説明

電気駆動式ドアの制御装置

【課題】電気駆動式ドアの動作状態変化を的確に判定することができる電気駆動式ドアの制御装置を提供する。
【解決手段】電動機3によって開閉駆動される電気駆動式ドア1の制御装置であって、前記電気駆動式ドアの駆動力指令値を出力する駆動力指令値発生器11と、該駆動力指令値発生器11の駆動力指令値に基づいて前記電気駆動式ドアを駆動する電気駆動系12、ドア駆動機構13と、該ドア駆動機構13に対する機械的抗力を推定する状態観測器15と、該状態観測器15で推定した機械的抗力に基づいて前記ドア駆動機構の動作状態変化を判定する動作状態判定部17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機によって駆動される電気駆動式ドアの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道車両に搭載される機器の中で、鉄道車両を推進する電動機やそれを駆動するインバータは、長大編成の場合、これを複数台搭載することにより、電動機やインバータの一部に不具合があっても運転を継続することができる所謂冗長性を有している。
一方、鉄道車両の乗降用の側引戸は、一般的な通勤電車では1両の片側に4開口、10両編成では片側だけで40開口も有するが、通勤時間帯に側引戸が1台でも不具合を発生すると重大な輸送障害を発生しかねない。言い換えれば、数は多いが冗長性のない脆弱なシステムとなっている。
【0003】
鉄道車両用ドアとして、従来は圧縮空気によって駆動されるドアが主流であったが、ドアの開閉時に乗降客の身体や所持物などを挟んだことを検知する所謂戸挟み検知機能や戸挟み検知誤の安全動作を柔軟に行なえる観点から電子制御を適用した電気駆動式ドアが普及しつつある(例えば、特許文献1参照)。
このような電気駆動式ドアの制御装置としては、例えば図4に示すシステム構成とされる。すなわち、ドアの開閉動作指令cによって推力指令発生器11で、目標推力指令τcを電気駆動系12に出力し、この電気駆動系12で、ドアを開閉するための推力fを発生し、この推力fによってドア駆動機構13を駆動して電気駆動式ドアを開閉制御する。このときの電気駆動式ドアの位置及び速度を位置・速度検出器14で検出し、この位置・速度検出器14で検出した位置情報p及びドア開閉速度情報vを推力指令発生器11に供給して、位置情報p及びドア開閉速度情報vに応じて推力指令τcを演算する。
【0004】
ドアレールなどの摺動部の潤滑が低下したり、電気駆動式ドアに異物が挟まったりすると、ドア駆動機構に対する摩擦などによる機械的抗力fm及び異物の抵抗力による外力fdが働いて電気駆動式ドアの駆動を妨げる。
【特許文献1】特開2004−242499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、ドア駆動機構13が、電動機の駆動力を電気駆動式ドアに伝達する機構および開閉するドアリーフとともに移動する転動または摺動する部位を有する。このため、その摺動部の潤滑の維持が必要であり、グリースの給油など定期的な保守作業を必要とする。
また、ドア開閉時にドアパネルをスライドさせるための機構への支障物の介在や潤滑の低下による機械的抗力の増加と戸挟みによる反力を区別することが困難なことから、機械的抗力の増加を戸挟み状態と誤検知して戸閉め不良にいたる場合がある。反対に検知感度を鈍くすると、実際に戸挟みが発生していても戸挟みを検知しないなどの問題が発生するという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、電気駆動式ドアの動作状態変化を的確に判定することができる電気駆動式ドアの制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る電気駆動式ドアの制御装置は、電動機によって開閉駆動される電気駆動式ドアの制御装置であって、前記電気駆動式ドアの駆動力指令値を出力する駆動力指令値発生器と、該駆動力指令値発生器の駆動力指令値に基づいて前記電気駆動式ドアを駆動するドア駆動機構と、該ドア駆動機構に対する機械的抗力を推定する状態観測器と、該状態観測器で推定した機械的抗力に基づいて前記ドア駆動機構の動作状態変化を判定する動作状態判定部とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に係る電気駆動式ドアの制御装置は、請求項1に係る発明において、前記動作状態判定部は、前記状態観測器が推定した機械的抗力が判定閾値を超えたときに前記ドア駆動機構の動作状態が悪化したと判定するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る電気駆動式ドアの制御装置は、請求項2に係る発明において、前記所定値は、前記状態観測器で推定した機械的抗力の平均値に所定の比率を乗じて算出するようにしたことを特徴としている。
【0008】
