説明

電気配線用コネクタ及び不要信号対策方法

【課題】電子機器における不要信号対策を容易にする。
【解決手段】プラグコネクタ1は、コネクタピン11を収容するハウジング10と、プラグコネクタ1がレセプタルコネクタに嵌合された場合にレセプタルコネクタのコネクタピンと接続されるコネクタピン11と、コネクタピン11に圧着された配線ワイヤ12とを備える。ハウジング10には、隣接するコネクタピン収容孔102を区画する仕切壁101が形成されている。仕切壁101の上端には、所定の形状の表面実装部品を挿抜可能な対策部品収容部103が形成されている。コネクタピン111とコネクタピン112との間の対策部品収容部103には、信号ライン131に接続されたコネクタピン111と接地ライン132に接続されたコネクタピン112とを接続する対策部品P1が挿入され、それ以外の対策部品収容部103には、仮挿入部材P2が挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線用コネクタ及び電気配線用コネクタを使用した電子機器における不要信号対策方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における不要信号対策、例えば、電磁障害(EMI)対策や静電気対策は、例えば、信号ラインと接地ラインとをコンデンサや抵抗等の不要信号対策部品を介して接続すること等により行われていた。このような不要信号対策部品の実装は、通常、不要信号が重畳しやすい電気配線用コネクタの付近に、不要信号対策部品をハンダづけすることにより行われていた。
【0003】
なお、特許文献1は、本願発明と関連する先行技術文献であり、ソケット端子をプリント基板の1組のパッドにハンダづけするだけで、プリント基板上の1組のパッドに対して複数のチップ部品を収容可能な大きさとしたハウジングを備えたチップ部品実装ソケットを開示している。
【0004】
【特許文献1】特開平8−273781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の不要信号対策では、ハンダづけや基板の取り外しの作業が煩雑であり、不要信号対策に費やす時間や費用も増大しがちであるという問題があった。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、電子機器における不要信号対策を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、所定の嵌合対象物に対して嵌脱可能な電気配線用コネクタであって、前記嵌合対象物に嵌合された場合に前記嵌合対象物の所定の部位に接続されるコネクタピン群と、前記コネクタピン群を収容するとともに、前記コネクタピン群に含まれる隣接するコネクタピン対の間に表面実装部品を挿抜可能な挿入空間を設けたハウジングとを備え、前記挿入空間に前記表面実装部品が挿入された場合に、前記コネクタピン対が前記表面実装部品を介して電気的に接続される。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の電気配線用コネクタにおいて、前記表面実装部品に代えて前記挿入空間に挿入された絶縁性の仮挿入部材をさらに備える。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の電気配線用コネクタにおいて、前記コネクタピン群において、電源ラインに接続された電源コネクタピンと接地ラインに接続された接地コネクタピンとが隣接しており、前記挿入空間は、前記電源コネクタピンと前記接地コネクタピンとを電気的に接続する前記表面実装部品としてバイパスコンデンサを挿抜可能である。
【0010】
請求項4の発明は、電気配線用コネクタを使用した電子機器における不要信号対策方法であって、前記電気配線用コネクタのハウジングに設けられた挿入空間に、前記ハウジングが収容するコネクタピン群に含まれるコネクタピン対を電気的に接続する表面実装部品を挿入する挿入工程と、前記表面実装部品による不要信号抑制効果を確認する確認工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
請求項1ないし請求項4の発明によれば、表面実装部品を実装することが容易になるので、電子機器における不要信号対策が容易になる。
【0012】
請求項2の発明によれば、表面実装部品を挿入空間に挿入しない場合に、コネクタの内部に埃が侵入することを防止することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、不要信号対策がさらに容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係るプラグコネクタ1の概略構成を示す模式図であり、図1は、プラグコネクタ1の斜視図、図2は、図1のII-IIの切断線におけるプラグコネクタ1の断面図となっている。プラグコネクタ1は、電気配線用のワイヤハーネスの一端に取り付けられており、電子回路基板等に実装されたレセプタルコネクタに嵌合可能となっている。
【0015】
図1及び図2に示すように、プラグコネクタ1は、コネクタピン11を収容するハウジング10と、プラグコネクタ1がレセプタルコネクタに嵌合された場合にレセプタルコネクタのコネクタピンと接続されるコネクタピン11と、コネクタピン11に圧着された配線ワイヤ12とを備える。
【0016】
