説明

電気自動車の空調装置

【課題】廉価な空調装置にプリエアコンディショニング機能を付加しつつ、無駄な電力消費を抑えることができる電気自動車の空調装置を提供する。
【解決手段】マニュアルエアコン30の電源をオン/オフ制御する空調コントローラ50と、手動操作される各スイッチ32〜36と、マニュアルエアコン30の電源をオン/オフさせるオン/オフ信号を受信する受信アンテナ51と、オン/オフ信号を受信アンテナ51に送信する空調リモコン52と、吹出口39を流通する空気の温度を検出する吹出口温度センサ49とを備える。空調コントローラ50は、オン信号に基づきマニュアルエアコン30の電源をオン制御し、3分経過後の吹出口温度センサ49による検出温度が20℃以上(夏季)または30℃以下(冬季)のとき、吹出口温度センサ49による検出温度の変化状態が異常であるとしてマニュアルエアコン30の電源をオフ制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源により充電可能なバッテリを備えた電気自動車に搭載され、車室内の空調を行う電気自動車の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充電可能なバッテリ(二次電池)および当該バッテリにより駆動される電動モータを備えた電気自動車としては、EV(Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等がある。いずれのタイプの電気自動車においても、バッテリの残存容量(SOC)が低下した場合には、家庭用の商用電源や急速充電スタンドの充電装置(外部電源)を用いてバッテリを充電するようになっている。なお、PHEVにおいては、通常、エンジンの駆動によりバッテリを充電するが、バッテリの残存容量によっては、エンジンを駆動すること無く充電装置等を用いてバッテリを充電することもある。
【0003】
このような電気自動車においては、外部電源によりバッテリを充電する際に、外部電源を用いて空調装置を駆動することができる。つまり、充電中に外部電源から空調装置の駆動電力を賄い、乗車前に空調装置を冷房動作または暖房動作させ、出発時刻に合わせて車室内の温度を適温にすることができる。このような空調機能、所謂プリエアコンディショニング機能を備えた電気自動車としては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、乗車前のエネルギ消費を減少させることを目的としており、温度調整,風量調整,吹出口切り替え,内外気切り替え等の全てを自動で制御し得るフルオートエアコンにプリエアコンディショニング機能を付加している。これにより、プリエアコンディショニング機能の動作時においては、冷暖房効率を向上させるために、自動で内気循環モードに切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−147420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された技術によれば、フルオートエアコンにプリエアコンディショニング機能を付加しているので、空調装置全体が非常に高価であり、より廉価な商用車等への適用が難しい。その一方で、商用車等においては業務中に炎天下等に曝される機会が多くなるため、プリエアコンディショニング機能の付加が望まれている。
【0007】
プリエアコンディショニング機能を商用車等に適用するには、より廉価な空調装置にプリエアコンディショニング機能を付加できるよう工夫する必要がある。商用車等に搭載される空調装置としては、温度調整,風量調整,吹出口切り替えおよび内外気切り替え等の全てを手動で操作するマニュアルエアコンが多く採用され、例えば、内外気切り替えを自動で行うことができない。仮に外気導入の状態でプリエアコンディショニング機能を動作させた場合には、外気温度が高く日射が強い環境下等(炎天下等)では、出発時刻に車室内を適温にすることができず、さらには無駄な電力を消費することになる。
【0008】
本発明の目的は、廉価な空調装置にプリエアコンディショニング機能を付加しつつ、無駄な電力消費を抑えることができる電気自動車の空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気自動車の空調装置は、外部電源により充電可能なバッテリを備えた電気自動車に搭載され、車室内の空調を行う電気自動車の空調装置であって、前記空調装置の電源をオン/オフ制御する空調制御手段と、前記車室内の操作パネルに設けられ、操作者により手動操作される空調状態切替手段と、前記空調制御手段に接続され、前記空調装置の電源をオン/オフさせるオン/オフ信号を受信する無線受信手段と、前記オン/オフ信号を前記無線受信手段に送信する無線送信手段と、前記空調制御手段に接続され、前記空調装置の吹出口を流通する空気の温度を検出する吹出口温度検出手段とを有し、前記空調制御手段は、前記オン信号に基づき前記空調装置の電源をオン制御し、前記吹出口温度検出手段による検出温度の変化状態に応じて前記空調装置の電源をオフ制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の電気自動車の空調装置は、前記空調制御手段は、前記空調装置の電源をオン制御してから所定時間経過後に前記吹出口温度検出手段によって検出された吹出口温度が、前記空調装置の電源オン時に前記吹出口温度検出手段によって検出された吹出口温度に応じて設定された所定温度範囲外のとき、前記空調装置の電源をオフ制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の電気自動車の空調装置は、前記空調制御手段は、前記オン信号に基づき前記空調装置の電源オン時の前記吹出口温度検出手段による吹出口温度が車室内適温範囲内にあるとき、前記空調装置の電源をオフ制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の電気自動車の空調装置は、前記空調制御手段は、前記電気自動車に前記外部電源が接続されているとき、前記空調装置の電源をオン制御することを特徴とする。
