電気接点材料製造方法及び電気接点材料
【課題】 金属体表面上のグラファイト量を適量に設定することができる電気接点材料製造方法及び電気接点材料を提供する。
【解決手段】 帯電機構14で感光ドラム13を帯電し、帯電後の感光ドラム13を所定量回転させた後、露光機構15が感光ドラム13に向かって光を照射してドラム表面に静電潜像を形成する。その感光ドラム13を更に所定量回転させ、現像機構16が帯電したグラファイト粒子を感光体ドラムに現像し、感光ドラムの静電潜像にグラファイト粒子を付着させる。続いて、感光ドラム13のグラファイト粒子付着部分を試料11と向き合う位置まで回転させ、転写機構17が試料11の裏面から逆電荷をかけてグラファイト粒子を試料11に転写する。そして、試料11に転写したグラファイト粒子を定着機構18で試料表面に定着させる。
【解決手段】 帯電機構14で感光ドラム13を帯電し、帯電後の感光ドラム13を所定量回転させた後、露光機構15が感光ドラム13に向かって光を照射してドラム表面に静電潜像を形成する。その感光ドラム13を更に所定量回転させ、現像機構16が帯電したグラファイト粒子を感光体ドラムに現像し、感光ドラムの静電潜像にグラファイト粒子を付着させる。続いて、感光ドラム13のグラファイト粒子付着部分を試料11と向き合う位置まで回転させ、転写機構17が試料11の裏面から逆電荷をかけてグラファイト粒子を試料11に転写する。そして、試料11に転写したグラファイト粒子を定着機構18で試料表面に定着させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気回路のスイッチング接点等に用いる電気接点材料製造方法及び電気接点材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路のスイッチング接点等に用いる電気接点材料としては、例えば特許文献1〜3に開示されるような焼結材の銀−グラファイト合金が広く使用されている。グラファイトは、元来、溶着性が殆ど無く、化学的に極めて安定であり、非常に高い潤滑作用を有している。従って、グラファイトを含有した銀−グラファイト合金は耐摩耗性の高い部材となるため、銀−グラファイト合金を電気接点材料として用いれば、グリースやオイル等の潤滑剤を用いなくてもよいことから、銀−グラファイト合金はグリースレス摺動接点材料として使用される。
【0003】
ここで、焼結材を用いた場合、銀には多量のグラファイトを含有することができるが、銀に対するグラファイトの含有量が多くなると電気接点材料の強度が低くなり、もろくなってしまう問題がある。従って、電気接点材料の強度的な面を考えた場合には、例えば銅等の母材に対し、グラファイトを含有した銀をメッキすることによって、グラファイト含有の電気接点材料を製造する手法がとられる。
【特許文献1】特開2002−53919号公報
【特許文献2】特開1996−13065号公報
【特許文献3】特開昭63−7345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、グラファイトを含有した電気接点材料では、例えば金属体表面上のグラファイト量があまりに多いと金属体表面に露出する金属体の量が少なくなるため、これは電気接点材料としては好ましくない。よって、グラファイトの摺動性と金属体の金属接触とにバランスを持たせる必要があり、このためには金属体表面上のグラファイト量を適量とする必要がある。しかし、グラファイト含有の電気接点材料が焼結材で製造される場合、或いはメッキで製造される場合に拘らず、グラファイト粒子を金属体表面上に適量分布させることは難しい現状があり、何らかの対応策が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、金属体表面上のグラファイト量を適量に設定することができる電気接点材料製造方法及び電気接点材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明では、中心点回りに回転可能な感光体を帯電する手順と、前記感光体に露光する光量によって当該感光体の表面に静電潜像を形成する手順と、前記静電潜像を形成した前記感光体に、電荷を付与したグラファイト粒子を現像する手順と、前記グラファイト粒子の転写先である金属体を搬送する際に、当該金属体の裏側から逆電荷をかけることによって、前記感光体に現像された前記グラファイト粒子を前記金属体に転写する手順と、前記金属体に転写された前記グラファイト粒子を当該金属体の表面に定着する手順とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この発明によれば、まず最初に感光体の表面を帯電し、帯電後の感光体を所定量回転させて帯電部位を光受光可能な位置に配置し、その帯電部位を露光して静電潜像を形成する。続いて、静電潜像形成後の感光体を更に所定量回転させ、静電潜像部位をグラファイト現像可能な位置に配置し、静電潜像にグラファイト粒子を現像する。そして、グラファイト現像後の感光体を更に所定量回転させ、その現像部位をグラファイト転写可能な位置に配置し、金属体の裏側から逆電荷をかけることで、感光体に現像されたグラファイトを金属体に転写する。グラファイト転写後、金属体に転写されたグラファイトを金属体に定着させる。以上の処理が感光体の回転に合わせて連続的に行われることで、金属体の表面にグラファイト粒子が散布され、それが金属体に定着した状態となる。
【0008】
ところで、感光体を帯電させてそれを露光し、その感光体に粒子を現像して被転写体に転写する処理は、転写物となる粒子を被転写体に均一に散布することが可能な技術である。従って、この処理を用いてグラファイト粒子を金属体に散布すれば、グラファイト粒子をほぼ均一に金属体に散布することが可能となるため、金属体表面上のグラファイト量にバラツキが生じ難くなることから、金属体表面上のグラファイト量を適量とすることが可能となる。よって、金属体の耐摩耗性は金属体表面上のグラファイト量によって決まるため、金属体表面上のグラファイトが適量であれば、金属体(電気接点材料)が持つ耐摩耗性が好適な値に設定される。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記グラファイト粒子を前記金属体に定着する手順は、当該金属体に高温化処理を施して当該金属体の表面を溶融する手順であることを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、金属体に高温化処理を施すと金属体の表面が溶融するため、グラファイトの周囲は溶融した金属体で満たされる。従って、例えばただ単に金属体に引っ掛かっているだけのグラファイトが金属体に強く固定され、これによってグラファイトが金属体に定着する。よって、グラファイトが金属体から脱落し難くなり、電気接点材料の耐摩耗性が向上する。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記グラファイト粒子を前記金属体に定着する手順は、前記金属体の表面に加圧処理を施すことで当該金属体の表面を塑性変形させる手順であることを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、金属体に加圧処理を施すと金属体の表面が塑性変形するため、グラファイトの周囲は塑性変形した金属体で満たされる。従って、例えばただ単に金属体に引っ掛かっているだけのグラファイトが金属体に強く固定され、これによってグラファイトが金属体に定着する。よって、グラファイトが金属体から脱落し難くなり、電気接点材料の耐摩耗性が向上する。また、金属体に加圧処理が施されると、金属体の表面が硬くなって硬度が高まるため、更なる耐摩耗性向上に効果がある。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記グラファイト粒子には、樹脂を材質とする絶縁皮膜がコーティングされていることを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加え、グラファイト粒子に絶縁皮膜をコーティングすれば、絶縁皮膜には帯電し易い性質があるため、グラファイト粒子の帯電性がよくなる。従って、グラファイトが感光体に取り付き易くなり、グラファイトの均一分散効果が一層高まる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の発明において、母材の表面の一部又は全体にグラファイト含有の金属メッキを形成することで前記金属体を形成し、当該金属メッキの表面に前記グラファイトが転写されることを要旨とする。
【0016】
この発明によれば、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加え、例えばグラファイトを増量する処理を施したとしても、グラファイトは金属メッキ内でその量が増えることになるため、母材の材質成分はそのままであることから、母材の強度が低下するようなことはなく、その母材を基材とした電気接点材料の強度が充分に確保される。
【0017】
請求項6に記載の発明では、母材の表面の一部又は全体に金属メッキを形成し、グラファイトを固めた棒材を、前記金属メッキの表面の粗い部分に擦り付けることで、前記グラファイトを前記金属メッキの表面に定着させることを要旨とする。
【0018】
この発明によれば、グラファイトを固めた棒材を金属メッキの表面に擦り付けることでグラファイトを金属メッキに固定する場合、例えば棒材の擦る強さや回数を変えれば、それに応じたグラファイト量が金属メッキの表面に取り付くことになる。従って、グラファイトを固めた棒材を金属メッキに擦り付ける手法を用いれば、適量のグラファイトを簡単な作業で金属メッキに固定することが可能となる。よって、金属メッキの耐摩耗性はメッキ表面上のグラファイト量によって決まるため、メッキ表面上のグラファイトが適量であれば、金属体(電気接点材料)が持つ耐摩耗性が好適な値に設定される。
【0019】
請求項7に記載の発明では、支軸回りに回転可能な感光体ドラムを帯電し、前記感光体ドラムに露光する光量によって当該感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、前記静電潜像を形成した前記感光体に、電荷を付与したグラファイト粒子を現像し、前記グラファイト粒子の転写先である金属体を搬送する際に、当該金属体の裏側から逆電荷をかけることによって、前記感光体ドラムに現像された前記グラファイト粒子を前記金属体に転写し、前記金属体に転写された前記グラファイト粒子を当該金属体の表面に定着することで製造した電気接点材料であることを要旨とする。この発明によれば、請求項1と同様の作用が得られる。
【0020】
請求項8に記載の発明では、母材の表面の一部又は全体に金属メッキを形成し、グラファイトを固めた棒材を、前記金属メッキの表面の粗い部分に擦り付けることで、前記グラファイトを前記金属メッキの表面に定着させることで製造した電気接点材料であることを要旨とする。この発明によれば、請求項2と同様の作用が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金属体表面上のグラファイト量を適量に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した電気接点材料製造方法及び電気接点材料の第1実施形態を図1〜図13に従って説明する。
【0023】
(メッキ処理)
図1は、電気メッキ装置1の概略構成を示す模式構成図である。電気メッキ装置1は、メッキしたい母材2をメッキ漕3内のメッキ液4に浸した状態で、同じくメッキ液4に浸した電極(図示略)と母材2との間に直流電圧を印加して母材2に直流電流を流し、母材2の表面に金属メッキの層を形成する装置である。このとき、母材2が陰極(マイナス)、電極が陽極(プラス)となり、メッキ液4中の金属イオンが母材2に引き寄せられることによって、母材2に金属メッキが形成される。本例は、メッキ液4としてシアン化銀の溶融した溶液を用い、銅等の母材2の表面に金属メッキとして銀メッキ8(図2参照)を形成する。
