説明

電気接点要素および電気接点要素を製造する方法

本発明は、半製品から電気接点要素を製造する方法、ならびに、電気接点要素およびそれに対応する半製品に関する。交合接点によって電気的に接触可能な電気接点要素(100)を製造する方法は、第1の電気伝導性材料(112)からワイヤ(120)を製造するステップと、第2の電気伝導性材料からなるシース(114)でワイヤ表面をコーティングするステップと、長手ワイヤ軸(118)に沿った方向にシース(114)を部分的に除去するステップと、長手ワイヤ軸に対して横方向にワイヤを分割することにより、少なくとも1つの円筒状の半製品(110)を形成するステップと、第2の電気伝導性材料が接点台(104)に接続されるように半製品を接点台に固定するステップと、接点要素(100)を形成するために溶接された半製品を再成形するステップとを含み、交合接点に対して近接可能な接点領域(106)を第1の電気伝導性材料によって形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半製品から電気接点要素を製造する方法、ならびに、電気接点要素およびそれに対応する半製品に関する。
【背景技術】
【0002】
電気接点は、ライトスイッチ、コンタクトブレーカまたはリレーなどの電気装置およびスイッチギアにおいて多岐にわたって応用され、普及している。スイッチング操作に関係する電気接点の構成部品、特に接触層に対して、とりわけ温度作用下での電気伝導率、磨耗抵抗、機械的安定性および溶接に対する抵抗に関して、高い要求が課せられている。これらの要件は、しばしば矛盾した方法で材料選択を決定するが、貴金属/金属酸化物複合材料によって、特に十分に満たされ得ることが示されている。
【0003】
しかしながら、このような貴金属/金属酸化物複合材料、例えば銀/スズ酸化物は、まさにそれらの溶接に対する抵抗のために、接点台材料に溶接によって直接固定することができない。
【0004】
したがって、例えばバイメタルリベットとして知られているものの場合のように、リベット結合によって接点を固定したり、または多層接点を作り上げることにより溶接可能な層を備えたりすることが知られている。ここでは、接続は冷間溶接法またはロールクラッディングによって行われる。しかしながらこれらの概念では、製造に多くの努力が必要であり、さらに、この方法は適用する接点材料を最小量にする必要があるのが欠点である。固体接点の場合、またはワイヤ断面リベット結合の場合には、貴金属の一部は実際のスイッチング機能に付加的に使用されないため、本来意図したように使用されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明が基づく目的は、第1に、動作中、接点要素の最適な特性を確実に発揮し、第2に、材料を節減し、コスト効率の良い方法で確実に製造できる、接点要素を製造する方法を特定することとみなすことができる。
【0006】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、半製品としての実際の接点を製造するために、金属複合材料からなるワイヤの一部を第1の伝導性材料として使用し、そのワイヤに第2の電気伝導性材料として金属コーティングを施し、それに続く接点領域上の金属複合材料のコアを露出するために、一部の表面上の金属コーティングを再び除去したという考えに基づく。
【0008】
金属複合材料は、銅、銅−ニッケル合金、クロム−ニッケル合金または銀のような適切な金属からなることができ、酸化スズ、酸化亜鉛、Feのような酸化鉄、酸化銅、酸化カドミウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ビスマス、酸化テルルなどの酸化物、炭素(カーボンブラック、グラファイトまたは炭素繊維の形で)、または、金属がニッケルと異なる場合はニッケルを含む。特に適切な金属複合材料は、例えば、欧州特許第508055号明細書、欧州特許第1505164号明細書、欧州特許第725154号明細書、欧州特許第736885号明細書、欧州特許第795367号明細書、独国特許第10012250号明細書、欧州特許第1142661号明細書、欧州特許第1915765号明細書および欧州特許第2004349号明細書、ならびに、それらの明細書で引用されている文書に述べられている。引用している欧州特許第508055号明細書および欧州特許第1505164号明細書に記載の銀系金属複合材料は特に有利である。これらは銀−スズ酸化物系接点材料であり、さらに酸化インジウム、酸化テルル、酸化ビスマス、酸化銅、酸化ニッケルまたはそれらの混合物を含むことができる。そのような材料は粉末冶金によって、または内部酸化によって製造することができる。
【0009】
金属コーティングは、コアを形成するが、金属複合材料の溶接強度を与える成分は含まない金属複合材料と同じ金属または複数の金属からなることができる。
【0010】
本発明によれば、銀スズ酸化物ワイヤの銀シースを、削り取り、または、分割により、次の接点ポイントの領域から除去する。このようにして、確実に貴金属の損失を最小にし、同時に、接点ポイントの領域における貴金属を有するスイッチング要素への異物混入を防止して、スイッチング接点の溶接を防ぐ。
【0011】
他方では、銀スズ酸化物の接点材料を接点台へ直接溶接すると、製造を非常に単純化でき、製造コストを低いままにしておくことができる。貴金属は機械的な役割に使用する必要はないため、貴金属の使用は最小である。スイッチングポイントの領域に溶接可能な金属製の貴金属はない。