【0013】
本発明の電気自動車の空調装置は、前記空調状態切替手段は、風量調整スイッチ,吹出口切替スイッチ,内外気切替スイッチ,温度調整スイッチ,A/Cスイッチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電気自動車の空調装置によれば、空調装置の電源をオン/オフ制御する空調制御手段と、車室内の操作パネルに設けられ、操作者により手動操作される空調状態切替手段と、空調制御手段に接続され、空調装置の電源をオン/オフさせるオン/オフ信号を受信する無線受信手段と、オン/オフ信号を無線受信手段に送信する無線送信手段と、空調制御手段に接続され、空調装置の吹出口を流通する空気の温度を検出する吹出口温度検出手段とを有し、空調制御手段は、オン信号に基づき空調装置の電源をオン制御し、吹出口温度検出手段による検出温度の変化状態に応じて空調装置の電源をオフ制御する。したがって、例えば、空調状態切替手段の状態が適切で検出温度の変化状態が正常の場合には、空調装置の電源を継続してオン制御し、出発時刻に合わせて車室内の温度を適温にすることができる。一方、空調状態切替手段の状態が不適切で検出温度の変化状態が異常の場合には、空調装置の電源を落とすことができる。よって、廉価な空調装置にプリエアコンディショニング機能を付加しつつ、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0015】
本発明の電気自動車の空調装置によれば、空調制御手段は、空調装置の電源をオン制御してから所定時間経過後に吹出口温度検出手段によって検出された吹出口温度が、空調装置の電源オン時に吹出口温度検出手段によって検出された吹出口温度に応じて設定された所定温度範囲外のとき、空調装置の電源をオフ制御する。したがって、吹出口温度検出手段による検出温度の変化状態を、予め設定した時間および温度で管理することができ、より無駄な電力消費を抑えることができる。
【0016】
本発明の電気自動車の空調装置によれば、空調制御手段は、オン信号に基づき空調装置の電源オン時の吹出口温度検出手段による吹出口温度が車室内適温範囲内にあるとき、空調装置の電源をオフ制御する。したがって、車室内が適温である場合には空調装置を継続して動作させないので、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0017】
本発明の電気自動車の空調装置によれば、空調制御手段は、電気自動車に外部電源が接続されているとき、空調装置の電源をオン制御する。したがって、バッテリの残存容量を減らすことが無いので、電気自動車の走行距離を延ばすことができる。また、バッテリの充電時間が長引いたり、バッテリの寿命が短くなったりすることを防止できる。
【0018】
本発明の電気自動車の空調装置によれば、空調状態切替手段は、風量調整スイッチ,吹出口切替スイッチ,内外気切替スイッチ,温度調整スイッチ,A/Cスイッチであるので、マニュアルエアコンの基本構造を殆ど変更せずにプリエアコンディショニング機能を付加できる。したがって、空調装置全体のコストアップを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る空調装置を搭載した電気自動車を示す概略図である。
【図2】図1の空調装置の構造を説明する説明図である。
【図3】第1実施の形態に係る空調コントローラの制御内容を示すフローチャート図である。
【図4】各スイッチの操作パターンの例と所定時間後の車室内温度とを示す表である。
【図5】(a),(b)は、図4に基づく車室内温度[℃]と時間[t]との関係を示すグラフである。
【図6】第2実施の形態に係る空調コントローラの制御内容を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る空調装置を搭載した電気自動車を示す概略図を、図2は図1の空調装置の構造を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0021】
図1に示すように、電気自動車10は、一対の前輪11と一対の後輪12とを備えている。各前輪11は駆動輪となっており、各前輪11を駆動する駆動軸13には、減速比が一定の歯車列14を介してモータジェネレータ(電動モータ)15が連結されている。このように、電気自動車10は各前輪11を駆動する前輪駆動方式の車両となっている。
【0022】
モータジェネレータ15は、三相交流式の同期電動機により形成されている。モータジェネレータ15は、電気自動車10の後部座席の下部等(図示せず)に搭載された高電圧バッテリ(バッテリ)16からの電力の供給により回転駆動される。ここで、高電圧バッテリ16としては、二次電池であるリチウムイオン電池を採用しており、高電圧バッテリ16は、例えば400Vの直流電力を出力する。
【0023】
モータジェネレータ15と高電圧バッテリ16との間には、一対の給電線17a,17bを介してインバータ18が接続されている。インバータ18は、高電圧バッテリ16からの直流電流を三相の交流電流に変換し、モータジェネレータ15に電力を供給する。一方、モータジェネレータ15は、電気自動車10の制動時に発電機として働き、電気自動車10の運動エネルギを電気エネルギとして回収して、高電圧バッテリ16を充電するようになっている。
【0024】
電気自動車10には、高電圧バッテリ16に加えて低電圧バッテリ19が搭載されている。低電圧バッテリ19は、電気自動車10に搭載されるオーディオ機器(図示せず)やマニュアルエアコン30のブロワファン38等を駆動するために、例えば直流12Vの電力を供給する。なお、低電圧バッテリ19は、DC/DCコンバータ20により降圧された高電圧バッテリ16の電力により充電されるようになっている。
【0025】
各給電線17a,17bの高電圧バッテリ16とインバータ18との間には、一対のメインリレー21a,21bが設けられている。各メインリレー21a,21bは、高電圧バッテリ16とインバータ18との間を、接続状態または遮断状態に切り替えるようになっており、各メインリレー21a,21bは、EVCU(車両コントローラ)22からの駆動信号により駆動される。
