説明

電気貯湯容器

【課題】 断熱スペースを大きくすることなく保温時の消費電力量を削減し得るようにする。
【解決手段】 貯湯用の内容器3と、該内容器3内に収容された水を加熱する加熱手段と、前記内容器3の上部を覆蓋するとともに前記内容器3内において発生する水蒸気を外部へ排出する蒸気通路16を有する蓋体2とを備えた電気貯湯容器において、前記蒸気通路16内に、湯沸かし時に発生する水蒸気の熱を蓄熱する蓄熱部23を設けて、内容器3内に収容された水が加熱手段によって加熱沸騰された時に発生する水蒸気は、蒸気通路16を通って外部へ排出されるが、その過程において蒸気通路16に設けられた蓄熱部23に水蒸気の保有する熱が蓄熱され、該蓄熱部23に蓄熱された熱が、保温時においてはお湯側に放熱されるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気貯湯容器に関し、さらに詳しくは、湯沸かし時に発生する水蒸気の熱を蓄熱して保温時に利用できるようにした電気貯湯容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電気貯湯容器としては、貯湯用の内容器と、該内容器内に収容された水を加熱する加熱手段と、前記内容器の上部を覆蓋するとともに前記内容器内において発生する水蒸気を外部へ排出する蒸気通路を有する蓋体とを備えたものが従来から知られている。
【0003】
上記構造の電気貯湯容器の場合、内容器内に水を入れ、加熱手段によりこの水を一旦沸騰させた後に所定温度に保温し、適宜外部へ注湯するという使用方法が一般的であるが、保温時の消費電力がネックとなって、省エネが進まないという不具合があった。
【0004】
上記のような不具合を解消するために、この種電気貯湯容器においては、種々の試みがなされているが、その一つとして、蓋体の下板と蓋体下面を覆う金属製のカバー部材との間に蓄熱材を充填して、蓄熱材の放熱によって保温時の電力消費量を低減させようとしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−139702号公報(段落番号0147および図22)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されている電気貯湯容器の場合、金属製のカバー部材と蓋体下板との間に蓄熱材を充填する構造となっているので、湯沸かし中・保温中のいずれにおいても、内容器内のお湯の熱が蓄熱材に伝熱されることとなり、かえってお湯側からの放熱が進みかねないという問題がある。
【0007】
ところで、この種の電気貯湯容器における消費電力の測定方法が制定され、今後はこの測定方法が基本となり、取り扱い説明書、カタログ、店頭で表示されることとなっている。この場合、従来から表示されてきた平均保温電力に代わって、年間消費電力量で省エネを競うこととなる。
【0008】
沸騰加熱時に従来捨てていた水蒸気の保有する熱を有効に利用することにより、保温時の消費電力量を削減することが可能な電気貯湯容器の構造について提案している。
【0009】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、断熱スペースを大きくすることなく保温時の消費電力量を削減し得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、貯湯用の内容器と、該内容器内に収容された水を加熱する加熱手段と、前記内容器の上部を覆蓋するとともに前記内容器内において発生する水蒸気を外部へ排出する蒸気通路を有する蓋体とを備えた電気貯湯容器において、前記蒸気通路内に、湯沸かし時に発生する水蒸気の熱を蓄熱する蓄熱部を設けている。
【0011】
上記のように構成したことにより、内容器内に収容された水が加熱手段によって加熱沸騰され、その後保温状態となるが、この沸騰時に発生する水蒸気は、蒸気通路を通って外部へ排出され、その過程において蒸気通路に設けられた蓄熱部に水蒸気の保有する熱が蓄熱される。このようにして蓄熱部に蓄熱された熱は、保温時においてはお湯側に放熱されることとなり、お湯の温度低下を抑制することとなる。従って、保温時における加熱手段のON作動間隔(具体的には、保温ヒータのON作動間隔)が長くなり、保温時における消費電力量を大幅に削減することができる。しかも、蓄熱部は既存の蒸気通路内に設けられるので、断熱スペースを大きくする必要がない。
