説明

電気接続箱

【課題】隙間を隔てて対向配置された複数のプリント基板が収容された電気接続箱において、端子台座やプリント基板間の絶縁板を必要とすることなく、プリント基板に突設された接続端子と外部電気部品との接続を十分な強度と精度をもって実現することができる、新規な構造の電気接続箱を提供すること。
【解決手段】接続端子30,40の一端部34を一方のプリント基板20の導通用スルーホール26に挿通して半田付けする一方、他方のプリント基板22に嵌合孔28a,28bを貫設して、該嵌合孔28a,28bに前記接続端子30,40を嵌め入れて位置決めすると共に該プリント基板22の外方に突出させる一方、ケース12に支持部50を設けて前記接続端子30,40の前記一端部34を支持すると共に、前記接続端子30,40に、前記嵌合孔28a,28bの外周縁部に当接して突出方向への抜け出しを阻止する係止部36を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の電気接続箱に関し、特に、ケース内に複数のプリント基板が隙間を隔てて対向配置されており、これらのプリント基板に半田付けされて突設された基板端子が外部の電気部品と接続可能とされている電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に搭載される電気接続箱には、ケース内にプリント基板等の内部回路が収容されており、バッテリーからの給電が電気接続箱の内部回路を介して各種車載電装品等へ効率的に分配されるようになっている。特に、近年の車載電装品の増加等に伴い、ケース内に複数のプリント基板を対向配置して収容したものが提案されている。例えば、特開2009−26464号公報(特許文献1)に記載のものがそれである。
【0003】
ところで、このような従来構造の電気接続箱においては、外部の電線端末に設けられたコネクタ等の電気部品と、内部回路を構成するプリント基板のプリント配線を導通させるために、プリント基板に基板端子を突設して、基板端子を介して電気部品とプリント配線の導通を図るようにされている。例えば、特許文献1の図5や図6に示されているとおり、複数の基板端子が貫通固定された合成樹脂製の端子台座がプリント基板上に位置決め載置されており、各基板端子の一端部がプリント基板のスルーホールに挿通されて半田付けされている一方、他端部がケースの表面に突設されたコネクタハウジング等の部品装着部に配設されて、部品装着部に装着された電気部品の基板端子と接続されるようになっている。そして、これら複数のプリント基板が、端子台座が載置されていない面側において、絶縁板を挟んで重ね合わせた状態でケース内部に収容されて支持されている。これにより、基板端子に電気部品が接続される際の挿入力が加えられた場合に、絶縁板の補強効果により、プリント基板の撓みや変形、それに伴う半田クラックの発生等が防止されるようになっている。
【0004】
ところが、このような従来構造では、プリント基板上の基板端子の端子アライメント精度を確保するために端子台座が必要であることから、部品点数の増加が避けられない。また、半田付け時の加熱によるプリント基板と端子台座の熱膨張差による半田クラックの発生等の問題が懸念される。加えて、コネクタ等の電気部品の挿入力を支持するためにプリント基板間に絶縁板を介在させる必要があることから、更なる部品点数の増加が問題となる。特に、プリント基板上の複数箇所に配設された端子台座の下方を支持する絶縁板は、プリント基板を広範に亘って支持すべく大型になり易いことから、樹脂量の増加が避けられず、また、車載時の高熱環境下における熱膨張による基板端子等への悪影響も懸念される。
【0005】
また、外部電気部品を基板端子に接続する際に加えられる挿入力(押込力)は、端子台座を介してプリント基板に直接及ぼされることから、プリント基板が絶縁板によって補強されていたとしても、押込力によるプリント基板の撓みやそれに伴うプリント配線の断線等が発生する可能性を完全には否定できず、更なる改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−26464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、隙間を隔てて対向配置された複数のプリント基板が収容された電気接続箱において、端子台座やプリント基板間の絶縁板を必要とすることなく、プリント基板に突設された基板端子と外部電気部品との接続を十分な強度と精度をもって実現することができる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、ケース内に少なくとも二枚のプリント基板が隙間を隔てて対向配置されており、前記プリント基板に半田付けされて突設された基板端子が、前記ケースに装着される外部電気部品と接続されるようになっている電気接続箱において、前記基板端子の一端部が、前記二枚のプリント基板の一方のプリント基板の導通用スルーホールに挿通されて半田付けされている一方、前記二枚のプリント基板の他方のプリント基板には嵌合孔が貫設されていると共に、該嵌合孔に前記基板端子が嵌め入れられて位置決めされており、該基板端子の他端部が前記他方のプリント基板の外方に突出されている一方、前記ケースには、前記一方のプリント基板に対向する支持部が設けられており、前記基板端子の一端部が前記支持部に支持されており、前記基板端子には、前記他方のプリント基板の前記嵌合孔の外周縁部に当接して突出方向への抜け出しを防止する係止部が形成されていることを、特徴とする。