【0026】
電気自動車10には車載充電器23が搭載され、車載充電器23は、商用電源等の外部電源(100V/200V)を昇圧して例えば400Vの直流電流に変換するようになっている。車載充電器23の出力側には、一対の充電線24a,24bが接続され、各充電線24a,24bは各給電線17a,17bにそれぞれ接続されている。各充電線24a,24bには、一対の充電用リレー25a,25bがそれぞれ設けられ、各充電用リレー25a,25bは、EVCU22からの駆動信号により駆動される。このように、EVCU22により各充電用リレー25a,25bを駆動することで、外部電源から車載充電器23を介して高電圧バッテリ16を充電することができる。
【0027】
車載充電器23の入力側には、充電ケーブル26の一端側(図中左側)が電気的に接続可能となっている。充電ケーブル26の一端側には、電気自動車10の受電コネクタ10aに装着可能な給電コネクタ26aが設けられ、充電ケーブル26の他端側(図中右側)には、例えば家庭用コンセント等のプラグ受け(図示せず)に差し込み可能な差し込みプラグ26bが設けられている。
【0028】
高電圧バッテリ16には、BCU(バッテリコントローラ)27が接続され、BCU27は、高電圧バッテリ16の充放電状態等を監視/管理するようになっている。BCU27,車載充電器23,インバータ18,EVCU22およびDC/DCコンバータ20は、それぞれ通信ネットワーク(CAN)28を介して互いに情報通信可能となっている。通信ネットワーク28を介して、例えば高電圧バッテリ16の残存容量等の情報がEVCU22に送信される。ここで、EVCU22およびBCU27は、制御信号を演算するCPUを備えるとともに、制御プログラム,演算式,マップデータ等を格納するROMや一時的にデータを格納するRAMを備えている。
【0029】
図2に示すように、電気自動車10には空調装置としてのマニュアルエアコン30が搭載されている。マニュアルエアコン30は、車室内(図示せず)の空調を行うものであり、操作者(運転者)の操作により、例えば夏季には冷房動作,冬季には暖房動作することで車室内を快適な温度/湿度に保つことができる。
【0030】
マニュアルエアコン30は、車室内のセンターコンソール等(図示せず)に設けられる操作パネル31を有している。操作パネル31には、空調状態切替手段としての風量調整スイッチ32,吹出口切替スイッチ33,内外気切替スイッチ34,温度調整スイッチ35およびA/Cスイッチ36が設けられている。風量調整スイッチ32,吹出口切替スイッチ33および温度調整スイッチ35はダイヤル式のスイッチ、内外気切替スイッチ34はレバー式のスイッチ、A/Cスイッチ36はプッシュ式のスイッチとなっている。各スイッチ32〜36は、何れも操作者により手動操作される。
【0031】
マニュアルエアコン30は、ダッシュボード等(図示せず)の内部に設けられる中空状のエアダクト37を備えている。エアダクト37内には空気が流通するようになっており、エアダクト37の入口側(図中左側)にはブロワファン38が設けられている。また、エアダクト37の出口側(図中右側)には吹出口39が設けられ、吹出口39のさらに出口側は、複数の吹出箇所に向けて分岐している。
【0032】
ブロワファン38は、操作パネル31の風量調整スイッチ32に電気的に接続されている。ブロワファン38は、風量調整スイッチ32を操作することにより低電圧バッテリ19(図1参照)からの電力で回転駆動され、図中矢印(1)に示す方向に5段階(ダイヤル位置1〜5)で回転速度が調整される。これによりブロワファン38による風量が5段階で調整される。
【0033】
エアダクト37のブロワファン38の近傍には、車室内の空気をエアダクト37内に循環させる内気循環と、車室外の空気をエアダクト37内に導入させる外気導入とを切り替える内外気切替ドア40が設けられている。内外気切替ドア40は、例えばリンク機構(図示せず)を介して操作パネル31の内外気切替スイッチ34に接続されている。これにより、図中矢印(2)に示すように、内外気切替スイッチ34を操作することで内外気切替ドア40が揺動し、内気循環(図中実線矢印)と外気導入(図中破線矢印)とを切り替えることができる。
【0034】
エアダクト37内のブロワファン38寄りには、エアダクト37内を塞ぐようにしてエバポレータ(蒸発器)41が設けられている。エバポレータ41は、マニュアルエアコン30の冷房運転時において、ブロワファン38からの空気を冷却するとともに、空気中に含まれる水分を除湿するようになっている。エバポレータ41には、鋼鉄製のパイプ42を介して、膨張弁(エキスパンションバルブ)43,コンデンサ(凝縮器)44および電動コンプレッサ45が接続されている。これらのエバポレータ41,パイプ42,膨張弁43,コンデンサ44および電動コンプレッサ45は、それぞれ閉回路を形成しており、内部には所定量の冷媒ガス(例えばHFC134a)が封入されている。
【0035】
電動コンプレッサ45は、操作パネル31のA/Cスイッチ36に電気的に接続されている。電動コンプレッサ45は、A/Cスイッチ36をオン操作することで高電圧バッテリ16(図1参照)からの電力で回転駆動され、これにより冷媒ガスが閉回路内を循環して、エバポレータ41を通過する空気の冷却/除湿が行われる。このように、マニュアルエアコン30の冷房装置は、所謂蒸気圧縮式の冷房装置となっている。
【0036】
エアダクト37内の略中央部分には、エアダクト37内の略半分を塞ぐようにして電気ヒータ46が設けられている。電気ヒータ46は、マニュアルエアコン30の暖房運転時において、ブロワファン38からの空気を加熱するようになっている。電気ヒータ46は電気抵抗(図示せず)により形成され、空調コントローラ50によりマニュアルエアコン30の電源がオン制御された時に発熱するようになっている。このように、マニュアルエアコン30の暖房装置は、所謂電気式の暖房装置となっている。
【0037】
