に並置されている例を示している。第1及び第2ハンガーパイプ31、32は、その片端が左壁面132で、他端が右壁面133で、各々ビス止め等の手段によって固定的に支持されている。
【0030】
図3は、浴室暖房乾燥装置2の構成を概略的に示すブロック図である。ここでは、浴室暖房乾燥装置2の吹き出しグリル23の部分を主に示しており、吸い込みグリル27の部分については省いている。また、吹き出しグリル23から吹き出される温風と洗濯物との関係を示すために、第1及び第2ハンガーパイプ31、32も併記している。なお、第1及び第2ハンガーパイプ31、32には、浴室1が衣服類の乾燥用(乾燥モード)として利用される態様を想定して、衣服34A、34Bが掛けられた被服ハンガー33A、33Bのフック部分が引っ掛けられている状態を示している。
【0031】
ハウジング20内には、空気流の上流側から見て、送風ファン21、電気ヒータ22、シャッタ部材24及び吹き出しグリル23の順に配置されている。送風ファン21は、回転駆動されるファンを有し、浴室1内の空気を吸い込みグリル27を通してハウジング20内に取り入れ、これを吹き出しグリル23を通して浴室1内に吹き出す空気流を生成する。電気ヒータ22は、例えばセラミックヒータ等からなり、通電されることで熱を発して前記空気流を加熱する。従って、電気ヒータ22に通電された状態で送風ファン21が駆動されると、吹き出しグリル23を介して温風を浴室1内に供給することができる。
【0032】
吹き出しグリル23は、耐熱性を備える硬質樹脂材料にて成型された部材である。これは、電気ヒータ22によって高温に加熱された空気が吹き出しグリル23を通過することが予定されているからである。吹き出しグリル23は、開口141に配置され、浴室暖房乾燥装置2から吹き出される空気流の方向を定める機能を有する。図3の例では、吹き出しグリル23が異なる方向に空気流を向かわせる第1送風路231及び第2送風路232を備える例を示している。第1送風路231は、矢印aで示すように、第1ハンガーパイプ31の架設位置を通して、浴槽11の配置位置(第1位置)へ空気流を向かわせる送風路である。また、第2送風路232は、矢印bで示すように、第2ハンガーパイプ32の架設位置を通して、洗い場として使用される床面12(第2位置)へ空気流を向かわせる送風路である。
【0033】
シャッタ部材24は、吹き出しグリル23の第1送風路231及び第2送風路232を開放又は閉止させるために、吹き出しグリル23に添設される部材である。具体的には、シャッタ部材24は、第1及び第2送風路231、232の双方を開放状態とする開放姿勢と、第1及び第2送風路231、232の少なくとも一方を閉止状態とする閉止姿勢との間で姿勢変更可能に、吹き出しグリル23の上面に対してスライド移動可能に配置されている。
【0034】
浴室暖房乾燥装置2は、シャッタ部材24をスライド移動させるためのモータ25(駆動手段)を備えている。モータ25は、図略のアイドルギア及び偏心カム等を介して駆動力をシャッタ部材24に与え、シャッタ部材24を必要なストロークだけスライド移動させる。なお、モータ25に代えて、前記ストロークに応じた出没動作を行う可動片を備えたソレノイドを用いることもできる。
【0035】
浴室暖房乾燥装置2は、さらに、浴室暖房乾燥装置2の各構成要素の動作を制御する制御部26(制御手段)を備える。具体的には制御部26は、送風ファン21のON−OFF動作の制御、電気ヒータ22への通電動作の制御、及びシャッタ部材24のスライド移動の制御のためのモータ25の回転駆動動作の制御を行う。
【0036】
制御部26は、浴室暖房乾燥装置2が少なくとも次の(1)〜(3)の3つの運転モードで動作するように制御を行う。
(1)乾燥モード;浴室1を乾燥室として用いる運転モードであって、第1及び第2ハンガーパイプ31、32に吊り下げられた衣服34A、34Bを乾燥させるための運転モードである。
(2)暖房モード;寒冷期において浴室1内に居るユーザに暖気を吹き当てるための運転モードであって、洗い場として使用される床面12に向けて集中的に温風を吹き付ける運転モードである。
(3)涼風モード;温暖期において浴槽11に浸かっているユーザに涼感を与えるための運転モードであって、浴槽に向けて涼風を吹き付ける運転モードである。
