説明

電気機械変換装置及びその作製方法

【課題】溝で素子分離された電気機械変換装置の寄生容量を低減すると共に、溝に異物が浸入するのを防止することができる電気機械変換装置及びその作製方法を提供する。
【解決手段】電気機械変換装置は、間隙を挟んで対向して設けられた第1及び第2の電極108、107を含むセルを少なくとも1つ夫々有する複数の素子104と、複数の素子の外周に沿って伸びた外枠109を含む。複数の素子夫々の第1の電極108は、素子用の基板を溝111で電気的に分離して形成された複数の部分から夫々成り、外枠109は、複数の部分から溝111で電気的に分離された、複数の部分の周りの素子用の基板の部分から成る。複数の第1の電極108は、複数の電極接続部112を介して、他の基板102の複数の導電性部117に夫々接合され、外枠109は、複数の電極接続部の周りの環状の外枠接続部113を介して、他の基板の対応部分に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波変換装置などの電気機械変換装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械変換装置の一形態に、容量性マイクロマシン加工超音波変換装置(Capacitive Micromachined Ultrasound Transducer:CMUT)がある。CMUTの一例として、下部電極を有する基板と、この基板上に形成された支持部で支えられた振動膜であるメンブレンと、上部電極とを備えた素子を複数有する素子基板に、回路基板を電気的に接続することで構成されたものがある。ここでは、基板とメンブレンとの間に、間隙であるキャビティが形成される。CMUTは、下部電極と上部電極との間に印加する電圧によってメンブレンを振動させ、超音波を放出する。また、受け取った超音波によってメンブレンを振動させ、下部電極と上部電極との間の容量の変化により超音波を検出する。
【0003】
従来、CMUTは、いわゆるサーフェスマイクロマシニング(サーフィス型)、バルクマイクロマシニング(接合型)を利用して作製されてきた。また、配線方法として、シリコン基板上の複数のメンブレンとキャビティを1つの素子とし、前記シリコン基板そのものを下部電極及び貫通配線として、回路基板に素子を接続する方法が提案されている(非特許文献1参照)。この方法を図4で説明する。素子基板1007は複数の素子1008で構成され、素子を1つのユニットとして超音波の送受信を行う。素子1008は、上部電極1000、メンブレン1001、キャビティ1002、下部電極1003で構成されている。下部電極には、隣り合う素子1008同士を電気的に分離(分割)して絶縁を図るため、溝1004が形成されている。素子基板1007の下部電極1003は夫々、バンプ1005によりASIC基板(回路基板)などと接続される。上部電極1000は、複数の素子の上部電極1000が上部電極引き出し部1010に接続され、上部電極引き出し部1010が上部電極配線1009とバンプ1005を介してASIC基板に接続される。この様に、下部電極1003が電気的に分離されていることにより、素子毎に信号を取り出すことができる。また、非特許文献1では、CMUTに柔軟性を与えるため、溝1004にPDMS(ポリジメチルシロキサン)1006が埋め込まれている。こうして、素子分離のために設けた溝1004を樹脂で封止すると、異物が溝に侵入することが防げられるため、素子1008間の絶縁破壊防止に有効である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journalof Micro electromechanical Systems, Vol.17, No.2 pp.446-452 , APRIL. 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1のCMUTは、素子分離のために設けた溝を樹脂で封止するため、溝が空間である場合に比べて、下部電極1003同士の間、又は、下部電極1003と上部電極配線1009との間の寄生容量が増える可能性がある。しかし反面、仮に、溝内の空間を保ったまま装置を作製した場合、異物が溝に侵入し絶縁破壊を起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の電気機械変換装置は、間隙を挟んで対向して設けられた第1及び第2の電極を含むセルを少なくとも1つ夫々有する複数の素子と、前記複数の素子の外周に沿って伸びた外枠と、を含み、次の特徴を有する。前記複数の素子夫々の第1の電極は、素子用の基板を溝で電気的に分離して形成された複数の部分から夫々成り、前記外枠は、前記複数の部分から前記溝で電気的に分離された、前記複数の部分の周りの前記素子用の基板の部分から成る。更に、前記複数の部分から夫々成る第1の電極は、複数の電極接続部を介して、他の基板の複数の導電性部に夫々接合され、前記外枠は、前記複数の電極接続部の周りの環状の外枠接続部を介して、前記他の基板の対応部分に接合される。