電気ヒータ46の近傍には、エバポレータ41のみを通過した空気と、エバポレータ41および電気ヒータ46の双方を通過した空気とを混合(図中網掛矢印参照)し、その下流側の空気の温度を調整するミックスドア47が設けられている。ミックスドア47は、例えばリンク機構(図示せず)を介して操作パネル31の温度調整スイッチ35に接続されている。これにより、図中矢印(3)に示すように、温度調整スイッチ35を操作することでミックスドア47が揺動し、空気の混合具合、つまり空気の温度が調整される。
【0038】
エアダクト37内の吹出口39の近傍には、吹出口39を流通する空気の吹出箇所を切り替える複数の吹出口切替ドア48(図示では2つのみ示す)が設けられている。車室内への吹出箇所としては、例えば足下(FOOT),正面(FACE),フロントガラス(DEF)等がある。各吹出口切替ドア48は、例えばリンク機構(図示せず)を介して操作パネル31の吹出口切替スイッチ33に接続されている。これにより、図中矢印(4)に示すように、吹出口切替スイッチ33を操作することで各吹出口切替ドア48が揺動し、空気の吹出箇所が車室内の足下,正面,フロントガラスの任意の位置に設定される。
【0039】
吹出口39の近傍には、吹出口39を流通する空気(吹出風)の温度を検出する吹出口温度センサ(吹出口温度検出手段)49が設けられている。吹出口温度センサ49はエアダクト37に固定され、例えばサーミスタ等により形成されている。吹出口温度センサ49は空調コントローラ50に接続され、吹出口温度センサ49による検出温度(吹出口温度)は、空調コントローラ50に出力される。
【0040】
マニュアルエアコン30は、乗車前に車室内の温度を適温にし得るプリエアコンディショニング機能を備えている。プリエアコンディショニング機能は、空調コントローラ(空調制御手段)50により動作し、空調コントローラ50はマニュアルエアコン30の電源をオン/オフ制御するようになっている。空調コントローラ50には、通信ネットワーク28を介して受信アンテナ(無線受信手段)51が接続されている。受信アンテナ51は、マニュアルエアコン30の電源をオン/オフさせるオン/オフ信号を、空調リモコン(無線送信手段)52から受信するようになっている。
【0041】
空調リモコン52は、操作者により携帯できるよう小型に形成され、例えば家屋内等の車室外から操作することで、マニュアルエアコン30の電源をオン/オフさせるオン/オフ信号を受信アンテナ51に送信する。これにより、空調リモコン52を用いて遠隔からマニュアルエアコン30の電源をオン/オフ制御することができる。
【0042】
空調コントローラ50にはタイマー部53が設けられている。タイマー部53は時計機能を有しており、空調リモコン52を操作してプリエアコンディショニング機能を働かせたい時間に設定することで、所望の時間(出発時刻等)に自動的に車室内を適温にすることができる。また、タイマー部53には、プリエアコンディショニング機能を動作させる時間をカウントするカウンタ機能が設けられている。カウンタ機能は、プリエアコンディショニング機能が正常に動作していない場合に、プリエアコンディショニング機能の動作を強制停止させ、無駄な電力の消費を抑えるものである。
【0043】
空調リモコン52には、操作ボタン54およびディスプレイ55が設けられている。操作ボタン54を操作することにより、受信アンテナ51にオン/オフ信号を送信したりタイマー部53の時計機能の設定を行ったりする。また、ディスプレイ55は、プリエアコンディショニング機能の動作状況(オン/オフ状態,車室内温度,動作時間,エラー情報等)をリアルタイムで表示するようになっている。
【0044】
次に、以上のように形成した第1実施の形態に係るマニュアルエアコン30の動作について、図面を用いて詳細に説明する。図3は第1実施の形態に係る空調コントローラの制御内容を示すフローチャート図を表している。
【0045】
図3に示すようにステップS1では、プリエアコンディショニング機能が動作する前で、マニュアルエアコン30の電源がオフの状態にあるか否か(F=0であるか否か)を判定する。ステップS1において、マニュアルエアコン30の電源がオフの状態であると判定(yesと判定)した場合にはステップS2に進み、マニュアルエアコン30の電源がオンの状態であると判定(noと判定)した場合にはステップS3に進む。
【0046】
ステップS2では、操作者により空調リモコン52がオン操作され、空調リモコン52からオン信号が送信されたか否か、つまり受信アンテナ51によりオン信号を受信したか否かを判定する。ステップS2において、受信アンテナ51によりオン信号を受信したと判定(yes判定)した場合にはステップS4に進み、受信アンテナ51によりオン信号を受信していないと判定(no判定)した場合にはステップS5に進む。
【0047】
ステップS4では、受信アンテナ51がオン信号を受信したことに基づき、高電圧バッテリ16の残存容量を確認し、プリエアコンディショニング機能を動作可能か否か判定する。ここで、空調コントローラ50は、BCU27からの通信情報により高電圧バッテリ16の残存容量を確認し、高電圧バッテリ16の残存容量が所定値以上、つまりプリエアコンディショニング機能を動作できる残存容量であるか否かを判定する。ステップS4において、高電圧バッテリ16の残存容量が所定値以上である場合(yes判定)にはステップS6に進み、高電圧バッテリ16の残存容量が所定値よりも少ない場合(no判定)にはステップS7に進む。
【0048】
ステップS6では、高電圧バッテリ16の残存容量が充分であることに基づき、各メインリレー21a,21bをそれぞれオン制御する。続くステップS8では、各メインリレー21a,21bのオン制御に基づき、マニュアルエアコン30の電源がオン制御(電源オン)される。このとき、操作パネル31の各スイッチ32〜36の操作パターンに関わらず、空調コントローラ50はマニュアルエアコン30の電源をオン制御する。
【0049】
続くステップS9では、マニュアルエアコン30の電源がオン制御された直後の吹出口39の温度K(≒車室内温度)を、吹出口温度センサ49により検出する。ステップS9において、電源オン時(当初)の吹出口39の温度Kが、K<10℃である場合にはステップS10に進み、K>30℃である場合にはステップS11に進み、10℃<K<30℃である場合にはステップS12に進む。