【0037】
上記乾燥モードにおいては、制御部26は、送風ファン21をONとし、電気ヒータ22への通電を行うと共に、シャッタ部材24を上記開放姿勢として、吹き出しグリル23の第1及び第2送風路231、232の双方から温風を吹き出させる。これにより、図3に示すように、矢印a方向及び矢印b方向の双方から温風が吹き出されるようになる。矢印a方向の温風は、専ら奥壁面131寄りの位置に架設される第1ハンガーパイプ31の方向に向かう。従って、第1ハンガーパイプ31に吊られた被服ハンガー33Aに掛けられている衣服34Aの乾燥に寄与する。一方、矢印b方向の温風は、専ら床面12寄りに架設される第2ハンガーパイプ32の方向に向かう。従って、第2ハンガーパイプ32に吊られた被服ハンガー33Bに掛けられている衣服34Bの乾燥に寄与する。
【0038】
上記暖房モードにおいては、制御部26は、送風ファン21をONとし、電気ヒータ22への通電を行うと共に、シャッタ部材24を上記閉止姿勢として、吹き出しグリル23の第1送風路231が閉止される一方で第2送風路232が開放された状態とし、第2送風路232のみから温風を吹き出させる。これにより、吹き出しグリル23からは矢印b方向のみから温風が吹き出されることとなる。図4は、暖房モードが実行されている状態を模式的に示す図である。図示する通り、暖房モードでは床面12に座っているユーザPに温風Wが供給される。
【0039】
上記涼風モードにおいては、制御部26は、送風ファン21をONとする一方で電気ヒータ22への通電は行わず、シャッタ部材24を上記閉止姿勢として、吹き出しグリル23の第1送風路231が開放される一方で第2送風路232が閉止された状態とし、第1送風路231のみから非加熱の空気流を吹き出させる。これにより、吹き出しグリル23からは矢印a方向のみから温風が吹き出されることとなり、浴槽11に向けた涼風の供給が行われる。
【0040】
なお、上記涼風モードのシャッタ部材24の姿勢において、電気ヒータ22への通電を行わせれば、浴槽11に向けて温風を供給する暖房モードとすることができる。このような暖房モードは、厳冬期において浴槽11へ入浴中のユーザや、半身浴を行っているユーザに暖気を与えるモードとして使用することができる。
【0041】
続いて、図5〜図10を参照して、上記の各運転モードにおけるシャッタ部材24の動作及び空気流の吹き出し動作について詳細に説明する。先ず、図5は、乾燥運転時(乾燥モード)における吹き出しグリル23及びシャッタ部材24の状態を示す断面図、図6は、乾燥運転が実行されている状態を示すシステムバスSの模式図である。
【0042】
吹き出しグリル23は、上面と下面とを備える矩形状の部材である。第1送風路231及び第2送風路232は、図5の紙面に垂直な方向に延在するスリット状の通風路であり、断面視において第1送風路231と第2送風路232とがなす角は60度程度である。吹き出しグリル23の上面には、第1送風路231の第1入口231Aと第2送風路232の第2入口232Aとが配置され、下面には第1送風路231の第1出口231Bと第2送風路232の第2出口232Bとが配置されている。第1入口231Aと第2入口232Aとは、その側辺同士がほぼ接した状態で並置されている。一方、第1出口231Bと第2出口232Bとは、互いの風向が異なる分だけ離間して並置されている。
【0043】
シャッタ部材24は、吹き出しグリル23のサイズに対応したサイズを有する矩形状の部材であって、第1入口231A又は第2入口232Aを閉塞可能なシャッタ板241と、第1入口231A及び第2入口232Aを開放させる開口部242とを備える。シャッタ板241は、第1入口231A若しくは第2入口232Aのスリット開口幅と同等または幅広の、図5の紙面に垂直な方向に延在する細長い平板部材である。
【0044】
浴室暖房乾燥装置2が乾燥モードを実行するとき、吹き出しグリル23の第1入口231A及び第2入口232Aの上に、シャッタ部材24の開口部242が位置するよう、シャッタ部材24はモータ25によってスライド移動される。これにより、第1送風路231及び第2送風路232の双方が開放状態となり、図5に示す通り、第1出口231B及び第2出口232Bの双方から矢印a方向及び矢印b方向に温風が吹き出される。
【0045】
