説明

電気音響部品

電気音響部品は、誘導音響波により動作し、第1基板(S1)と、第2基板(S2)と、金属層(MS)と、中間層(ZS)とを含む。第1基板(S1)は、LiTaO単結晶から成る。金属層(MS)は、第1基板(S1)と中間層(ZS)との間に配置される。中間層(ZS)は、金属層(MS)と第2基板(S2)との間に配置される。LiTaO単結晶の結晶部は、第2オイラー角μ:−100°≦μ≦−40°または−160°≦μ≦−130°であるように選択される。第1オイラー角λとしてλ=0°が好ましく、第3オイラー角θとして−10°≦θ<0°またはθ=0°または0°<θ≦10°が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
表面音波部品のためのLiTaO単結晶の結晶部が、例えば国際公開公報 00219522 A1や米国特許出願公開公報 2006/0055283 A1で知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
1つの形態において、本発明は、好ましくない第2次モードによって起こる誤動作が非常に少なく、誘導音響波(guided acoustic wave)により動作する部品を明示する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
GBAW(Guided Bulk Acoustic Wave:誘導バルク音響波)により動作する部品は、第1基板と、第2基板と、金属層と、中間層とを明示する。第1基板は、LiTaO単結晶から成る。金属層は、第1基板と中間層との間に配置される。中間層は、金属層と第2基板との間に配置される。LiTaO単結晶の結晶部は、好ましい音響モードが支持され、抑制されるべき音響モードが抑制されるように、選択される。好ましいLiTaO単結晶の結晶部は以下に明示される。
【0004】
波の伝搬速度は、中間層内よりも基板内及び第2基板内の方が望ましくは大きい。このようにして、導波路は、コアが中間層と金属層により形成される際に、その2つの基板により被覆されて形成される。さらに、それぞれ中間層の境界面に隣接した第1および第2基板の領域もまた、導波路のコアに属し、この領域の厚さはおおよそ波長と同じである。
【0005】
金属層は、好ましくは音響アクティブ構造(例えば、電気音響変換器や反射器)や接触面のほかに接続線も形成するために構築されている。本部品は、特に音響波が電気的に励起されやすい変換器を備える共振器を有する。変換器は、一般的に電極グリッド(electrode grid)を有する。その電極は、この場合、波の伝搬方向と垂直に配置された金属製のストリップ(strips)である。これらは、変換器のアクティブ領域内にある音響波の位置特定に適している。本部品は、通過帯域(passband)と少なくとも1つの阻止帯域(stopband)を有する。
【0006】
共振器は、アドミッタンス曲線(admittance curve)と電気音響結合係数(electroacoustic coupling coefficient)Kにより特徴付けられる。アドミッタンス曲線は、周波数fでの共振(直列共振)と周波数fa,Rでの非共振(並列共振)とを有する。結合係数は、公式K=π(fa,R−f)/4fa,Rにより決定される。
【0007】
電極での音響反射は、反射係数Rにより特徴付けられる。後の議論において、レイリー波に関連するパラメータKとRには、見出し“RW”が与えられ、せん断波に関連するパラメータKとRには、見出し“SH”が与えられる。
【0008】
結晶部は、3つのオイラー角により明示される。オイラー角は、以下に図1を用いて説明される。第1オイラー角はλ、第2オイラー角はμ、第3オイラー角はθで後に示される。
【0009】
せん断波とレイリー波から選択される少なくとも1つの波の種類は、LiTaO単結晶内でその結晶部に依存して励起されやすい。明示された部品において、これらの波の種類のうち唯一つが、好ましくは励起され、その他の波の種類は大きく抑制される。励起される波の種類は基本モードとして知られ、抑制される波の種類は第2次モードとして知られる。
【0010】
せん断波は、外側面XY内で波の伝搬方向Xを大きく横切る方向に偏向した要素から構成される。さらに、外側面と垂直方向に偏向した小さな波の要素が存在する。