さらにまた、請求項4に係る電気駆動式ドアの制御装置は、請求項2に係る発明において、前記所定値は、前記電気駆動式ドアの正常動作が保証されている期間における前記状態観測器で推定した機械的抗力の平均値に所定の比率を乗じて算出するようにこうしたことを特徴としている。
なおさらに、請求項5に係る電気駆動式ドアの制御装置は、請求項1乃至4の何れか1つに係る発明おいて、前記動作状態判定部は、前記電気駆動式ドアの移動時におけるドア位置毎に動作状態変化を判定することを特徴としている。
【0009】
また、請求項6に係る電気駆動式ドアの制御装置は、請求項2乃至5の何れか1つに係る発明において、前記動作状態判定部は、前記電気駆動式ドアの移動時におけるドア位置毎に前記判定閾値を設定することを特徴としている。
また、請求項7に係る電気駆動式ドアの制御装置は、請求項3または4に係る発明において、前記状態観測器で推定した機械的抗力の平均値を前記電気駆動式ドアの移動時におけるドア位置毎に算出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気駆動式ドアを駆動するドア駆動機構に対する機械的抗力を状態観測器で推定し、推定した機械的抗力に基づいて動作状態判定部でドア駆動機構の動作状態変化を判定するので、摺動部や転動部などの潤滑不足や電気駆動式ドアに移動経路に支障物による障害が発生した可能性を確実に判定することができるという効果が得られる。したがって、判定結果が動作状態の悪化であるときに、保守点検を行なうことにより、潤滑不足や障害物の除去を行なうことができ、電気駆動式ドアの効率的な保守運用を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の嫉視形態に係る電気駆動式ドアの制御装置の概略構成を示すブロック図、図2は図1の制御装置の具体的構成を示すブロック線図である。
図1において、鉄道車両の車体には、乗降客が乗降に使用する側引き戸用戸閉め装置を構成する電気駆動式ドア1が設けられ、この電気駆動式ドア1の各ドア部1a及び1bの閉じる側の先端には戸先ゴム2が取付けられている。また、鉄道車両には、電気駆動式ドア1を駆動する電動機と電動機の駆動力をドア開閉の直線運動に変換または伝達するドア駆動機構13から構成されるドアオペレータ3及び電気駆動式ドア1とドアオペレータ3とを連結する連結部4で構成されるドア駆動機構13と、電気駆動式ドア1の位置及び速度を検出して、これらに応じた位置情報p及びドア開閉速度情報vを出力する位置・速度検出器14とが設けられている。
そして、ドア駆動機構13は制御装置10に内蔵されたインバータなどの電力変換器と電動機から構成される電気駆動系12よって駆動されて電気駆動式ドア1を開閉駆動する。
【0012】
この制御装置10は、図2に示すように、図示しない戸閉め制御装置から入力されるドアの開閉動作を指示する開閉動作指令cが入力されると共に、位置・速度検出器14から出力されるドア位置情報p及びドア開閉速度情報vが入力される駆動力指令値発生器としての推力指令発生器11を有する。この推力指令発生器11では、戸開き又は戸閉めの開閉動作指令cが入力されると、ドア位置情報p及びドア開閉速度情報vに基づいて所定の演算を行なうか又は制御マップを参照して目標推力指令τcを演算し、演算した目標推力指令τcを出力する。
推力指令発生器11から出力される目標推力指令τcは、インバータと電動機を含んで構成される電気駆動系12に出力し、この電気駆動系12で目標推力指令τcに基づいてドアを開閉するための推力fを発生し、ドア駆動機構13を介してドアオペレータ3を駆動する。
【0013】
また、推力指令発生器11から出力される目標推力指令値τcが状態観測器15の一方の入力側に供給される。この状態観測器15の他方の入力側には位置・速度検出器14で検出されたドア開閉速度情報vが供給される。この状態観測器15では、推力指令発生器11から出力される目標推力指令τcとドア開閉速度情報vとに基づいてドア駆動機構13に対する電気駆動式ドア1の摩擦などの機械的抗力fmと戸挟み時に電気駆動式ドア1に作用される外乱による外力fdとの和でなる機械的抗力推定値feを推定する。
【0014】
この状態観測器15で推定した機械的抗力推定値feがメモリ16に供給されるとともに、動作状態変化判定部17に供給される。メモリ16では、位置・速度検出器14で検出された位置情報pが入力され、この位置情報p及び記録回数などの履歴情報と、機械的抗力推定値feとを組合せて算術平均などの種々の数学的手法を用いてデータ処理した後、電気駆動式ドア1の位置毎の状態観測器15の機械的抗力推定値feの平均値femを記憶する。このとき、電気駆動式ドア1の潤滑が正常で、かつ支障物の挟み込みなどがない状態即ち外乱による機械的抗力fdが零の状態でドアの開閉動作を行なってメモリ16に平均値femを記憶することで、戸挟み状態などの外乱による機械的抗力fdを除く電気駆動式ドア1の正常状態における摺動部の摩擦などによる機械的抗力fmのみを認識することができる。そして、メモリ16は、位置・速度検出器14から入力される位置情報pに基づいて該当する位置における機械的抗力平均値femを読出し、これを加算器20に出力する。ここで、メモリ16で実行するデータ処理の数学的手法としては、電気駆動式ドア1の動作中の時間領域での平均値を求める方法や、ドア位置情報pをパラメータとして各位置における機械的抗力の平均値を求める方法などがある。また、データを取得更新するタイミングとしては、常時データを収集する場合や、予め設定した期間、例えばティーチングモード時に取得することが考えられる。
