説明

電気接続箱

【課題】簡単な構造で、バスバーを絶縁板とプリント基板に対して強固且つ高精度に位置決め固定することができる、新規な構造の電気接続箱を提供すること。
【解決手段】絶縁板18がプリント基板16に載置固定されている一方、絶縁板18の表面に形成された位置決め部60に、複数のバスバー20が配置されて位置決め支持されている。各バスバー20には、通電用タブ部76と固定用タブ部78の少なくとも一方が設けられており、通電用タブ部76がプリント基板16に貫設された通電用スルーホール42に挿通されて半田付けされる一方、固定用タブ部78がプリント基板16に貫設された非通電用スルーホール44に挿通されて半田付けされることにより、複数のバスバー20が絶縁板18とプリント基板16に位置決め固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の電気接続箱に関し、特に、プリント基板と、絶縁板上に配設されたバスバーがケース内部に収容されている電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板や、絶縁板上に配設されたバスバー等からなる内部回路が、ケース内部に収容された電気接続箱が知られている。例えば、特開2003−249288号公報(特許文献1)に記載のものがそれである。このような電気接続箱では、複数のバスバーと絶縁板を交互に積層したバスバー積層体からバスバーの導通用タブを突出させる一方、仕切用絶縁板を介して重ね合わされたプリント基板のスルーホールに、バスバーの導通用タブを挿通させて半田付けすることにより、バスバーとプリント基板との導通が図られている。
【0003】
ところで、このような構造の電気接続箱においては、バスバーとプリント基板の導通を安定して確保するために、バスバーを絶縁板とプリント基板に対して強固に位置決め固定することが重要となる。そこで、特開平10−215515号公報(特許文献2)に記載のとおり、絶縁板に突設したリブをバスバーのかしめ孔に挿通させてかしめ固定すると共に、積層される絶縁板間でバスバーを挟持して、バスバーを絶縁板に固定する事が行われている。また、このように絶縁板に固定されたバスバーは、仕切用絶縁板やケース等の別部材を介してプリント基板に間接的に固定されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところが、バスバーを絶縁板にかしめ固定する方法では、絶縁板に設けられた多数のリブをバスバーに設けられた多数のかしめ孔に挿通させ、かしめ加工する作業が必要となって、作業工程が複雑となる。また、特別なかしめ用の設備も必要となって、コスト高を招いていた。加えて、絶縁板にかしめ固定されたバスバーが、別部材を介してプリント基板に間接的に位置決め固定されていることから、介在する別部材からの影響によって、バスバーのプリント基板に対する位置決め精度が十分に確保できないおそれもあった。
【0005】
特に近年では、コスト削減等の目的から、バスバーの数を削減してプリント基板側で多くの回路を構築することが行われており、絶縁板上に配設されたバスバーを多層に積層する必要がない場合もある。この場合に、一層のバスバーを位置決め固定するために、上層および下層の二枚の絶縁板を使用することは非効率的であることから、絶縁板に一層のバスバーが配設される際にも、安定してバスバーを絶縁板やプリント基板に固定できる新規な構造が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−249288号公報
【特許文献2】特開平10−215515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、簡単な構造で、バスバーを絶縁板とプリント基板に対して強固且つ高精度に位置決め固定することができる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、プリント基板と、絶縁板上に配設された複数のバスバーとを、ケース内部に収容してなる電気接続箱において、前記絶縁板が前記プリント基板に載置されて固定されている一方、前記絶縁板の表面に形成された位置決め部に、各前記バスバーが配置されて位置決め支持されていると共に、各前記バスバーには、前記絶縁板に貫設された挿通孔を通って前記プリント基板に向かって延びる通電用タブ部と固定用タブ部の少なくとも一方が設けられており、前記通電用タブ部が、前記プリント基板のプリント配線に導通された通電用スルーホールに挿通されて半田付けされる一方、前記固定用タブ部が前記プリント配線に接続されていない非通電用スルーホールに挿通されて半田付けされることにより、前記複数のバスバーが前記絶縁板と前記プリント基板に位置決め固定されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、複数のバスバーのそれぞれには、通電用タブ部および/又は固定用タブ部が形成されている。