【0007】
また、上記課題に鑑み、本発明の電気機械変換装置の作製方法は、間隙を挟んで対向した第1及び第2の電極を含むセルを少なくとも1つ夫々有する複数の素子が設けられ前記複数の素子の外周に沿って伸びた外枠を有する素子用の基板に、他の基板を接合する方法である。そして、次の工程を含む。素子用の基板に溝を形成し、外枠と複数の第1の電極とを形成する工程。前記複数の第1の電極に夫々繋がる複数の電極接続部と、前記複数の電極接続部の周りに沿って伸びて環状を成し前記外枠に繋がる外枠接続部とを形成する工程。前記外枠接続部と複数の電極接続部とを介して前記素子用の基板と他の基板とを接合する工程。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記外枠接続部が、前記溝を含む空間の封止材として機能し、素子の分離のために設けた溝内を空間に保ったまま封止すことが可能となり、溝に異物が混入するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用できる電気機械変換装置の一例のCMUTの構成を説明する図。
【図2】実施形態2のCMUTの作製方法を説明する断面図。
【図3】実施形態2のCMUTの作製方法を説明する図。
【図4】従来のCMUTを示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の電気機械変換装置及びその作製方法において重要な点は、溝で電気的に分離された複数の部分を持つ素子用の基板の外枠に、前記複数の部分の接続用の電極接続部の周りに環状の外枠接続部を形成する点である。そして、この環状の外枠接続部を介して、他の基板の対応部分に接合する。前記他の基板としては、導電性部である貫通配線を複数有する貫通配線基板(後述の実施形態を参照)や、電気機械変換装置を制御するための回路基板がある。
【0011】
上記考え方に基づき、本発明の機械電気変換装置及びその作製方法の基本的な形態は、課題を解決するための手段のところで述べた様な構成を有する。この基本的な形態を基に、以下に述べる様な実施形態が可能である。前記電極接続部と外枠接続部とは同じ導電性の材料で構成することができ、こうすれば、電気機械変換装置の作製方法が容易となる。前記外枠と第2の電極(後述の上部基板)とは電気的に接続することができ、この場合、外枠は、環状の外枠接続部の導電性部を介して、他の基板の対応部分の導電性の部分に接合されることになる。外枠接続部は、全体が導電性部であってもよいし、電気接続用に一部のみが導電性部であってもよい。前記溝は、真空ないし減圧状態にされたり、若しくは気体で満たされたりすることができる。
【0012】
以下、本発明が適用できる電気機械変換装置及びその製造方法の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態1)
本発明が適用可能な電気機械変換装置であるCMUTに係る実施形態1を説明する。図1はこのCMUTを示す。ただし、本発明は、CMUTに限らず、同様な構造(素子用の基板を溝で分割して各素子用の第1の電極を形成する構造)を持つ電気機械変換装置であれば、適用できる。例えば、歪み、磁場、光を用いる超音波変換装置(いわゆる圧電トランスデューサ(PMUT)、磁気トランスデューサ(MMUT)など)等にも適用できる。すなわち、本発明が適用可能な電気機械変換装置は、後述する第1の電極である下部電極108上の構造が後述する構成であるものに限らない。
【0013】
図1において、図1(a)は図1(b)のA−A’断面図、図1(b)はCMUTの上面図、図1(c)は図1( a )のB−B’断面における素子用の基板側の上面図、図1(d)は図1( a )のB−B’断面図における貫通配線基板側の上面図である。分かり易くするため、上面図にもハッチングないし濃淡を施している。本実施形態のCMUTは、貫通配線基板102と素子基板103で構成され、貫通配線基板102は回路基板101に接続されている。図1(a)に示す様に、素子基板103と回路基板101は貫通配線基板102を介して相互に固定されており、回路基板101は、素子基板103と同一平面上(横並び)ではなく、素子基板103の下に配置されている。
【0014】
