説明

電気自動車

【課題】電動機の制御性が低下するのを抑制する。
【解決手段】制御モードCmが正弦波制御モードや過変調制御モードのときにモータのトルク指令Tm*が急変しているときには(S170,S190)、トルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定すると共に設定したゲインを用いたフィードバック制御によって電圧指令Vd*,Vq*を設定してインバータを制御する(S210〜S230)。また、制御モードCmが矩形波制御モードのときにモータのトルク指令Tm*が急変しているときには(S170,S240)、トルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定すると共に設定したゲインを用いたフィードバック制御によって電圧位相指令θ*を設定してインバータを制御する(S260〜S280)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に関し、詳しくは、走行用の動力を出力可能な電動機と、電動機を駆動するインバータと、インバータを介して電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備える電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータとモータを駆動するインバータとを備える装置において、インバータの出力電流が大きいほど小さくなる傾向の比例ゲインおよび積分時定数を用いたフィードバック制御によってd軸,q軸電流設定値とd軸,q軸電流検出値との差が打ち消されるよう制御信号を生成し、生成した制御信号を2相−3相変換し、さらにPWM波形に変換してインバータの各半導体スイッチをスイッチング制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、インバータの出力電流が大きい領域において、モータ定数Ld,Lqが磁気飽和の影響で小さくなりモータの制御性が不安定になりやすいことを考慮して、比例ゲインおよび積分時定数を小さくすることにより、モータの制御性が不安定になるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−275381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の装置を搭載する電気自動車では、インバータの各半導体スイッチのスイッチング制御に用いるインバータの出力電流の検出値とその制御タイミングにおけるインバータの出力電流の実際の値とが乖離しやすいとき(例えば、モータから出力すべき目標トルクの急変時など)などに、制御に適した比例ゲインや積分時定数を設定することができずにモータの制御性が低下してしまう場合がある。
【0005】
本発明の電気自動車は、電動機の制御性が低下するのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電気自動車は、
走行用の動力を出力可能な電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、前記インバータを介して前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備える電気自動車であって、
アクセル操作量,前記電動機から出力すべき目標トルク,前記電動機に通電すべき目標電流のいずれかに基づいてフィードバック制御におけるゲインを設定するゲイン設定手段と、
前記設定されたゲインを用いたフィードバック制御によって前記電動機から出力されるトルクが該電動機から出力すべき目標トルクとなるよう前記インバータを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電気自動車では、アクセル操作量,電動機から出力すべき目標トルク,電動機に通電すべき目標電流のいずれかに基づいてフィードバック制御におけるゲインを設定し、設定したゲインを用いたフィードバック制御によって電動機から出力されるトルクが電動機から出力すべき目標トルクとなるようインバータを制御する。これにより、特に電動機から出力すべき目標トルクの急変時などに、電動機から出力されるトルクや電動機に通電される電流に基づいてゲインを設定するものに比してより適正なゲインが設定可能となり、電動機の制御性が低下するのを抑制することができる。ここで、「ゲイン」は、アクセル開度や電動機から出力すべき目標トルクの大きさ,電動機に通電すべき目標電流の大きさが大きいほど小さくなる傾向に設定される、ものとすることができる。
【0009】
こうした本発明の電気自動車において、前記ゲイン設定手段は、前記電動機から出力すべき目標トルク又は該電動機に通電すべき目標電流の急変時でないときには、前記電動機から出力されるトルク又は前記電動機に通電される電流に基づいてゲインを設定する手段である、ものとすることができる。ここで、「ゲイン」は、電動機から出力されるトルクの大きさや電動機に通電される電流の大きさが大きいほど小さくなる傾向に設定される、ものとすることができる。
【0010】
また、本発明の電気自動車において、前記制御手段は、矩形波電圧を用いて前記電動機を駆動する際には、前記電動機から出力すべき目標トルクと該電動機から出力されるトルクとの差分と前記設定されたゲインとを用いたフィードバック制御によって矩形波電圧の目標電圧位相を設定すると共に該設定した目標電圧位相を用いて前記インバータを制御する手段である、ものとすることもできる。また、前記制御手段は、パルス幅変調による擬似的な三相交流電圧を用いて前記電動機を駆動する際には、前記電動機に通電すべき目標電流と該電動機に通電される電流との差分と前記設定されたゲインとを用いたフィードバック制御によって前記電動機に印加すべき目標電圧を設定すると共に該設定した目標電圧を用いて前記インバータを制御する手段である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】電子制御ユニット50により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】制御モード設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】目標電流設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図7】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、例えば永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを有する同期発電電動機として構成されて駆動輪26a,26bにデファレンシャルギヤ24を介して接続された駆動軸22に動力を入出力可能なモータ32と、モータ32を駆動するインバータ34と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ36と、インバータ34が接続された電力ライン(以下、高電圧系電力ラインという)42とバッテリ36が接続された電力ライン(以下、電池電圧系電力ラインという)44とに接続されて電池電圧系電力ライン44の電力を昇圧して高電圧系電力ライン42に供給可能な昇圧コンバータ40と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット50と、を備える。