そして、バスバーの通電用タブ部をプリント基板の導通用スルーホールに挿通して半田付けするのと同時に、バスバーの固定用タブ部をプリント基板の非導通用スルーホールに挿通して半田付けすることにより、絶縁板上にそれぞれ位置決め配置された複数のバスバーを、絶縁板とプリント基板に強固に位置決め固定することができる。これにより、従来必要とされた、絶縁板へのバスバーのかしめ固定の工程を一切削除して、既存の半田付け工程のみで、複数のバスバーをプリント基板に固定された絶縁板およびプリント基板に対して効率的に位置決め固定することができる。
【0010】
また、各バスバーが、通電用タブ部と固定用タブ部の少なくとも何れか一方をプリント基板のスルーホールに挿通して半田付けすることにより、絶縁板とプリント基板に対して強固に位置決め固定されていることから、絶縁板上に配設されたバスバーを更に上方から載置される絶縁板で挟持する必要もない。
【0011】
しかも、複数のバスバーを、プリント基板に載置されて固定された絶縁板を介してプリント基板にダイレクトに固定していることから、従来のように、一旦バスバーを絶縁板にかしめ固定して、その後、別部材を介してバスバーに固定された絶縁板をプリント基板に固定する場合に比して、位置決め精度の向上を図ることが出来る。
【0012】
特に、各バスバーには、必要に応じて通電用タブ部と固定用タブ部の少なくとも一方を形成して、それらをプリント基板の通電用および非通電用のスルーホールにそれぞれ挿通して半田付けすることにより、各バスバーの絶縁板とプリント基板への位置決め固定が実現できる。従って、プリント配線に導通されるバスバーは、通電用タブ部を利用して、固定用タブ部を設けることなくプリント基板に固定してもよく、また、バスバーの延出距離が長くなったり、電気部品の大きな挿抜力が加わるバスバーには、複数の固定用タブ部を適所に設けて、固定力の増強を図ることもでき、大きな設計自由度をもってバスバーの固定が実現できる。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載の電気接続箱において、前記通電用タブ部が挿通される前記挿通孔が、前記固定用タブ部が挿通される前記挿通孔よりも大きな開口面積で貫設されており、前記通電用タブ部の半田付け部が前記挿通孔を通じて外部から視認可能とさえている一方、前記固定用タブ部が前記挿通孔を通じて外部から視認不可能とされているものである。
【0014】
本態様によれば、通電用タブ部の半田付け部が挿通孔を通じて外部から視認可能であることから、通電用タブ部の半田上がりの良否が確認でき、バスバーとプリント基板の導通安定性を担保することができる。特に、通電用タブ部が挿通される挿通孔が、固定用タブ部が挿通される挿通孔よりも大きい開口面積で貫設されていると共に、固定用タブ部の半田付け部が外部から視認不可能とされていることから、半田上がりの確認が必要な通電用タブ部と不必要な固定用タブ部を即座に峻別することができる。それ故、固定用タブ部を設けた場合でも、目視確認作業を煩雑にすることなく効率的に行うことが出来る。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載の電気接続箱において、前記絶縁板が、外周縁部を規定する外周枠体と、該外周枠体に連結されて該外周枠体の内側を前記複数のバスバーの形状に沿って延びる支持壁部とから構成されており、前記複数のバスバーが前記支持壁部の上面に開口形成されて前記位置決め部を構成するバスバー収容凹溝に嵌め入れられて位置決め支持されているものである。
【0016】
本態様によれば、絶縁板が、外周枠体とその内部を延出するバスバー支持壁部によって構成されている。従って、従来のような、プリント基板の全面を覆うように広がる平板状の絶縁板に比して、必要な部分にのみ支持壁部があり、それ以外は貫通部となるような枠体構造の絶縁板とすることができる。これにより、樹脂量の削減を図ることができると共に、貫通部を通じて、プリント基板に実装された実装部品の半田付け部の目視確認性を向上させることができる。また、本態様によれば、貫通部を利用して通電用タブ部や固定用タブ部が挿通される挿通部を構成することができる。加えて、支持壁部の上面に開口形成されたバスバー収容凹溝にバスバーを嵌め入れて位置決め支持することができることから、絶縁板を枠体構造としても確実にバスバーを位置決め支持できる。なお、強度確保やバスバーとプリント配線間の絶縁性確保の観点から、外周枠体と支持壁部からなる絶縁板は、従来の平板上の絶縁板に比べて大きな高さ寸法で形成されることが望ましい。
