説明

電気炉へのスクラップ装入用バケット

【課題】 補巻きワイヤーのクレーンの巻き上げにより、バケットの振れによる傾きで、バケットの装入スクラップがバケットの底蓋から電気炉外に落下することなく、電気炉中に確実に落下させるクラムシェル型スクラップ装入用バケットを提供する。
【解決手段】 バケット胴部1aの主巻きワイヤー吊下具2bの取付用突起2aの側部に補巻きワイヤー挿通部3bを設け、取付用突起2aの直下の底蓋4の外周部に補巻きワイヤー取付部3aを設け、主巻きワイヤー吊下具2bに主巻きワイヤー2を係止すると共に補巻きワイヤー3を補巻きワイヤー挿通部3bに通して補巻きワイヤー取付部3aに係止し、補巻き側のバケット胴部1aの下方内壁1cに開口部4aに向けて傾斜した落下誘導用の仕切板5を配設し、胴部1aに底蓋4を開閉用のヒンジ・ジョイント4cを設けた電気炉6へのスクラップ装入用のクラムシェル型スクラップ装入用バケット1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製鋼用の電気炉へ原料スクラップを装入するためのスクラップ装入用バケットに関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼用の電気炉へ原料スクラップを装入するためのバケットは、クラムシェル型のスクラップ装入用バケット1から形成されている。このクラムシェル型スクラップ装入用バケット(以下、「バケット」という。)1は、図5ように、バケット本体の円筒状の胴部1aと、この胴部1aの開放された下部に図6の(a)に示すヒンジ・ジョイント4cにより図6の(b)に示すように中央部で分かれて両側に開く2枚の底蓋4を有し、この底蓋4を閉じてスクラップ7をバケット1に装入するようになっている。
【0003】
このバケット1はバケット本体の円筒状の胴部1aの外周壁の両側の対称位置の主巻き吊下具2bに係合の主巻きワイヤー吊下具2bを上方の天井クレーン8から主巻きワイヤー2により吊り下げ、原料のスクラップ7などの装入材を電気炉6の直上に搬送する。また主巻き吊下具2bの側部に補巻きワイヤー3の補巻きワイヤー挿通部3bを有する。さらに主巻きワイヤー吊下具2bの取付用突起2aの直下部のバケット胴部1aの下部の外周壁側に位置する底蓋4の端部に、補巻きワイヤー3の補巻きワイヤー取付部3aを有し、補巻きワイヤー3を係止している。
【0004】
このバケット1にスクラップ7を装入し、該バケット1の主巻きワイヤー吊下具2bを天井クレーン8で吊って電気炉6の上に搬送し、図7に示すように、電気炉6上で天井クレーン8によりバケット1の補巻きワイヤー3を巻き上げてバケット1の下部の底蓋4を開くとき、補巻きワイヤー3に引張られてバケット1は補巻きワイヤー3側に振れて傾く。このためにバケット1の積み荷のスクラップ7が振れて傾くことで、バケット1に装入されている補巻きワイヤー取付部3a側にあるスクラップ7が電気炉6の中に落下せず、電気炉6の外に落下する事態が発生することとなる。
【0005】
従来の原料を電気炉に装入するためのバケットは、底蓋が中央で2つ割りになっており、スクラップの電気炉への装入は、起重機の補巻きにより、底蓋を開いて行われることが記載されている(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、これは一般的なクラムシェル型の原料のスクラップ7を装入するためのバケット1が記載されているに過ぎず、上記のスクラップ7が電気炉6の外に落下する事態は解決されていないものである。
【0006】
【非特許文献1】鉄鋼便覧第3版第2巻2編、丸善出版、p.1770〜1771/6845
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の装置では、クラムシェル型スクラップ装入用バケットの左右の底蓋を開くとき、バケットの中心から少し横にずれた補巻きワイヤー挿通部が天井クレーンにより引張り上げられる結果、補巻きワイヤー挿通部側にバケットが振れて傾くこととなる。その結果、開口部の向きが補巻き側である外方に向くこととなるので、スクラップが電気炉の外に向かって落下する。
【0008】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、クラムシェル型スクラップ装入用バケットの補巻きワイヤーのクレーンによる巻き上げによって、バケットの振れによる傾きが生じた場合でも、補巻きワイヤーの巻き上げ時にバケットに装入されているスクラップが開放されたバケットの底の開口部から電気炉の周囲に外れて落下することなく、直下の電気炉の中に確実に落下するものとしたクラムシェル型スクラップ装入用バケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、クラムシェル型スクラップ装入用バケットにおいて、バケット胴部の側壁上部に配設の主巻きワイヤー吊下具の側部に補巻きワイヤー挿通部を配設し、主巻きワイヤー吊下具の直下の底蓋の外周部に補巻きワイヤー取付部を設けている。