素子基板103は、二次元に配列された素子104、及び全素子104の外周に沿って伸びその周囲を囲む外枠109を含む。図1の各素子104は、第2の電極である上部電極107、メンブレン105、絶縁体の支持部100、第2の電極と対向する第1の電極である下部電極108を備えるセルを複数含む。そして、各セルの上部電極107と下部電極108との間には、間隙であるキャビティ106が形成されている。つまり、本発明において、セルは、1つのキャビティを挟んで対向する上部電極107と下部電極108とからなる構成を少なくとも備えている。下部電極108は、素子用の基板に溝111が形成されることにより素子毎に分離されている。素子夫々で、複数のセルのキャビティ106は互いに独立的に封止されていてもよいし、連通していてもよい。こうして、本実施形態では、セルが複数並列に電気的に接続されて素子104を構成している。各素子104は1以上のセルを含めばよく、各素子104におけるセルの数、セルの配列形態、キャビティの形態などは、電気機械変換機能を達成できる限り、自由である。また、本実施形態では、図1(b)に示す様に、素子104が素子用の基板上に4行4列に配置されているが、素子の配置の仕方や数なども本実施形態のものに限られず、所望の配置で所望の数だけ設ければよい。また、上部電極がメンブレン(振動膜)を兼ねる構成としてもよい。
【0015】
素子基板103と貫通配線基板102は、電極接続部である下部電極接続部112及び外枠接続部113を介して相互に固定され、且つ電気的に接続されている。図1(c)に示す様に、外枠接続部113は、外枠109上に形成され且つ閉じた環状に形成されている。また、図1(d)に示す様に、外枠接続部113は、貫通配線基板102上に形成され、ここでも閉じた環状になっている。下部電極接続部112及び外枠接続部113は同じ導電性の材料で構成されていることが好ましい。2つの接続部112、113を1回の接合工程で形成できるからである。
【0016】
貫通配線基板102には、素子基板103と接合する側の面から回路基板101側の面へと貫通する導電性部である複数の貫通配線117が形成されている。下部電極108の信号は、下部電極接続部112と、これに貫通配線117を介して電気的に繋がっているアンダーバンプメタル115とを経由して、回路基板101に伝わる。また、上部電極107の信号も、上部電極引き出し部118と外枠109と外枠接続部113と貫通配線117とアンダーバンプメタル115などを経由して回路基板101に伝わる。つまり、外枠109や外枠接続部113は、上部電極107と回路基板101とを電気的に接続する上部電極配線の役割を担っている。回路基板101は、信号を処理する処理回路(図示しない)と導電性部である電極パッド116で構成されており、回路基板101と貫通配線基板102とは、バンプ110により接合されている。
【0017】
貫通配線基板の貫通配線117は、素子基板との接合面から回路基板側の面へと貫通しているのが好ましい。仮に、貫通配線基板の素子基板との接合面に下部電極の配線を形成すると、外枠接続部113と重なってしまうからである。なお、貫通配線117の配置の仕方や数、径などは図1に示すものに限られず、所望の配置で所望の数だけ設ければよい。貫通配線117の材料としては、Al、Cr、Ti、Au、Pt、Cu、Ag、Fe、Ni、Coなどの金属のうちから少なくとも1種類を選んで用いることができる。貫通配線基板102は、絶縁性の材料から形成されるが、好ましくは、比誘電率が3.8以上10以下、ヤング率が5GPa以上、熱膨張率が素子基板103の熱膨張率の3倍以下であるとよい。比誘電率が3.8以上10以下であることにより、好ましい絶縁性が確保でき、ヤング率が5GPa以上であることにより、剛性が上がりより機械強度が向上する。また、熱膨張率が素子基板の熱膨張率の3倍以下であれば、作製工程中若しくは使用中の熱による電気機械変換装置の反りを低減させることができる。具体的には、素子用の基板すなわち下部電極108と外枠109をシリコン(熱膨張率:2.55〜4.33ppm/K)で作製した場合、中継基板である貫通配線基板102は硼珪酸ガラス(熱膨張率:3.2〜5.2ppm/K)を用いるのが好ましい。
【0018】
溝111は、貫通配線基板102と接合する側の面から支持部100の下表面まで形成されており、その形状(断面での形状)は特に限定されない。また、溝111は寄生容量を低減するために、真空若しくは気体で満たされるのが好ましい。気体としては空気が好ましく、窒素、アルゴンで満たされるのが特に好ましい。溝111の経時変化を小さくするためである。下部電極接続部112及び外枠接続部113の厚さは、基板の反りやゆがみによる接合不良を防止するために厚いほうが好ましい。ただし、下部電極接続部112及び外枠接続部113の加工のし易さを考慮した厚さであるのが好ましい。具体的には、100nm以上1000nm以下が好ましく、より好ましくは、200nm以上600nm以下の範囲である。