ハウジング10は、絶縁性の樹脂を成形することによって作製される。ハウジング10には、コネクタピン11を収容するコネクタピン収容孔102が形成されている。コネクタピン収容孔102は、嵌合時にレセプタルコネクタと対向するハウジング10の下面と、配線ワイヤ12が引き出されるハウジング10の上面とを貫通している。コネクタピン収容孔102は、一定間隔で一列に配列して形成されている。ハウジング10には、隣接するコネクタピン収容孔102を区画する仕切壁101が形成されている。仕切壁101の上端部には、所定の形状の表面実装部品を挿抜可能な対策部品収容部(挿入空間)103が形成されている。
【0017】
コネクタピン(コンタクトピンや接触子とも呼ばれる)11は、導電性の金属をピン形状に加工することにより作製される。コネクタピン11は、ハウジング10のコネクタピン収容孔102に収容され、一定間隔で一列に配列されている。コネクタピン11は、ハウジング10から容易に離脱することがないように、不図示の係止爪によってハウジング10に係止されている。
【0018】
配線ワイヤ12は、端部の絶縁被覆が剥離され、絶縁皮膜の剥離によって露出した金属線がコネクタピン11に圧着されている。配線ワイヤ12は、ハウジング10の上面から引き出される。
【0019】
プラグコネクタ1では、不要信号対策用の表面実装部品(以下、「対策部品」)P1又は対策部品P1に代えて用いられるダミーの仮挿入部材P2を対策部品収容部103に挿入することができる。仮挿入部材P2は、絶縁性の材質、例えば、ハウジング10と同一の材質で構成されており、対策部品P1を対策部品収容部103に挿入しない場合に、プラグコネクタ1の内部に埃が進入することを防止する役割や隣接するコネクタピン11が短絡することを防止する役割を果たしている。
【0020】
図1には、信号ライン131に接続されたコネクタピン111と接地ライン(電源ラインでもよい)132に接続されたコネクタピン112とを電気的に接続する対策部品P1がコネクタピン111とコネクタピン112との間の対策部品収容部103に挿入され、それ以外の対策部品収容部103に仮挿入部材P2が挿入された状態が図示されている。図3の回路図に示すように、図1に図示された状態においては、信号ライン131と接地ライン132とが、隣接するコネクタピン111とコネクタピン112との間の対策部品収容部103に挿入された対策部品P1を介して電気的に接続された状態となる。対策部品P1としては、例えば、電磁妨害(EMI)対策用や静電気対策用のコンデンサ(バイパスコンデンサ等)、抵抗(プルアップ抵抗やプルダウン抵抗等)、インダクタ(LCハイパスフィルタの並列インダクタ等)、バリスタ又はツェナダイオード等を挿入することができるが、図3の回路図は、対策部品P1としてコンデンサを挿入した場合を示している。
【0021】
図2に示すように、対策部品収容部103の側面上端付近には、対策部品収容部103に挿入された対策部品P1又は仮挿入部材P2が対策部品収容部103から離脱することを防ぐ三角突起形状の離脱防止爪1011が形成されている。離脱防止爪1011により、対策部品収容部103に挿入された対策部品P1又は仮挿入部材P2は、対策部品収容部103の底面に保持される。
【0022】
図4は、プラグコネクタ1が使用されている電子機器において不要信号対策を行う場合の手順を示すフローチャートである。
【0023】
図4に示すように、まず、ピンセットを用いて、対策部品P1を介して接続することを望むライン対に接続されたコネクタピン対の間の対策部品収容部103から仮挿入部材P2を取り外して当該対策部品収容部103に対策部品P1を挿入する(ステップS101)。そして、挿入した対策部品P1による不要信号抑制効果を確認し(ステップS102)、期待した不要信号抑制効果が得られなかった場合(ステップS102で"NG")、別の対策を試みる(ステップS103)。別の対策としては、既に対策部品収容部103に挿入されている対策部品P1を別の対策部品P1に交換することや(例えば、バイパスコンデンサの容量を変更する)、別の対策部品収容部103から仮挿入部材P2を取り外して当該対策部品収容部103に新たな対策部品P1を挿入すること等が考えられる。
【0024】
このようなプラグコネクタ1を電子機器に採用すれば、対策部品P1をハンダづけすることなく容易に実装することができるので、不要信号対策が容易になる。また、ハンダを使用しないので、自然環境や作業環境への悪影響を減らすこともできる。
【0025】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係るプラグコネクタ2の概略構成を示す模式図である。図5は、プラグコネクタ2の斜視図となっている。第2実施形態に係るプラグコネクタ2は、第1実施形態に係るプラグコネクタ1と類似の構成を有しており、ハウジング20、コネクタピン21、仕切壁201、コネクタピン収容部202及び対策部品収容部203は、ハウジング10、コネクタピン11、仕切壁101、コネクタピン収容部102及び対策部品収容部103と同様のものとなっており、対策部品収容部203には、対策部品P1又は仮挿入部材P2が挿入される。ただし、プラグコネクタ2においては、ハウジング20のコネクタピン収容孔202が、一定の間隔で2列に配列して形成されている点がプラグコネクタ1とは異なっている。なお、図5においては、図示の便宜上、配線ワイヤを省略している。
【0026】
