説明

電気透析システム

【課題】埋立地からの浸出水の如き被処理水のイオン濃度が相当大幅に変動しても、電力消費コストを含む作動コストを必要最小限度に抑制して、脱イオン・濃縮処理効率を高効率に維持することができると共に、必要に応じて高濃度の濃縮水を得ることができる電気透析システムを提供する。
【解決手段】少なくとも2台の電気透析装置(4、6、8)を直列配置し、最上流に位置する最上流電気透析装置(4)に付設された最上流脱イオン水槽(22)に被処理水を供給し、最上流電気透析装置(4)に付設された最上流濃縮水槽(34)から濃縮水を流出せしめ、最下流に位置する最下流電気透析装置(8)に付設された脱イオン水槽(88)から脱イオン水を流出せしめる。そして、被処理水の電導度に応じて作動せしめる電気透析装置(4、6、8)の台数を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それに限定されるものではないが、埋立地からの浸出水を脱イオン、特に脱クロロイオン、濃縮処理するのに好適に使用することができる電気透析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば埋立地からの浸出水は、周知の如く、埋立に使用された廃棄物等に起因して相当量のイオン、特にクロロイオンを含有しており、そのまま河川に排出或いは農業用水として利用すると、生態系の破壊を引き起こし或いは農作物に悪影響を及ぼす。従って、埋立地からの浸出水を、河川に排出或いは農業用水として使用するのに先立って、脱イオン、特に脱クロロイオン、濃縮処理を加えてイオン濃度が充分に低い脱イオン水とイオン濃度が充分に高い濃縮水を生成することが必要である。
【0003】
下記特許文献1乃至3には、埋立地からの浸出水の脱イオン濃縮処理に使用することができる電気透析システムが開示されている。通常、生成された濃縮水は加熱乾燥装置に送給されて加熱固化され、塩が生成される。加熱乾燥装置を効率的に運転せしめるためには、供給する濃縮水のクロロイオン濃度は所定高濃度、例えば100,000ppm程度、以上であることが重要である。そこで、下記特許文献2に開示されている電気透析システムにおいては、電気透析システムから排出される濃縮水のイオン濃度が所定高濃度より低い場合には、加熱乾燥装置に送給することなく、電気透析システムに還流せしめて再び脱イオン・濃縮処理を施している。また、上記特許文献3に開示されている電気透析システムにおいては、電気透析システムから排出される濃縮水のCl/Ca2+が所定値以下の場合には、加熱乾燥装置に送給する濃度まで濃縮することなく、電気透析システムに還流せしめて再び脱イオン・濃縮処理を施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−277492号公報
【特許文献2】特開平10−80688号公報
【特許文献3】特開2001−17838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、当業者には周知の如く、例えば埋立地からの浸出水は雨水の混入等に起因してイオン濃度が相当大幅に変動するが、従来の電気透析システムにおいては、イオン濃度の変動に起因して脱イオン・濃縮処理効率が大幅に変動してしまう、更に詳述すると、イオン濃度の必要低減率が所定範囲を超えて増大すると、脱イオン・濃度処理効率が大幅に低減してしまう。また、イオンの移動に付随して水和水等の付随水の移動が発生すること、及びイオン交換膜を挟んだ脱イオン水側と濃縮水側との間の濃度差(浸透圧)に起因して脱イオン側から濃縮水側に浸透水が移動すること、に起因して濃縮水濃度が制限される。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、埋立地からの浸出水の如き被処理水のイオン濃度が相当大幅に変動しても、電力消費コストを含む作動コストを必要最小限度に抑制して、脱イオン・濃縮処理効率を高効率に維持することができると共に、必要に応じて高濃度の濃縮水を得ることができる、新規且つ改良された電気透析システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究及び実験の結果、少なくとも2台の電気透析装置を直列配置し、最上流に位置する最上流電気透析装置に付設された最上流脱イオン水槽に被処理水を供給し、最上流電気透析装置に付設された最上流濃縮水槽から濃縮水を流出せしめ、最下流に位置する最下流電気透析装置に付設された脱イオン水槽から脱イオン水を流出せしめられ、そして更に被処理水の電導度に応じて作動せしめる電気透析装置の台数を設定することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する電気透析システムとして、直列配列された少なくとも2台の電気透析装置と共に、脱イオン・濃縮すべき被処理水を供給するための被処理水供給手段及び制御手段を備え、