【0011】
レイリー波は、外側面と垂直に大きく偏向した要素から構成される。さらに、波の伝搬方向Xと直角に外側面内に偏向した小さな波の要素が、存在しうる。
【0012】
少なくとも1つの波の種類が好ましく励起され、その他の波の種類において電気音響結合係数Kが特に小さく調節される結晶部が存在することが発見された。それぞれの波の種類にとって最適な切断角の組み合わせは、その他の波の種類が大きく抑制されることを促進する。この場合に、この組み合わせは、結晶部だけでなく、金属層、中間層、及び第2基板の材料や組成に依存する。
【0013】
例えば、Alで形成された相対的に厚い金属層と、SiOから形成された平坦化された中間層と、Siから形成された第2基板とを備える部品の場合、a)LiTaOの結晶部(0°,μ,θ)で|θ|≦10°かつμ≒−142°のせん断波において、及びb)結晶部(0°,μ,θ)で|θ|≦10°かつμ≒−54°のレイリー波において、電気音響結合係数Kは実質的に0である。これは、それぞれの波が本部品内で励起されないか、又はただ非常に弱く励起されていることを意味する。このように、第2次波として発生する波は、以下に明示される特定の結晶部で大きく抑制される。
【0014】
第1の好ましい実施形態において、第2オイラー角μは、第1基板において−100°≦μ≦−40°の範囲から選ばれる。第1オイラー角λとしては、λ=0°が好ましい。第3オイラー角θとしては、θ=0°または|θ|≦10°が好ましい。基板の境界層では、この場合、水平方向に偏向したせん断波が1つの有利な変形におけるGBAWである基本モードとして励起される。水平方向の偏向は、せん断波が実質的に外側面内で偏向していることを意味する。
【0015】
この場合に、もし角度範囲が−56°≦μ≦−48°であるならば、特に本部品の電極が相対的に軽いもの、例えばAl含有金属から作られ、そのためにW層を有していないならば、特に有利である。
【0016】
本部品は、好ましくは、せん断波が基本モードとして伝搬可能である変換器を有する。変換器は、そのアドミッタンス曲線が、主共振における共振周波数fの近傍にいかなる第2次共振もない点で特徴付けられる。
【0017】
第2の好ましい実施形態において、第2オイラー角μは、第1基板に対して−150°≦μ≦−130°の範囲から選ばれる。第1オイラー角λとしては、λ=0°が好ましい。第3オイラー角θとしては、θ=0°または|θ|<10°が好ましい。基板の境界層では、この場合にレイリー波が1つの有利な変形におけるGBAWを表す基本モードとして励起される。この場合に、もし角度範囲が−146°≦μ≦−136°であるならば、特に本部品の電極が相対的に軽いもの、例えばAl含有金属から作られ、W層を有していないならば、特に有利である。
【0018】
本部品は、好ましくは、レイリー波が基本モードとして伝搬可能である変換器を有する。変換器は、そのアドミッタンス曲線が、主共振における共振周波数fの近傍にいかなる第2次共振もない点で特徴付けられる。
【0019】
特に安定した温度特性により特徴付けられる第1及び第2の実施形態に従って、本部品の例となる構造が以下に明示される。しかし、本部品は、これらの例に限定されない。
【0020】
第1基板と第2基板は、それぞれ少なくとも波長λの10倍の厚さを有する。第2基板は、1つの変形においては、例えば少なくともλの0.5倍の厚さを有する層として設計される。
【0021】
第2基板と面している中間層の境界層が平面または平坦化されているならば、有利である。このように、第1基板と、金属層と、中間層とから構成される第1ウエハーは、ウエハー直接接合(Direct Wafer Bonding)を用いて第2基板と接合される。
【0022】
第2基板と、中間層と、金属層とは、多くの異なる部分的な層を有する。
【0023】
金属層は、波長λの音波を励起するための電極を有する。これは、本部品の通過帯域内にある周波数での波長をいう。電極は、変換器の周期的な電極グリッドを形成し、波の伝搬方向で測った反対極性の2つの電極間の距離は、波長の半分である。
【0024】
電極は、一般に、変換器の周期的な電極グリッドを形成し、波の伝搬方向で測った2つの反対極性の電極間の距離は、波長の半分である。
【0025】