【0017】
本発明の第四の態様は、前記第三の態様に記載の電気接続箱において、前記バスバーが、前記支持壁部の前記収容凹溝上を平板状に広がる平板回路部と、前記収容凹溝から立ち上がる端子部を有している一方、前記支持壁部には、前記平板回路部の両側縁部および前記端子部が載置される部位以外の領域に肉抜部が形成されているものである。
【0018】
本態様によれば、支持壁部においても、バスバーの両側縁部および端子部を支持しない領域に肉抜部を形成することで、更なる樹脂材料や重量の削減を図ることが出来る。しかも、絶縁板を、外周枠体と外周枠体に連結された支持壁部から構成される枠体形状としたことにより、貫通孔や肉抜部を多く備えた構造でも十分な強度を確保することができる。
【0019】
本発明の第五の態様は、前記第一〜第四の何れか1つの態様に記載の電気接続箱において、前記複数のバスバーが、前記絶縁板の表面を平板状に延びる平板回路部を有している一方、前記複数のバスバーの少なくとも一つが前記絶縁板の表面から立ち上がる縦板回路部を有しており、該縦板回路部が前記平板回路部から隙間を隔てて延出しているものである。
【0020】
本態様によれば、バスバーの回路部を部分的に縦方向に屈曲させて縦板回路部を形成することで、平板回路部上を跨って配設することができる。これにより、絶縁板を多層に重ねることなく、回路部の立体的な構成が可能となり、絶縁板の樹脂量やコストの削減を図りつつ、バスバー回路の設計自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従う電気接続箱によれば、プリント基板に載置されて固定された絶縁板上に位置決めされたバスバーから突出する通電用タブ部と固定用タブ部が、プリント基板に設けた導通用スルーホールと非導通用スルーホールにそれぞれ挿通して半田付けされている。これにより、既存の半田付け工程のみで、別部材を介することなく、バスバーを絶縁板とプリント基板に対して直接且つ強固に位置決め固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施形態としての電気接続箱を示す分解斜視図。
【図2】図1に示すプリント基板と絶縁板とバスバーを組み付けてなる内部回路の斜視図。
【図3】図1に示す絶縁板の平面図。
【図4】図2に示す内部回路の平面図。
【図5】図4のV−V断面図。
【図6】図4のVI−VI断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
先ず、図1に、本発明の第一の実施形態としての電気接続箱10の分解斜視図を示す。電気接続箱10は、アッパケース12とロアケース14が組み合わされてなるケース15の内部に、プリント基板16と、プリント基板16に載置されて固定された絶縁板18上に配設された複数のバスバー20からなる内部回路22が収容された構造とされている。
【0025】
より詳細には、アッパケース12は合成樹脂製とされており、略長手矩形の板形状を有する上壁部24と、該上壁部24の外周縁部から下方に向かって突出する周壁部26とを備えている。上壁部24には、図示しないヒューズやリレー、コネクタ等の電気部品が装着される多種の部品装着部28が複数突設されており、上方に向かって開口している。また、周壁部26の外面には、周方向で相互に離隔した適所において、係合突起30や係合突片32が突設されている。
【0026】
ロアケース14は合成樹脂製とされており、アッパケース12の上壁部24と略同一の大きさの略長手矩形の板形状を有する底壁部34と、該底壁部34の外周縁部から上方に向かって突出する周壁部36とを備えている。ロアケース14の周壁部36は、アッパケース12の周壁部26に比べて十分に大きな突出寸法を有している。ロアケース14の周壁部36の外面には、アッパケース12の周壁部26に設けられた係合突起30や係合突片32と対応する位置において、係合ロック部38および係合溝部40がそれぞれ突設されている。
【0027】
そして、アッパケース12の周壁部26をロアケース14の周壁部36の内側に嵌め入れて組み付けることにより、係合突起30に対して係合ロック部38がロック嵌合されると共に、係合突片32が係合溝部40に嵌入される。これにより、アッパケース12とロアケース14が相互に組み合わされて内部に収容空間を有するケース15が構成される。
【0028】
図2に、ケース15の内部に収容される内部回路22の斜視図を示す。内部回路22では、プリント基板16の表面上に絶縁板18が載置されて組み付けられており、絶縁板18の表面に複数のバスバー20がそれぞれ所定位置に位置決めされて配設されている。
【0029】