該被処理水供給手段は最上流に位置する最上流電気透析装置に付設された最上流脱イオン水槽に被処理水を供給し、該最上流電気透析装置に付設された最上流濃縮水槽から濃縮水が流出せしめられ、最下流に位置する最下流電気透析装置に付設された脱イオン水槽から脱イオン水が流出せしめられ、
該制御手段は、被処理水の電導度に応じて、作動せしめる電気透析装置の台数を設定する、
ことを特徴とする電気透析システムが提供される。
【0009】
好ましくは、該制御手段は、被処理水の電導度が所定値以下の場合には該最下流電気透析装置のみを作動せしめ、被処理水の電導度の上昇に応じて、下流側から上流側に向けて漸次電気透析装置の作動台数を増大せしめる。該最下流電気透析装置は極性転換方式であり、他の電気透析装置は非極性転換方式であるのが好適である。該最上流電気透析装置に付設された該濃縮水槽から流出せしめられる濃縮水は所定高濃度以上のイオン濃度を有し、該最下流電気透析装置から流出せしめられる脱イオン水は所定低濃度以下のイオン濃度を有するのが好都合である。好適実施形態においては、該最上流電気透析装置及び該最下流電気透析装置に加えて、該最上流電気透析装置と該最下流電気透析装置との間に位置する少なくとも1台の中間電気透析装置を含み、
該最上流電気透析装置には、該最上流脱イオン水槽内の脱イオン水を該最上流電気透析装置の脱イオン室に送給すると共に該最上流電気透析装置において脱イオンされた脱イオン水を該最上流脱イオン水槽に返送するための最上流脱イオン水ポンプ手段と、該最上流濃縮水槽内の濃縮水を該最上流電気透析装置の濃縮室に送給すると共に該最上流電気透析装置において濃縮された濃縮水を該最上流濃縮水槽に返送するための最上流濃縮水ポンプ手段とが付設されており、
該中間電気透析装置には、中間脱イオン水槽と、中間濃縮水槽と、該中間脱イオン水槽内の脱イオン水を該中間電気透析装置の脱イオン室に送給すると共に該中間電気透析装置において脱イオンされた脱イオン水を該中間脱イオン水槽に返送するための中間脱イオン水ポンプ手段と、該中間濃縮水槽内の濃縮水を該中間電気透析装置の濃縮室に送給すると共に該中間電気透析装置において濃縮された濃縮水を該中間濃縮水槽に返送するための中間濃縮水ポンプ手段とが付設されており、
該最下流電気透析装置には、最下流脱イオン水槽と、最下流濃縮水槽と、該最下流脱イオン水槽内の脱イオン水を該最下流電気透析装置の脱イオン室に送給すると共に該最下流電気透析装置において脱イオンされた脱イオン水を該最下流脱イオン水槽に返送するための最下流脱イオン水ポンプ手段と、該最下流濃縮水槽内の濃縮水を該最下流電気透析装置の濃縮室に送給すると共に該最下流電気透析装置において濃縮された濃縮水を該最下流濃縮水槽に返送するための最下流濃縮水ポンプ手段とが付設されており、
該最上流脱イオン水槽をオーバーフローした脱イオン水が該中間脱イオン水槽に流動せしめられ、そして該中間脱イオン水槽をオーバーフローした脱イオン水が該最下流脱イオン水槽に流動せしめられ、該最下流電気透析装置の該脱イオン室を通して循環せしめられる脱イオン水の循環路からオーバーフローした脱イオン水は該最下流濃縮水槽に流動せしめられ、
該最下流濃縮水槽をオーバーフローした濃縮水は該中間濃縮水槽に流動せしめられ、該中間濃縮水槽からオーバーフローした濃縮水は該被処理水供給手段に返流せしめられる。該中間濃縮水槽からオーバーフローした濃縮水は該被処理水供給手段に返流せしめられるのに先立ってカルシウム除去手段に送給されてカルシウム除去処理を受けるのが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気透析システムにおいては、被処理水の電導度に応じて作動せしめる電気透析装置の台数が設定される。