なお、高電圧系電力ライン42の正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ46が接続されており、電池電圧系電力ライン44の正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ48が接続されている。
【0014】
インバータ34は、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT11〜T16と、トランジスタT11〜T16に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16と、により構成されている。トランジスタT11〜T16は、高電圧系電力ライン42の正極母線と負極母線とに対してソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータ32の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、インバータ34に電圧が作用している状態でトランジスタT11〜T16のオン時間の割合を制御することにより、三相コイルに回転磁界を形成でき、モータ32を回転駆動することができる。
【0015】
電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に処理プログラムを記憶するROM54と、データを一時的に記憶するRAM56と、図示しない入出力ポートと、を備える。電子制御ユニット50には、モータ32のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ32aからのモータ32のロータの回転位置θmや、インバータ34からモータ32への電力ラインに取り付けられた電流センサ32U,32Vからの相電流Iu,Iv,バッテリ36の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ36の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ36に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度,コンデンサ46の端子間に取り付けられた電圧センサ46aからのコンデンサ46の電圧(高電圧系電力ライン42の電圧)VHやコンデンサ48の端子間に取り付けられた電圧センサ48aからのコンデンサ48の電圧(電池電圧系電力ライン44の電圧)VL,イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号,シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSP,アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ68からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット50からは、インバータ34のトランジスタT11〜T16へのスイッチング制御信号や昇圧コンバータ40のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、電子制御ユニット50は、回転位置検出センサ32aからのモータ32のロータの回転位置θmに基づいてモータ32の電気角θeや回転数Nmも演算している。
【0016】
次に、こうして構成された実施例の電気自動車20の動作について説明する。図2は、電子制御ユニット50により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。なお、電子制御ユニット50は、このルーチンと並行して、モータ32から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm*とモータ32の回転数Nmとからなる目標駆動点でモータ32を駆動できる電圧を高電圧系電力ライン42の目標電圧VH*に設定すると共に高電圧系電力ライン42の電圧VHが目標電圧VH*となるよう昇圧コンバータ40のスイッチング素子をスイッチング制御する。
【0017】
駆動制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50のCPU52は、まず、アクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accや車速センサ68からの車速V,モータ32の回転数Nm,電気角θe,電流センサ32U,32Vからの相電流Iu,Ivなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータ32の回転数Nmや電気角θeは、回転位置検出センサ32aにより検出されたモータ32のロータの回転位置θmに基づいて演算されてRAM56に書き込まれたものを読み込むことによりそれぞれ入力するものとした。
【0018】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動軸22に出力すべき要求トルクTd*を設定すると共に(ステップS110)、設定した要求トルクTd*をモータ32のトルク指令Tm*に設定する(ステップS120)。ここで、要求トルクTd*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTd*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM54に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTd*を導出して設定するものとした。図3に要求トルク設定用マップの一例を示す。
【0019】