【0015】
また、状態観測器15から出力される機械的抗力推定値feとメモリ16から出力される機械的抗力平均値femが動作状態変化判定部17に入力される。この動作状態変化部17は、状態観測器15から入力される機械的抗力推定値feがメモリ16から入力される機械的抗力推定平均値femに所定の1を超える値の比率Keを乗算した閾値fth(=Ke・fem)を超えているか否かを判定し、fe≦fthであるときには正常な状態からの動作状態の悪化が少ないものと判断して、例えば論理値“0”の警告信号Armを出力し、fe>fthであるときには動作状態が悪化しているものと判断して論理値“1”の警告信号Armを出力する。このとき、動作状態変化判定部17では、状態観測器15から入力される機械的抗力推定値feからメモリ16から出力される機械的抗力推定平均値femを減算した値(fe−fem)が戸挟み状態を判定する比較的大きな値の所定閾値fth1を超えたときには、戸挟み状態であると判断し、警告信号Armを論理値“0”のまま維持することが好ましい。
なお、閾値としては、上記閾値fthに代えて、予め設定することができる固定値Ferを用いるようにしてもよい。
【0016】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
先ず、鉄道車両の工場出荷時や、保守・点検時に、電気駆動式ドア1の摺動部または転動部での潤滑が正常で、且つ電気駆動式ドア1の移動経路に支障物の挟み込みなどがない正常動作を保証できる状態で、電気駆動式ドア1の開閉を所定回数繰り返し、この繰り返しの開閉時の位置・速度検出器14で検出した位置情報pが変化する毎に状態観測器15の機械的抗力推定値feを順次履歴回数及び位置情報pと組み合わせてメモリ16に記憶する。記憶された位置情報p毎の所定数の機械的抗力推定値feを算術平均処理又は移動平均処理することによって、位置情報p毎の平均値femを算出し、算出した平均値femを位置情報pとともにメモリ16に記憶する。
【0017】
このように、正常動作状態での状態観測器15で検出した位置情報p毎の外力推定値feの平均値femを記憶することにより、ドア駆動機構13に戸挟み時のような外乱による機械的抗力fdが作用していない状態での機械的推力推定値fe即ち摩擦などによる機械的抗力fmのみがドア駆動機構13に作用している状態の機械的推力推定値feの平均値femを位置情報p毎にメモリ16に記憶させることができる。
【0018】
このため、実際に鉄道車両を乗降駅に停車させて、戸閉め制御部でドア開閉動作指令cを推力指令発生器11に出力すると、この推力指令発生器11で、位置・速度検出器14で検出した位置情報p及びドア開閉速度情報bとに基づいて電気駆動式ドア1を所望の速度パターンで開閉させる目標推力指令τcが算出され、これが電気駆動系12に供給されるので、この電気駆動系12で推力fを発生させ、この推力fでドア駆動機構13を駆動することになるが、ドア駆動機構13は摺動部や転動部の摩擦などの機械的抗力fmを減じた推力で駆動される。
【0019】
このため、戸挟み状態ではない場合には、状態観測器15で推力指令発生器11から出力される推力指令τcと、位置・速度検出器14で検出されたドア開閉速度情報vとに基づいてドア駆動機構13に対する機械的抗力推定値feを推定したときに、摺動部や摺動部による摩擦などによる機械的抗力fmのみでなる機械的抗力推定値feが推定される。
そして、推定された機械的抗力推定値feが動作状態変化判定部17に供給される。このとき、機械的抗力推定値feは、転動部や摺動部の潤滑が正常である場合には、前述したように正常動作状態が保証された状態でメモリ16に記憶された電気駆動式ドア1の位置情報p毎の機械的抗力推定平均値femと大差がなく、機械的抗力推定値feが閾値fth以下となり、動作状態の悪化が少ないものと判定されて、論理値“0”の警告信号Armが出力される。このため、この警告信号Armを運転席に設けたランプなどの所定の表示部に供給するか、所定の記憶装置に履歴情報とともに記憶しておくことにより、正常状態の継続状態を把握することができる。
【0020】