以下で説明される結晶部の計算の例では、θ=0°かつλ=2.5μmである。
【0026】
金属層は、好ましくは、タングステンのような重金属から作られた層を含み、波長に対してその厚さはほぼ10%であり、有利な変形においては1%〜6.5%の間にある。W層は、特に、波長に対して5%の厚さである。
【0027】
さらに、電極は、AlまたはAl合金から構成されている。それらは、例えば少なくとも1つのAl層を有すが、他の層は特にCu層である。電極全体の高さは、例えば、波長の10%よりも大きい。
【0028】
アルミニウムで作られた電極はAl電極として知られている。Al電極に関して述べていることは基本的に、相対的に軽い金属で形成された層のみを有する電極又は全体として相対的に軽い電極に応用できる。タングステンの層を有する電極は、W電極と呼ばれる。W層とAl層を有する電極は、Al/W電極と呼ばれる。W電極とAl/W電極に関して述べていることは基本的に、相対的に重い金属の層を少なくとも1つ有する電極又は全体として相対的に重い電極に応用する。
【0029】
本部品の音響アクティブ領域中の第1基板表面の金属化された領域の割合は、好ましくは0.3〜0.7の間である。しかし、この範囲に限られない。後に説明される例では、本部品のアクティブ領域中の金属化された領域の割合は、0.5が選択された。
【0030】
第2基板は、Siまたはガラスから形成される。後に説明される例では、Siが1つの結晶部(0°,0°,0°)で選択された。他のSi結晶部もまた考慮される。
【0031】
角度範囲が−180°≦μ<−160°または−95°<μ≦0°でのせん断波は、基本モードとみなされる。この領域では、約6.5%よりも大きいせん断波における結合係数が達成される。
【0032】
角度範囲が−160°<μ<−95°でのレイリー波は、基本モードとみなされる。この領域では、約3%よりも大きいレイリー波における結合係数が達成される。
【0033】
<0.05%では、抑制される第2次モードが非常に弱く結合される切断角領域がある。
【0034】
オイラー角の特定の数値では、1つの純粋な波のモードだけが本部品内で伝搬可能である。Al電極を伴う実施形態では、例えばμ=−54°の切断角は純粋なせん断波が伝搬可能な点で特徴付けられる。W電極を伴う実施形態では、これはμ=−75°の切断角の場合である。
【0035】
μ=−142°の切断角は、Al電極を伴う実施形態において純粋なレイリー波が実質的に伝搬可能な点で特徴付けられる。W電極を伴う実施形態では、これはμ=−135°の切断角の場合である。
【0036】
電気音響部品の周波数fの温度係数は、テイラー級数により表わされる。
df/f=T0+TCF1ΔT+TCF(ΔT)+....
dfは、温度差分ΔTにおける本部品の周波数の温度誘導偏差である。これは例えば室温からまたは特定の参照温度からの温度偏差である。この級数の線形項の前に来る係数TCF1は、線形温度係数として知られている。T0は、温度独立定数である。この級数の2次項の前に来る係数TCF2は、2次温度係数として知られている。係数TCF2は小さいと考えられる。df/f(ΔT)曲線は、この場合は基本的に直線である。
【0037】
結晶部と、電極の金属化された高さと、本部品の音響アクティブ領域内の金属化された領域の割合とは、線形温度係数TCF1が小さく選択されるように好ましく選択される。
【0038】
中間層は、好ましくは1.6≦x≦2.1であるSiOから形成されるが、別の材料からも選択される。波長と比較して中間層の厚さは、例えば、20%〜200%の間である。20%〜80%の間の範囲は、電気音響結合の比較的高い係数Kの基本モード(せん断波か又はレイリー波かは本部品による)において、特に有利であることが判明し、より詳しくはK>4%が達成される。これは、相対的な厚さが7.2%のAl電極の場合である。Al電極において相対的な厚さdELが3%〜16%の間、特に厚さが約10%であることはは有利である。
【0039】
中間層の相対的な厚さdZSが30%〜60%の間にある場合には、基本モード(ここではせん断波)においてμ≒−48°でKSH>5%かつ反射係数RSH>1.5%が達成される。厚さの範囲(40±5)%は、最適とみなされ、この場合ではAl電極の厚さは好ましくは16%である。
【0040】