【0009】
本発明によれば、一方のプリント基板に半田付けされて突設された基板端子が、他方のプリント基板の嵌合孔に嵌め入れられて位置決めされている。これにより、従来から用いられていた合成樹脂製の端子台座を用いることなく、基板端子のアライメント精度の確保やローリングの防止を図ることが出来て、外部電気部品との接続を十分な精度をもって行なうことが出来る。そして、端子台座が不要とされることにより、部品点数の削減や、半田付け等に際して端子台座が熱変形することによる半田クラックの発生を抑えることが出来る。
【0010】
しかも、基板端子が嵌合孔に嵌め入れられていると共に、基板端子の係止部がプリント基板に当接することにより、基板端子の嵌合孔への挿通端位置を精度良く規定することが出来る。なお、嵌合孔は、基板端子が圧入される寸法に設定されることが好ましい。これにより、基板端子をより精度良く位置決めすることが出来る。
【0011】
さらに、一方のプリント基板に半田付けされた基板端子の一端部が、ケースに設けられた支持部で支持されている。これにより、基板端子に外部電気部品が接続されるに際して、一方のプリント基板の撓み変形を阻止することが出来る。従って、基板端子を支持するために二枚のプリント基板間に絶縁板を介在することが不要とされて、絶縁板の熱膨張に起因してプリント基板が変形すること等による基板端子への悪影響を回避することが出来る。また、外部電気部品が抜去される際には、基板端子の係止部が他方のプリント基板の嵌合孔の外周縁部に係止されることによって、基板端子を支持することが出来る。これにより、外部電気部品の挿抜何れの方向でも基板端子をより安定的に支持して、半田クラックのおそれを軽減することが出来る。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記ケースに設けられた前記支持部に対して、前記一方のプリント基板が直接載置されている一方、前記基板端子の前記一端部側にクランク状部が設けられており、該クランク状部が前記一方のプリント基板を挟んで前記支持部に載置されていると共に、前記支持部から離隔した部位において、前記クランク状部から延び出す前記基板端子の一端部が、前記導通用スルーホールに挿通されて半田付けされているものである。
【0013】
本態様によれば、基板端子に外部電気部品が接続されるに際して、クランク状部が変形することにより、プリント基板に半田付けされた一端部に伝達される押込力を軽減することが出来る。更に、支持部でプリント基板を支持することにより、基板端子のクランク状部をプリント基板を介して支持すると共に、プリント基板の撓み変形も阻止することが出来る。これにより、基板端子の一端部における半田クラックの発生を軽減することが出来る。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記ケースの表面に前記外部電気部品を装着する部品装着部を開口形成する一方、前記部品装着部の底壁が前記他方のプリント基板に直接重ね合わされているものである。
【0015】
すなわち、本発明によれば、他方のプリント基板上に端子台座を配設することが不要とされることから、ケースに設けられた部品装着部の底壁を、端子台座を介することなく、他方のプリント基板に直接に重ね合わせることが出来る。これにより、部品装着部に装着された外部電気部品を他方のプリント基板により接近させることが可能であり、電気接続箱の小型化を図ることが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、対向配置された二枚のプリント基板の一方に基板端子の一端部を半田付けすると共に、他方のプリント基板に嵌合孔を貫設して基板端子を嵌め入れて位置決めすることにより、基板端子の他端部をプリント基板の外方に突出させる一方、ケースに設けた支持部で基板端子の一端部を支持し、更に基板端子に係止部を設けて、他方のプリント基板の嵌合孔の外周縁部に当接させて基板端子の突出方向での抜けを防止した。これにより、端子台座を用いることなく基板端子を精度良く位置決めして、外部電気部品との接続を精度良く行うことが出来る。また、プリント基板間に絶縁板を配設することなく基板端子の支持強度を確保して、外部電気部品の挿抜に際する強度を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施形態としての電気接続箱の断面図。
