説明

電気炊飯器及び炊飯方法

【課題】調理時に被調理物から生じるおねば等を被調理物が入れられる容器内に効果的に戻すことができ、更に衛生的な調理器を提供する。
【解決手段】被調理物が投入される容器7と、容器7が収容される開口部及び容器7内の被調理物を加熱する加熱手段5を有する調理器本体2と、調理器本体2の一側に枢支されて開口部を覆う上蓋10と、を備える調理器1であって、上蓋10は、容器7を閉塞する内蓋11と、開口部全体を閉塞する外蓋12と、を備え、内蓋11の下面には、所定の深さを有し、底部上面に形成された受容部と底部に分散して形成された分散孔8bとを備える有底の受け皿8が取り付けられ、受け皿8の内面にはシール部材が取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器に係り、特に、調理中に生じた被調理物の旨み成分を含有する吹きこぼれ成分を効果的に鍋内に戻しつつ余分な蒸気だけを外部に逃がす調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
調理器、例えば炊飯器は、容器内に米と水とからなる被炊飯物を投入し、この容器内の被炊飯物を加熱して炊飯するもので、特に圧力調理器の場合にはこの容器内の被炊飯物を加熱すると共に容器内を昇圧して炊飯するため、炊飯時は、容器内が高温で内圧が高くなっている。
【0003】
従来、炊飯器には、炊飯の加熱工程時に生じる蒸気を外部へ逃がすため、蒸気の排出部が備えられている。この加熱工程時には容器内が沸騰し、被炊飯物から粘り気のある糊状の汁が発生する。この汁はおねばと呼ばれる旨み成分であり粘りと甘みが引き出されたでんぷん膜であるが、このおねばが沸騰とともに上昇し蒸気とともに外部へ排出され吹きこぼれてしまうおそれがあった。このような現象は、炊飯の場合だけでなく、各種材料の調理の場合においても同様に生じる。
【0004】
そこで、このようなおねばに代表される吹きこぼれ成分(以下、単に「おねば」ということがある。)を貯留する貯留タンクを備えることとして、おねばが蓋体の外部に吹きこぼれる事態を予防しかつ余分な蒸気のみを排出させ、加熱工程終了後には負圧により前記貯留タンクに溜められたおねばを鍋内に戻すことができる炊飯器が出てくるようになった。
【0005】
例えば、図9は下記特許文献1に記載された炊飯器の吹きこぼれ防止構造を表す炊飯器の蓋体の部分断面図を示している。
【0006】
図9に示すように、蓋体101に形成した蒸気排出路により外部への吹きこぼれを防止するようにした炊飯器100の吹きこぼれ防止構造において、前記蒸気排出路は、蓋体101の内面に穿設される蒸気孔102及びおねば戻し孔103と、該蒸気孔102及びおねば戻し孔103を介して侵入する蒸気及びおねばを上方に向かって案内する上方案内筒部104と、前記上方案内筒部104の外周に位置し、該上方案内筒部104を上昇する蒸気及びおねばをさらに下方に向かって案内する下方案内筒部105と、蓋体101の外壁部106に穿設された蒸気排出孔107と、前記上方案内筒部104の外周に形成され、前記下方案内筒部105によって案内された蒸気を前記蒸気排出孔107に導く蒸気通過室108とを備え、前記上方案内筒部104の側壁に開口部109を形成すると共に、該開口部109から上方案内筒部104の法線方向に対して傾斜するリブ110を形成した構成が示されている。
【0007】
この構成によれば、内部で発生した蒸気及びおねばの殆どは、蒸気孔102及びおねば戻し孔103を介して上方案内筒部104を上昇し、下方案内筒部105によって上方案内筒部104の外方を降下する。また、内部で発生した蒸気の一部は、上方案内筒部104に形成した開口部を介して外方に吹出し、リブ110にガイドされながら円周方向に向かう。この円周方向に向かう蒸気は、前記上方案内筒部104の外方を降下するおねばに衝突して掻き乱し、その泡径を小さくすると共に、蒸気通過室108で円周方向に回転させて蒸気排出孔107からの排出を防止することができる。
【0008】
また、図10は下記特許文献2に開示された炊飯器の縦断面図を示している。
【0009】
図10(a)に示す炊飯器は、内釜を収容する炊飯器本体201と、この炊飯器本体201の開口部を開閉する蓋体202と、前記炊飯器本体201内に収容される有低筒状の内釜203と、前記内釜203を加熱する加熱手段と、前記蓋体202に設けられた前記内釜203と連通する連通穴204に、着脱自在に装着される蒸気口ユニット205を備え、前記蒸気口ユニット205は、図10(b)に示すように下ケース206と、この下ケース206と嵌合する上ケース207と、この上ケース207と前記下ケース206を開閉自在に軸支したヒンジ部208と、係止突起209aを有する係止片209bと、この係止片209bを回転可能に支持する回転軸210と、前記上記上ケース207を上側から押圧したときに前記係止突起209aに係合する係合部211とを備え、前記ヒンジ部208に対向して前記下ケース206と前記上ケース207を係止するロック機構212と、前記下側の前記ロック機構212近傍に前記蓋体202の連通穴204に挿入する突出部とを備えたものである。