【0012】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第2の手段として、上記第1の手段を備えた電気貯湯容器において、前記蓄熱部を、前記蓋体の下面を構成する内蓋に接しない部位に設けることもでき、そのように構成した場合、保温中にお湯の熱が内蓋を介して蓄熱部に伝搬しにくくなるところから、保温時におけるお湯の温度低下を抑制する効果が大きくなる。
【0013】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2の手段を備えた電気貯湯容器において、前記蓄熱部の上部に、断熱材を配設することもでき、そのように構成した場合、蓄熱部に蓄熱された熱が上方へ放熱されるのを断熱材により防止できるところから、蓄熱部に蓄熱された熱のお湯側への放熱を促進することができるとともに、保温時においては蓄熱部自体が空気断熱層としても機能するところから、上部の断熱材の断熱層とで二層構造を成すこととなり、保温効果が大幅に向上する。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の第1の手段によれば、貯湯用の内容器と、該内容器内に収容された水を加熱する加熱手段と、前記内容器の上部を覆蓋するとともに前記内容器内において発生する水蒸気を外部へ排出する蒸気通路を有する蓋体とを備えた電気貯湯容器において、前記蒸気通路内に、湯沸かし時に発生する水蒸気の熱を蓄熱する蓄熱部を設けて、内容器内に収容された水が加熱手段によって加熱沸騰された時に発生する水蒸気は、蒸気通路を通って外部へ排出されるが、その過程において蒸気通路に設けられた蓄熱部に水蒸気の保有する熱が蓄熱され、該蓄熱部に蓄熱された熱が、保温時においてはお湯側に放熱されるようにしたので、お湯の温度低下が抑制されるところから、保温時における加熱手段のON作動間隔(具体的には、保温ヒータのON作動間隔)が長くなり、保温時における消費電力量を大幅に削減することができるという効果がある。しかも、蓄熱部は既存の蒸気通路内に設けられるので、断熱スペースを大きくする必要がないという効果もある。
【0015】
本願発明の第2の手段におけるように、上記第1の手段を備えた電気貯湯容器において、前記蓄熱部を、前記蓋体の下面を構成する内蓋に接しない部位に設けることもでき、そのように構成した場合、保温中にお湯の熱が内蓋を介して蓄熱部に伝搬しにくくなるところから、保温時におけるお湯の温度低下を抑制する効果が大きくなる。
【0016】
本願発明の第3の手段におけるように、上記第1又は第2の手段を備えた電気貯湯容器において、前記蓄熱部の上部に、断熱材を配設することもでき、そのように構成した場合、蓄熱部に蓄熱された熱が上方へ放熱されるのを断熱材により防止できるところから、蓄熱部に蓄熱された熱のお湯側への放熱を促進することができるとともに、保温時においては蓄熱部自体が空気断熱層としても機能するところから、上部の断熱材の断熱層とで二層構造を成すこととなり、保温効果が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の好適な実施の形態について説明する。
【0018】
図1には、本願発明の実施の形態にかかる電気貯湯容器の要部が示されている。
【0019】
この電気貯湯容器は、図1に示すように、湯沸かし用の内容器3を備えた容器本体1と、該容器本体1の上部開口を開閉する蓋体2と、前記内容器3の底部を加熱する加熱手段である電気ヒータ(図示省略)と、前記内容器3内のお湯を外部へ吐出するための吐出通路4と、該吐出通路4の途中に設けられた吐出用ポンプ(図示省略)とを備えて構成されている。
【0020】
前記容器本体1は、外側面を構成する金属製の外ケース5と、内周面を構成する前記内容器3と、前記外ケース5の上部と内容器3の上部とを結合する合成樹脂製の環状の肩部材6と、底面を構成する合成樹脂製の底板(図示省略)とからなっている。
【0021】
前記内容器3は、ステンレス製の有底円筒形状の内筒7とステンレス製の略円筒形状の外筒8との間に真空空間9を形成してなる真空二重容器からなっている。
【0022】