中間層の相対的な厚さdZSが40%〜55%の間にある場合には、基本モード(ここではせん断波)においてμ≒−54°で結合係数KSHが、5.35%〜5.63%の間かつRSH≒2.0%が達成される。
【0041】
相対的に厚い中間層の長所は、パラメータTCF1において相対的に低い数値が達成されることである。その上、そのような中間層の長所は、励起される波の比較的高い反射係数RSHとRRWが1つの電極の端で達成されることである。
【0042】
タンタル酸リチウムの異なる切断角では、RSHが0%〜3%の範囲にあり、RRWが0%〜1.3%の範囲にあることがわかった。電気音響結合係数は、切断角に依存して、せん断波では0%〜6.49%の間に、レイリー波では0%〜3%の間に設定される。
【0043】
相対的な層の厚さが40%の第1の実施形態における本部品内の短絡した電極グリッドでは、RSH=1.8...3.0%かつKSH=1.5−6.5%が決定され、−90°≦μ≦−40°の範囲でK>5%が決定された。−56°≦μ≦−48°の範囲は、抑制されるレイリー波の電気音響結合係数が特に低い数値である点により特徴付けられ、その場合以下が適用可能である:RRW<0.2%かつKRW≦0.02%。電極は、相対的な厚さが7.2%のAlから作られた。
【0044】
−150°≦μ≦−130°の範囲で相対的な層の厚さが40%の第2の実施形態における本部品内の短絡電極グリッドでは、RRW>0.5%かつRSH=0.1%が決定された。励起されるレイリー波において、KRW>1.5%であることがわかった。抑制されるせん断波では、KSH<0.4%であることがわかった。電極は、相対的な厚さが7.2%のAlから作られる。
【0045】
抑制されるモードにおいて関連のある数値が小さいままで、励起される波のモードにおいて電気音響部品の比較的高い電気音響結合係数Kを比較的高い反射係数Rと同様に達成することも可能である。
【0046】
GBAWで動作する部品は、第1及び第2基板のそれの間にある展開温度係数を有する。μ≒−54°でのせん断波の励起と、相対的な厚さdZS≒40%のSiOから形成された中間層と、相対的な厚さdEL≒7.2%のAl電極とに最適化された部品において、以下が決定された。
SH=5.63%,RSH=2.01%,TCF1=−7...+7ppm/K.
【0047】
μ≒−54°で、Al電極の相対的な厚さdEL≒7.2%で、かつdZS∈(50%,70%)である本部品は、その係数TCF1が−15.5...13.0ppm/Kの範囲にある安定した温度特性により特徴付けられる。相対的な厚さdZSの範囲が60%〜65%の間であることは、温度の安定性の観点から特に有利であると考えられる。この場合、−7ppm/K〜7ppm/Kの間にある係数TCF1が決定された。厚さdZS≒62.5%において、以下が決定された:KSH=4.8%,RSH=1.8%。
【0048】
μ≒−54°である本部品において、Al電極の相対的な厚さdEL≒7.2%で、相対的な厚さdZSの範囲が140%〜160%の間であることが有利であるとわかった。
【0049】
せん断波を基本モードとして設計されたGBAW部品において、アクティブ変換器領域内における第1基板の金属化された表面の割合ηが0.5よりも下であり、特に0.25〜0.3の間ならば、有利である。この場合、特に高い反射係数RSHが2.95%以上、かつKSHが約5.2%が達成される。
【0050】
μ≒−54°である有利な部品において、dEL=10%、η=0.3、dZS=40%が特定される。この部品において、RSH=2.93%、KSHが5.41%〜5.89%の間、TCF1が−19.5ppm/K〜−5.1ppm/Kの間である。
【0051】
μ≒−54°である別の有利な部品において、dEL=10%、η=0.3、dZS=62.5%が特定される。この部品において、RSH=2.5%、KSHが4.0%〜5.0%の間、TCF1が−3.3ppm/K〜11.1ppm/Kの間である。
【0052】
μ≒−142°で、Al電極の相対的な厚さdEL≒7.2%で、かつdZS∈(20%,200%)である部品において、レイリー波における結合係数KRW≒2%と反射係数RRW≒0.6%が決定された。相対的な厚さdZSの範囲が30%〜80%の間にあるならば特に有利である。
【0053】
