説明

電気接続箱

【課題】ロアカバーの小型化により、全体を小型化して車両等への取り付け性の向上を実現でき、構造の単純化や薄肉化によりコスト低減を図ることもできる電気接続箱を提供すること。
【解決手段】第1ロアカバーは、幹線から分岐した複数の電線を導出入する電線導出入口を有し該電線導出入口以外の部分でアッパーカバーの全下方領域を覆うようにアッパーカバーの下面側に取り付けられ、第2ロアカバー7は、第1ロアカバー3の電線導出入口15の周辺のみを覆う構造とすることにより、第1ロアカバー3及び第2ロアカバー7の小型化や薄肉化による軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関し、特に、電線群が接続されるケース本体の下面側に、前記電線群の周囲を覆って保護するロアカバーが装備される形式の電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
図4および図5は、車両に配索されるワイヤハーネスにヒューズ等の電気回路を接続するために、車両に搭載される電気接続箱の従来例を示したものである。
【0003】
ここに示した電気接続箱101は、下記特許文献1に開示されたもので、ワイヤハーネス102に接続されるヒューズ等の回路部品を収容したケース本体103と、このケース本体103の上部を覆うアッパーカバー105と、前記ケース本体103の下部を覆うロアカバー107とから構成されている。
【0004】
ケース本体103は、図5(a)に示すように、ワイヤハーネス102の1本に束ねられている幹線102Aから引き出された電線102a,102b,102c群がケース下面側から該ケース内に引き込まれて、ケース内の不図示の回路部品に接続される。
ケース本体103の上部は、収容している回路部品へアクセス可能に、開放されている。
【0005】
アッパーカバー105は、ケース本体103の上部の開放部103aを覆うように、ケース本体103の上部に、着脱可能に取り付けられる。
【0006】
ロアカバー107は、ケース本体103の下面側に取り付けられて、前記回路部品に接続されるワイヤハーネス102の配線方向を規制するように前記ケース本体103の下面側を覆う。
【0007】
従来の電気接続箱101の場合、ロアカバー107は、幹線102Aから引き出された各電線102a,102b,102cを収容して、これらの電線の配線方向を規制する第1のロアカバー107Aと、ケース本体103の下を通る幹線102Aを収容してその配線方向を規制する第2のロアカバー107Bとに分割されていて、ケース本体103の下面側の全域を覆う構造になっている。
【0008】
また、この従来例の場合、第2のロアカバー107Bは、その上端部がケース本体103にヒンジ結合されて、図5(a)の矢印Xで示すように、外側方に回動可能に取り付けられている。
【0009】
このような取付け構造にされている理由は、図5(b)に示すように、ケース本体103に接続されるワイヤハーネス102の幹線102Aを配線方向が180°方向変換した形態に収容する際に、幹線102Aの収容作業を容易にするためである。
【0010】
180°方向変換して、第1のロアカバー107Aの外側に引き出されたワイヤハーネス102は、その配線形態を保持するように、結束バンド109により第1のロアカバー107Aの底部に固定している。
【0011】
【特許文献1】特開2007−282320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記のようにケース本体103の下面の全域を覆うようにロアカバー107を装備した電気接続箱101では、ロアカバー107が大型化してしまうため、電気接続箱101の全体が大型化してしまい、車両等の取付けスペースの制限が多い環境では、取付けスペースの確保が難しくなるという問題が生じた。
【0013】
また、ワイヤハーネス102の幹線102Aは電線の収容数が多いものはかなりの剛性があり、曲げ半径等も大きく確保しなければならないため、ロアカバー107にこの幹線102Aも収容する構成では、ロアカバー107の大型化が避けられないだけでなく、幹線102Aの曲げ部をしっかりと保持するために、ロアカバー107の肉厚を厚くするなどして、ロアカバー107の強度も向上させなければならないため、重量化を招くという問題も生じた。
【0014】
