説明

電気錠システム

【課題】 カードやリモコンなどの特別な物を持たずに、室内側から簡便に電気錠の施解錠を行なう。
【解決手段】 一般住宅やオフィスビルの各テナント毎の玄関扉などに具備された電気錠システム1であって、電気錠30から所定距離離れた場所にセンサ部10および制御部20が設置される。センサ部10では、人体や人体の一部などの検知対象が所定の検知範囲内に近接したことを検知する。制御部20では、センサ部10が検知した検知対象の検知情報が設定時間以上継続して入力されたときに、その検知情報に基づいて電気錠30の施解錠を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種扉に設けられる電気錠の施解錠を行なう電気錠システムに係り、特に、カードやリモコンなどの特別な物を使わずに電気錠の施解錠を行なうことができる室内用の電気錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばオフィスビルのエントランスや一般住宅の玄関等の扉には、例えば携帯型の無線リモコンキーのキー操作、テンキーのキー操作、さらにはICカードを用いた暗証番号入力などにより電気錠の施解錠を行なう電気錠システムが採用されている。
【0003】
この種の電気錠システムでは、室外から電気錠の施解錠を行なう場合、無線リモコンキー、テンキー、ICカードなどの各種施解錠キーからの情報が電気錠の施解錠を許可する情報か否かを制御部が判別し、施解錠を許可して良い情報と判別したときにモータなどの駆動手段を駆動させ、扉枠の係止穴に対してデッドボルトを突出又は引き込むことにより、電気錠の施解錠を行なっている。そして、この種の電気錠システムとしては、例えば下記特許文献1に開示されているものを含め、様々な形式のものが提案されている。
【特許文献1】特開2003−97107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された電気錠システムを含む一般的な電気錠システムでは扉の室内側にデッドボルトを突出又は引き込むためのサムターンが設けられている。このため、室内側から電気錠を施解錠する場合には、サムターンを所定方向に回動操作するのが一般的であった。ところが、サムターンを回動操作するためには、施解錠を行う都度、扉の前まで出向く必要があった。そして、特に身体を自由に動かすことができない高齢者や障害者の場合には、サムターンを思うように回動操作できないこともあり、錠の施解錠を容易に行なうのが困難であった。また、室内に設置された操作盤の施解錠押し釦を操作して室内側から電気錠の施解錠を行うものも知られているが、施解錠押し釦の操作が必要不可欠であり、サムターンの場合と同様の問題が発生し、室内側からの電気錠の施解錠には不向きであった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、カードやリモコンなどの特別な物を持たずに、室内側から簡便に電気錠の施解錠を行なうことができる電気錠システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の電気錠システムは、扉枠の係止穴に対してデッドボルトを突出又は引き込むことにより扉を施解錠する電気錠と、
室内側に設置され、所定の検知範囲内に近接した人体又は人体の一部などの検知対象を検知して検知情報を出力するセンサ部と、
該センサ部からの検知情報に基づいて前記電気錠の施解錠を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の電気錠システムは、請求項1記載の電気錠システムにおいて、
前記制御部は、前記センサ部からの検知情報の入力時間を計時する計時手段を備え、
前記センサ部からの検知情報が設定時間以上継続して入力したことを前記計時手段が計時したときに、そのときの検知情報に基づいて前記電気錠の施解錠を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の電気錠システムは、請求項1又は2記載の電気錠システムにおいて、
前記電気錠の現在の施解錠状態や前記検知対象の検知状態を表示する表示手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、検知手段における所定の検知範囲内に人体又は人体の一部などの検知対象を近接させるだけで室内から電気錠の施解錠を行なうことができる。これにより、特に身体を自由に動かすことのできない高齢者や障害者であっても、容易、且つ快適に電気錠の施解錠を行なうことができる。
【0010】
また、センサ部に具備された表示手段は、検知手段の検知状態や電気錠の施解錠の状態を表示するので、検知手段による検知状態や扉まで出向かなくとも電気錠における施錠/解錠の状態を容易に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係る電気錠システムの概略構成図、図2は本発明に係る電気錠システムの施解錠動作を示すフローチャート図、図3は本発明に係る電気錠システムの使用例を示す概念図である。
【0012】
まず、本発明に係る電気錠システムの電気的構成について図1を参照しながら説明する。この電気錠システム1は、一般住宅やオフィスビルの各テナント毎の玄関扉などに採用され、図3に示すように、人体又は人体の一部などの検知対象が近接したことを検知するセンサ部10と、センサ部10からの検知情報を処理して電気錠の施解錠を制御する制御部20と、制御部20の制御により施解錠される電気錠30とで概略構成され、各部には不図示の電源部から必要な駆動電源が供給されている。
【0013】
