電気炊飯器
【課題】 既存の構造を変更することなく、保護枠と内鍋との間の空間の断熱性を高め、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られるようにする。
【解決手段】 磁性材もしくは磁性材を備える材料で形成された内鍋3を取出自在に収納し得るように構成された炊飯器本体1と、該炊飯器本体1の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体2と、前記内鍋3に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導コイルC1,C2とを備えた電気炊飯器において、前記炊飯器本体1の内周面を構成する保護枠5と前記内鍋3との間に、減圧空間28を設けて、従来から存在している空間(即ち、保護枠5と内鍋3との間の空間)を減圧するだけで、炊飯時および保温時における内鍋から外方への放熱が効果的に防止されるようにしている。
【解決手段】 磁性材もしくは磁性材を備える材料で形成された内鍋3を取出自在に収納し得るように構成された炊飯器本体1と、該炊飯器本体1の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体2と、前記内鍋3に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導コイルC1,C2とを備えた電気炊飯器において、前記炊飯器本体1の内周面を構成する保護枠5と前記内鍋3との間に、減圧空間28を設けて、従来から存在している空間(即ち、保護枠5と内鍋3との間の空間)を減圧するだけで、炊飯時および保温時における内鍋から外方への放熱が効果的に防止されるようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気炊飯器に関し、さらに詳しくは炊飯時および保温時の省エネ効果が得られるようにした電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気炊飯器は、炊飯器本体と、該炊飯器本体内に挿脱自在に収納された内鍋とを備え、前記内鍋内に、水洗いした米と水を収容し、この米と水とを加熱してご飯を炊き上げるものである。そして、通常は、その加熱手段としてヒータが用いられている。これに対して、近年、内鍋を磁性材で形成し、あるいは内鍋に磁性材を付設して、誘導コイルを用いる誘導加熱方式で内鍋内の米と水とを加熱する方式のものが提案されている。
【0003】
加熱手段としてヒータを用いる場合には、そのヒータの輻射熱で内鍋の周囲の部材も適度に加熱される。従って、内鍋内でご飯が炊き上がってヒータへの通電が切れたのちにおいても、内鍋の周囲の部材の余熱を利用して内鍋内のご飯を蒸らすことができる。
【0004】
ところが、誘導加熱式の電気炊飯器においては、内鍋自体の発熱で内部の米と水とを加熱する方式であるから、内鍋の周囲の部材にはほとんど余熱が残らない。従って、ヒータの場合のように余熱を利用して内鍋内のご飯を蒸らすことが困難であり、内鍋の周囲に断熱空気層を設ける手段が提案されている。例えば、特許文献1には、炊飯器本体の内周面を構成する保護枠の外方に真空室をもつ二重構造の内容器を配設することにより、内鍋内の熱を外方に放出しないようにした電気炊飯器が開示されており、特許文献2には、炊飯器本体の内周面を構成する保護枠を二重壁構造に構成し、前記保護枠内の空間を減圧して真空層とした電気炊飯器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−169904号公報。
【0006】
【特許文献2】特許第3386000号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1および2に開示されている技術の場合、保護枠の外方に真空室をもつ二重構造の内容器を配設したり、保護枠を二重壁構造に構成したりというように構造的な変更を余儀なくされる。そのため、炊飯器本体の寸法変更が必要となるところから、電気炊飯器のサイズが大きくなってしまうおそれがある。
【0008】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、既存の構造を変更することなく、保護枠と内鍋との間の空間の断熱性を高め、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、磁性材もしくは磁性材を備える材料で形成された内鍋を取出自在に収納し得るように構成された炊飯器本体と、該炊飯器本体の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体と、前記内鍋に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導コイルとを備えた電気炊飯器において、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間に、減圧空間を設けている。
【0010】
上記のように構成したことにより、従来から存在している空間(即ち、保護枠と内鍋との間の空間)を減圧するだけで、減圧空間を形成することができることとなり、炊飯時および保温時における内鍋から外方への放熱が効果的に防止されることとなる。従って、既存の構造を変更することなく、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られる。しかも、炊飯器本体側に従来から配設されていた断熱材を削減(あるいは軽減)することが可能となるところから、コストダウンおよび製品のコンパクト化にも寄与する。
【0011】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第2の手段として、上記第1の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を前記蓋体の閉作動と連動するシリンダを用いて減圧することにより形成することもでき、そのように構成した場合、蓋体の閉作動と連動するシリンダを用いて減圧空間を炊飯開始時から容易に形成することができる。
【0012】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を炊飯スイッチのON作動と連動するポンプを用いて減圧することにより形成することもでき、そのように構成した場合、炊飯スイッチのON作動と連動するポンプを用いて減圧空間を炊飯開始時から容易に形成することができる。
【0013】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第4の手段として、上記第1、第2又は第3の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層と外部とを連通する一方弁を付設することにより形成することもでき、そのように構成した場合、炊飯中においては前記減圧空間内の空気が内鍋からの発熱によって温度上昇するところから、空気が膨張し、減圧空間内の空気が一方弁を介して外部へ放出され、減圧空間の減圧度が向上することとなり、保温中における減圧空間の減圧度が上がり、省エネ性能がより一層向上する。
【0014】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第5の手段として、上記第1、第2、第3又は第4の手段を備えた電気炊飯器において、前記内鍋を、そのフランジ部を前記保護枠の開口縁に懸架することにより保護枠内に収納する構造とするとともに、前記フランジ部と前記保護枠との間に、シール部材を介設することもでき、そのように構成した場合、内鍋と保護枠との間の減圧空間の密閉度が向上して、減圧空間における減圧度を高く維持することができる。
