説明

電気機器用の整流子とその製造方法

成形材から形成されたスリーブ形状の支持部材(1)と整流子軸(2)を中心にしてその周囲に均等に配置された複数の金属製導体セグメント(3)ならびにその上に設けられた接続要素とからなる電気機器用のドラム型整流子において、支持部材(1)が2つの異なった成形材から製造されインタロック式に互いに圧接された領域すなわち支持部材基礎部(11)と対漏れ電流保護コーティング(9)とを備え、ここで半径方向外側に開口していて漏れ電流がかかる絶縁表面(10)を備えている漏れ電流防止コーティング(9)が導体セグメント(3)の間に配置され、これが支持部材基礎部(11)を形成する第2の成形材よりも漏れ電流に対して耐性の高い第1の成形材から形成される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、成形材から形成された支持部材と整流子軸を中心にしてその周囲に均等に配置された複数の金属製導体セグメントならびにその上に設けられた接続エレメントとからなる電気機器用の整流子に関する。さらに、本発明はこの整流子の製造方法に関する。
【0002】
前述した種類の整流子は、2つの基本的に異なった構造のものが知られており、一つはドラム型整流子、もう一つは平型整流子である。ドラム型整流子は整流子軸の周りにシリンダ状に配置されたブラシ滑走面を備えるのに対して、平型整流子においては整流子軸に対して垂直な平面内にブラシ滑走面が延在している。ドラム型整流子においては一般的に支持部材がスリーブ形状に形成されているが、これはいずれにおいても多様に変化する動作環境においても金属製の導体セグメントを所与の配置場所に固定し、個々の導体セグメントを互いに絶縁し、整流子を装着する電気機器の回転子軸上にこの整流子を固定するように機能し、同時に導体セグメントを回転子軸に対して絶縁するように機能する。この機能の観点から、支持部材は一般的に絶縁性の成形材、大抵はフェノール樹脂から形成され、時にはプラスチック材料とも呼ばれる成形材が射出成形機の適宜な中空部内で導体セグメントの固定部材の周りに成形され、この固定部材が後に支持部材内に固定的に埋め込まれる。
【0003】
両方の構造形式の整流子の製造に関して、予め加工された個々の導体セグメントあるいは導体セグメントを含んだ導体未加工片を使用することができ、後者の場合支持部材を射出成形した後に切断あるいは研削によって互いに絶縁された個々の導体セグメントに分割する。
【0004】
さらに、支持部材が成形材からあるいは成形材のみからは形成されていない整流子も知られている。欧州特許第0325353号明細書およびドイツ国特許出願公開第19642138号明細書には、ドラム型整流子の個々の導体セグメントの予め加工されたプラスチック製の取り付けケージへの前組み立てが記されており、これには後の工程において成形材が射出されそれがその後も残留する一体化した整流子部材を構成する。ドイツ国特許出願公開第3714098号明細書によれば、支持部材が金属製あるいは絶縁性材料とすることができるスリーブ形状のボス部材と薄壁状の絶縁材料(チューブ、被覆フィルム等)を備えている。導体セグメントはこの支持部材の周りに配置され、固定リングによって支持部材に締め付け固定される。導体セグメント間に形成された空間にはその後成形材で充填することができるが、これは不可欠ではない。
【0005】
前記の種類の整流子に関する多数の構造案は、この種の構造の実用的な整流子の需要の大きな部分を占めている。加えて、現在まで解決されていない多くの問題点を有している。
【0006】
この点に関して、既知の整流子においては多様な要件が一部互いに相反することが挙げられ;特に、目的に適したサイズ、特に大電流における高い効率、低い製造コスト、ならびに整流子の高い信頼性および長い寿命である。最後に挙げた2つの要件に関して支持部材の構成が重要となる。その理由は、一般的なフェノール樹脂に基づく成形材で形成された支持部材を有するこの種の整流子は、特に導体セグメント間の空気絶縁開口部に露出した支持部材表面の炭化によって漏れ電流の発生がもたらされ、これによって整流子の効率ならびに信頼性および寿命が低下する。他方、漏れ電流に強い成形材によって支持部材が形成されている整流子は寿命のみが満足できないものとなり、これはこの場合の支持部材が比較的小さな寸法安定性しか有せず、従ってブラシ滑走面が特に高い温度においてドラム型整流子の場合は非円形(整流子のうねり、円心のずれ)となり、平型整流子の場合は不均一平面となるためである。
【0007】
従って本発明の目的は、比較的に低コストに製造することができ、かつ大電流に際しても信頼性および寿命を高めるにもかかわらず高い効率を実現することができる整流子を提供することである。