さらに、この主巻きワイヤー吊下具には主巻きワイヤーを係止して天井クレーンから吊り下げ、一方、補巻きワイヤーを補巻きワイヤー挿通部に挿通して下方の補巻きワイヤー取付部に補巻きワイヤーを係止している。さらに、補巻き側のバケット胴部の下方内壁に下方中心側の開口部に向けて傾斜した落下誘導用の仕切板を配設して、電気炉へのスクラップ装入用のクラムシェル型スクラップ装入用バケットとなっている。このように、本発明の手段では、天井クレーンに主巻きと補巻きの二つのワイヤーがついているがバケット本体を主巻きワイヤーで吊り、底蓋を補巻きワイヤーで引っ張り上げて開閉する仕組みとなっている。
【0010】
さらに、上記のクラムシェル型スクラップ装入用バケットでは、補巻き側のバケット胴部の下方内壁に下方中心側の開口部に向けて傾斜した落下誘導用の仕切板を設けているが、この仕切板は内壁面から30〜40°傾斜して配設されている。このように仕切板の傾斜角度が30°未満では、仕切板の効果は十分でなく、仕切板側のスクラップは落下時に仕切板側に斜めに落下して電気炉の外に落下するものが生じ、また40℃を超えると、仕切板側のスクラップは仕切板の反対側のスクラップよりも遅れて落下する。そこで、30〜40°として電気炉から外れることなく、一斉に電気炉中に的確に落下できる。スクラップは、通常0超〜100kgであるが、これらのスクラップが電気炉の外に落下すると、軽いスクラップの場合は塩基炉の操業が阻害されることは少ないが、重量のあるスクラップの場合は電気炉の操業が阻害される恐れがある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の手段のクラムシェル型のスクラップ装入用バケットとしたことで、バケットによりスクラップを電気炉に装入する際に、スクラップを電気炉に的確に落下させて装入でき、電気炉の外側に誤って落下することがなくなり、電気路外へのスクラップの落下による操業阻害を大幅に減少することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1に示すクラムシェル型スクラップ装入用バケット1の外観は従来のクラムシェル型スクラップ装入用バケット1と同様である。すなわち、円筒状のバケット胴体1aと、その下部の底蓋4からクラムシェル型スクラップ装入用バケット1を形成している。このバケット1は天井クレーン8から主巻きワイヤー2と補巻きワイヤー3で吊り下げられ、原料のスクラップ8を原料置き場から電気炉6に搬送する。
【0013】
この下部の底蓋4は、図2の(a)に見られるように、中心部で左右に開口する左右2枚の底蓋4、4からなっており、各底蓋4の上端には、ヒンジ・ジョイント4cでバケット胴体1aの下端側で回動可能に係合されている。これらの底蓋4、4は、図4に示すように、ヒンジ・ジョイント4cにより左右に回動して開口部4aがバケット胴体1aの下部に形成され、内部に有するスクラップ7が下方に落とされる。
【0014】
図2により、バケット胴体1aの内部に本発明の手段の仕切板5を設けたクラムシェル型スクラップ装入用バケット1について説明する。図2の(a)は主巻きワイヤー吊下具2bを係合する取付用突起2aの手前のバケット1の側壁上部1bに補巻きワイヤー3を挿通する補巻きワイヤー挿通部3bを設け、主巻きワイヤー吊下具2bの取付用突起2aの直下の底蓋4の上端の補巻きワイヤー取付部3aに補巻きワイヤー3を係止し、左右の底蓋4はヒンジ・ジョイント4cで開閉可能に支持されたバケット1である。図2の(b)の平面図、および、そのA−A切断の側面から見た図2の(c)の切断端面図に示すように、このバケット1の大きさは、バケット胴部1aの径をLとして比で示すと、バケット胴部1aの高さは0.89Lで、バケット胴体1aからの仕切板5の開口幅はで0.11Lで、その時の仕切板5の高さは0.19Lである。また、バケット胴体1aに対する仕切板5の開口角度は内壁面1dから略35°で傾斜して設けられている。この仕切板5は、図2の(b)に示すように、主巻きワイヤー吊下具2bの取付用突起2aから90°回転した位置で、補巻きワイヤー挿通部3b側のバケット胴部1aの内壁面1dの下部に傾斜状で取り付けられている。また仕切板5の形状は円弧状に限定されず、上下から見て開口部を覆い隠していればよく、例えば一辺のみ円弧状である略直方体であってもよい。
【0015】
