説明

電気式脱イオン水製造装置及び脱イオン水の製造方法

【課題】被処理水の処理量を確保しつつ、スケール発生を防止でき、原水水質の変動に影響されずに高い水質の脱イオン水を得る(原水耐性)ことができる電気式脱イオン水製造装置及び脱イオン水の製造方法。
【解決手段】第一小脱塩室と第二小脱塩室が形成された脱塩室2セル型の電気式脱イオン水製造装置に、第一小脱塩室40を流通した被処理水を分配し分配した被処理水を第二小脱塩室60、120に流通させる第一の通水手段を設け、第二小脱塩室60、120を流通した被処理水を他の第一小脱塩室60に流通させる第二の通水手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造分野、医薬品製造分野、原子力や火力等の発電分野、食品工業等の各種の産業又は研究施設で使用される、電気式脱イオン水製造装置及び脱イオン水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱イオン水を製造する方法として、イオン交換樹脂に被処理水を通して脱イオンを行う方法が知られている。しかし、この方法ではイオン交換樹脂がイオンで飽和されたときに、薬剤によって再生処理を行う必要がある。近年、このような処理操作上の不利な点を解消するため、薬剤によるイオン交換体再生の必要がない、電気式脱イオン水製造装置(以下、EDIという)が実用化されている。このEDIは、電気泳動と電気透析を組み合わせた脱イオン水(純水)製造装置である。一般的なEDIは、陽極側に配置されたアニオン交換膜と陰極側に配置されたカチオン交換膜との間にイオン交換体が充填された脱塩室が設けられ、該脱塩室の両側に濃縮室が設けられたものである。このようなEDIでは、陰極と陽極との間に直流電圧を印加した状態で脱塩室に被処理水を通水することにより、被処理水中のイオン成分がイオン交換体で吸着される。そして、吸着されたイオン成分を電気泳動にて膜面までイオンを泳動させ、イオン交換膜にて電気透析して濃縮水中へと除去し、脱イオン水を製造する。
従来の典型的なEDIは、濃縮室を介して複数の脱塩室を積層し、その両端に陰極と陽極を配した構造である。
【0003】
これまでにも、EDIで得られる脱イオン水の水質向上や、省電力での不純物イオンの除去を目的として、種々の試みがなされてきた。脱塩室では、使用されるイオン交換体の充填方法や充填量が、要求される脱イオン水の水質によって決定されるため、脱塩室の電気抵抗を低減させるには限界があった。そこで、濃縮室の電気抵抗を低減させるための対策が採られることが多い。例えば、特許文献1では、濃縮室に電解質を添加供給して、濃縮室における電気抵抗を低減する方法が開示されている。
一方、特許文献2には、脱塩室がアニオン交換膜とカチオン交換膜との間に配置された中間イオン交換膜で区画され、2つの小脱塩室が形成された脱塩室2セル構造のEDIが開示されている。該EDIにおける脱イオン水の製造は、電圧を印加しながら一方の小脱塩室(第一小脱塩室)に被処理水を流入させ、次いで、該小脱塩室の流出水を他方の小脱塩室(第二小脱塩室)に流入させる(直列通水)と共に、濃縮室に濃縮水を流入させ被処理水中の不純物イオンを除去して、脱イオン水を得る。このような構造のEDIによれば、2つの小脱塩室のうち、少なくとも1つの小脱塩室に充填されるイオン交換体を例えばアニオン交換体のみ、又はカチオン交換体のみ等の単床形態、もしくはアニオン交換体とカチオン交換体の混床形態とすることができ、イオン交換体の種類毎に電気抵抗を低減し、かつ高い脱イオン性能を得るための最適な厚さに設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−24374号公報
【特許文献2】特許第3385553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまでの技術では、脱塩室内又は濃縮室内における電気抵抗を低減できるものの、イオン成分の除去やスケール発生防止が不十分であった。加えて、被処理水の原水水質の変動によって、得られる脱イオン水の水質が安定しないという問題があった。従来の脱塩室2セル構造のEDIで高い水質の脱イオン水を得るために、上記の直列通水を繰返すと、脱塩室内の差圧が高くなり、被処理水の処理量の著しい低下を招き、実用的でない。
本発明は、被処理水の処理量を確保しつつ、スケール発生を防止でき、原水水質の変動に影響されずに高い水質の脱イオン水を得る(原水耐性)ことができるEDI及び脱イオン水の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来のEDIにおけるイオン除去能力の低下、ならびにスケールの生成について鋭意検討した結果、次のような知見を得た。
従来の脱塩室2セル構造では、イオン交換体や中間イオン交換膜の配置によっては、第一小脱塩室と第二小脱塩室との間を、中間イオン交換膜を介して、シリカや炭酸、ナトリウム等のイオンが循環してしまい、濃縮室まで排出されにくいという問題があった。例えば、シリカが循環した場合には、被処理水から持ち込まれるシリカの量と、隣の脱塩室から持ち込まれるシリカの量が合算され、実際には被処理水から持ち込まれるシリカよりも、多くのシリカ量を処理することとなる。その結果、シリカを除去しきれずに、脱イオン水に漏洩したり、電気抵抗を極端に上昇させるといった問題に繋がっている。
【0007】
また、陰極側を第一小脱塩室とし、陽極側を第二小脱塩室とし、第一小脱塩室にカチオン交換体、第二小脱塩室にアニオン交換体を充填したような構造の場合、第一小脱塩室においてカチオン成分が除去されるに従い、被処理水のpHが酸性側に傾き、H濃度が高くなる。このため、Na、Ca2+、Mg2+等、除去対象のカチオン成分への電流効率が低下し、カチオン成分を一定濃度以下には低減できなくなる。そして、第二小脱塩室にはカチオン交換体が充填されていないため、そのまま脱イオン水にまで漏洩してしまうという問題があった。さらに、第二小脱塩室を構成するアニオン交換膜のカチオン成分除去能が100%ではないため、一旦濃縮室に移動したカチオン成分は、極微量ではあるものの、アニオン交換膜を介して第二小脱塩室に逆移動してしまう。そして、第二小脱塩室にカチオン交換体が充填されていないために、結果として脱イオン水に、カチオン成分が漏洩するという現象がある。
【0008】
また、陽極側を第一小脱塩室とし、陰極側を第二小脱塩室とし、第一小脱塩室にアニオン交換体、第二小脱塩室にカチオン交換体を充填したような構造の場合、第一小脱塩室においてアニオン成分が除去されるに従い、被処理水のpHがアルカリ側に傾き、OH濃度が高くなる。このため、Cl、HCO、CO2−、SiO(シリカは、特別な形態をとることが多いため、一般のイオンとは異なった表示とする)等、除去対象のアニオン成分への電流効率が低下し、アニオン成分を一定濃度以下には低減できなくなる。そして、第二小脱塩室にはアニオン交換体が充填されていないため、そのまま脱イオン水にまで漏洩してしまうという問題があった。さらに、第二小脱塩室を構成するカチオン交換膜のアニオン成分除去能が100%ではないため、一旦濃縮室に移動したアニオン成分は、極微量ではあるものの、カチオン交換膜を介して、第二小脱塩室に逆移動してしまう。そして、第二小脱塩室にアニオン交換体が充填されていないために、結果として脱イオン水に、アニオン成分が漏洩するという現象がある。
【0009】
