電気解剖学的マッピングおよびナビゲーションシステムにおいてカテーテル電極・組織接触を表示する方法
切除電極またはマッピング電極等の電極の患者との電気的結合に関する指示を、ナビゲーションシステムを介して医師に提供する、電極カテーテルに関する電極結合出力システム。指示を、ナビゲーションシステムディスプレイ上の電極の色または他の表示特性を変更することにより、または電極結合を示す波形を提供することにより、提供してもよい。このように、電極結合情報は、医師の注意をできるだけそらさないように医師に提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照により本明細書に援用される、2006年12月6日に出願された米国仮特許出願第60/748,234号の利益を主張する。この出願はまた、本出願と同時に出願された国際出願整理番号0B−047801WO、同0B−047809US、同0B−047810US、同0B−047811US、同0B−047812US、同0B−047814USおよび同0B−047815US(「国際出願」)にも関連する。これら国際出願は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、電極カテーテルと、組織切除のために電極カテーテルを使用する方法と、に関する。特に、本発明の電極カテーテルは、標的組織に切除エネルギー(たとえばRFエネルギー)を印加するための電極・組織接触および電気的結合を評価する回路を備えてもよい。
【背景技術】
【0003】
組織に損傷を形成し、その形成されている損傷の深さおよび位置を制御することができる場合、利益を得ることができるということは周知である。特に、損傷が凝固壊死を介して形成されるまで組織温度を約50℃まで上昇させる(それにより組織の電気的特性が変化する)ことが望ましい場合がある。たとえば、損傷を、凝固壊死を介して心臓組織の特定の位置に形成することにより、望ましくない心房細動を減少または除去することができる。
【0004】
しかしながら、既存の切除電極によっては、それらを使用して特定の位置に損傷を形成しようとする場合、いくつかの問題に直面する可能性がある。既存の切除電極で直面する、かかる問題の1つは、適当な組織接触および電気的結合をいかにして確実にするかである。電極・組織接触は、透視法等の従来の技法を使用することによって容易に確定されない。代りに、医師は、電極カテーテルを使用して自身の経験に基づいて電極・組織接触を確定する。かかる経験は、回数を重ねることによってのみ得られるものであり、医師が定期的に電極カテーテルを使用しない場合は急速に失われる可能性がある。さらに、心臓に損傷を形成するとき、心臓の鼓動が事態をさらに複雑にし、所望の損傷を形成するための十分な長さの時間に、電極と組織との間の十分な接触圧力を確定しかつ維持することが困難になる。電極と組織との間の接触を適当に維持することができない場合、高品質な損傷が形成されない可能性が高い。同様に、切除中に組織においてどれくらいの切除エネルギーが吸収される可能性があるかを確定するために、電極と標的組織との間の電気的結合に関する情報が事前に容易に入手できない。代りに、医師は、電極カテーテルを用いて切除処置を行う自身の経験に基づいて、出力および持続時間等、一般化された、事前に確定された切除パラメータを使用する。かかる経験は、不適当な損傷形成、早すぎる高インピーダンス遮断、組織炭化および血栓形成等、欠陥、非効率および複雑化をもたらす可能性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、切除電極またはマッピング電極等の電極の患者との電気的結合に関する指示を、ナビゲーションシステムを介して医師に提供することに関する。電極カテーテル処置の間、医師は、電極位置を監視するためにナビゲーションシステムを使用する。ナビゲーションシステムは、患者の生物学的構造に関連する電極の移動および位置のリアルタイム視覚化を提供してもよい。
【0006】
医師の注意をできるだけそらさないように電極結合に関する指示を提供することが望ましいことが認識されている。これは特に、システムが、処置のために最初に所望の電極位置を確立するためだけでなく、処置中に電極処置を監視するためにも使用される場合に当てはまる。これを、本発明により、ナビゲーションシステムのモニタを介して指示を提供することにより達成することができる。このように、医師は、医療処置中に更新された電極結合情報を連続してまたは定期的に(時々)受け取ることができ、その間、医師の注意は実質的に十分に医療処置に向けられたままである。
【0007】
本発明の一態様によれば、電極の電気的結合に関する指示を、ナビゲーションシステムを介して医師に提供する方法および装置(「ユーティリティ」)を提供する。ユーティリティは、組織結合関係を評価するために電気的結合監視システムを確立することを含む。これに関して、インピーダンス、位相角、機械的振動または機械的変形測定値に基づくシステムを含む、任意の適当な監視システムを使用してもよい。監視システムは、少なくとも2つの異なる電極結合レベル(たとえば、組織における処置に対する不十分な結合または十分な結合)を識別するように動作し、3つ以上の電極結合レベル(たとえば、不十分な結合、十分な結合および高(elevated)結合)を識別してもよい。一実施態様では、電気結合監視システムは、異なる電極結合レベルが異なる位相角範囲に関連する、位相角技術を採用する。ユーティリティはさらに、医療処置に関連して前記電極結合評価システムを動作させることにより、電極結合のレベルを識別することを含む。たとえば、評価システムを、切除またはマッピング処置の開始の前に電極結合を分析するように動作させてもよい。さらにまたは別法として、評価システムを、医療処置中に、電極結合を監視するように連続してまたは定期的に動作させてもよい。そして、電極結合の識別されたレベルを示す出力が提供される。特に、出力は、医師が電極を監視する際に使用するナビゲーションシステムを介して提供される。たとえば、電極の表現の色または他の表示パラメータを、電極結合のレベルを示すように変更してもよい。さらにまたは別法として、電極結合対時間の値を反映する波形を、ナビゲーションシステムのディスプレイに関連して提供してもよい。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、注意をできるだけそらさないように電極結合情報を提供するのを可能にする電極カテーテルシステムを提供する。関連するユーティリティは、電気エネルギーを印加するように構成された電極と、電極を医師が遠隔で操作することができるようにするカテーテルと、患者の生物学的構造に対して電極を案内する案内器具と、信号情報を受け取り電極と患者との間の電気的結合のレベルを確定するプロセッサと、を含む。案内器具は、少なくとも、電極の位置を監視する際に使用されるナビゲーションシステムを含む。プロセッサはさらに、ナビゲーションシステムを、電極結合のレベルの指示を提供するよう制御するように動作する。これに関して、プロセッサは、電極結合の少なくとも2つの異なるレベルを識別することができる。一実施態様では、プロセッサは、電極結合の複数のレベルを識別することができ、それには、対象組織を貫通する可能性に関連する可能性がある高結合を示すレベルが含まれる。かかる貫通は望ましい場合もあれば望ましくない場合もある。いずれの場合も、かかる高結合の指示は、医師に有用であり得る。電極結合のさまざまなレベルを、任意の適当な技術によって確定してもよい。一実施態様では、レベルを、位相角分析に基づいて識別する。
【0009】
本発明の上述した態様、特徴、詳細、有用性および利点ならびに他の態様、特徴、詳細、有用性および利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読むことから、かつ添付図面を検討することから明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、電極カテーテルシステムの案内器具を介して、対象となる状態、たとえば電極結合のレベルに関する指示を医師に提供することに関する。かかる指示を、電極カテーテル処置に関連する対象となるさまざまなパラメータに関連して、特に種々の電極結合評価技術に関連して提供してもよいが、いくつかの利点は、位相角技術等の複数の電極結合レベルを正確に識別することができる評価技術を使用することによって達成される。以下の説明では、まず、いくつかの位相角関連技術について説明する。その後、医師に情報を出力するさまざまなメカニズムについて詳細に説明する。
【0011】
図1は、患者12に対する組織切除処置中に電極・組織接触を評価するために実装され得る例示的な電極カテーテルシステム10の概略図である。カテーテルシステム10は、電極カテーテル14を含んでもよく、それは、たとえば患者の心臓16内部に切除損傷を形成するために、患者12内部に挿入され得る。例示的な切除処置中、ユーザ(たとえば患者の医師または技師)は、電極カテーテル14を患者の血管18のうちの1つに、たとえば足(図1に示すように)または患者の首を通して挿入してもよい。ユーザは、リアルタイム透視撮像装置(図示せず)によって案内され、電極カテーテル14を患者の心臓16まで移動させる(図1aにより詳細に示すように)。
【0012】
電極カテーテル14が患者の心臓16に達すると、電極カテーテル14の先端の電極20を、電気的に心筋22(すなわち、心臓壁の筋肉組織)をマップし標的組織24の位置を特定するように実装してもよい。標的組織24の位置を特定した後、ユーザは、電極カテーテル14を標的組織24に接触させるように移動させ、かつ標的組織24にカテーテル電極14を電気的に結合させなければならず、その後、切除エネルギーを印加して1つまたは複数の切除損傷を形成する。電極・組織接触は、カテーテル電極14が標的組織24に物理的に接触し、それにより、カテーテル電極14と標的組織24との間に機械的結合がもたらされる状態を指す。電気的結合は、切除中に効率的に切除が形成され得るように、電気エネルギーの十分な部分がカテーテル電極14から標的組織24に渡る状態を指す。電気的特性および機械的特性が同様である標的組織の場合、電気的結合は機械的接触を含む。すなわち、機械的接触は電気的結合の一部である。このため、カテーテル電極を、機械的に接触させることなく標的組織に実質的に電気的に結合することができるが、その逆はできない。言い換えれば、カテーテル電極は、機械的に接触している時、電気的にも結合されている。しかしながら、電気的結合の範囲または感度は、組織の電気的特性が異なると変化する。たとえば、導電性心筋組織に対する電気的結合の範囲は、血管壁と異なる。同様に、電気的結合の範囲または感度もまた、組織コンプライアンス等、組織の機械的特性が異なると変化する。たとえば、比較的コンプライアントな、平滑な心房壁に対する電気的結合の範囲は、比較的コンプライアントでない櫛状の心筋組織とは異なる。接触および電気的結合のレベルは、心臓16の周囲の組織に損傷を与えることなく、標的組織24に十分深い切除損傷を形成するために重要であることが多い。カテーテルシステム10を、後により詳細に説明するように、電極・組織界面におけるインピーダンスを測定し、電極カテーテル14と標的組織24との間の接触のレベル(ディスプレイ11によって示す)を評価するように実装してもよい。
【0013】
図2aは、電極カテーテル14と標的組織24との間の電気的接触または結合の例示的なレベルを示す。図2bは、電極カテーテル14と標的組織24との間の機械的接触または結合の例示的なレベルを示す。接触または結合の例示的なレベルには、接触状態30aによって示すような「わずかな接触または接触なし」と、接触状態30bに示すような「軽い接触から中間の接触」と、接触状態30cによって示すような「堅固な接触」と、があり得る。例示的な実施形態では、カテーテルシステム10を、たとえばそれぞれ接触状態30a〜30cに対応する光アレイ31a〜31cに示すように、ユーザに対し接触状態を表示または他の方法で出力するように実装してもよい。
【0014】
電極カテーテル14が標的組織24に接触する前に、接触状態30a(「わずかな接触または接触なし」)があり得る。接触が不十分な場合、電極カテーテル14が切除エネルギーを印加するように操作される時、適当な損傷が形成されない可能性がある。しかしながら、接触状態30c(「堅固な接触」)は、深すぎる損傷を形成し(たとえば、心筋22に穿孔をもたらす)および/または標的組織24の周囲の組織を破壊する可能性がある。したがって、ユーザは、接触状態30b(「軽い接触から中間の接触」)を望む可能性がある。
【0015】
図2aおよび図2bにおける例示的な接触または結合状態30a〜30cは、例示の目的で示すものであり、限定するようには意図されていない、ということに留意されたい。他の接触または結合状態(たとえば、接触状態間がより細分)もまたあってもよく、および/またはユーザに望まれてもよい。かかる接触状態の定義は、少なくともある程度は、2〜3例を挙げると、標的組織のタイプ、切除損傷の所望の深さ、およびRF放射の動作周波数等の動作条件によって決まる可能性がある。
【0016】
図3は、電極カテーテル14に対する接触または結合状態を評価するように実装され得るように、カテーテルシステム10をより詳細に示す高レベル機能ブロック図である。従来の組織切除システムに典型的な構成要素のいくつかを、簡潔にするために図1には簡略形態で示し、および/またはまったく示さないことに留意されたい。しかしながら、かかる構成要素を、カテーテルシステム10の一部としてまたはそれと使用するために提供してもよい。たとえば、電極カテーテル14は、2〜3例を挙げると、ハンドル部、透視撮像装置および/または他のさまざまな制御部を含んでもよい。かかる構成要素は、医療機器技術においてよく理解されており、したがって、ここでは、本発明が完全に理解されるためにはそれ以上の説明は不要である。
【0017】
例示的なカテーテルシステム10は、たとえば高周波(RF)発生器等の発生器40と、電極カテーテル14に電気的に接続される(電極カテーテルに対するワイヤ44によって示すように)測定回路42と、を含んでもよい。電極カテーテル14を、たとえば患者の腕または胸に取り付けられた接地パッチ46(図1に示すように)を通して、電気的に接地してもよい。
【0018】
発生器40を、電極カテーテル14の先端近くで電気エネルギー(たとえばRF電流)を放出するように動作させてもよい。本明細書では本発明をRF電流に関して説明するが、接触状態を評価するために他のタイプの電流エネルギーを使用してもよい、ということに留意されたい。
【0019】
例示的な実施形態では、発生器40は、電極カテーテル14が標的組織24に近づくと、いわゆる「ピンギング(pinging)」(たとえば低)周波数を放出する。「ピンギング」周波数を、損傷形成のために切除エネルギーを印加するために使用されるものと同じ電極カテーテルによって放出してもよい。別法として、「ピンギング」周波数を印加するために別個の電極カテーテルを使用してもよい。かかる実施形態では、別個の電極は、切除エネルギーを印加するための電極に密に接触して(または取り付けられて)もよく、それにより、接触または結合状態を、切除エネルギーを印加する電極に対して確定することができる。
【0020】
電極・組織界面における結果としてのインピーダンスを、接触または結合評価(または「ピンギング」)中に測定回路42を使用して測定してもよい。例示的な実施形態では、測定回路42は、従来入手可能な抵抗・キャパシタンス・インダクタンス(RCL)メータであってもよい。位相角成分を確定するために実装され得る別の例示的な測定回路についてはまた、図5を参照して後により詳細に説明する。さらに他の測定回路42を実装してもよく、本発明は、いかなる特定のタイプまたは構成の測定回路との使用にも限定されない。
【0021】
接触または結合状態を確定するために、インピーダンス測定値のリアクタンスおよび/または位相角成分を使用してもよい。そして、接触または結合状態を、切除処置に対し所望のレベルの接触または結合を達成するためにリアルタイムにユーザに伝達してもよい。たとえば、接触または結合状態を、光アレイ上でユーザに表示してもよい(たとえば図2aおよび図2bに示すように)。
【0022】
ユーザが、電極カテーテル14を、標的組織24との所望の接触または結合状態までうまく案内した後、発生器40または第2発生器等の発生器を、標的組織24に1つまたは複数の切除損傷を形成するための切除(たとえば高周波数)エネルギーを生成するように動作させてもよい。例示的な実施形態では、同じ発生器40を使用して、インピーダンス測定に対する周波数(たとえば「ピンギング」周波数)と切除損傷を形成するための周波数との両方を含むさまざまな周波数で電気エネルギーを生成してもよい。しかしながら、代替実施形態では、本発明の範囲から逸脱することなく、別々の発生器または発生ユニットを実装してもよい。
【0023】
例示的な実施形態では、測定回路42を、測定されたインピーダンスを分析するように、プロセッサ50およびメモリ52と動作的に関連付けてもよい。例として、プロセッサ50は、インピーダンス測定値のリアクタンスおよび/または位相角成分を確定してもよく、リアクタンス成分および/または位相角に基づいて、電極カテーテル14に対し対応する接触または結合状態を確定してもよい。例示的な実施形態では、さまざまなリアクタンスおよび/または位相角に対応する接触または結合状態を、たとえば広範囲の組織タイプのいずれかに対するさまざまな周波数での試験中に事前に確定してもよい。接触または結合状態をメモリ52に、たとえばテーブルまたは他の適当なデータ構造として格納してもよい。そして、プロセッサ50は、メモリ42のテーブルにアクセスし、リアクタンス成分および/または位相角に基づいてインピーダンス測定値に対応する接触または結合状態を確定してもよい。接触または結合状態を、たとえば表示装置54においてユーザに出力してもよい。
【0024】
カテーテルシステム10は、プロセッサ50およびメモリ52との使用に限定されないことに留意されたい。他の実施形態では、インピーダンス測定に基づいて接触状態を評価するように、かつ対応する接触状態を出力するように、アナログ回路を実装してもよい。かかる回路を、電子工学技術の当業者は本明細書の開示を熟知した後に容易に提供することができ、したがって、さらなる説明は不要である。
【0025】
また、表示装置54は、いかなる特定のタイプの装置にも限定されないことにも留意されたい。たとえば、表示装置54は、液晶ディスプレイ(LCD)等のコンピュータモニタであってもよい。別法として、表示装置を、光アレイとして実装してもよく、その場合、光アレイにおいて1つまたは複数の発光ダイオード(LED)が、接触状態を示すように駆動される(たとえば、接触するほど光る)。実際は、ユーザに接触状態を示すために任意の適当な出力デバイスを実装してもよく、それは表示装置に限定されない。たとえば、接触状態を、音声信号または電極カテーテルのハンドルにおける触感フィードバック(たとえば振動)としてユーザに出力してもよい。
【0026】
さらに、カテーテルシステム10の構成要素は、同じハウジングに提供される必要はない、ということに留意されたい。例として、測定回路42および/またはプロセッサ50ならびにメモリ52を、電極カテーテル14のハンドル部に設けてもよい。別の例では、測定回路42の少なくとも一部を、電極カテーテル14のほかの場所に(たとえば先端部に)設けてもよい。さらに他の例では、プロセッサ50、メモリ52および表示装置54を、カテーテルシステム10の他の構成要素と動作的に関連付けられてもよいパーソナルデスクトップまたはラップトップコンピュータ等、別個のコンピューティングデバイスとして提供してもよい。
【0027】
電極・組織界面におけるインピーダンス測定値に基づいて電極カテーテル14と標的組織24との間の接触または結合状態を評価することは、図4および図4aを参照してよりよく理解することができる。図4は、標的組織24に接触する(または結合される)電極カテーテル14のモデルである。電極カテーテル14は、発生器40(たとえばRF発生器)に電気的に接続される。例示的な実施形態では、回路を、標的組織24を通して完成してもよく、それは、電流が、血液、心筋および他の器官を通って、患者の身体の接地パッチ46(図1)等の参照電極まで流れることを示す。
【0028】
上述したように、発生器40を、電極カテーテル14によって放出される電気エネルギーを生成するように動作させてもよい。放出を、図4において矢印60によって示す。また上述したように、発生器40は、電極カテーテル14が電極・組織接触または結合を評価するために標的組織24に近づく際、「ピンギング」周波数を放出してもよい。例示的な実施形態では、この「ピンギング」周波数を、血液・組織界面におけるもの以外の誘導効果、容量効果および抵抗効果がインピーダンス測定値に認識可能なほどの影響を与えないように選択してもよい。
【0029】
例示的な適用では、血液および電極・血液界面(たとえば、金属電極カテーテルと血液との間)における容量効果は、約50kHzを上回る周波数で最小であるかまたはさらには存在しないことが分かった。電極界面における漂遊インダクタンス(たとえば比較的薄いカテーテルワイヤによる)、キャパシタンスおよび抵抗、ならびに他の器官(たとえば肺)のキャパシタンスの影響もまた、約50kHzを上回る周波数で最小であるかまたはさらには存在しないことも分かった。
【0030】
さらに、抵抗効果は、50kHzを下回る周波数の場合に血液・組織界面において著しく目立つことがわかった。それは、電流が、主に間質液空間23を介して標的組織24内に流れ込み、細胞膜25(たとえば二重脂質(bi−lipid)すなわち「脂肪」)は絶縁体として作用するためである。しかしながら、約50kHzを上回る周波数では、細胞膜25は導電性になり、電流は、間質液空間23と細胞膜25との両方を通って標的組織24に浸透する。したがって、細胞膜は「コンデンサ」としての役割を果たし、抵抗効果は約50kHzを上回る周波数では低減する。
【0031】
接触または結合評価中に切除損傷を形成する危険を回避するために、少量の電流および電力を使用することが望ましい場合もある。1mAを下回る電流に対する目下好ましい範囲は、50〜500kHz範囲の動作周波数である。
【0032】
周波数選択は、主に生物学的態様と工学的態様とに基づき、当業者の認識範囲内にある。生物学的態様の場合、周波数が低いほど、電極・電解質界面のために測定誤差がもたらされる可能性がある。周波数がMHz範囲以上まで高くなると、寄生キャパシタンスが著しくなる可能性がある。しかしながら、本発明は、いかなる特定の周波数または周波数範での使用にも限定されないことに留意されたい。周波数は、少なくともある程度まで、2〜3例を挙げると、たとえば適用、標的組織のタイプ、および使用されている電気エネルギーのタイプ等、動作的考慮事項によって決まる可能性がある。
【0033】
特定の用途に対し所望の周波数が選択されたものとすると、図4に示すモデルを、図4aに示すように簡略化した電気回路62としてさらに表すことができる。回路62において、発生器40は、AC源64として表現される。上述したように、電極・組織接触を評価するために使用される可能性のある低い周波数動作では、血液・組織界面におけるキャパシタンスおよび抵抗がインピーダンス測定値の優位を占める。したがって、他の容量効果、誘導効果および抵抗効果を無視してもよく、血液・組織界面における容量・抵抗効果を、回路62において抵抗器・コンデンサ(R−C)回路66によって表してもよい。
【0034】
R−C回路66は、標的組織24のインピーダンスに対する抵抗効果および容量効果を表す抵抗器70およびコンデンサ72と並列である、血液のインピーダンスに対する抵抗効果を表す抵抗器68を含んでもよい。電極カテーテル14が標的組織24にまったくかまたはほとんど接触しない場合、血液の抵抗効果はR−C回路66に影響を与え、そのため、インピーダンス測定値にも影響を与える。しかしながら、電極カテーテル14が移動して標的組織24と接触すると、標的組織24の抵抗効果および容量効果はR−C回路66に影響を与え、そのためインピーダンス測定値も影響を与える。
【0035】
インピーダンス測定値に対する抵抗およびキャパシタンスの影響を、インピーダンスの定義に関連してより理解することができる。インピーダンス(Z)を以下のように表すことができる。
Z=R+jX
ここで、Rは、血液および/または組織からの抵抗であり、jは、項が+90°の位相角を有することを示す虚数であり、Xは、キャパシタンスとインダクタンスとの両方からのリアクタンスである。
【0036】