【0010】
この炊飯器は、連結部内において案内筒の後部側に形成されたおねばが溜まる溜り凹部213を有しているが、これは、下ケース206の底部が傾斜しておりその下降した先に形成されている。この溜り凹部213の底部には開口部214が設けられ、その周縁部には蒸気口ユニット205内と内蓋202aの蒸気孔202a1を介して内釜203と連通する複数のおねば戻し穴215が設けられており、このおねば戻し穴215は開口部214に上下動可能に設けられた開閉弁216により開閉される。加熱工程後、加熱が停止して内釜203内の内圧が低下すると、開閉弁216は、自重及びおねばの重量によって下降しおねば戻し穴215を開口する。
【0011】
これにより、溜り凹部213内に溜ったおねばは、おねば戻し穴215から内蓋に設けた蒸気孔を介して内釜203内に落下する。おねばが内釜203内のご飯に戻ることにより、おねばに含まれるおいしさの成分がご飯に与えられて、つやや粘りのあるおいしいご飯を炊くことができる。
【特許文献1】特開平11−18930号公報(段落[0010]、[0011])
【特許文献2】特許第3820541号公報(段落[0010]、[0017]、[0032]、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1及び2に記載の炊飯器によると、上記おねば戻し孔(穴)を介して、貯留されたおねばは炊飯器の釜内に戻されることで旨み成分をご飯の表面に付着させることができる。
【0013】
しかし、これらの炊飯器ではおねば戻し孔が所定範囲に限られており、被炊飯物全体におねばが行き渡らず被炊飯物の一地点に落下していた。したがって、おねば戻し孔が設けられた部分と設けられていない部分とでは被炊飯物の旨み成分を含む部分や含水率にムラがあった。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、調理時に被調理物から生じるおねば等を被調理物が入れられる容器内に効果的に戻すことができ、更に衛生的な調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明は、被調理物が投入される容器と、前記容器が収容される開口部及び前記容器内の被調理物を加熱する加熱手段を有する調理器本体と、前記調理器本体の一側に枢支されて前記開口部を覆う蓋体と、を備える調理器であって、前記蓋体は、前記容器を閉塞する内蓋と、前記開口部全体を閉塞する外蓋と、を備え、前記内蓋の下面には、所定の深さを有し、底部上面に形成された受容部と底部に分散して形成された分散孔とを備える有底の受け皿が取り付けられ、前記受け皿の内面にはシール部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の調理器において、前記受け皿には、前記被調理物から発生する蒸気の水滴が残留し、前記シール部材は、前記蓋体の開閉動作によって前記水滴が前記受け皿から流れ出すのを防止することを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に記載の調理器において、前記受け皿には、前記被調理物から発生するおねばが残留し、前記シール部材は、前記蓋体の開閉動作によって前記おねばが前記受け皿から流れ出すのを防止することを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載の調理器において、前記受け皿の外周には、前記受け皿を前記内蓋に取り付けるための取付部が設けられ、前記シール部材は、少なくとも、前記蓋体を前記調理器本体に枢支するヒンジ機構側にある前記取付部の内側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、調理器本体の蓋体の内蓋には、所定深さを有する有底の受け皿が取り付けられており、この受け皿には底部上面に形成された受容部と底部に分散して形成された分散孔とが形成されている。このため、炊飯工程において発生する旨み・美味しさの素である「おねば」や蒸気の水滴を受容部で受けた後、複数の分散孔を通じてシャワー状に分散して被調理物の表面のほぼ全域に戻すことができる。そして、受け皿の内面にはシール部材が取り付けられているので、蓋体の開放時におねば等が受け皿から流れ出すのを防止でき、調理器の洗浄しにくい部分に古いおねばが溜まって非衛生的になる事態を防ぐことができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、被調理物から発生する蒸気の水滴が蓋体の開放時に受け皿から流れ出すのを防止できるので、調理器の洗浄しにくい部分に古い水滴が溜まって非衛生的になる事態衛を防止できる。