プリント基板16は、硬質のリジッド板で構成されており、従来から公知の材料、例えば、紙基材フェノール樹脂、ガラス布基材エポキシ樹脂、樹脂としてポリイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、アリル化ポリフェニレンエーテル(A−PPE樹脂)等を用いたガラス布基材耐熱性樹脂等から形成されている。そして、プリント基板16には、プリント基板16に形成された図示しないプリント配線に導通されたランド部を有する通電用スルーホール42が、適所に複数貫設されている。これらの通電用スルーホール42には、図示しないコネクタやリレー等の実装部品の端子部や、バスバー20に突設された後述する通電用タブ部76が挿通されて半田付けされるようになっている。また、プリント基板16には、プリント配線に導通されていない非通電用スルーホール44(図1参照)も適所に複数貫設されている。
【0030】
図3に、プリント基板16の表面上に載置される絶縁板18の平面図を示す。絶縁板18は、硬質の合成樹脂製とされており、本実施形態では、ガラスを含有したポリプロピレン(PPG)により成形されている。絶縁板18は、全体として、略長手矩形の板形状とされており、プリント基板16よりも大きな板厚寸法(本実施形態では3倍以上)を有している。また、絶縁板18は、プリント基板16の長さ寸法と略同一か僅かに小さい長さ寸法を有している一方、幅寸法がプリント基板16の幅寸法よりも十分に小さくされている(本実施形態では略半分)。このような絶縁板18がプリント基板16の表面上の略中央部分に配設されることにより、プリント基板16における絶縁板18の周囲には、図示しないコネクタやリレー、基板端子等が装着されるようになっている。
【0031】
この絶縁板18は、外周縁部を規定する略矩形枠体形状の外周枠体46と、外周枠体46に連結されて外周枠体46の内側を、載置されるバスバー20の形状に沿って延びる複数の支持壁部48が適所で相互に、或いは適当な連結壁部49を介して連結されて一体化された枠体構造とされている。従って、外周枠体46の内部領域において、バスバー20が載置されない部分には、支持壁部48が設けられておらず、絶縁板18を板厚方向に貫通する複数の貫通部50とされている。なお、絶縁板18の外周枠体46の内側には、支持壁部48の他、アッパケース12とロアケース14の間を延びる図示しない位置決め突起が挿通される挿通筒部52や、プリント基板16への螺子固定に用いられる螺子が螺着される螺子ボス部54が適所に設けられており、近傍に配設された支持壁部48に連結されて一体化されている。
【0032】
また、絶縁板18において、複数の貫通部50のうちの一部が、第一挿通孔50aおよび第二挿通孔50bとして利用されている。第一挿通孔50aと第二挿通孔50bには、後述するバスバー20の通電用タブ部76と固定用タブ部78がそれぞれ挿通されるようになっている。そして、通電用タブ部76が挿通される第一挿通孔50aが、固定用タブ部78が挿通される第二挿通孔50bよりも大きな開口面積で絶縁板18を板厚方向に貫設されている。なお、第二挿通孔50bの開口面積を充分に小さくするために、必要に応じて第二挿通孔50bの周囲が追加壁部59で覆われて画成されている。
【0033】
このような絶縁板18における複数の支持壁部48の表面(図1において上方の端面)には、それぞれ当該表面に載置されるバスバー20の当接面よりも僅かに大きな形状で、且つバスバー20の板厚寸法よりも僅かに大きな深さ寸法を有するバスバー収容凹溝60が、上方に開口して設けられている。このバスバー収容凹溝60の底面62は、支持壁部48の表面と略平行に延びている一方、バスバー収容凹溝60の側面64は、バスバー収容凹溝60の底面62から支持壁部48の表面に向かって略垂直に延び出している。このようなバスバー収容凹溝60によって、支持壁部48の表面にバスバー20の位置決め部が構成されている。
【0034】
また、バスバー収容凹溝60の底面62には、側面64から内方に離隔した中央部分を下方に向かって延び出して、支持壁部48を厚さ方向に貫通する肉抜部66が適所に形成されている。なお、肉抜部66は必ずしも支持壁部48を厚さ方向に貫通している必要はなく、凹形状に設けてもよい。また、必要に応じて、バスバー収容凹溝60の底面62の強度が確保される程度において、肉抜部66の下方側の開口面積を上方側の開口面積よりも大きくして、更なる樹脂量の削減を図ってもよい(図6参照)。そして、バスバー収容凹溝60では、肉抜部66以外の底面62の残部に対してバスバー20が載置されて支持されるようになっている。このように、絶縁板18は、バスバー20を位置決め支持するために最低限必要な部分によって形成された枠体構造とされている。
【0035】