【0050】
ステップS10では、当初の吹出口39の温度Kが10℃以下の低温であるとして、冬季フラグ(F=1)を立てて、その後ステップS13に進む。ステップS11では、当初の吹出口39の温度Kが30℃以上の高温であるとして、夏季フラグ(F=2)を立てて、その後ステップS13に進む。
【0051】
ステップS12では、プリエアコンディショニング機能を動作させる必要が無い、つまり当初の吹出口39の温度Kが所定温度範囲内(車室内適温範囲内)10℃<K<30℃にあるとして、空調リモコン52に『車室内適温』の旨を報知して、その後ステップS14に進む。ステップS14では、マニュアルエアコン30の電源がオフ制御されてステップS15に進む。
【0052】
ステップS15では、各メインリレー21a,21bをそれぞれオフ制御し、続くステップS16において、マニュアルエアコン30の電源がオフであることを示すフラグ(F=0)に設定する。これにより、空調リモコン52のディスプレイ55には、『車室内は適温です』や『プリエアコンディショニング機能を停止しました』等のメッセージが表示される。なお、ステップS16の処理を終えた後は、ステップS1に戻るリターン処理がなされる。
【0053】
ステップS13では、タイマー部53のカウンタ機能によるカウント値Tを初期化(T=0)する。続くステップS17では、カウント値Tを+1インクリメントする。続くステップS18では、カウント値Tが所定時間経過(3分経過)したか否かを判定、つまりマニュアルエアコン30の電源をオン制御してから3分経ったか否かを判定する。マニュアルエアコン30の電源をオン制御してから3分経過したと判定(yes判定)した場合には、ステップS19に進む。また、マニュアルエアコン30の電源をオン制御してから未だ3分経過していないと判定(no判定)した場合には、ステップS17に戻る。ここで、ステップS18における所定時間(3分)は、マニュアルエアコン30の能力に応じて任意に設定(3分未満や4分以上に設定)することができる。
【0054】
ステップS19では、冬季フラグが立っているか否か、つまりF=1であるか否かを判定し、F=1(冬季)であると判定(yes判定)した場合にはステップS20に進み、F=2(夏季)であると判定(no判定)した場合にはステップS21に進む。
【0055】
ステップS20では、現在の吹出口39の温度K、つまりステップS8でマニュアルエアコン30の電源をオン制御してから3分経過した後の吹出口39の温度Kが、30℃よりも高いか否かを判定する。ステップS20において、吹出口39の温度Kが30℃よりも高いと判定(yes判定)した場合には、車室内の温度が充分に暖められ、吹出口温度センサ49の検出温度の変化状態が正常である、つまりプリエアコンディショニング機能(暖房動作)が正常動作しているとして、ステップS1に戻るリターン処理がなされる。
【0056】
一方、ステップS20でnoと判定、つまりマニュアルエアコン30の電源をオン制御してから3分経過したにも関わらず、吹出口39の温度Kが30℃以下(所定温度範囲外)である場合にはステップS22に進む。ステップS22では、車室内の温度上昇が充分ではなく、吹出口温度センサ49の検出温度の変化状態が異常である、つまりプリエアコンディショニング機能が正常動作していないとして、マニュアルエアコン30の電源をオフ制御(強制停止)する。これにより、高電圧バッテリ16の残存容量が無駄に消費されるのを抑制する。
【0057】
その後、ステップS23に進み、各メインリレー21a,21bをそれぞれオフ制御する。続くステップS24では、各スイッチ32〜36の操作パターンが不適切であるとして、空調リモコン52に『スイッチ操作不適』の旨を報知し、空調リモコン52のディスプレイ55には『各スイッチの操作が不適切です』や『プリエアコンディショニング機能を停止しました』等のメッセージが表示される。その後、ステップS25に進み、マニュアルエアコン30によるプリエアコンディショニング機能の動作を終了する。
【0058】
ステップS21では、現在の吹出口39の温度Kが20℃よりも低いか否かを判定する。ステップS21において、吹出口39の温度Kが20℃よりも低いと判定(yes判定)した場合には、車室内の温度が充分に冷やされ、吹出口温度センサ49の検出温度の変化状態が正常である、つまりプリエアコンディショニング機能(冷房動作)が正常動作しているとして、ステップS1に戻るリターン処理がなされる。一方、ステップS21でnoと判定(所定温度範囲外であると判定)した場合には、ステップS20におけるno判定と同様に、ステップS22,ステップS23,ステップS24およびステップS25に進む。
【0059】
F=1またはF=2に設定されていて、ステップS20およびステップS21でyesと判定した場合は、プリエアコンディショニング機能が正常動作している。つまり、本実施の形態では、ステップS9において当初の吹出口39の温度Kを検出し、当初の温度Kが所定温度よりも低い場合、F=1(冬季)と判断し、マニュアルエアコン30をオン制御してから所定時間経過後(3分経過後)の温度Kが所定温度よりも高くなっていればステップS20でyesと判断される。また、ステップS9において当初の吹出口39の温度Kが所定温度よりも高い場合、F=2(夏季)と判断し、マニュアルエアコン30をオン制御してから所定時間経過後の温度Kが所定温度よりも低くなっていればステップS21でyesと判断される。なお、リターン処理後のステップS1においてはnoと判定される。
【0060】
その後、ステップS3では、操作者により空調リモコン52が操作され、空調リモコン52からオフ信号が送信されたか否か、つまり受信アンテナ51によりオフ信号を受信したか否かを判定する。ステップS3において、受信アンテナ51によりオフ信号を受信したと判定(yes判定)した場合にはステップS14に進み、受信アンテナ51によりオフ信号を受信していないと判定(no判定)した場合にはリターン処理がなされる。つまり、プリエアコンディショニング機能が正常動作している場合には、空調リモコン52をオン操作してからオフ操作されるまで、プリエアコンディショニング機能は継続して動作する。