上記式から、リアクタンス成分の大きさが、回路62の抵抗効果と容量効果との両方に応答することが観察される。この変形は、電極・組織界面における接触または結合のレベルに直接対応し、したがって、それを使用して、電極・組織接触または結合を評価してもよい。例として、電極カテーテル14が100kHzの周波数で動作し、主に血液と接触する場合、インピーダンスは純粋に抵抗性であり、リアクタンス(X)は0オームに近い。電極カテーテル14が標的組織に接触すると、リアクタンス成分は負になる。接触または結合のレベルが増大するに従い、リアクタンス成分はさらに負になる。
【0037】
別法として、接触状態または結合状態を、位相角に基づいて確定してもよい。実際には、用途によっては位相角に基づいて接触状態または結合状態を確定することが好ましい場合もあり、それは、位相角が、リアクタンスと抵抗との間の三角比として表されるためである。抵抗成分の大きさは、条件が変化すると(たとえば異なる患者に対する)異なる可能性があるが、位相角は、外部条件に対して影響を受けにくい傾向にある相対測定値である。
【0038】
例示的な実施形態では、位相角を、インピーダンス測定値から(たとえば図3のプロセッサ50により)確定してもよい。すなわち、インピーダンスを以下のように表してもよい。
Z=|Z|∠φ
ここで、|Z|はインピーダンスの大きさであり、φは位相角である。
【0039】
項|Z|およびφを、さらに以下のように表してもよい。
【0040】
【数1】
および
tanφ=X/R
【0041】
位相角はまた、電極・組織界面における接触または結合のレベルに直接対応し、したがって、それを使用して、電極・組織接触または結合を評価してもよい。例として、電極カテーテル14が100kHzの周波数で動作し、主に血液と接触する場合、位相角はゼロ(0)に近い。電極カテーテル14が標的組織に接触すると、位相角は負になり、接触または結合レベルが増大するに従って位相角はさらに負になる。例示の目的で一例を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
位相角を確定するためにインピーダンス測定値を使用してもよいが、代替実施形態では、測定回路42を、位相角を直接確定する位相検出回路として実装してもよい。図5に例示的な位相検出回路80を示す。位相検出回路80を、機能的構成要素に関連して示しかつ説明する。本発明を完全に理解するために特定のハードウェア構成は必要でないということに留意されたい。デジタルおよび/またはアナログハードウェアおよび/またはソフトウェアでの位相検出回路80の実装は、電子工学技術における当業者には本明細書における教示を熟知した後に容易に明らかとなろう。
【0044】
例示的な位相検出回路80は、電極・組織界面における電流および電圧を測定する電流センサ82および電圧センサ84を含んでもよい。電流測定値および電圧測定値は、位相比較器86に対する入力であってもよい。位相比較器86は、電圧測定値と電流測定値との間の位相の差に比例する直流(DC)出力電圧を提供する。
【0045】
一実施形態では、電流センサ82を使用して切除電流を測定してもよい。センサは、切除ワイヤと直列であってもよい。たとえば、コイルクラフト(Coilcraft)社のCST1電流検知変圧器を切除ワイヤと直列に配置してもよい。別法として、電流ワイヤは、物理的な接続があってもなくても、電流センサの穴を貫通してもよい。さらに、切除電極と接地パッチとの間の電圧を検知してもよい。この電圧を、位相検知回路に供給することができるように減衰させてもよい。そして、位相検知回路は、電流および電圧を測定し、それらの間の位相角を確定し、後にそれは結合レベルと相関される。このように、切除電流を使用して、結合検知の目的でさらなる電流を投入するのではなく位相角を測定することができる。
【0046】
任意に、電流測定値を、移相回路88により移相させることにより、測定電流と測定電圧との間の移相遅れを「補正する」ことによって位相比較器86の動作を容易にしてもよい。また任意に、位相比較器86からの出力を、位相調整回路90によって、使用されている接地パッチ46のタイプ等、外部要因を補償するように「補正」してもよい。さまざまなデバイス(たとえば図3におけるプロセッサ50および表示装置54)によって使用されるために出力を増幅する(たとえばミリボルトからボルト)信号スケーリング回路92を提供してもよい。
【0047】
切除中、測定されたインピーダンスとその成分の抵抗およびリアクタンスは、組織温度によって変化する。かかる状態では、組織温度の変化による変化は、切除中の損傷形成の測度を提供する。
【0048】
図5に示す位相検出回路80は、一例として提供するものであり、限定するようには意図されていないことに留意されたい。電子工学技術における当業者は、本明細書の開示を熟知した後に、本発明の範囲から逸脱することなく他の実施態様を容易に提供することができる。
【0049】
電極接触評価のための例示的なシステムについて説明したが、ここで、図6〜図8に示すブロック図を参照して例示的な動作モードをより理解することができる。図6は、接触または結合を検知するための位相角測定を示す例示的なブロック図100である。図7は、切除エネルギーおよび接触検知信号の両方が切除電極に同時に印加される場合の、切除中の位相角測定を示す例示的なブロック200図である。図8は、検知信号と切除電力とを切り替える、切除中の位相角測定を示す例示的なブロック図300である。図7および図8では、同様の要素を示すために、それぞれ200番代および300番代の参照番号を使用し、これらの要素を、図7および図8に関連して繰り返して説明はしない可能性がある。
【0050】
上述したように、接触または結合を検知する位相角方法は、(1)組織が血液より抵抗性かつ容量性であり、(2)測定された電極インピーダンスが直接の周囲の物質に大部分依存するという事実に基づく。このため、電極が血液から心筋まで移動する時、測定インピーダンスは増大し、位相角は0°から負の値まで変化する(容量性)。位相角は抵抗およびリアクタンス両方の相対項であるため、それを使用して接触または結合レベルを表してもよい。すなわち、電極が血液と接触している時、それは0°基線を提供し、より多くの接触または結合が確立されるに従い一層負になる。それはまた、カテーテル、器具類および生理学的可変要素の影響を最小限にする。
【0051】
位相角測定を、負荷の電圧(V)102および電流(I)104の両方をサンプリングし、それらの信号間の遅れを位相角として計算することによって行ってもよい。図6に示すように、検知信号106は、切除電極108と参照電極110との間に印加される。この検知信号106は、たとえば、わずかな振幅(<1mA)で50kHzと500kHzとの間であってもよい。
【0052】
例示的な器具を、参照電極構成に応じて、限定されないがたとえば100kHz、400kHzおよび485kHzの周波数として動作させてもよい。電流104および電圧102の両方が検知される。これら2つの信号は、位相比較器112に送出され、電極108の接触または結合状態に対応する位相角が計算される。ブロック114において生位相角信号が調整されることにより、たとえばカテーテル、器具類および生物学的可変要素によってもたらされる位相角に対する外部の影響が補償される。それはまた、容易な解釈およびインタフェースのために調整された後、ブロック116において、表示または他の処理のために他の機器に出力される。
【0053】
位相補償を、切除処置の開始時に行ってもよい。まず、カテーテル電極108を、血液にのみ接触するように、心腔(たとえば、右心房または左心房)の中央まで移動させる。システムは、位相角を測定し、ゼロ接触レベルに対する基線としてこの値を使用する。この調整により、カテーテル配線、参照電極の位置、および外部パッチが使用される場合は皮膚または脂肪等、カテーテルおよび患者によってもたらされる固定位相角が補償される。
【0054】
初期ゼロ調整後、ユーザは、カテーテル電極を1つまたは複数の所望の部位まで移動させて不整脈の心筋を切除してもよい。例示的な実施形態では、位相角は、電極108が心筋からたとえば3mm以内まで近づくと変化を開始し、さらに接触または結合が確立されるに従いますます負になる。ユーザは、切除エネルギーを与える前に位相角出力に基づいて電極的接触または結合の質を判断してもよい。例示的な実施形態では、この位相角値は、4mm切除電極が実際に心筋に接触する場合、約−3°である。ここで図7および図8に関連してさらに詳細に説明するように、切除中に位相角を測定する少なくとも2つの方法があることに留意されたい。
【0055】
図7において、電極208に切除電力218が印加される一方で、同様に検知信号206が印加される。切除および接触検知は、異なる周波数で動作する。したがって、フィルタリングにより、心筋の切除を妨げることなく切除中に位相角を測定することができる。
【0056】
別のオプションは、図8においてスイッチ320によって示すように、検知信号306と切除電力318との間の位相測定を切り替える、というものである。接近中に切除電力318がオフにされると、振幅の小さい検知信号306がオンにされ、それを使用して接触または結合を検知するための位相角が測定される。切除処置のために切除電力318がオンにされると、振幅の大きい切除電力318の電圧および電流が、切除中の接触または結合指標として検知され使用される。
【0057】
図9aは、電極結合評価プロトコル400(以下、「評価プロトコル400」)の一実施形態を示し、これを使用して、この評価が位相角に基づく場合、電極(たとえばカテーテル電極)の任意の適当な組織との結合を評価することができる。したがって、プロトコル400を、図6〜図8に関連して上述した実施形態に関連して使用してもよい。いずれの場合も、「結合」は、電極の標的組織との電気的結合、電極と標的組織との間の機械的結合またはその両方を含んでもよい。
【0058】
図9aの評価プロトコル400のステップ402は、電気信号を電極に送出することに関する。通常、これを、電極が少なくとも標的組織に概して近接して(たとえば左心房等の心腔内)に配置された後に行う。その後、ステップ404において位相角を確定し、その後、ステップ408においてこの位相角に基づいて電極結合を評価する。ステップ408からの電極結合評価を、ステップ410を実行することにより分類してもよい。しかしながら、すべての場合においてステップ410の分類が必要であるとは限らない。いずれの場合も、ステップ412に従って、ステップ408からの評価の結果を出力する。
【0059】
プロトコル400のステップ402に従って送出される電気信号は、任意の適当な周波数であってもよい。しかしながら、プロトコル400の目的で評価を行うためには単一の周波数のみでよい。ステップ404に関連する位相角は、インピーダンスの位相角であってもよい。この位相角を、たとえば任意の適当な構成の位相検知回路を使用して、任意の適当な方法で確定してもよい。一実施形態では、かつステップ402に関連する電気信号を使用して、電極の電流を測定し、電極と別の電極(たとえば戻り電極)との間の電圧を測定し、その後、これら電流測定値と電圧測定値との間の位相角を確定することにより、位相角を確定する。別のオプションは、リアクタンスおよびインピーダンスを適当な方法で測定/確定することと、その後、これらの値から位相角を確定する(たとえば、位相角の正弦はリアクタンスのインピーダンスに対する比である)ことと、である。
【0060】
位相角を、RCLメータまたは位相検出回路(たとえば、発振器、マルチプレクサ、フィルタ、位相検出回路を有する)を使用して確定してもよく、それを位相モジュールと呼んでもよい。この位相モジュール(測定および/または検出)を、カテーテルハンドルセットに組み込むかまたは埋め込むことにより、切除カテーテルと電源との間の独立形ユニットの形態とすることにより、電源に組み込むかまたは埋め込むことにより、電気生理学またはEPマッピングシステムに組み込むことにより、もしくは電気生理学記録システムの一部とすること等により、任意の適当な場所に配置してもよい。
【0061】
電極の組織との結合の評価(プロトコル400のステップ408)を、任意の適当な方法で行ってもよい。たとえば、ステップ404を通して確定される位相角を、1つまたは複数のベンチマーク位相角値と(たとえば位相角比較器を使用して)比較してもよい。これらベンチマーク位相角値を、任意の適当な方法で、たとえば実験的に確定し/設定してもよい。これらベンチマーク位相角値を、適当なデータ構造に、たとえばコンピュータ可読データ記憶媒体に格納してもよく、もしくは位相角比較器に利用可能となるようにしてもよい。概して、かつ一実施形態では、位相角は、電極・組織(たとえば心筋)が結合するにしたがって低減する。
【0062】
図9aの評価プロトコル400のステップ410の分類の目的のために、以下の状態のうちの1つまたは複数に対して1つまたは複数のベンチマーク位相角値(たとえば、単一ベンチマーク位相角値またはある範囲のベンチマーク位相角値)があってもよい。すなわち、1)不十分な電極結合(たとえば、「A」を下回る関連位相角が不十分な電極結合に相当するものとされる電極結合)、2)十分な電極結合(たとえば、関連位相角が「A」を上回りかつ「B」を下回る電極結合が十分な電極結合に相当するものとされる)および3)高電極結合または過度な電極結合(たとえば、「B」を上回る関連位相角が高電極結合または過度な電極結合に相当するものとされる電極結合)である。一実施形態は、以下の位相角値が示した状態に相当するものとする。
不十分な電極結合: Φ>−5°
十分な電極結合: −5°>Φ>−10°
高/過度な電極結合: Φ<−10°
【0063】
「高」電極結合または「過度な」電極結合は、電気的結合、機械的結合または両方(電極と標的組織との間の結合)に関連して高い/過度であり得る。一実施形態では、高い/過度なまたは堅固な電極結合は、電極と標的組織との間の高い/過度な機械的接触を意味する。種々の理由で高機械的接触または過度な機械的接触が電極と組織との間に存在する時を知ることが望ましい場合がある。たとえば、電極と標的組織との間の高機械的接触または過度な機械的接触を回避することが望ましい場合もある(たとえば、電極を、組織壁、膜等内に向ける可能性を低減するため)。しかしながら、電極により標的組織に対し十分な機械的力が加えられる時を知ることが望ましい場合もある(たとえば、電極を、組織壁、膜等内に向ける可能性を増大させることによりこの組織壁または膜の他方の側の所望の領域にアクセスすることができるようにするため)。
【0064】
ステップ408の評価の結果を、図9aの電極結合評価プロトコル400のステップ412に従う任意の適当な方法で出力してもよい。任意の適当な出力を、たとえば視覚的に(たとえば棒グラフ、もしくは任意の適当な位置または位置の組合せにおける他の任意の適当な表示)、音声で(たとえばアラーム)、物理的に(たとえば、電極に基づく処置を行う医師によって保持されているハンドルを振動させることにより、かつ本明細書においてより詳細に説明するように)またはそれらの任意の組合せにより、利用してもよい。単一出力を提供してもよい。2つ以上の出力の組合せを利用してもよい。1つまたは複数の出力を単一場所にまたは複数の場所に発行してもよい。
【0065】
図9bは、電極結合評価プロトコル400’の一実施形態を示し、これを使用して電極(たとえばカテーテル電極)の任意の適当な組織との結合を評価してもよく、この場合、この評価はリアクタンスに基づく。プロトコル400’は図9aのプロトコル400の変形であるため、図9bのプロトコル400’の個々のステップを識別する参照数字に関連して「単一プライム」指示を使用する。
【0066】
図9bの評価プロトコル400’のステップ402’は、電気信号を送出することに関する。プロトコル400’に対し、その評価を提供するためには単一周波数のみでよい。すなわち、評価プロトコル400’の場合、単一周波数を使用して電極結合評価を提供してもよい。通常、これを、電極が少なくとも概して標的組織の近傍(たとえば心腔内)に配置された後に行う。その後、ステップ404’において、電極および標的組織を含む電気回路のリアクタンスを確定する。このリアクタンスを、任意の適当な方法で確定してもよい。たとえば、位相角を測定してもよく(たとえば上述したことに従って)、インピーダンスを測定してもよく、これら2つの値からリアクタンスを計算してもよい(たとえば、位相角の正弦はリアクタンスのインピーダンスに対する比に等しい)。リアクタンスを確定するための別のオプションは、パルス波の位相または周波数応答を確定することである。
【0067】
プロトコル400’のステップ408’において、上述したリアクタンスに基づいて電極結合を評価する。ステップ408’からのこの電極結合を、ステップ410’を実行することによって分類してもよい。しかしながら、すべての場合においてステップ410’の分類が必要であるとは限らない。いずれの場合も、ステップ412’に従って評価の結果を出力する。ステップ412’は、図9aの電極結合評価プロトコル400のステップ412に一致してもよい。
【0068】
電極の組織との結合の評価(プロトコル400’のステップ408’)を、任意の適当な方法で行ってもよい。たとえば、ステップ404’を通して確定されるリアクタンスを、1つまたは複数のベンチマークリアクタンス値と(たとえばリアクタンス比較器を使用して)比較してもよい。これらベンチマークリアクタンス値を、任意の適当な方法で、たとえば実験的に確定/設定してもよい。これらベンチマークリアクタンス値を、適当なデータ構造、たとえばコンピュータ可読データ記憶媒体に格納してもよく、もしくはリアクタンス比較器に利用可能となるようにしてもよい。概してかつ一実施形態では、電極・組織(たとえば心筋)が結合するほどリアクタンスが低減する。
【0069】
ステップ410’の分類の目的で、以下の状態のうちの1つまたは複数に対し1つまたは複数のベンチマークリアクタンス値(たとえば単一のベンチマークリアクタンス値またはある範囲のベンチマークリアクタンス値)があってもよい。すなわち、1)不十分な電極結合(たとえば、「A」を下回る関連リアクタンスが不十分な電極結合に相当するものとされる電極結合)、2)十分な電極結合(たとえば、関連リアクタンスが「A」を上回りかつ「B」を下回る電極結合が十分な電極結合に相当するものとされる)および3)高電極結合または過度な電極結合(たとえば、「B」を上回る関連リアクタンスが高電極結合または過度な電極結合に相当するものとされる電極結合)である。一実施形態は、以下のリアクタンス値が示した状態に相当するものとする。
不十分な電極結合: X>−5
十分な電極結合: −5>X>−15
高/過度な電極結合: X<−15
【0070】
電極結合評価を位相角に基づかせる1つの利益は、位相角は、単独でまたは個々に考慮したインピーダンスまたはリアクタンスより、患者間の変化または動作設定に対して影響を受け難いということである。電極結合評価を提供するために、組織間の変化またはかかる他の状態に対する感度を低減させる他の方法を利用してもよい。図9cは、電極結合評価プロトコル480、すなわち電極(たとえばカテーテル電極)の任意の適当な組織との結合を評価するために使用され得るプロトコル480のかかる実施形態を示す。評価プロトコル480のステップ482は、電極に一定周波数の電極信号を送出することに関する。ステップ484において少なくとも1つの電気パラメータを測定する。そして、ステップ486において、この測定値から、「インピーダンス成分比」として特徴付けてもよいものを確定する。「インピーダンス成分比」という句は、位相角等、インピーダンスの2つの個々の成分の比である任意の項を意味する(位相角の正接はリアクタンスの抵抗に対する比に等しい)。インピーダンス成分比を、単に位相角を測定することによる等、任意の適当な方法で確定してもよい。インピーダンス成分比を確定する他の方法には、限定されないが、ステップ482に含まれる周波数での抵抗およびリアクタンスを確定することと、これら2つのパラメータからインピーダンス成分比を計算することと、が含まれる。インピーダンスに関連する2つの成分の比を使用することにより、電極結合評価、すなわち電極と標的組織との間の結合の評価に対し、組織間の変化に対する感度を低減することができる。
【0071】
プロトコル480のステップ488において電極結合を評価する。ステップ488からのこの電極結合を、ステップ490を実行することによって分類してもよく、ステップ490は、図9aに関連して上述した電極結合評価プロトコル400のステップ410に従ってもよい。したがって、すべての場合においてステップ490の分類が必要であるとは限らない。いずれの場合も、評価の結果を、ステップ492に従って出力する。ステップ492は、図9aに関連して上述した電極結合評価プロトコル400のステップ412にしたがってもよい。
【0072】
図9a〜図9cのプロトコルの各々は、電極結合が、電極と標的組織との間の機械的結合(すなわち物理的接触)であることと、電気的結合(たとえば、電気エネルギーの十分な部分が電極から標的組織にまで渡る状態)であることと、を含む。機械的結合があるときはいつでも、電気的結合がある。しかしながら、逆は真ではない。電極が標的組織と接触することなく、電気的結合があり得る。図10は、電極414と標的組織416との間に機械的接触のない電気的結合がある場合の代表的な一例を示す。ここでは、電極414は組織416の表面上の空隙418内に配置され、空隙418は、電極414と標的組織416との間の電気的結合を提供する。したがって、図9a〜図9cのプロトコルの各々は、電極と標的組織との間の機械的接触を必要としない電気的結合を示してもよい。
【0073】
図11a〜図11cは、電極結合評価を提供することに関連して使用され得るさまざまな構成を概略的に提示する。これらのシステムの各々について切除電極に関連して説明するが、電極結合評価を、電極が任意の適当な機能または機能の組合せを提供する任意の適当な用途に使用してもよい。図11a〜図11cのシステムの各々を使用して、図9a〜図9cに関連して上述した評価プロトコルを提供してもよい。また、これら構成を商用的に実装するために、フィルタ(たとえば、結合評価を行うために使用されている電流から分離されるべき1つまたは複数の他の発生源からの電流があり得る場合のように)、患者を「電気的に保護する」1つまたは複数の構成要素および/または電極結合評価を行うために使用される電気回路等、他のさまざまな構成要素を利用することが望ましい場合もあることが理解されるべきである。
【0074】
図11aは、切除電源424、切除電極422および戻り電極426を含む切除システム420を示す。切除電源424によって任意の適当な周波数が使用されてもよい。切除電極422および戻り電極426の各々は、任意の適当なサイズ、形状および/または構成であってもよい。通常、切除電極422は、患者の身体内に配置されるカテーテル電極の形態となる。戻り電極426を、任意の適当な位置してもよい(たとえば、患者の皮膚の上に配置される接地パッチ、患者の身体内に配置されるカテーテル電極)。
【0075】
切除システム420の追加の構成要素には、電極結合評価電源428(以下、「評価電源428」)、評価戻り電極430および電極結合評価モジュール432(以下、「評価モジュール432」)が含まれる。評価電源428によって任意の適当な周波数が使用されてもよい。通常、切除電源424はまた、評価電源428より大幅に高い電流を使用する。
【0076】
評価戻り電極430は、任意の適当なサイズ、形状および/または構成であってもよく、任意の適当な位置に配置されてもよい。一実施形態では、戻り電極426および評価戻り電極430は、異なる位置に配置される別々の構造の形態である。別の実施形態では、単一構造(戻り電極426としてかつ評価戻り電極430として機能する単一ユニット)により、戻り電極426の機能と評価戻り電極430の機能とが提供される。
【0077】
切除電極422は、切除システム420に対するスイッチ434の位置に応じて、切除電源424または評価電源428いずれかからの電力を受け取る。すなわち、図11aの切除システム420の場合、切除動作および電極結合評価動作は同時に行われない可能性がある。電極結合評価動作中、スイッチ434は、当然ながら、評価電源428からの電力を受け取るように配置される。これにより、評価モジュール432は、切除電極422と標的組織との間の結合を評価することができる。評価モジュール432により、その電極結合評価機能を提供するために、限定なしに本明細書で扱うさまざまな構成(たとえば位相角比較に基づく評価、リアクタンス比較に基づく評価、インピーダンス成分比比較に基づく評価、図12aおよび図12bに関連して後述するような0°位相周波数または0インダクタンス周波数に関連する周波数を識別することに基づく評価)を含む、任意の適当な構成を利用してもよい。評価モジュール432は、単一周波数から図9a〜図9cのプロトコルのいずれかを使用する電極結合評価を提供してもよい。
