説明

電気接続箱のワイヤーハーネス導出部構造

【課題】ワイヤーハーネスの外装体の弛み部分を積極的に収容する部分を設けることにより、電気接続箱の組立性の向上と、防水性やワイヤーハーネスの固定性の向上を図る。
【解決手段】電気接続箱を構成する電気接続箱本体3と底面カバー4の合わせ部にワイヤーハーネス導出口2が設けられ、そのワイヤーハーネス導出口の周縁に、電気接続箱本体側の半円筒体21と底面カバー側の半円筒体22の周方向両端21a、22aを合わせることで構成される円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド20が設けられている。2つの半円筒体の周壁の周方向の合わせ部の内周には、ワイヤーハーネスの外周に巻き付けた外装体の弛み部分を収容するように電気接続箱本体側の半円筒体21の周壁及び底面カバー側の半円筒体22の周壁から半径方向外側に凹む凹部24が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載する電気接続箱のワイヤーハーネス導出部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載する電気接続箱のワイヤーハーネス導出部の構造として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。図8はそれと類似の電気接続箱のワイヤーハーネス導出部構造を示している。
【0003】
この電気接続箱では、図8(a)に示すように、電気接続箱を構成する本体103とカバー104の合わせ部に、電気接続箱の内部から外部へワイヤーハーネスWを導出するワイヤーハーネス導出口102が設けられており、そのワイヤーハーネス導出口102の周縁に、本体103側に設けた半円筒体121とカバー104に設けた半円筒体122を合わせることで構成された円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド120が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−140235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイヤーハーネスの外周に、外装体Sとして樹脂のシート(例えば、ビニール製の保護シート)やテープなどを巻き付けてから、本体103側の半円筒体121とカバー104側の半円筒体122を組み合わせて、防水性やワイヤーハーネスWの固定性の確保を行うことがあるが、そうした場合、上述の従来のワイヤーハーネス導出部構造では、ワイヤーハーネスWに被せた外装体Sに弛み(シワなど)があると、半円筒体121、122の合わせ部に外装体Sの弛み部分を噛み込みやすくなり、それが原因で、カバー104の装着作業がしづらくなったり、図8(b)に示すように、合わせ部に隙間dができることにより、防水性を損うことになったり、ワイヤーハーネスWの固定及び本体103とカバー104との組み付けが不確実になったりする等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、ワイヤーハーネスの外装体の弛み部分を積極的に収容する部分を設けることにより、電気接続箱の組立性の向上と、防水性やワイヤーハーネスの固定性の向上を図ることのできる電気接続箱のワイヤーハーネス導出部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、電気接続箱を構成する該電気接続箱の本体である第1の部材とカバーである第2の部材の合わせ部に、電気接続箱の内部から外部へワイヤーハーネスを導出するワイヤーハーネス導出口が設けられ、そのワイヤーハーネス導出口の周縁に、前記第1の部材側に設けた半円筒体と前記第2の部材側に設けた半円筒体の周方向両端を合わせることで構成される円筒状のワイヤーハーネス導出ガイドが設けられ、前記第1の部材の半円筒体の周壁と前記第2の部材の半円筒体の周壁との周方向の合わせ部の周壁の内周に、前記ワイヤーハーネスの外周に巻き付けられた外装体の弛み部分を収容するように前記第1の部材の半円筒体の周壁及び前記第2の部材の半円筒体の周壁から半径方向外側に凹む凹部が設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電気接続箱のワイヤーハーネス導出部構造であって、前記第1の部材の半円筒体と前記第2の部材の半円筒体のうちの一方の半円筒体の周壁の周方向の両端に、前記凹部の一部を形成するための外側に折れ曲がった断面L字形の屈曲壁が設けられ、前記断面L字形の屈曲壁の内面と前記前記第1の部材の半円筒体と前記第2の部材の半円筒体のうちの他方の半円筒体の周壁の端面とで前記凹部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、ワイヤーハーネスに巻き付けた外装体(例えば、保護シートやテープなど)の弛み部分を、円筒状のワイヤーハーネス導出ガイドの内周に第1の部材の半円筒体の周壁及び第2の部材の半円筒体の周壁から半径方向外側に凹むように形成した凹部に収容することができる。従って、2つの半円筒体を合わせて円筒状のワイヤーハーネス導出ガイドを組み立てる際に、半円筒体の合わせ部に、外装体の弛み部分を噛み込む心配がなくなる。そのため、第1の部材と第2の部材の組み合わせが確実となり、作業も容易にできるようになる。また、無用な隙間を生じずに2つの半円筒体を組み合わせることができるし、外装体を傷つけるなどの心配もなくなる。その結果、第1の部材と第2の部材が確実に組み付けられ、電気接続箱におけるワイヤーハーネス導出部分の防水性を高めることができると共に、ワイヤーハーネスの固定性の向上が図れる。