【図2】図1における要部拡大図。
【図3】図1に示した電気接続箱を構成するプリント基板積層体の側面図。
【図4】図3に示したプリント基板積層体の上面の要部拡大図。
【図5】図1に示した電気接続箱を構成する基板端子の斜視図。
【図6】図1に示した電気接続箱を構成する、図5とは異なる基板端子の斜視図。
【図7】本発明の第二の実施形態としての電気接続箱の要部の断面図。
【図8】図7に示した電気接続箱を構成する基板端子の斜視図。
【図9】図7に示した電気接続箱を構成する、図8とは異なる基板端子の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
先ず、図1に、本発明の第一の実施形態としての電気接続箱10を示すと共に、図2に、電気接続箱10の要部を示す。電気接続箱10は、ケース12を構成するアッパケース14とロアケース16との間に、プリント基板積層体18が収容された構造とされている。なお、図1及び図2においては、理解を容易とするために、後述する複数の基板間端子24の一部或いは全部を省略して図示している。
【0020】
図3にも示すように、プリント基板積層体18は、所定距離を隔てて対向位置された一方のプリント基板20と他方のプリント基板22が、複数の基板間端子24で相互に接続された構造とされている。図2に示したように、一方のプリント基板20には、複数の導通用スルーホール26が並んで形成されている。また、他方のプリント基板22には、一方のプリント基板20の導通用スルーホール26に対応して、複数の嵌合孔28a,28bが貫設されている。図4に示すように、本実施形態における嵌合孔28a,28bは、一方のプリント基板20上で2列に配列して形成された複数の導通用スルーホール26に対応して、他方のプリント基板22上で2列に配列して形成されている。また、後述するように、本実施形態における一方のプリント基板20には、正方形断面を有する基板端子30と長手矩形断面を有する基板端子40の2種類が半田付けされるようになっており、これに対応して、他方のプリント基板22には、円形断面を有する嵌合孔28aと、オーバル状断面を有する嵌合孔28bの2種類の嵌合孔28a,28bが形成されている。
【0021】
図5に、基板端子30を示す。基板端子30は、正方形断面を有する金属線材が所定長さで切断されて形成されており、一方の端部が接続部32とされていると共に、他方の端部が半田付け部34とされている。基板端子30の長さ方向で接続部32と半田付け部34の間の中間部分には、一対の係止部36,36が一体形成されている。係止部36,36は、基板端子30の長さ方向に直交して互いに反対側に突出する突起形状とされており、基板端子30が部分的に潰し加工されることによって形成されている。また、基板端子30の長さ方向の中間部分において、係止部36,36よりも半田付け部34側には、一対の当て止め部38,38が一体形成されている。当て止め部38,38は係止部36,36と略同様の形状とされており、半田付け部34の延出基端部分において、基板端子30の長さ方向に直交して互いに反対側に突出する突起形状とされている。
【0022】
一方、図6に、基板端子40を示す。基板端子40において、前記基板端子30と略同様の構造とされた部位については、図中に基板端子30と同一の符号を付することにより、その説明を適宜に省略する。
【0023】
基板端子40は、略長手矩形断面を有する金属線材が所定長さで切断されて形成されている。これにより、基板端子40の接続部32は、長方形断面を有する扁平なタブ形状とされている。一方、基板端子40の半田付け部34は、幅方向両側がプレス打ち抜き加工等で切り落とされることにより、基板端子30の半田付け部34と略等しい大きさの正方形断面をもって延出されている。そして、基板端子40の長さ方向中間部分には、係止部36,36が一体形成されている。また、基板端子40は、半田付け部34において幅寸法が小さくされることにより、半田付け部34の延出基端部分に、半田付け部34の幅方向両側に突出する当て止め部38,38が形成されている。
【0024】
図2から明らかなように、基板端子30と基板端子40は、互いに等しい長さ寸法を有している。また、両端子30,40の長さ方向における係止部36と当て止め部38の離隔距離は、互いに等しくされている。
【0025】
そして、基板端子30の接続部32が、他方のプリント基板22の嵌合孔28aに挿通されて嵌め入れられると共に、基板端子40の接続部32が、嵌合孔28bに挿通されて嵌め入れられる。基板端子30および基板端子40における接続部32の挿通量は、係止部36が他方のプリント基板22の嵌合孔28a,28bの外周縁部に接触することで規定される。これにより、基板端子30の接続部32と、基板端子40の接続部32が、他方のプリント基板22上で位置決めされると共に他方のプリント基板22において一方のプリント基板20と反対側の外方に突出される。なお、本実施形態における嵌合孔28a,28bは、それぞれ、基板端子30の接続部32と基板端子40の接続部32を圧入状態で挿通する大きさに設定されている。これにより、基板端子30と基板端子40は、接続部32が嵌合孔28a,28bにそれぞれ圧入されて、嵌合孔28a,28bへの挿通状態で他方のプリント基板22に固定されるようになっている。
