説明

電気機器の操作子配設構造

【課題】被操作部の操作時における操作子基板の撓みを小さくする。
【解決手段】操作子ユニット50は、共通基端部51の肉部57が操作子基板40の上面40aに常時当接した状態で配設される。上ケース10の裏面10fから突設される下ケース当接ボス15が、操作子基板40及び操作子ユニット50との干渉を避けるように設けられて、下ケース30の凹部35に当接しており、且つ、下ケース当接ボス15は、共通基端部51を中心として5つの被操作部53の配設位置に沿って形成される円よりも内側において共通基端部51に近い位置に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作子基板上に操作子ユニットが配設され筐体の外側から被操作部が操作されるように構成される電気機器の操作子配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器において、操作子基板上に操作子ユニットが配設され、操作子ユニットの被操作部が押下操作されるように構成されたものが知られている。例えば、下記特許文献1の操作子配設構造では、共通基端部から複数のヒンジ部を介して被操作部が連結された操作子ユニットが設けられ、共通基端部が操作子基板に当接するように配設される。そして、被操作部が押下操作されることで、ヒンジ部を介して被操作部が上下に揺動し、被操作部によって操作子基板に配設されたタクトスイッチが駆動操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3794337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構造においては、被操作部が押下されたときの押下力が、対応するヒンジ部を介して共通基端部にかかるため、操作子基板を下方に付勢することになる。操作子基板は、複数箇所で上ケースに固定されているが、共通基端部のうち押下された被操作部の押下力がかかる部分が、操作子基板と上ケースとの固定箇所から遠いものについては、操作子基板の下方への撓みが大きくなるという問題がある。長期の使用により操作子基板の変形が大きくなると、タクトスイッチの駆動にも悪影響が及ぶおそれがある。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、被操作部の操作時における操作子基板の撓みを小さくすることができる電気機器の操作子配設構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の電気機器の操作子配設構造は、パネル面(10e)を有する第1ケース(10)と、前記第1ケースに固定され、前記第1ケースと共に筐体を構成する第2ケース(30)と、共通基端部(51)と、該共通基端部から前記第1ケースの前記パネル面に平行な方向における互いに異なる方向に延設された複数のヒンジ部(52)と、前記各ヒンジ部を介して前記共通基端部に連結されて前記パネル面に露出し、押下操作されることで対応するヒンジ部が撓んで前記パネル面に直交する方向に揺動するように構成された複数の被操作部(53)とからなる操作子ユニット(50)と、前記操作子ユニットの前記各被操作部によって駆動されるスイッチ(47)が前記各被操作部に対応して配設され、前記第1ケースと前記第2ケースとの間において前記第1ケースに固定された操作子基板(40)とを有し、前記操作子ユニットは、前記共通基端部が前記操作子基板に常時当接した状態で配設され、前記第1ケース及び前記第2ケースの少なくとも一方から他方に向かって突設部(15)が突設され、該突設部は、前記操作子基板及び前記操作子ユニットとの干渉を避けるように設けられて前記他方の固定的な部分(35)に当接または近接しており、且つ、前記突設部は、前記複数の被操作部のうち前記共通基端部に最も近いものよりもさらに前記共通基端部に近い位置に配設されたことを特徴とする。
【0007】
例えば、共通基端部を中心として複数の被操作部の配設位置に沿って円が形成される場合は、突設部は、その円よりも内側において共通基端部に近い位置に配設される。
【0008】
好ましくは、前記複数の被操作部には、前記共通基端部を中心とした同じ円上に配設されたものが複数含まれ、それらのうち円周方向において隣接するもの同士の円周方向における間隔が最も大きいものを第1、第2の被操作部(53A、53E)としたとき、前記突設部は、前記円の内側の領域のうち前記第1、第2の被操作部が円周方向において隣接している側の反対側の領域に位置する(請求項2)。