【0019】
下部電極接続部112の形状(断面形状)に制限はないが、素子104間の分離のため、下部電極108の断面形状より小さいのが好ましい。具体的には、正方形の場合、一辺の長さが10μm以上3000μm以下であるのが好ましく、より好ましくは、100μm以上2000μm以下、特に好ましくは、1000μm以上2000μm以下の範囲である。外枠接続部113の形状は、素子用の基板に形成された溝111にゴミなどが浸入するのを防ぐため、閉じた環状(形状は方形状、円環状等、種々可能である)であることが好ましい。また、外部接続部113と素子104の部分とを分離するため、外枠接続部113の幅は外枠109の幅以下であることが好ましい。本実施形態で用いられる下部電極接続部112や外枠接続部113としては、Zn、Ti、Au、Ag、Cu、Sn、Pbなどの金属のうちから少なくとも1種類を選んで用いることができる。
【0020】
この様な構造を持ったCMUTの動作原理について説明する。例えば、超音波を受信する場合、メンブレン105が変位し、上部電極107と下部電極108とのギャップが変化する。その静電容量の変化量を回路基板101の信号処理回路が検出し信号処理することにより超音波画像を得ることができる。また、超音波を発信する場合は、回路基板101より上部電極107或いは下部電極108に電圧を印加することによりメンブレン105を振動させ、超音波を発信する。本実施形態は、接合型(ボンティング型)やサーフィス型の方法などで作製できる。接合型の方法では、例えば、シリコン基板にキャビティを作成し、SOI基板を接合することでメンブレンを形成する(後述の実施形態2を参照)。サーフィス型の方法では、犠牲層の上にメンブレンを成膜し、後で犠牲層をエッチングすることによりキャビティを形成する。
【0021】
本実施形態によれば、素子基板と貫通配線基板との間を素子の集合体(所望数の素子)毎に塞ぐ外枠接続部113が封止材として機能し、素子104の分離のために設けた溝111内を空間に保ったまま封止すことが可能となる。よって、溝111に異物が混入するのを防ぐことができる。これにより、素子104間における絶縁破壊の確率を低減できる。また、溝111内を真空または気体で封止できるため、樹脂で充填する場合に比べて、寄生容量を低減することができる。また、電気機械変換装置の作製工程中、特にダイシングの工程で、削りカスなどが溝111に浸入するのを防げるため、素子104間における絶縁破壊の確率を低減することができる。ところで、貫通配線基板を省いて、素子基板を直接的に回路基板に接合することもできる。この場合、下部電極接続部112及び外枠接続部113を夫々回路基板の対応部分(電極パッド116など)に接合することになる。
【0022】
(実施形態2)
実施形態2は、素子基板と貫通配線基板とを外枠接続部及び下部電極接続部を介して接合したCMUTの製造方法に関する。本実施形態のプロセスフローを説明する図2は、説明のため、図1( a )の断面の部分で示しているが、他の素子の部分も同様に作製される。
【0023】
まず、素子用の基板であるSi基板208を用意する。Si基板208は、後に下部電極となるため、抵抗率の低いものが好ましい。本実施形態では、比抵抗0.02Ω・cm未満のSi基板208を用いる。Si基板208に、酸化膜221を形成する。そして、基板208の裏面にフォトリソグラフィーによりアライメントマーク201を形成する。アライメントマーク201は、レジストパターンをマスクとして酸化膜221をバッファードフッ酸(BHF)によりエッチングして形成する。その後、このレジストをアセトン及びイソプロピルアルコール(IPA)を用いて除去する。この状態が図2(A)に示される。次に、図2(B)に示す様に、キャビティを形成するため、アライメント形成用に成膜した酸化膜221をBHFにより除去する。
【0024】
次に、キャビティを形成するため、熱酸化により酸化膜222を形成する。更に、基板208の表面に、フォトリソグラフィーによりキャビティパターンのためのレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンをマスクとしてBHFにより酸化膜222をエッチングし、キャビティ202を形成する。Si基板208は、厚さが100μm以上625μm以下のものを用いるとよい。酸化膜222の厚さは、キャビティ202が形成される部分であるため、2μm以下が好ましい。この状態が図2(C)に示される。次に、キャビティ202の底面の絶縁を図るため、再びSi基板208を熱酸化する。これにより、酸化膜223を例えば厚さ1500Å形成する。本実施形態では、酸化膜222と酸化膜223とで支持部100(図1(a)参照)を形成する。この状態が図2(D)に示される。