また、ワイヤハーネス102の電線102a,102b,102cや、幹線102Aの収容時の操作性を向上させるためには、上記の従来例のように、ロアカバー107を2分割するなどの工夫が必要になり、ロアカバー107の構造の繁雑化により、コストアップを招くという問題も生じた。
【0015】
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、ロアカバーの小型化により全体を小型化して、取付けスペースの低減による車両等への取り付け性の向上を実現でき、また、ロアカバーの小型軽量化や、構造の単純化によりコスト低減を図ることもできる電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) アッパーカバーと、
前記アッパーカバーとの間に形成される空間に回路部品を収容したロアカバーと、
前記回路部品に電気的に接続され且つ前記ロアカバーの下面側から引き出された複数の電線を有し、且つ該ロアカバーの下面側に配索されたワイヤハーネスの幹線と、
を備えた電気接続箱であって、
前記ロアカバーは、第1ロアカバーと第2ロアカバーとに分割され、
前記第1ロアカバーは、前記幹線から分岐した複数の前記電線を導出入する電線導出入口を有し、該電線導出入口以外の部分で前記アッパーカバーの下面側を覆うように前記アッパーカバーの下面側に取り付けられ、
前記第2ロアカバーは、複数の前記電線が導出入された前記第1ロアカバーの前記電線導出入口の周囲を覆うように、前記第1ロアカバーの下面側に取り付けられていることを特徴とする電気接続箱。
【0017】
(2) 前記第1ロアカバーの下面で延長する前記ワイヤハーネスの幹線の部分のうち前記第2ロアカバーから露出された部分を固定するための固定機構を前記第1ロアカバーの下面側に更に備え、
前記第2ロアカバーと前記固定機構により前記幹線の配索方向が規制されていることを特徴とする前記(1)に記載の電気接続箱。
【0018】
上記(1)の構成によれば、第1ロアカバーは、幹線から分岐した複数の電線を導出入する電線導出入口を有し、該電線導出入口以外の部分で前記アッパーカバーの全下方領域を覆う構成のため、幹線を覆わない分、従来のロアカバーに比べて薄型化して小型化することができる。また、第2ロアカバーは、複数の電線が導出入された第1ロアカバーの電線導出入口の周囲の、一部の領域を覆う構成のため、ケース本体の下面の全域及び幹線を覆う従来のロアカバーに比べて小型化することができる。そして、第1ロアカバーと第2ロアカバーの小型化により、電気接続箱全体が小型化されるため、取付けスペースの低減による車両等への取り付け性の向上を実現することができる。
【0019】
また、第2ロアカバーは、ワイヤハーネスの細い電線などが引き出された部分の幹線の、保護が必要な部分のみを限定的に覆うもので、収容する電線として、剛性の高いワイヤハーネスの幹線の第1ロアカバーの下に重なる全部分を含まなくて良いため、ワイヤハーネスの幹線の多くを収容していた従来のロアカバーと比較すると、それほど強度が必要なく、肉厚を抑えて軽量化を図ることもできる。
【0020】
更に、上記の第2ロアカバーは、剛性が高いために曲げが難しいワイヤハーネスの幹線の多くの部分を収容せず、幹線から引き出された電線郡を主に収容することができるため、従来例のように幹線用として2分割構造にしたり、ケース本体への取付けを可動にする必要がなく、構造を単純化することができ、上記の軽量化に伴う樹脂材料の節約もあって、コスト低減を図ることもできる。
【0021】
上記(2)の構成によれば、第1ロアカバーの下面を通るワイヤハーネスの幹線は、第2ロアカバー内にはほとんど収容されないが、結束バンド等を利用して第1ロアカバーの下面側に装備された固定機構により固定することにより配線方向の規制をしっかりと行うことができるため、ロアカバーを小型化したことによって、ワイヤハーネスの配線方向の規制力が低下することはなく、整然とした配線形態を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による電気接続箱によれば、第1ロアカバーが、幹線から分岐した複数の電線を導出入する電線導出入口を有し該電線導出入口以外の部分でアッパーカバーの全下方領域を覆うので、幹線を覆わない分、従来のロアカバーに比べて薄形化して小型化することができる。また、第2ロアカバーが、複数の電線が導出入された第1ロアカバーの電線導出入口の周囲の、一部の領域を覆うので、ケース本体の下面の全域及び幹線を覆う従来のロアカバーに比べて小型化することができる。そして、ロアカバーの小型化により、電気接続箱全体が小型化されるため、取付けスペースの低減による車両等への取り付け性の向上を実現することができる。