【0015】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第6の手段として、上記第1、第2、第3、第4又は第5の手段を備えた電気炊飯器において、前記内鍋の温度を検出する温度検出手段として、非接触タイプの温度センサーを採用することもでき、そのように構成した場合、温度センサーを内鍋に接触させる必要がないところから、内鍋と保護枠との間の減圧空間の減圧度を良好に維持させることが可能となる。
【0016】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第7の手段として、上記第1、第2、第3、第4、第5又は第6の手段を備えた電気炊飯器において、通電停止時に前記減圧空間を外部と連通させる開閉弁を付設することもでき、そのように構成した場合、通電停止時においては、減圧空間が大気圧に復帰することとなり、内鍋を容易に取り出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の第1の手段によれば、磁性材もしくは磁性材を備える材料で形成された内鍋を取出自在に収納し得るように構成された炊飯器本体と、該炊飯器本体の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体と、前記内鍋に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導コイルとを備えた電気炊飯器において、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間に、減圧空間を設けて、従来から存在している空間(即ち、保護枠と内鍋との間の空間)を減圧するだけで、減圧空間を形成することができることとなり、炊飯時および保温時における内鍋から外方への放熱が効果的に防止されるようにしたので、既存の構造を変更することなく、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られるという効果がある。しかも、炊飯器本体側に従来から配設されていた断熱材を削減(あるいは軽減)することが可能となるところから、コストダウンおよび製品のコンパクト化にも寄与するという効果もある。
【0018】
本願発明の第2の手段におけるように、上記第1の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を前記蓋体の閉作動と連動するシリンダを用いて減圧することにより形成することもでき、そのように構成した場合、蓋体の閉作動と連動するシリンダを用いて減圧空間を炊飯開始時から容易に形成することができる。
【0019】
本願発明の第3の手段におけるように、上記第1の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を炊飯スイッチのON作動と連動するポンプを用いて減圧することにより形成することもでき、そのように構成した場合、炊飯スイッチのON作動と連動するポンプを用いて減圧空間を炊飯開始時から容易に形成することができる。
【0020】
本願発明の第4の手段におけるように、上記第1、第2又は第3の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間に、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層に外部とを連通する一方弁を付設することにより形成することもでき、そのように構成した場合、炊飯中においては前記減圧空間内の空気が内鍋からの発熱によって温度上昇するところから、空気が膨張し、減圧空間内の空気が一方弁を介して外部へ放出され、減圧空間の減圧度が向上することとなり、保温中における減圧空間の減圧度が上がり、省エネ性能がより一層向上する。
【0021】
本願発明の第5の手段におけるように、上記第1、第2、第3又は第4の手段を備えた電気炊飯器において、前記内鍋を、そのフランジ部を前記保護枠の開口縁に懸架することにより保護枠内に収納する構造とするとともに、前記フランジ部と前記保護枠との間に、シール部材を介設することもでき、そのように構成した場合、内鍋と保護枠との間の減圧空間の密閉度が向上して、減圧空間における減圧度を高く維持することができる。
【0022】
本願発明の第6の手段におけるように、上記第1、第2、第3、第4又は第5の手段を備えた電気炊飯器において、前記内鍋の温度を検出する温度検出手段として、非接触タイプの温度センサーを採用することもでき、そのように構成した場合、温度センサーを内鍋に接触させる必要がないところから、内鍋と保護枠との間の減圧空間の減圧度を良好に維持させることが可能となる。
【0023】
本願発明の第7の手段におけるように、上記第1、第2、第3、第4、第5又は第6の手段を備えた電気炊飯器において、通電停止時に前記減圧空間を外部と連通させる開閉弁を付設することもでき、そのように構成した場合、通電停止時においては、減圧空間が大気圧に復帰することとなり、内鍋を容易に取り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器の全体構成を縦断面図である。
【図2】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器における操作パネル部の正面図である。
【図3】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器における電気的要素の結線状態を示す回路図である。
【図4】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部拡大断面図である。
【図5】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器におけるシリンダを含む駆動機構を示す正面図である。
【図6】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器における温度センサー取り付け部の要部拡大断面図である。
【図7】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器における温度センサー取り付け部の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図8】本願発明の第2の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部拡大断面図である。
【図9】本願発明の第3の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部拡大断面図である。
【図10】本願発明の第4の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部拡大断面図である。
【図11】電気炊飯器における内鍋と保護枠との間の空間の温度および圧力の時間的変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の幾つかの実施の形態にかかる電気炊飯器について説明する。
【0026】
第1の実施の形態
図1ないし図7には、本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器が示されている。
【0027】