【0026】
そして、他方のプリント基板22に固定された基板端子30と基板端子40の半田付け部34が、一方のプリント基板20の導通用スルーホール26にそれぞれ挿通されて、一方のプリント基板20の外方に突出される。基板端子30,40における半田付け部34の挿通量は、当て止め部38が導通用スルーホール26の外周縁部に接触することで規定される。そして、導通用スルーホール26に挿通された半田付け部34が半田付けされることにより、基板端子30,40が、一方のプリント基板20に突設されると共に、半田付け部34において一方のプリント基板20に設けられた図示しないプリント配線と電気的に接続される。また、基板端子30,40の接続部32が、他方のプリント基板22の嵌合孔28a,28bを通じて、他方のプリント基板22から互いに積層された一方のプリント基板20と他方のプリント基板22の外方に突出されている。
【0027】
なお、本実施形態においては、一方のプリント基板20と他方のプリント基板22が複数の基板間端子24で相互に接続されている。基板間端子24は略正方形断面をもって一直線状に延びるストレート形状とされている。これら基板間端子24は、例えば、基板端子30および基板端子40が他方のプリント基板22の嵌合孔28a,28bに挿通される際に、一方の端部が他方のプリント基板22のスルーホール(図示省略)に半田付けされると共に、他方の端部が基板端子30,40と共に一方のプリント基板20のスルーホール(図示省略)に挿通されて半田付けされることにより、一方のプリント基板20と他方のプリント基板22に跨って設けられる。これにより、一方のプリント基板20と他方のプリント基板22が、複数の基板間端子24で相互に電気的に接続される。
【0028】
このようにして構成されたプリント基板積層体18は、アッパケース14とロアケース16から構成されたケース12に収容されている。アッパケース14およびロアケース16は、非導電性の合成樹脂から形成されている。アッパケース14には部品装着部としてのコネクタ装着部42が形成されている。コネクタ装着部42は、アッパケース14の表面43上に開口する略矩形周壁形状を有している。コネクタ装着部42の底壁44には、端子挿通孔46a,46bが貫設されている。詳細な図示は省略するが、これら端子挿通孔46a,46bは、それぞれ、基板端子30および基板端子40の断面形状に対応する断面形状をもって、アッパケース14を貫通して形成されている。なお、コネクタ装着部42の底壁44は、アッパケース14の内方(図2中、下方)に突出して形成されており、その突出端面48は平坦面とされている。
【0029】
一方、ロアケース16には、支持部50が一体形成されている。支持部50は、ロアケース16の内方(図2中、上方)に突出する略矩形ブロック形状とされており、その突出端面となる支持面52は平坦面とされている。
【0030】
これらアッパケース14とロアケース16が、プリント基板積層体18を収容した状態で、従来公知の図示しないロック機構等により相互に固定される。これにより、アッパケース14とロアケース16でケース12が構成されて、ケース12内にプリント基板積層体18が収容されている。
【0031】
ケース12への収容状態で、一方のプリント基板20と他方のプリント基板22が、互いに隙間を隔てて対向位置されている。詳細な図示は省略するが、一方のプリント基板20および他方のプリント基板22は、ロアケース16の適当な位置に形成された基板支持部54(他方のプリント基板22については図示省略)で支持されるようになっている。また、図1に示したように、ロアケース16には、アッパケース14に向けて突出する位置決めピン56が一体形成されており、この位置決めピン56が一方のプリント基板20および他方のプリント基板22に貫設された位置決め孔58,58に挿通されると共に、アッパケース14に設けられた差込凹所60に差し込まれることにより、一方のプリント基板20と他方のプリント基板22が相互に位置決めされると共に、プリント基板積層体18がケース12内で位置決めされるようになっている。
【0032】
そして、プリント基板積層体18において、他方のプリント基板22側からアッパケース14が重ね合わされることにより、他方のプリント基板22上に突出された基板端子30および基板端子40の接続部32,32が、コネクタ装着部42の端子挿通孔46a,46bにそれぞれ挿通されて、コネクタ装着部42内でアッパケース14の外方に突出される。これにより、コネクタ装着部42内に収容される図示しない外部電気部品としてのコネクタが基板端子30,40の接続部32,32と接続されて、コネクタ装着部42に装着されるようになっている。また、コネクタ装着部42の底壁44が、他方のプリント基板22に直接に重ね合わされる。一方、ロアケース16の支持部50が一方のプリント基板20と対向位置される。これにより、支持部50の支持面52が、導通用スルーホール26を通じて一方のプリント基板20から突出された基板端子30,40の半田付け部34に対して接触或いは僅かな隙間を隔てて位置されている。