図6を参照して、乾燥モードにおいては、浴室暖房乾燥装置2の排気口が「開」とされた状態で運転される。従って、送風ファン21が駆動されると、ドア18のガラリ181を通して外気が導入される空気流D1が発生すると共に、浴室1内の空気が吸い込みグリル27を通して浴室暖房乾燥装置2内へ取り入れられる空気流D2と、該空気流D2の一部が前記排気口を通して屋外に排出される空気流D3とが発生する。
【0046】
一方、吹き出しグリル23からは、異なる方向に向かう2つの温風の空気流W1、W2が発生する。空気流W1は、第1送風路231の第1出口231Bから吹き出される温風であって、第1ハンガーパイプ31の架設位置を指向している。また、空気流W2は、第2送風路232の第2出口232Bから吹き出される温風であって、第2ハンガーパイプ32の架設位置を指向している。これにより、第1及び第2ハンガーパイプ31、32の双方に掛けられている洗濯物に温風が良く吹き当たり、蒸発を促進させて乾燥効率を高めることができる。従来の電気式浴室暖房乾燥装置では、乾燥モードにおいても上記温風の空気流W1が吹き出されず、第1ハンガーパイプ31側に掛けられた洗濯物の乾きが比較的遅かったが、本実施形態ではそのような不具合は生じない。
【0047】
図7は、暖房運転時(暖房モード)における吹き出しグリル23及びシャッタ部材24の状態を示す断面図、図8は、暖房運転が実行されている状態を示すシステムバスSの模式図である。
【0048】
浴室暖房乾燥装置2が暖房モードを実行するとき、吹き出しグリル23の第1入口231Aの上にシャッタ部材24のシャッタ板241が位置する一方で、第2入口232Aの上には開口部242が位置するよう、シャッタ部材24はモータ25によって矢印c方向居にスライド移動される。これにより、第1送風路231が閉止される一方で第2送風路232が開放された状態となり、図7に示す通り、第2出口232Bのみから矢印b方向に温風が吹き出される。
【0049】
図8を参照して、暖房モードにおいては、浴室暖房乾燥装置2の排気口が「閉」とされた状態で運転される。送風ファン21が駆動されると、浴室1内の空気が吸い込みグリル27を通して浴室暖房乾燥装置2内へ取り入れられる空気流D2が発生すると共に、吹き出しグリル23からは、第2送風路232から吹き出される床面12に向かう温風の空気流W2が発生する。従って、床面12に居るユーザに、浴室暖房乾燥装置2が発生する風量の全てを集中的に提供することができ、暖房効率を高めることができる。
【0050】
図9は、涼風運転時(涼風モード)における吹き出しグリル23及びシャッタ部材24の状態を示す断面図、図10は、涼風運転が実行されている状態を示すシステムバスSの模式図である。
【0051】
浴室暖房乾燥装置2が涼風モードを実行するとき、吹き出しグリル23の第1入口231Aの上にシャッタ部材24の開口部242が位置する一方で、第2入口232Aの上にはシャッタ板241が位置するよう、シャッタ部材24はモータ25によって、上記暖房モードからさらに矢印c方向にスライド移動される。これにより、第1送風路231が開放される一方で第2送風路232が閉止された状態となり、図9に示す通り、第1出口231Bのみから矢印a方向に温風が吹き出される。
【0052】
図10を参照して、涼風モードにおいては、浴室暖房乾燥装置2の排気口が「閉」(又は「開」)とされた状態で運転される。送風ファン21が駆動されると、浴室1内の空気が吸い込みグリル27を通して浴室暖房乾燥装置2内へ取り入れられる空気流D2が発生すると共に、吹き出しグリル23からは、第1送風路231から吹き出される浴槽11に向かう非加熱の空気流W1が発生する。従って、浴槽11に入浴中のユーザに、涼風を集中的に提供することができる。なお、既述の通り、当該涼風モードの状態で電気ヒータ22に通電させれば、上記空気流W1を温風とすることができ、浴槽11に入浴中のユーザに暖気を提供することができる。
【0053】