【0008】
前記の課題は、本発明に従って、支持部材が2つの異なった成形材から製造されインタロック式に互いに圧接された領域すなわち支持部材基礎部と対漏れ電流保護コーティングとを備え、ここで半径方向外側に開口していて漏れ電流がかかる絶縁表面を備えている漏れ電流防止コーティングが導体セグメントの間に配置され、これが支持部材基礎部を形成する第2の成形材よりも漏れ電流に対して耐性の高い第1の成形材から形成されることによって解決される。従って、本発明によれば特に支持部材が異なった材料特性を有する2種類の異なった成形材料からなり、導体セグメント間に配置され、いずれも半径方向外側に向かって開口し漏れ電流がかかる絶縁表面を有している対漏れ電流保護コーティングが支持部材基礎部を形成しているその他の成形材領域よりも高い漏れ電流耐性を有することを特徴とする。本発明に従って構成された整流子の顕著な利点は、過度に製造コストを増大させることなく、高い信頼性と同時に高い効率を達成し得ることである。その理由は、本発明を適用することによって極めて寸法安定性が高い支持部材を有する整流子を製造することができ、従って極めて過酷な稼動条件においてもブラシ滑走面の顕著な非円形化または不均一が発生せず、同時に整流子の効率低下または故障の危険も最小化されるためである。この点に関して、本発明に係る整流子においては従来の構造の整流子において漏れ電流に対して脆弱な3つの表面全て、すなわち各2つの導体セグメント間の絶縁面、接続エレメントに隣接した塗装遮断部の領域ならびに接続エレメントと反対側の端面が効果的に炭化から保護され得ることが極めて好適である。
【0009】
本発明はドラム型整流子の構成に特に適しているが、これに限定されるものではない。むしろ、本発明は平型整流子にも効果的に適用することができる。従って、以下の説明においてはドラム型整流子を例にするが、これによって本発明がドラム型整流子に限定されるものではない。
【0010】
本発明の第1の好適な追加構成によれば、対漏れ電流保護コーティングの成形材がポリエステル、メラミンホルムアルデヒド、エポキシ、アリルエステル、その他の漏れ電流耐性の高い樹脂、これらの樹脂の組み合わせ、あるいはこれらの樹脂とフェノール樹脂との組み合わせに基づくものである。この場合、従来の方式によって支持部材全体をフェノール樹脂によって形成する場合よりも支持部材の脆弱な表面上で2倍に高められた漏れ電流耐性を期待することができる。これに対して支持部材基礎部はより高い機械的特性を有しており、特に対漏れ電流保護コーティングに比べてより高い耐熱性および形状安定性を有しており;これは特にフェノール樹脂を基礎にしたあるいはフェノール樹脂を含有した成形材からなることが好適である。前述した本発明に係る整流子の実用上重要な特性を最適化するために、対漏れ電流保護コーティングは一般的な寸法の整流子において例えば0.5ないし3mmの層厚があれば充分である。
【0011】
本発明の別の好適な追加構成によれば、対漏れ電流保護コーティングの個々の領域の周囲方向に計測した最大幅が各2つの導体セグメント間に形成された空気絶縁開口部の幅よりも大きいものとなる。ここで、特に対漏れ電流保護コーティングの個々の領域の幅は半径方向において外側から内側に向かって拡大し、ここで対漏れ電流保護コーティングの個々の領域がその層厚全体にわたって隣接している両方の導体セグメントにインタロック式に接合する。この構成によって寸法安定性が向上するとともに対漏れ電流保護コーティングが確実に固定されるように作用し、従って本発明に係る整流子の寿命が延長される。特に、本発明の別の好適な追加構成に従って、導体セグメントが対漏れ電流保護コーティングと支持部材基礎部の両方に固定される半径方向内側に向いた固定部材を備えていることが好適である。
【0012】
本発明のさらに別の好適な追加構成は、対漏れ電流保護コーティングがその厚みの一部にわたって延在する外側を向いた溝群を備えており、これらはいずれも対応する空気絶縁開口部に整合しこれを半径方向内側に延長させることを特徴とする。このように追加構成された整流子は、漏れ電流による損傷の危険性が極めて小さいものとなる。
【0013】
本発明の別の好適な追加構成によれば、対漏れ電流保護コーティングおよび支持部材基礎部がいずれも共通の境界面で互いに接合している。この境界面は特に不均一でレリーフ状に構成することができ、それによって対漏れ電流保護コーティングおよび支持部材基礎部が互いにインタロック式に係合する。他方、境界面を均一に形成することもできる。この方式は、本発明の整流子を製造する方法に関して極めて重要なものである。これに関しては以下により詳細に記述する。
【0014】
本発明に係る整流子において、対漏れ電流保護コーティングの個々の領域の半径方向外側を向いた絶縁面がいずれも外側のブラシ滑走面に向いたダボを特に接続エレメントに隣接して備える。