続いて、設定したモータ32のトルク指令Tm*と回転数Nmとに基づいてインバータ34の制御モードCmを設定する(ステップS130)。ここで、制御モードCmは、実施例では、モータ32のトルク指令Tm*と回転数Nmと制御モードCmとの関係を予め定めて制御モード設定用マップとしてROM54に記憶しておき、モータ32のトルク指令Tm*と回転数Nmとが与えられると記憶したマップから対応する制御モードCmを導出して設定するものとした。図4に制御モード設定用マップの一例を示す。インバータ34の制御モードCmは、モータ32の電圧指令と三角波電圧との比較によってトランジスタT11〜T16のオン時間の割合を制御するパルス幅変調(PWM)制御において三角波電圧の振幅以下の振幅の正弦波状の電圧指令を変換して得られる擬似的三相交流電圧としてのPWM信号を用いてインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御する正弦波制御モード,パルス幅変調制御において三角波電圧の振幅より大きな振幅の正弦波状の電圧指令を変換して得られる過変調電圧としてのPWM信号を用いてトランジスタT11〜T16をスイッチング制御する過変調制御モード,矩形波電圧を用いてトランジスタT11〜T16をスイッチング制御する矩形波制御モードがあり、図4に示すように、モータ32のトルク指令Tm*や回転数Nmが小さい側から順に正弦波制御モード,過変調制御モード,矩形波制御モードが設定されている。
【0020】
そして、モータ32の三相コイルのU相,V相,W相に流れる相電流Iu,Iv,Iwの総和を値0として電気角θeを用いて相電流Iu,Ivをd軸,q軸の電流Id,Iqに次式(1)により座標変換(3相−2相変換)すると共に(ステップS140)、座標変換によって得られたd軸,q軸の電流Id,Iqに基づいてモータ32から出力されていると推定される推定出力トルクTmestを設定する(ステップS150)。ここで、d軸はモータ32のロータに埋め込まれた永久磁石によって形成される磁束の方向であり、q軸はd軸に対してモータ32の正回転方向にπ/2だけ電気角θeが進角した方向である。また、推定出力トルクTmestは、実施例では、d軸,q軸の電流Id,Iqと推定出力トルクTmestとの関係を予め実験や解析などによって定めて推定出力トルク設定用マップとしてROM54に記憶しておき、d軸,q軸の電流Id,Iqが与えられると記憶したマップから対応する推定出力トルクTmestを導出して設定するものとした。
【0021】
【数1】

【0022】
次に、モータ32のトルク指令Tm*が急変しているか否か示すトルク指令急変フラグFを設定する(ステップS160)。ここで、トルク指令急変フラグFは、実施例では、モータ32のトルク指令Tm*と前回に本ルーチンが実行されたときに設定されたモータ32のトルク指令(前回Tm*)との差分としてのトルク指令変化量ΔTmを予め定められた判定用閾値ΔTmrefと比較し、トルク指令変化量ΔTmが判定用閾値ΔTmref未満のときには値0を設定し、トルク指令変化量ΔTmが判定用閾値ΔTmref以上のときには値1を設定するものとした。なお、トルク指令変化量ΔTmに代えて、過去N回(Nは2以上の整数、例えば、5や10など)のトルク指令変化量ΔTmの平均などを用いるものとしてもよい。
【0023】
次に、制御モードCmを調べ(ステップS170)、制御モードCmが正弦波制御モードや過変調制御モードのときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいてd軸,q軸の目標電流Id*,Iq*を設定する(ステップS180)。ここで、d軸,q軸の目標電流Id*,Iq*は、実施例では、モータ32のトルク指令Tm*とd軸,q軸の目標電流Id*,Iq*との関係(例えば、目標電流Id*の二乗と目標電流q*の二乗との和の平方根(以下、目標電流大きさIreという)を比較的小さくしてモータ32のトルク指令Tm*に対応するトルクをモータ32から出力できる関係)を予め定めて電流指令設定用マップとしてROM54に記憶しておき、モータ32のトルク指令Tm*が与えられると記憶したマップから対応するd軸,q軸の目標電流Id*,Iq*を導出して設定するものとした。目標電流設定用マップの一例を図5に示す。図5の例では、モータ32のトルク指令Tm*がトルクT3のときにこのトルク指令Tm*に対応するd軸,q軸の目標電流Id*,Iq*を設定する際の様子を示している。なお、図5には、モータ32のトルク指令Tm*や目標電流Id*,Iq*の他に、目標電流大きさIreと、三相コイルに通電される電流によってステータに形成される磁界の方向(ステータ磁界の方向)のq軸に対する角度としての目標電流角度θreと、についても図示した。
【0024】
続いて、トルク指令急変フラグFの値を調べ(ステップS190)、トルク指令急変フラグFが値0のときには、モータ32のトルク指令Tm*は急変していないと判断し、モータ32の推定出力トルクTmestに基づいてフィードバック制御に用いる比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定すると共に(ステップS200)、設定した比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2とd軸,q軸の電流Id*、Iqと目標電流Id*,Iq*とを用いて次式(2)および式(3)によりd軸,q軸の電圧指令Vd*,Vq*を計算し(ステップS220)、計算したd軸,q軸の電圧指令Vd*,Vq*に基づくPWM信号を用いてインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御して(ステップS230)、本ルーチンを終了する。ここで、d軸,q軸の電圧指令Vd*,Vq*に基づくPWM信号は、実施例では、電気角θeを用いてd軸およびq軸の電圧指令Vd*,Vq*をモータ32の三相コイルのU相,V相,W相に印加すべき電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に次式(4)および式(5)により座標変換(2相−3相変換)し、座標変換した電圧指令Vu*,Vv*,Vw*をインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチングするためのPWM信号に変換して設定するものとした。また、比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2は、実施例では、モータ32の推定出力トルクTmestの大きさが大きいほど小さくなる傾向に設定するものとした。これは、以下の理由による。モータ32から出力されるトルクの大きさやモータ32に通電される電流の大きさが比較的大きい領域(高トルク領域)では、モータ定数のd軸,q軸のインダクタンスLd,Lqが磁気飽和の影響で小さくなるため、比較的大きな比例項のゲインKp1,Kp2を用いてインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御すると、モータ32の制御性が低下しやすい。