説明

電気炉集塵機システムの制御方法

【課題】 効率的な集塵能力を確保すると共に過剰な集塵作用を防止することにより集塵に付帯する電力原単位を低減する。
【解決手段】 電気炉からの粉塵を含有する排ガスを燃焼塔に吸引し、燃焼塔の上部に接続した集塵ファンF8で吸引される排ガスダクトと電気炉から漏洩の粉塵を含有する建屋内の排ガスを集塵して排出する一方の建屋集塵ダクトとを合流させてバッグフィルターで除塵して集塵ファンF9で吸引排出し、さらに上記燃焼塔の下部に接続した排ガスダクトを他方の建屋集塵ダクトに合流させて集塵ファンF6で吸引し、この吸引した排ガスをさらに主である建屋集塵ダクトに合流させて集塵ファン7で吸引してバッグフィルターで除塵し、かつ、電気炉から燃焼塔を経た電気炉排ガスの温度と集塵機に吸引する集塵量に基づき上記の各ダクトの集塵ファンの回転数を制御して集塵する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気炉集塵機システムの制御方法に関し、特に電気炉からの排出ガスとその粉塵および建屋内の粉塵とを合せた排ガスおよび粉塵を効率よく制御して希釈化および低温化して排出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気炉によるスクラップの溶解および精錬において、電気炉から燃焼塔を経て集塵される排ガスの直引集塵は必要不可欠である。しかし、電気炉内で発生する排ガスを無害化するため、電気炉から燃焼塔を経て集塵される排ガスの直引集塵した粉塵および建屋から集塵した粉塵を合流して処理する集塵システム(以下、「直引・建屋合流集塵システム」という。)を採用し、電気炉から燃焼塔を経て集塵される排ガスを希釈化すると共に低温化を行なっている。この場合、効率的な集塵能力を確保すると共に過剰な集塵作用を防止して集塵に付帯する電力原単位を低減させる必要がある。
【0003】
従来の電気炉からの排ガスの集塵法方法では、(1)一部バイパスラインで電気炉からの直引排ガスと建屋内の排ガスを合流する合流型の集塵システムの直引・建屋合流集塵システムを採用していた(例えば、特許文献1参照。)。しかし、直引排ガスを利用したスクラップ予熱装置のSPHラインでは直引・建屋合流集塵システムは行われていなっかった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−210786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気炉集塵システムにおいて、集塵用ダクトの全ラインで直引・建屋合流型集塵システムを採用することにより、電気炉内で発生する塩基性排ガスを無害化することが可能となる。しかし、この全ラインの直引・建屋合流型集塵システムを設置する場合、大容量の建屋系集塵機が必要となる。そこで効率的な集塵能力を確保すると共に過剰な集塵作用を防止することにより集塵に付帯する電力原単位を低減させる必要がある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、スクラップの溶解および製鋼用の電気炉の集塵システムにおいて、電気炉内で発生する排ガスを直接吸引する直引集塵機とこの電気炉設置の建屋内における浮遊粉塵を集塵する建屋集塵機のそれぞれのダクトを合流させ、電気炉で発生する排ガスを希釈および低温化することにより無害化する合流型集塵システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の手段は、電気炉におけるスクラップ溶解および製鋼から発生する排ガスのダクトおよび建屋内の粉塵吸引するダクトに設置の各集塵ファンにより最適な風量で吸引するために、電気炉排ガスおよび建屋排ガスに含有される粉塵量とその排ガス温度に基づいて各ダクトの集塵ファンの回転数を最適に制御して集塵する。この場合、このモーターの回転数の制御は、電気炉排ガスの温度と集塵機からの粉塵量を監視し、それらの値を集塵ファンの回転数を制御する制御機構にフィードバックして各ダクトの集塵ファンのモーターの回転数をインバータ制御する方法である。
【0008】