前記蓋体2は、合成樹脂製の上板10と該上板10に対して外周縁が嵌め合いにより結合された合成樹脂製の下板11とからなっており、前記肩部材6の後部に設けられたヒンジ受け12に対してヒンジピン13を介して開閉且つ着脱自在に支持されている。
【0023】
前記蓋体2における下板11には、蓋体2の下面となる内蓋を構成する金属製のカバー部材14が固定されており、該カバー部材14の外周縁には、蓋体2の閉蓋時において前記内容器3の給水口3cに圧接されるシールパッキン15が設けられている。
【0024】
前記蓋体2内には、前記内容器3内に収容された水を電気ヒータにより加熱沸騰させた時に発生する水蒸気を外部へ排出するための蒸気通路16が形成されている。該蒸気通路16は、前記蓋体2の略中央部において前記下板11が上向きに凹まされて形成された空間部17(即ち、下板11とカバー部材14との間に形成された空間部)に上下一対の通路構成部材18,19を配設することにより、前記カバー部材14と下部通路構成部材19との間に形成される第1通路部16aと、前記上下通路構成部材18,19間に形成される第2通路部16bと、前記上部通路構成部材18と下板11との間に形成される第3通路部16cと、下板11と上板10との間に形成される第4通路部16dとからなっており、前記カバー部材14には、蒸気通路16の入り口20が形成される一方、前記上板10には蒸気通路16の出口21が形成されることとなっている。符号22は前記カバー部材14と下部通路構成部材19との間に第1通路部16aを確保すべく該下部通路構成部材19の下面に一体に突設された支持脚である。
【0025】
そして、前記蒸気通路16内には、湯沸かし時に発生する水蒸気の熱を蓄熱する蓄熱部23が設けられている。該蓄熱部23は、前記蒸気通路16における第2通路部16b内に多数のガラスビーズG,G・・を充填することにより構成されている。つまり、前記蓄熱部23は、前記蓋体2の下面を構成する内蓋(具体的には、カバー部材14)に接しない部位に設けられることとなっているのである。なお、前記ガラスビーズGは、第1通路部16aと第2通路部16bとを連通する連通口24の内径より大きい外径を有する粒状とされている。このようにすると、第2通路部16b内に充填されたガラスビーズG,G・・が第1通路部16aに漏れ出ることがなくなる。前記蓄熱部23は、セラミック等の蓄熱材を充填することにより構成することもできる。
【0026】
また、前記蓋体2内における上板10と下板11との間には、前記蓄熱部23の上部となる位置および蓄熱部23の後方となる位置に断熱材25,25が配設されている。このようにすると、蓄熱部23に蓄熱された熱が上方へ放熱されるのを断熱材25により防止できるところから、蓄熱部23に蓄熱された熱のお湯側への放熱を促進することができるとともに、保温時においては蓄熱部自体が空気断熱層としても機能するところから、上部の断熱材の断熱層とで二層構造を成すこととなり、保温効果が大幅に向上する。
【0027】
上記構成の電気貯湯容器においては、電気ヒータは、後述するように沸騰用ヒータ44Aと保温用ヒータ44Bとを備えており(図3参照)、保温用ヒータ44Bへの通電制御を行う通常の保温モード(換言すれば、設定保温温度制御モード)の他に、沸騰用ヒータ44Aおよび保温用ヒータ44Bへの通電を停止した状態(即ち、電源コードを取り外した状態)で保温する魔法瓶保温モードによる使用が可能となっている。
【0028】
図1において、符号26は蓋体2を容器本体1に対して閉止状態に保持するためのロック機構、27は後述する各種スイッチ類を備えた操作パネル部である。
【0029】
前記操作パネル部27には、図2に示すように、給湯スイッチ28、ロック解除スイッチ29、再沸騰スイッチ30、保温選択スイッチ31、タイマー設定用スイッチ32、液晶表示装置33、沸騰表示灯(沸騰LED)34、保温表示灯(保温LED)35が設けられている。前記液晶表示装置33には、温度、沸騰残時間および湯量が交互に7セグメント表示され且つ後述するスローリーク発生表示が文字表示されるとともに、設定保温温度(98℃、90℃、魔法瓶)が表示される。
【0030】
図3は、本実施の形態にかかる電気貯湯容器における電気的要素の結線状態を示すブロック図である。なお、既に説明した電気的要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