【0012】
本発明の有利な実施形態によれば、ワイヤの一部を軸方向に削り取り、その結果、ワイヤの円形断面上において、1つのセグメントを除去する。円筒状の半製品に分割し、電気接点へ再成形した後、所望の接点をこのように特に簡単に製造することができ、材料損失も比較的小さい。金属シースをさらに多く除去したいならば、放射状のオフセット方向にさらに削り取るステップを行うことができる。
【0013】
ワイヤが中心で分割され、両方の部分が使用可能なままである場合、廃棄物が全く蓄積しない一実施形態が提供される。
【0014】
特に本発明による接点要素が、例えば電磁リレーなどのスイッチギアの中で使用される場合、溶接の問題が特に重要であるため、本発明の有利な特性が成果をもたらす。
【0015】
本発明をより理解する目的で、以下の図に示した例示的実施形態を用いて、より詳細に説明する。本明細書では、同一部分は同一の表記および同一の構成要素表記で示している。さらに、図示および記載した実施形態のいくつかの特徴または特徴の組合せは、それら自体独立している発明的解決策、すなわち、本発明による解決策を示すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】完成した接点要素の概略的な斜視図を示す。
【図2】再成形前の、本発明による溶接された半製品の斜視図を示す。
【図3】削り取る前のシーズ線の断面を示す。
【図4】第1の削り取るステップ後のワイヤの断面を示す。
【図5】分割ステップ後のワイヤの断面を示す。
【図6】複数の削り取るステップを行った後のワイヤの断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、リレー接点の例を用いて、本発明による接点要素100の斜視図を示す。実際の電気接点102は、ここでは単に概略的に示した接点台104に溶接によって接続されている。動作中に交合接点と電気接続する接点領域106は、ここでは溶接への傾向を全く示さない材料で形成する。本実施形態によれば、これは銀−スズ酸化物の複合材料である。しかしながら、例えば、酸化カドミウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アンチモン、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ビスマスあるいは酸化テルル、またはそれらの組合せを含む他の複合材料も適切である。溶接ポイント108の領域には、金属シース114、特に貴金属シース、本実施形態の場合は金属銀があり、それによって、接点102を台104に簡単な溶接により固定することができる。
【0018】
図2は、本発明による半製品110を接点台104に固定する、接点100についての前の段階の斜視図を示す。概略的に図2に示したように、半製品は円筒状の貴金属/金属酸化物コア112を含み、そのコアは金属製の貴金属シース114に部分的に囲まれている。溶接可能な材料からなるシース114を、特に溶接ポイント108の領域の中に配置する。他方では、シースは次の接点ポイント106の領域において除去されている。接点台104に向かう方向116に圧力をかけることによって、半製品110を続いて実際の接点102に再成形する。ここで再成形方向116は、1本のワイヤの長手軸118に関して横方向に延びていることに、留意されたい。
【0019】
図3から図6は、次の接点領域106を金属銀層からはがす様々な具体的に可能な方法を説明している。ここで、いずれの場合もワイヤ120の断面を示しており、その長手軸に関して横方向に切断することにより、半製品110をワイヤ120から製造する。図3は未完成部分を示し、その中の、既に説明したように、例えば銀−スズ酸化物の複合材料からなることができるコア112は、金属製の貴金属シース114に囲まれている。貴金属は例えば金属銀である。図4に示したように、金属シース層114の部分的除去は、断面の1つのセグメントを削り取ることにより行うことができる。
【0020】
あるいは、図5に示したように、ワイヤ120の中心122まで削るか、ワイヤを二等分に分割することが可能である。図5に示した変形例は、可能な限り広い銀を含まない接点領域106を提供する半製品としての長所があるが、この断面を削り取りによって製造すると、比較的大量の材料が失われるという欠点がある。しかしながら、ワイヤの両半分が使用可能なままである分割方法を用いれば、この変形例は最も多くの材料を節約する解決策を示す。
【0021】
図6は、第1の削り取るステップに関して放射状にオフセットされる方向に、削り取るステップをさらに2回行うことによって、できるだけ多くの金属銀シース114を次の接点領域から除去する実施形態を示す。
【0022】
以下の表1では、図4、図5および図6のバージョンについて、40μmの銀メッキを有する約1.2mmの電線径が考えられる場合の、断面積に対するそれぞれの材料損失を比較している。
【0023】
【表1】

この概要から明らかになるように、最も低い材料損失は図4の変形例に記録されるものであるが、一方、図6の変形例はシース材の最も効果的な除去を含んでいる。
【0024】
要約すると、例えばスイッチングまたはリレーに接点を載せるための接点要素を本発明により製造することによって、第1に銀−スズ酸化物の接点材料を単に直接溶接することによって製造することが可能となるが、第2に、実際の電気接点の領域において特に溶接する傾向が確実に低くなることを記録することが可能である。貴金属を含む出発材料を経済的に使用することによって、コストをさらに下げることができる。