以上説明した本実施形態に係る浴室暖房乾燥装置2によれば、第1及び第2ハンガーパイプ31、32の双方に掛けられている洗濯物の乾燥を優先させる場合(乾燥モード)、シャッタ部材24を開放姿勢とすることで第1及び第2送風路231、232を通して第1及び第2ハンガーパイプ31、32に向けて温風を向かわせることができ、洗濯物の乾燥効率を高めることができる。一方、洗い場(床面12)に居るユーザに暖気感を与えることを優先させる場合(暖房モード)、シャッタ部材24によって第1送風路231を閉止状態とすることで、第2送風路232を通して前記洗い場に温風の全風量を向かわせることができるので、暖房効率を高めることができる。
【0054】
さらに、上記のような温風の風向変更を、吹き出しグリル23の風向板をスィングさせて空気流の方向を可変とするのではなく、異なる風向となる第1送風路231及び第2送風路232を吹き出しグリル23に具備させておき、シャッタ部材24のスライド移動に伴う姿勢変更でこれらの送風路231、232を選択する方式を、本実施形態の浴室暖房乾燥装置2は採用しているので、モータ25を用いた極めて簡易な駆動機構で空気流の方向を可変とすることができる利点がある。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採ることができる。
【0056】
(1)上記実施形態では、シャッタ部材24のスライド移動をモータ25によって行わせる例を示した。これに代えて、前記スライド移動をユーザのマニュアル操作で行わせる機構を採用しても良い。
【0057】
(2)上記実施形態では、吹き出しグリル23が、異なる2つの風向の送風路(第1送風路231及び第2送風路232)を有する例を示したが、3以上の異なる風向の通風路を有していても良い。図11は、変形実施形態に係る吹き出しグリル23A及びシャッタ部材24Aを示す断面図である。
【0058】
吹き出しグリル23Aは、左右と真下の風向を持つ3つの通風路233、234、235を備える。これら通風路233、234、235の入口233A、234A、235Aは比較的近接して並置され、出口233B、234B、235Bは、それぞれの風向に応じて比較的離間して並置されている。シャッタ部材24Aは、シャッタ板243と開口部244とを備える。シャッタ板243及び開口部244は、吹き出しグリル23Aの上面の入口233A、234A、235Aの並置幅に対応した幅を有している。従って、シャッタ板243及び開口部244は、入口233A、234A、235Aのいずれか1つ、互いに隣接する2つ、もしくは3つ全てを、開放又は閉止することが可能である。
【0059】
図11(A)は、右側の通風路233のみが開放され、他の2つの通風路233が閉止されている状態を、図11(B)は、全ての通風路233、234、235が開放されている状態を例示している。このような吹き出しグリル23A及びシャッタ部材24によれば、風向の選択肢を拡大することができる利点がある。
【0060】
(3)上記実施形態では、シャッタ部材24を吹き出しグリル23の上面にスライド移動可能に配置する例を示した。これに代えて、シャッタ部材24を吹き出しグリル23の下面に配置したり、吹き出しグリル23の内部に組み付けたりする構造としても良い。また、シャッタ部材24として、シャッタ板241と開口部242とを備える部材を例示したが、シャッタ部材は第1送風路231及び第2送風路231を個別に開放又は閉止できるものであれば良く、例えば開閉蓋を第1入口231A及び第2入口232Aにそれぞれ添設する態様としても良い。
【符号の説明】
【0061】
S システムバス
1 浴室
11 浴槽(第1位置)
12 床面(第2位置)
13 側壁面
131 奥壁面(第1側壁面)
134 前壁面(第2側壁面)
14 天井面
141 開口(吹き出し口)
2 浴室暖房乾燥装置
20 ハウジング
21 送風ファン(送風手段)
22 電気ヒータ
23 吹き出しグリル(グリル)
231 第1送風路
231A 第1入口
231B 第1出口
232 第2送風路
232A 第2入口
232B 第2出口
24 シャッタ部材
241 シャッタ板
242 開口部
25 モータ(駆動手段)
26 制御部(制御手段)
3 ハンガーパイプ
31 第1ハンガーパイプ(第1干し竿)
32 第2ハンガーパイプ(第2干し竿)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の天井面裏に配置され、前記天井に設けられた吹き出し口を通して前記浴室内へ送り込む空気流を発生する送風手段と、
前記空気流を加熱する電気ヒータと、