センサ部10は、電気錠30と所定距離離れた室内の所定箇所(図3の例では人の手が届く高さの壁面)に設置されており、検知手段11と、センサ側通信手段12と、表示手段13とを備えて構成されている。センサ部10は、センサ側通信手段12を介して制御部20と通信しており、所定範囲内に人体又は人体の一部などの検知対象が近接したことを検知したときの検知情報を制御部20に送信し、電気錠30の施解錠に関する各種情報を制御部20から受信している。
【0014】
検知手段11は、人体や人体の一部が所定範囲内に近接したことを検知する近接センサや人体や人体の一部から放射される赤外線を所定範囲内で検知する赤外線センサなどで構成される。すなわち、この検知手段11では、予め設定された所定の検知範囲内において、人体又は人体の一部などの検知対象が近接したことを検知している。そのときの検知情報は、センサ側通信手段12を介して制御部20に送信される。なお、本例の検知手段11としては、センサ部10の近傍を通り過ぎただけで反応しないように、検出距離と復帰距離が予め設定された近接センサを用いるのが好ましい。この場合、後述するタイマ22aの構成を省くことができ、構成の簡略化が図れる。
【0015】
センサ側通信手段12は、例えば電波などの無線信号で各種情報を送受信するための送受信器で構成され、検知手段11で検知した検知情報や、表示手段13に表示するための各種情報を送受信する。なお、センサ部10と制御部20との各種情報の通信方法は無線に限らず、例えば扉のヒンジ部分に周知の通電金具を用い、センサ部10と制御部との間を通電金具を介して有線で接続して通信を行う構成とすることもできる。
【0016】
表示手段13は、例えばLEDや液晶ディスプレイ、蛍光表示管などの各種表示器で構成される。この表示手段13は、点灯・点滅表示や文字表示により、検知手段11に近接した検出対象の検知情報、電気錠30の施解錠に関する各種情報を制御部20からの表示制御信号により表示している。
【0017】
制御部20は、制御側通信手段21と、処理手段22と、駆動手段23とを備えて構成され、電気錠システムを構成する電気錠30とセンサ部10を統括制御している。
【0018】
制御側通信手段21は、センサ側通信手段12と同様の形態で構成され、センサ部10や処理手段22から入出力される人体検知に関する情報や、施解錠に関する各種情報の送受信を行なう。
【0019】
処理手段22は、例えばCPUやROM、RAMなどのマイクロコンピュータなどで構成され、電気錠30の施解錠に関する施解錠情報、表示手段13に各種表示内容を表示するための表示制御信号、駆動手段23を駆動させるための駆動制御信号を出力するとともに、不図示の電源部から駆動手段23に供給する電源の制御、制御部20からセンサ部10に送信する情報などを判別処理し、電気錠システム全体の制御処理を行なう。
【0020】
また、処理手段22は、計時手段としてのタイマ22aを具備しており、検知手段11からの検知情報が入力した際に、人体や人体の一部などの検知対象が所定の検知範囲内に近接している時間、すなわち検知情報が処理手段22に入力している時間をタイマ22aで計時し、設定時間が経過したか否かを判別している。すなわち、処理手段22では、タイマ22aが計時を開始してから検知情報が設定時間以上継続して入力されたか否かを判別している。そして、処理手段22は、検知情報が設定時間以上継続して入力したと判別したときに、施錠信号又は解錠信号を電気錠30に出力するとともに、電気錠30の状態(施錠又は解錠)を示す情報をセンサ部10に出力している。
【0021】
なお、検知情報の計時時間は、電気錠システムが設置される使用環境によっても異なるが、例えば継続的に5秒以上など、意図的に電気錠30の施解錠を行なおうとした場合にのみ電気錠30を施解錠するような時間に設定するのが好ましい。これにより、人体や人体の一部などの検知対象が単にセンサ部10に近づいたり横切った場合を排除することができる。
【0022】
駆動手段23は、例えばモータやアクチュエータなどの駆動機構で構成される。駆動手段23は、電気錠30を駆動する際に、処理手段22から駆動制御信号が出力され、この駆動制御信号の入力により電気錠30のデッドボルトを扉枠の係止穴に対して突出又は引き込んで施錠方向又は解錠方向に駆動させている。
【0023】
電気錠30は、例えばマンションやオフィスビル等の建築物の扉に設置される。電気錠30は、制御部20からの施解錠信号(施錠信号又は解錠信号)によって扉枠の係止穴に対してデッドボルトを突出(施錠時)又は引き込む(解錠時)ことにより扉が施解錠するものである。
【0024】
次に、上記構成による電気錠システムの施解錠の動作について図2のフローチャート図を参照しながら説明する。
【0025】
電気錠30を施解錠(施錠→解錠、又は解錠→施錠)するべく、センサ部10に人体又は人体の一部などの検知対象が近接すると、センサ部10の検知手段11が検知対象を検知する。具体的には、センサ部10に手をかざすと、センサ部10の検知手段11がこのかざされた手を検知対象として検知する。センサ部10は、検知手段11が検知対象を検知すると(ST1−Yes)、検知対象を所定の検知範囲内で検知したことを示す検知情報を制御部20に出力する。このときの検知情報は、センサ側通信手段12、制御側通信手段21を介して制御部20に入力される。また、表示手段13は、検知対象を検知したことが目視で確認できるように例えばLEDの点灯や文字により表示する。
【0026】
制御部20は、センサ部10から検知情報が入力されると、タイマ22aの計時を開始し、センサ部10からの検知情報がタイマ22aの設定時間以上継続して入力されたか否かを判別する(ST2)。そして、制御部20は、センサ部10からの検知情報が設定時間以上継続して入力していないと判別すると(ST2−No)、ST1に戻る。この場合、電気錠30の施解錠を意図としない人体又は人体の一部などの検知対象がセンサ部10に近接又は横切ったか、通信異常と判断し、電気錠30は施解錠されない。