【0078】
図11bは、切除電源444、切除電極442および戻り電極446を含む切除システム440を示す。切除電源444により任意の適当な周波数が使用されてもよい。切除電極442および戻り電極446の各々は、任意の適当なサイズ、形状および/または構成であってもよい。通常、切除電極442は、患者の身体内に配置されるカテーテル電極の形態となる。戻り電極446を、任意の適当な位置に配置してもよい(たとえば、患者の皮膚の上に配置される接地パッチ、患者の身体内に配置されるカテーテル電極)。
【0079】
切除システム440の追加の構成要素には、電極結合評価電源448(以下、「評価電源448」)、評価戻り電極450および電極結合評価モジュール452(以下、「評価モジュール452」)が含まれる。評価電源448によって任意の適当な周波数が使用されてもよい。しかしながら、切除システム440の場合、切除動作および電極結合評価動作の同時実行に適応するために、切除電源444および評価電源448は異なる周波数で動作する。さらに、通常、切除電源444はまた、評価電源448より大幅に高い電流を使用する。
【0080】
評価戻り電極450は、任意の適当なサイズ、形状および/または構成であってもよく、任意の適当な位置に配置されてもよい。一実施形態では、戻り電極446および評価戻り電極450は、異なる位置に配置される別々の構造の形態である。別の実施形態では、単一構造(戻り電極446としてかつ評価戻り電極450として機能する単一ユニット)により、戻り電極446の機能と評価戻り電極450の機能とが提供される。
【0081】
切除電極442は、切除電源444または評価電源448から同時に電力を受け取る。すなわち、図11bの切除システム440の場合、切除動作および電極結合評価動作が同時に行われ得る。これに関して、切除電源444および評価電源448はこの場合もまた、異なる周波数で動作する。評価モジュール452は、単一周波数から図9a〜図9cのプロトコルのいずれかを使用する電極結合評価を提供してもよい。いずれの場合も、評価モジュール452は、切除電極442と標的組織との間の結合を評価する。図11aの切除システム420に対する評価モジュール432に関連して上述した説明は、図11bの切除システム440に対する評価モジュール452に対して等しく適用可能である。
【0082】
図11cは、切除電源464、切除電極462および戻り電極466を含む切除システム460を示す。切除電源464によって任意の適当な周波数が使用されてもよい。切除電極462および戻り電極466の各々は、任意の適当なサイズ、形状および/または構成であってもよい。通常、切除電極462は、患者の身体内に配置されるカテーテル電極の形態となる。戻り電極466を、任意の適当な位置してもよい(たとえば、患者の皮膚の上に配置される接地パッチ、患者の身体内に配置されるカテーテル電極)。
【0083】
切除システム460の追加の構成要素には、電極結合評価電源468(以下、「評価電源468」)が含まれる。評価電源468によって任意の適当な周波数が使用されてもよい。通常、切除電源464はまた、評価電源468より大幅に高い電流を使用する。
【0084】
切除システム460は、一対の電極結合評価モジュール472a、472b(以下、「評価モジュール472a」および「評価モジュール472b」)をさらに含む。評価モジュール472aは評価電源468に関連し、評価モジュール472bは切除電源464に関連する。図示する実施形態では、切除動作および電極結合評価動作はともに戻り電極466を利用するが、上述した図11aおよび図11bの実施形態の場合のように別々の戻り電極を利用することも可能であり得る。
【0085】
切除電極462は、切除システム460に対するスイッチ474の位置に応じて、切除電源464または評価電源468のいずれかから電力を受け取る。しかしながら、図11aの実施形態とは異なり、電極結合評価動作を、スイッチ474の位置とは無関係に実行してもよい。切除電極462が、スイッチ474を通して評価電源468と電気的に相互接続される場合、評価モジュール472aを使用して切除電極462と標的組織との間の結合が評価される。切除電極462がスイッチ474を通して切除電源464に電気的に相互接続される場合、評価モジュール472bを使用して、切除電極462と標的組織との間の結合が評価される。評価モジュール427a、472bは各々、単一周波数から図9a〜図9cのプロトコルのいずれかを使用する電極結合評価を提供してもよい。
【0086】
評価モジュール472a、472bにより、それらのそれぞれの電極結合評価機能を提供するために、限定なしに本明細書で扱うさまざまな構成を含む任意の適当な構成を利用してもよい。図11aの切除システム420に対する評価モジュール432に関連して上述した説明は、図11cの切除システム460に対する評価モジュール472a、472bに等しく適用可能である。通常、評価モジュール472a、472bは、電極結合を評価することに対して同じ構成であるが、すべての場合においてそうであるとは限らない。評価モジュール472a、472bが同じ構成である場合、切除電源464および評価電源468は通常同じ周波数で動作する。したがって、切除システム460は、切除動作を開始する(たとえば評価電流および評価モジュール472aを使用して)前に電極結合の評価に対応し、さらに、切除動作中に電極結合の評価に対応する(たとえば、実際の切除電流対小さい方の電流を使用し、かつ評価モジュール472bを使用して)。図11bの切除システム440はまた、切除動作中の電極結合の評価に対応するが、別々の評価電流対実際の切除電流を使用する。
【0087】
図11a〜図11cの実施形態の各々における評価モジュールによって使用される電極のうちの1つは、当然ながら切除または「活性」電極である。電極結合評価モジュールおよび切除電極はともに、それらのそれぞれの機能を提供するために、何らかの方法で患者とインタフェースする別の電極が必要である。図1aは、評価モジュールによって使用される戻り電極と、1つまたは複数の所望の機能を提供するために組織に電気エネルギーを提供するように切除電極と協働する戻り電極と、が、共通の構造に組み込まれる一実施形態を示す。より詳細には、切除電極20(たとえばカテーテル電極)は、心臓16の腔(たとえば左心房)に配置され、カテーテル電極20の形態である。戻り電極20a(たとえばカテーテル電極)もまた心臓16の同じ腔に配置され、図11a〜図11cの評価モジュールの各々によって使用され(切除電極20の標的組織24との結合を評価するため)、かつ切除電極20によって使用され得る(所望の医療機能を提供するために標的組織24に電気エネルギーを送達するため)。したがって、切除電極20および戻り電極20aを、異なるカテーテルに関連付けてもよく、それにより、個々に移動させてもよい。一実施形態では、戻り電極20aは切除電極20より広い表面積を有する。切除電極20および戻り電極20aの各々は、互いに間隔が空けられた電極先端を有する。
【0088】
図1aに示す構成は、共通の心腔に2つの電極20、20aを提供する。別のオプションは、2つ以上の電極が共通のカテーテルに関連するが、カテーテルは2つの分離された遠位部を有し、各々その遠位端の別々の電極先端に電極を有し、それにより、電極先端が互いから間隔が空けられる、というものである。
【0089】
活性電極と標的組織との間の結合を評価するために位相角を使用する1つまたは複数の方法について上に提示した。電極結合を評価するために位相角を使用してもよい別の方法を図12aおよび図12bに示す。図12aは、可変周波数源502、電気パラメータ測定モジュール504、電極結合評価モジュール506、および所望の機能または機能の組合せ(たとえば切除)を提供するために組織510に結合される電極508を含む、電極結合評価システム500の概略図を提示する。図12aには戻り電極を示さないが、それは、任意の適当なタイプであってもよく、かつ任意の適当な場所に配置されてもよい。概して、可変周波数源502は、電気エネルギーを組織510に送出する目的で、電極508に電気信号を提供する。電気パラメータ測定モジュール504は、任意の適当なタイプおよび/または構成であってもよく、1つまたは複数の電気パラメータを測定し、電極結合評価モジュール506によって使用される情報を提供する。電極結合評価モジュール506は、電極508と組織510との間の結合を評価する。
【0090】
図12bは、図12aの電極結合評価モジュール506によって使用され得る電極結合プロトコル520の一実施形態を提示する。ステップ524を実行することにより、電極508に1つまたは複数の電気信号を送出する。基線結合状態を評価することができる。たとえば、プロトコル520のステップ524〜528に従って、基線結合状態を定義することができる。「基線結合状態」という用語は、媒体(たとえば血液)における所望の周波数でのゼロ化位相角またはゼロ化リアクタンスを含む。
【0091】
ステップ525を実行することにより、電極が所望の媒体、たとえば血液にある時を確定する。次に、ステップ526を実行することにより、基線結合状態を確立する。たとえば、医師は、基線結合状態の確立を指示するように入力デバイスを起動することができる。そして、プロトコル520は、ステップ528において、位相角またはリアクタンスをゼロに補正することにより基線結合状態に調整する。
【0092】
基線結合状態をゼロにすることに対する代替態様として、ステップ526で確立された基線結合状態の値を格納し、かかる基線結合状態に対する電極結合状態を確定するために使用してもよい。第2の代替態様では、確定された位相角を1つまたは複数の所定ベンチマーク値と比較することにより、基線結合状態を確定してもよい。これらベンチマーク値を、任意の適当な方法で、たとえばインビトロ(in vitro)検査、エクスビボ(ex vivo)検査またはインビボ(in vivo)検査で実験的に確定し/設定してもよい。これらベンチマーク値を、適当なデータ構造に、たとえばコンピュータ可読データ記憶媒体に格納してもよく、もしくは位相比較器に利用可能となるようにしてもよい。
【0093】
電極結合を、ステップ528からの基線結合状態を使用してプロトコル520のステップ532に従って評価してもよい。1つまたは複数の電気パラメータを任意の適当な方法で確定し、ステップ528からの基線結合状態の対応する値と比較してもよい。たとえば、以下のカテゴリを提供してもよい。すなわち、1)不十分な電極結合(たとえば、「A」を下回る基線結合状態に関連する値が不十分な電極結合に相当するものとされる電極結合)、2)十分な電極結合(たとえば、基線結合状態が「A」を上回りかつ「B」を下回る基線結合状態に関連する値が十分な電極結合に相当するものとされる)および3)高電極結合または過度な電極結合(たとえば、「B」を上回る基線結合状態に関連する値が高電極結合または過度な電極結合に相当するものとされる電極結合)である。
【0094】
別の実施形態では、電気的結合を、「標的周波数」、すなわち電気パラメータに対する事前設定値(たとえば事前設定リアクタンスまたは位相角値)に対応する周波数の関数として測定する。図12cは、図12aの電極結合評価モジュール506によって使用され得る電極結合プロトコル620の一実施形態を提示する。ステップ624を実行することにより電極508に電気信号を送出する。電気信号を異なる周波数で送出する。送出される各周波数において、ステップ626は、リアクタンスおよび/または位相を測定する。ステップ628は、測定されたリアクタンスまたは位相を事前設定値と比較する。リアクタンスまたは位相が事前設定値と一致する周波数が「標的周波数」である。ステップ628の目的のための事前設定値に対し、正の値、ゼロまたは負の値を含む任意の適当な値を使用してもよい(たとえば、標的周波数を0°位相周波数と呼んでもよいように、ゼロ位相角、または標的状態周波数を0インダクタンス周波数と呼んでもよいように、ゼロインダクタンス)。
【0095】
プロトコル620は、標的周波数が存在すると確定すると、ステップ630に進み、そこで、ステップ628によって提供された情報を使用して、電極508の組織510との結合を評価し、プロトコル620のステップ636に従って、この評価の結果を出力する。ステップ636は、図9aに関連して上述したプロトコルのステップ412に従ってもよい。
【0096】
組織との電極結合の評価を、図12cのプロトコル620のステップ630を通して提供する。ステップ628からの標的周波数を、1つまたは複数のベンチマーク周波数値と(たとえば比較器を使用して)比較してもよい。これらベンチマーク周波数値を、任意の適当な方法で確定し/設定してもよい。値を、たとえばインビトロ検査、エクスビボ検査またはインビボ検査で実験的に事前確定することができる。これらベンチマーク周波数値を、適当なデータ構造に、たとえばコンピュータ可読データ記憶媒体に格納してもよい。ベンチマーク周波数値を、医師が処置中に確定してもよい。たとえば、電極が所望の媒体、たとえば血液にある時を確定してもよい。その時点で、医師は、既存の結合関連状態に対しベンチマーク値を設定するように入力デバイスを起動することができる。
【0097】
図12cの評価プロトコル620の分類の目的のための以下の状態のうちの1つまたは複数に対して1つまたは複数のベンチマーク周波数値(たとえば、単一ベンチマーク周波数値またはある範囲のベンチマーク周波数値)があってもよい。すなわち、1)不十分な電極結合(たとえば、「A」を下回る標的周波数が不十分な電極結合に相当するものとされる電極結合)、2)十分な電極結合(たとえば、標的周波数が「A」を上回りかつ「B」を下回る電極結合が十分な電極結合に相当するものとされる電極結合)および3)過度な電極結合(たとえば、「B」を上回る標的周波数が過度な電極結合に相当するものとされる電極結合)である。一実施形態は、以下の標的周波数値が示した状態に相当するものとする(Ftは示した状態に対する標的周波数である)。
不十分な電極結合: Ft<120kHz
十分な電極結合: 120kHz<Ft<400kHz
高/過度な電極結合: Ft>400kHz
図12cのプロトコル620を、任意の適当な方法で実装してもよい。たとえば、インピーダンスを監視して、信号周波数を掃引することにより(たとえば図12aのシステム500に従って)標的位相周波数を取得してもよい。この周波数掃引を、2つの適当な値(たとえば50kHzおよび1MHz)の間で、掃引に対するこれらの値の間の任意の適当な増分変化(たとえば、10〜20kHz増分)を使用して、提供してもよい。この手法は、一度に1つの周波数でインピーダンスを測定しそれら周波数を周波数合成器等によって回転させることを含む、周波数スイッチングと呼ばれ得るものを使用する。別の手法は、複数の周波数を結合し、結合された信号からフィルタリングを通して個々の周波数の各々におけるインピーダンスを確定する、というものである。場合によっては標的周波数状態に関連する周波数を確定するために補間が必要となる可能性があることが理解されるべきである(たとえば、プロトコル620によって使用される2つの周波数の間に標的周波数状態に関連する周波数が存在することが確定される場合)。
【0098】
上記説明では、位相角等のいくつかのインピーダンス関連測定値に基づき患者に対する電極結合のレベルを確定するさまざまな実施態様について記載した。これは、電極結合情報を得るために特に有効なメカニズムであると考えられるが、他のメカニズムを利用してもよい、ということが理解されよう。これらメカニズムのうちのいくつかは、他のインピーダンスベース測定、機械的振動測定(圧電デバイスから得られる等)または機械的変形測定(歪みゲージを介して得られる等)を含む。このため、電極位置決めの指示は、電気的特性、機械的特性または他の特性に基づいてもよい。
【0099】
いずれの場合も、電極位置の指示が得られると、この情報を医師に伝達することが望ましい。さらに、上述したように、医師に対し、注意をできるだけそらさないようにこの情報を提供することが有用である。
【0100】
本発明の一態様は、電極結合情報または他の情報を、電極案内器具を介して医師に提供することに関する。以下の説明では、これを、不十分な結合、十分な結合または高結合等、電極結合の複数のレベルのうちの任意のものを示すことができる、カテーテルハンドルセットおよび/またはナビゲーションシステムを介して出力を提供する文脈で示す。しかしながら、本発明は、これら特定の文脈または実施態様に限定されないということが理解されよう。
【0101】
図13を参照すると、本発明によるカテーテルシステム1300が示されている。システム1300は、概して、ナビゲーションシステムディスプレイ1312およびユーザインタフェース1314に動作可能に関連付けられる電極カテーテル1302を含む。図示する電極カテーテル1302は、患者の体液および組織と相互作用する電極1308と、医師が電極1308を進める、引っ込ませる、回転させるまたは他の方法で位置決めするために把持することができるハンドルセット1304と、ハンドルセット1304と電極1308との間に延在するカテーテル本体1306と、を含む。図示する電極カテーテル1302は、後により詳細に説明するように、電極結合のレベルに関する出力を提供するLEDアレイ等の出力デバイス1310をさらに含む。
【0102】
ナビゲーションシステムディスプレイ1312は、医師が電極1308を患者に対して所望の位置に位置決めするのを支援する視覚的情報を提供する。ナビゲーションシステムについては後により詳細に説明する。しかしながら、概して、ナビゲーションシステムは、電気的マッピング、透視法および/または他の情報に基づいて、心臓構造等の患者の一定の生物学的構造を表示する。さらに、電極1308の位置は、概して、ディスプレイ1312において、医師が電極1308を所望の位置に向けるのを支援するために、生物学的構造に関して示される。このため、電極カテーテル1302を用いる医療処置中、医師の視覚的注意の大部分はディスプレイに向けられる、ということが理解されよう。しかしながら、熟練した医師はまた、ハンドルセット1304を通しての触感フィードバックに基づいて電極位置に関する一定情報を導出する。
【0103】
図示するシステムはまた、医師が処置に関する一定情報を入力するために利用することができるユーザインタフェース1314も含む。たとえば、医師は、患者、利用される機器、実行されている処置等を識別する情報を入力してもよい。さらに、医師は、ユーザインタフェース1314を使用して、たとえば切除等に対し対象位置を識別してもよい。このため、ユーザインタフェースは、キーボード、グラフィカルユーザインタフェースまたは他の入力メカニズムを含んでもよい。
【0104】
図14は、本発明による電極結合出力システム1400の概略図である。システム1400は、電極結合のレベルを示す入力1401を受け取る。たとえば、上述したような実施態様では、この入力は、位相角に関する情報を提供してもよい。システム1400は、結合評価モジュール1402、出力駆動モジュール1404および出力デバイス1406を含む。
【0105】
結合評価モジュール1402は、入力1401を受け取り、入力1401に基づいて電極結合のレベルを確定する。実施態様に応じて、結合評価モジュール1402は、電極結合の2つ以上のレベルを識別することができてもよい。モジュール1402を、上述したような電極結合計算を実施するようにロジックを実行するプロセッサにおいて具現化してもよい。プロセッサは、示された入力1401を受け取る入力インタフェースと、制御信号を出力駆動モジュール1404に送出する出力インタフェースと、を含む適当なI/O構造を有する。このため、実施態様によっては、モジュール1402は、不十分な結合(たとえば血液との電極接触に対応する)と十分な結合(たとえば、物理的接触とは無関係に、切除またはマッピング等の所望の処置に対して十分な組織接触または電気的結合に関する)と、を識別してもよい。別法として、モジュールは、不十分な接触と、十分な接触と、高接触(電極の腔壁へのあり得る貫通に関し、それは、望まれる場合もあれば望まれない場合もある)と、を識別してもよい。たとえばさらなる接触レベルまたは示される接触レベル間のより細分な分解能を表す、より多くのレベルを定義してもよい、ということが理解されよう。
【0106】
確定された結合レベルに基づき、結合評価モジュール1402は、出力駆動モジュール1404に出力信号1403を提供する。出力駆動モジュールは、電極結合の確定されたレベルを示す出力を医師に提供する出力デバイス1406を駆動する駆動信号1405を生成する。後により詳細に説明するように、医師に対してこの出力を提供するために種々のタイプの出力デバイスを利用してもよい。たとえば、電極カテーテルのハンドルセットを介して、音声、視覚的または機械的(たとえば振動)指示を提供してもよい。別法として、ナビゲーションシステムを介して、医師に対し音声、視覚的または他の指示を提供してもよい。したがって、出力デバイス1406の種類は、特定の実施態様に応じて異なる。関連して、出力駆動モジュール1404によって提供される駆動信号1405の種類は、後により詳細に説明するように、用途によって異なる。
【0107】
上述したように、電極結合の所定レベルを示す出力を、たとえばハンドルセットまたはナビゲーションシステムを介して医師に提供してもよい。図15は、カテーテルハンドルセット1504を介してかかる出力を提供するカテーテルシステム1500の概略図である。図示するシステム1500は、ハンドルセット1504と結合検出モジュール1502とを含む。結合検出モジュール1502を、ハンドルセット1504とは別個であるように概略的に図示するが、モジュール1502をハンドルセット1504内に物理的に組み込んでもよい、ということが理解されよう。図示するシステム1500では、電極カテーテルの電極に関連するハンドルセット1504は、結合検出モジュール1502に検知信号1501を提供する。たとえば、位相角実施態様の場合、検知信号1501は、電極の移動に対する位相角を示すために十分な情報を含んでもよい。その場合、検出モジュール1502は、上述したようなロジックを実行して、位相角情報に基づいて電極結合レベルを確定する。
【0108】
この確定に基づき、接触指示信号1503がハンドルセット1504に提供される。そして、ハンドルセット1504は、医師に対し、結合レベルを示す出力1505を提供するように動作する。これに関して任意の適当なタイプの出力を使用してもよい。たとえば、これに関して、ハンドルセット1504の振動等の機械的出力、LEDまたはLED棒グラフ等の視覚的出力、または可変トーン(たとえば、ピッチ、音量または他の音声パラメータが可変)等の音声出力を利用してもよい。さらに、これらのタイプの出力の組合せを利用してもよい。たとえば、視覚的出力または音声出力を利用して、電極結合の不十分なレベルまたは十分なレベルを示してもよく、一方、機械的出力を使用して高電極結合を示してもよい。出力のタイプを、医師に対し注意をできるだけそらさないように、または医師が出力により気づくように選択してもよい。この場合もまた、医療処置中、医師の視覚的注意は主にナビゲーションシステムのディスプレイに向けられる可能性があることが理解されよう。
【0109】
図16は、複数の出力デバイスを組み込んだハンドルセット1600の部分的な概略図である。ハンドルセットは、結合検出モジュールから入力信号1601を受け取る。この信号1601を使用して、振動デバイス1602と、トーン発生器等の音声出力デバイス1604と、ディスプレイ1606、この場合LED棒グラフと、のうちの1つまたは複数が駆動される。これに関して、信号1601はデジタル信号であってもアナログ信号であってもよい。デジタル信号の場合、信号は、1つまたは複数の結合レベルに関してはい/いいえ情報を示してもよい。たとえば、(1)不十分な接触(はい/いいえ)、(2)十分な接触(はい/いいえ)および(3)高接触(はい/いいえ)である。別法として、デジタル信号は、段階的に複数の結合レベルのいずれかを示してもよい。すなわち、デジタル信号を、結合レベルを示す情報で符号化してもよく、かかる符号化は、電流レベル、電圧レベル、位相シーケンスまたは他の信号特性に基づく。アナログ信号の場合、アナログ信号は、電極結合レベルを表すように連続的に可変であってもよい。
【0110】