【0010】
請求項2の発明によれば、片方の半円筒体の周方向の両端部に断面L字形の屈曲壁を設けることで、ワイヤーハーネスの外装体の弛み部分を収容する凹部を形成しているので、半円筒体の肉厚を無闇に厚くせずに凹部を確保することができ、電気接続箱を樹脂成形する際の成形性の悪化を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した電気接続箱の斜め上から見た外観斜視図である。
【図2】同電気接続箱の斜め下から見た外観斜視図である。
【図3】同電気接続箱の分解斜視図である。
【図4】同電気接続箱のワイヤーハーネス導出口部分の下から見た拡大斜視図である。
【図5】図4と同じ部分を少し違う角度から見た拡大斜視図である。
【図6】同ワイヤーハーネス導出口部分を縦に切った断面図である。
【図7】同ワイヤーハーネス導出口からワイヤーハーネスを引き出した際の同部分の軸線方向外方から見た正面図である。
【図8】従来の電気接続箱におけるワイヤーハーネス導出部の構造を示す図で、(a)は全体側面図、(b)はワイヤーハーネス導出口の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明を適用した電気接続箱の斜め上から見た外観斜視図、図2は同電気接続箱の斜め下から見た外観斜視図、図3は同電気接続箱の分解斜視図、図4は同電気接続箱のワイヤーハーネス導出口部分の下から見た拡大斜視図、図5は図4と同じ部分を少し違う角度から見た拡大斜視図、図6は同ワイヤーハーネス導出口部分を縦に切った断面図、図7は同ワイヤーハーネス導出口からワイヤーハーネスを引き出した際の同部分の軸線方向外方から見た正面図である。
【0014】
図1〜図3に示すように、この電気接続箱1は、電気接続箱1の下面部分に、電気接続箱1の内部から外部へワイヤーハーネスWを導出するワイヤーハーネス導出口2を有している。この電気接続箱1は、電気接続箱本体(第1の部材)3と、底面カバー(第2の部材)4と、上面カバー5などから組み立てられており、前記のワイヤーハーネス導出口2は、電気接続箱本体3と底面カバー4の合わせ部に設けられている。
【0015】
この場合の底面カバー4は、電気接続箱本体3の側面開放部分に、ワイヤーハーネスWを仮配索した後から、下方よりスライドさせて組み付けられるものであり、図4、図5に示すように、電気接続箱本体3と底面カバー4の側壁同士の合わせ部には、縦方向のスライドガイド部11と、スライドガイド部11の下端のストッパ部12とが設けられている。図4の矢印Aは、底面カバー4を組み付ける際の底面カバー4のスライド方向を示している。底面カバー4をスライドガイド部11の案内で矢印A方向にスライドさせて電気接続箱本体3に組み付けると、ストッパ部12の位置で底面カバー4が止まり、図示しないロック機構の働きで電気接続箱本体3と底面カバー4がロックされる。
【0016】
また、ワイヤーハーネス導出口2の周縁部には、電気接続箱本体3側に設けた半円筒体21と底面カバー4側に設けた半円筒体22の周方向両端21a、22aを合わせることで構成される円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド20が設けられている。この円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド20の軸線方向は、図6に示すように、電気接続箱本体3に底面カバー4を組み合わせる際に底面カバー4を電気接続箱本体3にスライドさせる方向(上下方向)に対してやや斜めの方向に設定されている。
【0017】
また、本実施形態の特徴として、電気接続箱本体3の半円筒体21と底面カバー4側の半円筒体22の周壁の周方向の合わせ部の内周には、図7に示すように、ワイヤーハーネスWの外周に巻き付けられた外装体Sの弛み部分Saを収容するための凹部24が設けられている。
【0018】
この凹部24は、図4に示すように、ワイヤーハーネスWの長手方向に沿った溝状に形成されており、その溝状の凹部24が、電気接続箱1の外部から内部に向かう方向に溝幅が徐々に狭くなるように形成されている。つまり、凹部24を円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド20の中心付近から見ると、奥側が狭まった略台形状をなしている。この凹部24は、底面カバー4側の半円筒体22の周壁の周方向の両端に、外側に折れ曲がった断面L字形の屈曲壁23を形成することで形成されている。詳述すると、外側に折れ曲がった断面L字形の屈曲壁23の内面と相手側の半円筒体21の周壁の端面とで凹部24が形成されている。
【0019】
即ち、断面L字形の屈曲壁23は、半円筒体22の周壁から外方に垂直に突出した横壁23aと、その横壁23aの先端から相手側の半円筒体21の周方向端部に向かって屈曲した縦壁23bとからなり、横壁23aの奥側の位置が、電気接続箱1の外方から内方に向かうに従い徐々に相手側の半円筒体21の周方向端部に近づくように傾斜していることにより、溝状の凹部24の溝幅が徐々に小さくなっている。そして、縦壁23bの先端内縁部と相手側の半円筒体21の周方向端部の外縁部が接触することで、円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド20が円周方向に隙間無く閉じた形状になっている。また、凹部24の奥端P(図4参照)では、2つの半円筒体21、22が互いに密着している。
【0020】
なお、底面カバー4の半円筒体22の先端には、ワイヤーハーネスWをテープ止めするためのテープ止め片30が突設されている。
【0021】