【0021】
請求項3の発明によれば、被調理物から発生するおねばが蓋体の開放時に受け皿から流れ出すのを防止できるので、調理器の洗浄しにくい部分に古いおねばが溜まって非衛生的になる事態衛を防止できる。
【0022】
請求項4の発明によれば、シール部材が、少なくとも、蓋体を調理器本体に枢支するヒンジ機構側にある取付部の内側に設けられている。このため、おねば等が、蓋体の開放時にヒンジ機構側に設けられる受け皿の取付部の隙間に入り込むのを効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための調理器を例示するものであって、本発明をこの調理器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例】
【0024】
図1は本発明の実施形態に係る調理器の縦断面図である。図2は図1の調理器に取り付けられたおねば受け皿の一実施形態を示した図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は平面図、図2(c)は底面図、図2(d)は図2(b)のA−A線断面図である。図3は図1の調理器に取り付けられたおねば受け皿のさらに他の実施形態を示した図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は平面図、図3(c)は底面図、図3(d)は図3(b)のB−B線断面図である。図4は本発明の他の実施形態に係る調理器を示した図であり、図4(a)は調理器の縦断面図、図4(b)は図4(a)の調理器に取り付けられたおねば受け皿の平面図である。図5は本発明のさらに他の実施形態に係る調理器を示した図であり、図5(a)は調理器の縦断面図、図5(b)は図5(a)の調理器に取り付けられたおねば受け皿の底面図、図5(c)は平面図である。
【0025】
以下、調理器の例として、炊飯器について説明する。
【0026】
炊飯器1は、図1、図2に示すように、被炊飯物が投入される鍋7と、上方にこの鍋7が収容される開口部及び内部にこの鍋7を加熱し被炊飯物を加熱する加熱手段5を有する炊飯器本体(以下、本体という)2と、この本体2の一側に枢支されて開口部を覆い閉塞状態に係止する上蓋10と、この上蓋10に装着されて鍋7内の内圧を調整する圧力弁としてのソレノイド弁13と、このソレノイド弁13を制御する圧力弁開放機構18と、各種の炊飯メニューを表示して選択する表示操作部30と、選択された炊飯メニューに基づいて加熱手段5及び圧力弁開放機構18を制御して鍋7内の被炊飯物を所定温度に加熱し且つ所定時間かけて所定量の水分を被炊飯物に吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程を順次実行する制御装置31と、で構成されている。
【0027】
以下、炊飯器の構造及び制御装置を説明する。
【0028】
本体2は、有底の箱状外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成され、この隙間に制御装置を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。内部ケース4は、その底部4a及び側部4bにそれぞれ底部ヒータ5aと側部ヒータ5bとを有する加熱手段5、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサ6が設けられている。底部4a側の底部ヒータ5aには、環状に巻装した電磁誘導コイルが使用されている。
【0029】
また、本体2は、図1に示すように、その正面に各種炊飯メニューを表示する表示パネル及びこの炊飯メニューを選択等する操作ボタンからなる表示操作部30が設けられている。
【0030】
鍋7は、図1に示すように、水及び米とからなる所定量の被炊飯物が投入される比較的深底の容器からなり、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成され内部ケース4の内部に設置されている。
【0031】