上述の如き構造とされた絶縁板18は、プリント基板16の略中央部分に載置されると共に、螺子ボス部54に対して、プリント基板16の下方からプリント基板16に貫設された螺子穴67に挿通されて螺着される図示しない螺子によって、プリント基板16に固定されている。このとき、絶縁板18に設けられた挿通筒部52とプリント基板16に貫設された突起挿通穴68が相互に位置合わせされて連通されている。
【0036】
このようにプリント基板16上に載置されて固定された絶縁板18上には、複数のバスバー20が配設されている(図1および図2参照)。これらのバスバー20は、銅や黄銅等からなる金属平板をプレス加工することにより形成されている。これらのバスバー20においては、任意の形状に打ち抜かれた平板状の平板回路部70に対して、回路構成に応じた任意の位置に音叉状端子部72やタブ状端子部74が一体的に突設されており、アッパケース12側となる上方に向かって屈曲されている。
【0037】
さらに、各バスバー20には、平板回路部70に対して、プリント基板16とバスバー20の通電に用いられる通電用タブ部76と、プリント基板16とバスバー20の固定に用いられる固定用タブ部78の少なくとも1つが一体的に設けられており、プリント基板16側となる下方に向かって屈曲されている。以下、個別のバスバー20の構成の例を説明するが、その際、特定のバスバー20について、20a,20b,20c,20d,20eの符号を付して説明することとする。なお、複数のバスバー20の全体を説明する際には、20のみを付すものとする。
【0038】
例えば、複数のバスバー20のうち、バスバー20aでは、平板回路部70aに対して、回路構成に応じた任意の位置に通電用タブ部76が一体的に突設されている。また、平板回路部70aから複数の音叉状端子部72が突設された端部(図1中右側)において、固定用タブ部78aが一体的に突設されており、電気部品の挿抜力が加えられるバスバー20aの端部において、固定用タブ部78aが補強的に設けられた構成とされている。
【0039】
バスバー20bでは、平板回路部70bに対して、回路構成に応じた任意の位置に通電用タブ部76bが一体的に突設されているのみで、固定用タブ部78は設けられていない。また、バスバー20cでは、平板回路部70cに対して、固定用タブ部78cが一つ設けられているが、通電用タブ部76は設けられていない。これは、回路構成上、バスバー20cは、プリント基板16のプリント配線に導通させる必要がないからである。以上のように、本実施形態では、各バスバー20には通電用タブ部76と固定用タブ部78の少なくとも1つが一体的に突設されているのである。
【0040】
さらに、バスバー20a,20d,20eには、平板回路部70a,70d,70eの一部を上方に向けて略直角に屈曲させて、平板回路部70a,70d,70eから立ち上がって平板回路部70a,70d,70eの延出方向に直交して延びる縦板回路部80a,80d,80eが一体的に設けられている。
【0041】
図4〜図6に示すように、これらのバスバー20は、平板回路部70の裏面側を絶縁板18への当接面として、それぞれ対応する支持壁部48の表面に開口形成されたバスバー収容凹溝60に対して嵌め入れられて位置決めされている。そして、平板回路部70が、バスバー収容凹溝60の底面62に沿って平板状に広がって延出している一方、音叉状端子部72とタブ状端子部74が、バスバー収容凹溝60から上方に立ち上がって突出しており、アッパケース12に設けられた部品装着部28の内部に収容配置されるようになっている。また、バスバー20a,20d,20eに設けられた縦板回路部80a,80d,80eが、バスバー収容凹溝60の底面62から上方に立ち上がって、バスバー収容凹溝60の底面62に載置された平板回路部70から上方に隙間を隔てて延出している。
【0042】
このようにバスバー収容凹溝60に嵌め入れられたバスバー20は、図4に拡大して示すとおり、平板回路部70の両側縁部82a,82bと、音叉状端子部72やタブ状端子部74の下端面が、バスバー収容凹溝60に載置されて支持されている。さらに、バスバー20の平板回路部70の側縁部82a,82bの端面や、音叉状端子部72,タブ状端子部74の外周面が、バスバー収容凹溝60の側面64に当接して係止されることで、バスバー20の絶縁板18上での水平方向の移動が規制される。要するに、各バスバー20が対応するバスバー収容凹溝60内に嵌め入れられて配置されることにより、各バスバー20が、絶縁板18上において所定位置に位置決めされて、絶縁板18上に支持されている。そして、支持壁部48には、平板回路部70の両側縁部82a,82bや、音叉状端子部72およびタブ状端子部74が載置される部位以外の領域に、肉抜部66が形成されている。