【0009】
好ましくは、前記第1ケース及び前記第2ケースの前記他方の固定的な部分(35)は、凹状に形成されている(請求項3)。
【0010】
好ましくは、前記突設部は、前記複数の被操作部のうち隣接する2つの被操作部(53B、53C)の各ヒンジ部の根本の間に位置する(請求項4)。
【0011】
好ましくは、前記操作子基板には貫通穴(45)が形成され、前記突設部が前記貫通穴を貫通していることで、前記操作子基板と前記突設部との干渉が回避されると共に前記第1ケースに対する前記操作子基板の前記パネル面に平行な方向における位置が規制されている(請求項5)。
【0012】
好ましくは、前記操作子基板は、複数の締結部(46)にて前記第1ケースに固定されており、前記複数の締結部は、前記貫通穴(45)との距離が互いに異なっている(請求項6)。
【0013】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1によれば、被操作部の操作時における操作子基板の撓みを小さくすることができる。
【0015】
請求項2によれば、突設部による操作子基板の撓み抑制効果を、同一円上に配設された被操作部間で均一に近づけることができる。
【0016】
請求項3によれば、突設部を安定して受け止め、操作時における突設部の倒れを抑制して操作子基板の撓みをより確実に抑制することができる。
【0017】
請求項4によれば、突設部を共通基端部に近接配置可能にして突設部による操作子基板の撓み抑制効果を高めることができる。
【0018】
請求項5によれば、操作子基板の第1ケースへの取り付け時のパネル面に平行な方向における位置決めが容易で、取り付け作業が容易となる。
【0019】
請求項6によれば、各締結部の第1ケースの締結箇所との対応関係から、操作子基板の回転方向の正規の位置がわかるので、操作子基板の第1ケースへの取り付け作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る操作子配設構造が適用される電気機器の上ケースの斜視図である。
【図2】同上ケースの裏面図である。
【図3】本電気機器の下ケースの斜視図である。
【図4】操作子基板の平面図、メイン基板の平面図である。
【図5】操作子ユニットの平面図、斜め下方からみた斜視図である。
【図6】操作子ユニットの側面図、裏面図である。
【図7】図2のA−A線に沿う部分断面図である。
【図8】図6(b)のB−B線に沿う断面の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係る操作子配設構造が適用される電気機器の上ケースの斜視図である。図2は、同上ケースの裏面図である。図3は、本電気機器の下ケースの斜視図である。
【0023】
本電気機器の筐体は、図1、図2に示す上ケース10と図3に示す下ケース30とが固定されて構成される。本電気機器は、例えば、オーディオインターフェイスとして構成されるが、種類は問わない。従って、本発明の操作子配設構造は、音響機器をはじめとした各種の電気機器に適用が可能である。
【0024】
説明の便宜上、本機器の方向の呼称を決めておく。本機器が卓面等に載置されると、上ケース10の裏面10f(図1、図2参照)が下側、表面であるパネル面10e(図7、図8)が上側となる。下ケース30は、上面30e(図3参照)が上側となる。従って、図1は斜め下方からの斜視図、図3は、斜め上方からの斜視図である。
【0025】
また、前後左右に関しては、上ケース10の前部10a、後部10b、左部10c、右部10dが図1、図2に示され、下ケース30の前部30a、後部30b、左部30c、右部30dが図3に示されている。
【0026】
筐体内、すなわち上ケース10と下ケース30との間には、図7や図8で後述するように、上側から順に、上シールド81、操作子基板40(図4(a)参照)、メイン基板70(図4(b)参照)、下シールド82が配設される。また、操作子ユニット50(図5、図6参照)が、上ケース10と下ケース30との間に配設される。上ケース10、操作子ユニット50及び下ケース30はそれぞれ、例えば樹脂にて射出成形によって製造される。上シールド81、下シールド82は、例えば鋼板で構成される。
【0027】