すなわち、上記の課題を達成する本発明の手段は、請求項1の発明では、電気炉からの粉塵を含有する排ガスを燃焼塔に吸引し、燃焼塔の上部に接続した集塵ファンF8で吸引される排ガスダクトと電気炉から漏洩の粉塵を含有する建屋内の排ガスを集塵して排出する一方の建屋集塵ダクトとを合流させてバッグフィルターで除塵して集塵ファンF9で吸引排出し、さらに上記燃焼塔の下部に接続した排ガスダクトを他方の建屋集塵ダクトに合流させてこれらの排ガスを集塵ファンF6で吸引し、これらの吸引した排ガスをさらに主である建屋集塵ダクトに合流させて集塵ファンF7で吸引してバッグフィルターで除塵し、かつ、電気炉から燃焼塔を経た電気炉排ガスの温度と集塵機に吸引する集塵量に基づき上記の各ダクトの集塵ファンの回転数を制御して集塵することを特徴とする電気炉で発生する排ガスの希釈化および低温化方法である。
【0009】
請求項2の発明では、各ダクトの集塵ファンの回転数を制御は、電気炉排ガスの温度と集塵機からの集塵量を監視してそれらの値を各集塵ファンのモーターの回転数を制御する制御機構にフィードバックして各モーターの回転数をインバータ制御することを特徴とする請求項1の手段の電気炉で発生する排ガスの希釈化および低温化方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記の手段とすることで、大容量の建屋系集塵機を必要とすることなく電気炉および電気炉建屋における効率的な集塵能力を確保すると共に、過剰な集塵作用を防止することにより、作業環境を改善し、さらに、これらの集塵装置に付帯する電力原単位を従来の大容量の建屋系集塵機における排ガス装置に比して低減できるなど、本発明は優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の最良の実施の形態を、図および表を参照して以下に説明する。本発明の方法は、図1に示すように、直引・建屋合流型集塵システムを採用した方法で、従来の方法を改良して実施したものである。図2に示す従来の方法において、集塵ファンF3と、集塵ファンF4と、集塵ファンF5を共に休止した。一方、図1に示すように、電気炉EFから燃焼塔CTを通り、燃焼塔CTの上部から排ガスをスクラップ予熱用のSPH装置のラインに導き、ガスクーラーGCを経て新設のブースターの集塵ファンF8のラインに通し、さらに、このラインに建屋内に設置の電気炉EFの電極口などから漏洩して建屋内に浮游した粉塵を含む排ガスを集塵した建屋排ガスと合流させ、温度計およびダストモニターを介して新設のバッグフィルターB/Hを通して新設の合流ファンF9で吸引して排気筒から除塵後の排ガスを排出する。さらに、電気炉EFから燃焼塔CTを通り、燃焼塔CTの下部から排出した排ガス中の集塵と同じく建屋集塵の他の一部の排ガスを合わせて集塵する集塵ファンF6からのラインを、さらに建屋集塵のメインダクトのラインに加えて合流させ、合流したこれらの排ガスを温度計およびダストモニターを経て集塵ファンF7で吸引し、粉塵をその後方のバッグフィルターB/Hに集塵する本発明の手段におけるものに改変した。
【0012】
すなわち、本発明の方法は、図1に示すように、ブースター用のファンとして2000Nm3/min以上の能力をもつ集塵ファンF8および10000Nm3/min以上の能力をもつ合流用の集塵ファンF9を新設する。一方、同様に2000Nm3/min以上の能力をもつ集塵ファンF6をバイパスラインにより建屋集塵ラインの10000Nm3/min以上の能力をもつ集塵ファンF7に合流させて合流型とした。
【0013】
さらに本発明の方法を詳細に説明すると、電気炉EFからの排ガスを2次燃焼させる燃焼塔CTの排ガスラインの後方に、スクラップ予熱装置SPHのラインを選択的に付設し、その後方にガスクーラーGCを新設し、さらにその後方に既設のガスクーラーGCを選択的に配設した。さらに上記のブースター用の集塵ファンF8のラインを配設し、その後方の建屋集塵からのラインを合流させ、これらの後方に新設の温度計とダストモニターを設け、さらに新設のバッグフィルターB/Hで除塵し、その後方に新設の合流ファンとして集塵ファンF9を設けて除塵した排気を排気塔から放出するものとした。さらに、集塵ファンF6のラインと建屋集塵のラインを合流した後、その後方のラインに温度計およびダストモニターを新設した。この合流ファンの集塵ファンF9は10000Nm3/min以上の能力を持つ大容量の集塵機からなるものとした。さらにこれらの集塵機の効率的な集塵と過剰集塵の防止を実現させるために、各集塵機の集塵ファンのモーターをインバータ化し、速い応答性能で各集塵機のモーターの回転数をコントロールできるようにして操業パターン制御するものとした。