従って、被処理水の電導度が大幅に変動しても、電力消費コストを含む作動コストを必要最小限度に抑制して、各電気透析装置において被処理水の低減すべき電導度即ちイオン濃度を所定範囲に維持することができ、かくして各電気透析装置を充分高効率で作動せしめることができる。そしてまた、最上流電気透析装置に付設された濃縮水槽以外の濃縮水槽中の濃縮水は排出されることなく、例えば被処理水供給手段に返送され、脱イオン水側のイオン濃度が最も高い最上流電気透析装置に付設された濃縮水槽中の濃縮水のみが排出される故に、排出される濃縮水の濃度を所要とおりの高濃度にせしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って構成された電気透析システムの好適実施形態を示す間略図。
【図2】図1に示す電気透析システムにおける電気透析装置の作動台数設定手順を示すフローチャート。
【図3】図1に示す電気透析システムにおける最上流電気透析装置の作動制御手順を示すフローチャート。
【図4】図1に示す電気透析システムにおける中間電気透析装置の作動制御手順を示すフローチャート。
【図5】図1に示す電気透析システムにおける最下流電気透析装置の作動制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して説明すると、本発明に従って構成された図示の電気透析システムは、脱イオン・濃縮すべき被処理水を供給するための被処理水供給手段2、直列配列された3台の電気透析装置、即ち最上流電気透析装置4、中間電気透析装置6及び最下流電気透析装置8、並びに記憶手段を内蔵したマイクロプロセッサから構成することができる制御手段(図示していない)を備えている。所望ならば、中間電気透析装置6を省略して2台の電気透析装置、即ち最上流電気透析装置4及び最下流電気透析装置8、を装備し、或いは最上流電気透析装置4及び最下流電気透析装置8に加えて2台又はそれ以上の中間電気透析装置を装備することもできる。
【0013】
被処理水供給手段2は被処理水タンク10、被処理水供給ポンプ手段12及び電導度計14を含んでいる。被処理水タンク10には、例えば埋立地からの浸出水である、脱イオン・濃縮すべき被処理水が適宜の導入手段(図示していない)によって導入される。被処理水供給ポンプ手段12は被処理水タンク10内の被処理水を供給ライン16に流出せしめる。電導度計14は供給ライン16を流動する被処理水の電導度即ちイオン濃度を測定する。
【0014】
最上流電気透析装置4は、脱イオン室18と濃縮室20とを有する通常形態、即ち非極性転換方式(脱イオン室18と濃縮室20とが転換されることがない方式)の、それ自体は周知の電気透析装置から構成されている。最上流電気透析装置4の脱イオン室18には、最上流脱イオン水槽22、最上流脱イオン水ポンプ手段24及び電導度計26が付設されている。最上流脱イオン水槽22には上記被処理水タンク10から上記供給ライン16を通して被処理水が供給される。最上流脱イオン水ポンプ手段24は、最上流脱イオン水槽22から脱イオン水を流出せしめて送給ライン28を通して脱イオン室18に送給すると共に、脱イオン室18から返送ライン30を通して最上流脱イオン水槽22に脱イオン水を返送する。電導度計26は返送ライン30を流動する脱イオン水の電導度を測定する。脱イオン水槽22にはオーバーフローする脱イオン水の流動ライン32も配設されている。最上流電気透析装置4の濃縮室20には、最上流濃縮水槽34、最上流濃縮水ポンプ手段36、電導度計38及びpH計40が付設されている。最上流濃縮水槽34には上記供給ライン16から分岐する分岐供給ライン42を介して上記被処理水タンク10から被処理水が供給される。最上流濃縮水ポンプ手段36は、最上流濃縮水槽34から濃縮水を流出せしめて送給ライン44を通して濃縮室20に送給すると共に、濃縮室20から返送ライン46を通して最上流濃縮水槽34に濃縮水を返送する。電導度計38は返送ライン46を流動する濃縮水の電導度を計測し、pH計40は返送ライン46を流動する濃縮水のpHを計測する。最上流濃縮水槽34には濃縮水流出ライン48も配設されており、この濃縮水流出ライン48は濃縮水受槽50まで延びている。
【0015】