上蓋10は、図1に示すように、鍋7の開口部を閉蓋する内蓋11と、本体2の開口部全体を閉蓋する外蓋12等とで構成されている。この上蓋10は、一側がヒンジ機構hにより本体2に枢支され、他側が蓋体係止機構20により本体の係止部に係止される。
【0032】
内蓋11には、おねばの受け皿8が取り付けられており、沸騰維持工程において被炊飯物から発生する、おねばと呼ばれる旨み成分を受容する(正確には、この他に蒸気の水滴が受容されるが、本明細書では単に「おねば」ということがある)。受け皿8は、図2に示すように、円形の受け皿8の底部上面側中央部におねば受容部8aを形成しており、後述の貯留タンク40や内蓋11と外蓋12との間の空間内に存在するおねばを受容することができる。おねば受け皿の底部の任意の位置には、おねば受容部8a等受け皿8内に存在するおねばを鍋7内に効果的に戻すためのおねば分散孔8bが形成されている。おねば受容部8aと任意のおねば分散孔8bとの間には、おねば受容部8aで受けたおねばをより確実におねば分散孔8bに誘導するためのガイド溝8cが形成されている。これによりおねばは受け皿8の底部にむやみに広がることなく、ガイド溝8c内を伝っておねば分散孔8bを通じて鍋7内に落下することとなる。このガイド溝8cは、おねば分散孔8bの周縁からおねば分散孔8bに向けて漸深に傾斜しており、おねばが落下しやすい構成となっている。
【0033】
また、図3に示すように、任意のおねば分散孔8b周辺には所定大きさのリブ8eを形成することもできる。このリブ8eは、前記のガイド溝8cと同様ないし相俟って、おねば受容部8aに溜まったおねばをおねば分散孔8bに確実に落とし込むよう誘導するための構成となっている。すなわち、図3の受け皿8においては、受け皿8の内周側に形成されたおねば分散孔8bを囲うように形成されたリブ8eにより、ガイド溝8cと同様の効果をもっておねばがおねば分散孔8bに集約される。また、受け皿8の外周側に形成された各おねば分散孔8b間にはガイド溝8cが形成されており、外周側へ伸びるリブ8eがこのガイド溝8cにおねばを誘導することで両者が相俟っておねばをおねば分散孔8bに落とし込むことが可能となる。これにより、おねばは受け皿8に残留することなくリブ8eの側壁およびガイド溝8cを伝っておねば分散孔8bを通じて鍋7内に落下することとなる。
【0034】
受け皿8の側壁上部には鍔状の取付部8dが形成されており、受け皿8はこの取付部8dを介してネジや釘等により内蓋11に取り付けられる。
【0035】
また、受け皿8は、図4に示すように、内蓋11への取付部8dの内側の内周面にシールパッキン9を備えることもできる。すなわち、炊飯工程終了後上蓋10を開ける際に、上蓋10はヒンジ機構hにより本体2に枢支されているので内蓋11に付着したおねばの蒸気が冷やされて水滴となったものや受け皿8内に残留するおねばが上蓋10の回動動作に伴いヒンジ機構h側へと流動してしまうことになるが、これではおねばが取付部8dの隙間に入り込んで洗浄しにくい部分に古いおねばが溜まって非衛生的になってしまうことがあった。このシールパッキン9により液密に取付部8dとの間をシールするので、おねばが取付部8dの隙間に入り込むことによる上記事態を防ぐことができる。
【0036】
なお、受け皿8は、図5に示すように、内蓋11への取付部を切欠形状に形成し、該取付部8d'を回動させることにより着脱が可能な取り付け支柱8fを介して前記内蓋に取り付けるものとすれば、洗浄時にはおねば受け皿を簡単に取り外すことができ、洗浄が容易になり、衛生にも資する。
【0037】
図1に示すように、内蓋11にはまた、ソレノイド弁13とソレノイド弁13を開放させる圧力弁開放機構18が設けられている。ソレノイド弁13は、所定径の弁孔13aが形成された弁座13bと、この弁孔13aを塞ぐように弁座13b上に載置される金属製ボール13cと、このボール13cの移動を規制することで弁座13b上にボール13cを保持するカバー13dとで構成されている。また、圧力弁開放機構18は、電磁コイルが巻回されたシリンダと、このシリンダ内を電磁コイルの励磁により入出しボール13cを移動させるプランジャと、プランジャの先端に装着された作動棹と、シリンダの一端部と作動棹との間に設けられたバネと、で構成されている。
【0038】
圧力弁開放機構18は、制御装置(図示省略)により制御される。すなわち、制御装置(図示省略)からの指令に基づき、電磁コイルが励磁されるとプランジャがシリンダから飛出してボール13cに衝突し、このボール13cを所定方向に押し出す。この押し出しにより、ボール13cは、弁孔13a上で移動し弁孔13aを強制的に開放させる。また、この開放状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、プランジャがバネの付勢力によりシリンダ内に引き込まれ、この引っ込みにより、プランジャにボール13cを前記所定方向に押す力がなくなって前記所定方向とは逆方向に引き込み、ボール13cが弁孔13a上に戻り、弁孔13aがボール13cで閉塞される。