【0025】
次に、メンブレンを形成するためにSOI基板224を接合する。接合工程は次の通りである。まず始めに、SOI基板224の接合表面であるデバイス層とSi基板208とをプラズマ処理する。プラズマの種類は、N、O、Arのうちのいずれかを選択する。次に、Si基板208とSOI基板224とを、オリフラ又はノッチを突き合わせて、位置合わせする。そして、真空チャンバー内で、例えば、温度300℃、荷重500Nの条件で接合する。この工程でキャビティ202が形成される。最後に、Si基板208の裏面に形成された酸化膜203をBHFでエッチング除去する。この状態が図2(E)に示される。
【0026】
次に、外枠接続部及び下部電極接続部を形成するため、素子基板の下部電極側及び貫通配線基板の素子基板側に、Ti/Auを夫々10nm/500nmの厚さ成膜する。そして、フォトリソグラフィー及びTiエッチャント及びAuエッチャントを用いて、外部接続部及び下部電極接続部の形状をしたTi/Auパターン203を形成する。この工程が、複数の下部電極に夫々繋がる複数の下部電極接続部と、複数の下部電極接続部の周りに沿って伸びて環状を成し外枠に繋がる外枠接続部とを形成する工程である。更に、素子分離のための溝を形成するために、Crを成膜し、外枠109及び下部電極108(図1(a)参照)の形状をしたCrパターン204をフォトリソグラフィー及びCrのウエットエッチングを用いて形成する。この状態が図2(F)に示される。次に、図2(G)に示す様に、Deep−RIEを用いてSi基板208をドライエッチングし、素子分離のための溝205を形成する。この工程が、素子用の基板に溝を形成し、外枠と複数の下部電極とを形成する工程である。
【0027】
次に、Si基板208と貫通配線基板206とをAu−Au接合し、外枠接続部216及び下部電極接続部217を形成しつつ両基板を接合する。Si基板208と貫通配線基板206を真空雰囲気ないし減圧雰囲気で接合することにより、溝205内を真空状態ないし減圧状態で封止することができる。図2(H)は、貫通配線基板206を接合した後の断面図である。この工程が、外枠接続部と複数の下部電極接続部とを介して素子用の基板と貫通配線基板とを接合する工程である。貫通配線基板206は、例えば、硼珪酸ガラス基板にサンドブラスト等によって予め貫通孔を形成し、貫通配線207が埋め込まれたものである。この際、貫通配線207の中心軸と素子104(図1(a)参照)の中心軸とが一致する様に位置合わせする。周知のアライメント装置(例えばEVG社製のEVG620)を用いれば、少なくとも±5μmの精度で位置合わせが可能である。
【0028】
次に、貫通配線基板206にアンダーバンプメタルを形成する。アンダーバンプメタルのパターンが形成された金属マスクを貫通配線基板206の全面に設置し、Ti/Cu/Auを蒸着により成膜する。これにより、図2(I)に示す様に、貫通配線基板206にアンダーバンプメタル209を形成することができる。次に、SOI基板224の支持基板層と埋め込み酸化膜層をエッチングにより除去する。例えば、SOI基板224の支持基板層はDeep−RIEにより、埋め込み酸化膜層はBHFにより夫々エッチング除去する。これにより、図2(J)に示す様に、メンブレン210を形成する。次に、上部電極引き出し部211を形成する。ここでは、メンブレン210の面にフォトリソグラフィーにより上部電極引き出し部のレジストパターンを形成する。そして、このレジストをマスクとして、CFガスやSFガスを用いたドライエッチングによりメンブレン210をエッチングする。同様に、レジストをマスクとして、CFガスやCHFガスを用いたドライエッチングにより支持部222、223をエッチングする。この状態が図2(K)に示される。
【0029】
次に、上部電極212を形成する。メンブレン210の面に、例えばAlを蒸着する。ここでは、Alが蒸着された面にフォトリソグラフィーにより上部電極のレジストパターンを形成する。そして、図2(L)に示す様に、このレジストパターンをマスクとしてAlをウエットエッチングする。
【0030】