中間電気透析装置6は、上記最上流電気透析装置4と同様に、脱イオン室52と濃縮室54とを有する非極性転換方式の、それ自体は周知の電気透析装置から構成されている。中間電気透析装置6の脱イオン室52には、中間脱イオン水槽56、中間脱イオン水ポンプ手段58及び電導度計60が付設されている。中間脱イオン水槽56には上記流動ライン32を介して上記最上流脱イオン水槽22をオーバーフローする脱イオン水が供給される。中間脱イオン水ポンプ手段58は、中間脱イオン水槽56から脱イオン水を流出せしめて送給ライン62を通して脱イオン室52に送給すると共に、脱イオン室52から返送ライン64を通して中間脱イオン水槽56に脱イオン水を返送する。電導度計60は返送ライン64を流動する脱イオン水の電導度を測定する。中間脱イオン水槽56にはオーバーフローする脱イオン水の流動ライン66も配設されている。中間電気透析装置6の濃縮室54には、中間濃縮水槽68、中間濃縮水ポンプ手段70、電導度計72及びpH計74が付設されている。中間濃縮水ポンプ手段70は、中間濃縮水槽68から濃縮水を流出せしめて送給ライン76を通して濃縮室54に送給すると共に、濃縮室54から返送ライン78を通して中間濃縮水槽68に濃縮水を返送する。電導度計72は返送ライン78を流動する濃縮水の電導度を計測し、pH計74は返送ライン78を流動する濃縮水のpHを計測する。中間濃縮水槽68にはオーバーフローする濃縮水の流動ライン80も配設されている。流動ライン80はカルシウム除去手段82を介して上記被処理水タンク10に至る。濃縮水中に析出される難容性塩が実質上皆無或いは比較的小さい少量である場合には、カルシウム除去手段82を省略することができる。
【0016】
最下流電気透析装置8は、第一の室84と第二の室86とを有する極性転換方式(定期的に極性が転換されて、第一の室84が脱イオン室として機能し第二の室86が濃縮室として機能する状態と第一の室84が濃縮室として機能し第二の室86が脱イオン室として機能する状態とに定期的に転換される方式)の、それ自体は周知の電気透析装置から構成されている。図1においては、第一の室84が脱イオン室として機能し第二の室86が濃縮室として機能する状態が図示されている。極性転換方式の電気透析装置は、被処理水が比較的低濃度である場合にも高効率で脱イオン・濃縮処理することができ、最下流電気透析装置8として好適に選定することができる。図1に図示する状態において、最下流電気透析装置8の第一の室(脱イオン室)84には、最下流脱イオン水槽88、最下流脱イオン水ポンプ手段90及び電導度計92が付設されている。最下流脱イオン水槽88には上記流動ライン66を介して上記中間脱イオン水槽56をオーバーフローする脱イオン水が供給される。最下流脱イオン水ポンプ手段90は、最下流脱イオン水槽88から脱イオン水を流出せしめて送給ライン94を通して第一の室(脱イオン室)84に送給すると共に、第一の室(脱イオン室)84から返送ライン96を通して最下流脱イオン水槽88に脱イオン水を返送する。電導度計92は返送ライン96を流動する脱イオン水の電導度を測定する。最下流脱イオン水槽88には脱イオン水流出ライン98も配設されており、この脱イオン水流出ライン98は脱イオン水受槽100まで延びている。上記送給ライン94には、オーバーフローする脱イオン水の流動ライン102が接続されている。最下流電気透析装置8の第二の室(濃縮室)86には、最下流濃縮水槽104、最下流濃縮水ポンプ手段106、電導度計108及びpH計110が付設されている。上記流動ライン102は最下流濃縮水槽104まで延びている。最下流濃縮水ポンプ手段106は、最下流濃縮水槽104から濃縮水を流出せしめて送給ライン112を通して第二の室(濃縮室)86に送給すると共に、第二の室(濃縮室)86から返送ライン114を通して最下流濃縮水槽104に濃縮水を返送する。電導度計108は返送ライン114を流動する濃縮水の電導度を計測し、pH計110は返送ライン114を流動する濃縮水のpHを計測する。最下流濃縮水槽104にはオーバーフローする濃縮水の流動ライン116も配設されており、この流動ライン116は上記中間濃縮水槽68まで延びている。最下流電気透析装置8の極性が転換されて第一の室84が濃縮室として機能し第二の室86が脱イオン室として機能する状態に転換されたときには、適宜の接続転換手段(図示していない)によって接続転換が遂行され、最下流脱インオ水槽88に配設されている送給ライン94及び返送ライン96が第一の室84ではなくて第二の室86に接続され、最下流濃縮水槽104に配設されている送給ライン112及び返送ライン114が第二の室86ではなくて第一の室84に接続される。所望ならば、最下流濃縮水槽104の配設を省略し、最下流脱イオン水槽88から適宜に送給ライン112に脱イオン水を送給し、返送ライン114にオーバーフローする濃縮水の流動ラインを接続し、この流動ラインを中間濃縮水槽68まで延ばすこともできる。