【0061】
ステップS2でnoと判定、つまりマニュアルエアコン30の電源がオフの状態(F=0)で、かつ操作者により空調リモコン52が操作されていない状態においては、ステップS5で外部電源が接続中であるか否かを判定する。ステップS5では、図1に示す受電コネクタ10aに給電コネクタ26aが接続され、かつ家庭用コンセント等のプラグ受けに差し込みプラグ26bが差し込まれているか否かにより判定する。ここで、外部電源が接続中であるか否かの判定は、通信ネットワーク28を介してEVCU22から空調コントローラ50に入力される充電情報に基づき行われる。
【0062】
ステップS5において、外部電源が接続中であると判定(yes判定)された場合にはステップS26に進み、外部電源が接続中ではないと判定(no判定)された場合にはステップS14に進む。
【0063】
ステップS26では、タイマー部53の時計機能に基づき、操作者により設定されたプリエアコンディショニング機能を動作させる時間となったか否かを判定する。ステップS26において、プリエアコンディショニング機能の設定時刻であると判定(yes判定)した場合にはステップS4に進み、未だプリエアコンディショニング機能の設定時刻ではないと判定(no判定)した場合にはステップS14に進む。
【0064】
ステップS7では、ステップS4での判定(高電圧バッテリ16の残存容量が所定値よりも少ないとの判定)に基づき、空調リモコン52に『バッテリ容量不足』の旨を報知し、空調リモコン52のディスプレイ55には『バッテリの容量が不足しています』や『プリエアコンディショニング機能を動作できません』等のメッセージが表示される。ステップS7での処理を終えた後、ステップS14に進む。
【0065】
次に、マニュアルエアコン30によるプリエアコンディショニング機能の具体的な動作について、図面を用いて詳細に説明する。図4は各スイッチの操作パターンの例と所定時間後の車室内温度とを示す表を、図5(a),(b)は図4に基づく車室内温度[℃]と時間[t]との関係を示すグラフをそれぞれ表している。
【0066】
[操作パターン1]
図4に示す操作パターン1は、夏季の日射が強い環境下(炎天下等)に駐車した場合の各スイッチ32,34〜36の最適な操作パターンを示している。つまり、内外気切替スイッチ34は内気循環,A/Cスイッチ36はオン,風量調整スイッチ32は強い側でオン(ダイヤル位置5等),温度調整スイッチ35はCOOL側となっている。操作パターン1の状態でプリエアコンディショニング機能を動作させると、図5(a)の実線グラフ(内気循環)に示すように、プリエアコンディショニング機能の動作後3分以内に、吹出口39の温度Kが約55℃から約12℃にまで低下し、所定温度範囲の20℃以下(図中網掛範囲)となる。これにより、出発時刻には車室内を適温にしておくことができる。
【0067】
ここで、日陰等の日射が弱い環境下に駐車する場合には、例えば風量調整スイッチ32を弱い側でオン(ダイヤル位置2等)にしておくこともできる。つまり、日射が強い環境下に比して日射が弱い環境下では車室内温度が低いため、風量調整スイッチ32を弱い側でオンにしたとしても、プリエアコンディショニング機能の動作後3分以内に吹出口39の温度Kを20℃以下にすることができる。この場合、ブロワファン38による無駄な電力消費を抑えることが可能となる。
【0068】
[操作パターン2]
図4に示す操作パターン2は、夏季の日射が強い環境下(炎天下等)に駐車した場合の各スイッチ32,34〜36の不適切な操作パターンの一例を示している。つまり、内外気切替スイッチ34は外気導入,A/Cスイッチ36はオン,風量調整スイッチ32は強い側でオン(ダイヤル位置5等),温度調整スイッチ35はCOOL側となっている。操作パターン2の状態でプリエアコンディショニング機能を動作させても、図5(a)の一点鎖線グラフ(外気導入)に示すように、プリエアコンディショニング機能の動作後3分以内に、吹出口39の温度Kが所定温度範囲の20℃以下(適温)にならない(NG)。これは、車室外から導入される熱気により冷房効率が大幅に低下したことに起因する。なお、この場合における図3のステップS21での判定はnoとなる。
【0069】
ただし、内外気切替スイッチ34を外気導入とした場合であっても、例えば、雨天時等の日射が弱いときには、プリエアコンディショニング機能の動作後3分以内に吹出口39の温度Kを所定温度範囲の20℃以下にできる場合がある。
【0070】
[操作パターン3]
図4に示す操作パターン3は、冬季で外気温度が低温である場合の各スイッチ32,34〜36の最適な操作パターンを示している。つまり、内外気切替スイッチ34は内気循環,A/Cスイッチ36はオフ,風量調整スイッチ32は強い側でオン(ダイヤル位置5等),温度調整スイッチ35はHOT側となっている。操作パターン3の状態でプリエアコンディショニング機能を動作させると、図5(b)の実線グラフ(内気循環)に示すように、プリエアコンディショニング機能の動作後3分以内に、吹出口39の温度Kが約−10℃から約35℃にまで上昇し、所定温度範囲の30℃以上(図中網掛範囲)となる。これにより、出発時刻には車室内を適温にしておくことができる。
【0071】
ここで、屋内駐車場等に駐車する場合には、屋外よりも外気温度が高いため、例えば風量調整スイッチ32を弱い側でオン(ダイヤル位置2等)にしておくこともできる。つまり、屋内駐車場等においては、車室内温度がそれほど低下しておらず、風量調整スイッチ32を弱い側でオンにしたとしても、プリエアコンディショニング機能の動作後3分以内に吹出口39の温度Kを30℃以上にすることができる。この場合、ブロワファン38による無駄な電力消費を抑えることが可能となる。
【0072】
[操作パターン4]