ところが、電気駆動式ドア1の摺動部や転動部の潤滑が不足する状態となると、摩擦抵抗が増加することにより、ドア駆動機構13に作用する摩擦などによる機械的抗力fmが増加することになる。このため、状態観測器15で推定される機械的抗力推定値feも増加することになり、推定された機械的抗力推定値feが動作状態変化判定器17に入力される。
【0021】
そして、この動作状態変化判定器17で入力される機械的抗力推定値feがメモリ16に記憶されているドア位置情報p毎の機械的抗力推定平均値femに所定比率Keを乗算して算出される閾値fthを超える状態となると、動作状態変化が悪化したものと判定されて警告信号Armが論理値“1”となる。この警告信号Armを運転席の表示部に供給するか記憶装置に記憶することにより、電気駆動式ドア1の潤滑不足による動作状態が悪化したことを認識することができる。この動作状態の悪化を認識した時点で、電気駆動式ドア1の保守を行なって、摺動部や転動部にグリースの給油などを行なって潤滑性を確保することにより、動作状態の悪化を回復させることができる。
【0022】
また、摺動部や転動部での潤滑不足による機械的抗力fmの増加にかぎらず、電気駆動式ドア1の移動経路に支障物が挟まって、ドア挟み状態よりは小さい機械的抗力fmが発生した場合も、上記と同様にして動作状態変化判定部17で動作状態の悪化を知らせる論理値“1”の警告信号Armが出力される。この場合も、上記と同様に保守作業を行なって、支障物を除去することにより、正常な動作状態に復帰させることができる。
【0023】
なお、電気駆動式ドア1の閉動作時に乗降客の身体の一部が挟まれた場合や、所持品が挟まれた場合には、ドア駆動機構13に外乱となる大きな機械的抗力fdが作用することになる。このため、状態観測器15で推定される機械的抗力推定値feが動作状態の悪化時よりは大きな値となり、動作状態判定器17で機械的抗力推定値feからメモリ16から入力される機械的抗力推定平均値femを減算した値が戸挟み判定用閾値fth1より大きな値となったときには、戸挟み状態と判定されて、警告信号Armは論理値“0”の状態を維持し、動作状態の悪化として誤認識することを防止することができる。
【0024】
このように、上記第1の実施形態によると、状態観測器15で、電気駆動式ドア1の開閉に伴う機械的抗力を推定し、この機械的抗力推定値feと正常時の機械的抗力推定値femに所定比率Keを乗算した閾値fthとを比較することにより、潤滑不足や支障物の挟み込みによる電気駆動式ドア1の動作状態の悪化を正確に検出することができ、機械系摺動部の潤滑のための保守作業の必要性を通知したり、摺動部への異物の挟み込みなどの支障物による障害の発生を通知したりすることができ、電気駆動式ドア1の効率的な保守運用に効果を発揮することができる。
【0025】
このとき、電気駆動式ドア1の動作時におけるドア位置毎に機械的抗力推定平均値femを算出し、これをメモリ16に記憶するので、ドア位置毎に正確な動作状態変化の判定を行なうことができる。したがって、動作状態変化判定部17で動作状態の悪化を検出したときの、ドア位置pを別途記憶装置に記憶しておき、保守作業時に記憶装置に記憶されているドア位置pを読出すことにより、動作不良部の特定を迅速に行なうことができる。
【0026】
次に、本発明の第2の実施形態を図3について説明する。
この第2の実施形態では、状態観測器15の入力として、電気駆動系12に加えられる推力指令τcに代えて、電圧や電流などの電気駆動系12の状態量Eを用いていることを除いては前述した第1の実施形態と同様の構成を有し、図2との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
この第2の実施形態では、電気駆動系12の電動機に供給する電圧や電流などの状態量Eを用いて状態観測器15で算出される外力推定値feは前述した第1の実施形態と略同様な値となり、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、動作状態変化判定部17で、状態観測器15で推定した機械的抗力推定値feからメモリ16に記憶されている正常時の機械的抗力推定平均値femに所定比率Keを乗算した閾値とを比較する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、予めドア位置毎に閾値を設定するようにしてもよい。
【0027】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、正常が保証される保守作業時に電気駆動式ドア1の開閉を行なって状態観測器15から出力される機械的抗力推定値feをメモリ16に記憶し、そのドア位置毎の平均値femを算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、戸挟み状態の発生による影響を無視することができる程度の長期間状態観測器15で推定される機械的抗力推定値feの算術平均又は移動平均を行なって平均値femを算出するようにしてもよい。