【0015】
本発明に係る特に好適な整流子の製造方法は:金属製の導体セグメントを成形型内に装填し;隣接する2つの導体セグメント間に形成されいずれも半径方向内側が第1の内側成形型のリブによって規定された中空部内に比較的漏れ電流耐性の高い成形材を充填し;第1の内側成形型を取り外し;成形する支持部材の輪郭を定義する第2の内側成形型を装着し;比較的耐熱性および形状安定性が高い第2の成形材を成形型内に鋳込み、この際第2の成形材の圧力および熱によって両方の成形材を交差結合して硬化させる、ステップからなる。この方法は、第1の成形材が圧力無しに前述した中空部内に充填されるため成形材の圧締め工程が一回のみで済む点が特に好適であり;従って支持部材を圧締めするために適した鋳型も1個のみで済む。第1の成形材は充填に際してペースト状の粘度とすることが好適であり、従って一方で第1の内側成形型を取り外す際に成形型から流出することはなく、他方で圧力をもって成形型内に射出された第2の成形材によって変形されることもない。この点に関して、第1の成形材が熱硬化性プラスチックからなるとともに第2の成形材の射出時点においてまだ硬化していないことが特に好適であり、それによって第2の成形材の射出中に第1の成形材が導体セグメントにインタロック式に着合するように変形される。特に、第1の成形材はポリエステル、メラミンホルムアルデヒド、エポキシ、アリルエステル、その他の漏れ電流耐性の高い樹脂、これらの樹脂の組み合わせに基づいて形成することが好適である。
【0016】
前述した製造方法の枠内において、導体セグメントは最初一部品状の導体未加工材の一部とし支持部材の成形後に初めて例えば個々の導体セグメントを互いに結合しているブリッジ部分の切断または切削によって互いに分離することができる。この場合、対漏れ電流保護コーティングを形成するための第1の成形材が充填される中空部は半径方向外側において導体未加工材のブリッジ部分によって規定することができる。同様に、前述した製造方法は、既知の取り付けケージ内に挿入された予め加工された個々の導体セグメントを使用して実現することもできる。この場合、取り付けケージの一部であるシムによって前述した中空部を規定することが極めて好適である。
【0017】
整流子を製造するための本発明に係る別の方法は:金属製の導体セグメントを第1の成形型内に装填し;両方の成形材のうちの一方を第1の成形型の対応する孔部内に射出注入し;射出注入された成形材を硬化させ;導体セグメントと硬化した成形材からなる中間加工物を第1の成形型から除去してこの中間加工物を第2の成形型内に装填し;もう一方の成形材を第2の成形型の対応する孔部内に射出し;第2の射出工程において射出された成形材を硬化させる、ステップからなる。この方法の特徴的な利点は、その加工の時点では比較的希薄な液体状である漏れ電流耐性の高い第1の成形材が使用可能であることであり;また前述した第1の方法では不可能であるが、対漏れ電流保護コーティングを形成するために漏れ電流耐性の高い熱可塑性の成形材を使用することができる。勿論、支持部材を構成する両方の成形材が別々に圧締めされるため、2つの適宜な成形型が必要となる。
【0018】
さらに説明を補完すると、本発明は固定リングを備える整流子と固定リングを備えない整流子のいずれにも同様に適用することができる。以下の説明は、固定リングを備えない整流子のみに関して記述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
次に、いずれもドラム型整流子からなる2つの本発明の実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0020】
図1ないし図2に示されたドラム型整流子は、主要な構成要素として成形材から形成された支持部材1と整流子軸2の周りに均等に配置された導体セグメント3とを備えている。隣接する2つの導体セグメント間にはいずれも空気絶縁開口部が形成されている。支持部材1は軸2について同心上の孔部4を備えており、これは回転子シャフト上に整流子を設置するために機能する。
【0021】
導体セグメント3の半径方向内側に設けられた固定部材5は支持部材1の成形材内に埋め込まれ、これによって導体セグメントを高速回転時においても遠心力に反して固定することが可能になる。導体セグメント3の末端にはターミナルラグ6として形成された接続エレメント3が設けられ、これは既知のようにコイル線を整流子に接続するよう機能するものである。接続要素はターミナルラグに代えてその他の好適な方式で構成することができ、例えば、スリット形状あるいはハンダ環として形成することができる。シリンダ平面上に設けられた導体セグメントの放射面7によってブラシ8の滑走面が形成される。
