説明

電池における排ガスチューブ

【課題】組み付けが容易であり、部品点数を節減して、コストを抑制することが可能な、電池における排ガスチューブを提供する。
【解決手段】合成樹脂素材(PE.系樹脂)により構成して、安全弁4の吐出口5に連結する安全弁取付部6と、これら安全弁取付部6と連通接続して、外部に水素ガスを導いて放出する、所定内径の排出パイプ7とを有する。排出パイプ7における安全弁取付部6間の部位には、排出パイプ7軸方向に伸縮可能な蛇腹部8を設ける。
それぞれの電池単体2sの筐体3に設けた安全弁4と排ガスチューブ1の安全弁取付部6とを連通接続して、積層電池2を構成する複数の電池単体2sの内部に発生する水素ガスを、外部に漏洩することなく排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み付けが容易であり、部品点数を節減して、コストを抑制することが可能な、電池における排ガスチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や、建設機械などの作業機などにおいては、省エネルギー化を図りつつ、エンジンを有効に使用することによって効率的な運転を可能とする、いわゆるハイブリッドシステムが採用されており、このようなハイブリッドシステムにおいては、蓄電装置として用いられるバッテリとして、ニッケル水素電池(NiMH電池)が知られている。
ニッケル水素電池は、大電流放電が可能であり使用可能な温度範囲が広い等の特質があるが、過充電には注意する必要がある。
過充電がなされると、電池内部に水素ガスが発生するからである。
このため、この水素ガスによって一定以上の内圧が発生したときにガスを放出する安全弁を設けて、安全弁の吐出口に排ガスチューブを接続して、着火防止などの安全対策のために水素ガスを外部の大気中に排出するようにしている。
【0003】
例えば特許文献1では、単位電池が内圧の上昇によって膨張した場合でもシール性を確保できることを目的としている。
すなわち、特許文献1では、一定以上の内圧が発生したときにガスを放出する安全弁10を備えた複数の単位電池2を並列配置した組電池16であって、単位電池2の配置方向に沿って配設されるとともに外部の排気部に接続された1又は複数の排ガスチューブ17に各単位電池2の安全弁10の放出口14を接続し、かつ単位電池2の膨張による安全弁10の放出口14の間隔変化を、排ガスチューブ17の蛇腹部22の伸長や屈曲して配設された排ガスチューブ17の伸展によって吸収するようにしたガス排出装置を備えたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−110377号公報
【0005】
これにより、「単位電池がその内圧上昇によって膨張し、安全弁の放出口の間隔が広がった場合でも排ガスチューブと放出口の接続部に無理な力が作用してその間のシールが不完全になる恐れを無くすことができ、水素ガスの洩れを確実に防止できる。」としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の排ガスチューブでは、構成する素材がゴムであるため、一本の排ガスチューブに組立てるのに、電池の複数モジュールごとのパーツを結合してなされるため、製作に手間がかかる。
また、安全弁の放出口とシール性を確保するために、ある程度の肉厚を要し、重量が重くなり、さらには傘型突出部を形成したり、環状リップを設けたりすることで製作は複雑化せざるを得ず、支持クリップを設けたりする等、部品点数も増える。
本発明は、以上のような課題を改善するために提案されたものであって、組付け性が向上し、安全性が高く、部品点数も減らすことができ、コスト抑制が可能な、電池における排ガスチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、互いに隣接して配置して、それぞれ内部に発生するガスを筐体に設けた安全弁を介して外部に排出するようにした積層電池において、前記安全弁と連通接続して外部に漏洩することなく排出するようにした電池における排ガスチューブであって、前記安全弁の吐出口に連結する安全弁取付部と、これら安全弁取付部と連通接続して、外部にガスを導いて放出する、可撓性の排出パイプとを有し、これら安全弁取付部と排出パイプとは、合成樹脂素材により一体的に構成したことを特徴とする。
【0008】
これにより、組付け性が向上し、安全性が高く、部品点数も減らすことができ、コスト抑制が可能となる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、前記排出パイプにおける安全弁取付部間の部位に、伸縮可能な蛇腹部を設けたことを特徴とする。
【0010】
これにより、電池内部にガスが発生することで、筐体内部容積が膨張し、安全弁の位置がずれても、蛇腹部が伸縮することで、ずれを吸収することができ、シール性を損なうことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明にかかる電池における排ガスチューブについて、一つの実施形態を挙げ、説明する。
図1に、電池における排ガスチューブ1を示す。