【0017】
次に、上述したとおりの電気透析システムにおける制御手段(図示していない)による作動制御様式について説明する。図2は3台の電気透析装置、即ち最上流電気透析装置4、中間電気透析装置6及び最下流電気透析装置8のいずれを作動せしめるかを設定する制御フローを示している。ステップs−1においては、被処理水の電導度、即ち電導度計14が計測する電導度が第一の所定値、例えばイオン濃度で500乃至4,000ppm程度、以下であるか否かが判別される。被処理水の電導度が第一の所定値より大きい場合にはステップs−2に進行し、中間電気透析装置6を作動せしめることが決定される。次いでステップs−3に進行し、被処理水の電導度が上記第一の所定値よりも大きい第二の所定値、例えばイオン濃度で4,000乃至15,000ppm程度、以下であるか否かが判別される。被処理水の電導度が第二の所定値よりも大きい場合にはステップs−4に進行し、最上流電気透析装置4を作動せしめることが決定される。次いで、ステップs−5に進行して、最下流電気透析装置8を作動せしめることが決定される。上記ステップs−1において被処理水の電導度が第一の所定値以下の場合にはステップs−5に進行する。また、上記ステップs−3において被処理水の電導度が第二の所定値以下の場合にもステップs−5に進行する。かようにして、本発明に従って構成された電気透析システムにおいては、被処理水の電導度が所定値(第一の所定値)以下の場合には最下流電気透析装置8のみが作動せしめられ、被処理水の電導度の増大に応じて下流側から上流側に向けて漸次電気透析装置の作動台数が増大せしめられる。図示の実施形態においては、被処理水の電導度が第一の所定値以下の場合には最下流電気透析装置8のみが作動せしめられ、被処理水の電導度が第一の所定値よりは大きいが第二の所定値以下の場合には最下流電気透析装置8と共に中間電気透析装置6が作動せしめられ、被処理水の電導度が第二の所定値よりも大きい場合には全ての電気透析装置、即ち最下流電気透析装置8と共に中間電気透析装置6及び最上流電気透析装置4が作動せしめられる。
【0018】
図3を参照して最上流電気透析装置4の作動制御手順を説明すると、ステップs−6においては、最上流電気透析装置4を作動すべき設定がなされているか否かが判別される。最上流電気透析装置4を作動すべき設定がなされている場合にはステップs−7に進行し、最上流脱イオン水槽22中の脱イオン水及び最上流濃縮水槽34中の濃縮水が所定レベル以上か否かが判別される。最上流脱イオン水槽22中の脱イオン水のレベル及び/又は最上流濃縮水槽34中の濃縮水のレベルが所定レベルより低い場合にはステップs−8に進行し、被処理水供給ポンプ手段12を作動せしめると共に供給ライン16中に配設されている開閉制御弁(図示していない)を開動して最上流脱イオン水槽22に被処理水を供給する及び/又は被処理水供給ポンプ手段12を作動せしめると共に分岐供給ライン42中に配設されている開閉制御弁(図示していない)を開動して最上流濃縮水槽34に被処理水を供給する。ステップs−7において最上流脱イオン水槽22中の脱イオン水のレベル及び最上流濃縮水槽34中の濃縮水のレベルが所定レベル以上の場合にはステップs−9に進行する。このステップs−9においては、最上流脱イオン水ポンプ手段24が作動せしめられて脱イオン室18を通る脱イオン水の循環が開始されると共に、最上流濃縮水ポンプ手段36が作動せしめられて濃縮室20を通る濃縮水の循環が開始される。次いで、ステップs−10において最上流電気透析装置4に作動電力が供給され、最上流電気透析装置4の作動が開始される。最上流電気透析装置4が作動される際には、ステップs−11において電導度計26が計測する脱イオン水の電導度が所定値、例えばイオン濃度で4,000乃至15,000ppm程度、以下であるか否かが判別され、脱イオン水の電導度が所定値以下の場合にはステップs−12に進行し、最上流脱イオン水槽22への被処理水の供給が開始される。また、ステップs−13において電導度計38が計測する濃縮水の電導度が所定値、例えばイオン濃度で15,000乃至70,000ppm程度、以上か否かが判別され、濃縮水の電導度が所定値以上の場合にはステップs−14に進行し、最上流濃縮水槽34に配設されている濃縮水流出ライン48に設けられている開閉制御弁(図示していない)が開動され、最上流濃縮水槽34内の濃縮水が流出ライン48を通して濃縮水受槽50に送給される。