μ≒−142°でのレイリー波の励起と、SiOから作られた中間層の相対的な厚さdZS≒40%と、η=0.5におけるAl電極の相対的な厚さdEL≒7.2%とに最適化された部品において、以下が決められた:KRW=1.97%、RRW=0.6%、TCF1=−45...−25ppm/K。
【0054】
レイリー波を基本モードとして設計されたGBAW部品の場合、アクティブ変換器の範囲内の第1基板の金属化された表面の割合ηが0.5よりも下、特に0.3〜0.5の間にあるならば有利である。この場合、レイリー波における特に高い結合係数KRW約2%が達成される。0.25≦η≦0.30において、反射係数RRWが約0.95%と結合係数KRWが約1.97%が決定された。
【0055】
μ≒−142°である有利な部品において、そこから以下が特定される:dEL=7.2%,η=0.3、dZS=40%。この部品において、レイリー波では、RRW=0.94%、KRWが1.97%〜2.34%の間、TCF1が−40.0ppm/K〜−25.3ppm/Kの間と計算される。
【0056】
タングステンから作られた重い電極を有するGBAW部品が次に示される。この場合、−120°<μ<−30°でのせん断波と−150°<μ<−130°でのレイリー波が基本モードとみなされる。
【0057】
相対的な電極の厚さdEL=7.2%かつ中間層の相対的な厚さが10%≦dZS≦80%である本部品において、下記が計算される:28%≦RSH≦35%、4.3%≦KSH≦5.07%。20%≦dZS≦60%の範囲は、特に高い数値であるRSH≧32%を考慮すると有利である。dZS=10%である有利な部品において、RSH=28.65%かつ(KSHmax=5.07%が決定された。
【0058】
相対的な層の厚さdZS=40%かつμ=−48°である別の有利な部品において、水平方向に偏向したせん断波は基本モードである。2%≦dEL≦12%の範囲において、以下が決定された:4.0%≦KSH≦7.4%、9%≦RSH≦46%。W電極の相対的な厚さdELが2.0%≦dEL≦3.5%の範囲にあることは特に有利である。数値dEL=2%において、RSH=9.49%かつ(KSHmax=6.64%が計算された。
【0059】
加えて、−180°≦μ≦0°、dZS=40%、W電極のη=0.5、dEL=2%である部品が調べられた。この場合、レイリー波とレイリー波とせん断波の混合波が結晶部に依存して伝搬可能である。せん断波において設計された部品において、数値RSH≧8.5%かつKSH≧6%が実現される。レイリー波において設計された部品において、数値2.0%≦RRW≦3.0%かつ2.5%≦KRW≦3.5%が達成される。
【0060】
せん断波は−110°≦μ≦−30°の範囲で優勢であり、好ましい数値としてμ=−75°、dEL=2%、dZS=40%において、結合係数KSHが7.64%よりも大きく、反射係数RSHが9.92%よりも大きく、TCF1が−9.5ppm/K〜4.5ppm/Kの間が達成される。
【0061】
切断角μ=−75°である本部品において、30%≦dZS≦60%の範囲は、温度補償において有利と考えられ、30%≦dZS≦70%の範囲は高い数値のRSH≧9.5%に関して有利であり、20%≦dZS≦80%は高い数値のKSH≧7.3%に関して有利である。40%≦dZS≦50%の範囲は、この場合、特に低い数値のTCF1が−9.5ppm/K〜7.18ppm/Kの間であることが達成されるため、望ましい。この範囲において、KSHが約7.63%かつRSHが9.82%〜9.97%の間が決定された。
【0062】
切断角μ=−75°である本部品において、W電極の相対的な厚さの範囲が1%≦dEL≦8%であることは有利であると考えられる。この場合、反射係数RSHが35.8%よりも大きいことが達成される。この場合に、せん断波における結合係数KSHは、η=0.5において5.0%〜7.6%の間にある。0.4≦η≦0.5の範囲は、RSH≧9.7%かつKSH≧7.5%において特に有利である。
【0063】
結晶部(0°,−75°,0°)を有する第1基板とW電極とを備えるGBAW部品において、下記の例の実施形態が望ましい:
1)RSH≒9.82%,KSH≒7.64%...9.08%,−9.5ppm/K≦TCF1≦4.5ppm/Kにおいて、dZS=40%,dEL=2%,η=0.5