また、脱塩室を中間イオン交換膜で分割していない1セル構造のEDIにおいて、脱塩室に複数種のイオン交換体を積層して充填した場合、次のような問題があった。積層されたカチオン交換体の単床形態のイオン交換層、アニオン交換体の単床形態のイオン交換層、カチオン交換体とアニオン交換体の混床形態のイオン交換層では、それぞれ電気抵抗が大きく異なる。このため、より電気抵抗の低いイオン交換層にしか電気が流れず、電気抵抗の高いイオン交換層でのイオン除去率が極端に低下するという現象がある。
加えて、アニオン交換膜とカチオン交換体との接点で発生したHは、カチオン交換体の再生に寄与するが、OHは濃縮室に移動してしまい、何の機能も果たさないという問題がある。この現象について、図4を用いて説明する。図4は、1セル構造のEDIの脱イオンモジュール220の模式図である。図4の通り、脱イオンモジュール220は、陰極側のカチオン交換膜222と、陽極側のアニオン交換膜230との間に脱塩室224が形成され、脱塩室224の両側に濃縮室234が形成され、図示されない陰極室と陽極室との間に配置されている。脱塩室224には、アニオン交換体が充填された脱塩層224aと、カチオン交換体が充填された脱塩層224bとが形成されている。被処理水を脱塩室224に通水すると、アニオン交換膜230と、脱塩層224bのカチオン交換体との界面では、脱塩室224側にH、濃縮室234側にOHが発生する。脱塩室224側に発生したHは、脱塩層224bのカチオン交換体の再生に寄与するが、濃縮室234側で発生したOHは、脱塩室224中のいずれのイオン交換体の再生にも寄与しない。同様に、カチオン交換膜222と脱塩層224aに充填したアニオン交換体との界面で発生したOHは、脱塩層224aのアニオン交換体の再生に寄与するが、濃縮室234側で発生したHは、脱塩室224中のいずれのイオン交換体の再生にも寄与しない。
本発明は、以上の知見を基になされたものである。
【0010】
即ち、本発明のEDIは、陰極側のカチオン交換膜と陽極側のアニオン交換膜とで区画され、被処理水を流通する複数の脱塩室が設けられ、前記カチオン交換膜又は前記アニオン交換膜を介して前記脱塩室の両側に、濃縮水を流通する濃縮室が設けられ、前記脱塩室には、前記カチオン交換膜と前記アニオン交換膜との間に配置された中間イオン交換膜によって、その厚さ方向に区画された第一小脱塩室と第二小脱塩室が形成され、任意の前記第一小脱塩室を流通した被処理水を分配し、分配した被処理水を任意の複数の前記第二小脱塩室に流通させる第一の通水手段が設けられ、前記の任意の第二小脱塩室を流通した被処理水を他の前記第一小脱塩室に流通させる第二の通水手段が設けられていることを特徴とする。
前記第二の通水手段は、複数の前記第二小脱塩室を流通した被処理水を合流させ、合流した被処理水を前記の他の第一小脱塩室に流通させることが好ましく、濃縮水を前記の任意の第一小脱塩室とアニオン交換膜又はカチオン交換膜を介して隣接する濃縮室に流通させ、次いで前記の他の第一小脱塩室とアニオン交換膜又はカチオン交換膜を介して隣接する濃縮室に流通させる手段が設けられていることがより好ましい。前記の任意の第一小脱塩室の体積V1と、前記の他の第一小脱塩室の体積V2との体積比は、V1:V2=2:8〜8:2であることが好ましく、前記の任意の第一小脱塩室に隣接する濃縮室の体積v1と、前記の他の第一小脱塩室に隣接する濃縮室の体積v2との体積比は、v1:v2=2:8〜8:2であることが好ましく、前記第一小脱塩室は、前記アニオン交換膜と前記中間イオン交換膜との間にアニオン交換体が単床形態で充填されて形成され、前記第二小脱塩室は、前記カチオン交換膜と前記中間イオン交換膜との間にカチオン交換体が単床形態で充填されて形成されていることがより好ましく、前記中間イオン交換膜は、カチオン交換膜、アニオン交換膜、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の両方を配置した複式膜又はバイポーラ膜であることが好ましい。
【0011】
本発明の脱イオン水の製造方法は、前記の電気式脱イオン水製造装置を用いた脱イオン水の製造方法であって、任意の前記第一小脱塩室に流通させた被処理水を分配し、分配した被処理水を任意の複数の前記第二小脱塩室に流通させ、さらに他の前記第一小脱塩室に流通させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被処理水の処理量を確保しつつ、スケール発生を防止でき、原水水質の変動に影響されずに高い水質の脱イオン水を得る(原水耐性)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態にかかる脱イオンモジュール群の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるEDIの模式図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる脱イオンモジュールの模式図である。
【図4】従来の1セル構造のEDIの脱イオンモジュールの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明のEDIの一例を図1〜2を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態を説明する脱イオンモジュール群2の斜視図である。図2は、本発明の一実施形態を説明するEDI1を示す模式図である。なお、説明の便宜上、脱イオンモジュール群2の各構成部材は一定間隔を空けて図示しており、実際の脱イオンモジュール群2では各構成部材が密着している。
【0015】
EDI1は、脱イオンモジュール群2と、第一の濃縮室20と、第三の濃縮室140とが、陽極室12と陰極室142との間に設けられたものである。
脱イオンモジュール群2は、第一の脱イオンモジュール4と、第二の脱イオンモジュール6と、第一の脱イオンモジュール4と第二の脱イオンモジュール6との間に設けられた第二の濃縮室80とで概略構成されている。脱イオンモジュール群2には、被処理水流入ライン42と脱イオン水流出ライン102とが接続されている。
【0016】
第一の脱イオンモジュール4は、陽極10側から順に配置されたアニオン交換膜30と枠体41と中間イオン交換膜50と枠体61とカチオン交換膜70とで、概略構成されている。第一の脱イオンモジュール4には、枠体41の開口部にアニオン交換体が単床形態で充填され第一小脱塩室40が形成され、枠体61の開口部にカチオン交換体が単床形態で充填され第二小脱塩室60が形成されている。第一小脱塩室40と、中間イオン交換膜50を介して隣接する第二小脱塩室60とで、第一の脱塩室39が形成されている。
【0017】
第二の脱イオンモジュール6は、陽極10側から順に配置されたアニオン交換膜90と枠体101と中間イオン交換膜110と枠体121とカチオン交換膜130とで、概略構成されている。第二の脱イオンモジュール6には、枠体101の開口部にアニオン交換体が単床形態で充填され第一小脱塩室100が形成され、枠体121の開口部にカチオン交換体が単床形態で充填され第二小脱塩室120が形成されている。第一小脱塩室100と、中間イオン交換膜110を介して隣接する第二小脱塩室120とで、第二の脱塩室99が形成されている。
【0018】
アニオン交換膜30には、通水孔32、33、34が形成されている。通水孔32には、被処理水流入ライン42が接続されている。通水孔33と34には、配管35が接続されている。枠体41には、通水孔44、45、46が形成されている。枠体41には、通水孔44と第一小脱塩室40とを連通する通水路47と、通水孔45と第一小脱塩室40とを連通する通水路48が形成されている。中間イオン交換膜50には、通水孔51が形成されている。枠体61には通水孔62、63が形成されている。枠体61には、通水孔62と第二小脱塩室60とを連通する通水路64と、通水孔63と第二小脱塩室60とを連通する通水路65とが形成されている。カチオン交換膜70には、通水孔71、72が形成されている(以上、第一の脱イオンモジュール4)。枠体81には通水孔84、85が形成されている。