【0043】
また、バスバー収容凹溝60に収容された複数のバスバー20の適所から、通電用タブ部76と固定用タブ部78が下方に向かって延び出しており、それぞれ、絶縁板18に貫接された第一挿通孔50aと第二挿通孔50bに挿通されて、各先端部がプリント基板16に向かって突出されている。図5に示すように、通電用タブ部76の先端部は、プリント基板16に貫設された通電用スルーホール42に挿通されてプリント基板16の裏面側に突出している。また、図6に示すように、固定用タブ部78の先端部は、プリント基板16に貫設された非通電用スルーホール44に挿通されてプリント基板16の裏面側に突出している。
【0044】
ここで、通電用タブ部76が挿通される第一挿通孔50aは、固定用タブ部78が挿通される第二挿通孔50bよりも大きな開口面積で絶縁板18に貫設されていることから、通電用タブ部76の外周面は、第一挿通孔50aの内周面から大きく離隔されている。これにより、第一挿通孔50aに挿通された通電用タブ部76や通電用タブ部76の先端部が挿通される通電用スルーホール42の半田付け部やその周辺領域が、外部から第一挿通孔50aを通じて視認可能とされている(図2中の下方拡大部参照)。
【0045】
一方、固定用タブ部78が挿通される第二挿通孔50bは、通電用タブ部76が挿通される第一挿通孔50aに比して開口面積が小さく、固定用タブ部78の外周面と第二挿通孔50bの内周面の離隔距離は僅かな隙間程度とされている。従って、第二挿通孔50bに挿通された固定用タブ部78や、固定用タブ部78の先端部が挿通される非通電用スルーホール44の半田付け部およびその周辺領域は、第二挿通孔50bに覆われて、外部からの視認が不可能とされている(図2中の上方拡大部参照)。
【0046】
上述のように組み付けられた、プリント基板16、絶縁板18、バスバー20は、絶縁板18がプリント基板16に対して螺子止めされて固定されている一方、絶縁板18上に位置決め支持された複数のバスバー20が、通電用スルーホール42に挿通された通電用タブ部76と、非通電用スルーホール44に挿通された固定用タブ部78がそれぞれ半田付けされることにより、固定されている。これにより、プリント基板16、絶縁板18、バスバー20が相互に組み付けられて一体的に固定された内部回路22が構成される。即ち、各バスバー20は、通電用タブ部76と固定用タブ部78の少なくとも一方が半田付けされて固定された固定力により、プリント基板16と絶縁板18に対して強固に位置決め固定されている。なお、絶縁板18において、開口面積の大きな貫通部50の内側スペースを利用して、台座コネクタ等の実装部品が半田付けされて実装されるようになっている。
【0047】
このような内部回路22が、上述の如きアッパケース12とロアケース14を組みつけてなるケース15の内部に収容配置されている。そして、アッパケース12とロアケース14間を延びる図示しない位置決め突起が、挿通筒部52と突起挿通穴68にそれぞれ挿通されて圧接されることにより、内部回路22がケース15内で位置決めされている。
【0048】
このような構造とされた電気接続箱10においては、プリント基板16に載置固定された絶縁板18上に配設された複数のバスバー20が、絶縁板18の支持壁部48の表面に開口形成されたバスバー収容凹溝60にそれぞれ嵌め入れられて位置決め支持されている。そして、各バスバー20には、少なくとも通電用タブ部76と固定用タブ部78の少なくとも1つが一体的に突設されており、それらが通電用スルーホール42および非通電用スルーホール44にそれぞれ挿通されて半田付けされることにより、各バスバー20がプリント基板16と絶縁板18に対して位置決め固定されている。これにより、従来のように、各バスバー20を絶縁板18にかしめ固定することなく、通電用タブ部76や固定用タブ部78の半田付けのみにより、各バスバー20をプリント基板16と絶縁板18に強固に固定することができる。しかも、従来から必要であった、プリント基板16に対するバスバー20の通電用タブ部76の半田付け工程と同時に、固定用タブ部78の半田付けを行うことができる。従って、バスバー20の絶縁板18やプリント基板16への固定工程と、バスバー20のプリント基板16のプリント配線への半田付け工程を共通化でき、製造工程の簡略化、設備の簡素化等によるコスト削減を図ることができる。
【0049】