【0022】
この範囲において図1ないし図3に示された整流子は従来の技術によるものと同様であり、従ってその詳細な説明は省略する。
【0023】
支持部材1は異なった材料特性を有する2つの異なった成形材からなり;これはその個々の領域がいずれも導体セグメント3間に配置され半径方向外側に向かって開口した絶縁表面10を有する対漏れ電流保護コーティング9と、支持部材1のその他の部分を含んだ支持部材基礎部11を備えている。本発明によれば、比較的小さな半径方向の厚みを有する対漏れ電流保護コーティング9は支持部材基礎部11に比べて高い漏れ電流耐性を有している。このことは、図示された実施例において、支持部材基礎部11がフェノール樹脂を含有する成形材から形成され、一方対漏れ電流保護コーティング9はポリエステル樹脂、メラミン樹脂、および/またはエポキシ樹脂を含有する成形材から形成される。この種の材料の組み合わせによれば、支持部材基礎部11は対漏れ電流保護コーティング9に比べてより良好な耐熱性を有する。
【0024】
半径方向内側に向いている導体セグメント3の固定部材5はそれぞれの成形材内に適宜に埋め込むことによって対漏れ電流保護コーティング9ならびに支持部材基礎部11の両方に固定される。
【0025】
半径方向内側を向いていてブラシ滑走面に対して内側にずれている対漏れ電流保護コーティング9の絶縁表面10は、いずれもターミナルラグ6に隣接して外側に向いたダボ12を備えている。
【0026】
図4には、図1ないし図3に示されたドラム型整流子の製造中における、比較的漏れ電流耐性が高い成形材からなる対漏れ電流保護コーティング9の製造開始の製造工程が示されている。ここで多部品からなる成形型が使用され、これは外側成形型13と内側成形型14を備えている。外側成形型13はジャケット15を備えておりその内面に取り付けケージのシム16が接合する。これは隣接する各2つの導体セグメント3間の距離を保持し、従って後のドラム型整流子の空気絶縁開口部の寸法を定義する。第1の内側成形型14は半径方向外側に向いたリブ17を備えている。これらはその側方の密封面をもっていずれも隣接する2つの導体セグメント3の固定部材5に接合している。この方式により、互いに隣接する2つの導体セグメント3とその間に配置されたシム16と同様にその間に配置されたリブ17によって、図4に示されているように、対漏れ電流保護コーティング9の個々の領域を形成するために漏れ電流耐性の高い第1の成形材を充填することができる中空部18が形成される。
【0027】
第1の内側成形型14が除去された後、ここには図示されていない第2の内側成形型が適用され、これは適宜な型空洞によって完成した支持部材の輪郭を定義するものである。この型空洞内に支持部材基礎部11を形成するために必要な量の比較的形状安定性の高い成形材が射出され、ここで適宜な圧力および温度下において第1の成形材が対応する導体セグメント3にインタロック式かつ固定的に着合する。図1および図2に示されているように、支持部材基礎部11と対漏れ電流保護コーティング9との間に不均一のレリーフ状構造からなる境界面9が形成され、その上で両方の成形材が互いに嵌合する。第2の成形材によってもたらされた熱によって第1の成形材の交差結合および硬化がもたらされる。
【0028】
図5には(別の詳細構造からなる)本発明に係るドラム型整流子の別の方式を使用した製造方法が示されている。第1の製造工程において、第1の成形型を使用して、形状安定性の高い成形材を第1の成形型の空洞内に射出することによって支持部材基礎部11が形成される。このようにして形成された支持部材基礎部が硬化した後、この中間加工品を第2の成形型内に装填し、その中において漏れ電流耐性の高い第2の成形材を適宜な空洞部内に射出することによって対漏れ電流保護コーティング9の個々の領域20が形成され、それによって支持部材1の製造が終了する。対漏れ電流保護コーティング9の個々の領域20は、両側で導体セグメント3の窪み21に嵌合する。対漏れ電流保護コーティング9の個々の領域はその絶縁表面10の領域内にいずれも溝22を備えており、これは対応する空気絶縁開口部に整合するとともにこれを半径方向内側に延長する。
【0029】
本発明の枠内において、両方の製造工程を逆の順番で実施し得ることが理解される。
【0030】
図5に示された整流子において、最初に記述した製造方法も適用し得ることは勿論であり、これも、境界面19の特殊な構成を除いて、図1ないし図3の整流子を製造するための2番目の変更例と同様に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に従って構成されたドラム型整流子の第1の実施例を示す軸方向断面図である。