【0019】
アニオン交換膜90には、通水孔91、92が形成されている。枠体101には、通水孔103、104、105、106が形成されている。枠体101には、通水孔104と第一小脱塩室100とを連通する通水路107と、通水孔105と第一小脱塩室100とを連通する通水路108とが形成されている。中間イオン交換膜110には、通水孔111、112、113、114が形成されている。枠体121には、通水孔123、124、125、126が形成されている。枠体121には、通水孔123と第二小脱塩室120とを連通する通水路127と、通水孔126と第二小脱塩室120とを連通する通水路128とが形成されている。カチオン交換膜130には、通水孔132、133、134が形成されている。通水孔132と133とには、配管135が接続されている。通水孔134には、脱イオン水流出ライン102が接続されている(以上、第二の脱イオンモジュール6)。
【0020】
「第一の通水手段」は、通水孔33、34、45、46、51、62、71、84、91、103、111、123、通水路48、64、127、配管35で構成されている。「第二の通水手段」は、通水孔63、72、85、92、104、106、112、114、124、126、132、133、通水路65、107、128、配管135で構成されている。
【0021】
陽極10と陰極150とは、図示されない電源と接続されている。
陽極室12は、陽極10と枠体11と仕切膜14とが順に配置され、枠体11の開口部にイオン交換体が充填され形成されたものである。陽極室12には、電極水流入ライン16と電極水流出ライン18とが接続されている。
陰極室152は、陽極10側から仕切膜154と枠体151と陰極150とが順に配置され、枠体151の開口部にイオン交換体が充填され形成されたものである。陰極室152には、電極水流入ライン156と電極水流出ライン158とが接続されている。
【0022】
第一の濃縮室20は、仕切膜14とアニオン交換膜30との間に枠体21が配置され、枠体21の開口部にアニオン交換体が単床形態で充填され形成されたものである。第一の濃縮室20には、濃縮水流入ライン22と濃縮水流出ライン23とが接続されている。
第二の濃縮室80は、カチオン交換膜70とアニオン交換膜90との間、即ち、第一の脱イオンモジュール4と第二の脱イオンモジュール6との間に枠体81が配置され、枠体81の開口部にアニオン交換体が単床形態で充填され形成されたものである。第二の濃縮室80には、濃縮水流入ライン82と濃縮水流出ライン83とが接続されている。
第三の濃縮室140は、仕切膜154とカチオン交換膜130との間に枠体141が配置され、枠体141の開口部にアニオン交換体が単床形態で充填され形成されたものである。第三の濃縮室140には、濃縮水流入ライン142と濃縮水流出ライン143とが接続されている。
濃縮水流出ライン23と濃縮水流入ライン82とは、図示されない配管により接続されている。
【0023】
「濃縮水を前記の任意の第一小脱塩室とアニオン交換膜又はカチオン交換膜を介して隣接する濃縮室に流通させ、次いで前記の他の第一小脱塩室とアニオン交換膜又はカチオン交換膜を介して隣接する濃縮室に流通させる手段」は、濃縮水流出ライン23と濃縮水流入ライン82と、これらを接続する図示されない配管とで構成されている。
【0024】
イオン交換膜としては、大別すると、原料モノマー液を補強体に含浸させた後に重合させ、全体を均質に形成した均質膜と、イオン交換樹脂を溶解成型可能なポリオレフィン系樹脂と共に粉砕成型した不均質膜の2種類がある。本実施形態におけるアニオン交換膜30、カチオン交換膜70、アニオン交換膜90、カチオン交換膜130はいずれも特に限定されず、EDIの製造の簡便さや、被処理水の水質、脱イオン水に求める水質、処理量等に応じて選択することができる。
【0025】
本実施形態における中間イオン交換膜50は、アニオン交換膜である。中間イオン交換膜は、特に限定されず、アニオン交換膜30と同様のものを用いることができる。中間イオン交換膜110は、中間イオン交換膜50と同様である。
【0026】
第一小脱塩室40に充填するアニオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、中でも最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。アニオン交換樹脂の種類は特に限定されず、強塩基性アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂等が挙げられる。例えば、市販品としてアンバーライト(商品名、ローム・アンド・ハース社製)等が挙げられる。
第一小脱塩室100に充填するアニオン交換体は、第一小脱塩室40に充填するアニオン交換体と同様である。
【0027】
第二小脱塩室60に充填するカチオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、中でも最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。カチオン交換樹脂の種類は特に限定されず、強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂等が挙げられる。例えば、市販品としてアンバーライト(商品名、ローム・アンド・ハース社製)等が挙げられる。
第二小脱塩室120に充填するカチオン交換体は、第二小脱塩室60に充填するカチオン交換体と同様である。
【0028】
枠体41は、絶縁性を有し、被処理水が漏洩しない材質であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、ノリル等の樹脂製の枠体を挙げることができる。
枠体41の厚さは特に限定されることなく、所望する第一小脱塩室40の厚さに応じて設定することができる。例えば、第一小脱塩室40の厚さは、4〜16mmが好ましく、6〜12mmがより好ましい。4mm未満であると被処理水の滞留時間が十分に確保できず脱イオン水の水質が低下するおそれがある。16mmを超えると、第一の脱イオンモジュール4の成形が困難になる傾向となる。
【0029】
枠体61、101、121の材質は、枠体41と同様である。枠体61、101、121の厚さは、枠体41の厚さと同様である。
【0030】
第一小脱塩室40の厚さと第二小脱塩室60の厚さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第一小脱塩室100の厚さと第二小脱塩室120の厚さとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、第一小脱塩室40の厚さと第一小脱塩室100の厚さとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第一小脱塩室40の厚さと第一小脱塩室100の厚さとは、各小脱塩室に求める体積に応じて決定できる。例えば、各小脱塩室の厚さは、前段の小脱塩室である第一小脱塩室40の体積V1と、後段の小脱塩室である第一小脱塩室100の体積V2との体積比が、好ましくはV1:V2=2:8〜8:2となるように設定される。上記範囲内であれば、第一小脱塩室100における被処理水の通水差圧を抑制できると共に、被処理水中のアニオン成分(Cl、HCO、CO2−、SiO等)を良好に除去できるためである。