振動源1602は、入力信号1601に応答して、医師に電極結合情報を提供するようにハンドルセット1600の振動をもたらすように動作する。たとえば、デバイス1602を、高接触等の特定の結合レベルを示すように起動させてもよい。別法として、振動デバイスを、異なる電極結合レベルを示すように異なる周波数または他のパラメータで動作させてもよい。
【0111】
音声出力デバイスは、電極結合レベルを識別するために適当な任意の音声指示を出力することができる。このため、たとえば、入力信号1601がアナログ信号である場合、信号1601の電流、電圧または他のパラメータを、位相角等の電極接触パラメータに相関させることができる。信号1601に応答して、音声出力デバイス1604によって生成されるトーンのピッチ、音量または他のパラメータを、電極結合レベルに直接対応するように変化させることができる。
【0112】
視覚的ディスプレイ1606は、電極結合レベルの任意の適当な視覚的指示を提供することができる。このため、たとえば、ディスプレイ1606は、単一LED、複数のLEDまたはLED棒グラフを含んでもよい。図示する実施形態では、ディスプレイは、複数の光セグメント1608を含むLED棒グラフを含む。このため、たとえば、入力信号1601の電圧は、増大する電極結合に応じて上昇する可能性がある。この電圧の上昇により、光セグメント1608の照明が増大し、電極結合レベルの直接的な視覚的指示が提供される。図16は単一ハンドルセット1600に3つの別個の出力デバイス1602、1604および1606を示すが、電極結合レベルを示すために単一タイプの出力デバイスを利用してもよいということが理解されよう。さらに、これに関して、図示した出力デバイスタイプまたは他の出力デバイスタイプの任意の組合せを利用してもよい。
【0113】
図17は、電極結合レベルを示すために利用され得る機械的振動出力デバイスの一実施形態を示す。振動デバイスは既知であり、たとえば携帯電話、ページャ、ビデオゲームのコントロールパッドおよび他の既存の製品に関連して使用されていることが理解されよう。かかる振動デバイスを組み込んだハンドルセット1700を図17に示す。ハンドルセット1700の振動デバイスは、出力シャフト1704を回転させるモータ1702を含む。出力シャフト1704には不平衡負荷1706が取り付けられる。したがって、モータ1702の、出力シャフト1704を回転させる動作により、不平衡負荷1706の回転移動に関連する往復運動する力がもたらされる。モータ1702は、モータ1702がこれらの力に応じて往復運動するのを可能にする支持構造1708に取り付けられる。これにより、ハンドルセット1700が振動する。したがって、モータ1702は、電極結合のレベルを示す入力信号1701を受け取る。電極結合レベルの指示を提供するために、入力信号1701に基づいて、モータ1702を起動してもよく、またはその動作パラメータを変更してもよい。たとえば、モータは、高結合等、電極結合の特定レベルが示される場合にのみ、ハンドルセット1700を振動させるように動作してもよい。別法として、モータ1702の動作速度または別のパラメータを、電極結合の複数のレベルを示すように変化させてもよい。
【0114】
上述したように、電極カテーテルを使用して行われる医療処置の間、医師の視覚的注意は主にナビゲーションシステムに向けられる。したがって、電極結合レベルに関する指示を、上述したハンドルセット指示の代りにまたはそれに加えて、ナビゲーションシステムを介して(たとえば視覚的に)提供してもよい。かかるシステムのいくつかの実施態様を以下に説明する。
【0115】
図18は、ナビゲーションシステムディスプレイを介して電極結合レベルの指示を提供する電極結合評価システム1800を示すブロック図である。電極結合のレベルを任意の適当な方法で確定してもよいが、図示するシステムは、上述したように位相角測定を利用する。システム1800は、位相角測定を行うために有用な信号1803を生成する信号発生器1802を含む。上述したように、信号発生器は、電極結合評価信号を提供する専用信号発生器および/またはマッピング、切除または他の処置信号を提供する信号発生器であってもよい。信号1803は、切除電極またはマッピング電極等の電極1804を介して患者に与えられる。
【0116】
結果としての電流信号1806および電圧信号1808は、位相比較器1812によって比較される。したがって、位相比較器1812は、時系列の位相角値を示す出力信号1813を提供する。任意に、測定電流と測定電圧との間の位相遅れを「補正する」ことにより位相比較器1812の動作を容易にするように、電流測定値を移相回路によってシフトさせてもよい。また任意に、位相比較器1812からの出力を、使用されている接地パッチのタイプ等、外部要因を補償するように位相調整回路によって「補正して」もよい。結果は、電極結合のレベルを示す位相角信号1815である。
【0117】
この信号1815を、電気解剖学的マッピングおよびナビゲーション(electro−anatomic mapping and navigation)(EAMN)システムまたは他の処置監視システム(概して「ナビゲーションシステム」)によって、波形として表示してもよく、および/または電極接触レベルとして解釈してもよい。市販のEAMNシステムの例には、セント・ジュード・メディカル(St.Jude Medical)社のNAVX(登録商標)システムと、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson and Johnson)社のCARTO(登録商標)システムと、がある。これに関して、処置監視に対し、透視システムまたは他のシステムを使用してもよい。したがって、信号1815を、信号スケーリングモジュール1816によってスケーリングするかまたは他の方法で処理することにより、ナビゲーションシステムによって適当に処理することができる入力を提供してもよい。たとえば、結果としての信号1817は、0V〜1Vの範囲にスケーリングされた電圧信号、4mA〜20mAにスケーリングされた電流信号、またはナビゲーションシステムによって要求されるような他の任意の信号であってもよい。図示する実施態様では、この信号1817は、位相角対時間波形1820を提供するために使用され、電極結合のレベルを反映するグラフィカル電極表現1822として解釈される。
【0118】
後者に関して、グラフィカル電極表現は、特定の実施態様に応じて電極結合の2つ以上のレベルのいずれかを反映してもよい。図19Aおよび図19Bは、2つのあり得る電極結合レベル、たとえば物理的な組織接触なし(たとえば、電極が心腔内の患者の血液に配置される)または組織接触(たとえば、電極が心臓組織に直接接触している)を示す例示的な実施態様を示す。かかる2状態システムは、さまざまな関係者によって提案されている。
【0119】
図19Aおよび図19Bは、これら2つの電極結合状態を、本発明によるナビゲーションシステムのディスプレイにいかに示し得るかを示す。特に、図19Aは、カテーテル1902の電極1900と対象となる心臓組織1904との間に物理的接触がない状態を示す。この状態は、電極結合検出システム(上述したような位相角ベースシステムまたは他のシステム)によって検出され、関連する電極結合レベルは、ナビゲーションシステムに通信される。そして、ナビゲーションシステムは、この電極結合レベルを使用して、電極1900に対する表示パラメータ(たとえば色)を選択する。たとえば、電極を、接触なし状態に対して青で示してもよく(図19Aにおいて明るい方の陰影として表す)、直接的な物理的接触状態に対して赤で示してもよい(図19Bにおいて暗い方の陰影として表す)。
【0120】
他のシステムは、図20A〜図20Dに示すように、電極結合の3つ以上のレベルを検出し示すことができてもよい。この場合、結合なし(図20A)、軽い結合(図20B)、堅固な結合(図20C)および高結合(図20D)を示してもよい結合の4つのレベルが検出され、ディスプレイにおいて異なる電極色(図20A〜図20Dにおいて異なる陰影によって表す)として示される。結合なし、軽い結合、堅固な結合および高結合レベルを示すために、それぞれ白、緑、黄および赤等、任意の色を使用してもよい。位相角実施態様の場合、これらのレベルを、対応する位相角範囲によって定義してもよい。図20A〜図20Dの増大する電極結合レベルを物理的接触の増大するレベルに対応するものとして示すが、結合の有意なレベルを含む電極結合を物理的接触なしに達成することができる、ということに留意されたい。
【0121】
ナビゲーションシステムディスプレイに関連して電極結合レベル情報を提供するために、他のタイプのディスプレイ表現を使用してもよい。たとえば、この分野の医師は、波形データに満足し、かつ波形データから実質的な量の情報を導出する傾向にある。実際には、ナビゲーションシステムディスプレイにECG波形または他の波形を提供することが一般的である。図21は、電極2106を有するカテーテル2104を示す撮像部分2102(電極結合レベルを示すように色が変化してもよい)と、さまざまな波形2110a〜2110dを示す波形部分2108と、を含む表示画面2100を示す。たとえば、これらの波形は、ECG波形2110aと、切除電極2110b(電極2106と同じであってもよい)によって検出される信号を示す波形と、参照電極2110c(カテーテル2104の別の電極、別のカテーテルの電極、または外部戻り電極パッチ)によって検出される波形と、位相角波形2110dと、を含んでもよい。
【0122】
この場合、位相角波形2110dは、所与の時刻における位相角の大きさのみでなく、時間の経過による傾向または大きさの変化も示し、それは、医師が電極結合レベルを評価するのを支援し、または他の有用な情報を提供することができる(たとえば、切除によって形成される損傷の質を評価するため)。波形は、位相角の連続した確定値各々を反映する生波形であってもよい。別法として、波形2110dを、患者の動きに関連するアーティファクト等の雑音を除去するため、または平均化を提供するためにフィルタリングしてもよい。このため、図示する例では、波形は、鼓動する心臓の動きによる電極結合の変動を反映するプレチスモグラフによる特徴を含む。これは、医師が電極結合を評価するため等に対して有用であり得る(これに関して、医師によって視覚的に識別されるかまたはたとえばスペクトル分析によって計算されるようなレベルまたは変調が、電極結合のレベルを示してもよい)。別法として、適当なローパスフィルタを適用してこれら成分を除去しある程度の平均化を提供することにより、かかる波形特徴を除去してもよい。かかるフィルタリングまたは平均化は、高出力フリッカを回避するように電極結合レベル情報を(たとえば表示された電極色を介して)出力することに関し望ましい場合もある。
【0123】
このように、電極案内器具(たとえば、ハンドルセットおよび/またはナビゲーションシステム)を介して電極接触レベルの指示を提供する多数の実施態様について説明した。関連する機能を、図22のフローチャートを参照することによって要約することができる。図示するプロセス2200は、考慮されている電極に関連する電流信号および電圧信号を受け取ること(2202)と、位相角値を確定することと、によって開始する。そして、この値を使用して、電極結合レベルを確定することができる(2204)。この結合レベルに関連する情報を、ハンドセットを介して(音声、視覚的および/または機械的出力)および/またはナビゲーションシステムディスプレイを介して種々の方法で医師に提供することができる。したがって、出力デバイスの種類に応じて適当な駆動信号を確立する(2206)。いずれの場合も、出力は、2つ以上のあり得る結合レベルのうちの電極冷却レベルを示す。それにより、出力デバイスを、確定された電極結合レベルを示す出力を提供するように動作させる(2208)。
【0124】
本発明の多数の実施形態についてある程度の特定性で上述したが、当業者は、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく開示した実施形態に対し多数の変更を行うことができる。
【0125】
たとえば、電極結合のレベルをさまざまな技術を介して確定してもよい。さらに、本発明のいくつかの態様は、他の文脈で適用可能である。たとえば、出力デバイスを電極カテーテルに組み込むことにより、任意の関心のある情報を提供してもよく、それは、電極結合情報を提供することに限定されない。
【0126】
すべての方向に関する言及(たとえば、上方、下方、上方に、下方に、左、右、左方に、右方に、頂部、底部、上部、下部、垂直、水平、右回りおよび左回り)は、単に、本発明の読み手の理解を助けるために識別の目的でのみ使用しており、特に本発明の位置、向きまたは使用に関して限定をもたらすものではない。接合に関する言及(たとえば、取り付けられる、結合される、接続される等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続と要素間の相対移動との中間部分を含んでもよい。
【0127】
したがって、接合に関する言及は、かならずしも2つの要素が直接接続され互いに固定関係にあることを意味するとは限らない。上記説明に含まれるかまたは添付図面に示されるすべての事柄は、限定するものとしてではなく単に例示するものとして解釈されるべきであることが意図されている。添付の特許請求の範囲において定義されるような本発明の趣旨から逸脱することなく細部または構造の変更を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】患者に対する組織切除処置中に電極・組織接触を評価するように実装され得る例示的な組織切除システムの概略図である。
【図1a】図1の患者の心臓の詳細図であり、患者の心臓内に移動された後の電極カテーテルを示す。
【図2a】電極カテーテルと標的組織との間の電気的接触または結合の例示的なレベルを示す。
【図2b】電極カテーテルと標的組織との間の機械的接触または結合の例示的なレベルを示す。
【図3】図1の例示的な組織切除システムをより詳細に示す高レベル機能ブロック図である。
【図4】標的組織に接触する(または結合される)電極カテーテルのモデルである。
【図4a】図4に示すモデルに対する簡易電気回路である。
【図5】電極・組織接触または結合を評価する組織切除システムにおいて実装され得る例示的な位相検出回路である。
【図6】接触検知および組織検知のための位相角測定を示す例示的なブロック図である。
【図7】切除エネルギーと接触検知信号との両方が切除電極に同時に印加される、切除中の位相角測定を示す例示的なブロック図である。
【図8】検知信号と切除出力とを切り替える、切除中の位相角測定を示す例示的なブロック図である。
【図9a】位相角比較に基づいて電極と組織との間の結合を評価するために使用され得るプロトコルの一実施形態を示す。
【図9b】リアクタンス比較に基づいて電極と組織との間の結合を評価するために使用され得るプロトコルの一実施形態を示す。
【図9c】インピーダンス成分比比較に基づいて電極と組織との間の結合を評価するために使用され得るプロトコルの一実施形態を示す。
【図10】電極と組織との間の電気的結合の代表的な概略表現を示す。
【図11a】異なる周波数で動作している2つの電源を使用する切除システムの一実施形態の概略図を示し、いかなる時点においてもこれら電源のうちの一方のみが切除電極と相互接続され、これら電源のうちの一方が、電極と組織との間の結合を評価するために使用される。
【図11b】異なる周波数で動作している2つの電源を使用する切除システムの一実施形態の概略図を示し、両電源が常に切除電極と相互接続され、これら電源のうちの一方が、電極と組織との間の結合を評価するために使用される。
【図11c】少なくとも概して同じ周波数で動作している2つの電源を使用する切除システムの一実施形態の概略図を示し、いかなる時点においてもこれら電源のうちの一方のみが切除電極と相互接続され、これら電源の各々が、電極と組織との間の結合を評価するために使用され得る。
【図12a】電極と組織との間の結合を評価するシステムの一実施形態を示す。
【図12b】基線結合状態を識別することに基づいて電極と組織との間の結合を評価するために使用され得るプロトコルの一実施形態を示す。
【図12c】標的周波数を識別することに基づいて電極と組織との間の結合を評価するために使用され得るプロトコルの一実施形態を示す。
【図13】本発明による電極カテーテルシステムの概略図である。
【図14】本発明による電極結合出力システムの概略図である。
【図15】本発明によるハンドルセットベースの電極結合出力システムを示す。
【図16】本発明によるさまざまなタイプの出力デバイスを組み込んだハンドルセットを示す。
【図17】本発明による振動デバイスを組み込んだハンドルセットを示す。
【図18】本発明によるナビゲーションシステムベースの電極結合出力システムの概略図である。
【図19A】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図19B】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図20A】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図20B】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図20C】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図20D】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図21】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイを示す。
【図22】本発明による、案内器具を介して電極結合情報を出力するプロセスを示すフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照により本明細書に援用される、2006年12月6日に出願された米国仮特許出願第60/748,234号の利益を主張する。この出願はまた、本出願と同時に出願された国際出願整理番号0B−047801WO、同0B−047809US、同0B−047810US、同0B−047811US、同0B−047812US、同0B−047814USおよび同0B−047815US(「国際出願」)にも関連する。これら国際出願は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、電極カテーテルと、組織切除のために電極カテーテルを使用する方法と、に関する。特に、本発明の電極カテーテルは、標的組織に切除エネルギー(たとえばRFエネルギー)を印加するための電極・組織接触および電気的結合を評価する回路を備えてもよい。
【背景技術】
【0003】
組織に損傷を形成し、その形成されている損傷の深さおよび位置を制御することができる場合、利益を得ることができるということは周知である。特に、損傷が凝固壊死を介して形成されるまで組織温度を約50℃まで上昇させる(それにより組織の電気的特性が変化する)ことが望ましい場合がある。たとえば、損傷を、凝固壊死を介して心臓組織の特定の位置に形成することにより、望ましくない心房細動を減少または除去することができる。
【0004】
しかしながら、既存の切除電極によっては、それらを使用して特定の位置に損傷を形成しようとする場合、いくつかの問題に直面する可能性がある。既存の切除電極で直面する、かかる問題の1つは、適当な組織接触および電気的結合をいかにして確実にするかである。電極・組織接触は、透視法等の従来の技法を使用することによって容易に確定されない。代りに、医師は、電極カテーテルを使用して自身の経験に基づいて電極・組織接触を確定する。かかる経験は、回数を重ねることによってのみ得られるものであり、医師が定期的に電極カテーテルを使用しない場合は急速に失われる可能性がある。さらに、心臓に損傷を形成するとき、心臓の鼓動が事態をさらに複雑にし、所望の損傷を形成するための十分な長さの時間に、電極と組織との間の十分な接触圧力を確定しかつ維持することが困難になる。電極と組織との間の接触を適当に維持することができない場合、高品質な損傷が形成されない可能性が高い。同様に、切除中に組織においてどれくらいの切除エネルギーが吸収される可能性があるかを確定するために、電極と標的組織との間の電気的結合に関する情報が事前に容易に入手できない。代りに、医師は、電極カテーテルを用いて切除処置を行う自身の経験に基づいて、出力および持続時間等、一般化された、事前に確定された切除パラメータを使用する。かかる経験は、不適当な損傷形成、早すぎる高インピーダンス遮断、組織炭化および血栓形成等、欠陥、非効率および複雑化をもたらす可能性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、切除電極またはマッピング電極等の電極の患者との電気的結合に関する指示を、ナビゲーションシステムを介して医師に提供することに関する。電極カテーテル処置の間、医師は、電極位置を監視するためにナビゲーションシステムを使用する。ナビゲーションシステムは、患者の生物学的構造に関連する電極の移動および位置のリアルタイム視覚化を提供してもよい。
【0006】
医師の注意をできるだけそらさないように電極結合に関する指示を提供することが望ましいことが認識されている。これは特に、システムが、処置のために最初に所望の電極位置を確立するためだけでなく、処置中に電極処置を監視するためにも使用される場合に当てはまる。これを、本発明により、ナビゲーションシステムのモニタを介して指示を提供することにより達成することができる。このように、医師は、医療処置中に更新された電極結合情報を連続してまたは定期的に(時々)受け取ることができ、その間、医師の注意は実質的に十分に医療処置に向けられたままである。
【0007】
本発明の一態様によれば、電極の電気的結合に関する指示を、ナビゲーションシステムを介して医師に提供する方法および装置(「ユーティリティ」)を提供する。ユーティリティは、組織結合関係を評価するために電気的結合監視システムを確立することを含む。これに関して、インピーダンス、位相角、機械的振動または機械的変形測定値に基づくシステムを含む、任意の適当な監視システムを使用してもよい。監視システムは、少なくとも2つの異なる電極結合レベル(たとえば、組織における処置に対する不十分な結合または十分な結合)を識別するように動作し、3つ以上の電極結合レベル(たとえば、不十分な結合、十分な結合および高(elevated)結合)を識別してもよい。一実施態様では、電気結合監視システムは、異なる電極結合レベルが異なる位相角範囲に関連する、位相角技術を採用する。ユーティリティはさらに、医療処置に関連して前記電極結合評価システムを動作させることにより、電極結合のレベルを識別することを含む。たとえば、評価システムを、切除またはマッピング処置の開始の前に電極結合を分析するように動作させてもよい。さらにまたは別法として、評価システムを、医療処置中に、電極結合を監視するように連続してまたは定期的に動作させてもよい。そして、電極結合の識別されたレベルを示す出力が提供される。特に、出力は、医師が電極を監視する際に使用するナビゲーションシステムを介して提供される。たとえば、電極の表現の色または他の表示パラメータを、電極結合のレベルを示すように変更してもよい。さらにまたは別法として、電極結合対時間の値を反映する波形を、ナビゲーションシステムのディスプレイに関連して提供してもよい。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、注意をできるだけそらさないように電極結合情報を提供するのを可能にする電極カテーテルシステムを提供する。関連するユーティリティは、電気エネルギーを印加するように構成された電極と、電極を医師が遠隔で操作することができるようにするカテーテルと、患者の生物学的構造に対して電極を案内する案内器具と、信号情報を受け取り電極と患者との間の電気的結合のレベルを確定するプロセッサと、を含む。案内器具は、少なくとも、電極の位置を監視する際に使用されるナビゲーションシステムを含む。プロセッサはさらに、ナビゲーションシステムを、電極結合のレベルの指示を提供するよう制御するように動作する。これに関して、プロセッサは、電極結合の少なくとも2つの異なるレベルを識別することができる。一実施態様では、プロセッサは、電極結合の複数のレベルを識別することができ、それには、対象組織を貫通する可能性に関連する可能性がある高結合を示すレベルが含まれる。かかる貫通は望ましい場合もあれば望ましくない場合もある。いずれの場合も、かかる高結合の指示は、医師に有用であり得る。電極結合のさまざまなレベルを、任意の適当な技術によって確定してもよい。一実施態様では、レベルを、位相角分析に基づいて識別する。