図4に示す操作パターン4は、冬季で外気温度が低温である場合の各スイッチ32,34〜36の不適切な操作パターンの一例を示している。つまり、内外気切替スイッチ34は外気導入,A/Cスイッチ36はオフ,風量調整スイッチ32は強い側でオン(ダイヤル位置5等),温度調整スイッチ35はHOT側となっている。操作パターン4の状態でプリエアコンディショニング機能を動作させても、図5(b)の一点鎖線グラフ(外気導入)に示すように、プリエアコンディショニング機能の動作後3分以内に、吹出口39の温度Kが所定温度範囲の30℃以上(適温)にならない(NG)。これは、車室外から導入される冷気により暖房効率が大幅に低下したことに起因する。なお、この場合における図3のステップS20での判定はnoとなる。
【0073】
ただし、内外気切替スイッチ34を外気導入とした場合であっても、例えば、晴天時等の日射が強いときには、プリエアコンディショニング機能の動作後3分以内に吹出口39の温度Kを所定温度範囲の30℃以上にできる場合がある。
【0074】
以上詳述したように、第1実施の形態に係るマニュアルエアコン30によれば、マニュアルエアコン30の電源をオン/オフ制御する空調コントローラ50と、車室内の操作パネル31に設けられ、操作者により手動操作される各スイッチ32〜36と、空調コントローラ50に接続され、マニュアルエアコン30の電源をオン/オフさせるオン/オフ信号を受信する受信アンテナ51と、オン/オフ信号を受信アンテナ51に送信する空調リモコン52と、空調コントローラ50に接続され、マニュアルエアコン30の吹出口39を流通する空気の温度を検出する吹出口温度センサ49とを備えている。そして、空調コントローラ50は、オン信号に基づきマニュアルエアコン30の電源をオン制御し、3分経過後の吹出口温度センサ49による検出温度(温度K)が20℃以上(夏季)または30℃以下(冬季)のとき、吹出口温度センサ49による検出温度の変化状態が異常であるとしてマニュアルエアコン30の電源をオフ制御する。
【0075】
したがって、各スイッチ32〜36の状態が適切で吹出口温度センサ49による検出温度の変化状態が正常である場合には、出発時刻に合わせて車室内の温度を適温にすることができる。一方、各スイッチ32〜36の状態が不適切で吹出口温度センサ49による検出温度の変化状態が異常である場合には、マニュアルエアコン30の電源を落とすことができる。よって、マニュアルエアコン等の廉価な空調装置にプリエアコンディショニング機能を付加しつつ、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0076】
また、第1実施の形態に係るマニュアルエアコン30によれば、吹出口温度センサ49による検出温度の変化状態を、予め設定した時間および温度で管理するので、より無駄な電力消費を抑えることができる。
【0077】
さらに、第1実施の形態に係るマニュアルエアコン30によれば、空調コントローラ50は、オン信号に基づきマニュアルエアコン30の電源オン時の吹出口温度センサ49による吹出口温度(温度K)が10℃<K<30℃の範囲内(車室内適温範囲内)にあるとき、マニュアルエアコン30の電源をオフ制御する。したがって、車室内が適温である場合にはマニュアルエアコン30を継続して動作させないので、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0078】
また、第1実施の形態に係るマニュアルエアコン30によれば、各スイッチ32〜36は、風量調整スイッチ32,吹出口切替スイッチ33,内外気切替スイッチ34,温度調整スイッチ35,A/Cスイッチ36であるので、マニュアルエアコン30の基本構造を殆ど変更せずにプリエアコンディショニング機能を付加できる。したがって、マニュアルエアコン30全体のコストアップを最小限に抑えることができる。
【0079】
次に、本発明の第2実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図6は第2実施の形態に係る空調コントローラの制御内容を示すフローチャート図を表している。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0080】
第2実施の形態に係るマニュアルエアコン30は、上述した第1実施の形態に比して、空調コントローラ50の制御内容が異なっている。第2実施の形態に係る空調コントローラ50は、電気自動車10に外部電源が接続されている場合、つまり電気自動車10の受電コネクタ10aに充電ケーブル26の給電コネクタ26aが接続され、かつ家庭用コンセントのプラグ受け等に充電ケーブル26の差し込みプラグ26bが差し込まれている場合(図1参照)にのみ、プリエアコンディショニング機能を動作させる。
【0081】
図6に示すように、第2実施の形態に係る空調コントローラ50は、図3に示すステップS4に替えてステップS30を、ステップS7に替えてステップS31を、ステップS5を省略してステップS3のno判定の後にステップS32を加えている。
【0082】
ステップS30では、受信アンテナ51がオン信号を受信したことに基づき、電気自動車10に外部電源が接続されているか否かを判定する。ステップS30で電気自動車10に外部電源が接続されていると判定(yes判定)した場合にはステップS6に進み、各メインリレー21a,21bをそれぞれオン制御する。一方、ステップS30で電気自動車10に外部電源が接続されていないと判定(no判定)した場合にはステップS31に進む。
【0083】
ステップS31では、ステップS30での判定(電気自動車10に外部電源が接続されていないとの判定)に基づき、空調リモコン52に『外部電源未接続』の旨を報知し、空調リモコン52のディスプレイ55には『外部電源が接続されていません』や『プリエアコンディショニング機能を動作できません』等のメッセージが表示される。ステップS31での処理を終えた後、ステップS14に進む。
【0084】