前記吹き出し口に配置されて前記空気流の方向を定めるグリルであって、前記浴室内の第1位置に前記空気流を向かわせる第1送風路と、前記浴室内の前記第1位置とは異なる第2位置に前記空気流を向かわせる第2送風路とを含むグリルと、
前記第1及び第2送風路の双方を開放状態とする開放姿勢と、前記第1及び第2送風路の少なくとも一方を閉止状態とする閉止姿勢との間で姿勢変更可能に、前記グリルに添設されるシャッタ部材と、
を備える電気式浴室暖房乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気式浴室暖房乾燥装置において、
前記第1位置が前記浴室内の浴槽であり、前記第2位置が前記浴室内の洗い場である、電気式浴室暖房乾燥装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気式浴室暖房乾燥装置において、
前記浴室は、断面構造でみて第1側壁面、前記浴槽、前記洗い場及び第2側壁面が順次配置され、前記吹き出し口が前記浴槽の上方に配置され、前記吹き出し口の下方であって前記第1側壁面寄りの位置に架設される第1干し竿と、前記吹き出し口の下方であって前記洗い場寄りの位置に架設される第2干し竿とが並置される構造を備えるものであって、
前記第1送風路は、前記第1干し竿の架設位置を通して前記浴槽に前記空気流を向かわせるものであり、
前記第2送風路は、前記第2干し竿の架設位置を通して前記洗い場に前記空気流を向かわせるものである、電気式浴室暖房乾燥装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電気式浴室暖房乾燥装置において、
前記グリルは、上面と下面とを備え、前記上面には前記第1送風路の第1入口及び前記第2送風路の第2入口が配置され、前記下面には前記第1送風路の第1出口及び前記第2送風路の第2出口が配置され、
前記シャッタ部材は、前記グリルの上面にスライド移動可能に配置され、前記第1入口又は第2入口を閉塞可能なシャッタ板と、前記第1入口及び第2入口を開放させる開口部とを備え、前記開放姿勢のとき、前記開口部が前記第1入口及び第2入口の上に位置し、前記閉止姿勢のとき、前記シャッタ板が前記第1入口又は第2入口の上に位置するようスライド移動される、電気式浴室暖房乾燥装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電気式浴室暖房乾燥装置において、
前記シャッタ部材をスライド移動させる駆動力を発生する駆動手段をさらに備える、電気式浴室暖房乾燥装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気式浴室暖房乾燥装置において、
前記送風手段、前記電気ヒータ及び前記駆動手段の動作を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、当該電気式浴室暖房乾燥装置の運転モードとして、
前記開口部が前記第1入口及び第2入口の上に位置するよう前記シャッタ部材をスライド移動させると共に、前記送風手段及び前記電気ヒータを動作させる乾燥モードと、
前記シャッタ板が前記第1入口の上に位置するよう前記シャッタ部材をスライド移動させると共に、前記送風手段及び前記電気ヒータを動作させる暖房モードと、
を実行させることが可能である、電気式浴室暖房乾燥装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気式浴室暖房乾燥装置において、
前記制御手段は、前記運転モードとして、さらに、
前記シャッタ板が前記第2入口の上に位置するよう前記シャッタ部材をスライド移動させると共に、前記送風手段を動作させる一方で前記電気ヒータを非動作状態とする涼風モードを実行させることが可能である、電気式浴室暖房乾燥装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−241924(P2012−241924A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109505(P2011−109505)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】