図3において、符号36はマイコン基板、37は交流電源、38は温度ヒューズ、39はトライアック、40はリレー、41は抵抗、42は温度センサー、43はポンプ装置である。
【0032】
上記のように構成された電気貯湯容器においては、次のような作用効果が得られる。
【0033】
内容器3内に収容された水が加熱手段44Aによって加熱沸騰され、その後保温状態となるが、この沸騰時に発生する水蒸気は、蒸気通路16を通って外部へ排出され、その過程において蒸気通路16に設けられた蓄熱部23に水蒸気の保有する熱が蓄熱される。このようにして蓄熱部23に蓄熱された熱は、保温時においてはお湯側に放熱されることとなり、お湯の温度低下を抑制することとなる。従って、保温時における加熱手段44BのON作動間隔(具体的には、保温ヒータ44BのON作動間隔)が長くなり、保温時における消費電力量を大幅に削減することができる。しかも、蓄熱部23は既存の蒸気通路内に設けられるので、断熱スペースを大きくする必要がない。
【0034】
また、本実施の形態の場合、蓄熱部23を、蓋体2の下面を構成する内蓋(即ち、カバー部材14)に接しない部位に設けるようにしているので、保温中にお湯の熱がカバー部材14を介して蓄熱部23に伝搬しにくくなるところから、保温時におけるお湯の温度低下を抑制する効果が大きくなる。
【0035】
ここで、蒸気通路16における第2通路部16b(内蓋として機能するカバー部材14に接しない位置)にガラスビーズG,G・・を充填して蓄熱部23を構成したものを実施例とし、沸騰後における保温(5.5時間)時の消費電力を確認したところ、下記表1の結果が得られた。比較例として蒸気通路16に蓄熱部を形成しない従来の電気貯湯容器の場合における保温(5.5時間)時の消費電力を確認した。この時、湯量:60%、室温:23℃であった。
【0036】
【表1】

【0037】
これによれば、5.5時間の保温時消費電力が実施例では2.80Whr(約4%)だけ削減できることが分かる。
【0038】
ちなみに、蒸気通路16における第1通路部16a(内蓋として機能するカバー部材14に接する位置)に瀬戸物のビーズを充填して蓄熱部23を構成し、沸騰後における保温(5.5時間)時の消費電力を確認したところ、下記表2の結果が得られた。この時、湯量:60%、室温:23℃であった。
【0039】
【表2】

【0040】
これによれば、内蓋として機能するカバー部材14に接する位置に瀬戸物のビーズを充填して蓄熱部23を構成した場合、カバー部材14を介しての熱伝導による熱損失が発生し、効果が薄れてしまうことが分かる。
【0041】
本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本願発明の実施の形態にかかる電気貯湯容器の要部を示す縦断面図である。
【図2】本願発明の実施の形態にかかる電気貯湯容器における操作パネル部の拡大平面図である。
【図3】本願発明の実施の形態にかかる電気貯湯容器における電気的要素の結線図である。
【符号の説明】
【0043】
2は蓋体
3は内容器
14は内蓋(カバー部材)
16は蒸気通路
23は蓄熱部
25は断熱材
44は加熱手段(電気ヒータ)
Gは蓄熱材(ガラスビーズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯用の内容器と、該内容器内に収容された水を加熱する加熱手段と、前記内容器の上部を覆蓋するとともに前記内容器内において発生する水蒸気を外部へ排出する蒸気通路を有する蓋体とを備えた電気貯湯容器であって、前記蒸気通路内には、湯沸かし時に発生する水蒸気の熱を蓄熱する蓄熱部を設けたことを特徴とする電気貯湯容器。
【請求項2】
前記蓄熱部を、前記蓋体の下面を構成する内蓋に接しない部位に設けたことを特徴とする請求項1記載の電気貯湯容器。
【請求項3】
前記蓄熱部の上部には、断熱材を配設したことを特徴とする請求項1および2のいずれか一項記載の電気貯湯容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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