【図2】図1のドラム型整流子の線II−IIに沿った拡大断面図である。
【図3】図1および図2のドラム型整流子の一部を示す側面図である。
【図4】図1ないし図3のドラム型整流子を製造するために使用される成形型の第2の製造工程中における状態を示した断面図である。
【図5】本発明に従って構成されたドラム型整流子の第2の実施例を示す軸方向断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材から形成されたスリーブ形状の支持部材(1)と整流子軸(2)を中心にしてその周囲に均等に配置された複数の金属製導体セグメント(3)ならびにその上の末端側に設けられたターミナルラグ(6)とからなる電気機器用のドラム型整流子であり、
支持部材(1)が異なった材料特性を有する2種類の異なった成形材料からなり、導体セグメント(3)間に配置されいずれも半径方向外側に向かって開口し漏れ電流がかかる絶縁表面(10)を有している第1の成形材領域(9)が支持部材基礎部を形成しているその他の第2の成形材領域(11)よりも高い漏れ電流耐性を有することを特徴とするドラム型整流子。
【請求項2】
第1の成形材領域(9)の成形材がポリエステル、メラミンホルムアルデヒド、エポキシ、アリルエステル、その他の漏れ電流耐性の高い樹脂、またはこれらの樹脂の組み合わせに基づくものであることを特徴とする請求項1記載のドラム型整流子。
【請求項3】
第2の成形材領域(11)は第1の成形材領域(9)に比べてより高い機械的特性を有しており、より高い耐熱剛性を有していることを特徴とする請求項1または2記載のドラム型整流子。
【請求項4】
第2の成形材領域(11)はフェノール樹脂を含有した成形材からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のドラム型整流子。
【請求項5】
第1の成形材領域(9)の周囲方向に計測した最大幅が各2つの導体セグメント(3)間に形成された空気絶縁開口部の幅よりも大きいものとなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のドラム型整流子。
【請求項6】
第1の成形材領域(9)の幅は半径方向において外側から内側に向かって拡大し、ここで第1の成形材領域がその層厚全体にわたって隣接している両方の導体セグメント(3)にインタロック式に接合することを特徴とする請求項5記載のドラム型整流子。
【請求項7】
第1の成形材領域(9)がいずれもその厚みの一部にわたって延在する外側を向いた溝(22)を備えており、これはいずれも対応する空気絶縁開口部に整合しこれを半径方向内側に延長させることを特徴とする請求項5または6に記載のドラム型整流子。
【請求項8】
第1の成形材領域(9)と第2の成形材領域(11)が共通の境界面(19)で互いに接合していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のドラム型整流子。
【請求項9】
境界面(19)は不均一でレリーフ状に構成し、それによって第1の成形材領域(9)と第2の成形材領域(11)が互いにインタロック式に係合することを特徴とする請求項8記載のドラム型整流子。
【請求項10】
境界面(19)が平面であることを特徴とする請求項8記載のドラム型整流子。
【請求項11】
導体セグメント(3)が第1の成形材領域(9)と第2の成形材領域(11)の両方に固定される半径方向内側に向いた固定部材(5)を備えていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のドラム型整流子。
【請求項12】
第1の成形材領域(9)の半径方向外側を向いた絶縁面(10)がいずれもターミナルラグ(6)に隣接して外側を向いたダボ(12)を備えることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のドラム型整流子。
【請求項13】
請求項1記載のドラム型整流子の製造方法であり:
金属製の導体セグメント(3)を成形型内に装填し、ここで外側成形型(13)のシム(16)が後の空気絶縁開口部を定義するものとし;
隣接する2つの導体セグメント(3)間に形成されいずれも半径方向外側がシム(16)によって半径方向内側が第1の内側成形型(14)のリブ(17)によって規定された中空部(18)内に比較的漏れ電流耐性の高い第1の成形材を充填し;
第1の内側成形型(14)を取り外し;
成形する支持部材(1)の輪郭を定義する第2の内側成形型を装着し;
比較的耐熱性および形状安定性が高い第2の成形材を成形型内に射出し、この際第2の成形材の圧力および熱によって両方の成形材を交差結合させる、
ステップからなる方法。