【0023】
また、第2ロアカバーは、ワイヤハーネスの細い電線などが引き出された部分の幹線の、保護が必要な部分のみを限定的に覆うもので、剛性の高いワイヤハーネスの第1ロアカバーの下に重なる全部分を覆わなくて良いためそれほど強度が必要なく、肉厚を抑えて軽量化を図ることもできる。
【0024】
更に、上記の第2ロアカバーは、曲げ難く収容に手間がかかるワイヤハーネスの幹線の第1ロアカバーの下に重なる全部分を収容しないため、2分割構造や回動部の無い単純な構造にすることができ、上記の軽量化に伴う樹脂材料の節約もあって、コスト低減を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る電気接続箱の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明に係る電気接続箱の一実施形態で、第1ロアカバーの下面から第2ロアカバーを取り外した状態の側面図、図2は図1に示した電気接続箱の組み立てた状態の斜視図、図3は図1に示した電気接続箱にワイヤハーネスを接続した状態の縦断面図である。
【0027】
この一実施形態の電気接続箱1は、車両に配索されるワイヤハーネス2にヒューズやリレー等の電気回路を接続したり、配線相互を分岐接続したりするために、車両に搭載される電気接続箱で、ワイヤハーネス2に接続されるヒューズ等の回路部品を収容した第1ロアカバー3と、この第1ロアカバー3の上部を覆うアッパーカバー5と、前記第1ロアカバー3の下部を限定的に覆う第2ロアカバー7とから構成されている。
【0028】
第1ロアカバー3は、図3に示すように、ワイヤハーネス2の1本に束ねられている幹線2Aから引き出された複数本の電線2bによる電線群が第1ロアカバー3の下面側から該第1ロアカバー3内に引き込まれて、第1ロアカバー3内の回路部品11,12等に接続される。
【0029】
第1ロアカバー3の上部は、収容している回路部品11,12等へアクセス可能に、開放されている。
【0030】
アッパーカバー5は、第1ロアカバー3の上部の開放部を覆うように、第1ロアカバー3の上部に、着脱可能に取り付けられる。
【0031】
第2ロアカバー7は、第1ロアカバー3の下面側に取り付けられて、回路部品11,12等に接続されるワイヤハーネス2の配線方向を規制するように第1ロアカバー3の下面側を覆う。
【0032】
本実施形態の場合、第2ロアカバー7は、第1ロアカバー3の下面領域の全域ではなく、第1ロアカバー3の下面領域においてワイヤハーネス2の幹線2Aから引き出された電線2b群が第1ロアカバー3内に導出入される部分である第1ロアカバー3の電線導出入口15およびその周辺の限定された領域だけを覆っている。
【0033】
第1ロアカバー3の電線導出入口15は、第1ロアカバー3の下面の一端側(図3では左端側)に寄って装備されている。そのため、第2ロアカバー7は第1ロアカバー3の下面の一端側を覆うように、第1ロアカバー3の下部に係合により取り付けられている。
【0034】
第2ロアカバー7は第1ロアカバー3の長手方向に対向する両端部に、ワイヤハーネス2の幹線2Aを挿通させる開口16が設けられている。
【0035】
本実施形態の場合、第1ロアカバー3の下面側には、第2ロアカバー7から露出した状態で第1ロアカバー3の下面を通るワイヤハーネス2の幹線2A部を結束バンド18により結束固定するための固定機構としての結束具取付け部19を装備している。
【0036】
結束具取付け部19は、例えば結束バンド18を挿通し得るように、第1ロアカバー3の側壁に貫通させた開口部でも良い。
【0037】
以上に説明した一実施形態の電気接続箱1では、第1ロアカバー3が電線導出入口15以外の部分でアッパーカバー5の下面側を覆うので、幹線2Aを覆わない分、従来のロアカバーに比べて薄型化して小型化することができる。
また、第1ロアカバー3の下部に取り付けられる第2ロアカバー7は、第1ロアカバー3の下面の全域ではなく、電線導出入口15の周囲近傍である一部の領域のみを覆う構成のため、ケース本体の下面の全域を覆う従来のロアカバーと比較すると、第2ロアカバー7を小型化することができる。そして、第1ロアカバー5及び第2ロアカバー7の小型化により、電気接続箱全体が小型化されるため、取付けスペースの低減による車両等への取り付け性の向上を実現することができる。