【0031】
陽極10は、陽極として機能を発揮するものであれば特に限定されないが、電極水中にClが存在する場合には、陽極には塩素発生が起きるため、耐塩素性能を有するものが好ましい。例えば、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属、あるいは前記貴金属をチタン等に被覆した網状あるいは板状の電極を挙げることができる。
陰極150は、陰極としての機能を発揮するものであれば特に限定されず、例えば、板状のステンレスや網状のステンレス、又は、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属、あるいは前記貴金属をチタン等に被覆した網状あるいは板状の電極を挙げることができる。
【0032】
枠体11の材質は、枠体41と同様である。枠体11の厚さは、陽極室12に求める厚さに応じて決定できる。陽極室12の厚さは、例えば、0.3〜10mmとされる。
陽極室12に充填されるイオン交換体は、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。イオン交換体の充填形態は、被処理水の水質等を勘案して決定でき、例えば、アニオン交換体の単床形態、カチオン交換体の単床形態もしくはアニオン交換体とカチオン交換体との混床形態又は複床形態が挙げられる。
【0033】
枠体151の材質は、枠体41と同様である。枠体151の厚さは、陰極室152に求める厚さに応じて決定できる。陰極室152の厚さは、陽極室12の厚さと同様である。陰極室152に充填するイオン交換体は、陽極室12に充填するイオン交換体と同様である。
【0034】
仕切膜14は、イオン交換膜であれば特に限定されず、被処理水の水質や、EDI1の運転条件等を考慮して選択することができる。例えば、カチオン交換膜又はアニオン交換膜を選択することができる。仕切膜154は、仕切膜14と同様である。
【0035】
第一の濃縮室20に充填されるアニオン交換体は、第一小脱塩室40に充填されるアニオン交換体と同様である。アニオン交換体の単床形態とすることで、アニオン交換膜30に接するアニオン交換体層が形成され、第一小脱塩室40から第一の濃縮室20へのアニオン成分の移動が促進されるためである。
枠体21の材質は枠体41と同様である。枠体21の厚さは、第一の濃縮室20に求める厚さに応じて決定できる。第一の濃縮室20の厚さは、例えば、3〜10mmとされる。
【0036】
第二の濃縮室80に充填されるアニオン交換体は、第一小脱塩室40に充填されるアニオン交換体と同様である。アニオン交換体の単床形態とすることで、アニオン交換膜90に接するアニオン交換体層が形成され、第一小脱塩室100から第二の濃縮室80へのアニオン成分の移動を促進し、アニオン交換膜90面にアニオン成分が高濃度に存在することを防止できる。この結果、第二小脱塩室60から第二の濃縮室80に移動してきた硬度成分(Ca2+、Mg2+等)が、アニオン交換膜90面で高濃度のアニオン成分と接触しないため、スケール発生を防止できる。
枠体81の材質は、枠体41と同様である。枠体81の厚さは、第二の濃縮室80に求める厚さに応じて決定できる。第二の濃縮室80の厚さは、例えば、3〜10mmとされる。
【0037】
第三の濃縮室140に充填されるアニオン交換体は、第一小脱塩室40に充填されるアニオン交換体と同様である。
枠体141の材質は、枠体41と同様である。枠体141の厚さは、第三の濃縮室140に求める厚さに応じて決定できる。第三の濃縮室140の厚さは、例えば、3〜10mmとされる。
【0038】
第一の濃縮室20の厚さ、第二の濃縮室80の厚さ、第三の濃縮室140厚さは、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。各濃縮室の厚さは、各濃縮室に求める体積に応じて決定できる。例えば、第一の濃縮室20と第二の濃縮室80の厚さは、前段の濃縮室である第一の濃縮室20の体積v1と、後段の濃縮室である第二の濃縮室80の体積v2との体積比が、好ましくは2:8〜8:2となるように設定される。上記範囲内であれば、第二の濃縮室80における濃縮水の通水差圧を抑制し、十分量の濃縮水を通水できる。この結果、第一小脱塩室100から第二の濃縮室80へのアニオン成分の移動を促進できる。
【0039】
次に、EDI1を用いた脱イオン水の製造方法について説明する。本発明の脱イオン水の製造方法は、工業用水や井水の濁質成分を除濁膜にて除去し、さらに逆浸透(RO)膜にて処理した水等を被処理水として脱イオン処理し、脱イオン水を得るものである。
【0040】
まず、電極水流入ライン16から陽極室12に電極水を流し、電極水流入ライン156から陰極室152に電極水を流すと共に、陽極10と陰極150との間に、直流電圧を印加する。陽極室12に流入した電極水は、上昇流で、陽極室12のイオン交換体内を拡散しながら流通する。この間、電極水は陽極10から発生したCl、O等を取り込んで、電極水流出ライン18から流出する。陰極室150に流入した電極水は、上昇流で、陰極室150のイオン交換体内を拡散しながら流通する。この間、電極水は陰極150から発生したH等を取り込んで、電極水流出ライン158から流出する。
【0041】
電極水は、例えば、被処理水と同じ水源の水、脱イオン水や純水等が挙げられる。陽極室10への電極水の供給量は、印加電圧等に応じて決定することが好ましい。例えば、5〜200L/h、好適には30〜100L/hの範囲で決定される。電極水の供給量が少なすぎると、発生したO、Clガスを充分に排出することが困難となり、電極水の供給量が多すぎると、回収率が低下するため、好ましくない。陰極室150への電極水の供給量は、陽極室10への電極室の供給量と同様である。
印加する電流は、被処理水の水質やEDI1の規模等を勘案して決定される。
【0042】
次いで、濃縮水流入ライン22から第一の濃縮室20に濃縮水を流通させ、濃縮水流入ライン142から第三の濃縮室140に濃縮水を流通させる。濃縮水は、例えば、被処理水と同じ水源の水、脱イオン水や純水等が挙げられる。
【0043】
EDI1への濃縮水の供給量は、EDI1の能力、被処理水の水質や処理量を勘案して決定できる。濃縮水の供給量が少なすぎると、各濃縮室に移動したイオンの濃度拡散にむらが生じ、例えば、アニオン交換膜90面の濃度分極層が厚くなり、スケール発生のおそれがある。一方、濃縮水の供給量が多すぎると、脱イオン水の回収率が低下するため好ましくない。
【0044】
このような観点から、例えば、EDI1への濃縮水供給量は、好ましくは下記(1)式で表される濃縮倍率が3〜20となるように設定される。なお、下記(1)式中、「EDIへの濃縮水供給量」は、第一の濃縮室20への濃縮水供給量と第三の濃縮室140への濃縮水供給量の合計である。また、下記(1)式による濃縮倍率は、被処理水と濃縮水とに同一の原水を用いて、かつ、被処理水中のイオン成分が全て濃縮室に移行すると仮定し定義付けられる。
【0045】
濃縮倍率=(EDIへの被処理水供給量+EDIへの濃縮水供給量)÷EDIへの濃縮水供給量 ・・・(1)
【0046】