図1、図2に示すように、上ケース10の裏面10fにおいて、複数の係合リブ14が左部10c、右部10dに形成される。また、裏面10fの四隅に4本の第1ボス11(11A〜11D)が突設される。前部10a、後部10bには、第2ボス12(12A、12B)が突設され、さらに、各第2ボス12よりも前後方向内側にそれぞれ上シールド取り付けボス19が突設される。裏面10fの中央位置には中央ボス13が突設される。
【0028】
裏面10fにおける右半部の略中央には、下ケース当接ボス15が垂下して突設され、左部10cには下ケース当接ボス18が突設される。また、裏面10fにおける右半部において、下ケース当接ボス15をほぼ中心として離間した四方の4箇所に操作子基板取り付けボス16(16A〜16D)が突設される。裏面10fの多数箇所には、シールド当接ボス17が突設される。
【0029】
裏面10fにおける右半部において、環状リブ21が下方に突設され、環状リブ21の内径がパネル面10eまで貫通穴22となっている。裏面10fにおける環状リブ21の周囲にはリブ24が形成される。リブ24は、環状リブ21を半円以上の範囲で囲む部分と、斜め左後方と斜め右前方とに十字状に形成される部分とからなり、いずれも同じ突出高さとなっている。また、斜め右前方の十字部分の交差位置には位置決めピン25が一体に突設形成されている。また、環状リブ21を中心とした円上に沿って、後述する操作子ユニット50の押下部54(図5(a)参照)を貫通させパネル面10eに露出させるための操作子窓23(23A〜23D)が形成されている。
【0030】
図3に示すように、下ケース30の上面30eにおいて、複数の係合リブ34が左部30c、右部30dに形成される。また、上ケース10の第1ボス11A〜11Dに対応して、第1対応ボス31(31A〜31D)が突設される。前部30a、後部30bには、上ケース10の第2ボス12A、12Bに対応して、第2対応ボス32(32A、32B)が突設される。上面30eの中央位置には、上ケース10の中央ボス13に対応して中央対応ボス33が突設される。
【0031】
また、上面30eにおける右半部の略中央において、上ケース10の下ケース当接ボス15に対応して皿状の凹部35が形成され、左部30cには下ケース当接ボス18に対応して皿状の凹部38が形成されている。
【0032】
図4(a)、(b)は、それぞれ、操作子基板40、メイン基板70の平面図である。後述するように、操作子基板40は上ケース10に固定され、メイン基板70は上ケース10と下ケース30とに固定される。なお、メイン基板70は、上ケース10または下ケース30のいずれかに固定されるように構成してもよい。
【0033】
図4(a)に示すように、操作子基板40の上面40aには、1つの中央操作子体41が配設される。中央操作子体41は、スイッチ本体42と、スイッチ本体42に取り付けられた回転式の軸部43と、軸部43に取り付けられた摘み部44とからなる(図8も参照)。摘み部44は製品組み付けの最終段階で軸部43に装着される。スイッチ本体42を中心とした同一円上に5つのタクトスイッチ47(47A〜47E)が配設されている。また、スイッチ本体42に近接して、貫通穴45が形成されている。なお、タクトスイッチ47を採用することを例示するが、押下駆動されるスイッチであればよく、種類は問わない。
【0034】
ここで、中央操作子体41を上ケース10の環状リブ21と同心に位置させたとき、平面視において、タクトスイッチ47A〜47Cの位置が上ケース10の操作子窓23A〜23Cに対応し、タクトスイッチ47D、47Eの位置が操作子窓23Dに対応する。また、貫通穴45の位置が上ケース10の下ケース当接ボス15に対応する。
【0035】
操作子基板40にはまた、上ケース10の操作子基板取り付けボス16A〜16Dに対応して締結穴46(46A〜46D)が形成されている。操作子基板40にはこの他、各種の操作子や電子部品を配設してもよい。締結穴46A〜46Dの貫通穴45との距離は互いに異なっている。
【0036】
図4(b)に示すように、メイン基板70の上面70eの四隅には、上ケース10の第1ボス11A〜11Dに対応して、締結穴71(71A〜71D)が形成されている。また、メイン基板70の前部70a、後部70bには、上ケース10の第2ボス12A、12Bに対応して、締結穴72(72A、72B)が形成されている。メイン基板70の中央位置には上ケース10の中央ボス13に対応して貫通穴73が形成されている。左部70cには、上ケース10の下ケース当接ボス18に対応して切欠部78が形成されている。
【0037】