一方、これを抑制するために、比較的小さな比例項のゲインKp1,Kp2を用いてインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御すると、モータ32から出力されるトルクのトルク指令Tm*に対する追従性(応答性)が低下する。したがって、実施例では、両者を踏まえて、モータ32の推定出力トルクTmestの大きさが大きいほど小さくなる傾向に比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとした。このようにモータ32の推定出力トルクTmestに応じた比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を用いたフィードバック制御によって電圧指令Vd*,Vq*を設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御することにより、モータ32をより適正に駆動制御することができる。
【0025】
【数2】

【0026】
ステップS190でトルク指令急変フラグFが値1のときには、モータ32のトルク指令Tm*が急変していると判断し、モータ32のトルク指令Tm*に基づいてフィードバック制御に用いる比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定すると共に(ステップS210)、設定した比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2とd軸,q軸の電流Id*、Iqと目標電流Id*,Iq*とを用いて上述の式(2)および式(3)によりd軸,q軸の電圧指令Vd*,Vq*を計算し(ステップS220)、計算したd軸,q軸の電圧指令Vd*,Vq*に基づくPWM信号でインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御して(ステップS230)、本ルーチンを終了する。この場合の比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2は、実施例では、モータ32のトルク指令Tm*の大きさが大きいほど小さくなる傾向に設定するものとした。これは、モータ32の推定出力トルクTmestに基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するステップS200の処理と同様の理由に基づく。モータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*とモータ32から実際に出力されるトルクTmactとの乖離やインバータ34の制御に用いる電流センサ32U,32Vからの相電流Iu,Ivとその制御タイミングの実際の相電流との乖離などが大きくなりやすいため、モータ32の推定出力トルクTmestに基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定する場合、モータ32の駆動制御に適した値を設定することができずにモータ32の制御性が低下してしまう場合がある。これに対して、実施例では、モータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定すると共に設定した比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を用いたフィードバック制御によって電圧指令Vd*,Vq*を設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御することにより、より適正な比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定することができ、モータ32の制御性が低下するのを抑制することができる。なお、モータ32のトルク指令Tm*が急変していないときには、モータ32のトルク指令Tm*とモータ32から実際に出力されるトルクTmactとの乖離やインバータ34の制御に用いる電流センサ32U,32Vからの相電流Iu,Ivとその制御タイミングの実際の相電流との乖離などが大きくなる可能性が低いため、実施例では、従来の電気自動車と同様に実際の出力に応じて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとするために、推定出力トルクTmestに基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとした。
【0027】
ステップS170で制御モードCmが矩形波制御モードのときには、トルク指令急変フラグFの値を調べ(ステップS240)、トルク指令急変フラグFが値0のときには、推定出力トルクTmestに基づいてフィードバック制御に用いる比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定し(ステップS250)、トルク指令急変フラグFが値1のときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいてフィードバック制御に用いる比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定し(ステップS260)、設定した比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3とモータ32のトルク指令Tm*と推定出力トルクTmestとを用いて式(6)により電圧位相指令θ*を計算し(ステップS270)、計算した電圧位相指令θ*に基づく矩形波電圧がモータ32に印加されるよう矩形波信号でインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御して(ステップS280)、本ルーチンを終了する。ここで、比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3は、実施例では、モータ32の推定出力トルクTmestの大きさやトルク指令Tm*の大きさが大きいほど小さくなる傾向に設定するものとした。これは、モータ32の推定出力トルクTmestやトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するステップS200,S210の処理と同様の理由に基づく。