被処理水を被処理水流入ライン42から、脱イオンモジュール群2に供給する。脱イオンモジュール群2への被処理水の供給量は、EDI1の能力や被処理水の水質を勘案して決定することができる。被処理水の供給量は、好ましくは、第一小脱塩室40における空間速度(SV)がSV=30〜300L/L・h−1となるように調整される。SVが高すぎると、イオン除去性能が低下したり、SVの増加と共に発生する通液速度(LV)の増加によって通水差圧が高くなり、第一の脱イオンモジュール4や第二の脱イオンモジュール6の破損を招いたり、運転上の困難を起こしたりするので好ましくない。一方、SVが低すぎると、第二小脱塩室60と第二小脱塩室100への流量分配が適切に行われず、脱イオン処理が充分な脱イオンモジュールと、脱イオン処理が不充分な脱イオンモジュールとが生じ、EDI1全体としての性能に悪影響を与える場合がある。
【0047】
なお、SVは、イオン交換体の単位体積(L)に対して1時間に流通させる流量(L)であり、L/L・h−1で表される(以降において同じ)。また、LVとは、単位面積当たりの流量であり、m/hで表される線速度である。
【0048】
供給された被処理水は、通水孔32、44、通水路47を順に流通し、第一小脱塩室40に流入する。第一小脱塩室40に流入した被処理水は、第一小脱塩室40のアニオン交換体内を拡散しながら流通する。この間、被処理水中のCl、HCO等のアニオン成分は、アニオン交換体に吸着される。吸着されたアニオン成分は、陽極10に引き寄せられ、アニオン交換膜30を透過して第一の濃縮室20へ移動する。ここで、第一小脱塩室40では、アニオン成分の除去が進むと、被処理水のpHがアルカリ性側に移行して、アニオン成分の競合イオンであるOHの濃度が高くなる。このため、アニオン成分に対する電流効率が低下し、被処理水中のアニオン成分の濃度は、一定濃度以下に到達しにくくなる。この結果、第一小脱塩室40を流通した被処理水は、ある程度のアニオン成分が残存した状態となる。
【0049】
第一小脱塩室40を流通した被処理水は、通水路48、通水孔45、33、配管35、通水孔34、46、51を順に流通し、通水孔62に至る。通水孔62に至った被処理水の一部は、通水路64を流通し第二小脱塩室60に流入する。第二小脱塩室60に流入した被処理水は、第二小脱塩室60のカチオン交換体内を拡散しながら流通する。この間、被処理水中のNa、Ca2+等のカチオン成分は、カチオン交換体に吸着される。吸着されたカチオン成分は、陰極150に引き寄せられ、カチオン交換膜70を透過して第二の濃縮室80に移動する。ここで、第二小脱塩室60に流入した被処理水は、pHがアルカリ性側に移行しているため、カチオン成分の競合イオンであるH濃度が低い。このため、カチオン成分の除去は、良好に行われる。第二小脱塩室60を流通した被処理水は、通水路65、通水孔63、72、85、92、106、114を順に流通し、通水孔126に至る。なお、第二小脱塩室60を流通した段階で、被処理水のpHは中性領域となっている。
【0050】
また、中間イオン交換膜50とカチオン交換体との接点では、水分解によりOHとHとが生じる。水分解により生じたOHは、中間イオン交換膜50を透過して第一小脱塩室40に移動し、第一小脱塩室40のアニオン交換体の再生に利用される。水分解により生じたHは、第二小脱塩室60のカチオン交換体の再生に利用される。
【0051】
通水孔62に至った被処理水の他の一部は、さらに通水孔71、84、91、103、111、123、通水路127を順に流通し、第二小脱塩室120に流入する。第二小脱塩室120に流入した被処理水は、第二小脱塩室120のカチオン交換体中を拡散しながら流通する。この間、被処理水中のカチオン成分は、カチオン交換体に吸着される。吸着されたカチオン成分は、陰極150に引き寄せられ、カチオン交換膜130を透過して第三の濃縮室140に移動する。第二小脱塩室120に流入した被処理水は、第二小脱塩室60に流入した被処理水と同様にアルカリ性に移行している。このため、第二小脱塩室120を流通した被処理水は、カチオン成分が良好に除去されると共に、中性領域となる。第二小脱塩室120を流通した被処理水は、通水路128を流通して通水孔126に至る。こうして、第二小脱塩室60を流通した被処理水と、第二小脱塩室120を流通した被処理水とは、通水孔126で合流する。
【0052】
また、中間イオン交換膜110とカチオン交換体との接点では、水分解によりOHとHとが生じる。水分解により生じたOHは、中間イオン交換膜110を透過して第一小脱塩室100に移動し、第一小脱塩室100のアニオン交換体の再生に利用される。水分解により生じたHは、第二小脱塩室120のカチオン交換体の再生に利用される。
【0053】
通水孔126で合流した被処理水は、通水孔133、配管135、通水孔132、124、112、104、通水路107を順に流通し、第一小脱塩室100に流入する。第一小脱塩室100に流入した被処理水は、第一小脱塩室100のアニオン交換体内を拡散しながら流通する。この間、被処理水中のアニオン成分は、アニオン交換体に吸着される。吸着されたアニオン成分は、陽極10に引き寄せられアニオン交換膜90を透過し、第二の濃縮室80に移動する。ここで、第一小脱塩室100に流入した被処理水は、第一小脱塩室40で予めアニオン成分の大部分が除去されているため、アニオン成分の除去が進んでも中性領域のpHが維持される。このため、残存しているアニオン成分を良好に除去できる。被処理水は、第一小脱塩室100を流通し、脱イオン水となる。脱イオン水は、通水路108、通水孔105、113、125、134を順に流通し、脱イオン水流出ライン102から流出する。
【0054】
第一の濃縮室20に流入した濃縮水は、上昇流で第一の濃縮室20のイオン交換体内を拡散しながら流通する。この間、濃縮水は、第一小脱塩室40から第一の濃縮室20に移動したアニオン成分を取り込んで、濃縮水流出ライン23から流出する。
なお、第一小脱塩室40に流入する被処理水には、多種類のアニオン成分が含まれていることが想定される。このような被処理水が第一小脱塩室40を流通すると、HCO、CO、Cl等が優先的にアニオン交換体に吸着され、第一の濃縮室20に移動する。一方、OHの第一の濃縮室20への移動は少ない。このため、第一の濃縮室20を流通した濃縮水は、OHに比べHCO、CO、Cl等を多く含んだ状態で、濃縮水流出ライン23、濃縮水流入ライン82を流通し、第二の濃縮室80に流入する。
【0055】
第二の濃縮室80に流入した濃縮水は、上昇流で第二の濃縮室80のイオン交換体内を拡散しながら流通する。この間、濃縮水は、第二小脱塩室60から第二の濃縮室80に移動したカチオン成分と、第一小脱塩室100から第二の濃縮室80に移動したアニオン成分とを取り込んで、濃縮水流出ライン83から流出する。
第二の濃縮室80を流通する濃縮水には、第一小脱塩室40又は第二小脱塩室80で除去されたアニオン成分が含まれる。このアニオン成分の内、HCO、COは、ガス化してカチオン交換膜70を透過し、第二小脱塩室60に移動してくる場合がある。このように、第二の濃縮室80から第二小脱塩室60に移動し被処理水に混入したHCO、COは、さらに被処理水が第一小脱塩室100を流通させることで除去できる。
【0056】
第三の濃縮室140に流入した濃縮水は、上昇流で、第三の濃縮室140のイオン交換体内を拡散しながら流通する。この間、濃縮水は、第二小脱塩室120から第三の濃縮室140に移動したカチオン成分を取り込んで、濃縮水流出ライン143から流出する。
【0057】
上述のとおり、EDI1では、被処理水を第一小脱塩室40に流通させてアニオン成分を除去した後、被処理水を第二小脱塩室60又は第二小脱塩室120に分配し流通させてカチオン成分を除去し、さらに各第二小脱塩室を流通した被処理水を第一小脱塩室100に流通させて、再度、アニオン成分を除去している。このため、被処理水中のアニオン成分及びカチオン成分が高度に除去された脱イオン水を製造できる。