メイン基板70及び操作子基板40が筐体内に配設された状態では、平面視において、操作子基板40は、メイン基板70の前部70a寄りで且つ右部70d寄りの位置に配置される。メイン基板70には、楕円穴75が形成されている。メイン基板70及び操作子基板40が筐体内に配設された状態では、楕円穴75の位置が操作子基板40の貫通穴45と対応しており、上ケース10の下ケース当接ボス15がこれら楕円穴75及び貫通穴45を貫通した状態となる。
【0038】
図5(a)、(b)は、それぞれ、操作子ユニット50の平面図、斜め下方からみた斜視図である。図6(a)、(b)は、それぞれ、操作子ユニット50の側面図、裏面図である。図7は、図2のA−A線に沿う部分断面図である。図8は、図6(b)のB−B線に沿う断面の端面図である。
【0039】
図5、図6に示すように、操作子ユニット50は、共通基端部51と、共通基端部51を基点として延設された5本のヒンジ部52と、ヒンジ部52の先端に設けられた被操作部53(53A〜53E)とを備え一体に形成される。共通基端部51は、環状リブ21に嵌合的な嵌合穴58が形成されて略ドーナツ状を呈する板部56を有する。板部56からは、嵌合穴58を中心とする同一円に沿った肉部57が裏側に突設形成されている(図6(b)参照)。肉部57は、裏面視で2つに分離された欠円(欠肉)形状となっているが、概して見れば嵌合穴58を囲む「囲み形状」となっている。
【0040】
図5(a)、図6(b)に示すように、板部56には、嵌合穴58の半径方向における肉部57の内側においてピン穴59が形成されている。2つに分離された肉部57の間において、板部56の縁部には、凹状の切欠部56aが形成されている。板部56は、5本のヒンジ部52とは別に半径方向外側に延びた延設部60を有し、延設部60の裏側に突設部61が形成されている(図5(b)、図6(b)参照)。
【0041】
図8に示すように、操作子ユニット50が筐体内に配設された状態では、板部56は上ケース10のパネル面10eと平行になる。以降、パネル面10eに平行な方向を「水平方向」とも呼称する。図5(a)、図6(b)からわかるように、各ヒンジ部52は、共通基端部51の板部56から、水平方向における互いに異なる方向に放射状に延設される。特に、いずれのヒンジ部52も、肉部57が存在する位置から延びている。各ヒンジ部52の根本であって共通基端部51に連接する部分には、下面側に薄肉部52aが形成されている(図5(a)、図6(b)、図8参照)。各ヒンジ部52は、平板状で且つ根本に薄肉部52aを有しているため、弾性により上下方向に揺動しやすくなっている。
【0042】
各被操作部53は、ヒンジ部52を介して共通基端部51に連結されているので、押離操作されることで、対応するヒンジ部52の撓み及び復帰によって、パネル面10eに直交する上下方向に揺動するようになっている。被操作部53の配置は、共通基端部51を中心とした同一円上となっている。ただし、共通基端部51を中心とした円周方向における被操作部53の配置間隔は均一でなく、円の片側に片寄って配設されている。そして、隣接するもの同士の間隔は、被操作部53D、53E間が最も狭くなっている。被操作部53A、53E間の間隔は他と比べて突出して大きいが、被操作部53が片寄っている配設されている側においては被操作部53B、53C間の間隔が最も大きい。これら被操作部53B、53Cのヒンジ部52の根本の間に、上記した板部56の切欠部56aが位置する。
【0043】
これら、被操作部53の配置は、上ケース10における操作子窓23に対応したものである。ただし、製品組み付け状態において、被操作部53A〜53Cは操作子窓23A〜23Cから露出するが、被操作部53D、53Eは共通の1つの操作子窓23Dから露出する。
【0044】
図5、図6、図8に示すように、共通の構成として、各被操作部53には、上方に膨出し直接に押下操作される押下部54と、押下部54の下部に垂下突設されるアクチュエータ55とが設けられる。各アクチュエータ55はそれぞれ、操作子基板40における、位置が対応しているタクトスイッチ47に近接する。
【0045】
図5(a)、図6(b)に示すように、各押下部54からは、嵌合穴58の半径方向外側においては外側鍔部63が延設形成され、円周方向においては横鍔部62が延設形成されている。ただし、被操作部53D、53Eの互いに隣接する側においては横鍔部62が設けられていない。また、円周方向における各押下部54の側部は縦壁部65(図5(b)参照)となっているが、この縦壁部65も、横鍔部62が無い部分には存在しない。すなわち、被操作部53D、53Eの互いに隣接対向する側には押下部54に縦壁部65が無い。これにより、被操作部53D、53E間の間隙を射出成形によって成形するに際し、用いる金型の薄肉となる部分が長くならずに済み、金型の耐久性が向上する。