2)RSH≒9.97%,KSH≒7.62%...9.06%,−7.22ppm/K≦TCF1≦7.18ppm/Kにおいて、dZS=50%,dEL=2%,η=0.5
【0064】
レイリー波は−150°≦μ≦−130°の範囲で優勢であり、数値μ=−135°が好ましい。W電極の相対的な厚さdELの範囲は、2%〜10%の間がこの場合に好ましい。dEL=2%かつdZS=40%である1つの変形は特に有利である。この変形では、KRW=2.88%、RRW=1.88%、−28.1ppm/K≦TCF1≦−13.7ppm/Kである。
【0065】
μ=−135°である本部品において、この場合高い数値の係数KRW≧3.5%かつRRW≧5.3%において高い数値が達成されるため、W電極の相対的な厚さの範囲dEL≒6%は有利である。W電極の相対的な厚さdEL=6%と中間層の相対的な厚さdZS=60%は特に有利である。この変形において、KRW=3.60%、RRW=6.27%、TCF1は−20.6ppm/K〜−6.2ppm/Kの間に決定された。
【0066】
μ=−135°である部品において、相対的な金属化の割合ηにおいて0.4≦η≦0.5の範囲が望ましい。この範囲において、励起されるレイリー波のKRW=3.6%、R≧6.3%である。
【0067】
さらに、Al/W電極またはAlCu/W電極、すなわちAlと/またはAlCuから作られた部分的な層とWから作られた部分的な層とを備える電極が本部品で使用される。第1の有利な変形において、W層の厚さは2%であり、Al層と/またはAlCu層の厚さは0.4%〜10%の間から選ばれる。第2の有利な変形において、例えば、W層の厚さは6%であり、Al層と/またはAlCu層の厚さは0.4%〜6%の間から選ばれる。原則として、部分的な層の割合は、任意に調整される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
本部品は縮小率で描かれていない概略図を用いてこれからより詳細に説明される。
【0069】
オイラー角は図1を用いて説明される。物質結晶座標系(x,y,z)の軸が単結晶の基本セルの結晶軸(a,b,c)に沿って指し示される。第1オイラー角λは、図1では、z軸に関しての座標系の回転として示される。1度回転された座標系は(x’,y’,z)として知られる。第2オイラー角μはx’軸に関して1度向きを変えた座標系の回転を表す。この場合、位置は座標系(x’,y’’,Z)へ移る。第3オイラー角θはZ軸に関して2度回転した座標系を表す。この方法で得られた座標系(X,Y,Z)のX軸は、音波の伝搬方向として備わる方向を指し示す。音波は、基板の交差する平面としても知られるXY平面内で伝搬する。Z軸は、この平面に対する法線である。
【0070】
図2では、誘導バルク音響波(GBAW)が励起される、変換器W1を備える部品が一部示されている。
【0071】
第1基板S1は、特定の結晶部の1つを有するタンタル酸リチウムである。金属層MSは、変換器W1とそれと接続されている電気接触面KF1とを有する第1基板上に配置されている。変換器は電極E1、E2から構成され、第1電極E1と第2電極E2は伝搬方向X内で交互に配置されている。それらは、この方向を横切る方向の外側面内に延びる。
【0072】
E1、E2、金属層のKF1の構造は、第1基板S1の露出した表面を覆う中間層ZSで覆われる。中間層ZSは、少なくともこの金属層と同じくらいの高さである。
【0073】
接触面KF1は、第2基板S2と中間層ZSを通り抜けるめっきした貫通孔DKを用いて外部に接触される。このめっきした貫通孔は、その表面が金属化されて覆われている孔である。金属化は、第2基板S2の露出した表面上にもあり、外部接触AEを形成する。
【0074】
本部品は、図2に示される例に限られない。特に、独国特許出願 DE 10 2005 055870.4、DE 10 2005 055871.2、DE 10 2005 055872.0に示される実施形態は参照することにより本書に組み込まれる。
る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】結晶部のオイラー角の説明を示す。
【図2】誘導バルク音響波(GBAW)により動作する部品である。
【符号の説明】
【0076】
AE 外部電極