【0028】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、電気駆動式ドア1の動作状態におけるドア位置毎に機械的抗力推定平均値femを算出し、これらをメモリ16に記憶する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ドア位置pに関わらない全体の機械的抗力推定平均値femを算出してメモリ16に記憶するようにしてもよい。
また、状態観測器15としては、上記第1及び第2の実施形態の構成に限定されるものではなく、ドア駆動機構13に作用する機械的抗力(fm+fd)を正確に推定できる構成であれば、任意の状態観測器を適用することができる。
【0029】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、本発明を鉄道車両の電気駆動式ドア1に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、自動車等の車両に搭載する電気駆動式ドアにも本発明を適用することができ、さらに側引き戸構成のドアに限らず、他の構成のドアにも本発明を適用することができる。
また、上記第1及び第2の実施形態においては回転型電動機とその回転力をドアの直線運動に変換するドア駆動機構13から構成される電気駆動式ドアに本発明を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、直線運動するリニアモータによって直接ドアを駆動する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を鉄道車両の電気駆動式ドアに適用した場合の概略構成図である。
【図2】図1の制御装置の具体的構成を示すブロック線図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す制御装置の具体的構成を示すブロック線図である。
【図4】従来例の電気駆動式ドアの制御装置を示すブロック線図である。
【符号の説明】
【0031】
1…電気駆動式ドア
2…戸先ゴム
3…ドアオペレータ
10…制御装置
11…推力指令発生器
12…電気駆動系
13…ドア駆動機構
14…位置・速度検出器
15…状態観測器
16…メモリ
17…動作状態判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機によって開閉駆動される電気駆動式ドアの制御装置であって、
前記電気駆動式ドアの駆動力指令値を出力する駆動力指令値発生器と、該駆動力指令値発生器の駆動力指令値に基づいて前記電気駆動式ドアを駆動するドア駆動機構と、該ドア駆動機構に対する機械的抗力を推定する状態観測器と、該状態観測器で推定した機械的抗力に基づいて前記ドア駆動機構の動作状態変化を判定する動作状態判定部とを備えていることを特徴とする電気駆動式ドアの制御装置。
【請求項2】
前記動作状態判定部は、前記状態観測器が推定した機械的抗力が判定閾値を超えたときに前記ドア駆動機構の動作状態が悪化したと判定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気駆動式ドアの制御装置。
【請求項3】
前記所定値は、前記状態観測器で推定した機械的抗力の平均値に所定の比率を乗じて算出するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の電気駆動式ドアの制御装置。
【請求項4】
前記所定値は、前記電気駆動式ドアの正常動作が保証されている期間における前記状態観測器で推定した機械的抗力の平均値に所定の比率を乗じて算出するようにこうしたことを特徴とする請求項2に記載の電気駆動式ドアの制御装置。
【請求項5】
前記動作状態判定部は、前記電気駆動式ドアの移動時におけるドア位置毎に動作状態変化を判定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電気駆動式ドアの制御装置。
【請求項6】
前記動作状態判定部は、前記電気駆動式ドアの移動時におけるドア位置毎に前記判定閾値を設定することを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の電気駆動式ドアの制御装置。
【請求項7】
前記状態観測器で推定した機械的抗力の平均値を前記電気駆動式ドアの移動時におけるドア位置毎に算出することを特徴とする請求項3または4に記載の電気駆動式ドアの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−52469(P2010−52469A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216774(P2008−216774)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】