【0046】
ところで、操作子ユニット50を一体成形するに際し、金型内に樹脂を流入させる部分に相当するゲート部64が、各外側鍔部63の上面側に設けられる(図5(a)参照)。被操作部53A〜53Cでは、円周方向における外側鍔部63の中央に設けられるが、被操作部53D、53Eでは、互いに遠い側の位置に設けられる。これは、被操作部53D、53Eが隣接する側には上記のように縦壁部65を形成する必要がないことを考慮し、全体の樹脂の行き渡りを均一にするためである。
【0047】
次に、各構成要素の組み付けの態様及び組み付け状態における関係を説明する。
【0048】
組み付け作業としては、まず、上ケース10を裏返しに載置し、上シールド81を装着する。上シールド81の左右側部を上ケース10の係合リブ14(図1、図2参照)に係合させて仮固定すると共に、上面をシールド当接ボス17に当接させる。そして、裏面側から上シールド取り付けボス19にネジを螺合することで、上シールド81を固着する(図7)。図示はしないが、上シールド81には、ボス11、12、13、15、18等の各種のボスと干渉しないための穴乃至切り欠きが形成されている。
【0049】
次に、上シールド81が装着された上ケース10に対して、操作子ユニット50を裏側から配設する。その際、操作子ユニット50の嵌合穴58を上ケース10の環状リブ21の外周に嵌合させる(図8参照)。これらの嵌合によって、操作子ユニット50の水平方向における位置は規制される。また、回転方向(円周方向)の位置決めは、操作子ユニット50のピン穴59に上ケース10の位置決めピン25が挿通されるようにすることで規制される。これに加えて、作業者は、操作子ユニット50を配設する際、切欠部56aが下ケース当接ボス15の位置にくるように回転方向の位置を認識することができる。位置決めピン25と下ケース当接ボス15とが、操作子ユニット50の装着ガイドの機能を果たす。押下部54は、操作子窓23からパネル面10eに露出する。操作子ユニット50については、何ら締結等の固着を行わない。
【0050】
次に、上シールド81及び操作子ユニット50が配設された上ケース10に対して、摘み部44が未装着の状態の操作子基板40を裏側から載置する。その際、上ケース10の下ケース当接ボス15が貫通穴45(図4(a)参照)を貫通するように載置する。下ケース当接ボス15と貫通穴45との係合により、水平方向における操作子基板40の位置決めがなされる。それと同時に、作業者は、上ケース10の操作子基板取り付けボス16A〜16Dに締結穴46A〜46Dの位置を合わせる。すなわち、貫通穴45を中心とした操作子基板40の回転方向の位置を決める。
【0051】
ここで、上記のように、締結穴46A〜46Dの貫通穴45との距離は互いに異なっているため、締結穴46と操作子基板取り付けボス16とが適切な対応とならないと位置が一致しない。すなわち、各締結穴46と各操作子基板取り付けボス16との対応関係から、操作子基板40の回転方向の正規の位置がわかるので、回転方向において誤った位置決めとなることが回避される。よって、目視にて適切な位置決めが可能となり、操作子基板40の上ケース10への取り付け作業が容易となる。
【0052】
その後、締結穴46を介して操作子基板取り付けボス16にネジを螺合することで、操作子基板40が上ケース10に固定される(図7参照)。
【0053】
図8に示すように、操作子基板40が固定状態となると、操作子ユニット50の共通基端部51の肉部57の先端57aが操作子基板40の上面40aに常時当接状態となる。また、共通基端部51の上面である板部56の上面は、上ケース10のリブ24に当接状態となる。従って、共通基端部51が上ケース10と操作子基板40との間に挟持された状態で操作子ユニット50が配設されたことになる。
【0054】
操作子基板40に配設される中央操作子体41のうち、軸部43が、環状リブ21の貫通穴22を貫通し、上方に延びる。そして、組み付け完了直前には摘み部44が軸部43に取り付けられ、摘み部44が貫通穴22から回転操作可能にパネル面10eに露出することになる。これにより、中央操作子体41は、共通基端部51の肉部57及び上ケース10の環状リブ21の内側を貫通して配設されることになる。