加えて、第一小脱塩室40を流通した被処理水を第二小脱塩室60と第二小脱塩室120とに分配するため、第二小脱塩室60又は第二小脱塩室120における通水差圧の上昇を抑制できる。通水差圧の上昇を抑制することで、各第二小脱塩室での被処理水の滞留時間を十分なものとし、カチオン成分を良好に除去できる。さらに、通水差圧の上昇を抑制することで、EDI1での被処理水の処理量を低減することなく、高い水質の脱イオン水を安定的に製造できる。
【0058】
中間イオン交換膜50と第二小脱塩室60のカチオン交換体との接点で生じたOHとHとは、それぞれ第一小脱塩室40のアニオン交換体、第二小脱塩室60のカチオン交換体の再生に寄与するため、電流効率の面で無駄が少ない。また、中間イオン交換膜110と第二小脱塩室120のカチオン交換体との設定で生じたOHとHとは、それぞれ第一小脱塩室100のアニオン交換体、第二小脱塩室120のカチオン交換体の再生に寄与するため、電流効率の面で無駄が少ない。この点について、図3を用いて説明する。図3は、脱イオンモジュール4におけるイオンの流れを説明する模式図である。図3に示すように、被処理水を第二小脱塩室60に流通させると、中間イオン交換膜50と第二小脱塩室60のカチオン交換体との接点(界面)では、第一小脱塩室40側にOH、第二小脱塩室60側にHが発生する。第一小脱塩室40側に発生したOHは、第一小脱塩室40のアニオン交換体の再生に寄与する。アニオン交換体の再生に当たって余剰となったOHは、第一の濃縮室20に移動する。第二小脱塩室60側に発生したHは、第二小脱塩室60のカチオン交換体の再生に寄与する。カチオン交換体の再生に当たって余剰となったHは、第二の濃縮室80に移動する。
【0059】
一般に、高濃度のOHと、Ca2+、Mg2+等の硬度成分とが存在すると、スケールが発生しやくなる。第一小脱塩室100に流入した被処理水は、第一小脱塩室40を流通した際にHCO、CO、Cl等の大部分が除去されている。このため、第一小脱塩室100から第二の濃縮室80に移動するアニオン成分の大部分は、OHである。このため、EDI1では、第一の濃縮室20を流通してHCO、CO、Cl等が多く含まれた濃縮水を第二の濃縮室80に流通させることで、硬度成分とOHとが出会う頻度を低減させ、アニオン交換膜90面でのスケール発生の防止を図れる。
【0060】
第一小脱塩室40及び100には、アニオン交換体が単床形態で充填され、第二小脱塩室60及び120には、カチオン交換体が単床形態で充填されている。このため、各第一小脱塩室及び各第二小脱塩室では、電流の偏りが防止され、電流効率の向上が図れる。
【0061】
このように、本発明によれば、従来の脱塩室2セル構造のEDIを利用し、被処理水の処理量を確保しつつ、スケール発生を防止しつつ、原水水質の変動に影響されずに高い水質の脱イオン水を得ることができる。
【0062】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
上述の実施形態では、EDI1に1つの脱イオンモジュール群2が設けられているが、例えば、2つ以上の脱イオンモジュール群2が設けられていてもよい。2つ以上の脱イオンモジュール群2を設ける場合、各脱イオンモジュール群2でそれぞれ個別に脱イオン水を製造してもよいし、2つ以上の脱イオンモジュール群2に直列通水して脱イオン水を製造してもよい。
【0063】
上述の実施形態では、脱イオンモジュール群2が、第一の脱イオンモジュール4、第二の脱イオンモジュール6の2つの脱イオンモジュールにより構成されている。しかしながら、脱イオンモジュール群は、3つ以上の脱イオンモジュールにより構成されていてもよい。
【0064】
3つ以上の脱イオンモジュールにより脱イオンモジュール群を構成する場合、最初に被処理水を流通させる第一小脱塩室は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。なお、最初に被処理水を流通させる前段の第一小脱塩室の数と、後段の第一小脱塩室の数とは、前段の第一小脱塩室の合計の体積V1と後段の第一小脱塩室の合計の体積V2との体積比がV1:V2=2:8〜8:2となるように、設定することが好ましい。
加えて、最初に濃縮水を流通させる前段の濃縮室の数と後段の濃縮室の数とは、前段の濃縮室の合計の体積v1と後段の濃縮室の合計の体積v2との体積が、v1:v2=2:8〜8:2となるように、設定することが好ましい。
【0065】
上述の実施形態では、中間イオン交換膜50、110がアニオン交換膜である。本発明はこれに限定されず、中間イオン交換膜50、110の種類は、被処理水の水質、脱イオン水に求める水質等を勘案して選択することができる。中間イオン交換膜50、110としては、アニオン交換膜の他、カチオン交換膜の単一膜、アニオン交換膜とカチオン交換膜との両方を配置した複合膜又はバイポーラ膜等が挙げられる。ただし、被処理水がアニオン成分を多く含む場合、中間イオン交換膜50及び110は、アニオン交換膜の単一膜が好ましい。例えば、中間イオン交換膜50をアニオン交換膜の単一膜とすることで、第二小脱塩室60を流通する被処理水中のアニオン成分(Cl、HCO、CO2−、SiO等)を第一小脱塩室40に移動させることで、アニオン成分を高度に除去できるためである。
なお、中間イオン交換膜50と中間イオン交換膜110には、異なる種類のイオン交換膜を用いてもよい。
【0066】
上述の実施形態では、第一小脱塩室40及び100は、いずれもアニオン交換体の単床形態であるが、例えば、カチオン交換体の単床形態、アニオン交換体とカチオン交換との混床形態又は複床形態であってもよい。ただし、上述の実施形態のように第一小脱塩室40及び100が陽極10側に形成されている場合には、アニオン交換体の単床形態もしくはアニオン交換体とカチオン交換との混床形態又は複床形態が好ましく、アニオン交換体の単床形態がより好ましい。
【0067】
上述の実施形態では、第二小脱塩室60及び120は、いずれもカチオン交換体の単床形態であるが、例えば、アニオン交換体の単床形態、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態又は複床形態であってもよい。ただし、上述の実施形態のように第二小脱塩室60及び120が陰極側に形成されている場合には、カチオン交換体の単床形態もしくはアニオン交換体とカチオン交換との混床形態又は複床形態が好ましく、カチオン交換体の単床形態がより好ましい。
【0068】
上述の実施形態では、アニオン交換膜と中間イオン交換膜との間に形成された小脱塩室を第一小脱塩室とし、カチオン交換膜と中間交換膜との間に形成された小脱塩室を第二小脱塩室としている。しかしながら、本発明は、これに限定されず、例えば、アニオン交換膜と中間イオン交換膜との間に形成された小脱塩室を第二小脱塩室とし、カチオン交換膜と中間交換膜との間に形成された小脱塩室を第一小脱塩室としてもよい。第一小脱塩室及び第二小脱塩室が形成される位置は、被処理水の水質等を勘案して決定できる。
なお、カチオン成分に比べて、アニオン成分が不純物として多く含まれる水を被処理水とする場合には、アニオン交換膜と中間イオン交換膜との間に形成された小脱塩室を第一小脱塩室とし、カチオン交換膜と中間交換膜との間に形成された小脱塩室を第二小脱塩室とすることが好ましい。
【0069】
上述の実施形態では、第一小脱塩室40、100、第二小脱塩室60、120の被処理水の流通方向が、全て下降流とされている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、小脱塩室の被処理水の流通方向は、全て上昇流としてもよいし、各小脱塩室毎に異なっていてもよい。