【0024】
母材2は、ロール状に巻かれてメッキ漕3の外部に設置されている。メッキ漕3の一対の側壁5にはその下部に通し孔5a,5bが各々貫設され、母材2はメッキに際して一方の通し孔5aからメッキ漕3内に導入され、搬送されながらメッキが施されて他方の通し孔5bからメッキ漕3の外部へ連続的に導出される。また、通し孔5a,5bから漏れ出たメッキ液4はメッキ漕3の下方にある貯留部6に溜められ、そのメッキ液4はポンプ装置7によってメッキ漕3へ汲み上げられる。なお、銀メッキ8が金属メッキに相当する。
【0025】
(グラファイト散布処理)
図3は、電気接点材料製造装置9の概略構成を示す模式構成図である。電気接点材料製造装置9は、光を利用して感光体にグラファイトの粒子(以下、グラファイト粒子10と記す)を付着させ、銀メッキ8を形成した母材2(以下、試料11と言う)にグラファイト粒子を転写して電気接点材料12(図8(b)参照))を製造する電子写真方式の製造装置である。また、電気接点材料製造装置9は、中心点O回りに回転可能な感光ドラム13にグラファイト粒子10を付着させるドラム式を採用している。なお、感光ドラム13が感光体に相当する。
【0026】
電気接点材料製造装置9は、感光ドラム13を帯電する帯電機構14と、帯電後の感光ドラム13を露光する露光機構15と、露光後の感光ドラム13にグラファイト粒子10を現像する現像機構16とを備えている。また、電気接点材料製造装置9は、感光ドラム13上のグラファイト粒子10を試料11に転写する転写機構17と、試料11に付着したグラファイト粒子10を試料11に定着させる定着機構18と、転写されなかったグラファイト粒子10を感光ドラム13から除去するクリーニング機構19とを備えている。
【0027】
帯電機構14は、例えば帯電ローラ等のチャージユニットによって感光ドラム13の表面全体を均一に帯電させる機構であり、機種によって感光ドラム13を正極又は負極に帯電させる。帯電機構14は感光ドラム13が回転する際に感光ドラム13の帯電を行い、例えば帯電機構14が負極チャージ式の場合、図4に示すように感光ドラム13の表面が負極に帯電された状態となる。
【0028】
露光機構15は、図5に示すようにLED(Light Emitting Diode)やレーザ等の光で帯電後の感光ドラム13にグラファイト転写パターンを照射して、感光ドラム13の表面上に静電潜像20を形成する機構である。静電潜像20は、光の照射された部分の電荷がグランドに落ちることで、光の照射されていない部分に対して逆の電荷が生じた部位のことを言い、この部位にグラファイト粒子10が付着する。また、グラファイト転写パターンは試料11に転写されるグラファイト粒子の散布範囲(散布面積)に相当し、電気接点材料製造装置9の入力装置21を用いて適宜設定変更可能である。
【0029】
また、露光の光量に応じて静電潜像20の帯電の強弱が変わるため、それに応じて次段の現像工程で感光ドラム13(静電潜像20)に取り付くグラファイト量が変わる。従って、入力装置21を用いて露光の光量を調整することによって、静電潜像20の帯電の強弱を変えてグラファイト粒子10の転写量、つまり転写したグラファイト粒子10の濃さを調整することが可能である。即ち、静電潜像20の帯電が強い場合にはグラファイト粒子10の転写量が多くなり、一方で静電潜像20の帯電が弱い場合にはグラファイト粒子10の転写量が少なくなる。
【0030】
現像機構16は、例えばディベロッパーユニット等でグラファイト粒子10を攪拌しつつ、グラファイト粒子10を静電潜像20に対して逆側の極に帯電し、その帯電したグラファイト粒子10を感光ドラム13に付着させる機構である。帯電したグラファイト粒子10は静電潜像20と逆側の極(本例は負極)に帯電されているため、感光ドラム13が現像機構16を通り過ぎる際、図6に示すように感光ドラム13の静電潜像20に付着する。
【0031】
現像機構16は、グラファイト粒子10の帯電の強弱を調整する帯電調整機能を有している。ここで、グラファイト粒子10にかかる帯電の強弱が変われば、現像時に感光ドラム13に取り付くグラファイト量が変化する。従って、入力装置21を用いてグラファイト粒子10の帯電の強弱を調整することによっても、グラファイト粒子10の転写量を調整することが可能である。ここでは、グラファイト粒子10の帯電が強い場合にはグラファイト粒子10の転写量が多くなり、一方でグラファイト粒子10の帯電が弱い場合にはグラファイト粒子10の転写量が少なくなる。
【0032】
転写機構17は、図7に示すようにグラファイト粒子10が付着した感光ドラム13が試料11の対向位置を通過する際、その試料11を搬送しながら試料11の裏面から逆電荷(本例は正極)をかけることによって、銀メッキ8の表面8aにグラファイト粒子10を転写する機構である。これによって、銀メッキ8の表面8aには、図8(a)に示すようにグラファイト粒子10がグラファイト転写パターンに応じた散布範囲で銀メッキ8上に散布された状態となる。なお、感光ドラム13上のグラファイト粒子10は、全てが試料11に転写されるわけではなく、一部(例えば80%程度)が試料11に転写され、残りは感光ドラム13上に残留グラファイトとして取り付いた状態となる。
【0033】
定着機構18は、試料11に転写したグラファイト粒子10を、例えば融着、融接、圧接等によって試料11(銀メッキ8)に定着させる機構である。この定着処理としては、例えば銀メッキ8の表面8aを溶融することでメッキ表面上の凹凸を埋めてグラファイトを定着する高温化処理と、銀メッキ8の表面8aに圧力を加えることで表面8aを塑性変形させてグラファイトを定着する加圧処理とがある。この種の定着処理を施せば、図8(b)に示すようにグラファイト粒子10が銀メッキ8に強く固定された状態となり、製造物である電気接点材料12からグラファイトが脱落し難くなって、耐摩耗性確保に効果がある。
【0034】
クリーニング機構19は、試料11に転写せずに感光ドラム13上に残留したグラファイト粒子10を除去し、次の転写準備を行う機構である。グラファイト粒子10は電気的に感光ドラム13に付着しているため、クリーニング機構19は感光ドラム13に取り付いたグラファイト粒子10の付着電荷をチャージャーや光で除去することで、そのグラファイト粒子10を感光ドラム13から離脱し易くする。残留したグラファイト粒子10の付着電荷を除去した後、クリーニング機構19はクリーナーブラシを用いて感光ドラム13に残留したグラファイト粒子10を取り除く。
【0035】
ところで、感光ドラム13を帯電させてそれを露光し、その感光ドラム13にグラファイト粒子10を現像して試料11に転写して定着する処理は、レーザプリンタ等に用いられていることからも分るように、グラファイト粒子10を試料11に対して均一に散布することが可能な技術である。従って、この処理を用いてグラファイト粒子10を試料11に散布すれば、試料11の表面にはグラファイト粒子10がほぼ均一に散布されることになる。このため、試料11の表面上に分散したグラファイト量にバラツキが生じ難くなり、試料11の表面上のグラファイト量を適量とすることが可能となる。また、電気接点材料12の耐摩耗性は表面上のグラファイト量によって決まることから、表面上のグラファイト量が適量であれば、電気接点材料12の耐摩耗性が摺動性と金属接触との間でバランスのとれた好適な値となる。
【0036】
さらに、露光工程で感光ドラム13の帯電の強弱を変更したり、現像工程でグラファイト粒子10の帯電の強弱を変更したりすれば、試料11に転写されるグラファイト量が変わることから、グラファイト粒子10の帯電強弱を設定変更することによって、試料11に散布されるグラファイト量を任意に設定することが可能である。従って、試料11に散布するグラファイト量をユーザが任意(自由)にコントロールすることが可能となり、しかもその設定量のグラファイトを均一に試料11に散布することが可能となる。
【0037】
ここで、メッキ表面表のグラファイト量によって表面グラファイト面積比Sは適宜決まるが、図9に表面グラファイト面積比Sとその耐久回数Nとの関係をグラフで示すと、表面グラファイト面積比Sによってその電気接点材料12の耐久回数Nが決まってくる。従って、耐久回数Nはターゲットとする製品仕様に異なってくるが、充分な耐摩耗性を確保するためには、図9のグラフからも分るように耐久回数Nが100万回確保された0.45以上に表面グラファイト面積比Sを設定することが望ましい。
【0038】
(レーザ処理)
図10は、レーザ装置22の概略構成を示す模式構成図である。定着機構18としてのレーザ装置22は、高温化処理(リフロー処理)として加工物にレーザを照射することで加工物を溶融する装置である。レーザ装置22は、電気接点材料12を密閉状態で収容する処理室23と、処理室23内に取り付けられたレーザ照射部24と、処理室23を真空(非酸化雰囲気)に減圧する真空ポンプ25とを備えている。レーザ装置22は、レーザ照射部24を所定方向に往復動させる駆動機構26と、レーザ照射部24の往復動方向と直交する方向に加工物を搬送する搬送機構27とを備えている。
【0039】
続いて、レーザ装置22で電気接点材料12を溶融する手順を説明すると、レーザ処理を行う際には、メッキ処理後に所定面積の平板に切断された電気接点材料12がレーザ装置22の処理室23にセットされ、続けて処理室23の内部が真空ポンプ25によって真空状態に減圧される。なお、処理室23は必ずしも真空状態とされることに限らず、非酸化雰囲気であれば足りる。
【0040】
処理室23内が真空状態となった後、レーザ照射部24は駆動機構26によって往動を開始し、その往動の過程で、処理室23内にセットされた電気接点材料12にレーザを照射し、銀メッキ8の表面8aにおいて1ライン目を溶融する。ここで、銀の融点が約962℃、グラファイト粒子10の融点が約3550℃であるため、レーザ照射部24による溶融温度は、母材2の融点よりも低く、しかも銀メッキ8のみを溶融すべく約1000℃〜1500℃に設定されている。
【0041】
レーザ照射部24が1往動を終えると、搬送機構27が電気接点材料12を所定量搬送する。続いて、今度はレーザ照射部24が復動を開始し、その復動の過程で銀メッキ8にレーザを照射して銀メッキ8の表面8aにおいて2ライン目を溶融する。そして、レーザ照射部24が1復動を終えると、搬送機構27が電気接点材料12を所定量だけ再度搬送し、これ以降も上記と同様にレーザ照射部24によるレーザ照射と電気接点材料12の搬送とが、銀メッキ8の全ラインにレーザ照射が行われるまで繰り返し行われる。
【0042】
従って、銀メッキ8の表面8aが溶融されるので、その溶融した銀成分がグラファイト粒子10の間にある隙間に流れ込み、図8(b)に示すように溶融した銀成分が銀メッキ8の凹凸を埋め、グラファイト粒子10の周囲が銀成分で満たされる。よって、溶融した銀成分が銀メッキ8内のグラファイト粒子10を周囲で強く固定し、グラファイト粒子10の定着性が高まる。これにより、グラファイト粒子10が銀メッキ8から脱落し難くなり、銀メッキ8(電気接点材料12)の耐摩耗性が向上する。
【0043】
(炉による加熱処理)
図11は、炉装置28の概略構成を示す模式構成図である。銀メッキ8の表面8aを溶融する方法は、上記したレーザ処理に限らず、例えば定着機構18としての炉装置28による加熱処理でもよい。炉装置28は、加工物を炉29の中に入れて炉29の内部を高温化して加工物を溶融する装置である。炉装置28は、電気接点材料12を密封状態で収容する処理室30と、処理室30内の温度を高温化する熱源31と、処理室30を真空(非酸化雰囲気)状態とする真空ポンプ32とを備えている。