【0039】
外蓋12には、内蓋11と外蓋12に設けられた蒸気孔43との間を連通する蒸気口41が設けられている。また、内蓋11には、鍋7内の蒸気の圧力が所定圧力以上の異常圧力に上昇したときに、鍋7内の圧力を、蒸気口41を介して外部に逃がすための安全弁44が設けられている。ここで炊飯工程において発生した蒸気は蒸気口41から蒸気孔43に向けて逃がされることになるが、この場合でも被炊飯物の旨みたるおねばは、蒸気口の下方に形成された貯留タンク40に貯留されたり、内蓋11と外蓋12との間の空間内に存在したりしており、これらのおねばは負圧弁42の開閉に伴い図1に示す矢印の方向に流動し、受け皿8へと落下して、さらに受け皿8を伝っておねば分散孔8bから落下し、鍋内の被炊飯物に還元されることになる。また、この内蓋11には、蒸気温度センサ(図示省略)が取り付けられている。
【0040】
制御装置は、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、メニューキー、スタートキー、及び予約キー及び鍋底温度センサ、蒸気センサにそれぞれ接続され、これらのキー及びセンサの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時するタイマ、炊飯メニュー検知手段及びROM、RAMが接続され、このCPUにより、加熱手段、表示パネル及びソレノイド弁を制御する加熱制御手段、表示パネル制御手段、圧力弁開放機構制御手段が実行される。
【0041】
次に、この炊飯器の炊飯メニューによる炊飯工程を、図6の特性図及び図7、図8のフローチャートを参照して説明する。なお、表示パネルには各種の炊飯メニューが表示されるが、以下には、白米・標準炊飯メニューについて説明する。
【0042】
まず、ステップS101において炊飯器1は、ユーザにより所定量の水と白米が投入された鍋7を内部ケース4内に収容され、上蓋10を閉めることで閉塞状態にされる。次に、ステップS102において、表示操作部30の操作により炊飯メニューが選択され炊飯がスタートする。炊飯器1の作動がスタートすると、ステップS103において、作動部材(図示省略)が作動して係止部材22を叩き又は押動し係止爪231を本体2の係止部4cに係止させることで上蓋10のロックがなされる。ロックがなされるとステップS104において内部ケース4の外底壁に取り付けられた底部ヒータ5aに高周波電流が印加され、鍋7に渦電流が発生してこの鍋7が発熱し、また外側壁に取り付けられた側部ヒータ5bにより鍋7を加熱し、被炊飯物の加熱が開始される。
【0043】
次に、制御装置により圧力弁開放機構18を作動させてボール13cを移動せしめ、ステップS105においてソレノイド弁13を開状態にし、ステップS106において吸水工程Iが実行される。この吸水工程Iの実行が開始されると、ステップS107において吸水タイマ(図示せず)が吸水時間T1の計時を開始し、次いでステップ108において鍋底温度センサ6により鍋底温度K1が計測される。この鍋底温度K1の計測は所定の温度に達するまで行われ、鍋底温度が所定値、例えば55℃に達したことをステップS109において確認すると、ステップS110において制御装置により底部ヒータ5a、側部ヒータ5bといった加熱手段5の加熱量を制御して被炊飯物を所定温度に保持しつつ、吸水時間の計測が行われる。この吸水工程Iは、所定の吸水時間T1、例えば10分間継続される。
【0044】
ステップS111において所定の吸水時間T1(10分間)が経過すると、ステップS112に進み立上加熱工程IIに移行する。この立上加熱工程IIでは、短時間で沸騰状態になるように底部ヒータa、側部ヒータ5bといった加熱手段5を全加熱(フルパワー加熱)するとともに、制御装置により、圧力弁開放機構18を作動させてプランジャ(図示省略)を引き戻すことでボール13cによりソレノイド弁13を閉鎖する。つまり、ステップS113において、ボール13cが自重により弁孔13a上に転がって弁孔13aを塞ぎ、ソレノイド弁13が閉鎖状態となる。この状態においては、鍋7内の圧力は弁孔13aを介してボール13cを押し上げ得る圧力値に上昇するまで昇圧される。したがって、このときの鍋7内の蒸気の圧力は、ボール13cの重さ及び弁孔13aの大きさを設定することにより適宜調節することができる。
【0045】