濃縮水受槽50に送給された濃縮水は、乾燥加熱装置に供給するのに適したイオン濃度を有し、加熱乾燥装置において高効率で加熱固化して塩を生成することができる。ステップs−15においては、電導度計38が計測する濃縮水の電導度が過大であり最上流電気透析装置4の作動効率の低減を誘発する可能性があるか否かが判別される。濃縮水の電導度が過大である場合にはステップs−16に進行し、分岐供給ライン42を通して最上流濃縮水槽34に被処理水が送給されて濃縮水が希釈される。更に、ステップs−17においては、pH計40が測定する濃縮水のpHが最上流電気透析装置4の作動効率の低減を誘発する虞がある所定値(例えば1.0乃至6.0程度)以上であるか否かが判別される。そして濃縮水のpHが所定値以上である場合にはステップs−18に進行し、適宜の供給源(図示していない)から濃縮水に塩酸が供給される。上記ステップs−6において最上流電気透析装置4を作動すべき設定がなされていない場合には、ステップs−19に進行し、最上流電気透析装置4に電力が供給されている場合にはこれを停止し、最上流脱イオン水ポンプ手段24及び最上流濃縮水ポンプ手段36が作動せしめられている場合にはこれらの作動を停止する。
【0019】
図4を参照して中間電気透析装置6の作動制御手順を説明すると、ステップs−20においては、中間電気透析装置6を作動すべき設定がなされているか否かが判別される。中間電気透析装置6を作動すべき設定がなされている場合にはステップs−21に進行し、中間脱イオン水槽56中の脱イオン水及び中間濃縮水槽68中の濃縮水が所定レベル以上か否かが判別される。中間脱イオン水槽56中の脱イオン水のレベル及び/又は中間濃縮水槽68中の濃縮水のレベルが所定レベルより低い場合にはステップs−22に進行し、被処理水供給ポンプ手段12を作動せしめると共に供給ライン16中に配設されている開閉制御弁(図示していない)を開動して最上流脱イオン水槽22に被処理水を供給する。最上流脱イオン水槽22に被処理水を供給すると、流動ライン32を通して中間脱イオン水槽56に被処理水が供給され、そして更に流動ライン66、最下流イオン水槽88、送給ライン94、流動ライン102、最下流濃縮水槽104及び流動ライン116を通して中間濃縮水槽68に被処理水が供給される。ステップs−20において中間脱イオン水槽56中の脱イオン水のレベル及び中間濃縮水槽68中の濃縮水のレベルが所定レベル以上の場合にはステップs−23に進行する。このステップs−23においては、中間脱イオン水ポンプ手段58が作動せしめられて脱イオン室52を通る脱イオン水の循環が開始されると共に、中間濃縮水ポンプ手段70が作動せしめられて濃縮室54を通る濃縮水の循環が開始される。次いで、ステップs−24において中間電気透析装置6に作動電力が供給され、中間電気透析装置6の作動が開始される。中間電気透析装置6が作動される際には、ステップs−25において電導度計60が計測する脱イオン水の電導度が所定値、例えばイオン濃度で500乃至4,000ppm程度、以下であるか否かが判別され、脱イオン水の電導度が所定値以下の場合にはステップs−26に進行し、最上流脱イオン水槽22及び流動ライン32を介して中間脱イオン水槽56に被処理水が供給される。また、ステップs−27においては、電導度計72が計測する濃縮水の電導度が過大であり中間電気透析装置6の作動効率の低減を誘発する可能性があるか否かが判別される。濃縮水の電導度が過大である場合にはステップs−28に進行し、最上流脱イオン水槽22、流動ライン32、中間脱イオン水槽56、流動ライン66、最下流脱イオン水槽88、送給ライン94、流動ライン102、最下流濃縮水槽104及び流動ライン116を通して中間濃縮水槽68に被処理水が送給され、濃縮水が希釈される。更に、ステップs−29においては、pH計74が測定する濃縮水のpHが中間電気透析装置6の作動効率の低減を誘発する虞がある所定値(例えば1.0乃至6.0程度)以上であるか否かが判別される。そして濃縮水のpHが所定値以上である場合にはステップs−30に進行し、適宜の供給源(図示していない)から濃縮水に塩酸が供給される。上記ステップs−20において中間電気透析装置6を作動すべき設定がなされていない場合には、ステップs−31に進行し、中間電気透析装置6に電力が供給されている場合にはこれを停止し、中間脱イオン水ポンプ手段58及び中間濃縮水ポンプ手段70が作動せしめられている場合にはこれらの作動を停止する。