【0038】
また、第2ロアカバー7は、ワイヤハーネス2の幹線2Aから引き出された細い電線2bなどの保護が必要な部分およびその周辺域を限定的に覆うもので、収容して配線方向の規制を行う電線として、剛性の高いワイヤハーネス2の幹線2Aの第1ロアカバー3の下に重なる全部分を含まなくて良いため、ワイヤハーネスの幹線の多くの部分を収容していた従来のロアカバーと比較すると、それほど強度が必要なく、肉厚を抑えて軽量化を図ることもできる。
【0039】
更に、上記の第2ロアカバー7は、剛性が高いために曲げが難しいワイヤハーネス2の幹線2Aの第1ロアカバー3の下に重なる全部分を収容しないため、従来例のように2分割構造にしたり、第1ロアカバーへの取付けを可動にする必要がなく、構造を単純化することができ、上記の軽量化に伴う樹脂材料の節約もあって、コスト低減を図ることもできる。
【0040】
また、本実施形態の電気接続箱1の場合、第1ロアカバー3の下面側には、第2ロアカバー7から露出した状態で第1ロアカバー3の下面を通るワイヤハーネス2の幹線2Aを結束バンド18により結束固定するための固定機構としての結束具取付け部19を装備している。
【0041】
そのため、第1ロアカバー3の下面を通るワイヤハーネス2の幹線2Aの多くの部分は、第2ロアカバー7内には収容されないが、結束バンド18を利用して第1ロアカバー3の下面側に装備された結束具取付け部19に固定することにより配線方向の規制をしっかりと行うことができるため、第2ロアカバー7を小型化したことによって、ワイヤハーネス2の配線方向の規制力が低下することはなく、整然とした配線形態を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る電気接続箱の一実施形態で、第1ロアカバーの下面から第2ロアカバーを取り外した状態の側面図である。
【図2】図1に示した電気接続箱の組み立てた状態の斜視図である。
【図3】図1に示した電気接続箱にワイヤハーネスを接続した状態の縦断面図である。
【図4】従来の電気接続箱の分解斜視図である。
【図5】(a)は図4に示した電気接続箱において2分割されている一対のロアカバーの一方を開いた状態の組み立て図、(b)は図4に示した電気接続箱において2分割されている一対のロアカバーを閉じてワイヤハーネスの幹線まで収容した状態の組み立て図である。
【符号の説明】
【0043】
1 電気接続箱
2 ワイヤハーネス
2A 幹線
2b 電線
3 第1ロアカバー
5 アッパーカバー
7 第2ロアカバー
11,12 回路部品
15 電線導出入口
16 開口
18 結束バンド
19 結束具取付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーカバーと、
前記アッパーカバーとの間に形成される空間に回路部品を収容したロアカバーと、
前記回路部品に電気的に接続され且つ前記ロアカバーの下面側から引き出された複数の電線を有し、且つ該ロアカバーの下面側に配索されたワイヤハーネスの幹線と、
を備えた電気接続箱であって、
前記ロアカバーは、第1ロアカバーと第2ロアカバーとに分割され、
前記第1ロアカバーは、前記幹線から分岐した複数の前記電線を導出入する電線導出入口を有し、該電線導出入口以外の部分で前記アッパーカバーの下面側を覆うように前記アッパーカバーの下面側に取り付けられ、
前記第2ロアカバーは、複数の前記電線が導出入された前記第1ロアカバーの前記電線導出入口の周囲を覆うように、前記第1ロアカバーの下面側に取り付けられていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記第1ロアカバーの下面で延長する前記ワイヤハーネスの幹線の部分のうち前記第2ロアカバーから露出された部分を固定するための固定機構を前記第1ロアカバーの下面側に更に備え、
前記第2ロアカバーと前記固定機構により前記幹線の配索方向が規制されていることを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−11544(P2010−11544A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164578(P2008−164578)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】