【0009】
本発明の上述した態様、特徴、詳細、有用性および利点ならびに他の態様、特徴、詳細、有用性および利点は、以下の説明および特許請求の範囲を読むことから、かつ添付図面を検討することから明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、電極カテーテルシステムの案内器具を介して、対象となる状態、たとえば電極結合のレベルに関する指示を医師に提供することに関する。かかる指示を、電極カテーテル処置に関連する対象となるさまざまなパラメータに関連して、特に種々の電極結合評価技術に関連して提供してもよいが、いくつかの利点は、位相角技術等の複数の電極結合レベルを正確に識別することができる評価技術を使用することによって達成される。以下の説明では、まず、いくつかの位相角関連技術について説明する。その後、医師に情報を出力するさまざまなメカニズムについて詳細に説明する。
【0011】
図1は、患者12に対する組織切除処置中に電極・組織接触を評価するために実装され得る例示的な電極カテーテルシステム10の概略図である。カテーテルシステム10は、電極カテーテル14を含んでもよく、それは、たとえば患者の心臓16内部に切除損傷を形成するために、患者12内部に挿入され得る。例示的な切除処置中、ユーザ(たとえば患者の医師または技師)は、電極カテーテル14を患者の血管18のうちの1つに、たとえば足(図1に示すように)または患者の首を通して挿入してもよい。ユーザは、リアルタイム透視撮像装置(図示せず)によって案内され、電極カテーテル14を患者の心臓16まで移動させる(図1aにより詳細に示すように)。
【0012】
電極カテーテル14が患者の心臓16に達すると、電極カテーテル14の先端の電極20を、電気的に心筋22(すなわち、心臓壁の筋肉組織)をマップし標的組織24の位置を特定するように実装してもよい。標的組織24の位置を特定した後、ユーザは、電極カテーテル14を標的組織24に接触させるように移動させ、かつ標的組織24にカテーテル電極14を電気的に結合させなければならず、その後、切除エネルギーを印加して1つまたは複数の切除損傷を形成する。電極・組織接触は、カテーテル電極14が標的組織24に物理的に接触し、それにより、カテーテル電極14と標的組織24との間に機械的結合がもたらされる状態を指す。電気的結合は、切除中に効率的に切除が形成され得るように、電気エネルギーの十分な部分がカテーテル電極14から標的組織24に渡る状態を指す。電気的特性および機械的特性が同様である標的組織の場合、電気的結合は機械的接触を含む。すなわち、機械的接触は電気的結合の一部である。このため、カテーテル電極を、機械的に接触させることなく標的組織に実質的に電気的に結合することができるが、その逆はできない。言い換えれば、カテーテル電極は、機械的に接触している時、電気的にも結合されている。しかしながら、電気的結合の範囲または感度は、組織の電気的特性が異なると変化する。たとえば、導電性心筋組織に対する電気的結合の範囲は、血管壁と異なる。同様に、電気的結合の範囲または感度もまた、組織コンプライアンス等、組織の機械的特性が異なると変化する。たとえば、比較的コンプライアントな、平滑な心房壁に対する電気的結合の範囲は、比較的コンプライアントでない櫛状の心筋組織とは異なる。接触および電気的結合のレベルは、心臓16の周囲の組織に損傷を与えることなく、標的組織24に十分深い切除損傷を形成するために重要であることが多い。カテーテルシステム10を、後により詳細に説明するように、電極・組織界面におけるインピーダンスを測定し、電極カテーテル14と標的組織24との間の接触のレベル(ディスプレイ11によって示す)を評価するように実装してもよい。
【0013】
図2aは、電極カテーテル14と標的組織24との間の電気的接触または結合の例示的なレベルを示す。図2bは、電極カテーテル14と標的組織24との間の機械的接触または結合の例示的なレベルを示す。接触または結合の例示的なレベルには、接触状態30aによって示すような「わずかな接触または接触なし」と、接触状態30bに示すような「軽い接触から中間の接触」と、接触状態30cによって示すような「堅固な接触」と、があり得る。例示的な実施形態では、カテーテルシステム10を、たとえばそれぞれ接触状態30a〜30cに対応する光アレイ31a〜31cに示すように、ユーザに対し接触状態を表示または他の方法で出力するように実装してもよい。
【0014】
電極カテーテル14が標的組織24に接触する前に、接触状態30a(「わずかな接触または接触なし」)があり得る。接触が不十分な場合、電極カテーテル14が切除エネルギーを印加するように操作される時、適当な損傷が形成されない可能性がある。しかしながら、接触状態30c(「堅固な接触」)は、深すぎる損傷を形成し(たとえば、心筋22に穿孔をもたらす)および/または標的組織24の周囲の組織を破壊する可能性がある。したがって、ユーザは、接触状態30b(「軽い接触から中間の接触」)を望む可能性がある。
【0015】
図2aおよび図2bにおける例示的な接触または結合状態30a〜30cは、例示の目的で示すものであり、限定するようには意図されていない、ということに留意されたい。他の接触または結合状態(たとえば、接触状態間がより細分)もまたあってもよく、および/またはユーザに望まれてもよい。かかる接触状態の定義は、少なくともある程度は、2〜3例を挙げると、標的組織のタイプ、切除損傷の所望の深さ、およびRF放射の動作周波数等の動作条件によって決まる可能性がある。
【0016】
図3は、電極カテーテル14に対する接触または結合状態を評価するように実装され得るように、カテーテルシステム10をより詳細に示す高レベル機能ブロック図である。従来の組織切除システムに典型的な構成要素のいくつかを、簡潔にするために図1には簡略形態で示し、および/またはまったく示さないことに留意されたい。しかしながら、かかる構成要素を、カテーテルシステム10の一部としてまたはそれと使用するために提供してもよい。たとえば、電極カテーテル14は、2〜3例を挙げると、ハンドル部、透視撮像装置および/または他のさまざまな制御部を含んでもよい。かかる構成要素は、医療機器技術においてよく理解されており、したがって、ここでは、本発明が完全に理解されるためにはそれ以上の説明は不要である。
【0017】
例示的なカテーテルシステム10は、たとえば高周波(RF)発生器等の発生器40と、電極カテーテル14に電気的に接続される(電極カテーテルに対するワイヤ44によって示すように)測定回路42と、を含んでもよい。電極カテーテル14を、たとえば患者の腕または胸に取り付けられた接地パッチ46(図1に示すように)を通して、電気的に接地してもよい。
【0018】
発生器40を、電極カテーテル14の先端近くで電気エネルギー(たとえばRF電流)を放出するように動作させてもよい。本明細書では本発明をRF電流に関して説明するが、接触状態を評価するために他のタイプの電流エネルギーを使用してもよい、ということに留意されたい。
【0019】
例示的な実施形態では、発生器40は、電極カテーテル14が標的組織24に近づくと、いわゆる「ピンギング(pinging)」(たとえば低)周波数を放出する。「ピンギング」周波数を、損傷形成のために切除エネルギーを印加するために使用されるものと同じ電極カテーテルによって放出してもよい。別法として、「ピンギング」周波数を印加するために別個の電極カテーテルを使用してもよい。かかる実施形態では、別個の電極は、切除エネルギーを印加するための電極に密に接触して(または取り付けられて)もよく、それにより、接触または結合状態を、切除エネルギーを印加する電極に対して確定することができる。
【0020】
電極・組織界面における結果としてのインピーダンスを、接触または結合評価(または「ピンギング」)中に測定回路42を使用して測定してもよい。例示的な実施形態では、測定回路42は、従来入手可能な抵抗・キャパシタンス・インダクタンス(RCL)メータであってもよい。位相角成分を確定するために実装され得る別の例示的な測定回路についてはまた、図5を参照して後により詳細に説明する。さらに他の測定回路42を実装してもよく、本発明は、いかなる特定のタイプまたは構成の測定回路との使用にも限定されない。
【0021】
接触または結合状態を確定するために、インピーダンス測定値のリアクタンスおよび/または位相角成分を使用してもよい。そして、接触または結合状態を、切除処置に対し所望のレベルの接触または結合を達成するためにリアルタイムにユーザに伝達してもよい。たとえば、接触または結合状態を、光アレイ上でユーザに表示してもよい(たとえば図2aおよび図2bに示すように)。
【0022】
ユーザが、電極カテーテル14を、標的組織24との所望の接触または結合状態までうまく案内した後、発生器40または第2発生器等の発生器を、標的組織24に1つまたは複数の切除損傷を形成するための切除(たとえば高周波数)エネルギーを生成するように動作させてもよい。例示的な実施形態では、同じ発生器40を使用して、インピーダンス測定に対する周波数(たとえば「ピンギング」周波数)と切除損傷を形成するための周波数との両方を含むさまざまな周波数で電気エネルギーを生成してもよい。しかしながら、代替実施形態では、本発明の範囲から逸脱することなく、別々の発生器または発生ユニットを実装してもよい。
【0023】
例示的な実施形態では、測定回路42を、測定されたインピーダンスを分析するように、プロセッサ50およびメモリ52と動作的に関連付けてもよい。例として、プロセッサ50は、インピーダンス測定値のリアクタンスおよび/または位相角成分を確定してもよく、リアクタンス成分および/または位相角に基づいて、電極カテーテル14に対し対応する接触または結合状態を確定してもよい。例示的な実施形態では、さまざまなリアクタンスおよび/または位相角に対応する接触または結合状態を、たとえば広範囲の組織タイプのいずれかに対するさまざまな周波数での試験中に事前に確定してもよい。接触または結合状態をメモリ52に、たとえばテーブルまたは他の適当なデータ構造として格納してもよい。そして、プロセッサ50は、メモリ42のテーブルにアクセスし、リアクタンス成分および/または位相角に基づいてインピーダンス測定値に対応する接触または結合状態を確定してもよい。接触または結合状態を、たとえば表示装置54においてユーザに出力してもよい。
【0024】
カテーテルシステム10は、プロセッサ50およびメモリ52との使用に限定されないことに留意されたい。他の実施形態では、インピーダンス測定に基づいて接触状態を評価するように、かつ対応する接触状態を出力するように、アナログ回路を実装してもよい。かかる回路を、電子工学技術の当業者は本明細書の開示を熟知した後に容易に提供することができ、したがって、さらなる説明は不要である。
【0025】
また、表示装置54は、いかなる特定のタイプの装置にも限定されないことにも留意されたい。たとえば、表示装置54は、液晶ディスプレイ(LCD)等のコンピュータモニタであってもよい。別法として、表示装置を、光アレイとして実装してもよく、その場合、光アレイにおいて1つまたは複数の発光ダイオード(LED)が、接触状態を示すように駆動される(たとえば、接触するほど光る)。実際は、ユーザに接触状態を示すために任意の適当な出力デバイスを実装してもよく、それは表示装置に限定されない。たとえば、接触状態を、音声信号または電極カテーテルのハンドルにおける触感フィードバック(たとえば振動)としてユーザに出力してもよい。
【0026】
さらに、カテーテルシステム10の構成要素は、同じハウジングに提供される必要はない、ということに留意されたい。例として、測定回路42および/またはプロセッサ50ならびにメモリ52を、電極カテーテル14のハンドル部に設けてもよい。別の例では、測定回路42の少なくとも一部を、電極カテーテル14のほかの場所に(たとえば先端部に)設けてもよい。さらに他の例では、プロセッサ50、メモリ52および表示装置54を、カテーテルシステム10の他の構成要素と動作的に関連付けられてもよいパーソナルデスクトップまたはラップトップコンピュータ等、別個のコンピューティングデバイスとして提供してもよい。
【0027】
電極・組織界面におけるインピーダンス測定値に基づいて電極カテーテル14と標的組織24との間の接触または結合状態を評価することは、図4および図4aを参照してよりよく理解することができる。図4は、標的組織24に接触する(または結合される)電極カテーテル14のモデルである。電極カテーテル14は、発生器40(たとえばRF発生器)に電気的に接続される。例示的な実施形態では、回路を、標的組織24を通して完成してもよく、それは、電流が、血液、心筋および他の器官を通って、患者の身体の接地パッチ46(図1)等の参照電極まで流れることを示す。
【0028】
上述したように、発生器40を、電極カテーテル14によって放出される電気エネルギーを生成するように動作させてもよい。放出を、図4において矢印60によって示す。また上述したように、発生器40は、電極カテーテル14が電極・組織接触または結合を評価するために標的組織24に近づく際、「ピンギング」周波数を放出してもよい。例示的な実施形態では、この「ピンギング」周波数を、血液・組織界面におけるもの以外の誘導効果、容量効果および抵抗効果がインピーダンス測定値に認識可能なほどの影響を与えないように選択してもよい。
【0029】
例示的な適用では、血液および電極・血液界面(たとえば、金属電極カテーテルと血液との間)における容量効果は、約50kHzを上回る周波数で最小であるかまたはさらには存在しないことが分かった。電極界面における漂遊インダクタンス(たとえば比較的薄いカテーテルワイヤによる)、キャパシタンスおよび抵抗、ならびに他の器官(たとえば肺)のキャパシタンスの影響もまた、約50kHzを上回る周波数で最小であるかまたはさらには存在しないことも分かった。
【0030】
さらに、抵抗効果は、50kHzを下回る周波数の場合に血液・組織界面において著しく目立つことがわかった。それは、電流が、主に間質液空間23を介して標的組織24内に流れ込み、細胞膜25(たとえば二重脂質(bi−lipid)すなわち「脂肪」)は絶縁体として作用するためである。しかしながら、約50kHzを上回る周波数では、細胞膜25は導電性になり、電流は、間質液空間23と細胞膜25との両方を通って標的組織24に浸透する。したがって、細胞膜は「コンデンサ」としての役割を果たし、抵抗効果は約50kHzを上回る周波数では低減する。
【0031】
接触または結合評価中に切除損傷を形成する危険を回避するために、少量の電流および電力を使用することが望ましい場合もある。1mAを下回る電流に対する目下好ましい範囲は、50〜500kHz範囲の動作周波数である。
【0032】
周波数選択は、主に生物学的態様と工学的態様とに基づき、当業者の認識範囲内にある。生物学的態様の場合、周波数が低いほど、電極・電解質界面のために測定誤差がもたらされる可能性がある。周波数がMHz範囲以上まで高くなると、寄生キャパシタンスが著しくなる可能性がある。しかしながら、本発明は、いかなる特定の周波数または周波数範での使用にも限定されないことに留意されたい。周波数は、少なくともある程度まで、2〜3例を挙げると、たとえば適用、標的組織のタイプ、および使用されている電気エネルギーのタイプ等、動作的考慮事項によって決まる可能性がある。
【0033】
特定の用途に対し所望の周波数が選択されたものとすると、図4に示すモデルを、図4aに示すように簡略化した電気回路62としてさらに表すことができる。回路62において、発生器40は、AC源64として表現される。上述したように、電極・組織接触を評価するために使用される可能性のある低い周波数動作では、血液・組織界面におけるキャパシタンスおよび抵抗がインピーダンス測定値の優位を占める。したがって、他の容量効果、誘導効果および抵抗効果を無視してもよく、血液・組織界面における容量・抵抗効果を、回路62において抵抗器・コンデンサ(R−C)回路66によって表してもよい。
【0034】
R−C回路66は、標的組織24のインピーダンスに対する抵抗効果および容量効果を表す抵抗器70およびコンデンサ72と並列である、血液のインピーダンスに対する抵抗効果を表す抵抗器68を含んでもよい。電極カテーテル14が標的組織24にまったくかまたはほとんど接触しない場合、血液の抵抗効果はR−C回路66に影響を与え、そのため、インピーダンス測定値にも影響を与える。しかしながら、電極カテーテル14が移動して標的組織24と接触すると、標的組織24の抵抗効果および容量効果はR−C回路66に影響を与え、そのためインピーダンス測定値も影響を与える。
【0035】
インピーダンス測定値に対する抵抗およびキャパシタンスの影響を、インピーダンスの定義に関連してより理解することができる。インピーダンス(Z)を以下のように表すことができる。
Z=R+jX
ここで、Rは、血液および/または組織からの抵抗であり、jは、項が+90°の位相角を有することを示す虚数であり、Xは、キャパシタンスとインダクタンスとの両方からのリアクタンスである。
【0036】
上記式から、リアクタンス成分の大きさが、回路62の抵抗効果と容量効果との両方に応答することが観察される。この変形は、電極・組織界面における接触または結合のレベルに直接対応し、したがって、それを使用して、電極・組織接触または結合を評価してもよい。例として、電極カテーテル14が100kHzの周波数で動作し、主に血液と接触する場合、インピーダンスは純粋に抵抗性であり、リアクタンス(X)は0オームに近い。電極カテーテル14が標的組織に接触すると、リアクタンス成分は負になる。接触または結合のレベルが増大するに従い、リアクタンス成分はさらに負になる。
【0037】
別法として、接触状態または結合状態を、位相角に基づいて確定してもよい。実際には、用途によっては位相角に基づいて接触状態または結合状態を確定することが好ましい場合もあり、それは、位相角が、リアクタンスと抵抗との間の三角比として表されるためである。抵抗成分の大きさは、条件が変化すると(たとえば異なる患者に対する)異なる可能性があるが、位相角は、外部条件に対して影響を受けにくい傾向にある相対測定値である。
【0038】
例示的な実施形態では、位相角を、インピーダンス測定値から(たとえば図3のプロセッサ50により)確定してもよい。すなわち、インピーダンスを以下のように表してもよい。
Z=|Z|∠φ
ここで、|Z|はインピーダンスの大きさであり、φは位相角である。
【0039】
項|Z|およびφを、さらに以下のように表してもよい。
【0040】
【数1】
および
tanφ=X/R
【0041】
位相角はまた、電極・組織界面における接触または結合のレベルに直接対応し、したがって、それを使用して、電極・組織接触または結合を評価してもよい。例として、電極カテーテル14が100kHzの周波数で動作し、主に血液と接触する場合、位相角はゼロ(0)に近い。電極カテーテル14が標的組織に接触すると、位相角は負になり、接触または結合レベルが増大するに従って位相角はさらに負になる。例示の目的で一例を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
位相角を確定するためにインピーダンス測定値を使用してもよいが、代替実施形態では、測定回路42を、位相角を直接確定する位相検出回路として実装してもよい。図5に例示的な位相検出回路80を示す。位相検出回路80を、機能的構成要素に関連して示しかつ説明する。本発明を完全に理解するために特定のハードウェア構成は必要でないということに留意されたい。デジタルおよび/またはアナログハードウェアおよび/またはソフトウェアでの位相検出回路80の実装は、電子工学技術における当業者には本明細書における教示を熟知した後に容易に明らかとなろう。
【0044】
例示的な位相検出回路80は、電極・組織界面における電流および電圧を測定する電流センサ82および電圧センサ84を含んでもよい。電流測定値および電圧測定値は、位相比較器86に対する入力であってもよい。位相比較器86は、電圧測定値と電流測定値との間の位相の差に比例する直流(DC)出力電圧を提供する。
【0045】
一実施形態では、電流センサ82を使用して切除電流を測定してもよい。センサは、切除ワイヤと直列であってもよい。たとえば、コイルクラフト(Coilcraft)社のCST1電流検知変圧器を切除ワイヤと直列に配置してもよい。別法として、電流ワイヤは、物理的な接続があってもなくても、電流センサの穴を貫通してもよい。さらに、切除電極と接地パッチとの間の電圧を検知してもよい。この電圧を、位相検知回路に供給することができるように減衰させてもよい。そして、位相検知回路は、電流および電圧を測定し、それらの間の位相角を確定し、後にそれは結合レベルと相関される。このように、切除電流を使用して、結合検知の目的でさらなる電流を投入するのではなく位相角を測定することができる。
【0046】
任意に、電流測定値を、移相回路88により移相させることにより、測定電流と測定電圧との間の移相遅れを「補正する」ことによって位相比較器86の動作を容易にしてもよい。また任意に、位相比較器86からの出力を、位相調整回路90によって、使用されている接地パッチ46のタイプ等、外部要因を補償するように「補正」してもよい。さまざまなデバイス(たとえば図3におけるプロセッサ50および表示装置54)によって使用されるために出力を増幅する(たとえばミリボルトからボルト)信号スケーリング回路92を提供してもよい。
【0047】
切除中、測定されたインピーダンスとその成分の抵抗およびリアクタンスは、組織温度によって変化する。かかる状態では、組織温度の変化による変化は、切除中の損傷形成の測度を提供する。
【0048】
図5に示す位相検出回路80は、一例として提供するものであり、限定するようには意図されていないことに留意されたい。電子工学技術における当業者は、本明細書の開示を熟知した後に、本発明の範囲から逸脱することなく他の実施態様を容易に提供することができる。
【0049】
電極接触評価のための例示的なシステムについて説明したが、ここで、図6〜図8に示すブロック図を参照して例示的な動作モードをより理解することができる。図6は、接触または結合を検知するための位相角測定を示す例示的なブロック図100である。図7は、切除エネルギーおよび接触検知信号の両方が切除電極に同時に印加される場合の、切除中の位相角測定を示す例示的なブロック200図である。図8は、検知信号と切除電力とを切り替える、切除中の位相角測定を示す例示的なブロック図300である。図7および図8では、同様の要素を示すために、それぞれ200番代および300番代の参照番号を使用し、これらの要素を、図7および図8に関連して繰り返して説明はしない可能性がある。
【0050】
上述したように、接触または結合を検知する位相角方法は、(1)組織が血液より抵抗性かつ容量性であり、(2)測定された電極インピーダンスが直接の周囲の物質に大部分依存するという事実に基づく。このため、電極が血液から心筋まで移動する時、測定インピーダンスは増大し、位相角は0°から負の値まで変化する(容量性)。位相角は抵抗およびリアクタンス両方の相対項であるため、それを使用して接触または結合レベルを表してもよい。すなわち、電極が血液と接触している時、それは0°基線を提供し、より多くの接触または結合が確立されるに従い一層負になる。それはまた、カテーテル、器具類および生理学的可変要素の影響を最小限にする。
【0051】
位相角測定を、負荷の電圧(V)102および電流(I)104の両方をサンプリングし、それらの信号間の遅れを位相角として計算することによって行ってもよい。図6に示すように、検知信号106は、切除電極108と参照電極110との間に印加される。この検知信号106は、たとえば、わずかな振幅(<1mA)で50kHzと500kHzとの間であってもよい。
【0052】
例示的な器具を、参照電極構成に応じて、限定されないがたとえば100kHz、400kHzおよび485kHzの周波数として動作させてもよい。電流104および電圧102の両方が検知される。これら2つの信号は、位相比較器112に送出され、電極108の接触または結合状態に対応する位相角が計算される。ブロック114において生位相角信号が調整されることにより、たとえばカテーテル、器具類および生物学的可変要素によってもたらされる位相角に対する外部の影響が補償される。それはまた、容易な解釈およびインタフェースのために調整された後、ブロック116において、表示または他の処理のために他の機器に出力される。
【0053】