【符号の説明】
【0025】
100 接点要素
102 電気接点
104 接点台
106 接点領域
108 溶接ポイント
110 半製品
112 コア
114 シース
116 再成形圧力の方向
118 ワイヤの長手軸
120 ワイヤ
122 ワイヤ断面の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交合接点によって電気的に接触可能な電気接点要素(100)を製造する方法であって、
第1の電気伝導性材料(112)のワイヤ(120)に第2の電気伝導性材料のシース(114)を備えるステップと、
ワイヤ長手軸(118)に沿った方向に前記シース(114)を部分的に除去するステップと、
前記ワイヤ長手軸に対して横方向に前記ワイヤを細分割することにより、少なくとも1つの円筒状の半製品(110)を形成するステップと、
前記半製品を接点台(104)に固定するステップであって、その結果、前記第2の電気伝導性材料を前記接点台に接続するステップと、
前記接点要素(100)を形成するために前記溶接された半製品を再成形するステップであって、交合接点に近接可能な接点領域(106)が前記第1の電気伝導性材料によって形成されるステップと
を含む方法。
【請求項2】
ワイヤ長手軸(118)に沿った方向に前記シース(114)を部分的に除去する前記ステップが、
軸方向に前記ワイヤの一部を削り取り、その結果、前記ワイヤの円形断面上において、1つのセグメントを除去すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ワイヤ長手軸に沿った方向に前記コーティングを部分的に除去する前記ステップが、
前記前の削り取るステップ関して定義された半径方向の角度によってオフセットされた軸方向に前記ワイヤの一部を削り取り、その結果、前記ワイヤの前記円形断面上において、さらに少なくとも1つのセグメントが除去されること
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ワイヤ長手軸に沿った方向に前記コーティングを部分的に除去する前記ステップが、
軸方向に前記ワイヤを分割し、その結果、前記ワイヤの前記円形断面を分割すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の伝導性材料が溶接不可である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の伝導性材料が貴金属/金属酸化物合金を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の伝導性材料が溶接可能である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の伝導性材料が単体貴金属を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記接点要素(100)が電磁リレーのための接点である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記半製品(110)を前記接点台(104)に固定する前記ステップを溶接により行う、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記円筒状の半製品(110)を前記接点台に固定するステップにおいて、前記コーティングが除去されている領域が前記接点台からそれるように、前記半製品の円周の円筒表面が前記接点台上にくる状態で前記円筒状の半製品を固定する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
交合接点によって電気的に接触可能な電気接点要素(100)であって、前記接点要素を請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法により製造する電気接点要素。
【請求項13】
電気接点要素を製造するための半製品であって、前記半製品が、第1の電気伝導性材料のコア(112)と、 第2の電気伝導性材料のシース(114)とを含み、前記シースを前記半製品の長手軸(118)に沿った方向に少なくとも部分的に除去する半製品。
【請求項14】
前記半製品が円筒形である、請求項13に記載の半製品。
【請求項15】
電気接点を製造するための、請求項13または14に記載の半製品の使用。
【請求項16】
請求項12に記載の少なくとも1つの切り替え可能な接点要素を有する電磁リレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−517594(P2013−517594A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548449(P2012−548449)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050482
【国際公開番号】WO2011/086167
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【出願人】(512168272)タイコ エレクトロニクス アンプ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】