【請求項14】
第1の成形材が熱硬化性プラスチックからなるとともに第2の成形材の射出時点においてまだ硬化せず、それによって第2の成形材の射出中に第1の成形材が変形することを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
第1の成形材はポリエステル、メラミンホルムアルデヒド、エポキシ、アリルエステル、その他の漏れ電流耐性の高い樹脂、またはこれらの樹脂の組み合わせに基づいて形成することを特徴とする請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
請求項1記載のドラム型整流子の製造方法であり:
予め加工された金属製の導体セグメント(3)を第1の成形型内に装填し;
両方の成形材のうちの一方を第1の成形型の対応する孔部内に射出注入し;
射出注入された成形材を硬化させ;
導体セグメント(3)と硬化した成形材からなる中間加工物を第1の成形型から除去してこの中間加工物を第2の成形型内に装填し;
もう一方の成形材を第2の成形型の対応する孔部内に射出し;
第2の射出工程において射出された成形材を硬化させる、
ステップからなる方法。
【請求項17】
請求項1記載のドラム型整流子の製造方法であり:
予め加工された金属製の導体セグメント(3)と同様に予め加工された第1の成形材部品(20)を成形型内に装填し、ここで第1の成形材部品(20)は第1の比較的漏れ電流耐性が高い成形材からなるものとし;
第2の成形材領域を形成するために比較的耐熱性および形状安定性が高い第2の成形材を成形型内に射出し;
射出された第2の成形材を硬化させ;
整流子を成形型から除去する、
ステップからなる方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材から形成されたスリーブ形状の支持部材(1)と整流子軸(2)を中心にしてその周囲に均等に配置された複数の金属製導体セグメント(3)ならびにその上に設けられた接続要素とからなり、隣接する各2つの導体セグメント間にいずれも空気絶縁開口部が形成される、電気機器用の整流子であり、
支持部材(1)が異なった成形材から製造されインタロック式に互いに圧接された2つの領域すなわち支持部材基礎部(11)と対漏れ電流保護コーティング(9)とを備え、ここで半径方向外側に開口していて漏れ電流がかかる絶縁表面(10)を備えている漏れ電流防止コーティング(9)が導体セグメント(3)の間に配置され、これが支持部材基礎部(11)を形成する第2の成形材よりも漏れ電流に対して耐性の高い第1の成形材から形成される整流子。
【請求項2】
対漏れ電流保護コーティング(9)の成形材がポリエステル、メラミンホルムアルデヒド、エポキシ、アリルエステル、その他の漏れ電流耐性の高い樹脂、またはこれらの樹脂の複数の組み合わせ、あるいはこれらの樹脂の少なくとも1つとフェノール樹脂との組み合わせに基づくものであることを特徴とする請求項1記載の整流子。
【請求項3】
支持部材基礎部(11)は第1の対漏れ電流保護コーティング(9)に比べてより高い機械的特性を有しており、特により高い耐熱剛性を有していることを特徴とする請求項1または2記載の整流子。
【請求項4】
支持部材基礎部(11)はフェノール樹脂を含有した成形材からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の整流子。
【請求項5】
対漏れ電流保護コーティング(9)の個々の領域の周囲方向に計測した最大幅が各2つの導体セグメント(3)間に形成された空気絶縁開口部の幅よりも大きいものとなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の整流子。
【請求項6】
対漏れ電流保護コーティング(9)の個々の領域の幅は半径方向において外側から内側に向かって拡大し、ここで対漏れ電流保護コーティングの個々の領域がその層厚全体にわたって隣接している両方の導体セグメント(3)にインタロック式に接合することを特徴とする請求項5記載の整流子。
【請求項7】
対漏れ電流保護コーティング(9)の半径方向外側を向いた絶縁面(10)がいずれも接続エレメントに隣接して外側を向いたダボ(12)を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の整流子。
【請求項8】
対漏れ電流保護コーティング(9)と支持部材基礎部(11)が共通の境界面(19)で互いに接合していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の整流子。
【請求項9】