まず、図1を参照して、本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器の全体構造について説明する。
【0028】
この電気炊飯器は、図1に示すように、磁性材もしくは磁性材を備える材料で形成された内鍋3を取出自在に収納し得るように構成された炊飯器本体1と、該炊飯器本体1の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体2と、前記内鍋3に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導コイルC1,C2,C3とを備えて構成されている。
【0029】
前記炊飯器本体1の外周面を構成する外ケース4は、前記炊飯器本体1の側周面となる胴部4aと前記炊飯器本体1の内周面を構成する保護枠5の上端口縁との結合部となる肩部4bと、前記炊飯器本体1の底部となる底部4cとからなっており、本実施の形態においては、前記胴部4aと肩部4bとは、合成樹脂製の一体成形品により構成され、底部4cは別体構成とされている。なお、胴部4aと底部4cとを合成樹脂製の一体成形品により構成し、肩部4bを別体構成とする場合もある。
【0030】
前記外ケース4における胴部4aの前面側上部は、なだらかに傾斜されており、当該部位には、操作パネル部7が設けられている。従って、前記外ケース4と前記保護枠5との間における前記操作パネル部7の下方には、比較的大きな前方空間部8が形成されることとなっている。この操作パネル部7には、各種の操作スイッチ類とそれらの各種操作スイッチ類によって設定される設定状態を表示する液晶表示部とが設けられている。そして、該操作パネル部7の内方には、操作基板9が配設されている。該操作基板9は、前記外ケース胴部4aに対してビス10により前記操作パネル部7と略平行となるように傾斜状態で固定された基板ホルダー11に支持されている。
【0031】
前記保護枠5は、有底円筒形状を有しており、その側周面5aから底面5bにかけては、なだらかな湾曲面5cとされている。
【0032】
前記保護枠5における底面5bおよび湾曲面5cの裏面には、環状の電磁誘導コイルC1,C2がそれぞれ配設されている。該電磁誘導コイルC1,C2は、前記保護枠底面5bの中央部下面において結合され且つ保護枠5に沿って放射状に延びるコイルダイ12と保護枠5との間に挟持された状態で位置決めされている。つまり、電磁誘導コイルC1,C2は、保護枠5の外周面形状に倣った形状とされているのである。符号13は前記コイルダイ12の中央部下面に支持されて放射状に延びるフェライトコアであり、下方への磁気を遮断する作用をなす。符号14は内鍋3の温度を検知する温度検知手段として作用する非接触タイプの温度センサーであり、図6に示すように、前記保護枠5の底面中央部にシール部材16を介して取り付けられ且つ熱線を通すが空気を通さないシート材15の外側に配設されている。なお、図7に示すように、非接触タイプの温度センサー14を、保護枠5の底面中央部にシール部材16を介して直接取り付ける場合もある。このようにすると、温度センサー14の配設部位からの空気漏れを防止することが可能となり、内鍋3と保護枠5との間の空気の密閉度が向上することとなる。
【0033】
また、符号C3は前記保護枠5の側周面5aの上部に配設された保温用の電磁誘導コイルである。
【0034】
そして、前記内鍋3は、そのフランジ部3aを前記保護枠5の開口縁に懸架することにより保護枠5内に収納する構造とされており、前記フランジ部3aと前記保護枠5との間には、シール部材17が介設されている。つまり、内鍋3を収納した状態においては、内鍋3と保護枠5との間に極めて小さな密閉空間が存在することとなっているのである。
【0035】
一方、前記蓋体2は、外ケース肩部4bの後方部位(即ち、操作パネル部7の反対側)に対してヒンジユニット6を介して開閉自在に枢支されており、上面を形成する合成樹脂製の上板18と、下面を形成するドーナツ形状の合成樹脂製の下板19および該下板19の中央部を覆う放熱板20とからなっている。該放熱板20の上面には、蓋ヒータHが取り付けられている。符号21は断熱材、22は調圧キャップ、23は蓋体2の閉蓋状態を保持するためのロック機構、24は蓋体2の閉蓋時に内鍋3の口縁をシールするシールパッキンである。
【0036】
一方、この電気炊飯器における炊飯/調理/保温の各機能に対するタイマー予約や炊飯および保温メニュー、加熱調理メニューの選択、それら各メニューに対応した加熱量、加熱パターン、保温温度、保温時間などの選択設定操作は、炊飯器本体の操作パネル部7に設けられた各種入力スイッチ群(操作キー群)25a〜25h(図2、図3参照)を介してユーザにより行われ、その選択設定内容に応じて最終的に前記電磁誘導コイルC1,C2,C3および蓋ヒータHが適切に制御されるようになっている。
【0037】
また、前記操作パネル部7の中央部には、炊飯、調理(例えばパン発酵/焼きなど)、保温の各メニュー、設定された保温温度、設定保温時間、保温経過時間、現在時刻、タイマー炊飯予約時刻、炊飯完了および調理完了までの残時間、その他の各種必要事項を表示する液晶表示部26(図2参照)が設けられている。図2において、符号27aは炊飯スイッチ(炊飯キー)25aのON操作時に点灯する表示用LED、27bは保温スイッチ(保温キー)25bのON操作時に点灯する表示用LED、27cは予約スイッチ(予約キー)25cのON操作時に点灯する表示用LEDである。
【0038】
ついで、この電気炊飯器における電気的要素の結線状態を、図3を参照して説明する。
【0039】
AC電源30側からの電源回路部にノイズフィルタ回路32、整流平滑回路35a,35b、電磁誘導コイルC1,C2,C3、IGBT、チョークコイル、共振回路よりなるIH回路37、DC20V電源36、温度検出回路38、入力電圧検出回路39、IGBT駆動回路42、入力電流検出回路43、電源電圧のゼロクロス検出回路44、蓋ヒータ駆動回路33、冷却ファンのファンモータの駆動回路29、調整用データを書き込むことが可能なEEPROM40、同期トリガ回路41等が設けられており、それらが図示のように接続されている。また、電気炊飯器の機種毎に異なる固有の制御データを備えるマイコン制御ユニット50を中心として、液晶表示部26、炊飯又は保温、タイマー予約、予約時刻設定、白米又は玄米もしくは雑穀米、早炊き、おかゆ、すしめし、炊き込み、おこげ等の炊き分け、通常モード又は省エネモードその他の上記各機種に応じて決まる各種の炊飯又は保温機能の選択設定を行う入力スイッチ25a〜25h、炊飯、予約、保温等の表示用LED27a〜27c、リセット回路52、メインクロック信号発生回路54、サブロック信号発生回路55、強制リセット回路51、マイコン電源回路52、バックアップ回路53等が設けられ、それぞれマイコン制御ユニット50と図示のように接続されている。
【0040】
ところで、この電気炊飯器においては、内鍋3と保護枠5との間には、減圧空間28が設けられる。該減圧空間28は、前記保護枠5と前記内鍋3との間の空間の空気層を前記蓋体2の閉作動と連動するシリンダ29を用いて減圧することにより形成される。
【0041】
該シリンダ29は、図4および図5に示すように、前記外ケース4と前記保護枠5との間において前記操作パネル部7の下方に形成される比較的大きな前方空間部8に配設されており、前記保護枠5の側周面5aを貫通する連通管60a,60bを介して前記減圧空間28となる空間に連通せしめられている。このシリンダ29のピストンロッド29aは、前記蓋体2の閉作動時に押し下げられる作動扞61に形成されたラック62と、該ラック62と噛合するギヤ63と、前記ピストンロッド29aに形成されたラック64とからなる伝達機構により、蓋体2の閉作動と連動して上動することとなっている。このことにより、前記内鍋3と前記保護枠5との間の空間の空気層が抜き取られ、減圧空間28が形成されることとなっている。なお、内鍋3と前記保護枠5との間の空間の空気層が極めて小さいので、ピストンロッド29aの上動のみであっても、十分な減圧が得られる。