ステップS32では、ステップS3において受信アンテナ51によりオフ信号を受信していないと判定(no判定)したことに基づき、電気自動車10に外部電源が接続されているか否かを判定する。ステップS32において、電気自動車10に外部電源が接続されていると判定(yes判定)した場合にはリターン処理がなされ、電気自動車10に外部電源が接続されていないと判定(no判定)した場合にはステップS14に進む。つまり、ステップS6以降の処理が実行され、プリエアコンディショニング機能が正常に働いている場合には、空調リモコン52をオン操作してからオフ操作されるまで、または電気自動車10と外部電源の接続が断たれるまで、プリエアコンディショニング機能は継続して動作する。
【0085】
以上詳述したように、第2実施の形態に係るマニュアルエアコン30においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、第2実施の形態に係るマニュアルエアコン30においては、空調コントローラ50は、電気自動車10に外部電源が接続されているとき、マニュアルエアコン30の電源をオン制御するので、高電圧バッテリ16の残存容量を減らすことが無い。したがって、電気自動車10の走行距離を延ばすことができ、さらには高電圧バッテリ16の充電時間が長引いたり、高電圧バッテリ16の寿命が短くなったりすることを防止できる。
【0086】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、マニュアルエアコン30をモータジェネレータ15のみを駆動源とする車両(EV)に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、モータジェネレータ(電動モータ)およびエンジンを駆動源とする車両(PHEV)等にも適用することができる。
【0087】
また、上記各実施の形態においては、各前輪11により駆動する前輪駆動方式の車両としたものを示したが、本発明はこれに限らず、各後輪12により駆動する後輪駆動方式の車両や、全ての車輪を駆動する4輪駆動方式の車両にも適用することができる。
【0088】
さらに、上記各実施の形態においては、高電圧バッテリ16としてリチウムイオン電池を採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、二次電池であれば電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタを採用することもできる。
【0089】
また、上記各実施の形態においては、廉価な空調装置として、各スイッチ32〜36の全てを手動操作するマニュアルエアコン30を採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、温度調整のみを自動的に調整し得るセミオートエアコンにも採用することができる。
【符号の説明】
【0090】
10 電気自動車
16 高電圧バッテリ(バッテリ)
30 マニュアルエアコン(空調装置)
31 操作パネル
32 風量調整スイッチ(空調状態切替手段)
33 吹出口切替スイッチ(空調状態切替手段)
34 内外気切替スイッチ(空調状態切替手段)
35 温度調整スイッチ(空調状態切替手段)
36 A/Cスイッチ(空調状態切替手段)
39 吹出口
49 吹出口温度センサ(吹出口温度検出手段)
50 空調コントローラ(空調制御手段)
51 受信アンテナ(無線受信手段)
52 空調リモコン(無線送信手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源により充電可能なバッテリを備えた電気自動車に搭載され、車室内の空調を行う電気自動車の空調装置であって、
前記空調装置の電源をオン/オフ制御する空調制御手段と、
前記車室内の操作パネルに設けられ、操作者により手動操作される空調状態切替手段と、
前記空調制御手段に接続され、前記空調装置の電源をオン/オフさせるオン/オフ信号を受信する無線受信手段と、
前記オン/オフ信号を前記無線受信手段に送信する無線送信手段と、
前記空調制御手段に接続され、前記空調装置の吹出口を流通する空気の温度を検出する吹出口温度検出手段とを有し、
前記空調制御手段は、前記オン信号に基づき前記空調装置の電源をオン制御し、前記吹出口温度検出手段による検出温度の変化状態に応じて前記空調装置の電源をオフ制御することを特徴とする電気自動車の空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の電気自動車の空調装置において、前記空調制御手段は、前記空調装置の電源をオン制御してから所定時間経過後に前記吹出口温度検出手段によって検出された吹出口温度が、前記空調装置の電源オン時に前記吹出口温度検出手段によって検出された吹出口温度に応じて設定された所定温度範囲外のとき、前記空調装置の電源をオフ制御することを特徴とする電気自動車の空調装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の電気自動車の空調装置において、前記空調制御手段は、前記オン信号に基づき前記空調装置の電源オン時の前記吹出口温度検出手段による吹出口温度が車室内適温範囲内にあるとき、前記空調装置の電源をオフ制御することを特徴とする電気自動車の空調装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気自動車の空調装置において、前記空調制御手段は、前記電気自動車に前記外部電源が接続されているとき、前記空調装置の電源をオン制御することを特徴とする電気自動車の空調装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気自動車の空調装置において、前記空調状態切替手段は、風量調整スイッチ,吹出口切替スイッチ,内外気切替スイッチ,温度調整スイッチ,A/Cスイッチであることを特徴とする電気自動車の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−25898(P2011−25898A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176580(P2009−176580)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】