【0033】
本実施形態に従う構造とされた電気接続箱10によれば、一方のプリント基板20に半田付けされて突設された基板端子30および基板端子40が、一方のプリント基板20に積層された他方のプリント基板22に設けられた嵌合孔28a,28bに嵌め入れられて位置決めされている。これにより、対向配置された他方のプリント基板22を巧く利用して、端子台座を用いることなく、一方のプリント基板20に半田付けされた基板端子30,40における接続部32のアライメント精度を確保することが出来ると共に、基板端子30,40のローリングを防止することが出来る。その結果、基板端子30,40を、コネクタ装着部42に装着される図示しないコネクタと精度良く接続することが出来る。特に本実施形態においては、基板端子30,40が、アッパケース14の端子挿通孔46a,46bに挿通されることにより、アライメント精度がより向上されている。そして、端子台座が不要とされることにより、部品点数の削減が図られると共に、端子台座の熱膨張に起因する半田クラックの発生なども阻止することが出来る。
【0034】
特に本実施形態においては、基板端子30,40が、嵌合孔28a,28bにそれぞれ圧入されている。これにより、基板端子30,40のローリングを抑えてより精度良く位置決めすることが出来る。また、基板端子30,40を嵌合孔28a,28bに圧入して他方のプリント基板22に固定することにより、複数の基板端子30,40を、特別な治具等を用いることなく一方のプリント基板20に纏めて挿通することも出来る。
【0035】
そして、基板端子30,40にコネクタが接続される際には、一方のプリント基板20から突出された半田付け部34が、ロアケース16の支持部50の支持面52に接触して支持部50で支持される。これにより、基板端子30,40を支持するために一方のプリント基板20と他方のプリント基板22との間に樹脂製の絶縁板を介在することも不要となり、絶縁板の熱膨張に起因する半田クラックの発生等のおそれを回避することが出来る。加えて、端子台座を設けた場合のように、端子台座からプリント基板に直接に押込力が及ぼされることも回避され得て、プリント基板の撓み変形やプリント配線の損傷のおそれを軽減することが出来る。そして、絶縁板が不要となることから、絶縁板の熱膨張に起因して二枚のプリント基板20,22の離隔距離が変化するおそれも回避され得る。その結果、両プリント基板20,22の離隔距離の変化を吸収するために、基板間端子24に屈曲部を設けることも不要とされて、半田クラックの発生のおそれを回避しつつ、コスト効率の良い単純形状の基板間端子24を採用することが出来る。
【0036】
一方、コネクタが抜去される際には、基板端子30,40の係止部36が、他方のプリント基板22における嵌合孔28a,28bの外周縁部に接触して係止される。これにより、基板端子30,40を他方のプリント基板22で支持して、接続部32の突出方向への抜け出しを防止することが出来る。特に本実施形態においては、アッパケース14におけるコネクタ装着部42の底壁44が、他方のプリント基板22に接触されている。これにより、他方のプリント基板22をアッパケース14で支持して、基板端子30,40をより強固に支持することが出来る。また、底壁44が他方のプリント基板22に接触するまで接近されていることから、コネクタ装着部42に装着されるコネクタを他方のプリント基板22に接近させて装着することが可能であり、電気接続箱10の厚さ寸法を抑えることも出来る。
【0037】
次に、図7に、本発明の第二の実施形態としての電気接続箱70の要部を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同様の構造とされた部材および部位には、図中に第一の実施形態と同一の符号を付すことにより、その説明を適宜に省略する。
【0038】
本実施形態における一方のプリント基板20には、図8に示す基板端子72と、図9に示す基板端子74が半田付けされている(図7においては基板端子74のみ図示)。基板端子72は、正方形断面を有する金属線材が所定長さで切断されて形成されている。そして、接続部32と半田付け部34の間の長さ方向中間部分で半田付け部34側には、クランク状部76が形成されており、半田付け部34が、クランク状部76から延び出されている。
【0039】
一方、図9に示すように、基板端子74は、長手矩形断面を有する金属線材が所定長さで切断されて形成されている。そして、基板端子72と同様に、接続部32と半田付け部34の間の長さ方向中間部分で半田付け部34側には、クランク状部76が形成されている。