特に、バスバー20の回路構成に応じて、バスバー20を通電用タブ部76と固定用タブ部78の両者を使用して固定したり、バスバー20を通電用タブ部76と固定用タブ部78の何れか一方を使用して固定したりすることができ、バスバー20の設計自由度が確保されている。例えば、バスバー20aでは、プリント基板16のプリント配線との接続が必要な箇所に設けられた複数の通電用タブ部76が通電用スルーホール42に挿通されて半田付けされることと、複数の音叉状端子部72が突設された端部に設けられた固定用タブ部78aが非通電用スルーホール44に挿通されて半田付けされることにより、バスバー20aがプリント基板16と絶縁板18に位置決め固定されている。特に、電気部品の挿抜力が加えられるバスバー20aの端部に、固定用タブ部78aを設けることで、固定力の補強が図られている。また、バスバー20bでは、プリント基板16のプリント配線との接続が必要な箇所に設けられた複数の通電用タブ部76が通電用スルーホール42に挿通されて半田付けされることのみによって、バスバー20bがプリント基板16と絶縁板18に位置決め固定されている。これは、バスバー20bが比較的短尺であることと、外部電気部品の挿抜力が加えられるタブ状端子部74が一つ設けられているのみであることから、固定用タブ部78を補強的に設けずとも、複数の通電用タブ部76bにより十分な固定力が得られるからである。加えて、バスバー20cは、プリント基板16のプリント配線に導通させる必要がないことから、固定用タブ部78cのみが設けられており、固定用タブ部78cが非通電用スルーホール44に挿通されて半田付けされることによって、バスバー20bがプリント基板16と絶縁板18に位置決め固定されている。
【0050】
また、バスバー20が、プリント基板16に直接載置されて固定された絶縁板18上で位置決め支持されて、且つ直接プリント基板16に対して通電用タブ部76および/又は固定用タブ部78の半田付けにより固定されていることから、従来のように、絶縁板にかしめ固定したバスバーを他部材を介してプリント基板に固定する場合に比して、位置決め精度の向上を図ることができる。加えて、絶縁板18上に位置決め支持されたバスバー20は、通電用タブ部76および/又は固定用タブ部78の半田付けにより強固に固定されていることから、上方から絶縁板を重ね合わせて挟持する必要もない。従って、絶縁板18上に一層のバスバー20が配設される場合に、十分な固定強度でバスバー20をプリント基板16や絶縁板18に対して位置決め固定することができる。
【0051】
また、通電用タブ部76が挿通される第一挿通孔50aが大きな開口面積で貫設されて外部から通電用タブ部76の半田付け部が視認可能とされていることから、通電用タブ部76の半田上がり等の確認を容易に行うことができ、バスバー20とプリント基板16の接続信頼性が確保される。加えて、半田上がりの確認が不要な固定用タブ部78が挿通される第二挿通孔50bの開口面積が小さくされており、固定用タブ部78やその半田付け部が第二挿通孔50bに覆われて半田付け部が視認不可能とされている。これにより、半田上がりの確認が必要な通電用タブ部76と、半田上がりの確認が不要な固定用タブ部78を即座に峻別することができ、固定用タブ部78を設けたことによる、通電用タブ部76の目視確認作業の効率低下防止が図られている。
【0052】
また、絶縁板18は、外周枠体46とその内部をバスバー20の形状に沿って延びる支持壁部48が一体化された枠体構造とされていると共に、支持壁部48にも肉抜部66を設けている。これにより、絶縁板18をバスバー20を位置決め支持するために最低限必要な部分によって形成することができ、絶縁板18の製造に必要な樹脂量を効率的に減らすことが出来る。しかも、絶縁板18を、外周枠体46と外周枠体46に連結された支持壁部48から構成される枠体構造としたことにより、貫通部50や肉抜部66を多く形成する構造でも十分な強度を確保することができる。特に、本実施形態では、絶縁板18が、ガラスを含有したポリプロピレン(PPG)により成形されていることから、複数の貫通部50や肉抜部66を設けても十分な強度が確保されるようになっている。
【0053】
また、バスバー20は、両側縁部82a,82bと、音叉状端子部72およびタブ状端子部74の下端面がバスバー収容凹溝60に嵌め入れられて、収容凹溝の底面62に載置されて支持されていることから、絶縁板18を枠体構造としても、バスバー収容凹溝60により、確実にバスバー20が絶縁板18上に位置決め支持される。また、支持壁部48に肉抜部66を設けても十分な強度でバスバー20が支持されるようになっている。
【0054】
加えて、バスバー20a,20d,20eには、縦板回路部80が設けられており、他のバスバー20の平板回路部70の上方に隙間を隔てて配設されると共に、複数の平板回路部70を跨って延び出している。これにより、絶縁板18上に一層のバスバー20を配設する構造でも、立体的なバスバー回路配索が可能となり、バスバー回路の設計自由度の向上を図ることができる。なお、必要に応じて、アッパケース12に絶縁性の収容凹所を設けて、縦板回路部80を収容することにより、縦板回路部80の他部材との緩衝や短絡を防止するようにしてもよい。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、絶縁板18の表面に形成される位置決め部は、上記のバスバー収容凹溝60の他、絶縁板18の表面に位置決めリブ等を突出させ、それらにバスバー20を係止させることにより、バスバー20を絶縁板18上に位置決め支持するようにしてもよい。