【0042】
上記のように構成したことにより、従来から存在している空間(即ち、保護枠5と内鍋3との間の空間)を減圧するだけで、減圧空間28を形成することができることとなり、炊飯時および保温時における内鍋3から外方への放熱が効果的に防止されることとなる。従って、既存の構造を変更することなく、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られる。しかも、炊飯器本体1側に従来から配設されていた断熱材を削減(あるいは軽減)することが可能となるところから、コストダウンおよび製品のコンパクト化にも寄与する。
【0043】
図4において、符号65は連通管60bに介設された排気方向の一方弁、66は連通管60aに付設された開閉弁であり、該開閉弁60aは、通電停止時に前記減圧空間28を外部と連通させる作用をなすものである。このようにすると、通電停止時においては、減圧空間28が大気圧に復帰することとなり、内鍋3を容易に取り出すことが可能となる。また、符号67はシリンダ29に付設された開閉弁であり、炊飯終了時にシリンダ29内を外部と連通させる作用をなすものである。このようにすると、炊飯終了後の保温時において、ご飯をつぐために、蓋体2を度々開閉することとなるが、シリンダ29がシリンダとしての機能を果たすことがないところから、蓋体2の開閉に支障を来すことがなくなる。しかも、図11に示すように、炊飯時においては内鍋3と保護枠5との間の空間における空気層の温度が上昇するところから、空気層が膨張して空気層の圧力が高くなり、前記空間の空気層が一方弁65を介して排出され、保温時においては減圧空間28の減圧度がより一層することとなる(図11の圧力線参照)。
【0044】
第2の実施の形態
図8には、本願発明の第2の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部が示されている。
【0045】
この場合、シリンダ29のピストンロッド29aとして、+電荷の印加により伸長し、−電荷の印加により収縮する高分子アクチュエータが採用されている。この場合、ピストンロッド29aの伸縮により往復動するピストン29bにより、内鍋3と保護枠5との間の空間から空気を抜き得るように、連通管60bから分岐してシリンダ29における一方の作動空間68bに接続される連通管60cを付設しており、該連通管60cにも排気方向の一方弁69が介設されている。また、この場合、シリンダ29における両作動空間68a,68bには、炊飯終了時にシリンダ29内を外部と連通させる作用をなす開閉弁67a,67bが付設されている。符号70は前記高分子アクチュエータに印加される電荷を所定時間毎に極性を変更させる極性切換機構である。なお、本実施の形態においては、蓋体2の閉作動時から所定時間だけ高分子アクチュエータに通電されるようになっている。このようにすると、蓋体2の閉作動から所定時間だけシリンダ29が作動して、従来から存在している空間(即ち、保護枠5と内鍋3との間の空間)を減圧するだけで、減圧空間28を形成することができることとなり、炊飯時および保温時における内鍋3から外方への放熱が効果的に防止されることとなる。従って、既存の構造を変更することなく、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られる。しかも、炊飯器本体1側に従来から配設されていた断熱材を削減(あるいは軽減)することが可能となるところから、コストダウンおよび製品のコンパクト化にも寄与する。さらに、消費電力が少なくて済む高分子アクチュエータを用いているので、省エネ効果がさらに大きくなる。
【0046】
その他の構成および作用効果は、第1の実施の形態におけると同様なので、説明を省略する。
【0047】
第3の実施の形態
図9には、本願発明の第3の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部が示されている。
【0048】
この場合、減圧空間28は、保護枠5と内鍋3との間の空間の空気層を炊飯スイッチ25aのON作動と連動する真空ポンプ71を用いて減圧することにより形成することとなっている。このようにすると、炊飯スイッチ25aのON作動と連動する真空ポンプ71を用いて減圧空間28を炊飯開始時から容易に形成することができる。その他の構成および作用効果は、第1の実施の形態におけると同様なので、説明を省略する。
【0049】
第4の実施の形態
図10には、本願発明の第4の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部が示されている。
【0050】
この場合、減圧空間28は、保護枠5と内鍋3との間の空間の空気層に外部と連通する一方弁65を付設して該一方弁65を介して炊飯中において前記空気層の熱気を排出することにより形成することとなっている。この場合、炊飯中においては前記減圧空間28内の空気が内鍋3からの発熱によって温度上昇するところから、空気が膨張し、減圧空間28内の空気が一方弁65を介して外部へ放出され、減圧空間28の減圧度が向上することとなる。従って、保温中における減圧空間28の減圧度が上がり、省エネ性能がより一層向上する(図11参照)。なお、内鍋3と保護枠5との間の空間の空気量が極めて少量であるところから、一方弁65を介しての熱気排出のみでも、減圧空間28を容易に形成することが可能となる。その他の構成および作用効果は、第1の実施の形態におけると同様なので、説明を省略する。
【0051】
本願発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1は炊飯器本体
2は蓋体
3は内鍋
3aはフランジ部
5は保護枠
14は温度センサー
17はシール部材
28は減圧空間
29はシリンダ
65は一方弁
71はポンプ(真空ポンプ)
C1,C2,C3は電磁誘導コイル
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気炊飯器に関し、さらに詳しくは炊飯時および保温時の省エネ効果が得られるようにした電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気炊飯器は、炊飯器本体と、該炊飯器本体内に挿脱自在に収納された内鍋とを備え、前記内鍋内に、水洗いした米と水を収容し、この米と水とを加熱してご飯を炊き上げるものである。そして、通常は、その加熱手段としてヒータが用いられている。これに対して、近年、内鍋を磁性材で形成し、あるいは内鍋に磁性材を付設して、誘導コイルを用いる誘導加熱方式で内鍋内の米と水とを加熱する方式のものが提案されている。
【0003】
加熱手段としてヒータを用いる場合には、そのヒータの輻射熱で内鍋の周囲の部材も適度に加熱される。従って、内鍋内でご飯が炊き上がってヒータへの通電が切れたのちにおいても、内鍋の周囲の部材の余熱を利用して内鍋内のご飯を蒸らすことができる。
【0004】