DK めっきされた貫通孔
E1,E2 電極
KF1 接触面
MS 金属層
S1 第1基板
S2 第2基板
ZS 中間層
X 波の伝搬方向
Y,Z 空間の方向
x,x’,y,y’,y’’,z 空間の方向
λ 第1オイラー角
μ 第2オイラー角
θ 第3オイラー角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導バルク音響波により動作する電気音響部品であって、
LiTaO単結晶から成る第1基板(S1)と、
第2基板(S2)と、
金属層(MS)と、
中間層(ZS)と、を備え、
前記金属層(MS)は、前記第1基板(S1)と前記中間層(ZS)との間に配置され、
前記中間層(ZS)は、前記金属層(MS)と、前記第2基板(S2)との間に配置され、
LiTaO単結晶の結晶部が次のように選択されることを特徴とする部品。
第1オイラー角λ:λ=0°,
第2オイラー角μ:−100°≦μ≦−40°,
第3オイラー角θ:−10°≦θ<0°またはθ=0°または0°<θ≦10°
【請求項2】
水平方向に偏向したせん断波が励起される、
ことを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項3】
−44°≦μ≦−64°である、
ことを特徴とする請求項2に記載の部品。
【請求項4】
誘導バルク音響波により動作する電気音響部品であって、
LiTaO単結晶から成る第1基板(S1)と、
第2基板(S2)と、
金属層(MS)と、
中間層(ZS)と、を備え、
前記金属層(MS)は、前記第1基板(S1)と前記中間層(ZS)との間に配置され、
前記中間層(ZS)は、前記金属層(MS)と、前記第2基板(S2)との間に配置され、
LiTaO単結晶の結晶部が次のように選択されることを特徴とする部品。
第1オイラー角λ:λ=0°,
第2オイラー角μ:−160°≦μ≦−130°,
第3オイラー角θ:−10°≦θ<0°またはθ=0°または0°<θ≦10°
【請求項5】
レイリー波が励起される、
ことを特徴とする請求項4に記載の部品。
【請求項6】
−146°≦μ≦−131°である、
ことを特徴とする請求項5に記載の部品。
【請求項7】
前記金属層は、第1基板上に配置され、波長λの音波を励起する電極を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の部品。
【請求項8】
前記金属層は、W層から構成される、
ことを特徴とする請求項7に記載の部品。
【請求項9】
前記金属層は、Al層から構成される、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の部品。
【請求項10】
前記中間層は、平坦化された層から構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の部品。
【請求項11】
前記中間層は、1.6≦x≦2.1であるSiOから構成されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の部品。
【請求項12】
前記中間層は、波長λに対して20%〜200%の間の厚さを有する、
ことを特徴とする請求項10または11に記載の部品。
【請求項13】
前記第2基板は、Siから構成されている、
ことを特徴とする請求項10乃至12のうちいずれか1項の記載の部品。
【請求項14】
前記第1基板と前記第2基板は、それぞれ少なくともλの10倍の厚さを有する、
ことを特徴とする請求項10乃至13のうちいずれか1項に記載の部品。
【請求項15】
−65°≦μ≦−85°である、
ことを特徴とする請求項2に記載の部品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−535869(P2009−535869A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506913(P2009−506913)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000765
【国際公開番号】WO2007/124732
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】