【0020】
次に、図5を参照して最下流電気透析装置8の作動制御手順を説明する。ステップs−32においては最下流脱イオン水槽88中の脱イオン水及び最下流濃縮水槽104中の濃縮水が所定レベル以上か否かが判別される。最下流脱イオン水槽88中の脱イオン水のレベル及び/又は最下流濃縮水槽104中の濃縮水のレベルが所定レベルより低い場合にはステップs−33に進行し、被処理水供給ポンプ手段12を作動せしめると共に供給ライン16中に配設されている開閉制御弁(図示していない)を開動して最上流脱イオン水槽22に被処理水を供給する。最上流脱イオン水槽22に被処理水を供給すると、流動ライン32、中間脱イオン水槽56及び流動ライン66を通して最下流脱イオン水槽88に非処理水が供給され、そして更に送給ライン94、流動ライン102を介して最下流濃縮水槽104に被処理水が供給される。ステップs−32において最下流脱イオン水槽88中の脱イオン水のレベル及び最下流濃縮水槽104中の濃縮水のレベルが所定レベル以上の場合にはステップs−34に進行する。このステップs−34においては、最下流脱イオン水ポンプ手段90が作動せしめられて脱イオン室84を通る脱イオン水の循環が開始されると共に、最下流濃縮水ポンプ手段106が作動せしめられて濃縮室86を通る濃縮水の循環が開始される。次いで、ステップs−35において最下流電気透析装置8に作動電力が供給され、最下流電気透析装置8の作動が開始される。次いで、ステップs−36に進行し、最下流電気透析装置8の作動を開始から所定時間、例えば15分乃至12時間程度、以上経過したか否かが判別される。所定時間以上経過した場合にはステップs−37に進行し、最下流電気透析装置8の極性が転換されると共に極性転換に付随して必要な上記接続転換操作が遂行される。一方、ステップs−38においては、電導度計92が測定する電導度が所定値、例えばイオン濃度で100乃至1,000ppm程度、以下であるか否かが判別される。電導度が所定値以下である場合にはステップs−39に進行し、このステップs−39においては脱イオン水流出ライン98に配設されている開閉制御弁(図示していない)が開動され、最下流脱イオン水槽88からイオン濃度が充分に低減せしめられた脱イオン水が脱イオン水受槽100に流出せしめられる。脱イオン水槽100に流出せしめられた脱イオン水は、イオン濃度が充分に低減されている故に、例えば農業用水として利用し或いは河川に放流することができる。更に、最下流電気透析装置8が作動される際には、ステップs−40において、電導度計108が計測する濃縮水の電導度が過大であり最下流電気透析装置8の作動効率の低減を誘発する可能性があるか否かが判別される。濃縮水の電導度が過大である場合にはステップs−41に進行し、最上流脱イオン水槽22、流動ライン32、中間脱イオン水槽56、流動ライン66、最下流脱イオン水槽88、送給ライン94及び流動ライン102を通して最下流濃縮水槽104に被処理水が送給され、濃縮水が希釈される。また、ステップs−42においては、pH計110が測定する濃縮水のpHが最下流電気透析装置8の作動効率の低減を誘発する虞がある所定値(例えば1.0乃至6.0程度)以上であるか否かが判別される。そして濃縮水のpHが所定値以上である場合にはステップs−43に進行し、適宜の供給源(図示していない)から濃縮水に塩酸が供給される。
【符号の説明】
【0021】
2:被処理水供給手段
4:最上流電気透析装置
6:中間電気透析装置
8:最下流電気透析装置
10:被処理水タンク
14:電導度計
22:最上流脱イオン水槽
24:最上流脱イオン水ポンプ手段
26:電導度計
34:最上流濃縮水槽
36:最上流濃縮水ポンプ手段
38:電導度計
50:濃縮水受槽
56:中間脱イオン水槽
58:中間脱イオン水ポンプ手段
60:電導度計
68:中間濃縮水槽
70:中間濃縮水ポンプ手段
72:電導度計
88:最下流脱イオン水槽
90:最下流脱イオン水ポンプ手段
92:電導度計
100:脱イオン水受槽
104:最下流濃縮水槽
106:最下流濃縮水ポンプ手段