【0044】
続いて、炉装置28で電気接点材料12を溶融する手順を説明すると、炉29による加熱処理を行う際には、メッキ処理後に所定面積の平板に切断された電気接点材料12が炉29の処理室30にセットされ、続けて処理室30の内部が真空ポンプ32によって真空状態に減圧される。なお、処理室30はレーザ処理の場合と同様に、必ずしも真空状態とされることに限らず、非酸化雰囲気であれば足りる。また、熱源31は例えば高周波加熱用熱源等の種々のものが採用される。
【0045】
処理室30内が真空状態となった後、熱源31に電源が投入されて処理室30の温度が高温化すると、銀メッキ8の表面8aが溶融する。ここで、炉29による加熱処理の溶融温度は、レーザ処理の場合の同様の理由から約1000℃〜1500℃に設定されている。従って、炉29を用いた場合も銀メッキ8の表面8aが溶融するため、それによってグラファイト粒子10の定着性が高まり、レーザ処理の場合と同様に銀メッキ8の耐摩耗性が向上する。
【0046】
(加圧処理)
図12は、加圧処理装置33の概略構成を示す模式構成図である。定着機構18としての加圧処理装置33は、ローラ等で加工物を加圧することによって加工物の表面を塑性変形させる装置である。加圧処理装置33は、電気接点材料12を載置する支持台34と、回転動作が可能なローラ35と、ローラ35を所定圧で電気接点材料12に押しつけた状態でそのローラ35を所定方向(図3の矢印A方向)に移動させる駆動機構36とを備えている。
【0047】
続いて、加圧処理装置33で電気接点材料12を加圧して電気接点材料12の表面を塑性変形させる手順を説明すると、加圧処理を行う際には、メッキ処理後に所定面積の平板に切断された電気接点材料12が支持台34にセットされる。そして、駆動機構36がローラ35を電気接点材料12に所定圧で押しつけ、その状態で駆動機構36がローラ35を図12の矢印A1方向に移動させて、ローラ35によって銀メッキ8の表面8a全域に圧を加える。この際にローラ35が銀メッキ8の表面8aにかける圧力値(所定圧)は、銀メッキ8の表面8aが塑性変形する程度の値に設定されている。
【0048】
従って、加圧処理によって銀メッキ8の表面8aを塑性変形させるので、図8(b)に示すように塑性変形した銀成分がグラファイト粒子10の周りに埋まった状態となる。よって、塑性変形した銀成分が銀メッキ8内のグラファイト粒子10を周囲で強く固定し、グラファイト粒子10の定着性が高まる。これにより、グラファイト粒子10が銀メッキ8から脱落し難くなり、銀メッキ8(電気接点材料12)の耐摩耗性が向上する。また、加圧処理で銀メッキ8内のグラファイト粒子10を定着する場合、その加圧処理によって銀メッキ8の表面硬度が高まるため、グラファイト粒子10が強固な状態で銀メッキ8に定着することになり、銀メッキ8の耐摩耗性が一層高いものとなる。
【0049】
(絶縁被膜コーティング処理)
図13は、グラファイト粒子10の縦断面図である。グラファイト粒子10は、その周囲に例えば絶縁皮膜37がコーティングされていてもよい。この絶縁皮膜37は例えば樹脂材等を材質とし、帯電し易い性質がある。従って、絶縁皮膜37がコーティングされたグラファイト粒子10は、現像工程の際に絶縁皮膜37が作用して帯電し易くなるため、例えば帯電せずに感光ドラム13に取り付かないグラファイト量が減り、グラファイトの均一分散に効果がある。また、定着工程で高温化処理を施せば、絶縁皮膜37が溶けて銀メッキ8に凝着するため、グラファイト粒子10の定着性が高まる。
【0050】
第1実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)転写物を均一に転写することが可能な電子写真方式を用いてグラファイト粒子10を試料11に散布するので、試料11の銀メッキ8上にはグラファイト粒子10が均一に散布する状態となることから、銀メッキ8上にバラツキのない適量のグラファイト粒子10を分布させることができる。また、電気接点材料12の耐摩耗性は表面上のグラファイト量によって決まることから、表面上のグラファイト量が適量であれば、電気接点材料12の耐摩耗性を摺動性と金属接触との間でバランスのとれた好適な値に設定することができる。
【0051】
(2)露光工程で光量を変更したり、現像工程でグラファイト粒子10の帯電の強弱を変更したりすれば、試料11に転写されるグラファイト量が変わることから、グラファイト粒子10の帯電強弱を設定変更することによって、試料11に散布されるグラファイト量を任意に設定することができる。従って、電気接点材料12が持つ耐摩耗性の値をユーザが自由にコントロールすることができ、ターゲットとする製品仕様に合わせた様々な種類の電気接点材料12を製造することができる。
【0052】
(3)定着工程で高温化処理を用いた場合、銀メッキ8の表面8aが高温化処理によって溶融するが、その溶融した銀成分が銀メッキ8の表面8a上の凹凸を埋め、メッキ内のグラファイト粒子10が表面8a上に強く固定される。従って、多くのグラファイト粒子10が銀メッキ8に強く取り付いた状態となるため、グラファイト粒子10の銀メッキ8に対する定着性を向上することができる。よって、グラファイト粒子10の定着性が高まれば、銀メッキ8(電気接点材料12)の耐摩耗性を向上することができる。
【0053】
(4)定着工程で加圧処理を用いた場合、銀メッキ8の表面8aが加圧処理によって塑性変形するが、その際に塑性変形した銀成分がグラファイト粒子10の周りに埋まった状態となり、塑性変形した銀成分が銀メッキ8内のグラファイト粒子10を周囲で強く固定する。従って、多くのグラファイト粒子10が銀メッキ8に強く取り付いた状態となるため、グラファイト粒子10の銀メッキ8に対する定着性を向上することができる。よって、グラファイト粒子10の定着性が高まれば、銀メッキ8(電気接点材料12)の耐摩耗性を向上することができる。更に、加圧処理で銀メッキ8内のグラファイト粒子10を定着する場合、その加圧処理によって銀メッキ8の表面硬度が高まるため、グラファイト粒子10が強固な状態で銀メッキ8に定着することになり、銀メッキ8の耐摩耗性を一層高いものとすることができる。
【0054】
(5)絶縁皮膜37がコーティングされたグラファイト粒子10を用いた場合、現像工程の際に絶縁皮膜37が作用してグラファイト粒子10が帯電し易くなるため、例えば帯電せずに感光ドラム13に取り付かないグラファイト量が減り、グラファイトの均一分散に効果がある。また、定着工程で高温化処理を施せば、絶縁皮膜37が溶けて銀メッキ8に凝着するため、グラファイト粒子10の定着性を一層高めることができる。
【0055】
(6)母材2の表面に銀メッキ8を形成し、そのメッキにグラファイト粒子10を散布及び定着してメッキ表面にグラファイト粒子10を分布させる。従って、グラファイト粒子10を増量する処理を施したとしても、グラファイト粒子10は銀メッキ8上でその量が増えることになるため、母材2の材質成分はそのままである。従って、グラファイト粒子10を増量したとしても、母材2が予め持つ強度はそのままであるため、その母材2を基材とする電気接点材料12の強度はグラファイト増量に影響されず、電気接点材料12の強度を充分に確保することができる。
【0056】
(7)銀メッキ8にはそのメッキ特性として高い電気導線性があることから、電気接点材料12に施す金属メッキを銀メッキ8とすることによって、電気導電性の高い電気接点材料12を提供することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した電気接点材料製造方法及び電気接点材料の第2実施形態を図14及び図15に従って説明する。本例は、第1実施形態と比較してグラファイト粒子10を試料11(銀メッキ8)に適量散布する方法が異なっているのみであり、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0057】
(グラファイト棒の擦り付け)
図14は、グラファイト棒38を用いたグラファイト固定方法の説明図である。ところで、グラファイト棒38を銀メッキ8に擦り付けるためには、銀メッキ8の表面8aが粗い必要があるが、無光沢メッキにはその表面凹凸形状が粗い性質があるため、本例の銀メッキ8には無光沢メッキを採用している。このように、銀メッキ8に無光沢メッキを用いれば、図14に示すように銀メッキ8の表面8aの凹凸形状が粗くなり、グラファイト粒子10が引っ掛かり易くなる。なお、グラファイト棒38が棒材に相当する。
【0058】
ところで、無光沢メッキの表面の凹凸形状が粗い理由は、電気メッキで例えば光沢メッキを形成する場合にはメッキ表面凹凸を滑らかにする添加物が混入されるが、無光沢メッキの場合にはこの種の添加物が入らないため、メッキに際してメッキ液4中の金属イオンが不均一に母材2に積み上がることが要因とされる。よって、無光沢メッキの場合には、母材2の表面において銀の積み上がりにバラツキができ、これが銀メッキ8の表面凹凸を形成することになる。
【0059】
グラファイト棒38はグラファイト粒子(黒鉛)10を接着剤等で固めた棒であり、本例においては円柱形状をなしている。このグラファイト棒38が銀メッキ8の表面8aに擦り付けられると、図15に示すようにグラファイト粒子10が銀メッキ8の表面凹凸に引っ掛かり、銀メッキ8の表面8aに固定された状態となる。従って、簡単な方法でグラファイト粒子10を銀メッキ8に固定することが可能となり、グラファイト粒子10を銀メッキ8に分散させる際の作業の簡素化や、作業時間の短時間化等に効果がある。
【0060】
ところで、粉状のグラファイト粒子を銀メッキ8の表面8aに散布して定着する方法は、グラファイト粒子が粉末状であるため、例えば風等で表面8aから飛び立ってしまう可能性も否定できない。しかし、固形のグラファイト棒38を銀メッキ8に擦り付けてグラファイト粒子10を銀メッキ8に固定する方法は、固形のグラファイトの固まりを銀メッキ8に固定するため、グラファイト粒子が風等で飛び立ってしまうような状況にはなり難い利点もある。なお、銀メッキ8にグラファイト粒子10を擦り付けた後に、銀メッキ8に高温化処理や加熱処理を施してグラファイト粒子10の定着性を高めてもよい。
【0061】
(過電流印加処理)
図16は、別構成の電気メッキ装置1の概略構成を示す模式構成図である。銀メッキ8の表面8aを粗くする方法は、銀メッキ8を無光沢メッキとすることに限らず、電気メッキの初期段階において過電流を流す方法を用いてもよい。これを以下に説明すると、本例の電気メッキ装置1はメッキ漕3が中間の区画壁39によって2領域に区画され、電気メッキ時には母材2が第1メッキ漕3a、第2メッキ漕3bの順に各漕内のメッキ液4にそれぞれ浸される。本例の電気メッキ装置1は、母材2を先に潜らす第1メッキ漕3aで母材2に過電流を流し、母材2を後で潜らす第2メッキ漕3bで母材2に通常の電流を流して、母材2の表面に金属メッキを形成する処理を行う。
【0062】
メッキ漕3の区画壁39にはその下部に通し孔39aが貫設され、母材2はメッキに際して一方(図16に示す右側)の通し孔5aから第1メッキ漕3a内に導入され、区画壁39の通し孔39aを経由して、他方(図16に示す左側)の通し孔5bから第2メッキ漕3bの外部へ導出される。
【0063】
電気メッキ装置1で母材2上に銀メッキ8を形成する際、電気メッキの初期段階で過電流を流して銀メッキ8を形成する。この処理として、まずメッキに必要な量の母材2が順に巻き取られながら通し孔5aを介して第1メッキ漕3a内に導入される。第1メッキ漕3aに必要量の母材2がセットされるとその状態が保持され、第1メッキ漕3aに浸された電極(図示略)と母材2との間に過電流が流される。このとき、母材2に流される過電流の電流値は、通常の電流値(即ち、第2メッキ漕3bで母材2に流される電流値)に対して例えば3〜5倍の値に設定されている。電気メッキで母材2に過電流を流した場合、過電流印加期間はメッキ速度が速くなるため、銀成分が母材2に付着する際には偏った状態で母材2に付着することから、銀メッキ8は表面8aに大きな凹凸形状を有した状態で母材2に形成される。