次に、図2(M)の状態において、ダイシングにより基板からデバイスを切り出す。図2(M)のダイシング工程について、図3を用いて説明する。図3( a )は、図2(M)の工程における基板の上面図である。図3(b)は、C−C’断面図である。基板を矢印300の様にダイシングすると、ダイシングブレードは点線301を通過する。このとき、外枠接続部216の存在により、切削水が下部電極接続部217や溝205に侵入するのが防止される。最後に、貫通配線基板206と回路基板213とを接合する。接合には、例えば鉛フリーのハンダを用い、リフローによりハンダ付けをする。回路基板213の電極パッド214に、ハンダ粉とフラックスを混練したソルダーペーストを印刷する。そして、図2(N)に示す様に、回路基板213の電極パッド214とアンダーバンプメタル209とを位置合わせし、ハンダ215によって両基板を接合する。これにより、超音波の送受信の信号処理が可能となる。
【0031】
本実施形態の様に、素子基板と貫通配線基板とを閉じた環状の外枠接続部を介して接続することにより、外枠接続部が封止材として機能し、下部電極分離用の溝にゴミが混入するのを防ぐことができる。こうして、素子間における絶縁破壊が生じる確率を低減できる。また、溝内を真空ないし減圧空間状態に保つことができるため、素子間を樹脂で封止する場合に比べて、寄生容量を低減することができる。また、作製工程中のダイシング工程において、外枠接続部が切削水などの浸入を防ぐため、削りカスなどの混入を防ぎ、素子間において絶縁破壊が生じる確率を低減できる。
【符号の説明】
【0032】
101,213…回路基板(他の基板)、102,206…貫通配線基板(他の基板)、104…素子、107,212…上部電極(第2の電極)、108…下部電極(第1の電極)、109…外枠、111,205…溝、112,217…下部電極接続部(電極接続部)、113,216…外枠接続部、116,214…電極パッド(導電性部)、117,207…貫通配線(導電性部)、208…Si基板(素子用の基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙を挟んで対向して設けられた第1及び第2の電極を含むセルを少なくとも1つ夫々有する複数の素子と、前記複数の素子の外周に沿って伸びた外枠と、を含む電気機械変換装置であって、
前記複数の素子夫々の第1の電極は、素子用の基板を溝で電気的に分離して形成された複数の部分から夫々成り、
前記外枠は、前記複数の部分から前記溝で電気的に分離された、前記複数の部分の周りの前記素子用の基板の部分から成り、
前記複数の部分から夫々成る第1の電極は、複数の電極接続部を介して、他の基板の複数の導電性部に夫々接合され、
前記外枠は、前記複数の電極接続部の周りの環状の外枠接続部を介して、前記他の基板の対応部分に接合されていることを特徴とする電気機械変換装置。
【請求項2】
前記他の基板は、前記導電性部である貫通配線を複数有する貫通配線基板であることを特徴とする請求項1に記載の電気機械変換装置。
【請求項3】
前記他の基板は、当該電気機械変換装置を制御するための回路基板であることを特徴とする請求項1に記載の電気機械変換装置。
【請求項4】
前記電極接続部と前記外枠接続部とは同じ導電性の材料で構成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電気機械変換装置。
【請求項5】
前記外枠と前記第2の電極とは電気的に接続され、前記外枠は、前記環状の外枠接続部の導電性部を介して、前記他の基板の対応部分の導電性の部分に接合されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電気機械変換装置。
【請求項6】
前記溝は真空若しくは気体で満たされていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電気機械変換装置。
【請求項7】
間隙を挟んで対向して設けられた第1及び第2の電極を含むセルを少なくとも1つ夫々有する複数の素子が設けられる基板であり前記複数の素子の外周に沿って伸びた外枠を有する素子用の基板に、他の基板を接合する電気機械変換装置の作製方法であって、
素子用の基板に溝を形成し、外枠と複数の第1の電極とを形成する工程と、
前記複数の第1の電極に夫々繋がる複数の電極接続部と、前記複数の電極接続部の周りに沿って伸びて環状を成し前記外枠に繋がる外枠接続部とを形成する工程と、
前記外枠接続部と複数の電極接続部とを介して前記素子用の基板と前記他の基板とを接合する工程と、
を含むことを特徴とする電気機械変換装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−109358(P2011−109358A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261592(P2009−261592)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】