この立上加熱工程IIでは、ステップS114において、蒸気温度K2が蒸気温度センサ(図示省略)により計測される。そしてステップS115においてこの蒸気温度K2が所定温度、例えば75℃に達すると、被炊飯物が沸騰現象を起こす温度になり、立上加熱工程IIが終了する。このときの鍋7内の圧力は、ソレノイド弁13により制御され、大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となる。そして、図8に示すように、ステップS116において沸騰維持工程IIIが開始される。
【0046】
沸騰維持工程IIIに移行すると、鍋7内の圧力は大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となり、被炊飯物はこの圧力に対応する飽和温度で沸騰するようになる。
【0047】
また、沸騰維持工程IIIに入ると、ステップS117において直ちに制御装置により圧力弁開放機構18を作動させてボール13cを移動させることでソレノイド弁13の開動作が行われる。またこの開動作の際には、ステップS118において加熱手段5の加熱を停止して、ステップS119においてソレノイド弁13の強制的開動作を所定時間、例えば4秒間継続する。このソレノイド弁13の強制的開動作により、鍋7内の圧力が大気圧近傍まで低下する。
【0048】
このように沸騰維持工程IIIにおいて、鍋7内の圧力を所定沸騰圧力(約1.2気圧)から一気に大気圧近傍まで低下させると、鍋7内は激しい突沸状態となる。この突沸状態になると、鍋内に泡が発生し、この泡によって被炊飯物が撹拌される。この結果、被炊飯物が均一に加熱され、炊き上げられることになる。
【0049】
ソレノイド弁13を強制的に開放する所定時間は、1回目のソレノイド弁13の強制的開動作により鍋7内の圧力が略大気圧に戻る程度の時間(すなわち4秒程度)に定められている。ソレノイド弁13を強制的に大気圧に開放する時間をこのように設定することにより、最大限の撹拌エネルギーを得ることができるようにしている。また、ソレノイド弁13の強制的な開放を上記所定時間(4秒間)行った後、ステップS120において圧力弁開放機構18を作動させて再びソレノイド弁を閉状態とし、ステップS121において、所定時間加熱手段5による鍋7の加熱を再開する。なお、この加熱時間(例えば28秒間)は、鍋7内の圧力が前述の所定圧力(約1.2気圧)まで回復するのに必要な時間である。また、この時間は、予め実験的に求められる。ステップS122において、所定の加熱時間が経過したことが判別されると、ステップS123に進む。
【0050】
ステップS123においてこの圧力弁開放機構によるソレノイド弁13の強制的開放は複数回、例えば6回繰り返される。なお、S121、S122に示す沸騰工程において時間が経過するにつれて、鍋7内の残水量が減少し、圧力変動幅が小さくなり、突沸現象が弱くなる。このため、ソレノイド弁13の強制的な開放は沸騰維持工程IIIの初期段階に集中させると効果的である。
【0051】
ソレノイド弁13を複数回開放する操作を終えると、ステップS124において圧力弁開放機構18によるソレノイド弁13の強制的開放が停止され、ソレノイド弁13が閉状態とされる。このとき、貯留タンク40に溜まったおねばが、鍋7内の減圧に伴いおねば受容部8a上に落下しおねば分散孔8bを通じて被炊飯物に均一に分散(還元)されることになる。そして、ステップS125において加熱手段5による沸騰状態を継続し、ステップS126において鍋底温度K3が計測される。そして、ステップS127において鍋底温度K3が所定温度、例えば130℃になると、鍋7内の水が涸れて強制ドライアップが終了したと判断されるので、ステップS128において加熱手段5による加熱作用が停止される。
【0052】
続いて、蒸らし工程IVが開始され、ステップS129において先ず蒸らし1工程に移行され、蒸らし時間T2の計時が開始される。ステップS130において所定の蒸らし時間T2が所定時間、例えば4分経過すると、ステップS131において圧力弁開放機構18によりソレノイド弁13が強制的に開放され、追炊き工程に移行される。この追炊き工程に入ると、加熱手段5により鍋7が再加熱されて米の表面に付着した水を蒸発させると共に、ステップS132において追炊き(再加熱)時間T3の計測を行う。この追い炊きにより、被炊飯物の表面に付着したおねばが鍋7内の被炊飯物の中央部や底部に行き渡るので、うまみが全体に広がり効果的なおねば分散が可能となる。そして、ステップS133において所定の追炊き時間T3、例えば3分が経過すると、加熱手段5による加熱動作が停止され、蒸らし2工程に移行され、ステップS134において蒸らし時間T4が計時される。そして、ステップS135において蒸らし時間T4が所定時間、例えば5分経過すると、ステップS136において炊飯が終了され、ステップS137において保温工程に移行され、標準炊飯工程が終了する。