【0064】
過電流を所定時間流した後、母材2に過電流を流す処理が停止され、続いて第1メッキ漕3aでメッキ処理を施した部分が通し孔39aを介して第2メッキ漕3bに導入される。第1メッキ漕3aでメッキ処理を施した部分が第2メッキ漕3bにセットされるとその状態が保持され、第2メッキ漕3bに浸された電極(図示略)と母材2との間に通常値の電流が流される。通常値の電流が母材2に所定時間流されると、過電流を流してできた銀メッキ8の層上に新たに銀成分が積み重なって積層し、最終的には必要とする層厚の銀メッキ8が母材2に形成される。
【0065】
必要とする層厚の銀メッキ8が形成されると、母材2に通常値の電流を流す処理が停止され、続いて第2メッキ漕3bでメッキ処理を施した部分が通し孔5bから第2メッキ漕3bの外部に導出される。そして、初期段階で過電流を流してから通常値の電流を流す電気メッキが、ロール状に巻かれた母材2の全箇所に銀メッキ8が形成されるまで繰り返し行われ、以上の処理によって製造された母材2が試料11として取り扱われる。
【0066】
ところで、電気メッキに際して通常の電流値で銀メッキ8を形成すると、表面凹凸がそれほど大きくない銀メッキ8が形成される。しかし、本例は電気メッキの初期段階で過電流を流して、表面凹凸の大きい銀メッキ8を母材2に予め形成してそこに通常値の電流で銀成分を付着させることから、通常の低い電流値で電気メッキを施す場合であっても、予め凹凸の大きい銀メッキ8に銀成分が積み重なっていくため、最終的にできる銀メッキ8の表面は大きな凹凸形状を有した状態となる。
【0067】
(母材表面加工処理)
図17は、母材2の表面2aを粗くする際の作業状態を示す斜視図である。銀メッキ8の表面凹凸を大きくする方法は電気メッキの初期段階で過電流を流す方法に代えて、母材2の表面2aを予め粗くする加工処理を施しておき、表面2aを粗くした母材2に電気メッキを施して、銀メッキ8の表面凹凸を大きくする方法もある。母材2の表面2aを予め粗くするには、例えばヤスリやショットブラスト等で粗くする例が挙げられるが、母材2の表面凹凸を粗くできるのであれば、その方法は特に限定されない。
【0068】
表面2aの粗い母材2に電気メッキを施すと、メッキ液4中の銀成分が母材2の表面2aに順次積み重なって銀メッキ8の層となるため、銀メッキ8は母材2の表面形状に沿った形状で形成される。従って、母材2の表面2aの凹凸が大きければ、母材2の表面2aにできる銀メッキ8も表面凹凸が大きい状態で形成される。
【0069】
(エッチング−再メッキ処理)
図18は、銀メッキ8を施した試料11をエッチングする際の説明図である。銀メッキ8の表面凹凸を大きくする方法は電気メッキの初期段階で過電流を流す方法や、母材2の表面2aを予め粗くしておく方法に限らず、銀メッキ8の施された試料11をエッチングし、それを再メッキする方法でもよい。この処理では、まず最初に上記した処理内容の電気メッキによって母材2に銀メッキ8を形成し、表層に銀メッキ8を有する試料11を用意する。
【0070】
そして、図18に示すようにその試料11をエッチング漕40内のエッチング溶液41に浸し、試料11にエッチング処理を施す。このとき、銀メッキ8の表面8aがエッチング溶液41によって溶け出して粗い状態となるため、銀メッキ8の表面8aは表面凹凸がそれほど大きくない状態から、表面凹凸が大きくなった状態となる。
【0071】
エッチング処理後、その試料11に電気メッキを再度施す。即ち、エッチング処理の施された試料11を電気メッキ装置1に再度セットし、この試料11とメッキ液4内の電極との間に直流電圧を印加して、試料11の表面に銀成分を積層させて銀メッキ8を再形成する。なお、この再メッキのメッキ条件(例えばメッキ時に付与する電流値)は、最初に行う電気メッキと同条件でもよいし、或いは異なっていてもよい。
【0072】
表面凹凸の大きい銀メッキ8に電気メッキを再度施すと、メッキ液4中の銀成分が銀メッキ8の表面8aに順次積み重なって積層状態となっていくため、再メッキ時の銀メッキ8はエッチング後の銀メッキ8の表面形状に沿った形状で形成される。従って、本例はエッチングで表面凹凸を粗くした銀メッキ8の表面に銀メッキ8を再メッキすることから、最終的な銀メッキ8の表層は表面凹凸が大きくなった状態となる。
【0073】
第2実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(3),(4),(7)の効果に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(8)グラファイト粒子10を固めたグラファイト棒38を用意し、そのグラファイト棒38を銀メッキ8に擦り付けることで銀メッキ8にグラファイト粒子10を付着させるので、適量のグラファイト粒子10を簡単な作業で銀メッキ8に固定することができる。
【0074】
なお、実施形態は上記構成に限定されず、例えば以下の態様に変更してもよい。
・ 試料11は、母材2に銀メッキ8を施したのみの材料に限らず、例えば図19に示すようにグラファイト粒子10が含有した銀メッキ8を母材2に形成した材料でもよい。この試料11を製造するには、まずメッキ液4に例えば粒径が1〜20μm程度のグラファイト粒子10の粉末を混入する。グラファイト混入後、母材2及び電極の間に直流電圧を加えると、母材2に銀メッキ8が付着するが、この際に銀とともに粉末のグラファイト粒子10も取り込まれ、図19に示すように銀メッキ8にはグラファイト粒子10が分散状態で含有した状態となる。この場合、表面グラファイト面積比Sが一層向上し、銀メッキ8の耐摩耗性が一層向上する。
【0075】
・ 試料11は、銀メッキ8やグラファイト含有の銀メッキを母材2に形成した材料に限らず、例えば単に銅やニッケルでもよい。
・ 定着処理は、高温化処理や加圧処理に限定されない。例えば、熱と圧力とでグラファイト粒子10を試料11(銀メッキ8)に融着する熱ロール式や、化学溶液を私用して化学変化によってグラファイト粒子10を試料11(銀メッキ8)に定着する化学式などを採用してもよい。
【0076】
・ 金属メッキを電気メッキで形成する際、その金属メッキは銀メッキ8に限らず、例えば金メッキ、無電解ニッケルメッキ、クロムメッキ、ニッケルメッキ、はんだメッキ、錫メッキ、亜鉛メッキ等を採用してもよい。
【0077】
・ 母材2のメッキ方法は電気メッキに限らず、例えば化学メッキ、溶融メッキ、物理蒸着、化学蒸着、浸透メッキ等を採用してもよい。
・ 電気接点材料製造装置9は、感光ドラム13が中心点O回りに回転するドラム式に限定されず、例えば一つに繋がった帯状の感光ベルト部材が回るベルト式でもよい。
【0078】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)中心点回りに回転可能な感光体と、前記感光体を帯電させる帯電機構と、前記感光体に露光する光量によって当該感光体の表面に静電潜像を形成する露光機構と、電荷を付与したグラファイト粒子を前記感光体に現像する現像機構と、前記グラファイト粒子の転写先である金属体を搬送する際に当該金属体の裏側から逆電荷をかけることによって、前記感光体に現像された前記グラファイト粒子を前記金属体に転写する転写機構と、前記金属体に転写された前記グラファイト粒子を当該金属体の表面に定着する定着機構とを備えたことを特徴とする電気接点材料製造装置。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】第1実施形態における電気メッキ装置の概略構成を示す模式構成図。
【図2】表面に銀メッキが形成された試料の断面図。
【図3】電気接点材料製造装置の概略構成を示す模式構成図。
【図4】感光ドラムを帯電する際の説明図。
【図5】帯電後の感光ドラムを露光する際の説明図。
【図6】露光後の感光ドラムにグラファイト粒子を現像する際の説明図。
【図7】感光ドラムに現像したグラファイト粒子を試料に転写する際の説明図。
【図8】(a)はグラファイト粉末を銀メッキにまぶした際の試料の断面図であり、(b)はグラファイト粒子を銀メッキに定着した後の試料の断面図。
【図9】表面グラファイト面積比とその耐久回数との関係を示すグラフ。
【図10】レーザ装置の概略構成を示す模式構成図。
【図11】炉装置の概略構成を示す模式構成図。
【図12】加圧処理装置の概略構成を示す模式構成図。
【図13】表面に樹脂皮膜がコーティングされたグラファイト粒子の断面図。
【図14】第2実施形態におけるグラファイト粒子固定方法の説明図。
【図15】銀メッキにグラファイトを固定した後の電気接点材料の断面図。
【図16】別構成の電気メッキ装置の概略構成を示す模式構成図。
【図17】母材の表面を粗くする際の作業状態を示す斜視図。
【図18】銀メッキを施した試料をエッチングする際の説明図。
【図19】グラファイト含有の銀メッキが施された試料の断面図。
【符号の説明】
【0080】
2…母材、8…金属メッキとしての銀メッキ、10…グラファイト粒子、11…金属体としての試料、12…電気接点材料、13…感光体としての感光ドラム、20…静電潜像、37…絶縁皮膜、38…棒材としてのグラファイト棒、O…中心点。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気回路のスイッチング接点等に用いる電気接点材料製造方法及び電気接点材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路のスイッチング接点等に用いる電気接点材料としては、例えば特許文献1〜3に開示されるような焼結材の銀−グラファイト合金が広く使用されている。グラファイトは、元来、溶着性が殆ど無く、化学的に極めて安定であり、非常に高い潤滑作用を有している。従って、グラファイトを含有した銀−グラファイト合金は耐摩耗性の高い部材となるため、銀−グラファイト合金を電気接点材料として用いれば、グリースやオイル等の潤滑剤を用いなくてもよいことから、銀−グラファイト合金はグリースレス摺動接点材料として使用される。
【0003】
ここで、焼結材を用いた場合、銀には多量のグラファイトを含有することができるが、銀に対するグラファイトの含有量が多くなると電気接点材料の強度が低くなり、もろくなってしまう問題がある。従って、電気接点材料の強度的な面を考えた場合には、例えば銅等の母材に対し、グラファイトを含有した銀をメッキすることによって、グラファイト含有の電気接点材料を製造する手法がとられる。
【特許文献1】特開2002−53919号公報
【特許文献2】特開1996−13065号公報