対漏れ電流保護コーティング(9)がその厚みの一部にわたって延在する外側を向いた溝群(22)を備えており、これらはいずれも対応する空気絶縁開口部に整合しこれを半径方向内側に延長させることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の整流子。
【請求項10】
境界面(19)は不均一でレリーフ状に構成し、それによって対漏れ電流保護コーティング(9)と支持部材基礎部(11)が互いにインタロック式に係合することを特徴とする請求項8記載の整流子。
【請求項11】
境界面(19)が平面であることを特徴とする請求項8記載の整流子。
【請求項12】
導体セグメント(3)が対漏れ電流保護コーティング(9)と支持部材基礎部(11)の両方に固定される半径方向内側に向いた固定部材(5)を備えていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の整流子。
【請求項13】
請求項1記載のドラム型整流子の製造方法であり:
金属製の導体セグメント(3)を成形型内に装填し;
隣接する2つの導体セグメント(3)間に形成されいずれも半径方向内側が第1の内側成形型(14)のリブ(17)によって規定された中空部(18)内に比較的漏れ電流耐性の高い第1の成形材を充填し;
第1の内側成形型(14)を取り外し;
成形する支持部材(1)の輪郭を定義する第2の内側成形型を装着し;
比較的耐熱性および形状安定性が高い第2の成形材を成形型内に射出し、この際第2の成形材の圧力および熱によって両方の成形材を交差結合および硬化させ;
整流子を成形型から取り出す、
ステップからなる方法。
【請求項14】
第1の成形材が熱硬化性プラスチックからなるとともに第2の成形材の射出時点においてまだ硬化せず、それによって第2の成形材の射出中に第1の成形材が変形することを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
第1の成形材はポリエステル、メラミンホルムアルデヒド、エポキシ、アリルエステル、その他の漏れ電流耐性の高い樹脂、またはこれらの樹脂の組み合わせに基づいて形成することを特徴とする請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
導体セグメント(3)は最初一部品状の導体未加工材の一部とし支持部材(1)の成形後に初めて互いに分離することを特徴とする請求項13ないし15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
中空部(18)は半径方向外側において個々の導体セグメント(3)を互いに結合している導体未加工材のブリッジ部分によって規定することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
取り付けケージ内に装入された予め加工された個々の導体セグメント(3)を使用することを特徴とする請求項13ないし15のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
中空部(18)は半径方向外側において取り付けケージの一部であるシム(16)によって規定されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
請求項1記載の空気開口部によって絶縁される整流子の製造方法であり:
金属製の導体セグメント(3)を第1の成形型内に装填し;
両方の成形材のうちの一方を第1の成形型の対応する孔部内に射出注入し;
射出注入された成形材を硬化させ;
導体セグメント(3)と硬化した成形材からなる中間加工物を第1の成形型から除去してこの中間加工物を第2の成形型内に装填し;
もう一方の成形材を第2の成形型の対応する孔部内に射出し;
第2の射出工程において射出された成形材を硬化させ;
整流子を成形型から取り出す、
ステップからなる方法。
【請求項21】
対漏れ電流保護コーティングを形成するために使用する成形材が漏れ電流耐性の高い熱可塑性樹脂とすることを特徴とする請求項20記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2006−504377(P2006−504377A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546010(P2004−546010)
【出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011917
【国際公開番号】WO2004/038905
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(505039424)コレクトール グループ デー.オー.オー. (8)
【Fターム(参考)】