【0070】
上述の実施形態では、第一の通水手段が、脱イオンモジュール群2に形成された通水孔、通水路と、脱イオンモジュール群2に設けられた配管により構成されている。しかしながら、第一の通水手段は、例えば、脱イオンモジュール群2の外部に設けられた配管により構成されていてもよい。また、第二の通水手段は、第一の通水手段と同様に、脱イオンモジュール群2の外部に設けられた配管により構成されていてもよい。
【0071】
上述の実施形態では、第一の濃縮室20、第二の濃縮室80及び第三の濃縮室140は、いずれもアニオン交換体の単床形態とされている。しかしながら、各濃縮室に充填されるイオン交換体はアニオン交換体の単床形態に限定されず、例えば、カチオン交換体の単床形態、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態又は複床形態であってもよい。また、各濃縮室にはイオン交換体を充填せず、スペーサ等を配置してもよい。ただし、各濃縮室でのスケール発生防止の観点からは、アニオン交換体を単床形態で充填することが好ましい。
【0072】
上述の実施形態では、各濃縮室における濃縮水の流通方向が、上昇流とされている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、全ての濃縮室における濃縮水の流通方向が、下降流であってもよいし、各濃縮室で異なっていてもよい。
【0073】
上述の実施形態では、第一の濃縮室20を流通した濃縮水を第二の濃縮室80に流通させ、第三の濃縮室120には独立して濃縮水を流通させている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、第一の濃縮室20、第二の濃縮室80に独立して濃縮水を流通させてもよいし、第二の濃縮室80を流通した濃縮水を第三の濃縮室140に流通させてもよい。また、例えば、第一の濃縮室20を流通した濃縮水を第二の濃縮室80と第三の濃縮室140に分配して流通させてもよいし、第一の濃縮室20と第二の濃縮室80とに独立して流通させた濃縮水を合流させ、合流した濃縮水を第三の濃縮室140に流通させてもよい。ただし、スケール発生を防止する観点からは、上述の実施形態のように、前段の第一小脱塩室とアニオン交換膜又はカチオン交換膜を介して隣接する第一の濃縮室20を流通した濃縮水を、後段の第一小脱塩室とアニオン交換膜又はカチオン交換膜を介して隣接する第二の濃縮室80に流通させることが好ましい。
【0074】
上述の実施形態では、陽極室12にイオン交換体を充填しているが、例えば、イオン交換体を充填せずに、スペーサ等を配置してもよい。陰極室152も同様に、イオン交換体を充填せずに、スペーサ等を配置してもよい。
【0075】
上述の実施形態では、陽極室12及び陰極室152の電極水の流通方向が、上昇流とされている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、陽極室12及び陰極室152における電極水の流通方向が、下降流であってもよいし、陽極室12と陰極室152とで電極水の流通方向が異なっていてもよい。
【0076】
上述の実施形態では、第一小脱塩室40から第二小脱塩室60又は第二小脱塩室120、次いで第一小脱塩室100の順に被処理水が流通する、3段処理とされている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、2つ以上の脱イオンモジュール群2を設けた場合や、3つ以上の脱イオンモジュールで脱イオンモジュール群を構成する場合には、3段処理の前段又は後段でさらに他の脱塩室に被処理水を流通させてもよい。ただし、EDIにおける通水差圧の上昇を抑え、脱イオン水を効率的に製造する観点から、上述の実施形態のように3段処理とすることが好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
<導電率・比抵抗>
水質評価には導電率ならびに比抵抗を用いた。不純物を全く含んでいない水の場合、25℃の水における導電率の理論値は0.055μS/cm、比抵抗の理論値は18.2MΩ・cmとなる。脱イオン水の水質は、比抵抗が18.2MΩ・cmに近づき、かつ高ければ高いほど水質としては清浄であると評価できる。脱イオン水の水質評価は、比抵抗をもって行った。
導電率は、導電率計(873CC、FOXBORO社製)を用いて測定した。また、比抵抗は、比抵抗計(873RS、FOXBORO社製)を用いて測定した。
【0078】
<シリカ濃度>
EDIの処理性能の一指標となるシリカ濃度を測定することにより、水質評価を行った。シリカ濃度は、分光光度計(U−3010、株式会社日立ハイテクノロジー製)を用い、モリブデン青吸光光度法により測定した。
【0079】
<脱塩室差圧>
各例のEDIの通水差圧として、脱塩室差圧を測定した。脱塩室差圧は、圧力計(GS50、長野計器株式会社製)を用い、各例のEDIに対する被処理水の供給圧(P1)と、脱イオン水流出ラインでの脱イオン水の排出圧(P2)とを測定し、下記(2)により算出した。
【0080】
脱塩室差圧=P1−P2 ・・・(2)
【0081】
(実施例1)
下記仕様にて、図2に示すEDI1と同様のEDI−Aを製造した。EDI−Aには、4つの脱イオンモジュールからなる脱イオンモジュール群が1つ設けられている。
EDI−Aは、被処理水を2つの第一小脱塩室(前段の第一小脱塩室)に下降流で流通させた後、4つの第二小脱塩室に分配し下降流で流通させ、その後、4つの第二小脱塩室を流通した被処理水を合流させ、再度、残りの2つの第一小脱塩室(後段の第一小脱塩室)に分配して下降流で流通する構造とした。加えて、EDI−Aは、濃縮水を前段の第一小脱塩室とアニオン交換膜を介して隣接する2つの濃縮室に上昇流で流通させた後、後段の第一小脱塩室とアニオン交換膜を介して隣接する2つの濃縮室及び残りの濃縮室に分配し、上昇流で流通させる構造とした。電極水は、陰極室に上昇流で流通させた後、陽極室に上昇流で流通させた。
得られたEDI−Aを用い、下記運転条件にて脱イオン水の製造を2000時間、連続で行った。運転開始2000時間後に、得られた脱イオン水の比抵抗、シリカ濃度、脱塩室差圧、EDI−Aの平均印加電圧を測定し、その結果を表1に示す。
なお、被処理水の硬度は、原子吸光分光光度計(SpectrAA、VARIAN社製)での測定値であり、全炭酸濃度は湿式紫外線酸化TOC分析計(900型、SIEVERS社製)での測定値である。
【0082】
<EDI−A仕様>
(1)カチオン交換膜:株式会社アストム製
(2)中間イオン交換膜:株式会社アストム製アニオン交換膜
(3)アニオン交換膜:株式会社アストム製
(4)第一小脱塩室厚さ:9mm
(5)第二小脱塩室厚さ:9mm
(6)脱塩室寸法:幅280mm×高さ400mm
(7)第一小脱塩室充填イオン交換体:アニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)単床形態
(8)第二小脱塩室充填イオン交換体:カチオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)単床形態
(9)濃縮室充填イオン交換体:アニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製)単床形態
(10)前段の第一小脱塩室数:2つ
(11)後段の第一小脱塩室数:2つ
【0083】
<運転条件>
(1)被処理水:工業用水を逆浸透膜装置で処理して得た水
(2)被処理水の導電率:7.7μS/cm