【特許文献3】特開昭63−7345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、グラファイトを含有した電気接点材料では、例えば金属体表面上のグラファイト量があまりに多いと金属体表面に露出する金属体の量が少なくなるため、これは電気接点材料としては好ましくない。よって、グラファイトの摺動性と金属体の金属接触とにバランスを持たせる必要があり、このためには金属体表面上のグラファイト量を適量とする必要がある。しかし、グラファイト含有の電気接点材料が焼結材で製造される場合、或いはメッキで製造される場合に拘らず、グラファイト粒子を金属体表面上に適量分布させることは難しい現状があり、何らかの対応策が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、金属体表面上のグラファイト量を適量に設定することができる電気接点材料製造方法及び電気接点材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明では、中心点回りに回転可能な感光体を帯電する手順と、前記感光体に露光する光量によって当該感光体の表面に静電潜像を形成する手順と、前記静電潜像を形成した前記感光体に、電荷を付与したグラファイト粒子を現像する手順と、前記グラファイト粒子の転写先である金属体を搬送する際に、当該金属体の裏側から逆電荷をかけることによって、前記感光体に現像された前記グラファイト粒子を前記金属体に転写する手順と、前記金属体に転写された前記グラファイト粒子を当該金属体の表面に定着する手順とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この発明によれば、まず最初に感光体の表面を帯電し、帯電後の感光体を所定量回転させて帯電部位を光受光可能な位置に配置し、その帯電部位を露光して静電潜像を形成する。続いて、静電潜像形成後の感光体を更に所定量回転させ、静電潜像部位をグラファイト現像可能な位置に配置し、静電潜像にグラファイト粒子を現像する。そして、グラファイト現像後の感光体を更に所定量回転させ、その現像部位をグラファイト転写可能な位置に配置し、金属体の裏側から逆電荷をかけることで、感光体に現像されたグラファイトを金属体に転写する。グラファイト転写後、金属体に転写されたグラファイトを金属体に定着させる。以上の処理が感光体の回転に合わせて連続的に行われることで、金属体の表面にグラファイト粒子が散布され、それが金属体に定着した状態となる。
【0008】
ところで、感光体を帯電させてそれを露光し、その感光体に粒子を現像して被転写体に転写する処理は、転写物となる粒子を被転写体に均一に散布することが可能な技術である。従って、この処理を用いてグラファイト粒子を金属体に散布すれば、グラファイト粒子をほぼ均一に金属体に散布することが可能となるため、金属体表面上のグラファイト量にバラツキが生じ難くなることから、金属体表面上のグラファイト量を適量とすることが可能となる。よって、金属体の耐摩耗性は金属体表面上のグラファイト量によって決まるため、金属体表面上のグラファイトが適量であれば、金属体(電気接点材料)が持つ耐摩耗性が好適な値に設定される。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記グラファイト粒子を前記金属体に定着する手順は、当該金属体に高温化処理を施して当該金属体の表面を溶融する手順であることを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、金属体に高温化処理を施すと金属体の表面が溶融するため、グラファイトの周囲は溶融した金属体で満たされる。従って、例えばただ単に金属体に引っ掛かっているだけのグラファイトが金属体に強く固定され、これによってグラファイトが金属体に定着する。よって、グラファイトが金属体から脱落し難くなり、電気接点材料の耐摩耗性が向上する。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記グラファイト粒子を前記金属体に定着する手順は、前記金属体の表面に加圧処理を施すことで当該金属体の表面を塑性変形させる手順であることを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、金属体に加圧処理を施すと金属体の表面が塑性変形するため、グラファイトの周囲は塑性変形した金属体で満たされる。従って、例えばただ単に金属体に引っ掛かっているだけのグラファイトが金属体に強く固定され、これによってグラファイトが金属体に定着する。よって、グラファイトが金属体から脱落し難くなり、電気接点材料の耐摩耗性が向上する。また、金属体に加圧処理が施されると、金属体の表面が硬くなって硬度が高まるため、更なる耐摩耗性向上に効果がある。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記グラファイト粒子には、樹脂を材質とする絶縁皮膜がコーティングされていることを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加え、グラファイト粒子に絶縁皮膜をコーティングすれば、絶縁皮膜には帯電し易い性質があるため、グラファイト粒子の帯電性がよくなる。従って、グラファイトが感光体に取り付き易くなり、グラファイトの均一分散効果が一層高まる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の発明において、母材の表面の一部又は全体にグラファイト含有の金属メッキを形成することで前記金属体を形成し、当該金属メッキの表面に前記グラファイトが転写されることを要旨とする。
【0016】
この発明によれば、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加え、例えばグラファイトを増量する処理を施したとしても、グラファイトは金属メッキ内でその量が増えることになるため、母材の材質成分はそのままであることから、母材の強度が低下するようなことはなく、その母材を基材とした電気接点材料の強度が充分に確保される。
【0017】
請求項6に記載の発明では、母材の表面の一部又は全体に金属メッキを形成し、グラファイトを固めた棒材を、前記金属メッキの表面の粗い部分に擦り付けることで、前記グラファイトを前記金属メッキの表面に定着させることを要旨とする。
【0018】
この発明によれば、グラファイトを固めた棒材を金属メッキの表面に擦り付けることでグラファイトを金属メッキに固定する場合、例えば棒材の擦る強さや回数を変えれば、それに応じたグラファイト量が金属メッキの表面に取り付くことになる。従って、グラファイトを固めた棒材を金属メッキに擦り付ける手法を用いれば、適量のグラファイトを簡単な作業で金属メッキに固定することが可能となる。よって、金属メッキの耐摩耗性はメッキ表面上のグラファイト量によって決まるため、メッキ表面上のグラファイトが適量であれば、金属体(電気接点材料)が持つ耐摩耗性が好適な値に設定される。
【0019】
請求項7に記載の発明では、支軸回りに回転可能な感光体ドラムを帯電し、前記感光体ドラムに露光する光量によって当該感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、前記静電潜像を形成した前記感光体に、電荷を付与したグラファイト粒子を現像し、前記グラファイト粒子の転写先である金属体を搬送する際に、当該金属体の裏側から逆電荷をかけることによって、前記感光体ドラムに現像された前記グラファイト粒子を前記金属体に転写し、前記金属体に転写された前記グラファイト粒子を当該金属体の表面に定着することで製造した電気接点材料であることを要旨とする。この発明によれば、請求項1と同様の作用が得られる。
【0020】
請求項8に記載の発明では、母材の表面の一部又は全体に金属メッキを形成し、グラファイトを固めた棒材を、前記金属メッキの表面の粗い部分に擦り付けることで、前記グラファイトを前記金属メッキの表面に定着させることで製造した電気接点材料であることを要旨とする。この発明によれば、請求項2と同様の作用が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金属体表面上のグラファイト量を適量に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した電気接点材料製造方法及び電気接点材料の第1実施形態を図1〜図13に従って説明する。
【0023】
(メッキ処理)
図1は、電気メッキ装置1の概略構成を示す模式構成図である。電気メッキ装置1は、メッキしたい母材2をメッキ漕3内のメッキ液4に浸した状態で、同じくメッキ液4に浸した電極(図示略)と母材2との間に直流電圧を印加して母材2に直流電流を流し、母材2の表面に金属メッキの層を形成する装置である。このとき、母材2が陰極(マイナス)、電極が陽極(プラス)となり、メッキ液4中の金属イオンが母材2に引き寄せられることによって、母材2に金属メッキが形成される。本例は、メッキ液4としてシアン化銀の溶融した溶液を用い、銅等の母材2の表面に金属メッキとして銀メッキ8(図2参照)を形成する。
【0024】
母材2は、ロール状に巻かれてメッキ漕3の外部に設置されている。メッキ漕3の一対の側壁5にはその下部に通し孔5a,5bが各々貫設され、母材2はメッキに際して一方の通し孔5aからメッキ漕3内に導入され、搬送されながらメッキが施されて他方の通し孔5bからメッキ漕3の外部へ連続的に導出される。また、通し孔5a,5bから漏れ出たメッキ液4はメッキ漕3の下方にある貯留部6に溜められ、そのメッキ液4はポンプ装置7によってメッキ漕3へ汲み上げられる。なお、銀メッキ8が金属メッキに相当する。
【0025】
(グラファイト散布処理)
図3は、電気接点材料製造装置9の概略構成を示す模式構成図である。電気接点材料製造装置9は、光を利用して感光体にグラファイトの粒子(以下、グラファイト粒子10と記す)を付着させ、銀メッキ8を形成した母材2(以下、試料11と言う)にグラファイト粒子を転写して電気接点材料12(図8(b)参照))を製造する電子写真方式の製造装置である。また、電気接点材料製造装置9は、中心点O回りに回転可能な感光ドラム13にグラファイト粒子10を付着させるドラム式を採用している。なお、感光ドラム13が感光体に相当する。
【0026】
電気接点材料製造装置9は、感光ドラム13を帯電する帯電機構14と、帯電後の感光ドラム13を露光する露光機構15と、露光後の感光ドラム13にグラファイト粒子10を現像する現像機構16とを備えている。また、電気接点材料製造装置9は、感光ドラム13上のグラファイト粒子10を試料11に転写する転写機構17と、試料11に付着したグラファイト粒子10を試料11に定着させる定着機構18と、転写されなかったグラファイト粒子10を感光ドラム13から除去するクリーニング機構19とを備えている。
【0027】
帯電機構14は、例えば帯電ローラ等のチャージユニットによって感光ドラム13の表面全体を均一に帯電させる機構であり、機種によって感光ドラム13を正極又は負極に帯電させる。帯電機構14は感光ドラム13が回転する際に感光ドラム13の帯電を行い、例えば帯電機構14が負極チャージ式の場合、図4に示すように感光ドラム13の表面が負極に帯電された状態となる。
【0028】
露光機構15は、図5に示すようにLED(Light Emitting Diode)やレーザ等の光で帯電後の感光ドラム13にグラファイト転写パターンを照射して、感光ドラム13の表面上に静電潜像20を形成する機構である。静電潜像20は、光の照射された部分の電荷がグランドに落ちることで、光の照射されていない部分に対して逆の電荷が生じた部位のことを言い、この部位にグラファイト粒子10が付着する。また、グラファイト転写パターンは試料11に転写されるグラファイト粒子の散布範囲(散布面積)に相当し、電気接点材料製造装置9の入力装置21を用いて適宜設定変更可能である。
【0029】
また、露光の光量に応じて静電潜像20の帯電の強弱が変わるため、それに応じて次段の現像工程で感光ドラム13(静電潜像20)に取り付くグラファイト量が変わる。従って、入力装置21を用いて露光の光量を調整することによって、静電潜像20の帯電の強弱を変えてグラファイト粒子10の転写量、つまり転写したグラファイト粒子10の濃さを調整することが可能である。即ち、静電潜像20の帯電が強い場合にはグラファイト粒子10の転写量が多くなり、一方で静電潜像20の帯電が弱い場合にはグラファイト粒子10の転写量が少なくなる。
【0030】