【0014】
このために各集塵機のファンのモーターの回転数をコントロールする制御変数は、排ガス中の粉塵量と温度によるものとし、そのために吸引した粉塵を含有する排ガスの温度を測定する温度計と粉塵量を測定する超音波計測式のダストモニター上記のように合流後のラインに設置し、各集塵機の集塵ファンのモーターの制御機構にフィードバックした。
【0015】
このように直引集塵機の操業パターン制御とダクトからなる集塵ラインの温度監視とダストモニター監視とによる直引集塵機および建屋集塵機の各集塵ファンのモーターの回転数の制御をダクト中の排ガス温度に応じて建屋集塵ファンのモーターの回転数をコントロールし、それぞれインバータ制御により効率的に行うことにより、各集塵機に付帯する電力原単位を低減させている。
【実施例1】
【0016】
本発明の方法の運転方案を図3の電気炉操業パターンと図4の集塵機パターンにより説明する。図3は電気炉EFで使用する炉前酸素と助燃バーナーとして機能しているガスバーナーGBの各操業時期による使用状況およびスクラップ予熱装置SPHの使用状況を示している。図3で示した操業状況に応じて、各集塵機の実際の集塵ファンのモーターの制御パターンを図4に示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の方法における電気炉からの直引集塵および建屋集塵のフローを示す図である。
【図2】従来の方法における電気炉からの直引集塵および建屋集塵のフローを示す図である。
【図3】電気炉操業パターンを示す図である。
【図4】図3の電気炉操業パターンに同期する集塵機パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0018】
EF 電気炉
CT 燃焼塔
GB ガスバーナー
F3 集塵ファン
F4 集塵ファン
F5 集塵ファン
F6 集塵ファン
F7 集塵ファン
F8 集塵ファン
F9 集塵ファン
SPH 予備スクラップ加熱装置
GC ガスクーラー
B/H バッグフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炉からの粉塵を含有する排ガスを燃焼塔に吸引し、燃焼塔の上部に接続した集塵ファンF8で吸引される排ガスダクトと電気炉から漏洩の粉塵を含有する建屋内の排ガスを集塵して排出する一方の建屋集塵ダクトとを合流させてバッグフィルターで除塵して集塵ファンF9で吸引排出し、さらに上記燃焼塔の下部に接続した排ガスダクトを他方の建屋集塵ダクトに合流させてこれらの排ガスを集塵ファンF6で吸引し、これらの吸引した排ガスをさらに主である建屋集塵ダクトに合流させて集塵ファンF7で吸引してバッグフィルターで除塵し、かつ、電気炉から燃焼塔を経た電気炉排ガスの温度と集塵機に吸引する集塵量に基づき上記の各ダクトの集塵ファンの回転数を制御して集塵することを特徴とする電気炉で発生する排ガスの希釈化および低温化方法。
【請求項2】
各ダクトの集塵ファンの回転数を制御は、電気炉排ガスの温度と集塵機からの集塵量を監視してそれらの値を各集塵ファンのモーターの回転数を制御する制御機構にフィードバックして各モーターの回転数をインバータ制御することを特徴とする請求項1に記載の電気炉で発生する排ガスの希釈化および低温化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−64434(P2008−64434A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246149(P2006−246149)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】