【0055】
次に、上シールド81、操作子ユニット50及び操作子基板40が配設された上ケース10に対して、メイン基板70を裏側から載置する。その際、メイン基板70の楕円穴75、貫通穴73、切欠部78を、それぞれ上ケース10の下ケース当接ボス15、中央ボス13、下ケース当接ボス18が貫通するようにする。これによってメイン基板70の位置決めがなされ、締結穴71A〜71Dが第1ボス11A〜11Dの位置に一致すると共に、締結穴72A、72Bが第2ボス12A、12Bの位置に一致する。
【0056】
一方で、下ケース30においては、下ケース30の表側から下シールド82を配設する。下シールド82の左右側部を下ケース30の係合リブ34(図3参照)に係合させて仮固定すると共に、下面を中央対応ボス33に当接させる。図示はしないが、下シールド82には、ボス11、12、15、18等の各種のボスと干渉しないための穴乃至切り欠きが形成されている。
【0057】
このようにして下シールド82を仮装着した下ケース30を、メイン基板70まで装着した上記の上ケース10に裏返し状態で配設する。上ケース10と下ケース30とは、周囲の縁部が係合するようになっている。そして、中央対応ボス33を介して下ケース30の裏面側から中央ボス13にネジを螺合することで、下シールド82と共に下ケース30が上ケース10に固着される。さらに、各締結穴71、72を介して下ケース30の裏面側から第1ボス11、第2ボス12にネジを螺合することで、メイン基板70と共に下ケース30が上ケース10に固着される。その後、筐体の天地を戻して、摘み部44を軸部43に装着し、組み付けが完了する。
【0058】
このように上ケース10と下ケース30とが組み付けられた状態では、上ケース10の下ケース当接ボス15、下ケース当接ボス18の先端が、凹部35、凹部38に当接状態となる。なお、ボス15、18は、凹部35、凹部38に常時当接している必要はなく、近接対向していてもよい。従って、例えば、上ケース10と下ケース30とを組み合わせて且つそれらが締結される前の状態では、ボス15、18と凹部35、凹部38との間にそれぞれ0.1〜0.5mm程度の間隙が生じるような設計寸法としてもよい。これにより、締結によって、両者が丁度当接するか、もしくは僅かな間隙が残るようになる。
【0059】
かかる構成において、操作子ユニット50の被操作部53の押下部54を押下すると、その押下部54に対応するヒンジ部52が撓み、アクチュエータ55が、操作子基板40の対応するタクトスイッチ47を駆動し、オン/オフさせる(図8参照)。押下を解除すると、ヒンジ部52の弾性により元の位置に被操作部53が復帰する。
【0060】
押下操作の際、共通基端部51の肉部57のうち、撓んだヒンジ部52の根本に近い部分に押下力の多くがかかる。一方、操作子基板40は上ケース10に固定されている。そのため、何ら工夫がなければ、操作子基板40が上ケース10と共に下方に撓むことになる。特に、操作子基板40の上ケース10に対する締結位置(締結穴46)は縁部に近く、操作子基板40の中央への押下力は操作子基板40を大きく変形させることになる。
【0061】
ところが本実施の形態では、共通基端部51に近接した位置を通っている下ケース当接ボス15が、下ケース30の固定的な部分である凹部35に当接しているため(図7参照)、上ケース10と下ケース30との間隙の縮小抑制の機能を果たす。それにより、下ケース当接ボス15に近い領域では操作子基板40及び上ケース10が撓みにくくなっている。しかも、下ケース当接ボス15は、操作子ユニット50の平面視において被操作部53A〜53Eが片寄って配置されている側に位置しているので、どの被操作部53が操作された場合であっても比較的均一な撓み抑制効果を発揮する。なお、下ケース当接ボス18も、それの近辺においては上ケース10と下ケース30との間隙の縮小抑制の機能を果たす。
【0062】
本実施の形態によれば、操作子基板40が上ケース10に固定され、且つ、共通基端部51を中心とする5つの被操作部53の配設位置に沿って形成される円よりも内側で且つ共通基端部51に十分に近い位置に下ケース当接ボス15が配設される。ここで、「被操作部53の配設位置に沿って形成される円」については、各被操作部53の部位のうち共通基端部51に最も近い部位に沿って形成される円として定義してもよいが、平面視における重心に沿って形成される円として定義してもよい。
【0063】