このように、制御モードCmが矩形波制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変していないときには、モータ32の推定出力トルクTmestに応じた比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を用いたフィードバック制御によって電圧位相指令θ*を設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御することにより、実際の出力に応じた比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を用いてインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御することができる。また、制御モードCmが矩形波制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に応じた比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を用いたフィードバック制御によって電圧位相指令θ*を設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御することにより、モータ32の推定出力トルクTmestに基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するものに比して、より適正な比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定することができ、モータ32の制御性が低下するのを抑制することができる。しかも、制御モードCmが矩形波制御モードのときには、正弦波制御モードや過変調制御モードのときに比して、インバータ34のトランジスタT11〜T16のスイッチング周期が長くなり、モータ32の出力応答性や制御性が低下しやすく、モータ32のトルク指令Tm*が急変しているときにモータ32のトルク指令Tm*とモータ32から実際に出力されるトルクTmactとの乖離やインバータ34の制御に用いる電流センサ32U,32Vからの相電流Iu,Ivとその制御タイミングの実際の相電流との乖離などがより大きくなりやすいため、制御モードCmが矩形波制御モードでモータ32のトルク指令Tm*が急変しているときに、モータ32の推定出力トルクTmestではなく、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定することの意義は特に大きい。
【0028】
θ*=Kp3・(Tm*-Tmest)+Ki3・Σ(Tm*-Tmest) (6)
【0029】
以上説明した実施例の電気自動車20によれば、制御モードCmが正弦波制御モードや過変調制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に応じた比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を用いたフィードバック制御によってd軸,q軸の目標電流Id*,Iq*と電流Id,Iqとの差が打ち消されるよう電圧指令Vd*,Vq*を設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御し、制御モードCmが矩形波制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に応じた比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を用いたフィードバック制御によってモータ32のトルク指令Tm*と推定出力トルクTmestとの差が打ち消されるよう電圧位相指令θ*を設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御するから、推定出力トルクTmestに応じたゲインを用いるものに比してより適正なゲインを設定することができ、モータ32の制御性が低下するのを抑制することができる。
【0030】
実施例の電気自動車20では、制御モードCmが正弦波制御モードや過変調制御モードのときにおいて、モータ32のトルク指令Tm*が急変していないときには、モータ32の推定出力トルクTmestに基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定し、モータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとしたが、モータ32のトルク指令Tm*が急変しているか否かに拘わらず、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとしてもよい。また、実施例の電気自動車20では、制御モードCmが矩形波制御モードのときにおいて、モータ32のトルク指令Tm*が急変していないときには、モータ32の推定出力トルクTmestに基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定し、モータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するものとしたが、モータ32のトルク指令Tm*が急変しているか否かに拘わらず、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するものとしてもよい。
【0031】
実施例の電気自動車20は、制御モードCmが正弦波制御モードや過変調制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとしたが、アクセル開度Accに基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとしたり、d軸,q軸の目標電流Id*,Iq*に基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとしたりしてもよい。これらの場合、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するときと同様に、アクセル開度Accやd軸,q軸の目標電流Id*,Iq*の大きさが大きいほど小さくなる傾向に比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定すればよい。また、実施例の電気自動車20では、制御モードCmが正弦波モードや過変調制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変していないときには、モータ32の推定出力トルクTmestに基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとしたが、相電流Iu,Ivに基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとしたり、d軸,q軸の電流Id,Iqに基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するものとしたりしてもよい。これらの場合、モータ32の推定出力トルクTmestに基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定するときと同様に、相電流Iu,Ivの実効値または振幅やd軸,q軸の電流Id,Iqの大きさが大きいほど小さくなる傾向に比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定すればよい。