【0053】
なお、本実施例においては、作動部材を駆動するための駆動手段として、圧力弁開放機構18を兼用したが、作動部材を駆動するための駆動機構を別に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る調理器を中央部で切断した縦断面図である。
【図2】図2は図1の調理器に取り付けられたおねば受け皿を表した図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は平面図、図2(c)は底面図、図2(d)は図2(b)をA−A線で切断した図である。
【図3】図3は本発明の他の実施形態に係るおねば受け皿を表した図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は平面図、図3(c)は底面図、図3(d)は図3(b)をB−B線で切断した図である。
【図4】図4は本発明のさらに他の実施形態に係る調理器を表した図であり、図4(a)は中央部で切断した縦断面図、図4(b)は図4(a)の調理器に取り付けられたおねば受け皿の平面図である。
【図5】図5は本発明のさらに他の実施形態に係る調理器を表した図であり、図5(a)は中央部で切断した縦断面図、図5(b)は図5(a)の調理器に取り付けられたおねば受け皿の底面図、図5(c)は平面図である。
【図6】図6は炊飯工程における温度−圧力の関係を示す特性図である。
【図7】図7は炊飯フローチャート図である。
【図8】図8は図7に続く炊飯フローチャート図である。
【図9】図9は従来の圧力調理器の一部縦断面図である。
【図10】図10は従来の他の圧力調理器を示しており、図10(a)は縦断面図、図10(b)は蒸気口ユニットの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 炊飯器
2 本体
3 外部ケース
4 内部ケース
5a 底部ヒータ
5b 側面ヒータ
6 鍋底温度センサ
7 鍋
8 受け皿
8a おねば受容部
8b おねば分散孔
8c ガイド溝
8d 取付部
9 シールパッキン
10 蓋体
11 内蓋
12 外蓋
13 ソレノイド弁
18 圧力弁開放機構
20 蓋体係止機構
22 係止部材
23 解除ボタン
30 表示操作部
40 貯留タンク
41 蒸気口
42 負圧弁
43 蒸気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物が投入される容器と、前記容器が収容される開口部及び前記容器内の被調理物を加熱する加熱手段を有する調理器本体と、前記調理器本体の一側に枢支されて前記開口部を覆う蓋体と、を備える調理器であって、前記蓋体は、前記容器を閉塞する内蓋と、前記開口部全体を閉塞する外蓋と、を備え、前記内蓋の下面には、所定の深さを有し、底部上面に形成された受容部と底部に分散して形成された分散孔とを備える有底の受け皿が取り付けられ、前記受け皿の内面にはシール部材が取り付けられていることを特徴とする調理器。
【請求項2】
前記受け皿には、前記被調理物から発生する蒸気の水滴が残留し、前記シール部材は、前記蓋体の開閉動作によって前記水滴が前記受け皿から流れ出すのを防止することを特徴とする請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記受け皿には、前記被調理物から発生するおねばが残留し、前記シール部材は、前記蓋体の開閉動作によって前記おねばが前記受け皿から流れ出すのを防止することを特徴とする請求項1に記載の調理器。
【請求項4】
前記受け皿の外周には、前記受け皿を前記内蓋に取り付けるための取付部が設けられ、前記シール部材は、少なくとも、前記蓋体を前記調理器本体に枢支するヒンジ機構側にある前記取付部の内側に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の調理器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−72624(P2009−72624A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332392(P2008−332392)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【分割の表示】特願2007−34841(P2007−34841)の分割
【原出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】