そして、下ケース当接ボス15は、上ケース10と下ケース30との間隙が縮小することに抗する。これらにより、被操作部53の操作時における操作子基板40の撓みを小さくすることができる。特に、下ケース当接ボス15は、隣接する2つの被操作部53B、53Cの各ヒンジ部52の根本の間に位置し、共通基端部51に極力近接して配置する工夫がなされているので、下ケース当接ボス15による操作子基板40の撓み抑制効果が高い。
【0064】
ここで、本実施の形態では、5つの被操作部53が同一円上に並び、これらが形成する円の領域のうち、円周方向において隣接するもの同士の円周方向における間隔が最も大きいものは被操作部53A、53E(第1、第2の被操作部)である。そしてこれら被操作部53A、53Eが円周方向において隣接している側(延設部60がある側であり図5(a)でいうと右側)の反対側の領域に、下ケース当接ボス15が位置する。つまり、被操作部53が多く存在する側の領域に下ケース当接ボス15が位置する。これにより、下ケース当接ボス15による操作子基板40の撓み抑制効果を、同一円上に配設された被操作部53間で均一に近づけることができる。
【0065】
また、下ケース当接ボス15は、その先端が凹部35に当接しているので、凹部35に安定して受け止められ、押圧力を受けても先端が横ずれするようなことがない。従って、操作時における下ケース当接ボス15の倒れを抑制して操作子基板40の撓みをより確実に抑制することができる。
【0066】
また、下ケース当接ボス15が操作子基板40の貫通穴45を貫通していることで互いの干渉が回避されると共に、上ケース10に対する操作子基板40の水平方向における位置が規制されるので、操作子基板40の上ケース10への取り付け時の水平方向における位置決めが容易で、取り付け作業が容易となる。下ケース当接ボス15は、操作子基板40を配設する際のガイド機能も果たす。
【0067】
また、操作子基板40の各締結穴46A〜46Dの貫通穴45との距離が互いに異なっているので、操作子基板40の上ケース10への取り付け作業が容易となる。
【0068】
本実施の形態によればまた、共通基端部51が上ケース10と操作子基板40との間に挟持された状態で操作子ユニット50が配設されるので、共通基端部51がスペーサの役割を果たし、上ケース10と操作子基板40との間隔を容易に規制することができる。それに加えて、中央操作子体41が、共通基端部51の囲み形状の肉部57の内側を貫通して配設されるので、省スペースが図られ、放射状配置の被操作部53とそれらの中央に位置する中央操作子体41とを効率よく配設することができる。しかも、中央操作子体41が肉部57によって保護される。特に、中央操作子体41としては、押下操作子だけでなく、回転操作子として構成することが容易となっている。なお、これらの観点に限れば、肉部57は、囲み形状であればよく、欠肉形状でなく完全な筒状であってもよい。あるいは、円に沿った形状に限定されず、例えば、平面視で矩形に沿った形状であってもよい。
【0069】
また、上ケース10の環状リブ21と操作子ユニット50の嵌合穴58とが嵌合されるので、上ケース10に対する操作子ユニット50の組み付け時における水平方向の位置規制を容易に行うことができる。
【0070】
また、下ケース当接ボス15が、隣接する2つの被操作部53B、53Cの各ヒンジ部52の根本の間に位置して、操作子ユニット50を上ケース10に装着する際の位置決め及び位置規制とガイド機能とを果たす。そのため、上記した環状リブ21と嵌合穴58との嵌合による水平方向の位置規制と相まって、操作子ユニット50の組み付け作業が容易になると共に、締結具を用いることなく操作子ユニット50を組み付けることが可能になる。
【0071】
なお、本実施の形態では、下ケース当接ボス15は、上ケース10から突設して下ケース30に当接するものであったが、これとは逆に、下ケース30から突設して上ケース10の裏面10fに当接させてもよい。結局、下ケース当接ボス15のような突設部は、上ケース10または下ケース30の少なくとも一方から他方に向かって突設し、他方の固定的な部分に当接させるように設ければよい。あるいは、両者から突設した突設部同士を当接させてもよい。それらの際、突設部が、操作子基板40、操作子ユニット50、上シールド81、メイン基板70、下シールド82と干渉しないように設計する必要がある。
【0072】