【0040】
即ち、基板端子72および基板端子74は、前記第一の実施形態における基板端子30および基板端子40の当て止め部38の形成位置に、当て止め部38に代えてクランク状部76が形成されたものである。そして、基板端子72および基板端子74は、長さ方向で係止部36とクランク状部76との離隔距離が互いに等しくされている。
【0041】
このような基板端子72と基板端子74の複数(図7においては、基板端子74のみ図示)が、前記第一の実施形態と同様に2列に並んで(図4参照)、一方のプリント基板20に半田付けされている。基板端子72,74における半田付け部34の導通用スルーホール26への挿通量は、クランク状部76が一方のプリント基板20に接触することで規定されるようになっている。また、本実施形態においては、導通用スルーホール26が、ロアケース16の支持部50の外側に離れて位置されており、半田付け部34が、支持部50から離れた位置で導通用スルーホール26に挿通されて半田付けされていると共に、支持部50の支持面52が一方のプリント基板20に直接に接触されて、一方のプリント基板20が、支持部50に載置されている。これにより、基板端子72,74のクランク状部76が、一方のプリント基板20を挟んで支持部50に載置されている。
【0042】
本実施形態によれば、基板端子72,74に図示しないコネクタが装着される場合には、クランク状部76の変形による外力の吸収効果と、クランク状部76が一方のプリント基板20に接触することにより、半田付け部34への外力の伝達を軽減することが出来る。また、支持部50が一方のプリント基板20を支持することにより、クランク状部76がより安定的に支持される。その結果、半田付け部34におけるクラックの発生を抑えることが出来る。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、基板端子を嵌め入れる嵌合孔は、必ずしも基板端子を圧入するものに限定されず、基板端子を非圧入状態で位置決めし得る大きさのものでも良い。また、対向配置される二枚のプリント基板は、相互に電気的に接続されていないものでも良い。更に、ケース内に3枚以上のプリント基板が収容されていても良い。
【符号の説明】
【0044】
10,70:電気接続箱、12:ケース、20:一方のプリント基板、22:他方のプリント基板、26:導通用スルーホール、28a,b:嵌合孔、30,72:基板端子、32:接続部(他端部)、34:半田付け部(一端部)、36:係止部、40,74:基板端子、42:コネクタ装着部(部品装着部)、43:表面、46a,b:端子挿通孔、44:底壁、50:支持部、76:クランク状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に少なくとも二枚のプリント基板が隙間を隔てて対向配置されており、前記プリント基板に半田付けされて突設された基板端子が、前記ケースに装着される外部電気部品と接続されるようになっている電気接続箱において、
前記基板端子の一端部が、前記二枚のプリント基板の一方のプリント基板の導通用スルーホールに挿通されて半田付けされている一方、
前記二枚のプリント基板の他方のプリント基板には嵌合孔が貫設されていると共に、該嵌合孔に前記基板端子が嵌め入れられて位置決めされており、該基板端子の他端部が前記他方のプリント基板の外方に突出されている一方、
前記ケースには、前記一方のプリント基板に対向する支持部が設けられており、前記基板端子の一端部が前記支持部に支持されており、
前記基板端子には、前記他方のプリント基板の前記嵌合孔の外周縁部に当接して突出方向への抜け出しを防止する係止部が形成されている
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記ケースに設けられた前記支持部に対して、前記一方のプリント基板が直接載置されている一方、前記基板端子の前記一端部側にクランク状部が設けられており、該クランク状部が前記一方のプリント基板を挟んで前記支持部に載置されていると共に、前記支持部から離隔した部位において、前記クランク状部から延び出す前記基板端子の一端部が、前記導通用スルーホールに挿通されて半田付けされている請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記ケースの表面に前記外部電気部品を装着する部品装着部を開口形成する一方、前記部品装着部の底壁が前記他方のプリント基板に直接重ね合わされている請求項1又は2に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−134086(P2012−134086A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286982(P2010−286982)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】