この排ガスチューブ1は積層電池2に用いられるもので、それぞれの電池単体2sの筐体3に設けた安全弁4と排ガスチューブ1とを連通接続することで、積層電池2を構成する複数の電池単体2sの内部に発生する水素ガスを、外部に漏洩することなく排出するようにしたものである。
すなわち、排ガスチューブ1は、後述する合成樹脂素材により構成して、安全弁4の吐出口5に連結する安全弁取付部6と、これら安全弁取付部6と連通接続して、外部に水素ガスを導いて放出する、所定内径の排出パイプ7とを有している。
そして、排出パイプ7における安全弁取付部6間の部位には、排出パイプ7軸方向に伸縮可能な蛇腹部8を設けている。
【0012】
以上のような排ガスチューブ1を構成する合成樹脂素材としては、例えば、PE.(ポリエチレン系樹脂)、またはPP.(ポリプロピレン系樹脂)、またはPA.(ポリアミド系樹脂)を挙げることができる。
【0013】
また排ガスチューブ1は、全長が、使用される積層電池2に対応する長さ寸法としており、積層電池2を構成する電池単体2sの数に対応して、すなわち安全弁4の数に対応して、且つ隣接する安全弁4の間隔に適合するように安全弁取付部6を設けている。
【0014】
そして、蛇腹部8は、上述の成形方法によって成形する際、伸縮性と成形性の観点から、肉厚を所定範囲の厚さとすると共に、山の高さHを4〜4.5mmとしている。
様々な試作検討の結果、山の高さHが例えば4mmでは、伸縮性は芳しくはないが、成形性は良好となる。一方、山の高さHが例えば4.5mmでは、伸縮性は良好となるが、成形性では比較的低下することが判明している。
【0015】
以上のような電池における排ガスチューブ1において、合成樹脂素材(ここではPE.系樹脂)を用いて、所定の成形方法で一体成形することで、一本の長尺チューブとして形成することができる。
排ガスチューブ1を使用される積層電池2に装着する際、電池単体2s毎の安全弁4の吐出口5に、対応する安全弁取付部6の開口部を被せるように嵌合することで、装着が完了する(図4参照)。
この場合、電池単体2s毎の安全弁4の吐出口5に対して、安全弁取付部6の開口部を、強制的に拡開させて嵌合するから、安全弁4の吐出口5と安全弁取付部6の開口部とのシール性が確保される。
このように、排ガスチューブ1は、電池単体2s毎の安全弁4の吐出口5に、対応する安全弁取付部6の開口部を被せるように嵌合することで、装着が完了するので、装着が容易である。
【0016】
次に、車両運転時、過充電がなされると、積層電池2における個々の電池単位2sから水素ガスを発生し、このため、電池単位2sの筐体3内の内圧が上昇して筐体3が変形し、安全弁4部位近傍も若干(略5mm程度)位置ずれを起こす。
しかしながら、排出パイプ7における安全弁取付部6間の蛇腹部8が位置ずれに追従して変位することで、安全弁4の位置ずれを吸収することができ、安全弁4の吐出口5と安全弁取付部6の開口部とのシール性が損なわれることはない。
【0017】
このようにして、車両運転時、過充電によって水素ガスが発生しても、電池単体2s毎の安全弁4の吐出口5から、水素ガスが排ガスチューブ1の安全弁取付部6を介して排出パイプ7内に流入し、図3に示す矢印方向に排出パイプ7内を通過し、車外へ排出することができる。
これにより、水素ガスの滞留による着火などの危険性を極力回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる電池における排ガスチューブおよび電池の一例を示す、外観斜視図である。
【図2】図1に示す排ガスチューブの正面図である。
【図3】図1に示す排ガスチューブの、B−Bに沿う、断面図である。
【図4】図3におけるA部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 排ガスチューブ
2 積層電池
2s 電池単体
3 筐体
4 安全弁
5 吐出口
6 安全弁取付部
7 排出パイプ
8 蛇腹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して配置して、それぞれ内部に発生するガスを筐体に設けた安全弁を介して外部に排出するようにした積層電池において、前記安全弁と連通接続して外部に漏洩することなく排出するようにした電池における排ガスチューブであって、前記安全弁の吐出口に連結する安全弁取付部と、これら安全弁取付部と連通接続して、外部にガスを導いて放出する、可撓性の排出パイプとを有し、これら安全弁取付部と排出パイプとは、合成樹脂素材により一体的に構成したことを特徴とする電池における排ガスチューブ。
【請求項2】
前記排出パイプにおける安全弁取付部間の部位に、伸縮可能な蛇腹部を設けたことを特徴とする請求項1記載の電池における排ガスチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−43670(P2009−43670A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210049(P2007−210049)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【出願人】(599024643)東和ブロー株式会社 (9)
【Fターム(参考)】