ところが、誘導加熱式の電気炊飯器においては、内鍋自体の発熱で内部の米と水とを加熱する方式であるから、内鍋の周囲の部材にはほとんど余熱が残らない。従って、ヒータの場合のように余熱を利用して内鍋内のご飯を蒸らすことが困難であり、内鍋の周囲に断熱空気層を設ける手段が提案されている。例えば、特許文献1には、炊飯器本体の内周面を構成する保護枠の外方に真空室をもつ二重構造の内容器を配設することにより、内鍋内の熱を外方に放出しないようにした電気炊飯器が開示されており、特許文献2には、炊飯器本体の内周面を構成する保護枠を二重壁構造に構成し、前記保護枠内の空間を減圧して真空層とした電気炊飯器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−169904号公報。
【0006】
【特許文献2】特許第3386000号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1および2に開示されている技術の場合、保護枠の外方に真空室をもつ二重構造の内容器を配設したり、保護枠を二重壁構造に構成したりというように構造的な変更を余儀なくされる。そのため、炊飯器本体の寸法変更が必要となるところから、電気炊飯器のサイズが大きくなってしまうおそれがある。
【0008】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、既存の構造を変更することなく、保護枠と内鍋との間の空間の断熱性を高め、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、磁性材もしくは磁性材を備える材料で形成された内鍋を取出自在に収納し得るように構成された炊飯器本体と、該炊飯器本体の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体と、前記内鍋に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導コイルとを備えた電気炊飯器において、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間に、減圧空間を設けている。
【0010】
上記のように構成したことにより、従来から存在している空間(即ち、保護枠と内鍋との間の空間)を減圧するだけで、減圧空間を形成することができることとなり、炊飯時および保温時における内鍋から外方への放熱が効果的に防止されることとなる。従って、既存の構造を変更することなく、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られる。しかも、炊飯器本体側に従来から配設されていた断熱材を削減(あるいは軽減)することが可能となるところから、コストダウンおよび製品のコンパクト化にも寄与する。
【0011】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第2の手段として、上記第1の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を前記蓋体の閉作動と連動するシリンダを用いて減圧することにより形成することもでき、そのように構成した場合、蓋体の閉作動と連動するシリンダを用いて減圧空間を炊飯開始時から容易に形成することができる。
【0012】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を炊飯スイッチのON作動と連動するポンプを用いて減圧することにより形成することもでき、そのように構成した場合、炊飯スイッチのON作動と連動するポンプを用いて減圧空間を炊飯開始時から容易に形成することができる。
【0013】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第4の手段として、上記第1、第2又は第3の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層と外部とを連通する一方弁を付設することにより形成することもでき、そのように構成した場合、炊飯中においては前記減圧空間内の空気が内鍋からの発熱によって温度上昇するところから、空気が膨張し、減圧空間内の空気が一方弁を介して外部へ放出され、減圧空間の減圧度が向上することとなり、保温中における減圧空間の減圧度が上がり、省エネ性能がより一層向上する。
【0014】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第5の手段として、上記第1、第2、第3又は第4の手段を備えた電気炊飯器において、前記内鍋を、そのフランジ部を前記保護枠の開口縁に懸架することにより保護枠内に収納する構造とするとともに、前記フランジ部と前記保護枠との間に、シール部材を介設することもでき、そのように構成した場合、内鍋と保護枠との間の減圧空間の密閉度が向上して、減圧空間における減圧度を高く維持することができる。
【0015】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第6の手段として、上記第1、第2、第3、第4又は第5の手段を備えた電気炊飯器において、前記内鍋の温度を検出する温度検出手段として、非接触タイプの温度センサーを採用することもでき、そのように構成した場合、温度センサーを内鍋に接触させる必要がないところから、内鍋と保護枠との間の減圧空間の減圧度を良好に維持させることが可能となる。
【0016】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第7の手段として、上記第1、第2、第3、第4、第5又は第6の手段を備えた電気炊飯器において、通電停止時に前記減圧空間を外部と連通させる開閉弁を付設することもでき、そのように構成した場合、通電停止時においては、減圧空間が大気圧に復帰することとなり、内鍋を容易に取り出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の第1の手段によれば、磁性材もしくは磁性材を備える材料で形成された内鍋を取出自在に収納し得るように構成された炊飯器本体と、該炊飯器本体の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体と、前記内鍋に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導コイルとを備えた電気炊飯器において、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間に、減圧空間を設けて、従来から存在している空間(即ち、保護枠と内鍋との間の空間)を減圧するだけで、減圧空間を形成することができることとなり、炊飯時および保温時における内鍋から外方への放熱が効果的に防止されるようにしたので、既存の構造を変更することなく、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られるという効果がある。しかも、炊飯器本体側に従来から配設されていた断熱材を削減(あるいは軽減)することが可能となるところから、コストダウンおよび製品のコンパクト化にも寄与するという効果もある。
【0018】
本願発明の第2の手段におけるように、上記第1の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を前記蓋体の閉作動と連動するシリンダを用いて減圧することにより形成することもでき、そのように構成した場合、蓋体の閉作動と連動するシリンダを用いて減圧空間を炊飯開始時から容易に形成することができる。
【0019】
本願発明の第3の手段におけるように、上記第1の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を炊飯スイッチのON作動と連動するポンプを用いて減圧することにより形成することもでき、そのように構成した場合、炊飯スイッチのON作動と連動するポンプを用いて減圧空間を炊飯開始時から容易に形成することができる。