【0032】
実施例の電気自動車20では、制御モードCmが矩形波制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するものとしたが、アクセル開度Accに基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するものとしてもよい。この場合、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するときと同様に、アクセル開度Accが大きいほど小さくなる傾向に比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定すればよい。また、実施例の電気自動車20では、制御モードCmが矩形波制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変していないときには、モータ32の推定出力トルクTmestに基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するものとしたが、相電流Iu,Ivに基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するものとしたり、d軸,q軸の電流Id,Iqに基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するものとしたりしてもよい。これらの場合、モータ32の推定出力トルクTmestに基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するときと同様に、相電流Iu,Ivの実効値または振幅やd軸,q軸の電流Id,Iqの大きさが大きいほど小さくなる傾向に比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定すればよい。
【0033】
実施例の電気自動車20では、フィードバック制御に用いるゲインの設定をモータ32のトルク指令Tm*に基づいて行なうか推定出力トルクTmに基づいて行なうかをモータ32のトルク指令Tm*が急変しているか否かに応じて決定するものとしたが、アクセル開度Accが急変しているか否かに応じて決定するものとしたり、制御モードCmが正弦波制御モードや過変調制御モードのときにd軸,q軸の電流指令Id*,Iq*が急変しているか否かに応じて決定するものとしたりしてもよい。
【0034】
実施例の電気自動車20では、推定出力トルクTmestは、d軸,q軸の電流Id,Iqを推定出力トルク設定用マップに適用して設定するものとしたが、次式(7)などにより計算するものとしてもよい。ここで、式(7)中、「p」は極対数,「Φ」は磁束鎖交数,「Ld」,「Lq」はd軸,q軸のインダクタンスである。
【0035】
Tmest=p・[Φ・Iq+(Ld-Lq)・Id・Iq] (7)
【0036】
実施例の電気自動車20では、バッテリ36が接続された電池電圧系電力ライン44の電力を昇圧してインバータ34が接続された高電圧系電力ライン42に供給可能な昇圧コンバータ40を備えるものとしたが、昇圧コンバータを備えず、バッテリ36からの電力を昇圧せずにインバータ34に供給するものとしてもよい。
【0037】
実施例では、駆動輪26a,26bに接続された駆動軸22に動力を入出力可能なモータ32とモータ32を駆動するインバータ34とインバータ34を介してモータ32と電力をやりとりするバッテリ36とを備える電気自動車20に適用するものしたが、走行用の動力を出力可能な電動機と電動機を駆動するインバータとインバータを介して電動機と電力のやりとりが可能な二次電池とを備えるものであればよいから、例えば、図6の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、遊星歯車機構126を介して駆動軸22に接続されたエンジン122およびモータ124と、駆動軸22に動力を入出力可能なモータ32と、を備えるハイブリッド自動車120に適用するものとしてもよいし、図7の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動軸22にモータ32を取り付けると共に、モータ32の回転軸にクラッチ229を介してエンジン122を接続する構成とし、エンジン122からの動力をモータ32の回転軸を介して駆動軸22に出力すると共にモータ32からの動力を駆動軸22に出力するハイブリッド自動車220に適用するものとしてもよい。
【0038】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ32が「電動機」に相当し、インバータ34が「インバータ」に相当し、バッテリ36が「二次電池」に相当し、制御モードCmが正弦波制御モードや過変調制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定し、制御モードCmが矩形波制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定する図2の駆動制御ルーチンのステップS200,S210,S250,S260の処理を実行する電子制御ユニット50が「ゲイン設定手段」に相当し、制御モードCmが正弦波制御モードや過変調制御モードのときには、設定した比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2用いたフィードバック制御によってd軸,q軸の電流Id,Iqが目標電流Id*,Iq*となるよう電圧指令Vd*,Vq*を設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御し、制御モードCmが矩形波制御モードのときには、設定した比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を用いたフィードバック制御によってモータ32の推定出力トルクTmestがトルク指令Tm*となるよう電圧位相指令θ*を設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御する図2の駆動制御ルーチンのステップS220,S230,S270,S280の処理を実行する電子制御ユニット50が「制御手段」に相当する。