図6は、プラグコネクタ2のコネクタピン21に接続されるラインの種類を示す上面図である。図6において、「SIG」「VCC」及び「GND」は、それぞれ、信号ライン、電源ライン及び接地ラインに接続されたコネクタピン21であることを示している。以下の説明では、信号ライン、電源ライン及び接地ラインに接続されたコネクタピン21を、それぞれ、信号コネクタピン211、電源コネクタピン212及び接地コネクタピン213と称する。
【0027】
図6に示すように、プラグコネクタ2では、縦横両方向に2個ずつ、合計4個のコネクタピン21を含むブロックB1〜B4の各々に、2個の信号コネクタピン211、1個の電源コネクタピン212及び1個の接地コネクタピン213が設けられている。ブロックB1〜B4には、左上及び右下に信号コネクタピン211、左下に接地コネクタピン213及び右上に電源コネクタピン212を配した第1のコネクタピン配置を有するブロックB1及びB3と、左下及び右上に信号コネクタピン211、左上に接地コネクタピン213及び右下に電源コネクタピン212を配した第2のコネクタピン配置を有するブロックB2及びB4とがある。そして、プラグコネクタ2では、第1のコネクタピン配置を有するブロックB1及びB3と第2のコネクタピン配置を有するブロックB2及びB4とが交互に配列されている。このようなプラグコネクタ2では、全ての信号コネクタピン211が電源コネクタピン212と接地コネクタピン213とに隣接しているので、信号コネクタピン211と電源コネクタピン212又は接地コネクタピン213との間の対策部品収容部203に対策部品P1を挿入することができる。加えて、このようなプラグコネクタ2では、全ての電源コネクタピン212が接地コネクタピン213と隣接しているので、電源コネクタピン212と接地コネクタピン213との間の対策部品収容部203に対策部品P1を挿入することができる。
【0028】
このようなプラグコネクタ2を電子機器に採用しても、プラグコネクタ1を電子機器に採用した場合と同様に、対策部品P1をハンダづけすることなく容易に実装することができるので、不要信号対策が容易になる。さらに、このようなプラグコネクタ2を電子機器に採用した場合、電源コネクタピン21と接地コネクタピン21とを接続する表面実装部品として、電磁妨害対策に有効なバイパスコンデンサを挿抜可能であるので、不要信号対策がさらに容易になる。
【0029】
<その他>
上述の説明では、コネクタピンが1列又は2列に配列されるとしたが、コネクタピンが3列以上にわたって配列されたコネクタにも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラグコネクタ1の斜視図である。
【図2】図1のII-IIの切断線におけるプラグコネクタ1の断面図である。
【図3】対策部品収容部103に対策部品P1が挿入され、対策部品収容部103に仮挿入部材P2が挿入された場合の回路図である。
【図4】プラグコネクタ1が使用されている電子機器において不要信号対策を行う場合の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係るプラグコネクタ2の斜視図である。
【図6】プラグコネクタ2のコネクタピン21に接続されるラインの種類を示す上面図である。
【符号の説明】
【0031】
1,2 プラグコネクタ
10,20 ハウジング
11,21 コネクタピン
101,201 仕切壁
103,203 対策部品収容部
P1 対策部品
P2 仮挿入部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の嵌合対象物に対して嵌脱可能な電気配線用コネクタであって、
前記嵌合対象物に嵌合された場合に前記嵌合対象物の所定の部位に接続されるコネクタピン群と、
前記コネクタピン群を収容するとともに、前記コネクタピン群に含まれる隣接するコネクタピン対の間に表面実装部品を挿抜可能な挿入空間を設けたハウジングと、
を備え、
前記挿入空間に前記表面実装部品が挿入された場合に、前記コネクタピン対が前記表面実装部品を介して電気的に接続される電気配線用コネクタ。
【請求項2】
前記表面実装部品に代えて前記挿入空間に挿入された絶縁性の仮挿入部材、
をさらに備える請求項1記載の電気配線用コネクタ。
【請求項3】
前記コネクタピン群において、電源ラインに接続された電源コネクタピンと接地ラインに接続された接地コネクタピンとが隣接しており、前記挿入空間は、前記電源コネクタピンと前記接地コネクタピンとを電気的に接続する前記表面実装部品としてバイパスコンデンサを挿抜可能である請求項1又は請求項2記載の電気配線用コネクタ。
【請求項4】
電気配線用コネクタを使用した電子機器における不要信号対策方法であって、
前記電気配線用コネクタのハウジングに設けられた挿入空間に、前記ハウジングが収容するコネクタピン群に含まれるコネクタピン対を電気的に接続する表面実装部品を挿入する挿入工程と、
前記表面実装部品による不要信号抑制効果を確認する確認工程と、
を備える不要信号対策方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−328942(P2007−328942A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157195(P2006−157195)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】