【0020】
本願発明の第4の手段におけるように、上記第1、第2又は第3の手段を備えた電気炊飯器において、前記減圧空間に、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層に外部とを連通する一方弁を付設することにより形成することもでき、そのように構成した場合、炊飯中においては前記減圧空間内の空気が内鍋からの発熱によって温度上昇するところから、空気が膨張し、減圧空間内の空気が一方弁を介して外部へ放出され、減圧空間の減圧度が向上することとなり、保温中における減圧空間の減圧度が上がり、省エネ性能がより一層向上する。
【0021】
本願発明の第5の手段におけるように、上記第1、第2、第3又は第4の手段を備えた電気炊飯器において、前記内鍋を、そのフランジ部を前記保護枠の開口縁に懸架することにより保護枠内に収納する構造とするとともに、前記フランジ部と前記保護枠との間に、シール部材を介設することもでき、そのように構成した場合、内鍋と保護枠との間の減圧空間の密閉度が向上して、減圧空間における減圧度を高く維持することができる。
【0022】
本願発明の第6の手段におけるように、上記第1、第2、第3、第4又は第5の手段を備えた電気炊飯器において、前記内鍋の温度を検出する温度検出手段として、非接触タイプの温度センサーを採用することもでき、そのように構成した場合、温度センサーを内鍋に接触させる必要がないところから、内鍋と保護枠との間の減圧空間の減圧度を良好に維持させることが可能となる。
【0023】
本願発明の第7の手段におけるように、上記第1、第2、第3、第4、第5又は第6の手段を備えた電気炊飯器において、通電停止時に前記減圧空間を外部と連通させる開閉弁を付設することもでき、そのように構成した場合、通電停止時においては、減圧空間が大気圧に復帰することとなり、内鍋を容易に取り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器の全体構成を縦断面図である。
【図2】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器における操作パネル部の正面図である。
【図3】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器における電気的要素の結線状態を示す回路図である。
【図4】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部拡大断面図である。
【図5】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器におけるシリンダを含む駆動機構を示す正面図である。
【図6】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器における温度センサー取り付け部の要部拡大断面図である。
【図7】本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器における温度センサー取り付け部の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図8】本願発明の第2の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部拡大断面図である。
【図9】本願発明の第3の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部拡大断面図である。
【図10】本願発明の第4の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部拡大断面図である。
【図11】電気炊飯器における内鍋と保護枠との間の空間の温度および圧力の時間的変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の幾つかの実施の形態にかかる電気炊飯器について説明する。
【0026】
第1の実施の形態
図1ないし図7には、本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器が示されている。
【0027】
まず、図1を参照して、本願発明の第1の実施の形態にかかる電気炊飯器の全体構造について説明する。
【0028】
この電気炊飯器は、図1に示すように、磁性材もしくは磁性材を備える材料で形成された内鍋3を取出自在に収納し得るように構成された炊飯器本体1と、該炊飯器本体1の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体2と、前記内鍋3に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導コイルC1,C2,C3とを備えて構成されている。
【0029】
前記炊飯器本体1の外周面を構成する外ケース4は、前記炊飯器本体1の側周面となる胴部4aと前記炊飯器本体1の内周面を構成する保護枠5の上端口縁との結合部となる肩部4bと、前記炊飯器本体1の底部となる底部4cとからなっており、本実施の形態においては、前記胴部4aと肩部4bとは、合成樹脂製の一体成形品により構成され、底部4cは別体構成とされている。なお、胴部4aと底部4cとを合成樹脂製の一体成形品により構成し、肩部4bを別体構成とする場合もある。
【0030】
前記外ケース4における胴部4aの前面側上部は、なだらかに傾斜されており、当該部位には、操作パネル部7が設けられている。従って、前記外ケース4と前記保護枠5との間における前記操作パネル部7の下方には、比較的大きな前方空間部8が形成されることとなっている。この操作パネル部7には、各種の操作スイッチ類とそれらの各種操作スイッチ類によって設定される設定状態を表示する液晶表示部とが設けられている。そして、該操作パネル部7の内方には、操作基板9が配設されている。該操作基板9は、前記外ケース胴部4aに対してビス10により前記操作パネル部7と略平行となるように傾斜状態で固定された基板ホルダー11に支持されている。
【0031】
前記保護枠5は、有底円筒形状を有しており、その側周面5aから底面5bにかけては、なだらかな湾曲面5cとされている。
【0032】
前記保護枠5における底面5bおよび湾曲面5cの裏面には、環状の電磁誘導コイルC1,C2がそれぞれ配設されている。該電磁誘導コイルC1,C2は、前記保護枠底面5bの中央部下面において結合され且つ保護枠5に沿って放射状に延びるコイルダイ12と保護枠5との間に挟持された状態で位置決めされている。つまり、電磁誘導コイルC1,C2は、保護枠5の外周面形状に倣った形状とされているのである。符号13は前記コイルダイ12の中央部下面に支持されて放射状に延びるフェライトコアであり、下方への磁気を遮断する作用をなす。符号14は内鍋3の温度を検知する温度検知手段として作用する非接触タイプの温度センサーであり、図6に示すように、前記保護枠5の底面中央部にシール部材16を介して取り付けられ且つ熱線を通すが空気を通さないシート材15の外側に配設されている。なお、図7に示すように、非接触タイプの温度センサー14を、保護枠5の底面中央部にシール部材16を介して直接取り付ける場合もある。このようにすると、温度センサー14の配設部位からの空気漏れを防止することが可能となり、内鍋3と保護枠5との間の空気の密閉度が向上することとなる。
【0033】
また、符号C3は前記保護枠5の側周面5aの上部に配設された保温用の電磁誘導コイルである。
【0034】