【0039】
ここで、「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータ32に限定されるものではなく、走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「インバータ」としては、インバータ34に限定されるものではなく、電動機を駆動するものであれば如何なるタイプのインバータであっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ36に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「ゲイン設定手段」としては、制御モードCmが正弦波制御モードや過変調制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2を設定し、制御モードCmが矩形波制御モードのときにモータ32のトルク指令Tm*が急変しているときには、モータ32のトルク指令Tm*に基づいて比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を設定するものに限定されるものではなく、モータ32のトルク指令Tm*が急変しているか否かに拘わらずにトルク指令Tm*に基づいてフィードバック制御の比例項のゲインや積分項のゲインを設定するものや、アクセル開度Accに基づいてフィードバック制御に用いる比例項のゲインや積分項のゲインを設定するもの,モータ32に通電すべき目標電流(例えば、d軸,q軸の目標電流Id*,Iq*など)に基づいてフィードバック制御に用いる比例項のゲインや積分項のゲインを設定するものなど、アクセル操作量,電動機から出力すべき目標トルク,電動機に通電すべき目標電流のいずれかに基づいてフィードバック制御におけるゲインを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、制御モードCmが正弦波制御モードや過変調制御モードのときには、設定した比例項のゲインKp1,Kp2や積分項のゲインKi1,Ki2用いたフィードバック制御によってd軸,q軸の電流Id,Iqが目標電流Id*,Iq*となるよう電圧指令Vd*,Vq*を設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御し、制御モードCmが矩形波制御モードのときには、設定した比例項のゲインKp3や積分項のゲインKi3を用いたフィードバック制御によってモータ32の推定出力トルクTmestがトルク指令Tm*となるよう電圧位相指令θ*を設定してインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御するものに限定されるものではなく、設定されたゲインを用いたフィードバック制御によって電動機から出力されるトルクが電動機から出力すべき目標トルクとなるようインバータを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0040】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0041】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、電気自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
20 電気自動車、22 駆動軸、24 デファレンシャルギヤ、26a,26b 駆動輪、32 モータ、32a 回転位置検出センサ、32U,32V 電流センサ、34 インバータ、36 バッテリ、40 昇圧コンバータ、42 高電圧系電力ライン、44 電池電圧系電力ライン、46,48 コンデンサ、46a,48a 電圧センサ、50 電子制御ユニット、52 CPU、54 ROM、56 RAM、60 イグニッションスイッチ、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキペダルポジションセンサ、68 車速センサ、120,220 ハイブリッド自動車、122 エンジン、124 モータ、126 遊星歯車機構、229 クラッチ、D11〜D16 ダイオード、T11〜T16 トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力可能な電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、前記インバータを介して前記電動機と電力のやりとりが可能な二次電池と、を備える電気自動車であって、
アクセル操作量,前記電動機から出力すべき目標トルク,前記電動機に通電すべき目標電流のいずれかに基づいてフィードバック制御におけるゲインを設定するゲイン設定手段と、
前記設定されたゲインを用いたフィードバック制御によって前記電動機から出力されるトルクが該電動機から出力すべき目標トルクとなるよう前記インバータを制御する制御手段と、
を備える電気自動車。
【請求項2】
請求項1記載の電気自動車であって、
前記ゲイン設定手段は、前記電動機から出力すべき目標トルク又は該電動機に通電すべき目標電流の急変時でないときには、前記電動機から出力されるトルク又は前記電動機に通電される電流に基づいてゲインを設定する手段である、
電気自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載の電気自動車であって、
前記制御手段は、矩形波電圧を用いて前記電動機を駆動する際には、前記電動機から出力すべき目標トルクと該電動機から出力されるトルクとの差分と前記設定されたゲインとを用いたフィードバック制御によって矩形波電圧の目標電圧位相を設定すると共に該設定した目標電圧位相を用いて前記インバータを制御する手段である、
電気自動車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の電気自動車であって、
前記制御手段は、パルス幅変調による擬似的な三相交流電圧を用いて前記電動機を駆動する際には、前記電動機に通電すべき目標電流と該電動機に通電される電流との差分と前記設定されたゲインとを用いたフィードバック制御によって前記電動機に印加すべき目標電圧を設定すると共に該設定した目標電圧を用いて前記インバータを制御する手段である、
電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−152051(P2012−152051A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9563(P2011−9563)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】