以上のように構成したので、図7に示すように、ワイヤーハーネスWの外周に巻き付けた外装体S(例えば、保護用のビニールシートやテープなど)の弛み部分Saを、円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド20の内周に形成した凹部24に収容することができる。従って、2つの半円筒体21、22を合わせて円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド20を組み立てる際に、半円筒体21、22の合わせ部に、外装体Sの弛み部分Saを噛み込む心配がなくなる。
【0022】
そのため、電気接続箱本体3と底面カバー4の組み合わせ作業が容易にできるようになる。また、無用な隙間を生じずに2つの半円筒体21、22を組み合わせることができるし、外装体Sを傷つけるなどの心配もなくなり、その結果、電気接続箱1におけるワイヤーハーネス導出部分の防水性を高めることができると共に、ワイヤーハーネスWの固定性の向上が図れる。
【0023】
また、ワイヤーハーネスWの外装体Sの弛み部分Saを収容する凹部24を、ワイヤーハーネスWの長手方向に沿った溝状に形成して、その溝状の凹部24を、電気接続箱1の外部から内部に向かう方向に溝幅が徐々に狭くなるように形成しているので、電気接続箱1の内部に向かうほど外装体Sの弛み部分をきつく締め付けることができ、防水性やワイヤーハーネスWの固定性の一層の向上が図れる。
【0024】
また、底面カバー4側の半円筒体22の周方向の両端部に断面L字形の屈曲壁23を設けることで、ワイヤーハーネスWの外装体Sの弛み部分Saを収容する凹部24を形成しているので、半円筒体22の肉厚を無闇に厚くせずに凹部24を確保することができ、電気接続箱1を樹脂成形する際の成形性の悪化を避けることができる。
【0025】
また、底面カバー4側の半円筒体22の両端に凹部24を設けているので、組立の手順として最初に、底面カバー4の半円筒体22にワイヤーハーネスWをあてがい、外装体Sの弛み部分Saを底面カバー4側の凹部24に収容してから、次に、底面カバー4を電気接続箱本体3に組み付けることにより、外装体Sの弛み部分Saを噛み込むことなく、スムーズに底面カバー4を電気接続箱本体3に組み合わせることができ、その状態で、2つの半円筒体21、22により組み立てられた円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド30から、ワイヤーハーネスWを導出させることができる。
【0026】
また、円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド30の軸線方向を上下方向に対して斜めに設定しているので、底面カバー4を電気接続箱本体3にスライドさせながら組み付ける動作に従って、電気接続箱本体3側の半円筒体21に底面カバー4側の半円筒体22を斜めからスライド気味に組み合わせることができ、よりワイヤーハーネスWの外装体Sの弛み部分Saを噛み込みにくくなり、組立作業性が一層向上する。即ち、底面カバー4を電気接続箱本体3に確実かつ簡単に組み付けることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 電気接続箱
2 ワイヤーハーネス導出口
3 電気接続箱本体(第1の部材)
4 底面カバー(第2の部材)
20 円筒状のワイヤーハーネス導出ガイド
21,22 半円筒体
21a,22a 周方向両端
23 断面L字形の屈曲壁
24 凹部
W ワイヤーハーネス
S 外装体
Sa 弛み部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続箱を構成する該電気接続箱の本体である第1の部材とカバーである第2の部材の合わせ部に、電気接続箱の内部から外部へワイヤーハーネスを導出するワイヤーハーネス導出口が設けられ、
そのワイヤーハーネス導出口の周縁に、前記第1の部材側に設けた半円筒体と前記第2の部材側に設けた半円筒体の周方向両端を合わせることで構成される円筒状のワイヤーハーネス導出ガイドが設けられ、
前記第1の部材の半円筒体の周壁と前記第2の部材の半円筒体の周壁との周方向の合わせ部の周壁の内周に、前記ワイヤーハーネスの外周に巻き付けられた外装体の弛み部分を収容するように前記第1の部材の半円筒体の周壁及び前記第2の部材の半円筒体の周壁から半径方向外側に凹む凹部が設けられていることを特徴とする電気接続箱のワイヤーハーネス導出部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続箱のワイヤーハーネス導出部構造であって、
前記第1の部材の半円筒体と前記第2の部材の半円筒体のうちの一方の半円筒体の周壁の周方向の両端に、前記凹部の一部を形成するための外側に折れ曲がった断面L字形の屈曲壁が設けられ、前記断面L字形の屈曲壁の内面と前記前記第1の部材の半円筒体と前記第2の部材の半円筒体のうちの他方の半円筒体の周壁の端面とで前記凹部が形成されていることを特徴とする電気接続箱のワイヤーハーネス導出部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−63016(P2013−63016A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236468(P2012−236468)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2007−110396(P2007−110396)の分割
【原出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】