現像機構16は、例えばディベロッパーユニット等でグラファイト粒子10を攪拌しつつ、グラファイト粒子10を静電潜像20に対して逆側の極に帯電し、その帯電したグラファイト粒子10を感光ドラム13に付着させる機構である。帯電したグラファイト粒子10は静電潜像20と逆側の極(本例は負極)に帯電されているため、感光ドラム13が現像機構16を通り過ぎる際、図6に示すように感光ドラム13の静電潜像20に付着する。
【0031】
現像機構16は、グラファイト粒子10の帯電の強弱を調整する帯電調整機能を有している。ここで、グラファイト粒子10にかかる帯電の強弱が変われば、現像時に感光ドラム13に取り付くグラファイト量が変化する。従って、入力装置21を用いてグラファイト粒子10の帯電の強弱を調整することによっても、グラファイト粒子10の転写量を調整することが可能である。ここでは、グラファイト粒子10の帯電が強い場合にはグラファイト粒子10の転写量が多くなり、一方でグラファイト粒子10の帯電が弱い場合にはグラファイト粒子10の転写量が少なくなる。
【0032】
転写機構17は、図7に示すようにグラファイト粒子10が付着した感光ドラム13が試料11の対向位置を通過する際、その試料11を搬送しながら試料11の裏面から逆電荷(本例は正極)をかけることによって、銀メッキ8の表面8aにグラファイト粒子10を転写する機構である。これによって、銀メッキ8の表面8aには、図8(a)に示すようにグラファイト粒子10がグラファイト転写パターンに応じた散布範囲で銀メッキ8上に散布された状態となる。なお、感光ドラム13上のグラファイト粒子10は、全てが試料11に転写されるわけではなく、一部(例えば80%程度)が試料11に転写され、残りは感光ドラム13上に残留グラファイトとして取り付いた状態となる。
【0033】
定着機構18は、試料11に転写したグラファイト粒子10を、例えば融着、融接、圧接等によって試料11(銀メッキ8)に定着させる機構である。この定着処理としては、例えば銀メッキ8の表面8aを溶融することでメッキ表面上の凹凸を埋めてグラファイトを定着する高温化処理と、銀メッキ8の表面8aに圧力を加えることで表面8aを塑性変形させてグラファイトを定着する加圧処理とがある。この種の定着処理を施せば、図8(b)に示すようにグラファイト粒子10が銀メッキ8に強く固定された状態となり、製造物である電気接点材料12からグラファイトが脱落し難くなって、耐摩耗性確保に効果がある。
【0034】
クリーニング機構19は、試料11に転写せずに感光ドラム13上に残留したグラファイト粒子10を除去し、次の転写準備を行う機構である。グラファイト粒子10は電気的に感光ドラム13に付着しているため、クリーニング機構19は感光ドラム13に取り付いたグラファイト粒子10の付着電荷をチャージャーや光で除去することで、そのグラファイト粒子10を感光ドラム13から離脱し易くする。残留したグラファイト粒子10の付着電荷を除去した後、クリーニング機構19はクリーナーブラシを用いて感光ドラム13に残留したグラファイト粒子10を取り除く。
【0035】
ところで、感光ドラム13を帯電させてそれを露光し、その感光ドラム13にグラファイト粒子10を現像して試料11に転写して定着する処理は、レーザプリンタ等に用いられていることからも分るように、グラファイト粒子10を試料11に対して均一に散布することが可能な技術である。従って、この処理を用いてグラファイト粒子10を試料11に散布すれば、試料11の表面にはグラファイト粒子10がほぼ均一に散布されることになる。このため、試料11の表面上に分散したグラファイト量にバラツキが生じ難くなり、試料11の表面上のグラファイト量を適量とすることが可能となる。また、電気接点材料12の耐摩耗性は表面上のグラファイト量によって決まることから、表面上のグラファイト量が適量であれば、電気接点材料12の耐摩耗性が摺動性と金属接触との間でバランスのとれた好適な値となる。
【0036】
さらに、露光工程で感光ドラム13の帯電の強弱を変更したり、現像工程でグラファイト粒子10の帯電の強弱を変更したりすれば、試料11に転写されるグラファイト量が変わることから、グラファイト粒子10の帯電強弱を設定変更することによって、試料11に散布されるグラファイト量を任意に設定することが可能である。従って、試料11に散布するグラファイト量をユーザが任意(自由)にコントロールすることが可能となり、しかもその設定量のグラファイトを均一に試料11に散布することが可能となる。
【0037】
ここで、メッキ表面表のグラファイト量によって表面グラファイト面積比Sは適宜決まるが、図9に表面グラファイト面積比Sとその耐久回数Nとの関係をグラフで示すと、表面グラファイト面積比Sによってその電気接点材料12の耐久回数Nが決まってくる。従って、耐久回数Nはターゲットとする製品仕様に異なってくるが、充分な耐摩耗性を確保するためには、図9のグラフからも分るように耐久回数Nが100万回確保された0.45以上に表面グラファイト面積比Sを設定することが望ましい。
【0038】
(レーザ処理)
図10は、レーザ装置22の概略構成を示す模式構成図である。定着機構18としてのレーザ装置22は、高温化処理(リフロー処理)として加工物にレーザを照射することで加工物を溶融する装置である。レーザ装置22は、電気接点材料12を密閉状態で収容する処理室23と、処理室23内に取り付けられたレーザ照射部24と、処理室23を真空(非酸化雰囲気)に減圧する真空ポンプ25とを備えている。レーザ装置22は、レーザ照射部24を所定方向に往復動させる駆動機構26と、レーザ照射部24の往復動方向と直交する方向に加工物を搬送する搬送機構27とを備えている。
【0039】
続いて、レーザ装置22で電気接点材料12を溶融する手順を説明すると、レーザ処理を行う際には、メッキ処理後に所定面積の平板に切断された電気接点材料12がレーザ装置22の処理室23にセットされ、続けて処理室23の内部が真空ポンプ25によって真空状態に減圧される。なお、処理室23は必ずしも真空状態とされることに限らず、非酸化雰囲気であれば足りる。
【0040】
処理室23内が真空状態となった後、レーザ照射部24は駆動機構26によって往動を開始し、その往動の過程で、処理室23内にセットされた電気接点材料12にレーザを照射し、銀メッキ8の表面8aにおいて1ライン目を溶融する。ここで、銀の融点が約962℃、グラファイト粒子10の融点が約3550℃であるため、レーザ照射部24による溶融温度は、母材2の融点よりも低く、しかも銀メッキ8のみを溶融すべく約1000℃〜1500℃に設定されている。
【0041】
レーザ照射部24が1往動を終えると、搬送機構27が電気接点材料12を所定量搬送する。続いて、今度はレーザ照射部24が復動を開始し、その復動の過程で銀メッキ8にレーザを照射して銀メッキ8の表面8aにおいて2ライン目を溶融する。そして、レーザ照射部24が1復動を終えると、搬送機構27が電気接点材料12を所定量だけ再度搬送し、これ以降も上記と同様にレーザ照射部24によるレーザ照射と電気接点材料12の搬送とが、銀メッキ8の全ラインにレーザ照射が行われるまで繰り返し行われる。
【0042】
従って、銀メッキ8の表面8aが溶融されるので、その溶融した銀成分がグラファイト粒子10の間にある隙間に流れ込み、図8(b)に示すように溶融した銀成分が銀メッキ8の凹凸を埋め、グラファイト粒子10の周囲が銀成分で満たされる。よって、溶融した銀成分が銀メッキ8内のグラファイト粒子10を周囲で強く固定し、グラファイト粒子10の定着性が高まる。これにより、グラファイト粒子10が銀メッキ8から脱落し難くなり、銀メッキ8(電気接点材料12)の耐摩耗性が向上する。
【0043】
(炉による加熱処理)
図11は、炉装置28の概略構成を示す模式構成図である。銀メッキ8の表面8aを溶融する方法は、上記したレーザ処理に限らず、例えば定着機構18としての炉装置28による加熱処理でもよい。炉装置28は、加工物を炉29の中に入れて炉29の内部を高温化して加工物を溶融する装置である。炉装置28は、電気接点材料12を密封状態で収容する処理室30と、処理室30内の温度を高温化する熱源31と、処理室30を真空(非酸化雰囲気)状態とする真空ポンプ32とを備えている。
【0044】
続いて、炉装置28で電気接点材料12を溶融する手順を説明すると、炉29による加熱処理を行う際には、メッキ処理後に所定面積の平板に切断された電気接点材料12が炉29の処理室30にセットされ、続けて処理室30の内部が真空ポンプ32によって真空状態に減圧される。なお、処理室30はレーザ処理の場合と同様に、必ずしも真空状態とされることに限らず、非酸化雰囲気であれば足りる。また、熱源31は例えば高周波加熱用熱源等の種々のものが採用される。
【0045】
処理室30内が真空状態となった後、熱源31に電源が投入されて処理室30の温度が高温化すると、銀メッキ8の表面8aが溶融する。ここで、炉29による加熱処理の溶融温度は、レーザ処理の場合の同様の理由から約1000℃〜1500℃に設定されている。従って、炉29を用いた場合も銀メッキ8の表面8aが溶融するため、それによってグラファイト粒子10の定着性が高まり、レーザ処理の場合と同様に銀メッキ8の耐摩耗性が向上する。
【0046】
(加圧処理)
図12は、加圧処理装置33の概略構成を示す模式構成図である。定着機構18としての加圧処理装置33は、ローラ等で加工物を加圧することによって加工物の表面を塑性変形させる装置である。加圧処理装置33は、電気接点材料12を載置する支持台34と、回転動作が可能なローラ35と、ローラ35を所定圧で電気接点材料12に押しつけた状態でそのローラ35を所定方向(図3の矢印A方向)に移動させる駆動機構36とを備えている。
【0047】
続いて、加圧処理装置33で電気接点材料12を加圧して電気接点材料12の表面を塑性変形させる手順を説明すると、加圧処理を行う際には、メッキ処理後に所定面積の平板に切断された電気接点材料12が支持台34にセットされる。そして、駆動機構36がローラ35を電気接点材料12に所定圧で押しつけ、その状態で駆動機構36がローラ35を図12の矢印A1方向に移動させて、ローラ35によって銀メッキ8の表面8a全域に圧を加える。この際にローラ35が銀メッキ8の表面8aにかける圧力値(所定圧)は、銀メッキ8の表面8aが塑性変形する程度の値に設定されている。
【0048】
従って、加圧処理によって銀メッキ8の表面8aを塑性変形させるので、図8(b)に示すように塑性変形した銀成分がグラファイト粒子10の周りに埋まった状態となる。よって、塑性変形した銀成分が銀メッキ8内のグラファイト粒子10を周囲で強く固定し、グラファイト粒子10の定着性が高まる。これにより、グラファイト粒子10が銀メッキ8から脱落し難くなり、銀メッキ8(電気接点材料12)の耐摩耗性が向上する。また、加圧処理で銀メッキ8内のグラファイト粒子10を定着する場合、その加圧処理によって銀メッキ8の表面硬度が高まるため、グラファイト粒子10が強固な状態で銀メッキ8に定着することになり、銀メッキ8の耐摩耗性が一層高いものとなる。
【0049】
(絶縁被膜コーティング処理)
図13は、グラファイト粒子10の縦断面図である。グラファイト粒子10は、その周囲に例えば絶縁皮膜37がコーティングされていてもよい。この絶縁皮膜37は例えば樹脂材等を材質とし、帯電し易い性質がある。従って、絶縁皮膜37がコーティングされたグラファイト粒子10は、現像工程の際に絶縁皮膜37が作用して帯電し易くなるため、例えば帯電せずに感光ドラム13に取り付かないグラファイト量が減り、グラファイトの均一分散に効果がある。また、定着工程で高温化処理を施せば、絶縁皮膜37が溶けて銀メッキ8に凝着するため、グラファイト粒子10の定着性が高まる。
【0050】