そして、前記内鍋3は、そのフランジ部3aを前記保護枠5の開口縁に懸架することにより保護枠5内に収納する構造とされており、前記フランジ部3aと前記保護枠5との間には、シール部材17が介設されている。つまり、内鍋3を収納した状態においては、内鍋3と保護枠5との間に極めて小さな密閉空間が存在することとなっているのである。
【0035】
一方、前記蓋体2は、外ケース肩部4bの後方部位(即ち、操作パネル部7の反対側)に対してヒンジユニット6を介して開閉自在に枢支されており、上面を形成する合成樹脂製の上板18と、下面を形成するドーナツ形状の合成樹脂製の下板19および該下板19の中央部を覆う放熱板20とからなっている。該放熱板20の上面には、蓋ヒータHが取り付けられている。符号21は断熱材、22は調圧キャップ、23は蓋体2の閉蓋状態を保持するためのロック機構、24は蓋体2の閉蓋時に内鍋3の口縁をシールするシールパッキンである。
【0036】
一方、この電気炊飯器における炊飯/調理/保温の各機能に対するタイマー予約や炊飯および保温メニュー、加熱調理メニューの選択、それら各メニューに対応した加熱量、加熱パターン、保温温度、保温時間などの選択設定操作は、炊飯器本体の操作パネル部7に設けられた各種入力スイッチ群(操作キー群)25a〜25h(図2、図3参照)を介してユーザにより行われ、その選択設定内容に応じて最終的に前記電磁誘導コイルC1,C2,C3および蓋ヒータHが適切に制御されるようになっている。
【0037】
また、前記操作パネル部7の中央部には、炊飯、調理(例えばパン発酵/焼きなど)、保温の各メニュー、設定された保温温度、設定保温時間、保温経過時間、現在時刻、タイマー炊飯予約時刻、炊飯完了および調理完了までの残時間、その他の各種必要事項を表示する液晶表示部26(図2参照)が設けられている。図2において、符号27aは炊飯スイッチ(炊飯キー)25aのON操作時に点灯する表示用LED、27bは保温スイッチ(保温キー)25bのON操作時に点灯する表示用LED、27cは予約スイッチ(予約キー)25cのON操作時に点灯する表示用LEDである。
【0038】
ついで、この電気炊飯器における電気的要素の結線状態を、図3を参照して説明する。
【0039】
AC電源30側からの電源回路部にノイズフィルタ回路32、整流平滑回路35a,35b、電磁誘導コイルC1,C2,C3、IGBT、チョークコイル、共振回路よりなるIH回路37、DC20V電源36、温度検出回路38、入力電圧検出回路39、IGBT駆動回路42、入力電流検出回路43、電源電圧のゼロクロス検出回路44、蓋ヒータ駆動回路33、冷却ファンのファンモータの駆動回路29、調整用データを書き込むことが可能なEEPROM40、同期トリガ回路41等が設けられており、それらが図示のように接続されている。また、電気炊飯器の機種毎に異なる固有の制御データを備えるマイコン制御ユニット50を中心として、液晶表示部26、炊飯又は保温、タイマー予約、予約時刻設定、白米又は玄米もしくは雑穀米、早炊き、おかゆ、すしめし、炊き込み、おこげ等の炊き分け、通常モード又は省エネモードその他の上記各機種に応じて決まる各種の炊飯又は保温機能の選択設定を行う入力スイッチ25a〜25h、炊飯、予約、保温等の表示用LED27a〜27c、リセット回路52、メインクロック信号発生回路54、サブロック信号発生回路55、強制リセット回路51、マイコン電源回路52、バックアップ回路53等が設けられ、それぞれマイコン制御ユニット50と図示のように接続されている。
【0040】
ところで、この電気炊飯器においては、内鍋3と保護枠5との間には、減圧空間28が設けられる。該減圧空間28は、前記保護枠5と前記内鍋3との間の空間の空気層を前記蓋体2の閉作動と連動するシリンダ29を用いて減圧することにより形成される。
【0041】
該シリンダ29は、図4および図5に示すように、前記外ケース4と前記保護枠5との間において前記操作パネル部7の下方に形成される比較的大きな前方空間部8に配設されており、前記保護枠5の側周面5aを貫通する連通管60a,60bを介して前記減圧空間28となる空間に連通せしめられている。このシリンダ29のピストンロッド29aは、前記蓋体2の閉作動時に押し下げられる作動扞61に形成されたラック62と、該ラック62と噛合するギヤ63と、前記ピストンロッド29aに形成されたラック64とからなる伝達機構により、蓋体2の閉作動と連動して上動することとなっている。このことにより、前記内鍋3と前記保護枠5との間の空間の空気層が抜き取られ、減圧空間28が形成されることとなっている。なお、内鍋3と前記保護枠5との間の空間の空気層が極めて小さいので、ピストンロッド29aの上動のみであっても、十分な減圧が得られる。
【0042】
上記のように構成したことにより、従来から存在している空間(即ち、保護枠5と内鍋3との間の空間)を減圧するだけで、減圧空間28を形成することができることとなり、炊飯時および保温時における内鍋3から外方への放熱が効果的に防止されることとなる。従って、既存の構造を変更することなく、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られる。しかも、炊飯器本体1側に従来から配設されていた断熱材を削減(あるいは軽減)することが可能となるところから、コストダウンおよび製品のコンパクト化にも寄与する。
【0043】
図4において、符号65は連通管60bに介設された排気方向の一方弁、66は連通管60aに付設された開閉弁であり、該開閉弁60aは、通電停止時に前記減圧空間28を外部と連通させる作用をなすものである。このようにすると、通電停止時においては、減圧空間28が大気圧に復帰することとなり、内鍋3を容易に取り出すことが可能となる。また、符号67はシリンダ29に付設された開閉弁であり、炊飯終了時にシリンダ29内を外部と連通させる作用をなすものである。このようにすると、炊飯終了後の保温時において、ご飯をつぐために、蓋体2を度々開閉することとなるが、シリンダ29がシリンダとしての機能を果たすことがないところから、蓋体2の開閉に支障を来すことがなくなる。しかも、図11に示すように、炊飯時においては内鍋3と保護枠5との間の空間における空気層の温度が上昇するところから、空気層が膨張して空気層の圧力が高くなり、前記空間の空気層が一方弁65を介して排出され、保温時においては減圧空間28の減圧度がより一層することとなる(図11の圧力線参照)。
【0044】
第2の実施の形態
図8には、本願発明の第2の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部が示されている。
【0045】
この場合、シリンダ29のピストンロッド29aとして、+電荷の印加により伸長し、−電荷の印加により収縮する高分子アクチュエータが採用されている。この場合、ピストンロッド29aの伸縮により往復動するピストン29bにより、内鍋3と保護枠5との間の空間から空気を抜き得るように、連通管60bから分岐してシリンダ29における一方の作動空間68bに接続される連通管60cを付設しており、該連通管60cにも排気方向の一方弁69が介設されている。また、この場合、シリンダ29における両作動空間68a,68bには、炊飯終了時にシリンダ29内を外部と連通させる作用をなす開閉弁67a,67bが付設されている。符号70は前記高分子アクチュエータに印加される電荷を所定時間毎に極性を変更させる極性切換機構である。なお、本実施の形態においては、蓋体2の閉作動時から所定時間だけ高分子アクチュエータに通電されるようになっている。このようにすると、蓋体2の閉作動から所定時間だけシリンダ29が作動して、従来から存在している空間(即ち、保護枠5と内鍋3との間の空間)を減圧するだけで、減圧空間28を形成することができることとなり、炊飯時および保温時における内鍋3から外方への放熱が効果的に防止されることとなる。従って、既存の構造を変更することなく、炊飯時および保温時の省エネ効果が得られる。しかも、炊飯器本体1側に従来から配設されていた断熱材を削減(あるいは軽減)することが可能となるところから、コストダウンおよび製品のコンパクト化にも寄与する。さらに、消費電力が少なくて済む高分子アクチュエータを用いているので、省エネ効果がさらに大きくなる。