【0027】
これに対し、センサ部10からの検知情報が設定時間以上継続して入力されたと判別すると(ST2−Yes)、電気錠30の現在の状態が施錠状態であるか否かを判別する(ST3)。そして、電気錠30が施錠状態でなければ(ST3−No)、電気錠30が現在解錠状態にあるので、処理手段22から施錠信号が駆動手段23に出力され、この施錠信号により駆動手段23がデッドボルトを係止穴に突出させて係止し電気錠30を施錠する。これに対し、電気錠30が施錠状態であれば(ST3−Yes)、処理手段22から解錠信号が駆動手段23に出力され、この解錠信号により駆動手段23がデッドボルトを係止穴から引き込んで係止穴に対するデッドボルトの係止を解除して電気錠30を解錠する。この駆動手段23による電気錠30の施錠又は解錠動作が行われると、処理手段22から制御側通信手段21を介して表示手段13に電気錠30の状態情報が出力される。そして、表示手段13には、前記状態情報に基づいて電気錠30の現在の状態(施錠又は解錠)が表示される。
【0028】
このように、上述した電気錠システムでは、まず、電気錠30から所定距離離れた場所に設置されたセンサ部10において、人体や人体の一部などの検知対象が所定の検知範囲内に近接したことを検知する。そして、制御部20において、センサ部10からの検知情報が設定時間以上継続して入力されたか否かを判別し、検知情報が設定時間以上継続して入力されたときのみ、その検知情報に基づいて電気錠30の施解錠を行なっている。これにより、従来のように扉まで出向いて電気錠30のサムターンを回動操作する必要がなく、電気錠の施解錠を簡便に行なえる。
【0029】
具体的に、例えば一般住宅やオフィスビルの各テナント毎の玄関扉などに具備された電気錠システムにおいて、例えば来客や郵便物の集配などで扉の電気錠30を施解錠する際に、身体的に不自由な障害者などは、錠の施解錠を行うために玄関に出向いてサムターンを回動操作することができない場合がある。このような場合、本例の電気錠システムを採用すれば、扉に出向いてサムターンを回動操作する必要がなく、センサ部10の検知範囲内で設定時間以上継続して近接するだけで電気錠30の施解錠を行なうことができる。また、その際、施錠/解錠の状態が表示手段13に表示されるので、扉の前まで出向いて施解錠の状態を確認する必要もなく、所望の施解錠操作を行なうことができる。
【0030】
しかも、電気錠30を施解錠する際、例えばカードやリモコンなど特別な物を所持する必要がないので、これらが故障したり紛失することによって施解錠ができなくなるという恐れもなく、特に身体を自由に動かすことのできない高齢者や障害者であっても、安全、且つ快適に施解錠を行なうことができる。また、暗証番号を入力するキー操作などの特別な認証も必要がないため、特に高齢者や子供であっても容易に錠の施解錠を行なうことができる。
【0031】
ところで、上述した形態では、施解錠に関する情報や検知対象を検知したことを示す場合、表示手段13に各内容が表示されるものとしたが、これに限定されることはない。例えば音声案内などを取り入れることもできる。これにより、目の不自由な障害者などが使用する場合であっても、より簡便に電気錠30の施解錠を行なうことができるという効果を奏する。
【0032】
以上、本発明を用いて最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る電気錠システムの概略構成図である。
【図2】本発明に係る電気錠システムの施解錠動作を示すフローチャート図である。
【図3】本発明に係る電気錠システムの使用例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0034】
1 電気錠システム
10 センサ部
11 検知手段
12 センサ側通信手段
13 表示手段
20 制御部
21 制御側通信手段
22 処理手段
22a タイマ(計時手段)
23 駆動手段
30 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠の係止穴に対してデッドボルトを突出又は引き込むことにより扉を施解錠する電気錠と、
室内側に設置され、所定の検知範囲内に近接した人体又は人体の一部などの検知対象を検知して検知情報を出力するセンサ部と、
該センサ部からの検知情報に基づいて前記電気錠の施解錠を制御する制御部とを備えたことを特徴とする電気錠システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記センサ部からの検知情報の入力時間を計時する計時手段を備え、
前記センサ部からの検知情報が設定時間以上継続して入力したことを前記計時手段が計時したときに、そのときの検知情報に基づいて前記電気錠の施解錠を制御することを特徴とする請求項1記載の電気錠システム。
【請求項3】
前記電気錠の現在の施解錠状態や前記検知対象の検知状態を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の電気錠システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−45949(P2006−45949A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229644(P2004−229644)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】