第1実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)転写物を均一に転写することが可能な電子写真方式を用いてグラファイト粒子10を試料11に散布するので、試料11の銀メッキ8上にはグラファイト粒子10が均一に散布する状態となることから、銀メッキ8上にバラツキのない適量のグラファイト粒子10を分布させることができる。また、電気接点材料12の耐摩耗性は表面上のグラファイト量によって決まることから、表面上のグラファイト量が適量であれば、電気接点材料12の耐摩耗性を摺動性と金属接触との間でバランスのとれた好適な値に設定することができる。
【0051】
(2)露光工程で光量を変更したり、現像工程でグラファイト粒子10の帯電の強弱を変更したりすれば、試料11に転写されるグラファイト量が変わることから、グラファイト粒子10の帯電強弱を設定変更することによって、試料11に散布されるグラファイト量を任意に設定することができる。従って、電気接点材料12が持つ耐摩耗性の値をユーザが自由にコントロールすることができ、ターゲットとする製品仕様に合わせた様々な種類の電気接点材料12を製造することができる。
【0052】
(3)定着工程で高温化処理を用いた場合、銀メッキ8の表面8aが高温化処理によって溶融するが、その溶融した銀成分が銀メッキ8の表面8a上の凹凸を埋め、メッキ内のグラファイト粒子10が表面8a上に強く固定される。従って、多くのグラファイト粒子10が銀メッキ8に強く取り付いた状態となるため、グラファイト粒子10の銀メッキ8に対する定着性を向上することができる。よって、グラファイト粒子10の定着性が高まれば、銀メッキ8(電気接点材料12)の耐摩耗性を向上することができる。
【0053】
(4)定着工程で加圧処理を用いた場合、銀メッキ8の表面8aが加圧処理によって塑性変形するが、その際に塑性変形した銀成分がグラファイト粒子10の周りに埋まった状態となり、塑性変形した銀成分が銀メッキ8内のグラファイト粒子10を周囲で強く固定する。従って、多くのグラファイト粒子10が銀メッキ8に強く取り付いた状態となるため、グラファイト粒子10の銀メッキ8に対する定着性を向上することができる。よって、グラファイト粒子10の定着性が高まれば、銀メッキ8(電気接点材料12)の耐摩耗性を向上することができる。更に、加圧処理で銀メッキ8内のグラファイト粒子10を定着する場合、その加圧処理によって銀メッキ8の表面硬度が高まるため、グラファイト粒子10が強固な状態で銀メッキ8に定着することになり、銀メッキ8の耐摩耗性を一層高いものとすることができる。
【0054】
(5)絶縁皮膜37がコーティングされたグラファイト粒子10を用いた場合、現像工程の際に絶縁皮膜37が作用してグラファイト粒子10が帯電し易くなるため、例えば帯電せずに感光ドラム13に取り付かないグラファイト量が減り、グラファイトの均一分散に効果がある。また、定着工程で高温化処理を施せば、絶縁皮膜37が溶けて銀メッキ8に凝着するため、グラファイト粒子10の定着性を一層高めることができる。
【0055】
(6)母材2の表面に銀メッキ8を形成し、そのメッキにグラファイト粒子10を散布及び定着してメッキ表面にグラファイト粒子10を分布させる。従って、グラファイト粒子10を増量する処理を施したとしても、グラファイト粒子10は銀メッキ8上でその量が増えることになるため、母材2の材質成分はそのままである。従って、グラファイト粒子10を増量したとしても、母材2が予め持つ強度はそのままであるため、その母材2を基材とする電気接点材料12の強度はグラファイト増量に影響されず、電気接点材料12の強度を充分に確保することができる。
【0056】
(7)銀メッキ8にはそのメッキ特性として高い電気導線性があることから、電気接点材料12に施す金属メッキを銀メッキ8とすることによって、電気導電性の高い電気接点材料12を提供することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した電気接点材料製造方法及び電気接点材料の第2実施形態を図14及び図15に従って説明する。本例は、第1実施形態と比較してグラファイト粒子10を試料11(銀メッキ8)に適量散布する方法が異なっているのみであり、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0057】
(グラファイト棒の擦り付け)
図14は、グラファイト棒38を用いたグラファイト固定方法の説明図である。ところで、グラファイト棒38を銀メッキ8に擦り付けるためには、銀メッキ8の表面8aが粗い必要があるが、無光沢メッキにはその表面凹凸形状が粗い性質があるため、本例の銀メッキ8には無光沢メッキを採用している。このように、銀メッキ8に無光沢メッキを用いれば、図14に示すように銀メッキ8の表面8aの凹凸形状が粗くなり、グラファイト粒子10が引っ掛かり易くなる。なお、グラファイト棒38が棒材に相当する。
【0058】
ところで、無光沢メッキの表面の凹凸形状が粗い理由は、電気メッキで例えば光沢メッキを形成する場合にはメッキ表面凹凸を滑らかにする添加物が混入されるが、無光沢メッキの場合にはこの種の添加物が入らないため、メッキに際してメッキ液4中の金属イオンが不均一に母材2に積み上がることが要因とされる。よって、無光沢メッキの場合には、母材2の表面において銀の積み上がりにバラツキができ、これが銀メッキ8の表面凹凸を形成することになる。
【0059】
グラファイト棒38はグラファイト粒子(黒鉛)10を接着剤等で固めた棒であり、本例においては円柱形状をなしている。このグラファイト棒38が銀メッキ8の表面8aに擦り付けられると、図15に示すようにグラファイト粒子10が銀メッキ8の表面凹凸に引っ掛かり、銀メッキ8の表面8aに固定された状態となる。従って、簡単な方法でグラファイト粒子10を銀メッキ8に固定することが可能となり、グラファイト粒子10を銀メッキ8に分散させる際の作業の簡素化や、作業時間の短時間化等に効果がある。
【0060】
ところで、粉状のグラファイト粒子を銀メッキ8の表面8aに散布して定着する方法は、グラファイト粒子が粉末状であるため、例えば風等で表面8aから飛び立ってしまう可能性も否定できない。しかし、固形のグラファイト棒38を銀メッキ8に擦り付けてグラファイト粒子10を銀メッキ8に固定する方法は、固形のグラファイトの固まりを銀メッキ8に固定するため、グラファイト粒子が風等で飛び立ってしまうような状況にはなり難い利点もある。なお、銀メッキ8にグラファイト粒子10を擦り付けた後に、銀メッキ8に高温化処理や加熱処理を施してグラファイト粒子10の定着性を高めてもよい。
【0061】
(過電流印加処理)
図16は、別構成の電気メッキ装置1の概略構成を示す模式構成図である。銀メッキ8の表面8aを粗くする方法は、銀メッキ8を無光沢メッキとすることに限らず、電気メッキの初期段階において過電流を流す方法を用いてもよい。これを以下に説明すると、本例の電気メッキ装置1はメッキ漕3が中間の区画壁39によって2領域に区画され、電気メッキ時には母材2が第1メッキ漕3a、第2メッキ漕3bの順に各漕内のメッキ液4にそれぞれ浸される。本例の電気メッキ装置1は、母材2を先に潜らす第1メッキ漕3aで母材2に過電流を流し、母材2を後で潜らす第2メッキ漕3bで母材2に通常の電流を流して、母材2の表面に金属メッキを形成する処理を行う。
【0062】
メッキ漕3の区画壁39にはその下部に通し孔39aが貫設され、母材2はメッキに際して一方(図16に示す右側)の通し孔5aから第1メッキ漕3a内に導入され、区画壁39の通し孔39aを経由して、他方(図16に示す左側)の通し孔5bから第2メッキ漕3bの外部へ導出される。
【0063】
電気メッキ装置1で母材2上に銀メッキ8を形成する際、電気メッキの初期段階で過電流を流して銀メッキ8を形成する。この処理として、まずメッキに必要な量の母材2が順に巻き取られながら通し孔5aを介して第1メッキ漕3a内に導入される。第1メッキ漕3aに必要量の母材2がセットされるとその状態が保持され、第1メッキ漕3aに浸された電極(図示略)と母材2との間に過電流が流される。このとき、母材2に流される過電流の電流値は、通常の電流値(即ち、第2メッキ漕3bで母材2に流される電流値)に対して例えば3〜5倍の値に設定されている。電気メッキで母材2に過電流を流した場合、過電流印加期間はメッキ速度が速くなるため、銀成分が母材2に付着する際には偏った状態で母材2に付着することから、銀メッキ8は表面8aに大きな凹凸形状を有した状態で母材2に形成される。
【0064】
過電流を所定時間流した後、母材2に過電流を流す処理が停止され、続いて第1メッキ漕3aでメッキ処理を施した部分が通し孔39aを介して第2メッキ漕3bに導入される。第1メッキ漕3aでメッキ処理を施した部分が第2メッキ漕3bにセットされるとその状態が保持され、第2メッキ漕3bに浸された電極(図示略)と母材2との間に通常値の電流が流される。通常値の電流が母材2に所定時間流されると、過電流を流してできた銀メッキ8の層上に新たに銀成分が積み重なって積層し、最終的には必要とする層厚の銀メッキ8が母材2に形成される。
【0065】
必要とする層厚の銀メッキ8が形成されると、母材2に通常値の電流を流す処理が停止され、続いて第2メッキ漕3bでメッキ処理を施した部分が通し孔5bから第2メッキ漕3bの外部に導出される。そして、初期段階で過電流を流してから通常値の電流を流す電気メッキが、ロール状に巻かれた母材2の全箇所に銀メッキ8が形成されるまで繰り返し行われ、以上の処理によって製造された母材2が試料11として取り扱われる。
【0066】
ところで、電気メッキに際して通常の電流値で銀メッキ8を形成すると、表面凹凸がそれほど大きくない銀メッキ8が形成される。しかし、本例は電気メッキの初期段階で過電流を流して、表面凹凸の大きい銀メッキ8を母材2に予め形成してそこに通常値の電流で銀成分を付着させることから、通常の低い電流値で電気メッキを施す場合であっても、予め凹凸の大きい銀メッキ8に銀成分が積み重なっていくため、最終的にできる銀メッキ8の表面は大きな凹凸形状を有した状態となる。
【0067】
(母材表面加工処理)
図17は、母材2の表面2aを粗くする際の作業状態を示す斜視図である。銀メッキ8の表面凹凸を大きくする方法は電気メッキの初期段階で過電流を流す方法に代えて、母材2の表面2aを予め粗くする加工処理を施しておき、表面2aを粗くした母材2に電気メッキを施して、銀メッキ8の表面凹凸を大きくする方法もある。母材2の表面2aを予め粗くするには、例えばヤスリやショットブラスト等で粗くする例が挙げられるが、母材2の表面凹凸を粗くできるのであれば、その方法は特に限定されない。
【0068】
表面2aの粗い母材2に電気メッキを施すと、メッキ液4中の銀成分が母材2の表面2aに順次積み重なって銀メッキ8の層となるため、銀メッキ8は母材2の表面形状に沿った形状で形成される。従って、母材2の表面2aの凹凸が大きければ、母材2の表面2aにできる銀メッキ8も表面凹凸が大きい状態で形成される。
【0069】
(エッチング−再メッキ処理)
図18は、銀メッキ8を施した試料11をエッチングする際の説明図である。銀メッキ8の表面凹凸を大きくする方法は電気メッキの初期段階で過電流を流す方法や、母材2の表面2aを予め粗くしておく方法に限らず、銀メッキ8の施された試料11をエッチングし、それを再メッキする方法でもよい。この処理では、まず最初に上記した処理内容の電気メッキによって母材2に銀メッキ8を形成し、表層に銀メッキ8を有する試料11を用意する。
【0070】
そして、図18に示すようにその試料11をエッチング漕40内のエッチング溶液41に浸し、試料11にエッチング処理を施す。このとき、銀メッキ8の表面8aがエッチング溶液41によって溶け出して粗い状態となるため、銀メッキ8の表面8aは表面凹凸がそれほど大きくない状態から、表面凹凸が大きくなった状態となる。
【0071】