(3)被処理水の比抵抗:0.13MΩ・cm
(4)被処理水中のシリカ濃度:889μg/L
(5)被処理水中硬度:0.27mgCaCO/L
(6)被処理水中全炭酸濃度:8.2mgCO/L
(7)被処理水供給量:0.4m/h
(8)濃縮水供給量:0.1m/h
(9)電極水供給量:10L/h
(10)運転電流値:2.5A
【0084】
(実施例2)
前段の第一小脱塩室数を3つとし、後段の第一小脱塩室数を1つとした以外は、実施例1と同様の仕様で、EDI−Bを製造した。EDI−Bを用い、実施例1と同様の条件で脱イオン水の製造を行った。運転開始2000時間後に、得られた脱イオン水の比抵抗、シリカ濃度、脱塩室差圧、EDI−Bの平均印加電圧を測定し、その結果を表1に示す。
【0085】
(比較例1)
脱イオン水を4つの第一小脱塩室に分配し下降流で流通させた後、4つの第一小脱塩室を流通した被処理水を合流させ、再度、4つの第二小脱塩室に分配し下降流で流通させる構造とした。加えて、全ての濃縮室に独立して濃縮水を上昇流で流通させる構造とした。これらの変更点以外は、実施例1と同様の仕様でEDI−Cを得た。EDI−Cを用い、実施例1と同様の条件で脱イオン水の製造を行った。運転開始2000時間後に、得られた脱イオン水の比抵抗、シリカ濃度、脱塩室差圧、EDI−Cの平均印加電圧を測定し、その結果を表1に示す。
【0086】
(比較例2)
脱イオンモジュール毎には、被処理水を第一小脱塩室に下降流で流通させ、第一小脱塩室を流通した被処理水を第二小脱塩室に下降流で流通させる構造とした。さらに、4つの脱イオンモジュールに、脱イオン水を直列通水する構造とした。これらの変更点以外は、実施例1と同様の仕様で、EDI−Dを製造した。EDI−Dを用い、実施例1と同様の条件で脱イオン水の製造を行った。EDI−Dは、運転開始直後に脱塩室差圧が0.6MPa以上となり、脱イオン水の製造ができなくなった。本比較例では、運転開始直後に得られた脱イオン水の比抵抗、シリカ濃度、脱塩室差圧、EDI−Dの平均印加電圧を測定し、その結果を参考値として表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1の実施例1、2、比較例1、2に示すように、各例における平均印加電圧の差異は小さかった。
前段の第一小脱塩室を2つとし、後段の第一小脱塩室を2つとし、被処理水を流通させた実施例1は、比抵抗16.6MΩ・cm、シリカ濃度21μg/Lという極めて高い水質の脱イオン水が得られた。前段の第一小脱塩室を3つとし、後段の第一小脱塩室を1つとし、被処理水を流通させた実施例2は、比抵抗17.1MΩ・cm、シリカ濃度13μg/Lという、実施例1よりもさらに高い水質の脱イオン水が得られた。
これに対し、4つの脱イオンモジュールに独立して被処理水を流通させた比較例2では、比抵抗2.2、シリカ濃度750μg/Lという、低い水質の脱イオン水が得られた。また、4つの脱イオンモジュールに直列通水した比較例4は、比抵抗17.8MΩ・cm、シリカ濃度7μg/Lという高い水質が得られた。
加えて、実施例1、2、比較例1では、いずれも脱塩室差圧が0.2MPa未満であり、実用的なものであった。これに対し、比較例2は、脱イオン水の製造開始直後に脱塩室差圧が0.6MPa以上となり、運転できなかった。
運転開始2000時間後のEDI−A及びEDI−Bを分解して目視観察したところ、スケールの発生は見られなかった。
【0089】
以上の結果から、前段の第一小脱塩室を流通した被処理水を複数の第二小脱塩室に分配して流通させ、第二小脱塩室を流通した被処理水をさらに後段の第一小脱塩室に流通させる本発明のEDIは、処理量を維持したまま高い水質の脱イオン水を得られると共に、スケール発生を良好に防止できることが判った。
【符号の説明】
【0090】
1 電気式脱イオン水製造装置
10 陽極
20、80、140、234 濃縮室
30、90、230 アニオン交換膜
39、99、224 脱塩室
40、100 第一小脱塩室
50、110 中間イオン交換膜
60、120 第二小脱塩室
70、130、222 カチオン交換膜
150 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極側のカチオン交換膜と陽極側のアニオン交換膜とで区画され、被処理水を流通する複数の脱塩室が設けられ、
前記カチオン交換膜又は前記アニオン交換膜を介して前記脱塩室の両側に、濃縮水を流通する濃縮室が設けられ、
前記脱塩室には、前記カチオン交換膜と前記アニオン交換膜との間に配置された中間イオン交換膜によって、その厚さ方向に区画された第一小脱塩室と第二小脱塩室が形成され、
任意の前記第一小脱塩室を流通した被処理水を分配し、分配した被処理水を任意の複数の前記第二小脱塩室に流通させる第一の通水手段が設けられ、
前記の任意の第二小脱塩室を流通した被処理水を他の前記第一小脱塩室に流通させる第二の通水手段が設けられていることを特徴とする、電気式脱イオン水製造装置。
【請求項2】
前記第二の通水手段は、複数の前記第二小脱塩室を流通した被処理水を合流させ、合流した被処理水を前記の他の第一小脱塩室に流通させることを特徴とする、請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項3】
濃縮水を前記の任意の第一小脱塩室とアニオン交換膜又はカチオン交換膜を介して隣接する濃縮室に流通させ、次いで前記の他の第一小脱塩室とアニオン交換膜又はカチオン交換膜を介して隣接する濃縮室に流通させる手段が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項4】
前記の任意の第一小脱塩室の体積V1と、前記の他の第一小脱塩室の体積V2との体積比は、V1:V2=2:8〜8:2であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項5】
前記の任意の第一小脱塩室に隣接する濃縮室の体積v1と、前記の他の第一小脱塩室に隣接する濃縮室の体積v2との体積比は、v1:v2=2:8〜8:2であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項6】
前記第一小脱塩室は、前記アニオン交換膜と前記中間イオン交換膜との間にアニオン交換体が単床形態で充填されて形成され、前記第二小脱塩室は、前記カチオン交換膜と前記中間イオン交換膜との間にカチオン交換体が単床形態で充填されて形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項7】
前記中間イオン交換膜は、カチオン交換膜、アニオン交換膜、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の両方を配置した複式膜又はバイポーラ膜であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置を用いた脱イオン水の製造方法であって、任意の前記第一小脱塩室に流通させた被処理水を分配し、分配した被処理水を任意の複数の前記第二小脱塩室に流通させ、さらに他の前記第一小脱塩室に流通させることを特徴とする、脱イオン水の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−575(P2011−575A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147975(P2009−147975)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】