位相補償を、切除処置の開始時に行ってもよい。まず、カテーテル電極108を、血液にのみ接触するように、心腔(たとえば、右心房または左心房)の中央まで移動させる。システムは、位相角を測定し、ゼロ接触レベルに対する基線としてこの値を使用する。この調整により、カテーテル配線、参照電極の位置、および外部パッチが使用される場合は皮膚または脂肪等、カテーテルおよび患者によってもたらされる固定位相角が補償される。
【0054】
初期ゼロ調整後、ユーザは、カテーテル電極を1つまたは複数の所望の部位まで移動させて不整脈の心筋を切除してもよい。例示的な実施形態では、位相角は、電極108が心筋からたとえば3mm以内まで近づくと変化を開始し、さらに接触または結合が確立されるに従いますます負になる。ユーザは、切除エネルギーを与える前に位相角出力に基づいて電極的接触または結合の質を判断してもよい。例示的な実施形態では、この位相角値は、4mm切除電極が実際に心筋に接触する場合、約−3°である。ここで図7および図8に関連してさらに詳細に説明するように、切除中に位相角を測定する少なくとも2つの方法があることに留意されたい。
【0055】
図7において、電極208に切除電力218が印加される一方で、同様に検知信号206が印加される。切除および接触検知は、異なる周波数で動作する。したがって、フィルタリングにより、心筋の切除を妨げることなく切除中に位相角を測定することができる。
【0056】
別のオプションは、図8においてスイッチ320によって示すように、検知信号306と切除電力318との間の位相測定を切り替える、というものである。接近中に切除電力318がオフにされると、振幅の小さい検知信号306がオンにされ、それを使用して接触または結合を検知するための位相角が測定される。切除処置のために切除電力318がオンにされると、振幅の大きい切除電力318の電圧および電流が、切除中の接触または結合指標として検知され使用される。
【0057】
図9aは、電極結合評価プロトコル400(以下、「評価プロトコル400」)の一実施形態を示し、これを使用して、この評価が位相角に基づく場合、電極(たとえばカテーテル電極)の任意の適当な組織との結合を評価することができる。したがって、プロトコル400を、図6〜図8に関連して上述した実施形態に関連して使用してもよい。いずれの場合も、「結合」は、電極の標的組織との電気的結合、電極と標的組織との間の機械的結合またはその両方を含んでもよい。
【0058】
図9aの評価プロトコル400のステップ402は、電気信号を電極に送出することに関する。通常、これを、電極が少なくとも標的組織に概して近接して(たとえば左心房等の心腔内)に配置された後に行う。その後、ステップ404において位相角を確定し、その後、ステップ408においてこの位相角に基づいて電極結合を評価する。ステップ408からの電極結合評価を、ステップ410を実行することにより分類してもよい。しかしながら、すべての場合においてステップ410の分類が必要であるとは限らない。いずれの場合も、ステップ412に従って、ステップ408からの評価の結果を出力する。
【0059】
プロトコル400のステップ402に従って送出される電気信号は、任意の適当な周波数であってもよい。しかしながら、プロトコル400の目的で評価を行うためには単一の周波数のみでよい。ステップ404に関連する位相角は、インピーダンスの位相角であってもよい。この位相角を、たとえば任意の適当な構成の位相検知回路を使用して、任意の適当な方法で確定してもよい。一実施形態では、かつステップ402に関連する電気信号を使用して、電極の電流を測定し、電極と別の電極(たとえば戻り電極)との間の電圧を測定し、その後、これら電流測定値と電圧測定値との間の位相角を確定することにより、位相角を確定する。別のオプションは、リアクタンスおよびインピーダンスを適当な方法で測定/確定することと、その後、これらの値から位相角を確定する(たとえば、位相角の正弦はリアクタンスのインピーダンスに対する比である)ことと、である。
【0060】
位相角を、RCLメータまたは位相検出回路(たとえば、発振器、マルチプレクサ、フィルタ、位相検出回路を有する)を使用して確定してもよく、それを位相モジュールと呼んでもよい。この位相モジュール(測定および/または検出)を、カテーテルハンドルセットに組み込むかまたは埋め込むことにより、切除カテーテルと電源との間の独立形ユニットの形態とすることにより、電源に組み込むかまたは埋め込むことにより、電気生理学またはEPマッピングシステムに組み込むことにより、もしくは電気生理学記録システムの一部とすること等により、任意の適当な場所に配置してもよい。
【0061】
電極の組織との結合の評価(プロトコル400のステップ408)を、任意の適当な方法で行ってもよい。たとえば、ステップ404を通して確定される位相角を、1つまたは複数のベンチマーク位相角値と(たとえば位相角比較器を使用して)比較してもよい。これらベンチマーク位相角値を、任意の適当な方法で、たとえば実験的に確定し/設定してもよい。これらベンチマーク位相角値を、適当なデータ構造に、たとえばコンピュータ可読データ記憶媒体に格納してもよく、もしくは位相角比較器に利用可能となるようにしてもよい。概して、かつ一実施形態では、位相角は、電極・組織(たとえば心筋)が結合するにしたがって低減する。
【0062】
図9aの評価プロトコル400のステップ410の分類の目的のために、以下の状態のうちの1つまたは複数に対して1つまたは複数のベンチマーク位相角値(たとえば、単一ベンチマーク位相角値またはある範囲のベンチマーク位相角値)があってもよい。すなわち、1)不十分な電極結合(たとえば、「A」を下回る関連位相角が不十分な電極結合に相当するものとされる電極結合)、2)十分な電極結合(たとえば、関連位相角が「A」を上回りかつ「B」を下回る電極結合が十分な電極結合に相当するものとされる)および3)高電極結合または過度な電極結合(たとえば、「B」を上回る関連位相角が高電極結合または過度な電極結合に相当するものとされる電極結合)である。一実施形態は、以下の位相角値が示した状態に相当するものとする。
不十分な電極結合: Φ>−5°
十分な電極結合: −5°>Φ>−10°
高/過度な電極結合: Φ<−10°
【0063】
「高」電極結合または「過度な」電極結合は、電気的結合、機械的結合または両方(電極と標的組織との間の結合)に関連して高い/過度であり得る。一実施形態では、高い/過度なまたは堅固な電極結合は、電極と標的組織との間の高い/過度な機械的接触を意味する。種々の理由で高機械的接触または過度な機械的接触が電極と組織との間に存在する時を知ることが望ましい場合がある。たとえば、電極と標的組織との間の高機械的接触または過度な機械的接触を回避することが望ましい場合もある(たとえば、電極を、組織壁、膜等内に向ける可能性を低減するため)。しかしながら、電極により標的組織に対し十分な機械的力が加えられる時を知ることが望ましい場合もある(たとえば、電極を、組織壁、膜等内に向ける可能性を増大させることによりこの組織壁または膜の他方の側の所望の領域にアクセスすることができるようにするため)。
【0064】
ステップ408の評価の結果を、図9aの電極結合評価プロトコル400のステップ412に従う任意の適当な方法で出力してもよい。任意の適当な出力を、たとえば視覚的に(たとえば棒グラフ、もしくは任意の適当な位置または位置の組合せにおける他の任意の適当な表示)、音声で(たとえばアラーム)、物理的に(たとえば、電極に基づく処置を行う医師によって保持されているハンドルを振動させることにより、かつ本明細書においてより詳細に説明するように)またはそれらの任意の組合せにより、利用してもよい。単一出力を提供してもよい。2つ以上の出力の組合せを利用してもよい。1つまたは複数の出力を単一場所にまたは複数の場所に発行してもよい。
【0065】
図9bは、電極結合評価プロトコル400’の一実施形態を示し、これを使用して電極(たとえばカテーテル電極)の任意の適当な組織との結合を評価してもよく、この場合、この評価はリアクタンスに基づく。プロトコル400’は図9aのプロトコル400の変形であるため、図9bのプロトコル400’の個々のステップを識別する参照数字に関連して「単一プライム」指示を使用する。
【0066】
図9bの評価プロトコル400’のステップ402’は、電気信号を送出することに関する。プロトコル400’に対し、その評価を提供するためには単一周波数のみでよい。すなわち、評価プロトコル400’の場合、単一周波数を使用して電極結合評価を提供してもよい。通常、これを、電極が少なくとも概して標的組織の近傍(たとえば心腔内)に配置された後に行う。その後、ステップ404’において、電極および標的組織を含む電気回路のリアクタンスを確定する。このリアクタンスを、任意の適当な方法で確定してもよい。たとえば、位相角を測定してもよく(たとえば上述したことに従って)、インピーダンスを測定してもよく、これら2つの値からリアクタンスを計算してもよい(たとえば、位相角の正弦はリアクタンスのインピーダンスに対する比に等しい)。リアクタンスを確定するための別のオプションは、パルス波の位相または周波数応答を確定することである。
【0067】
プロトコル400’のステップ408’において、上述したリアクタンスに基づいて電極結合を評価する。ステップ408’からのこの電極結合を、ステップ410’を実行することによって分類してもよい。しかしながら、すべての場合においてステップ410’の分類が必要であるとは限らない。いずれの場合も、ステップ412’に従って評価の結果を出力する。ステップ412’は、図9aの電極結合評価プロトコル400のステップ412に一致してもよい。
【0068】
電極の組織との結合の評価(プロトコル400’のステップ408’)を、任意の適当な方法で行ってもよい。たとえば、ステップ404’を通して確定されるリアクタンスを、1つまたは複数のベンチマークリアクタンス値と(たとえばリアクタンス比較器を使用して)比較してもよい。これらベンチマークリアクタンス値を、任意の適当な方法で、たとえば実験的に確定/設定してもよい。これらベンチマークリアクタンス値を、適当なデータ構造、たとえばコンピュータ可読データ記憶媒体に格納してもよく、もしくはリアクタンス比較器に利用可能となるようにしてもよい。概してかつ一実施形態では、電極・組織(たとえば心筋)が結合するほどリアクタンスが低減する。
【0069】
ステップ410’の分類の目的で、以下の状態のうちの1つまたは複数に対し1つまたは複数のベンチマークリアクタンス値(たとえば単一のベンチマークリアクタンス値またはある範囲のベンチマークリアクタンス値)があってもよい。すなわち、1)不十分な電極結合(たとえば、「A」を下回る関連リアクタンスが不十分な電極結合に相当するものとされる電極結合)、2)十分な電極結合(たとえば、関連リアクタンスが「A」を上回りかつ「B」を下回る電極結合が十分な電極結合に相当するものとされる)および3)高電極結合または過度な電極結合(たとえば、「B」を上回る関連リアクタンスが高電極結合または過度な電極結合に相当するものとされる電極結合)である。一実施形態は、以下のリアクタンス値が示した状態に相当するものとする。
不十分な電極結合: X>−5
十分な電極結合: −5>X>−15
高/過度な電極結合: X<−15
【0070】
電極結合評価を位相角に基づかせる1つの利益は、位相角は、単独でまたは個々に考慮したインピーダンスまたはリアクタンスより、患者間の変化または動作設定に対して影響を受け難いということである。電極結合評価を提供するために、組織間の変化またはかかる他の状態に対する感度を低減させる他の方法を利用してもよい。図9cは、電極結合評価プロトコル480、すなわち電極(たとえばカテーテル電極)の任意の適当な組織との結合を評価するために使用され得るプロトコル480のかかる実施形態を示す。評価プロトコル480のステップ482は、電極に一定周波数の電極信号を送出することに関する。ステップ484において少なくとも1つの電気パラメータを測定する。そして、ステップ486において、この測定値から、「インピーダンス成分比」として特徴付けてもよいものを確定する。「インピーダンス成分比」という句は、位相角等、インピーダンスの2つの個々の成分の比である任意の項を意味する(位相角の正接はリアクタンスの抵抗に対する比に等しい)。インピーダンス成分比を、単に位相角を測定することによる等、任意の適当な方法で確定してもよい。インピーダンス成分比を確定する他の方法には、限定されないが、ステップ482に含まれる周波数での抵抗およびリアクタンスを確定することと、これら2つのパラメータからインピーダンス成分比を計算することと、が含まれる。インピーダンスに関連する2つの成分の比を使用することにより、電極結合評価、すなわち電極と標的組織との間の結合の評価に対し、組織間の変化に対する感度を低減することができる。
【0071】
プロトコル480のステップ488において電極結合を評価する。ステップ488からのこの電極結合を、ステップ490を実行することによって分類してもよく、ステップ490は、図9aに関連して上述した電極結合評価プロトコル400のステップ410に従ってもよい。したがって、すべての場合においてステップ490の分類が必要であるとは限らない。いずれの場合も、評価の結果を、ステップ492に従って出力する。ステップ492は、図9aに関連して上述した電極結合評価プロトコル400のステップ412にしたがってもよい。
【0072】
図9a〜図9cのプロトコルの各々は、電極結合が、電極と標的組織との間の機械的結合(すなわち物理的接触)であることと、電気的結合(たとえば、電気エネルギーの十分な部分が電極から標的組織にまで渡る状態)であることと、を含む。機械的結合があるときはいつでも、電気的結合がある。しかしながら、逆は真ではない。電極が標的組織と接触することなく、電気的結合があり得る。図10は、電極414と標的組織416との間に機械的接触のない電気的結合がある場合の代表的な一例を示す。ここでは、電極414は組織416の表面上の空隙418内に配置され、空隙418は、電極414と標的組織416との間の電気的結合を提供する。したがって、図9a〜図9cのプロトコルの各々は、電極と標的組織との間の機械的接触を必要としない電気的結合を示してもよい。
【0073】
図11a〜図11cは、電極結合評価を提供することに関連して使用され得るさまざまな構成を概略的に提示する。これらのシステムの各々について切除電極に関連して説明するが、電極結合評価を、電極が任意の適当な機能または機能の組合せを提供する任意の適当な用途に使用してもよい。図11a〜図11cのシステムの各々を使用して、図9a〜図9cに関連して上述した評価プロトコルを提供してもよい。また、これら構成を商用的に実装するために、フィルタ(たとえば、結合評価を行うために使用されている電流から分離されるべき1つまたは複数の他の発生源からの電流があり得る場合のように)、患者を「電気的に保護する」1つまたは複数の構成要素および/または電極結合評価を行うために使用される電気回路等、他のさまざまな構成要素を利用することが望ましい場合もあることが理解されるべきである。
【0074】
図11aは、切除電源424、切除電極422および戻り電極426を含む切除システム420を示す。切除電源424によって任意の適当な周波数が使用されてもよい。切除電極422および戻り電極426の各々は、任意の適当なサイズ、形状および/または構成であってもよい。通常、切除電極422は、患者の身体内に配置されるカテーテル電極の形態となる。戻り電極426を、任意の適当な位置してもよい(たとえば、患者の皮膚の上に配置される接地パッチ、患者の身体内に配置されるカテーテル電極)。
【0075】
切除システム420の追加の構成要素には、電極結合評価電源428(以下、「評価電源428」)、評価戻り電極430および電極結合評価モジュール432(以下、「評価モジュール432」)が含まれる。評価電源428によって任意の適当な周波数が使用されてもよい。通常、切除電源424はまた、評価電源428より大幅に高い電流を使用する。
【0076】
評価戻り電極430は、任意の適当なサイズ、形状および/または構成であってもよく、任意の適当な位置に配置されてもよい。一実施形態では、戻り電極426および評価戻り電極430は、異なる位置に配置される別々の構造の形態である。別の実施形態では、単一構造(戻り電極426としてかつ評価戻り電極430として機能する単一ユニット)により、戻り電極426の機能と評価戻り電極430の機能とが提供される。
【0077】
切除電極422は、切除システム420に対するスイッチ434の位置に応じて、切除電源424または評価電源428いずれかからの電力を受け取る。すなわち、図11aの切除システム420の場合、切除動作および電極結合評価動作は同時に行われない可能性がある。電極結合評価動作中、スイッチ434は、当然ながら、評価電源428からの電力を受け取るように配置される。これにより、評価モジュール432は、切除電極422と標的組織との間の結合を評価することができる。評価モジュール432により、その電極結合評価機能を提供するために、限定なしに本明細書で扱うさまざまな構成(たとえば位相角比較に基づく評価、リアクタンス比較に基づく評価、インピーダンス成分比比較に基づく評価、図12aおよび図12bに関連して後述するような0°位相周波数または0インダクタンス周波数に関連する周波数を識別することに基づく評価)を含む、任意の適当な構成を利用してもよい。評価モジュール432は、単一周波数から図9a〜図9cのプロトコルのいずれかを使用する電極結合評価を提供してもよい。
【0078】
図11bは、切除電源444、切除電極442および戻り電極446を含む切除システム440を示す。切除電源444により任意の適当な周波数が使用されてもよい。切除電極442および戻り電極446の各々は、任意の適当なサイズ、形状および/または構成であってもよい。通常、切除電極442は、患者の身体内に配置されるカテーテル電極の形態となる。戻り電極446を、任意の適当な位置に配置してもよい(たとえば、患者の皮膚の上に配置される接地パッチ、患者の身体内に配置されるカテーテル電極)。
【0079】
切除システム440の追加の構成要素には、電極結合評価電源448(以下、「評価電源448」)、評価戻り電極450および電極結合評価モジュール452(以下、「評価モジュール452」)が含まれる。評価電源448によって任意の適当な周波数が使用されてもよい。しかしながら、切除システム440の場合、切除動作および電極結合評価動作の同時実行に適応するために、切除電源444および評価電源448は異なる周波数で動作する。さらに、通常、切除電源444はまた、評価電源448より大幅に高い電流を使用する。
【0080】
評価戻り電極450は、任意の適当なサイズ、形状および/または構成であってもよく、任意の適当な位置に配置されてもよい。一実施形態では、戻り電極446および評価戻り電極450は、異なる位置に配置される別々の構造の形態である。別の実施形態では、単一構造(戻り電極446としてかつ評価戻り電極450として機能する単一ユニット)により、戻り電極446の機能と評価戻り電極450の機能とが提供される。
【0081】
切除電極442は、切除電源444または評価電源448から同時に電力を受け取る。すなわち、図11bの切除システム440の場合、切除動作および電極結合評価動作が同時に行われ得る。これに関して、切除電源444および評価電源448はこの場合もまた、異なる周波数で動作する。評価モジュール452は、単一周波数から図9a〜図9cのプロトコルのいずれかを使用する電極結合評価を提供してもよい。いずれの場合も、評価モジュール452は、切除電極442と標的組織との間の結合を評価する。図11aの切除システム420に対する評価モジュール432に関連して上述した説明は、図11bの切除システム440に対する評価モジュール452に対して等しく適用可能である。
【0082】
図11cは、切除電源464、切除電極462および戻り電極466を含む切除システム460を示す。切除電源464によって任意の適当な周波数が使用されてもよい。切除電極462および戻り電極466の各々は、任意の適当なサイズ、形状および/または構成であってもよい。通常、切除電極462は、患者の身体内に配置されるカテーテル電極の形態となる。戻り電極466を、任意の適当な位置してもよい(たとえば、患者の皮膚の上に配置される接地パッチ、患者の身体内に配置されるカテーテル電極)。
【0083】
切除システム460の追加の構成要素には、電極結合評価電源468(以下、「評価電源468」)が含まれる。評価電源468によって任意の適当な周波数が使用されてもよい。通常、切除電源464はまた、評価電源468より大幅に高い電流を使用する。
【0084】
切除システム460は、一対の電極結合評価モジュール472a、472b(以下、「評価モジュール472a」および「評価モジュール472b」)をさらに含む。評価モジュール472aは評価電源468に関連し、評価モジュール472bは切除電源464に関連する。図示する実施形態では、切除動作および電極結合評価動作はともに戻り電極466を利用するが、上述した図11aおよび図11bの実施形態の場合のように別々の戻り電極を利用することも可能であり得る。
【0085】
切除電極462は、切除システム460に対するスイッチ474の位置に応じて、切除電源464または評価電源468のいずれかから電力を受け取る。しかしながら、図11aの実施形態とは異なり、電極結合評価動作を、スイッチ474の位置とは無関係に実行してもよい。切除電極462が、スイッチ474を通して評価電源468と電気的に相互接続される場合、評価モジュール472aを使用して切除電極462と標的組織との間の結合が評価される。切除電極462がスイッチ474を通して切除電源464に電気的に相互接続される場合、評価モジュール472bを使用して、切除電極462と標的組織との間の結合が評価される。評価モジュール427a、472bは各々、単一周波数から図9a〜図9cのプロトコルのいずれかを使用する電極結合評価を提供してもよい。
【0086】
評価モジュール472a、472bにより、それらのそれぞれの電極結合評価機能を提供するために、限定なしに本明細書で扱うさまざまな構成を含む任意の適当な構成を利用してもよい。図11aの切除システム420に対する評価モジュール432に関連して上述した説明は、図11cの切除システム460に対する評価モジュール472a、472bに等しく適用可能である。通常、評価モジュール472a、472bは、電極結合を評価することに対して同じ構成であるが、すべての場合においてそうであるとは限らない。評価モジュール472a、472bが同じ構成である場合、切除電源464および評価電源468は通常同じ周波数で動作する。したがって、切除システム460は、切除動作を開始する(たとえば評価電流および評価モジュール472aを使用して)前に電極結合の評価に対応し、さらに、切除動作中に電極結合の評価に対応する(たとえば、実際の切除電流対小さい方の電流を使用し、かつ評価モジュール472bを使用して)。図11bの切除システム440はまた、切除動作中の電極結合の評価に対応するが、別々の評価電流対実際の切除電流を使用する。
【0087】
図11a〜図11cの実施形態の各々における評価モジュールによって使用される電極のうちの1つは、当然ながら切除または「活性」電極である。電極結合評価モジュールおよび切除電極はともに、それらのそれぞれの機能を提供するために、何らかの方法で患者とインタフェースする別の電極が必要である。図1aは、評価モジュールによって使用される戻り電極と、1つまたは複数の所望の機能を提供するために組織に電気エネルギーを提供するように切除電極と協働する戻り電極と、が、共通の構造に組み込まれる一実施形態を示す。より詳細には、切除電極20(たとえばカテーテル電極)は、心臓16の腔(たとえば左心房)に配置され、カテーテル電極20の形態である。戻り電極20a(たとえばカテーテル電極)もまた心臓16の同じ腔に配置され、図11a〜図11cの評価モジュールの各々によって使用され(切除電極20の標的組織24との結合を評価するため)、かつ切除電極20によって使用され得る(所望の医療機能を提供するために標的組織24に電気エネルギーを送達するため)。したがって、切除電極20および戻り電極20aを、異なるカテーテルに関連付けてもよく、それにより、個々に移動させてもよい。一実施形態では、戻り電極20aは切除電極20より広い表面積を有する。切除電極20および戻り電極20aの各々は、互いに間隔が空けられた電極先端を有する。
【0088】
図1aに示す構成は、共通の心腔に2つの電極20、20aを提供する。別のオプションは、2つ以上の電極が共通のカテーテルに関連するが、カテーテルは2つの分離された遠位部を有し、各々その遠位端の別々の電極先端に電極を有し、それにより、電極先端が互いから間隔が空けられる、というものである。
【0089】