【0046】
その他の構成および作用効果は、第1の実施の形態におけると同様なので、説明を省略する。
【0047】
第3の実施の形態
図9には、本願発明の第3の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部が示されている。
【0048】
この場合、減圧空間28は、保護枠5と内鍋3との間の空間の空気層を炊飯スイッチ25aのON作動と連動する真空ポンプ71を用いて減圧することにより形成することとなっている。このようにすると、炊飯スイッチ25aのON作動と連動する真空ポンプ71を用いて減圧空間28を炊飯開始時から容易に形成することができる。その他の構成および作用効果は、第1の実施の形態におけると同様なので、説明を省略する。
【0049】
第4の実施の形態
図10には、本願発明の第4の実施の形態にかかる電気炊飯器における要部が示されている。
【0050】
この場合、減圧空間28は、保護枠5と内鍋3との間の空間の空気層に外部と連通する一方弁65を付設して該一方弁65を介して炊飯中において前記空気層の熱気を排出することにより形成することとなっている。この場合、炊飯中においては前記減圧空間28内の空気が内鍋3からの発熱によって温度上昇するところから、空気が膨張し、減圧空間28内の空気が一方弁65を介して外部へ放出され、減圧空間28の減圧度が向上することとなる。従って、保温中における減圧空間28の減圧度が上がり、省エネ性能がより一層向上する(図11参照)。なお、内鍋3と保護枠5との間の空間の空気量が極めて少量であるところから、一方弁65を介しての熱気排出のみでも、減圧空間28を容易に形成することが可能となる。その他の構成および作用効果は、第1の実施の形態におけると同様なので、説明を省略する。
【0051】
本願発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1は炊飯器本体
2は蓋体
3は内鍋
3aはフランジ部
5は保護枠
14は温度センサー
17はシール部材
28は減圧空間
29はシリンダ
65は一方弁
71はポンプ(真空ポンプ)
C1,C2,C3は電磁誘導コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材もしくは磁性材を備える材料で形成された内鍋を取出自在に収納し得るように構成された炊飯器本体と、該炊飯器本体の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体と、前記内鍋に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導コイルとを備えた電気炊飯器であって、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間には、減圧空間を設けたことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を前記蓋体の閉作動と連動するシリンダを用いて減圧することにより形成したことを特徴とする請求項1記載の電気炊飯器。
【請求項3】
前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を炊飯スイッチのON作動と連動するポンプを用いて減圧することにより形成したことを特徴とする請求項1記載の電気炊飯器。
【請求項4】
前記減圧空間には、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層と外部と連通する一方弁を付設したことを特徴とする請求項1,2および3のいずれか一項記載の電気炊飯器。
【請求項5】
前記内鍋を、そのフランジ部を前記保護枠の開口縁に懸架することにより保護枠内に収納する構造とするとともに、前記フランジ部と前記保護枠との間には、シール部材を介設したことを特徴とする請求項1,2,3および4のいずれか一項記載の電気炊飯器。
【請求項6】
前記内鍋の温度を検出する温度検出手段として、非接触タイプの温度センサーを採用したことを特徴とする請求項1,2,3,4および5のいずれか一項記載の電気炊飯器。
【請求項7】
通電停止時に前記減圧空間を外部と連通させる開閉弁を付設したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5および6のいずれか一項記載の電気炊飯器。
【請求項1】
磁性材もしくは磁性材を備える材料で形成された内鍋を取出自在に収納し得るように構成された炊飯器本体と、該炊飯器本体の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体と、前記内鍋に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導コイルとを備えた電気炊飯器であって、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間には、減圧空間を設けたことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を前記蓋体の閉作動と連動するシリンダを用いて減圧することにより形成したことを特徴とする請求項1記載の電気炊飯器。
【請求項3】
前記減圧空間を、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層を炊飯スイッチのON作動と連動するポンプを用いて減圧することにより形成したことを特徴とする請求項1記載の電気炊飯器。
【請求項4】
前記減圧空間には、前記炊飯器本体の内周面を構成する保護枠と前記内鍋との間の空間の空気層と外部と連通する一方弁を付設したことを特徴とする請求項1,2および3のいずれか一項記載の電気炊飯器。
【請求項5】
前記内鍋を、そのフランジ部を前記保護枠の開口縁に懸架することにより保護枠内に収納する構造とするとともに、前記フランジ部と前記保護枠との間には、シール部材を介設したことを特徴とする請求項1,2,3および4のいずれか一項記載の電気炊飯器。
【請求項6】
前記内鍋の温度を検出する温度検出手段として、非接触タイプの温度センサーを採用したことを特徴とする請求項1,2,3,4および5のいずれか一項記載の電気炊飯器。
【請求項7】
通電停止時に前記減圧空間を外部と連通させる開閉弁を付設したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5および6のいずれか一項記載の電気炊飯器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−110370(P2011−110370A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272202(P2009−272202)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】
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