108:電導度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列配列された少なくとも2台の電気透析装置と共に、脱イオン・濃縮すべき被処理水を供給するための被処理水供給手段及び制御手段を備え、
該被処理水供給手段は最上流に位置する最上流電気透析装置に付設された最上流脱イオン水槽に被処理水を供給し、該最上流電気透析装置に付設された最上流濃縮水槽から濃縮水が流出せしめられ、最下流に位置する最下流電気透析装置に付設された脱イオン水槽から脱イオン水が流出せしめられ、
該制御手段は、被処理水の電導度に応じて、作動せしめる電気透析装置の台数を設定する、
ことを特徴とする電気透析システム。
【請求項2】
該制御手段は、被処理水の電導度が所定値以下の場合には該最下流電気透析装置のみを作動せしめ、被処理水の電導度の上昇に応じて、下流側から上流側に向けて漸次電気透析装置の作動台数を増大せしめる、請求項1記載の電気透析システム。
【請求項3】
該最下流電気透析装置は極性転換方式であり、他の電気透析装置は非極性転換方式である、請求項1又は2記載の電気透析システム。
【請求項4】
該最上流電気透析装置に付設された該濃縮水槽から流出せしめられる濃縮水は所定高濃度以上のイオン濃度を有し、該最下流電気透析装置から流出せしめられる脱イオン水は所定低濃度以下のイオン濃度を有する、請求項1から3のいずれかに記載の電気透析システム。
【請求項5】
該最上流電気透析装置及び該最下流電気透析装置に加えて、該最上流電気透析装置と該最下流電気透析装置との間に位置する少なくとも1台の中間電気透析装置を含み、
該最上流電気透析装置には、該最上流脱イオン水槽内の脱イオン水を該最上流電気透析装置の脱イオン室に送給すると共に該最上流電気透析装置において脱イオンされた脱イオン水を該最上流脱イオン水槽に返送するための最上流脱イオン水ポンプ手段と、該最上流濃縮水槽内の濃縮水を該最上流電気透析装置の濃縮室に送給すると共に該最上流電気透析装置において濃縮された濃縮水を該最上流濃縮水槽に返送するための最上流濃縮水ポンプ手段とが付設されており、
該中間電気透析装置には、中間脱イオン水槽と、中間濃縮水槽と、該中間脱イオン水槽内の脱イオン水を該中間電気透析装置の脱イオン室に送給すると共に該中間電気透析装置において脱イオンされた脱イオン水を該中間脱イオン水槽に返送するための中間脱イオン水ポンプ手段と、該中間濃縮水槽内の濃縮水を該中間電気透析装置の濃縮室に送給すると共に該中間電気透析装置において濃縮された濃縮水を該中間濃縮水槽に返送するための中間濃縮水ポンプ手段とが付設されており、
該最下流電気透析装置には、最下流脱イオン水槽と、最下流濃縮水槽と、該最下流脱イオン水槽内の脱イオン水を該最下流電気透析装置の脱イオン室に送給すると共に該最下流電気透析装置において脱イオンされた脱イオン水を該最下流脱イオン水槽に返送するための最下流脱イオン水ポンプ手段と、該最下流濃縮水槽内の濃縮水を該最下流電気透析装置の濃縮室に送給すると共に該最下流電気透析装置において濃縮された濃縮水を該最下流濃縮水槽に返送するための最下流濃縮水ポンプ手段とが付設されており、
該最上流脱イオン水槽をオーバーフローした脱イオン水が該中間脱イオン水槽に流動せしめられ、そして該中間脱イオン水槽をオーバーフローした脱イオン水が該最下流脱イオン水槽に流動せしめられ、該最下流電気透析装置の該脱イオン室を通して循環せしめられる脱イオン水の循環路からオーバーフローした脱イオン水は該最下流濃縮水槽に流動せしめられ、
該最下流濃縮水槽をオーバーフローした濃縮水は該中間濃縮水槽に流動せしめられ、該中間濃縮水槽からオーバーフローした濃縮水は該被処理水供給手段に返流せしめられる、
請求項1から4までのいずれかに記載の電気透析システム。
【請求項6】
該中間濃縮水槽からオーバーフローした濃縮水は該被処理水供給手段に返流せしめられるのに先立ってカルシウム除去手段に送給されてカルシウム除去処理を受ける、請求項5記載の脱塩濃縮システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−6128(P2013−6128A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138600(P2011−138600)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(503361709)株式会社アストム (46)
【Fターム(参考)】