活性電極と標的組織との間の結合を評価するために位相角を使用する1つまたは複数の方法について上に提示した。電極結合を評価するために位相角を使用してもよい別の方法を図12aおよび図12bに示す。図12aは、可変周波数源502、電気パラメータ測定モジュール504、電極結合評価モジュール506、および所望の機能または機能の組合せ(たとえば切除)を提供するために組織510に結合される電極508を含む、電極結合評価システム500の概略図を提示する。図12aには戻り電極を示さないが、それは、任意の適当なタイプであってもよく、かつ任意の適当な場所に配置されてもよい。概して、可変周波数源502は、電気エネルギーを組織510に送出する目的で、電極508に電気信号を提供する。電気パラメータ測定モジュール504は、任意の適当なタイプおよび/または構成であってもよく、1つまたは複数の電気パラメータを測定し、電極結合評価モジュール506によって使用される情報を提供する。電極結合評価モジュール506は、電極508と組織510との間の結合を評価する。
【0090】
図12bは、図12aの電極結合評価モジュール506によって使用され得る電極結合プロトコル520の一実施形態を提示する。ステップ524を実行することにより、電極508に1つまたは複数の電気信号を送出する。基線結合状態を評価することができる。たとえば、プロトコル520のステップ524〜528に従って、基線結合状態を定義することができる。「基線結合状態」という用語は、媒体(たとえば血液)における所望の周波数でのゼロ化位相角またはゼロ化リアクタンスを含む。
【0091】
ステップ525を実行することにより、電極が所望の媒体、たとえば血液にある時を確定する。次に、ステップ526を実行することにより、基線結合状態を確立する。たとえば、医師は、基線結合状態の確立を指示するように入力デバイスを起動することができる。そして、プロトコル520は、ステップ528において、位相角またはリアクタンスをゼロに補正することにより基線結合状態に調整する。
【0092】
基線結合状態をゼロにすることに対する代替態様として、ステップ526で確立された基線結合状態の値を格納し、かかる基線結合状態に対する電極結合状態を確定するために使用してもよい。第2の代替態様では、確定された位相角を1つまたは複数の所定ベンチマーク値と比較することにより、基線結合状態を確定してもよい。これらベンチマーク値を、任意の適当な方法で、たとえばインビトロ(in vitro)検査、エクスビボ(ex vivo)検査またはインビボ(in vivo)検査で実験的に確定し/設定してもよい。これらベンチマーク値を、適当なデータ構造に、たとえばコンピュータ可読データ記憶媒体に格納してもよく、もしくは位相比較器に利用可能となるようにしてもよい。
【0093】
電極結合を、ステップ528からの基線結合状態を使用してプロトコル520のステップ532に従って評価してもよい。1つまたは複数の電気パラメータを任意の適当な方法で確定し、ステップ528からの基線結合状態の対応する値と比較してもよい。たとえば、以下のカテゴリを提供してもよい。すなわち、1)不十分な電極結合(たとえば、「A」を下回る基線結合状態に関連する値が不十分な電極結合に相当するものとされる電極結合)、2)十分な電極結合(たとえば、基線結合状態が「A」を上回りかつ「B」を下回る基線結合状態に関連する値が十分な電極結合に相当するものとされる)および3)高電極結合または過度な電極結合(たとえば、「B」を上回る基線結合状態に関連する値が高電極結合または過度な電極結合に相当するものとされる電極結合)である。
【0094】
別の実施形態では、電気的結合を、「標的周波数」、すなわち電気パラメータに対する事前設定値(たとえば事前設定リアクタンスまたは位相角値)に対応する周波数の関数として測定する。図12cは、図12aの電極結合評価モジュール506によって使用され得る電極結合プロトコル620の一実施形態を提示する。ステップ624を実行することにより電極508に電気信号を送出する。電気信号を異なる周波数で送出する。送出される各周波数において、ステップ626は、リアクタンスおよび/または位相を測定する。ステップ628は、測定されたリアクタンスまたは位相を事前設定値と比較する。リアクタンスまたは位相が事前設定値と一致する周波数が「標的周波数」である。ステップ628の目的のための事前設定値に対し、正の値、ゼロまたは負の値を含む任意の適当な値を使用してもよい(たとえば、標的周波数を0°位相周波数と呼んでもよいように、ゼロ位相角、または標的状態周波数を0インダクタンス周波数と呼んでもよいように、ゼロインダクタンス)。
【0095】
プロトコル620は、標的周波数が存在すると確定すると、ステップ630に進み、そこで、ステップ628によって提供された情報を使用して、電極508の組織510との結合を評価し、プロトコル620のステップ636に従って、この評価の結果を出力する。ステップ636は、図9aに関連して上述したプロトコルのステップ412に従ってもよい。
【0096】
組織との電極結合の評価を、図12cのプロトコル620のステップ630を通して提供する。ステップ628からの標的周波数を、1つまたは複数のベンチマーク周波数値と(たとえば比較器を使用して)比較してもよい。これらベンチマーク周波数値を、任意の適当な方法で確定し/設定してもよい。値を、たとえばインビトロ検査、エクスビボ検査またはインビボ検査で実験的に事前確定することができる。これらベンチマーク周波数値を、適当なデータ構造に、たとえばコンピュータ可読データ記憶媒体に格納してもよい。ベンチマーク周波数値を、医師が処置中に確定してもよい。たとえば、電極が所望の媒体、たとえば血液にある時を確定してもよい。その時点で、医師は、既存の結合関連状態に対しベンチマーク値を設定するように入力デバイスを起動することができる。
【0097】
図12cの評価プロトコル620の分類の目的のための以下の状態のうちの1つまたは複数に対して1つまたは複数のベンチマーク周波数値(たとえば、単一ベンチマーク周波数値またはある範囲のベンチマーク周波数値)があってもよい。すなわち、1)不十分な電極結合(たとえば、「A」を下回る標的周波数が不十分な電極結合に相当するものとされる電極結合)、2)十分な電極結合(たとえば、標的周波数が「A」を上回りかつ「B」を下回る電極結合が十分な電極結合に相当するものとされる電極結合)および3)過度な電極結合(たとえば、「B」を上回る標的周波数が過度な電極結合に相当するものとされる電極結合)である。一実施形態は、以下の標的周波数値が示した状態に相当するものとする(Ftは示した状態に対する標的周波数である)。
不十分な電極結合: Ft<120kHz
十分な電極結合: 120kHz<Ft<400kHz
高/過度な電極結合: Ft>400kHz
図12cのプロトコル620を、任意の適当な方法で実装してもよい。たとえば、インピーダンスを監視して、信号周波数を掃引することにより(たとえば図12aのシステム500に従って)標的位相周波数を取得してもよい。この周波数掃引を、2つの適当な値(たとえば50kHzおよび1MHz)の間で、掃引に対するこれらの値の間の任意の適当な増分変化(たとえば、10〜20kHz増分)を使用して、提供してもよい。この手法は、一度に1つの周波数でインピーダンスを測定しそれら周波数を周波数合成器等によって回転させることを含む、周波数スイッチングと呼ばれ得るものを使用する。別の手法は、複数の周波数を結合し、結合された信号からフィルタリングを通して個々の周波数の各々におけるインピーダンスを確定する、というものである。場合によっては標的周波数状態に関連する周波数を確定するために補間が必要となる可能性があることが理解されるべきである(たとえば、プロトコル620によって使用される2つの周波数の間に標的周波数状態に関連する周波数が存在することが確定される場合)。
【0098】
上記説明では、位相角等のいくつかのインピーダンス関連測定値に基づき患者に対する電極結合のレベルを確定するさまざまな実施態様について記載した。これは、電極結合情報を得るために特に有効なメカニズムであると考えられるが、他のメカニズムを利用してもよい、ということが理解されよう。これらメカニズムのうちのいくつかは、他のインピーダンスベース測定、機械的振動測定(圧電デバイスから得られる等)または機械的変形測定(歪みゲージを介して得られる等)を含む。このため、電極位置決めの指示は、電気的特性、機械的特性または他の特性に基づいてもよい。
【0099】
いずれの場合も、電極位置の指示が得られると、この情報を医師に伝達することが望ましい。さらに、上述したように、医師に対し、注意をできるだけそらさないようにこの情報を提供することが有用である。
【0100】
本発明の一態様は、電極結合情報または他の情報を、電極案内器具を介して医師に提供することに関する。以下の説明では、これを、不十分な結合、十分な結合または高結合等、電極結合の複数のレベルのうちの任意のものを示すことができる、カテーテルハンドルセットおよび/またはナビゲーションシステムを介して出力を提供する文脈で示す。しかしながら、本発明は、これら特定の文脈または実施態様に限定されないということが理解されよう。
【0101】
図13を参照すると、本発明によるカテーテルシステム1300が示されている。システム1300は、概して、ナビゲーションシステムディスプレイ1312およびユーザインタフェース1314に動作可能に関連付けられる電極カテーテル1302を含む。図示する電極カテーテル1302は、患者の体液および組織と相互作用する電極1308と、医師が電極1308を進める、引っ込ませる、回転させるまたは他の方法で位置決めするために把持することができるハンドルセット1304と、ハンドルセット1304と電極1308との間に延在するカテーテル本体1306と、を含む。図示する電極カテーテル1302は、後により詳細に説明するように、電極結合のレベルに関する出力を提供するLEDアレイ等の出力デバイス1310をさらに含む。
【0102】
ナビゲーションシステムディスプレイ1312は、医師が電極1308を患者に対して所望の位置に位置決めするのを支援する視覚的情報を提供する。ナビゲーションシステムについては後により詳細に説明する。しかしながら、概して、ナビゲーションシステムは、電気的マッピング、透視法および/または他の情報に基づいて、心臓構造等の患者の一定の生物学的構造を表示する。さらに、電極1308の位置は、概して、ディスプレイ1312において、医師が電極1308を所望の位置に向けるのを支援するために、生物学的構造に関して示される。このため、電極カテーテル1302を用いる医療処置中、医師の視覚的注意の大部分はディスプレイに向けられる、ということが理解されよう。しかしながら、熟練した医師はまた、ハンドルセット1304を通しての触感フィードバックに基づいて電極位置に関する一定情報を導出する。
【0103】
図示するシステムはまた、医師が処置に関する一定情報を入力するために利用することができるユーザインタフェース1314も含む。たとえば、医師は、患者、利用される機器、実行されている処置等を識別する情報を入力してもよい。さらに、医師は、ユーザインタフェース1314を使用して、たとえば切除等に対し対象位置を識別してもよい。このため、ユーザインタフェースは、キーボード、グラフィカルユーザインタフェースまたは他の入力メカニズムを含んでもよい。
【0104】
図14は、本発明による電極結合出力システム1400の概略図である。システム1400は、電極結合のレベルを示す入力1401を受け取る。たとえば、上述したような実施態様では、この入力は、位相角に関する情報を提供してもよい。システム1400は、結合評価モジュール1402、出力駆動モジュール1404および出力デバイス1406を含む。
【0105】
結合評価モジュール1402は、入力1401を受け取り、入力1401に基づいて電極結合のレベルを確定する。実施態様に応じて、結合評価モジュール1402は、電極結合の2つ以上のレベルを識別することができてもよい。モジュール1402を、上述したような電極結合計算を実施するようにロジックを実行するプロセッサにおいて具現化してもよい。プロセッサは、示された入力1401を受け取る入力インタフェースと、制御信号を出力駆動モジュール1404に送出する出力インタフェースと、を含む適当なI/O構造を有する。このため、実施態様によっては、モジュール1402は、不十分な結合(たとえば血液との電極接触に対応する)と十分な結合(たとえば、物理的接触とは無関係に、切除またはマッピング等の所望の処置に対して十分な組織接触または電気的結合に関する)と、を識別してもよい。別法として、モジュールは、不十分な接触と、十分な接触と、高接触(電極の腔壁へのあり得る貫通に関し、それは、望まれる場合もあれば望まれない場合もある)と、を識別してもよい。たとえばさらなる接触レベルまたは示される接触レベル間のより細分な分解能を表す、より多くのレベルを定義してもよい、ということが理解されよう。
【0106】
確定された結合レベルに基づき、結合評価モジュール1402は、出力駆動モジュール1404に出力信号1403を提供する。出力駆動モジュールは、電極結合の確定されたレベルを示す出力を医師に提供する出力デバイス1406を駆動する駆動信号1405を生成する。後により詳細に説明するように、医師に対してこの出力を提供するために種々のタイプの出力デバイスを利用してもよい。たとえば、電極カテーテルのハンドルセットを介して、音声、視覚的または機械的(たとえば振動)指示を提供してもよい。別法として、ナビゲーションシステムを介して、医師に対し音声、視覚的または他の指示を提供してもよい。したがって、出力デバイス1406の種類は、特定の実施態様に応じて異なる。関連して、出力駆動モジュール1404によって提供される駆動信号1405の種類は、後により詳細に説明するように、用途によって異なる。
【0107】
上述したように、電極結合の所定レベルを示す出力を、たとえばハンドルセットまたはナビゲーションシステムを介して医師に提供してもよい。図15は、カテーテルハンドルセット1504を介してかかる出力を提供するカテーテルシステム1500の概略図である。図示するシステム1500は、ハンドルセット1504と結合検出モジュール1502とを含む。結合検出モジュール1502を、ハンドルセット1504とは別個であるように概略的に図示するが、モジュール1502をハンドルセット1504内に物理的に組み込んでもよい、ということが理解されよう。図示するシステム1500では、電極カテーテルの電極に関連するハンドルセット1504は、結合検出モジュール1502に検知信号1501を提供する。たとえば、位相角実施態様の場合、検知信号1501は、電極の移動に対する位相角を示すために十分な情報を含んでもよい。その場合、検出モジュール1502は、上述したようなロジックを実行して、位相角情報に基づいて電極結合レベルを確定する。
【0108】
この確定に基づき、接触指示信号1503がハンドルセット1504に提供される。そして、ハンドルセット1504は、医師に対し、結合レベルを示す出力1505を提供するように動作する。これに関して任意の適当なタイプの出力を使用してもよい。たとえば、これに関して、ハンドルセット1504の振動等の機械的出力、LEDまたはLED棒グラフ等の視覚的出力、または可変トーン(たとえば、ピッチ、音量または他の音声パラメータが可変)等の音声出力を利用してもよい。さらに、これらのタイプの出力の組合せを利用してもよい。たとえば、視覚的出力または音声出力を利用して、電極結合の不十分なレベルまたは十分なレベルを示してもよく、一方、機械的出力を使用して高電極結合を示してもよい。出力のタイプを、医師に対し注意をできるだけそらさないように、または医師が出力により気づくように選択してもよい。この場合もまた、医療処置中、医師の視覚的注意は主にナビゲーションシステムのディスプレイに向けられる可能性があることが理解されよう。
【0109】
図16は、複数の出力デバイスを組み込んだハンドルセット1600の部分的な概略図である。ハンドルセットは、結合検出モジュールから入力信号1601を受け取る。この信号1601を使用して、振動デバイス1602と、トーン発生器等の音声出力デバイス1604と、ディスプレイ1606、この場合LED棒グラフと、のうちの1つまたは複数が駆動される。これに関して、信号1601はデジタル信号であってもアナログ信号であってもよい。デジタル信号の場合、信号は、1つまたは複数の結合レベルに関してはい/いいえ情報を示してもよい。たとえば、(1)不十分な接触(はい/いいえ)、(2)十分な接触(はい/いいえ)および(3)高接触(はい/いいえ)である。別法として、デジタル信号は、段階的に複数の結合レベルのいずれかを示してもよい。すなわち、デジタル信号を、結合レベルを示す情報で符号化してもよく、かかる符号化は、電流レベル、電圧レベル、位相シーケンスまたは他の信号特性に基づく。アナログ信号の場合、アナログ信号は、電極結合レベルを表すように連続的に可変であってもよい。
【0110】
振動源1602は、入力信号1601に応答して、医師に電極結合情報を提供するようにハンドルセット1600の振動をもたらすように動作する。たとえば、デバイス1602を、高接触等の特定の結合レベルを示すように起動させてもよい。別法として、振動デバイスを、異なる電極結合レベルを示すように異なる周波数または他のパラメータで動作させてもよい。
【0111】
音声出力デバイスは、電極結合レベルを識別するために適当な任意の音声指示を出力することができる。このため、たとえば、入力信号1601がアナログ信号である場合、信号1601の電流、電圧または他のパラメータを、位相角等の電極接触パラメータに相関させることができる。信号1601に応答して、音声出力デバイス1604によって生成されるトーンのピッチ、音量または他のパラメータを、電極結合レベルに直接対応するように変化させることができる。
【0112】
視覚的ディスプレイ1606は、電極結合レベルの任意の適当な視覚的指示を提供することができる。このため、たとえば、ディスプレイ1606は、単一LED、複数のLEDまたはLED棒グラフを含んでもよい。図示する実施形態では、ディスプレイは、複数の光セグメント1608を含むLED棒グラフを含む。このため、たとえば、入力信号1601の電圧は、増大する電極結合に応じて上昇する可能性がある。この電圧の上昇により、光セグメント1608の照明が増大し、電極結合レベルの直接的な視覚的指示が提供される。図16は単一ハンドルセット1600に3つの別個の出力デバイス1602、1604および1606を示すが、電極結合レベルを示すために単一タイプの出力デバイスを利用してもよいということが理解されよう。さらに、これに関して、図示した出力デバイスタイプまたは他の出力デバイスタイプの任意の組合せを利用してもよい。
【0113】
図17は、電極結合レベルを示すために利用され得る機械的振動出力デバイスの一実施形態を示す。振動デバイスは既知であり、たとえば携帯電話、ページャ、ビデオゲームのコントロールパッドおよび他の既存の製品に関連して使用されていることが理解されよう。かかる振動デバイスを組み込んだハンドルセット1700を図17に示す。ハンドルセット1700の振動デバイスは、出力シャフト1704を回転させるモータ1702を含む。出力シャフト1704には不平衡負荷1706が取り付けられる。したがって、モータ1702の、出力シャフト1704を回転させる動作により、不平衡負荷1706の回転移動に関連する往復運動する力がもたらされる。モータ1702は、モータ1702がこれらの力に応じて往復運動するのを可能にする支持構造1708に取り付けられる。これにより、ハンドルセット1700が振動する。したがって、モータ1702は、電極結合のレベルを示す入力信号1701を受け取る。電極結合レベルの指示を提供するために、入力信号1701に基づいて、モータ1702を起動してもよく、またはその動作パラメータを変更してもよい。たとえば、モータは、高結合等、電極結合の特定レベルが示される場合にのみ、ハンドルセット1700を振動させるように動作してもよい。別法として、モータ1702の動作速度または別のパラメータを、電極結合の複数のレベルを示すように変化させてもよい。
【0114】
上述したように、電極カテーテルを使用して行われる医療処置の間、医師の視覚的注意は主にナビゲーションシステムに向けられる。したがって、電極結合レベルに関する指示を、上述したハンドルセット指示の代りにまたはそれに加えて、ナビゲーションシステムを介して(たとえば視覚的に)提供してもよい。かかるシステムのいくつかの実施態様を以下に説明する。
【0115】
図18は、ナビゲーションシステムディスプレイを介して電極結合レベルの指示を提供する電極結合評価システム1800を示すブロック図である。電極結合のレベルを任意の適当な方法で確定してもよいが、図示するシステムは、上述したように位相角測定を利用する。システム1800は、位相角測定を行うために有用な信号1803を生成する信号発生器1802を含む。上述したように、信号発生器は、電極結合評価信号を提供する専用信号発生器および/またはマッピング、切除または他の処置信号を提供する信号発生器であってもよい。信号1803は、切除電極またはマッピング電極等の電極1804を介して患者に与えられる。
【0116】
結果としての電流信号1806および電圧信号1808は、位相比較器1812によって比較される。したがって、位相比較器1812は、時系列の位相角値を示す出力信号1813を提供する。任意に、測定電流と測定電圧との間の位相遅れを「補正する」ことにより位相比較器1812の動作を容易にするように、電流測定値を移相回路によってシフトさせてもよい。また任意に、位相比較器1812からの出力を、使用されている接地パッチのタイプ等、外部要因を補償するように位相調整回路によって「補正して」もよい。結果は、電極結合のレベルを示す位相角信号1815である。
【0117】
この信号1815を、電気解剖学的マッピングおよびナビゲーション(electro−anatomic mapping and navigation)(EAMN)システムまたは他の処置監視システム(概して「ナビゲーションシステム」)によって、波形として表示してもよく、および/または電極接触レベルとして解釈してもよい。市販のEAMNシステムの例には、セント・ジュード・メディカル(St.Jude Medical)社のNAVX(登録商標)システムと、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson and Johnson)社のCARTO(登録商標)システムと、がある。これに関して、処置監視に対し、透視システムまたは他のシステムを使用してもよい。したがって、信号1815を、信号スケーリングモジュール1816によってスケーリングするかまたは他の方法で処理することにより、ナビゲーションシステムによって適当に処理することができる入力を提供してもよい。たとえば、結果としての信号1817は、0V〜1Vの範囲にスケーリングされた電圧信号、4mA〜20mAにスケーリングされた電流信号、またはナビゲーションシステムによって要求されるような他の任意の信号であってもよい。図示する実施態様では、この信号1817は、位相角対時間波形1820を提供するために使用され、電極結合のレベルを反映するグラフィカル電極表現1822として解釈される。
【0118】
後者に関して、グラフィカル電極表現は、特定の実施態様に応じて電極結合の2つ以上のレベルのいずれかを反映してもよい。図19Aおよび図19Bは、2つのあり得る電極結合レベル、たとえば物理的な組織接触なし(たとえば、電極が心腔内の患者の血液に配置される)または組織接触(たとえば、電極が心臓組織に直接接触している)を示す例示的な実施態様を示す。かかる2状態システムは、さまざまな関係者によって提案されている。
【0119】
図19Aおよび図19Bは、これら2つの電極結合状態を、本発明によるナビゲーションシステムのディスプレイにいかに示し得るかを示す。特に、図19Aは、カテーテル1902の電極1900と対象となる心臓組織1904との間に物理的接触がない状態を示す。この状態は、電極結合検出システム(上述したような位相角ベースシステムまたは他のシステム)によって検出され、関連する電極結合レベルは、ナビゲーションシステムに通信される。そして、ナビゲーションシステムは、この電極結合レベルを使用して、電極1900に対する表示パラメータ(たとえば色)を選択する。たとえば、電極を、接触なし状態に対して青で示してもよく(図19Aにおいて明るい方の陰影として表す)、直接的な物理的接触状態に対して赤で示してもよい(図19Bにおいて暗い方の陰影として表す)。
【0120】