【0056】
また、バスバー20の固定力を増強するために、すべてのバスバー20に少なくとも一つの固定用タブ部78を設けるようにしてもよい。また絶縁板18のプリント基板16への固定は、螺子止めによる固定に限らず、一方に設けた突部を他方に設けた凹部に嵌合させることにより行っても良く、任意の固定方法が適用可能である。
【0057】
さらに、絶縁板18上のバスバー20に接続される外部電気部品が多い場合など、絶縁板18に高い強度が求められる場合には、絶縁板18を厚肉の板形状として、第一挿通孔50a,第二挿通孔50bや必要な貫通部50のみを貫設するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10:電気接続箱、15:ケース、16:プリント基板、18:絶縁板、20:バスバー、42:通電用スルーホール、44:非通電用スルーホール、46:外周枠体、48:支持壁部、50a:第一挿通孔(挿通孔)、50b:第二挿通孔(挿通孔)、60:バスバー収容凹溝、66:肉抜部、70:平板回路部、72:音叉状端子部(端子部)、74:タブ状端子部(端子部)、76:通電用タブ部、78:固定用タブ部、80:縦板回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板と、絶縁板上に配設された複数のバスバーとを、ケース内部に収容してなる電気接続箱において、
前記絶縁板が前記プリント基板に載置されて固定されている一方、前記絶縁板の表面に形成された位置決め部に、各前記バスバーが配置されて位置決め支持されていると共に、
各前記バスバーには、前記絶縁板に貫設された挿通孔を通って前記プリント基板に向かって延びる通電用タブ部と固定用タブ部の少なくとも一方が設けられており、
前記通電用タブ部が、前記プリント基板のプリント配線に導通された通電用スルーホールに挿通されて半田付けされる一方、前記固定用タブ部が前記プリント配線に接続されていない非通電用スルーホールに挿通されて半田付けされることにより、前記複数のバスバーが前記絶縁板と前記プリント基板に位置決め固定されていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記通電用タブ部が挿通される前記挿通孔が、前記固定用タブ部が挿通される前記挿通孔よりも大きな開口面積で貫設されており、前記通電用タブ部の半田付け部が前記挿通孔を通じて外部から視認可能とされている一方、前記固定用タブ部が前記挿通孔を通じて外部から視認不可能とされている請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記絶縁板が、外周縁部を規定する外周枠体と、該外周枠体に連結されて該外周枠体の内側を前記複数のバスバーの形状に沿って延びる支持壁部とから構成されており、前記複数のバスバーが前記支持壁部の上面に開口形成されて前記位置決め部を構成するバスバー収容凹溝に嵌め入れられて位置決め支持されている請求項1又は2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記バスバーが、前記支持壁部の前記収容凹溝上を平板状に広がる平板回路部と、前記収容凹溝から立ち上がる端子部を有している一方、前記支持壁部には、前記平板回路部の両側縁部および前記端子部が載置される部位以外の領域に肉抜部が形成されている請求項3に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記複数のバスバーが、前記絶縁板の表面を平板状に延びる平板回路部を有している一方、前記複数のバスバーの少なくとも一つが前記絶縁板の表面から立ち上がる縦板回路部を有しており、該縦板回路部が前記平板回路部から隙間を隔てて延出している請求項1〜4の何れか1項に記載の電気接続箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−125120(P2012−125120A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276255(P2010−276255)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】