この実施の形態の内壁面1dに仕切板5を有するクラムシェル型スクラップ装入用バケット1の使用状態を説明すると、図1に示す状態で、原料置き場でスクラップ4を内部に取り込んだケット1を、天井クレーン8で主巻きワイヤー吊下具2bにより吊り下げて運び、電気炉6の上に到達すると、図3の(a)に示すように、補巻きワイヤー3を上方に引いて底蓋4を開口し始める。この図3の(a)の状態では、補巻きワイヤー3は上方へ引きはじめであるので、バケット1はまだ傾斜していない。しかし、補巻きワイヤー3をさらに上方へ引き上げると、図3の(b)に示すように、バケット胴部1aは取付用突起2aを中心に回動して傾斜し、底蓋4の開口部4aが大きく開口すると、仕切板5の側が上方に持ち上がった状態となった。そしてバケット1内のスクラップ7が下方に落下した。この場合、仕切板5の側のスクラップ7は仕切板5により、中心側に寄せられることとなる結果、スクラップ7は垂直に電気炉6に落下し、電気炉6の外に誤って落下するものは大幅に減少した。
【0016】
すなわち、スクラップ7の電気炉6の外への落下による操業阻害の件数の推移を示すと、従来の仕切板5を有しないバケット1の場合は、平均9件/月であったが、本願発明の仕切板5を設けたバケット1の場合は平均3件/月となった。さらに、軽いスクラップ7は斜めに落下して電気炉6の外へ落下しやすいが、この軽量のスクラップ7で外に落下したものは、従来の仕切板5を有しないバケット1の場合は、約60%であったが、本願発明の仕切板5を設けたバケット1の場合は約30%に減少した。
【0017】
以上のように、本発明のクラムシェル型スクラップ装入用バケット1では、バケット胴部1a内に落下誘導用の仕切板5を有するので、底蓋4を開いたバケット1の内部からスクラップ7の落下するタイミングを、仕切板5を設置していないクラムシェル型スクラップ装入用バケット1よりも、遅らすことができ、バケット1の主巻き側にあるスクラップ7と補巻き側にあるスクラップ7を一斉に同時に電気炉6内に落下させることができる。その結果、バケット1がスクラップ挿入時に斜めに触れて傾くために生じる補巻き側のスクラップ7の電気炉6外への落下が的確に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のクラムシェル型スクラップ装入用バケットの模式図で、(a)は主巻きおよび補巻きを側部として底蓋を閉じた正面図、(b)は平面図、(c)は(b)のA−A切断端面図である。
【図2】本発明のクラムシェル型スクラップ装入用バケットの主巻きを左側とし、補巻きを右側として正面から見た模式図である。
【図3】本発明の電気炉中にクラムシェル型スクラップ装入用バケットからスクラップを装入する状態を模式的に示し、(a)は装入前の図で、(b)は装入状態を示す図である。
【図4】本発明のクラムシェル型スクラップ装入用バケットの底蓋を開いた状態を示す模式図である。
【図5】従来のクラムシェル型スクラップ装入用バケットの主巻きを左側とし、補巻きを右側として正面から見た模式図である。
【図6】従来のクラムシェル型スクラップ装入用バケットの主巻きを左右端とし、補巻きを手前の左右として見た模式図である。(a)は底蓋を閉じた図で、(b)は底蓋を開いた図である。
【図7】従来のクラムシェル型スクラップ装入用バケットからスクラップを電気炉中に装入する状態を示す模式図で、(a)は装入前の図で、(b)は装入状態を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1 クラムシェル型スクラップ装入用バケット
1a バケット胴部
1b 側壁上部
1c 下方内壁
1d 内壁面
2 主巻きワイヤー
2a 取付用突起
2b 主巻きワイヤー吊下具
3 補巻きワイヤー
3a 補巻きワイヤー取付部
3b 補巻きワイヤー挿通部
4 底蓋
4a 開口部
4b 外周部
4c ヒンジ・ジョイント
5 仕切板
6 電気炉
7 スクラップ
8 天井クレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラムシェル型スクラップ装入用バケットにおいて、バケット胴部の側壁上部に配設の主巻きワイヤー吊下具の側部に補巻きワイヤー挿通部を配設し、主巻きワイヤー吊下具の直下の底蓋の外周部に補巻きワイヤー取付部を設け、主巻きワイヤーを主巻きワイヤー吊下具に係止し、補巻きワイヤーを補巻きワイヤー挿通部を通して補巻きワイヤー取付部に係止し、補巻き側のバケット胴部の下方内壁に下方中心側の開口部に向けて傾斜した落下誘導用の仕切板を配設したことを特徴とする電気炉へのスクラップ装入用のクラムシェル型スクラップ装入用バケット。
【請求項2】
クラムシェル型スクラップ装入用バケットにおける補巻き側のバケット胴部の下方内壁に下方中心側の開口部に向けて傾斜した落下誘導用の仕切板は内壁面から30〜40°傾斜して配設されていることを特徴とする請求項1に記載のクラムシェル型スクラップ装入用バケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−151397(P2008−151397A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339272(P2006−339272)
【出願日】平成18年12月16日(2006.12.16)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】