他のシステムは、図20A〜図20Dに示すように、電極結合の3つ以上のレベルを検出し示すことができてもよい。この場合、結合なし(図20A)、軽い結合(図20B)、堅固な結合(図20C)および高結合(図20D)を示してもよい結合の4つのレベルが検出され、ディスプレイにおいて異なる電極色(図20A〜図20Dにおいて異なる陰影によって表す)として示される。結合なし、軽い結合、堅固な結合および高結合レベルを示すために、それぞれ白、緑、黄および赤等、任意の色を使用してもよい。位相角実施態様の場合、これらのレベルを、対応する位相角範囲によって定義してもよい。図20A〜図20Dの増大する電極結合レベルを物理的接触の増大するレベルに対応するものとして示すが、結合の有意なレベルを含む電極結合を物理的接触なしに達成することができる、ということに留意されたい。
【0121】
ナビゲーションシステムディスプレイに関連して電極結合レベル情報を提供するために、他のタイプのディスプレイ表現を使用してもよい。たとえば、この分野の医師は、波形データに満足し、かつ波形データから実質的な量の情報を導出する傾向にある。実際には、ナビゲーションシステムディスプレイにECG波形または他の波形を提供することが一般的である。図21は、電極2106を有するカテーテル2104を示す撮像部分2102(電極結合レベルを示すように色が変化してもよい)と、さまざまな波形2110a〜2110dを示す波形部分2108と、を含む表示画面2100を示す。たとえば、これらの波形は、ECG波形2110aと、切除電極2110b(電極2106と同じであってもよい)によって検出される信号を示す波形と、参照電極2110c(カテーテル2104の別の電極、別のカテーテルの電極、または外部戻り電極パッチ)によって検出される波形と、位相角波形2110dと、を含んでもよい。
【0122】
この場合、位相角波形2110dは、所与の時刻における位相角の大きさのみでなく、時間の経過による傾向または大きさの変化も示し、それは、医師が電極結合レベルを評価するのを支援し、または他の有用な情報を提供することができる(たとえば、切除によって形成される損傷の質を評価するため)。波形は、位相角の連続した確定値各々を反映する生波形であってもよい。別法として、波形2110dを、患者の動きに関連するアーティファクト等の雑音を除去するため、または平均化を提供するためにフィルタリングしてもよい。このため、図示する例では、波形は、鼓動する心臓の動きによる電極結合の変動を反映するプレチスモグラフによる特徴を含む。これは、医師が電極結合を評価するため等に対して有用であり得る(これに関して、医師によって視覚的に識別されるかまたはたとえばスペクトル分析によって計算されるようなレベルまたは変調が、電極結合のレベルを示してもよい)。別法として、適当なローパスフィルタを適用してこれら成分を除去しある程度の平均化を提供することにより、かかる波形特徴を除去してもよい。かかるフィルタリングまたは平均化は、高出力フリッカを回避するように電極結合レベル情報を(たとえば表示された電極色を介して)出力することに関し望ましい場合もある。
【0123】
このように、電極案内器具(たとえば、ハンドルセットおよび/またはナビゲーションシステム)を介して電極接触レベルの指示を提供する多数の実施態様について説明した。関連する機能を、図22のフローチャートを参照することによって要約することができる。図示するプロセス2200は、考慮されている電極に関連する電流信号および電圧信号を受け取ること(2202)と、位相角値を確定することと、によって開始する。そして、この値を使用して、電極結合レベルを確定することができる(2204)。この結合レベルに関連する情報を、ハンドセットを介して(音声、視覚的および/または機械的出力)および/またはナビゲーションシステムディスプレイを介して種々の方法で医師に提供することができる。したがって、出力デバイスの種類に応じて適当な駆動信号を確立する(2206)。いずれの場合も、出力は、2つ以上のあり得る結合レベルのうちの電極冷却レベルを示す。それにより、出力デバイスを、確定された電極結合レベルを示す出力を提供するように動作させる(2208)。
【0124】
本発明の多数の実施形態についてある程度の特定性で上述したが、当業者は、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく開示した実施形態に対し多数の変更を行うことができる。
【0125】
たとえば、電極結合のレベルをさまざまな技術を介して確定してもよい。さらに、本発明のいくつかの態様は、他の文脈で適用可能である。たとえば、出力デバイスを電極カテーテルに組み込むことにより、任意の関心のある情報を提供してもよく、それは、電極結合情報を提供することに限定されない。
【0126】
すべての方向に関する言及(たとえば、上方、下方、上方に、下方に、左、右、左方に、右方に、頂部、底部、上部、下部、垂直、水平、右回りおよび左回り)は、単に、本発明の読み手の理解を助けるために識別の目的でのみ使用しており、特に本発明の位置、向きまたは使用に関して限定をもたらすものではない。接合に関する言及(たとえば、取り付けられる、結合される、接続される等)は、広く解釈されるべきであり、要素の接続と要素間の相対移動との中間部分を含んでもよい。
【0127】
したがって、接合に関する言及は、かならずしも2つの要素が直接接続され互いに固定関係にあることを意味するとは限らない。上記説明に含まれるかまたは添付図面に示されるすべての事柄は、限定するものとしてではなく単に例示するものとして解釈されるべきであることが意図されている。添付の特許請求の範囲において定義されるような本発明の趣旨から逸脱することなく細部または構造の変更を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】患者に対する組織切除処置中に電極・組織接触を評価するように実装され得る例示的な組織切除システムの概略図である。
【図1a】図1の患者の心臓の詳細図であり、患者の心臓内に移動された後の電極カテーテルを示す。
【図2a】電極カテーテルと標的組織との間の電気的接触または結合の例示的なレベルを示す。
【図2b】電極カテーテルと標的組織との間の機械的接触または結合の例示的なレベルを示す。
【図3】図1の例示的な組織切除システムをより詳細に示す高レベル機能ブロック図である。
【図4】標的組織に接触する(または結合される)電極カテーテルのモデルである。
【図4a】図4に示すモデルに対する簡易電気回路である。
【図5】電極・組織接触または結合を評価する組織切除システムにおいて実装され得る例示的な位相検出回路である。
【図6】接触検知および組織検知のための位相角測定を示す例示的なブロック図である。
【図7】切除エネルギーと接触検知信号との両方が切除電極に同時に印加される、切除中の位相角測定を示す例示的なブロック図である。
【図8】検知信号と切除出力とを切り替える、切除中の位相角測定を示す例示的なブロック図である。
【図9a】位相角比較に基づいて電極と組織との間の結合を評価するために使用され得るプロトコルの一実施形態を示す。
【図9b】リアクタンス比較に基づいて電極と組織との間の結合を評価するために使用され得るプロトコルの一実施形態を示す。
【図9c】インピーダンス成分比比較に基づいて電極と組織との間の結合を評価するために使用され得るプロトコルの一実施形態を示す。
【図10】電極と組織との間の電気的結合の代表的な概略表現を示す。
【図11a】異なる周波数で動作している2つの電源を使用する切除システムの一実施形態の概略図を示し、いかなる時点においてもこれら電源のうちの一方のみが切除電極と相互接続され、これら電源のうちの一方が、電極と組織との間の結合を評価するために使用される。
【図11b】異なる周波数で動作している2つの電源を使用する切除システムの一実施形態の概略図を示し、両電源が常に切除電極と相互接続され、これら電源のうちの一方が、電極と組織との間の結合を評価するために使用される。
【図11c】少なくとも概して同じ周波数で動作している2つの電源を使用する切除システムの一実施形態の概略図を示し、いかなる時点においてもこれら電源のうちの一方のみが切除電極と相互接続され、これら電源の各々が、電極と組織との間の結合を評価するために使用され得る。
【図12a】電極と組織との間の結合を評価するシステムの一実施形態を示す。
【図12b】基線結合状態を識別することに基づいて電極と組織との間の結合を評価するために使用され得るプロトコルの一実施形態を示す。
【図12c】標的周波数を識別することに基づいて電極と組織との間の結合を評価するために使用され得るプロトコルの一実施形態を示す。
【図13】本発明による電極カテーテルシステムの概略図である。
【図14】本発明による電極結合出力システムの概略図である。
【図15】本発明によるハンドルセットベースの電極結合出力システムを示す。
【図16】本発明によるさまざまなタイプの出力デバイスを組み込んだハンドルセットを示す。
【図17】本発明による振動デバイスを組み込んだハンドルセットを示す。
【図18】本発明によるナビゲーションシステムベースの電極結合出力システムの概略図である。
【図19A】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図19B】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図20A】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図20B】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図20C】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図20D】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイにおける電極のグラフィカル表現を示す。
【図21】本発明によるナビゲーションシステムディスプレイを示す。
【図22】本発明による、案内器具を介して電極結合情報を出力するプロセスを示すフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極カテーテルを操作する際に使用される方法であって、
医療処置中に前記電極カテーテルの位置を監視するナビゲーションシステムを提供するステップと、
前記電極カテーテルの電極と患者との間の結合を示す電極・患者結合状態を評価する電極結合評価システムを確立するステップであって、前記評価システムが、前記電極結合状態の少なくとも2つの異なるレベルを識別するように構成されるステップと、
前記医療処置に関連して前記結合状態のレベルを識別するように前記電極結合評価システムを動作させるステップと、
前記ナビゲーションシステムを介して、前記結合状態の前記識別されたレベルを示す出力を提供するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記電極結合評価システムが、高結合に対応する少なくとも1つのレベルを含む前記結合状態の複数のレベルを識別するように動作し、前記高結合が組織貫通の可能性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電極結合評価システムが、処置に対して不十分な結合、前記処置に対して十分な結合および高結合の各々を含む前記結合状態の複数のレベルを識別するように動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電極結合評価システムが、インピーダンス関連値に基づいて前記結合状態の前記レベルを識別するように動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電極結合評価システムが、インピーダンスの抵抗成分およびリアクタンス成分に関連する値の間の関係に基づいて、前記電極結合のレベルを識別するように動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記動作させるステップが、所望の効果をもたらすように前記電極カテーテルを操作する前に前記結合状態の前記レベルを識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記動作させるステップが、前記電極カテーテルを用いる前記医療処置の過程の間に前記電極結合評価システムを動作させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記提供するステップが、前記ナビゲーションシステムの表示装置を介して前記出力を伝達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記提供するステップが、前記ナビゲーションシステムの前記表示装置における前記電極のグラフィカル表現を変化させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記提供するステップが、前記ナビゲーションシステムの前記表示装置に、前記結合状態対時間に関連する値を示す波形を表示することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
電極カテーテルを操作する際に使用される装置であって、
前記電極カテーテルの電極と患者との間の電気的結合のレベルを示す信号を受け取る入力インタフェースと、
前記信号を処理して、前記電極カテーテルの前記電極と前記患者との間の前記電気的結合のレベルを確定するプロセッサと、
前記電気的結合の確定されたレベルを示す出力をナビゲーションシステムに提供する出力インタフェースであって、前記ナビゲーションシステムが医療処置中に前記電極カテーテルの位置を監視するように構成される、出力インタフェースと
を備える装置。
【請求項12】
前記プロセッサが、高結合に対応する少なくとも1つのレベルを含む電気的結合の複数のレベルを識別するように動作し、前記高結合が組織関数の可能性を示す、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサが、処置に対して不十分な結合、前記処置に対して十分な結合および高結合の各々を識別するように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記プロセッサが、インピーダンスの抵抗成分およびリアクタンス成分に関連する値の間の関係に基づいて、電極結合の異なるレベルを識別するように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記出力モジュールが、前記ナビゲーションシステムの表示装置を介して前記電気的結合の確定されたレベルに関する情報を提供するように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記出力モジュールが、前記ナビゲーションシステムの前記表示装置における前記電極のグラフィカル表現を変化させるように動作する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記出力モジュールが、前記ナビゲーションシステムの前記表示装置に、電気的結合対時間に関連する値を示す波形を表示するように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
電極と、
前記電極に関連するカテーテルと、
医療処置中に前記電極の位置を監視する際に使用されるナビゲーションシステムと、
信号情報を受け取り、前記電極と患者との間の電気的結合のレベルを確定するプロセッサであって、さらに、前記ナビゲーションシステムが前記電気的結合のレベルの指示を提供することができるように情報を前記ナビゲーションシステムに送出するように構成される、プロセッサと
を備える、電極カテーテルシステム。
【請求項19】
前記プロセッサが、処置に対して不十分な電気的結合、前記処置に対して十分な電気的結合および高結合の各々を識別するように動作する、請求項18に記載の電極カテーテルシステム。
【請求項20】
前記プロセッサが、インピーダンスの抵抗成分およびリアクタンス成分に関連する値の間の関係に基づいて、電気的結合の異なるレベルを識別するように動作する、請求項18に記載の電極カテーテルシステム。
【請求項21】
前記ナビゲーションシステムがディスプレイを備え、前記ナビゲーションシステムの前記ディスプレイ装置が前記電気的結合のレベルの前記指示を提供するように構成される、請求項18に記載の電極カテーテルシステム。
【請求項1】
電極カテーテルを操作する際に使用される方法であって、
医療処置中に前記電極カテーテルの位置を監視するナビゲーションシステムを提供するステップと、
前記電極カテーテルの電極と患者との間の結合を示す電極・患者結合状態を評価する電極結合評価システムを確立するステップであって、前記評価システムが、前記電極結合状態の少なくとも2つの異なるレベルを識別するように構成されるステップと、
前記医療処置に関連して前記結合状態のレベルを識別するように前記電極結合評価システムを動作させるステップと、
前記ナビゲーションシステムを介して、前記結合状態の前記識別されたレベルを示す出力を提供するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記電極結合評価システムが、高結合に対応する少なくとも1つのレベルを含む前記結合状態の複数のレベルを識別するように動作し、前記高結合が組織貫通の可能性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電極結合評価システムが、処置に対して不十分な結合、前記処置に対して十分な結合および高結合の各々を含む前記結合状態の複数のレベルを識別するように動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電極結合評価システムが、インピーダンス関連値に基づいて前記結合状態の前記レベルを識別するように動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電極結合評価システムが、インピーダンスの抵抗成分およびリアクタンス成分に関連する値の間の関係に基づいて、前記電極結合のレベルを識別するように動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記動作させるステップが、所望の効果をもたらすように前記電極カテーテルを操作する前に前記結合状態の前記レベルを識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記動作させるステップが、前記電極カテーテルを用いる前記医療処置の過程の間に前記電極結合評価システムを動作させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記提供するステップが、前記ナビゲーションシステムの表示装置を介して前記出力を伝達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記提供するステップが、前記ナビゲーションシステムの前記表示装置における前記電極のグラフィカル表現を変化させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記提供するステップが、前記ナビゲーションシステムの前記表示装置に、前記結合状態対時間に関連する値を示す波形を表示することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
電極カテーテルを操作する際に使用される装置であって、
前記電極カテーテルの電極と患者との間の電気的結合のレベルを示す信号を受け取る入力インタフェースと、
前記信号を処理して、前記電極カテーテルの前記電極と前記患者との間の前記電気的結合のレベルを確定するプロセッサと、
前記電気的結合の確定されたレベルを示す出力をナビゲーションシステムに提供する出力インタフェースであって、前記ナビゲーションシステムが医療処置中に前記電極カテーテルの位置を監視するように構成される、出力インタフェースと
を備える装置。
【請求項12】
前記プロセッサが、高結合に対応する少なくとも1つのレベルを含む電気的結合の複数のレベルを識別するように動作し、前記高結合が組織関数の可能性を示す、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサが、処置に対して不十分な結合、前記処置に対して十分な結合および高結合の各々を識別するように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記プロセッサが、インピーダンスの抵抗成分およびリアクタンス成分に関連する値の間の関係に基づいて、電極結合の異なるレベルを識別するように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記出力モジュールが、前記ナビゲーションシステムの表示装置を介して前記電気的結合の確定されたレベルに関する情報を提供するように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記出力モジュールが、前記ナビゲーションシステムの前記表示装置における前記電極のグラフィカル表現を変化させるように動作する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記出力モジュールが、前記ナビゲーションシステムの前記表示装置に、電気的結合対時間に関連する値を示す波形を表示するように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
電極と、
前記電極に関連するカテーテルと、
医療処置中に前記電極の位置を監視する際に使用されるナビゲーションシステムと、
信号情報を受け取り、前記電極と患者との間の電気的結合のレベルを確定するプロセッサであって、さらに、前記ナビゲーションシステムが前記電気的結合のレベルの指示を提供することができるように情報を前記ナビゲーションシステムに送出するように構成される、プロセッサと
を備える、電極カテーテルシステム。
【請求項19】
前記プロセッサが、処置に対して不十分な電気的結合、前記処置に対して十分な電気的結合および高結合の各々を識別するように動作する、請求項18に記載の電極カテーテルシステム。
【請求項20】
前記プロセッサが、インピーダンスの抵抗成分およびリアクタンス成分に関連する値の間の関係に基づいて、電気的結合の異なるレベルを識別するように動作する、請求項18に記載の電極カテーテルシステム。
【請求項21】
前記ナビゲーションシステムがディスプレイを備え、前記ナビゲーションシステムの前記ディスプレイ装置が前記電気的結合のレベルの前記指示を提供するように構成される、請求項18に記載の電極カテーテルシステム。
【図1】
【図1a】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図4a】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21】
【図22】
【図1a】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図4a】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2009−518150(P2009−518150A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544647(P2008−544647)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/061711
【国際公開番号】WO2007/067938
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(506257180)セント・ジュード・メディカル・エイトリアル・フィブリレーション・ディヴィジョン・インコーポレーテッド (57)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/061711
【国際公開番号】WO2007/067938
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(506257180)セント・ジュード・メディカル・エイトリアル・フィブリレーション・ディヴィジョン・インコーポレーテッド (57)
【Fターム(参考)】
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