また、本実施の形態では、操作子ユニット50において被操作部53は同一円上に配設されたが、これに限られず、共通基端部51の中心からの距離が異なる被操作部53が存在してもよい。その場合、各被操作部53の操作時における操作子基板40の撓みを小さくする観点からは、下ケース当接ボス15は、複数の被操作部53のうち共通基端部51に最も近いものに比し共通基端部51に近い位置に配設するのがよい。すなわち、複数の被操作部53のうち共通基端部51に最も近いものよりもさらに共通基端部51に近い位置に配設するのがよい。
【0073】
なお、被操作部53の操作時における操作子基板40の撓みを小さくすることに限って言えば、被操作部53の配置は共通基端部51を中心とした放射状配置に限定されず、直線や弧状配置であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 上ケース(第1ケース)、 10e パネル面、 15 下ケース当接ボス(突設部)、 30 下ケース(第2ケース)、 35 凹部、 40 操作子基板、 45 貫通穴、 46 締結穴(締結部)、 47 タクトスイッチ、 50 操作子ユニット、 51 共通基端部、 52 ヒンジ部、 53 被操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル面を有する第1ケースと、
前記第1ケースに固定され、前記第1ケースと共に筐体を構成する第2ケースと、
共通基端部と、該共通基端部から前記第1ケースの前記パネル面に平行な方向における互いに異なる方向に延設された複数のヒンジ部と、前記各ヒンジ部を介して前記共通基端部に連結されて前記パネル面に露出し、押下操作されることで対応するヒンジ部が撓んで前記パネル面に直交する方向に揺動するように構成された複数の被操作部とからなる操作子ユニットと、
前記操作子ユニットの前記各被操作部によって駆動されるスイッチが前記各被操作部に対応して配設され、前記第1ケースと前記第2ケースとの間において前記第1ケースに固定された操作子基板とを有し、
前記操作子ユニットは、前記共通基端部が前記操作子基板に常時当接した状態で配設され、
前記第1ケース及び前記第2ケースの少なくとも一方から他方に向かって突設部が突設され、該突設部は、前記操作子基板及び前記操作子ユニットとの干渉を避けるように設けられて前記他方の固定的な部分に当接または近接しており、且つ、前記突設部は、前記複数の被操作部のうち前記共通基端部に最も近いものよりもさらに前記共通基端部に近い位置に配設されたことを特徴とする電気機器の操作子配設構造。
【請求項2】
前記複数の被操作部には、前記共通基端部を中心とした同じ円上に配設されたものが複数含まれ、それらのうち円周方向において隣接するもの同士の円周方向における間隔が最も大きいものを第1、第2の被操作部としたとき、前記突設部は、前記円の内側の領域のうち前記第1、第2の被操作部が円周方向において隣接している側の反対側の領域に位置することを特徴とする請求項1記載の電気機器の操作子配設構造。
【請求項3】
前記第1ケース及び前記第2ケースの前記他方の固定的な部分は、凹状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の電気機器の操作子配設構造。
【請求項4】
前記突設部は、前記複数の被操作部のうち隣接する2つの被操作部の各ヒンジ部の根本の間に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気機器の操作子配設構造。
【請求項5】
前記操作子基板には貫通穴が形成され、前記突設部が前記貫通穴を貫通していることで、前記操作子基板と前記突設部との干渉が回避されると共に前記第1ケースに対する前記操作子基板の前記パネル面に平行な方向における位置が規制されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気機器の操作子配設構造。
【請求項6】
前記操作子基板は、複数の締結部にて前記第1ケースに固定されており、前記複数の締結部は、前記貫通穴との距離が互いに異なっていることを特徴とする請求項5記載の電気機器の操作子配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−138660(P2011−138660A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297084(P2009−297084)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】