エッチング処理後、その試料11に電気メッキを再度施す。即ち、エッチング処理の施された試料11を電気メッキ装置1に再度セットし、この試料11とメッキ液4内の電極との間に直流電圧を印加して、試料11の表面に銀成分を積層させて銀メッキ8を再形成する。なお、この再メッキのメッキ条件(例えばメッキ時に付与する電流値)は、最初に行う電気メッキと同条件でもよいし、或いは異なっていてもよい。
【0072】
表面凹凸の大きい銀メッキ8に電気メッキを再度施すと、メッキ液4中の銀成分が銀メッキ8の表面8aに順次積み重なって積層状態となっていくため、再メッキ時の銀メッキ8はエッチング後の銀メッキ8の表面形状に沿った形状で形成される。従って、本例はエッチングで表面凹凸を粗くした銀メッキ8の表面に銀メッキ8を再メッキすることから、最終的な銀メッキ8の表層は表面凹凸が大きくなった状態となる。
【0073】
第2実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(3),(4),(7)の効果に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(8)グラファイト粒子10を固めたグラファイト棒38を用意し、そのグラファイト棒38を銀メッキ8に擦り付けることで銀メッキ8にグラファイト粒子10を付着させるので、適量のグラファイト粒子10を簡単な作業で銀メッキ8に固定することができる。
【0074】
なお、実施形態は上記構成に限定されず、例えば以下の態様に変更してもよい。
・ 試料11は、母材2に銀メッキ8を施したのみの材料に限らず、例えば図19に示すようにグラファイト粒子10が含有した銀メッキ8を母材2に形成した材料でもよい。この試料11を製造するには、まずメッキ液4に例えば粒径が1〜20μm程度のグラファイト粒子10の粉末を混入する。グラファイト混入後、母材2及び電極の間に直流電圧を加えると、母材2に銀メッキ8が付着するが、この際に銀とともに粉末のグラファイト粒子10も取り込まれ、図19に示すように銀メッキ8にはグラファイト粒子10が分散状態で含有した状態となる。この場合、表面グラファイト面積比Sが一層向上し、銀メッキ8の耐摩耗性が一層向上する。
【0075】
・ 試料11は、銀メッキ8やグラファイト含有の銀メッキを母材2に形成した材料に限らず、例えば単に銅やニッケルでもよい。
・ 定着処理は、高温化処理や加圧処理に限定されない。例えば、熱と圧力とでグラファイト粒子10を試料11(銀メッキ8)に融着する熱ロール式や、化学溶液を私用して化学変化によってグラファイト粒子10を試料11(銀メッキ8)に定着する化学式などを採用してもよい。
【0076】
・ 金属メッキを電気メッキで形成する際、その金属メッキは銀メッキ8に限らず、例えば金メッキ、無電解ニッケルメッキ、クロムメッキ、ニッケルメッキ、はんだメッキ、錫メッキ、亜鉛メッキ等を採用してもよい。
【0077】
・ 母材2のメッキ方法は電気メッキに限らず、例えば化学メッキ、溶融メッキ、物理蒸着、化学蒸着、浸透メッキ等を採用してもよい。
・ 電気接点材料製造装置9は、感光ドラム13が中心点O回りに回転するドラム式に限定されず、例えば一つに繋がった帯状の感光ベルト部材が回るベルト式でもよい。
【0078】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)中心点回りに回転可能な感光体と、前記感光体を帯電させる帯電機構と、前記感光体に露光する光量によって当該感光体の表面に静電潜像を形成する露光機構と、電荷を付与したグラファイト粒子を前記感光体に現像する現像機構と、前記グラファイト粒子の転写先である金属体を搬送する際に当該金属体の裏側から逆電荷をかけることによって、前記感光体に現像された前記グラファイト粒子を前記金属体に転写する転写機構と、前記金属体に転写された前記グラファイト粒子を当該金属体の表面に定着する定着機構とを備えたことを特徴とする電気接点材料製造装置。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】第1実施形態における電気メッキ装置の概略構成を示す模式構成図。
【図2】表面に銀メッキが形成された試料の断面図。
【図3】電気接点材料製造装置の概略構成を示す模式構成図。
【図4】感光ドラムを帯電する際の説明図。
【図5】帯電後の感光ドラムを露光する際の説明図。
【図6】露光後の感光ドラムにグラファイト粒子を現像する際の説明図。
【図7】感光ドラムに現像したグラファイト粒子を試料に転写する際の説明図。
【図8】(a)はグラファイト粉末を銀メッキにまぶした際の試料の断面図であり、(b)はグラファイト粒子を銀メッキに定着した後の試料の断面図。
【図9】表面グラファイト面積比とその耐久回数との関係を示すグラフ。
【図10】レーザ装置の概略構成を示す模式構成図。
【図11】炉装置の概略構成を示す模式構成図。
【図12】加圧処理装置の概略構成を示す模式構成図。
【図13】表面に樹脂皮膜がコーティングされたグラファイト粒子の断面図。
【図14】第2実施形態におけるグラファイト粒子固定方法の説明図。
【図15】銀メッキにグラファイトを固定した後の電気接点材料の断面図。
【図16】別構成の電気メッキ装置の概略構成を示す模式構成図。
【図17】母材の表面を粗くする際の作業状態を示す斜視図。
【図18】銀メッキを施した試料をエッチングする際の説明図。
【図19】グラファイト含有の銀メッキが施された試料の断面図。
【符号の説明】
【0080】
2…母材、8…金属メッキとしての銀メッキ、10…グラファイト粒子、11…金属体としての試料、12…電気接点材料、13…感光体としての感光ドラム、20…静電潜像、37…絶縁皮膜、38…棒材としてのグラファイト棒、O…中心点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心点回りに回転可能な感光体を帯電する手順と、
前記感光体に露光する光量によって当該感光体の表面に静電潜像を形成する手順と、
前記静電潜像を形成した前記感光体に、電荷を付与したグラファイト粒子を現像する手順と、
前記グラファイト粒子の転写先である金属体を搬送する際に、当該金属体の裏側から逆電荷をかけることによって、前記感光体に現像された前記グラファイト粒子を前記金属体に転写する手順と、
前記金属体に転写された前記グラファイト粒子を当該金属体の表面に定着する手順と
を備えたことを特徴とする電気接点材料製造方法。
【請求項2】
前記グラファイト粒子を前記金属体に定着する手順は、当該金属体に高温化処理を施して当該金属体の表面を溶融する手順であることを特徴とする請求項1に記載の電気接点材料製造方法。
【請求項3】
前記グラファイト粒子を前記金属体に定着する手順は、前記金属体の表面に加圧処理を施すことで当該金属体の表面を塑性変形させる手順であることを特徴とする請求項1に記載の電気接点材料製造方法。
【請求項4】
前記グラファイト粒子には、樹脂を材質とする絶縁皮膜がコーティングされていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電気接点材料製造方法。
【請求項5】
母材の表面の一部又は全体にグラファイト含有の金属メッキを形成することで前記金属体を形成し、当該金属メッキの表面に前記グラファイトが転写されることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電気接点材料製造方法。
【請求項6】
母材の表面の一部又は全体に金属メッキを形成し、グラファイトを固めた棒材を、前記金属メッキの表面の粗い部分に擦り付けることで、前記グラファイトを前記金属メッキの表面に定着させることを特徴とする電気接点材料製造方法。
【請求項7】
支軸回りに回転可能な感光体ドラムを帯電し、前記感光体ドラムに露光する光量によって当該感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、前記静電潜像を形成した前記感光体に、電荷を付与したグラファイト粒子を現像し、前記グラファイト粒子の転写先である金属体を搬送する際に、当該金属体の裏側から逆電荷をかけることによって、前記感光体ドラムに現像された前記グラファイト粒子を前記金属体に転写し、前記金属体に転写された前記グラファイト粒子を当該金属体の表面に定着することで製造した電気接点材料。
【請求項8】
母材の表面の一部又は全体に金属メッキを形成し、グラファイトを固めた棒材を、前記金属メッキの表面の粗い部分に擦り付けることで、前記グラファイトを前記金属メッキの表面に定着させることで製造した電気接点材料。
【請求項1】
中心点回りに回転可能な感光体を帯電する手順と、
前記感光体に露光する光量によって当該感光体の表面に静電潜像を形成する手順と、
前記静電潜像を形成した前記感光体に、電荷を付与したグラファイト粒子を現像する手順と、
前記グラファイト粒子の転写先である金属体を搬送する際に、当該金属体の裏側から逆電荷をかけることによって、前記感光体に現像された前記グラファイト粒子を前記金属体に転写する手順と、
前記金属体に転写された前記グラファイト粒子を当該金属体の表面に定着する手順と
を備えたことを特徴とする電気接点材料製造方法。
【請求項2】
前記グラファイト粒子を前記金属体に定着する手順は、当該金属体に高温化処理を施して当該金属体の表面を溶融する手順であることを特徴とする請求項1に記載の電気接点材料製造方法。
【請求項3】
前記グラファイト粒子を前記金属体に定着する手順は、前記金属体の表面に加圧処理を施すことで当該金属体の表面を塑性変形させる手順であることを特徴とする請求項1に記載の電気接点材料製造方法。
【請求項4】
前記グラファイト粒子には、樹脂を材質とする絶縁皮膜がコーティングされていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電気接点材料製造方法。
【請求項5】
母材の表面の一部又は全体にグラファイト含有の金属メッキを形成することで前記金属体を形成し、当該金属メッキの表面に前記グラファイトが転写されることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電気接点材料製造方法。
【請求項6】
母材の表面の一部又は全体に金属メッキを形成し、グラファイトを固めた棒材を、前記金属メッキの表面の粗い部分に擦り付けることで、前記グラファイトを前記金属メッキの表面に定着させることを特徴とする電気接点材料製造方法。
【請求項7】
支軸回りに回転可能な感光体ドラムを帯電し、前記感光体ドラムに露光する光量によって当該感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、前記静電潜像を形成した前記感光体に、電荷を付与したグラファイト粒子を現像し、前記グラファイト粒子の転写先である金属体を搬送する際に、当該金属体の裏側から逆電荷をかけることによって、前記感光体ドラムに現像された前記グラファイト粒子を前記金属体に転写し、前記金属体に転写された前記グラファイト粒子を当該金属体の表面に定着することで製造した電気接点材料。
【請求項8】
母材の表面の一部又は全体に金属メッキを形成し、グラファイトを固めた棒材を、前記金属メッキの表面の粗い部分に擦り付けることで、前記グラファイトを前記金属メッキの表面に定着させることで製造した電気接点材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−42390(P2007−42390A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224510(P2005−224510)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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